JP3920139B2 - 吸水性ポリマーの分解剤とこれを用いる吸水性ポリマーの分解方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、吸水性ポリマーの分解剤とこれを用いる吸水性ポリマーの分解方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明の課題】
生理用品、紙おむつ等の衛生用品をはじめとして種々の分野で使用されている吸水性ポリマーは、水溶性ポリマーが三次元架橋した構造であるため、水を吸水して膨潤はしても溶解はしないという特徴を有している。したがって、例えば、これらの吸水性ポリマーを利用した紙おむつ等は、使用後、廃棄物として焼却あるいは埋め立てにより処理される現況にあり、環境保全の面からは、好ましいことではない。
【0003】
このような問題を解決するために、これまでにも吸水性ポリマーの分解のための各種の方法が提案されている。例えば、特開平4−317784号公報には、過酸化水素で、吸水性ポリマーを分解する廃棄方法が開示されているが、大量の過酸化水素の使用と長時間の処理を必要とするという問題点がある。
【0004】
そして、特開平5−247126号公報には、微生物による吸水性ポリマーの分解方法が開示されているが、常にポリマーに空気を吹き込むなどの種々の条件設定と長時間の反応を必要とするという問題がある。
【0005】
また、特開平6−313008号公報には、過硫酸塩水溶液で加熱処理することによって吸水性ポリマーを短時間で分解する方法が開示されているが、処理できる吸水性ポリマーの量は、重量比で過硫酸塩水溶液の30分の1以下で、しかも吸水性ポリマーの全体が水溶液で膨潤した状態でなければならず、容器や反応装置内で1回当たり処理できるポリマー量が限られたり、水溶液で膨潤していないポリマーは分解されなかったり、一旦分解したポリマーが再び架橋反応のためにゲル化するという問題がある。
【0006】
このような状況において、この出願の発明者らは、吸水性ポリマーの分解について、特開2001−316519号公報において、過ヨウ素酸塩を含む分解剤とこれを用いた分解方法が過硫酸塩単独の場合より優れていることを開示した。しかし、過ヨウ素酸塩は過硫酸塩より高価であることから、より汎用性の高い酸化剤と、これを用いた吸水性ポリマーの分解方法の開発が望まれていた。
【0007】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの従来技術の問題点を解消し、より安価で汎用性の高い酸化剤によって効率的に吸水性ポリマーを分解処理することのできる新しい技術的方策を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は前記の課題を解決するものとして、第1には、吸水性ポリマーを分解する分解剤であって、アルカリ化合物の少なくとも1種と、酸化剤である過硫酸塩化合物の少なくとも1種を含むことを特徴とする吸水性ポリマーの分解剤を提供する。
【0009】
第2には、前記アルカリ化合物が、水溶性であって、その水溶液中で一価の陽イオンと一価の陰イオンに解離してアルカリ性を示すことを特徴とする吸水性ポリマーの分解剤を、第3には、前記酸化剤の濃度が0.002〜10重量%である水溶液であることを特徴とする吸水性ポリマーの分解剤を、第4には、前記アルカリ化合物が前記酸化剤に対して、モル比で、0.1〜10倍量含まれていることを特徴とする吸水性ポリマーの分解剤を提供する。
【0010】
そして、この出願の発明は、第5には、吸水性ポリマーもしくはこれを含有する吸水用材における吸水性ポリマーの分解方法であって、吸水性ポリマーに対して、前記いずれかの分解剤を加えて水の存在下に吸水性ポリマーを分解処理することを特徴とする吸水性ポリマーの分解方法を提供する。
【0011】
第6には、前記分解剤の水溶液のpHを4〜14の範囲とすることを特徴とする分解方法を、第7には、処理温度を40℃〜100℃の範囲とすることを特徴とする分解方法を提供する。
【0012】
さらに、第8には、吸水性ポリマーの少くと一部を含水させた状態で分解処理することを特徴とする分解方法を提供し、第9には、含水量は、吸水性ポリマーの重量に対しての重量比で、5〜1000倍であることを特徴とする分解方法を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は前記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に、その実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
この出願の発明において、分解剤による分解に供される吸水性ポリマーとは、例えば、生理用品、紙おむつ等の衛生用品をはじめとして種々の分野で使用される水分を吸収することにより、湿潤または膨潤する高分子ポリマーのことを言う。
【0015】
このような吸水性ポリマーとしては、その種類や組成は特に限定されないが、例えば、アクリル酸塩架橋重合体、イソブチレン−マレイン酸塩架橋重合体、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体のけん化物架橋体、デンプン−アクリル酸塩グラフト共重合体等の親水性のビニルポリマーを構造中に含むものが挙げられ、なかでも、アクリル酸塩架橋重合体、イソブチレン−マレイン酸塩架橋重合体であるものが好適な対象として例示される。
【0016】
また、この吸水性ポリマーの形態(形状)としては、特に限定されず、例えば、粉末、粒状、シート状、繊維状、織布、不織布等のいかなるものであってもよい。
【0017】
そして、この出願の発明の吸水性ポリマーの分解剤は、酸化剤として過硫酸塩を含むものである。
【0018】
発明者は、吸水性ポリマーを効率よく分解できる分解剤について、鋭意、研究を重ねた結果、この酸化剤としての過硫酸塩とアルカリ化合物との混合水溶液が、過硫酸塩のみからなる水溶液に比べ、吸水性ポリマーの分解能が格段に優れた分解剤であることを見出し、このような知見に基づいてこの出願の発明を完成している。
【0019】
すなわち、まず、過硫酸塩を単独で(過ヨウ素酸塩やアルカリ化合物を含まずに)使用し、一度に多量の吸水性ポリマーを分解しようとした場合、例えば、水と吸水性ポリマーの重量比、すなわち、吸水倍率が30倍以下の場合、あるいは、それ以上の吸水倍率でも、過硫酸塩濃度が3%以上では、この水溶液に吸水性ポリマーを添加、混合し、加熱すると過硫酸塩の分解物と水との反応から生成するヒドロキシラジカルが、ポリアクリル酸主鎖の水素を引き抜き、主鎖にラジカルが生成し、隣接する吸水性ポリマー鎖間あるいは、一旦分解して溶解したポリマー鎖の間で架橋・ゲル化反応(副反応)が起こる。この基本的な反応機構は、放射線照射の場合と同じである(S.Zhu ら、Eur. Polym. J., 34巻,487(1998) )。これに対し、この出願の発明のように、過硫酸塩とアルカリ化合物の混合水溶液の場合には、吸水性ポリマーは分解して溶液に溶解した後においても、副反応である架橋・ゲル化が起こらず、よって、吸水性ポリマーの分解能に優れたものとなる。
【0020】
なお、前述した架橋・ゲル化反応は、水溶液のpHが4より低くなると、吸水性ポリマーの側鎖カルボキシル基の解離が抑制され、側鎖間のイオン反発が減少するため、ポリマー鎖間距離が接近し、結果として、分子鎖間でラジカルの再結合による架橋反応が分解反応より優先し、ゲル化する。過硫酸塩のみの水溶液では、分解反応の初期は、pHは6程度であり、分解反応が優先的に起こるが、時間とともに溶液のpHは徐々に低下し続けるため、一旦、吸水性ポリマーが分解し均一な水溶液となる場合もあるが、pH4以上の弱酸性領域でも、部分的にポリマーの分子鎖が接近した状態では、架橋反応が起こることがあるため、pHが6より低くなると均一溶液から透明なゲルが生成することもある。
【0021】
このような知見から、この出願の発明では、過硫酸塩による架橋・ゲル化が起こらないように、水溶液のpHを4〜14の範囲、より好ましくは、5〜14の範囲、さらに好ましくは6〜14の範囲の条件下で吸水性ポリマーの分解反応のみを行うことを好ましい実施の形態としている。
【0022】
また、分解反応では、水溶液中で過硫酸塩1分子が熱分解して2分子のラジカルが発生する条件下、すなわち、反応温度は40℃〜100℃の範囲が好ましく、50℃〜100℃の範囲がより好ましく、60℃〜100℃の範囲がさらに好ましい。
【0023】
過硫酸塩としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性の酸化剤が好ましく用いられる。
【0024】
一方、アルカリ化合物としては、水溶性であって、その水溶液中で一価の陽イオンと一価の陰イオンに解離してアルカリ性を示すものが好適に用いられる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウムなどのアルカリ金属酢酸塩、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウムなどのアルカリ金属シュウ酸塩、コハク酸−ナトリウムなどのアルカリ金属コハク酸塩、グリシン、アラニン、グルタミン酸などのアミノ酸のアルカリ金属塩、アンモニアが好ましい。なかでも、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウムを用いるのがより好ましい。
【0025】
分解剤水溶液中の過硫酸塩に対するアルカリ化合物のモル比は、吸水性ポリマーの分解過程において、反応水溶液のpHが少なくとも4以下にならない範囲であれば特に限定されるものではない。これを可能とする過硫酸塩に対するアルカリ化合物のモル比としては、0.1〜10であるのが好ましく、1〜5であるのがより好ましく、1.5〜3であるのがさらに好ましい。これにより、前述した副反応である架橋・ゲル化反応の抑制効果をより高めるとともに、広い範囲の吸水倍率において、吸水性ポリマーの分解が可能となる。
【0026】
このような分解剤は、例えば、固体、水溶液等として用いるのが好ましい。
【0027】
分解剤を固体として使用する場合には、例えば、吸水性ポリマーを水で膨潤させた後、この膨潤した吸水性ポリマーに分解剤である過硫酸塩とアルカリ化合物を添加するか、吸水性ポリマーと分解剤を混合した後、水を添加するようにすればよい。
【0028】
また、この場合、分解剤の形態(形状)としては、例えば、粉末、粒状、ペレト等のいかなるものでもよい。
【0029】
一方、分解剤を水溶液として用いる場合には、例えば、過硫酸塩とアルカリ化合物を水に溶解し、所定の濃度の水溶液を調製した後、この水溶液に吸水性ポリマーを添加するようにすればよい。
【0030】
分解剤を水溶液として用いる場合、酸化剤の水溶液中の濃度は、特に限定されないが、例えば、0.002〜10重量%であるのが好ましく、0.1〜8重量%であるのがより好ましく、0.5〜5重量%であるのがさらに好ましい。
【0031】
また、このような吸水性ポリマーの分解は、吸水性ポリマーの少なくとも一部を、含水させた状態で行うのが好ましい。すなわち、水または分解剤水溶液により湿潤または膨潤させた状態で行うのが好ましい。
【0032】
過硫酸塩を単独で用いた場合には、吸水性ポリマーの全部を膨潤させた状態でないと、吸水性ポリマーの分解は進行しない。また、十分膨潤させた状態でも、過硫酸塩を単独で用いた場合には、分解反応は完全には進行せず、微量の未分解粒状物が残存する。
【0033】
これに対して、この出願の発明の分解剤では、必ずしも、吸水性ポリマーは全部を水(分解剤水溶液)で膨潤させる必要はない。すなわち、吸水性ポリマーの少なくとも一部を、含水させた状態であれば、この部分から吸水性ポリマーの分解反応が進行し、徐々に分解領域(分解部位)が増大していく。そして、最終的には、吸水性ポリマー全体が分解されることになる。したがって、少量の分解剤でより多くの吸水性ポリマーを分解することができる。
【0034】
この含水量は、例えば、吸水性ポリマーの重量に対して、重量比で5〜1000倍であるのが好ましく、10〜500倍であるのがより好ましく、15〜200倍であるのがさらに好ましい。
【0035】
また、吸水性ポリマーは、酸化剤である過硫酸塩の重量に対して、例えば、重量比で0.2倍以上添加して分解するのが好ましく、0.5倍以上であるのがより好ましく、1.0倍以上であるのがさらに好ましい。これにより一度に分解(処理)できる吸水性ポリマーの量を増大することができる。すなわち、少量の分解剤で多量の吸水性ポリマーを分解することができる。そのため、吸水性ポリマーの分解後、分解溶液中の分解剤の残存量を低減することができ、分解溶液の廃棄に際して、環境汚染の低減の面からも有利である。
【0036】
環境保全の面からは、この出願の発明による過硫酸塩とアルカリ化合物を含む分解剤水溶液は、酸化剤である過硫酸塩は反応後、硫酸イオンとなり、アルカリ化合物によって中和され、例えば、硫酸ナトリウムや硫酸カリウムなどの状態となるので、分解反応終了後の水溶液は、中性ないしアルカリ性であり、安全である。また、分解生成物である水溶性ポリアクリル酸は、鉱業、織物、化粧品、製紙業、石油採掘、農業用地の改質、水の浄化等に広く利用されているポリマーであるので、環境汚染することはない。
【0037】
また、水酸化ナトリウムのような強アルカリ化合物を使用した場合、低濃度でも溶液はpH10ないし14の強いアルカリ性を示すが、炭酸水素ナトリウムのような弱アルカリ化合物を使用した場合、溶液はpH7ないし9の弱アルカリ性を示すので、分解物水溶液の廃棄処理等の面から、炭酸水素塩がより好ましい。
【0038】
さらに、この出願の発明による吸水性ポリマーの分解は、紙おむつ・生理用品の構成物であるプラスチック製カバーシート、不織布、セルロース粉末等の非分解性物質が共存していても、それらに影響されず、分解反応は100%進行する。すなわち、分解反応終了後は、カバーシート、不織布、セルロース粉末のみが、水溶液中に分散した状態となる。
【0039】
もちろん、この出願の発明は、これに限られることはなく、農業・園芸分野での土壌中の吸水性ポリマー、食品分野での青果物の鮮度保持剤としての吸水性ポリマー、土木・建築分野でのシーリング材に用いられる吸水性ポリマー等の分解にも応用性が高い。
【0040】
また、吸水性ポリマーを分解する時間(分解時間)としては、吸水性ポリマーの重量に対する水(分解剤水溶液)の重量比(吸水倍率)、酸化剤である過硫酸塩の濃度、アルカリ化合物濃度、温度等により適宜選択することができ、特に限定されないが、通常、10分間〜50時間であるのが好ましく、15分間〜30時間であるのがより好ましく、20分間〜24時間であるのがさらに好ましい。
【0041】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
【0042】
【実施例】
1.吸水性ポリマーの分解
(実施例1)
過硫酸カリウム0.3gと炭酸水素ナトリウム0.185g(過硫酸カリウムに対するモル比で2倍量)を蒸留水10gに溶解し、この水溶液に、アルカリ酸塩架橋重合体(吸水性ポリマー/粒状:花王株式会社製「メリーズ」に使用されているもの)0.064gを添加(吸水倍率156倍)して混合し、80℃で吸水性ポリマーの分解ならびに反応系の観察を行った。反応開始後20分で、すべての吸水性ポリマーは分解し、均一溶液となった。その後、長時間を経てもゲル化は全く起こらず、均一溶液であった。なお、堀場製作所D−21 pHメータで液相のpHを測定したところ、反応開始時はpH8.4、吸水性ポリマーが100%分解した20分後はpH8.5であり、長時間後もpHの低下はわずかであった。
(実施例2)
過硫酸カリウム0.6gと炭酸水素ナトリウム0.37g(過硫酸カリウムに対するモル比で2倍量)を蒸留水20gに溶解し、この溶液に、前記実施例1と同様の吸水性ポリマー0.2gを添加(吸水倍率100倍)、混合し、80℃で吸水性ポリマーの分解ならびに反応系の観察を行った。反応開始後15分で、すべての吸水性ポリマーは分解し、均一溶液となった。その後、長時間を経てもゲル化は全く起こらず、均一溶液であった。なお、液相のpHを測定したところ、反応開始時はpH7.7、吸水性ポリマーが100%分解した15分後はpH7.8であり、長時間後もpHの低下はわずかであった。
(実施例3)
過硫酸カリウム0.6gと水酸化ナトリウム0.18g(過硫酸カリウムに対するモル比で2倍量)を蒸留水20gに溶解し、この溶液に、前記実施例1と同様の吸水性ポリマー0.2gを添加(吸水倍率100倍)、混合し、80℃で吸水性ポリマーの分解ならびに反応系の観察を行った。反応開始後20分で、すべての吸水性ポリマーは分解し、均一溶液となった。その後、長時間を経てもゲル化は全く起こらず、均一溶液であった。なお、液相のpHを測定したところ、反応開始時はpH13.5、吸水性ポリマーが100%分解した20分後はpH12.7であり、その後、pHは徐々に低下したが、長時間後のpHは8と一定であった。
(実施例4)
過硫酸カリウム0.6gと炭酸水素ナトリウム0.6g(過硫酸カリウムに対するモル比で3.2倍量)を蒸留水20gに溶解し、この溶液に、前記実施例1と同様の吸水性ポリマー0.2gを添加(吸水倍率100倍)、混合し、80℃で吸水性ポリマーの分解ならびに反応系の観察を行った。反応開始後45分で、すべての吸水性ポリマーは分解し、均一溶液となった。その後、長時間を経てもゲル化は全く起こらず、均一溶液であった。なお、液相のpHを測定したところ、反応開始時はpH8.4、吸水性ポリマーが100%分解した45分後はpH8.5であり、長時間後もpHはほとんど変化がなかった。
(実施例5)
過硫酸カリウム0.6gと水酸化ナトリウム0.29g(過硫酸カリウムに対するモル比で3.3倍量)を蒸留水20gに溶解し、この溶液に、前記実施例1と同様の吸水性ポリマー0.2gを添加(吸水倍率100倍)、混合し、80℃で吸水性ポリマーの分解ならびに反応系の観察を行った。反応開始後15分で、すべての吸水性ポリマーは分解し、均一溶液となった。その後、長時間を経てもゲル化は全く起こらず、均一溶液であった。なお、液相のpHを測定したところ、反応開始時はpH13.9、吸水性ポリマーが100%分解した15分後はpH12.8であり、長時間後もpHはほとんど変化がなかった。
(実施例6)
過硫酸カリウム0.6gと水酸化ナトリウム0.06g(過硫酸カリウムに対するモル比で0.68倍量)を蒸留水20gに溶解し、この溶液に、前記実施例1と同様の吸水性ポリマー0.2gを添加(吸水倍率100倍)、混合し、80℃で吸水性ポリマーの分解ならびに反応系の観察を行った。反応開始後15分で、すべての吸水性ポリマーは分解し、均一溶液となった。その後、長時間を経てもゲル化は全く起こらず、均一溶液であった。なお、液相のpHを測定したところ、反応開始時はpH12.4、吸水性ポリマーが100%分解した15分後はpH12.2であり、その後、pHは徐々に低下し、長時間後のpHは約5であった。
(実施例7)
過硫酸カリウム0.3gと炭酸水素ナトリウム0.185g(過硫酸カリウムに対するモル比で2倍量)を蒸留水10gに溶解し、この溶液に、前記実施例1と同様の吸水性ポリマー0.67gを添加(吸水倍率15倍)し、80℃で吸水性ポリマーの分解ならびに反応系の観察を行った。反応開始後90分で、すべての吸水性ポリマーは分解し、均一溶液となった。その後、長時間を経てもゲル化は全く起こらず、均一溶液であった。なお、分解反応により、反応開始後15分で液相のpHの測定が可能となった。この時のpHは7.6で、吸水性ポリマーが100%分解した90分後はpH7.6であり、長時間後もpHの低下はわずかであった。
(実施例8)
過硫酸カリウム0.3gと水酸化ナトリウム0.06g(過硫酸カリウムに対するモル比で1.3倍量)を蒸留水10gに溶解し、この溶液に、前記実施例1と同様の吸水性ポリマー0.67gを添加(吸水倍率15倍)し、80℃で吸水性ポリマーの分解ならびに反応系の観察を行った。反応開始後720分で、すべての吸水性ポリマーは分解し、均一溶液となった。その後、長時間を経てもゲル化は全く起こらず、均一溶液であった。なお、反応開始後30分で、分解により液相が出現し、この液相のpHを測定したところ、pH7.9、吸水性ポリマーが100%分解した720分後のpHは約5であった。
(実施例9)
過硫酸カリウム0.3gと炭酸水素ナトリウム0.185g(過硫酸カリウムに対するモル比で2倍量)を蒸留水10gに溶解し、この溶液に、イソブチレン−マレイン酸塩架橋重合体(吸水性ポリマー/粒状:株式会社クラレ製「KI−GEL 201K」)0.064gを添加(吸水倍率15倍)、混合し、80℃で吸水性ポリマーの分解ならびに反応系の観察を行った。反応開始後30分で、すべての吸水性ポリマーは分解し、均一溶液となった。その後、長時間を経てもゲル化は全く起こらず、均一溶液であった。なお、液相のpHを測定したところ、反応開始時はpH9.2、吸水性ポリマーが100%分解した30分後はpH9.0であり、長時間後もpHの低下はわずかであった。
(実施例10)
過硫酸カリウム0.3gと炭酸水素ナトリウム0.185g(過硫酸カリウムに対するモル比で2倍量)を蒸留水10gに溶解し、この溶液に、前記実施例9と同様の吸水性ポリマー0.67gを添加(吸水倍率15倍)し、80℃で吸水性ポリマーの分解ならびに反応系の観察を行った。反応開始後30分で、すべての吸水性ポリマーは分解し、均一溶液となった。その後、長時間を経てもゲル化は全く起こらず、均一溶液であった。なお、分解反応により、反応開始後15分で液相のpHの測定が可能となった。この時のpHは8.7で、吸水性ポリマーが100%分解した30分後はpH8.6であり、長時間後もpHの低下はわずかであった。
(実施例11)
過硫酸カリウム0.3gと水酸化ナトリウム0.06g(過硫酸カリウムに対するモル比で1.3倍量)を蒸留水10gに溶解し、この溶液に、前記実施例9と同様の吸水性ポリマー0.67gを添加(吸水倍率15倍)し、80℃で吸水性ポリマーの分解ならびに反応系の観察を行った。反応開始後30分で、すべての吸水性ポリマーは分解し、均一溶液となった。その後、長時間を経てもゲル化は全く起こらず、均一溶液であった。なお、反応開始後15分で、分解により液相が出現し、この液相のpHを測定したところ、pH10.0、吸水性ポリマーが100%分解した30分後のpHは9.7であった。長時間後もpHの低下はわずかであった。
(比較例1)
過硫酸カリウム0.3gを蒸留水10gに溶解し、この溶液に、前記実施例1と同様の吸水性ポリマー0.064gを添加(吸水倍率156倍)、混合し、80℃で吸水性ポリマーの分解ならびに反応系の観察を行った。反応開始後15分で、一部の吸水性ポリマーの分解により液相の粘性は低下したが、吸水性ポリマー粒子は残存したままであった。60分後、吸水性ポリマー粒子のゲル化が起こった。なお、液相のpHを測定したところ、反応開始時はpH6.3、ゲル化が起こった60分後はpH5.7であった。
(比較例2)
過硫酸カリウム0.6gを蒸留水20gに溶解し、この溶液に、前記実施例1と同様の吸水性ポリマー0.2gを添加(吸水倍率100倍)、混合し、80℃で吸水性ポリマーの分解ならびに反応系の観察を行った。反応開始後15分で、すべての吸水性ポリマーは分解し、均一溶液となった。しかし、45分後、再ゲル化が始まり、90分後には、ゲル相と液相が分離した。その後、ゲルが消失することはなかった。なお、液相のpHを測定したところ、反応開始時はpH6.1で、再ゲル化が起こった45分後はpH5.6であった。
(比較例3)
過硫酸カリウム0.3gを蒸留水10gに溶解し、この溶液に、前記実施例1と同様の吸水性ポリマー0.67gを添加(吸水倍率15倍)し、80℃で吸水性ポリマーの分解ならびに反応系の観察を行った。初期は、上記水溶液で吸水性ポリマー全体が湿潤した状態で、時間の経過とともに溶解することなく、15分後に系がゲル化した。なお、液相が生成しなかったため、pHを測定することはできなかった。
(比較例4)
過硫酸カリウム0.3gを蒸留水10gに溶解し、この溶液に、前記実施例9と同様の吸水性ポリマー0.064gを添加(吸水倍率156倍)、混合し、80℃で吸水性ポリマーの分解ならびに反応系の観察を行った。反応開始後30分で、すべての吸水性ポリマーは分解し、均一溶液となった。しかし、60分後、再びゲル化が起り、120分後には、ゲル化物が沈殿し、その後、ゲルは分解・消失することはなかった。なお、液相のpHを測定したところ、反応開始時はpH7.2、ゲル化が起こった60分後はpH3.3まで低下した。
2.評 価
前記の実施例1〜11においては、所定時間の経過後、未分解の吸水性ポリマーは、ろ紙によりろ過した後、水洗し、80℃で24時間乾燥し、乾燥物の重量を測定し、測定値に基づき吸水性ポリマーの分解率を求めた。また、比較例1〜5においては、一旦分解し、溶解した吸水性ポリマーであっても、所定時間の経過後には、再ゲル化が起ったり、部分的に吸水性ポリマーが分解し、他の吸水性ポリマー粒子が残存したままゲル化したことから、この出願の発明の目的は、吸水性ポリマーを完全に分解し、安定な均一溶液とする分解剤と分解方法の開発にあることを考慮し、実施例1〜11のような方法での分解率を求めることは行わなかった。
【0043】
結果を表1に示した。比較例1〜5の分解率の欄には、分解率の値の代わりに再ゲル化、あるいはゲル化と記載し、分解が100%進行しなかったことを示した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、実施例1〜11の各分解剤は、いずれも吸水性ポリマーの分解能に優れるものであった。これに対して、比較例1〜5の各分解剤は、いずれも吸水性ポリマーの分解能に劣るものであった。
【0046】
また、例えば、吸水倍率が100倍の比較例2と比較例5において、わずかな量の炭酸水素ナトリウムを過硫酸カリウムに加えることにより、再ゲル化が起こるまでの時間が長くなることがわかり、さらに、実施例2のように、過硫酸カリウムに対する炭酸水素ナトリウムのモル比が2では、再ゲル化反応が完全に抑制され、分解反応のみが起こることも明らかになった。
【0047】
【発明の効果】
以上詳しく述べたように、この出願の発明によれば汎用性が高く、しかも分解能に優れる吸水性ポリマーの分解剤とこれを用いた高効率での分解方法を提供することができる。
【0048】
特に、過硫酸塩とアルカリ化合物を含む場合には、過硫酸塩の熱分解に伴って引き起こされる吸水性ポリマーの分子鎖上の生成するラジカルの分子鎖間での架橋反応、すなわち、ゲル化反応をアルカリ化合物が大きく抑制し、分解反応を優先的にするという相乗効果が発現し、より一層優れた分解能を発揮し、容易かつ安価に製造でき有利である。
【0049】
このように、この出願の発明の分解剤は、分解能に優れるので、少量でより多くの吸水性ポリマーを分解することができ、環境保全の面から有利である。
Claims (9)
- 吸水性ポリマーを分解する分解剤であって、アルカリ化合物の少なくとも1種と、酸化剤である過硫酸塩化合物の少なくとも1種を含むことを特徴とする吸水性ポリマーの分解剤。
- 前記アルカリ化合物が、水溶性であって、その水溶液中で一価の陽イオンと一価の陰イオンに解離してアルカリ性を示すことを特徴とする請求項1に記載の分解剤。
- 前記酸化剤の濃度が0.002〜10重量%である水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の分解剤。
- 前記アルカリ化合物が前記酸化剤に対して、モル比で、0.1〜10倍量含まれていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の分解剤。
- 吸水性ポリマーもしくはこれを含有する吸水用材における吸水性ポリマーの分解方法であって、前記吸水性ポリマーに対して、請求項1ないし4のいずれかに記載の分解剤を加え、水の存在下に前記吸水性ポリマーを分解処理することを特徴とする吸水性ポリマーの分解方法。
- 分解剤の水溶液のpHを4〜14の範囲とすることを特徴とする請求項5に記載の分解方法。
- 処理温度を40℃〜100℃の範囲とすることを特徴とする請求項5または6に記載の分解方法。
- 吸水性ポリマーの少くとも一部を含水させた状態で分解処理することを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の分解方法。
- 含水量は、吸水性ポリマーの重量に対しての重量比で、5〜1000倍であることを特徴とする請求項8に記載の分解方法。
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