JP3919090B2 - 吸気装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンに空気を供給する吸気装置、より詳しくは吸気音を抑制できる吸気装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
吸気装置の概略図を図13に示す。図に示すように、吸気装置100は、吸気ダクト101とレゾネータ110とエアクリーナ103とエアクリーナホース104とスロットルボディ105とインテークマニホールド106とを備える。吸気装置100においては、吸気ダクト101の吸気口102から漏れる騒音(以下、「吸気音」と称す。)が問題となる。
【0003】
図14に、レゾネータ110および絞り部111を配置しない場合の、吸気音の周波数分布を示す。図に示すように、吸気音は複数の共鳴ピークを有する。この複数の共鳴ピークのうち、例えば160Hz付近に位置する共鳴ピークAは、吸気ダクト101の一次共鳴モードに起因するものである。また、320Hz付近に位置する共鳴ピークBは、吸気ダクト101の二次共鳴モードに起因するものである。また、260Hz付近に位置する共鳴ピークCは、エアクリーナホース104の一次共鳴モードに起因するものである。このように、150Hz程度以上の共鳴ピークは、吸気装置100を構成する各々の部材に起因するものである。したがって、各々の部材の通路長を変えることにより、比較的簡単に調整することができる。このため、中高周波域に位置する共鳴ピークを低くするためのレゾネータ110は、容易に小型化することができる。
【0004】
しかしながら、いわゆる低周波こもり音と呼ばれる共鳴ピークDは、吸気装置100を構成する各々の部材に起因するものではない。共鳴ピークDは、吸気口102からインテークマニホールド106に至る吸気通路107全長に起因するものである。吸気装置100は、吸気口102を開口端とし、インテークマニホールド106と燃焼室109とを仕切る吸気バルブ(図略)もしくはピストン上面を閉口端とする片側閉口端の管路を呈している。低周波域の共鳴ピークDは、吸気通路107全長に起因するものである。その共鳴ピークDの周波数とエンジン側から伝達される吸気脈動とが一致すると、吸気口102から放射される吸気音は大きくなる。したがって、共鳴ピークDを低くすること、すなわち低周波こもり音を抑制することは困難である。
【0005】
そこで、低周波こもり音を抑制するため、吸気装置100の吸気ダクト101やエアクリーナ103などには、容積2×10-3〜10-2m3程度の、比較的大容積のレゾネータ110が配置されている。
【0006】
また、この大容積のレゾネータ110と併せて、吸気ダクト101の吸気口102付近には、音響質量を大きくして吸気音を低減させるために絞り部111が配置される場合もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したように、低周波こもり音を抑制するためのレゾネータ110は、比較的容積が大きい。このため、吸気装置100全体も大型化してしまう。そして、吸気装置100以外の他の装置の搭載スペースが狭小化してしまう。
【0008】
また、絞り部111により吸気通路面積を絞ると、燃焼室109に供給される空気流量が小さくなる。このため、特にエンジン高速回転時において、所望の空気流量が得られず、エンジン出力が低下してしまう。
【0009】
本発明の吸気装置は、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、小型化が可能で、所望のエンジン出力を確保でき、かつ低周波こもり音を抑制できる吸気装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(1)上記課題を解決するため、本発明の吸気装置は、外部に開口する吸気口と、該吸気口とエンジンの燃焼室とを連通する吸気通路と、を持つ吸気装置であって、該吸気口から漏れる低周波こもり音を抑制するため、該吸気通路を区画する壁部のうち、該吸気通路全長における定在波の低次共鳴モードの腹に相当する部位もしくは該吸気通路の中で低周波域の音圧レベルの高い部位には開口が開設され、該開口は通気性部材により塞がれており、該通気性部材の外方に離間して、該通気性部材を透過する透過音を遮る遮音壁を持ち、該通気性部材と該遮音壁との間には外部に開放された空間が形成されていることを特徴とする。
【0011】
つまり、本発明の吸気装置は、壁部のうち定在波の共鳴モードの腹に相当する部位、もしくは吸気通路の中で低周波域の音圧レベルの高い部位に開口を開設するものである。そして、この開口を通気性部材により塞ぐものである。
【0012】
通気性部材を配置すると、低周波こもり音の一部は、通気性部材を介して、吸気装置の内部から外部に放出される。このため、定在波の発生が抑制される。また、通気性部材は多数の細孔を有している。この細孔に入り込んだ音波のエネルギは、空気と細孔壁との粘性摩擦などにより、熱エネルギに変換されて透過損失により効果的に吸気通路から通気性部材の外方に漏れる騒音(以下、「透過音」と称す。)を低減することができる。これらの作用により、本発明の吸気装置によると、吸気口から漏れる低周波こもり音を抑制することができる。
【0013】
また、本発明の吸気装置によると、大容積レゾネータは不要である。このため、吸気装置全体を小型化することができる。また、レゾネータを配置する場合、反共鳴により、抑制したい低周波こもり音近辺の周波数を持つ騒音が、却って大きくなってしまう場合がある。したがって、レゾネータの容積などのチューニングが必要となる。これに対し、本発明の吸気装置は、通気性部材により低周波こもり音を抑制するものである。このため、反共鳴が起こるおそれがない。したがって、本発明の吸気装置によるとチューニングが不要である。
【0014】
また、本発明の吸気装置によると、吸気ダクトに絞り部を配置しなくてもよい。このため、燃焼室に供給される空気流量が小さくなることもない。したがって、所望のエンジン出力を簡単に確保することができる。
【0015】
また、本発明の吸気装置は、通気性部材の外方に離間して、通気性部材を透過する透過音を遮る遮音壁を備えている。即ち、遮音壁は通気性部材の外方に離間しているため通気性部材と遮音壁の間は周壁が存在せず、通気性部材と遮音壁との間には外部に開放された空間が形成されている。吸気音を小さくするためには、透過音を大きくすればよいが、吸気音のみならず透過音も騒音の一因となる。
【0016】
この点、本発明の吸気装置は、通気性部材の外方に離間して遮音壁を備えており、通気性部材と遮音壁との間には外部に開放された空間が形成されている。この遮音壁は、通気性部材を透過してきた透過音がさらに外方に漏れるのを抑制する。したがって、本発明の吸気装置によると、吸気音のみならず透過音をも抑制することができる。
【0017】
(2)前記低周波こもり音の共鳴周波数は、200Hz以下である構成とする方がよい。この周波数域に共鳴ピークがある低周波こもり音は、特に耳障りである。本構成によると、この耳障りな低周波こもり音を集中的に抑制することができる。
【0018】
(3)吸気通路全長における定在波の共鳴モードの腹に相当する部位もしくは吸気通路の中で低周波域の音圧レベルの高い部位がエアクリーナ部にある場合は、前記開口は、エアクリーナに開設されている構成とする方がよい。
【0019】
つまり、本構成は、通気性部材および遮音壁をエアクリーナに配置するものである。エアクリーナの壁部は、吸気装置を形成する他の部材の壁部と比較して、面構成が平面である場合が多い。したがって、本構成によると、比較的簡単に開口を開設することができる。また、比較的簡単に通気性部材を配置することができ、比較的安価に製造できる。
【0020】
好ましくは、エアクリーナ部に吸気ダクト側から水やダストが侵入してきた際通気性部材が目詰まりしてしまい内部から外部へ吸気脈動圧力を放出しづらくなり、所定の吸気音低減効果が得られなくなるため、エアクリーナの底壁部以外の壁部に開口を設け、そこに通気性部材を配設するとよい。
(4)吸気通路全長における定在波の共鳴モードの腹に相当する部位もしくは吸気通路の中で低周波域の音圧レベルの高い部位がエアクリーナのクリーン側にある場合は、前記開口は、前記エアクリーナのクリーン側に開設されている構成とする方がよい。
【0021】
エアクリーナは、エアフィルタにより、吸気口に連通する上流側すなわちダーティ側と、燃焼室に連通する下流側すなわちクリーン側とに分断されている。そして、吸気はエアフィルタを通過することにより濾過される。本構成は、通気性部材および遮音壁をクリーン側に配置するものである。本構成によると、吸気中の塵埃により通気性部材が目詰まりするおそれが小さくなる。
【0022】
(5)吸気通路全長における定在波の共鳴モードの腹に相当する部位もしくは吸気通路の中で低周波域の音圧レベルの高い部位がエアクリーナのダーティ側にある場合は、前記開口は、前記エアクリーナのダーティ側に開設されている構成としてもよい。
【0023】
(6)吸気通路全長における定在波の共鳴モードの腹に相当する部位もしくは吸気通路の中で低周波域の音圧レベルの高い部位がエアクリーナホース部にある場合は、前記開口は、前記エアクリーナとインテークマニホールドとを連通するエアクリーナホースの少なくとも一部に開設されている構成とする方がよい。
【0024】
本構成は、エアクリーナホースに通気性部材および遮音壁を配置するものである。エアクリーナホースは、エアクリーナの下流側に配置されている。このため、本構成によると、吸気中の塵埃により通気性部材が目詰まりするおそれが小さくなる。
【0025】
(7)吸気通路全長における定在波の共鳴モードの腹に相当する部位もしくは吸気通路の中で低周波域の音圧レベルの高い部位が吸気ダクトにある場合は、前記開口は、吸気ダクトの一部に開設されている構成とする方がよい。
【0026】
(8)好ましくは、前記通気性部材は、撥水性を有する構成とする方がよい。本構成によると、通気性部材の耐水性が向上する。このため、通気性部材の使用寿命が長くなる。
【0027】
(9)好ましくは、前記遮音壁は、前記通気性部材からの透過音により面振動が生じないように遮音壁用制振部材を持つ構成とする方がよい。透過音が遮音壁に達すると、遮音壁自体が透過音により面振動するおそれがある。そして、この面振動により、遮音壁自体が音源となる新たな騒音が発生するおそれがある。
【0028】
この点、本構成の遮音壁は、遮音壁用制振部材を備えている。したがって、本構成によると、遮音壁が面振動するおそれが小さい。このため、遮音壁自体が新たな騒音を発しにくい。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の吸気装置の実施の形態について説明する。
【0033】
(1)参考形態
まず、参考形態の吸気装置の構成について説明する。図1に、参考形態の吸気装置の概略図を示す。なお、この参考形態は本発明の吸気装置から遮音壁を除いたものである。図に示すように、吸気装置1は、吸気ダクト3と中高周波用レゾネータ4とエアクリーナ5とエアクリーナホース6とスロットルボディ7とインテークマニホールド2と通気性部材8とを備える。そして、これらの部材の内部には、吸気口30からインテークマニホールド2に至る吸気通路10が区画されている。
【0034】
吸気ダクト3は、樹脂製であって円筒状を呈している。吸気ダクト3は、上流端に開設された吸気口30により、自動車の外部と連通している。中高周波用レゾネータ4は、樹脂製であって箱状を呈している。中高周波用レゾネータ4は、吸気ダクト3の中程に、分岐して接続されている。中高周波用レゾネータ4の容積、形状などは、吸気音の中高周波域の共鳴ピークを下げられるようにチューニングされている。
【0035】
エアクリーナ5は、ダーティ側ケース50とクリーン側ケース51とエレメント52とを備える。図2に、エアクリーナ5の分解図を示す。図に示すように、ダーティ側ケース50は、樹脂製であって上方に開口する箱状を呈している。ダーティ側ケース50の側壁からは、ダクト接続筒500が突設されている。ダクト接続筒500は、図1に示す吸気ダクト3の下流端に接続されている。
【0036】
クリーン側ケース51は、樹脂製であって下方に開口する箱状を呈している。クリーン側ケース51は、開口が伏せられた状態で、ダーティ側ケース50の上方に配置されている。クリーン側ケース51の側壁からは、ホース接続筒510が突設されている。また、クリーン側ケース51の側壁内面および上底壁内面には、内面に沿うコ字状の補強リブ53が、複数立設されている。また、クリーン側ケース51の上底壁には、長方形状の開口80が開設されている。なお、開口80を、クリーン側ケース51の上底壁に開設した理由は、予め行ったシミュレーション解析により、エアクリーナ5および吸気ダクト3の下流端付近に、片側開口端での定在波の共鳴二次モードの腹が位置することが判明したからである。クリーン側ケース51の上底壁は、本発明の壁部に含まれる。開口80からは、補強リブ53が縞状に表出している。
【0037】
エレメント52は、PET不織布をひだ折り加工した長方形板状を呈している。エレメント52は、ダーティ側ケース50の開口縁とクリーン側ケース51の開口縁との間に挟持固定されている。そして、エレメント52は、ダーティ側ケース50とクリーン側ケース51とにより形成される閉空間を上下二室に仕切っている。
【0038】
通気性部材8は、PET不織布製であって長方形板状を呈している。通気性部材8は織布製であってもよくPP不織布製であってもよく、通気性を有する多孔質部材であればよい。通気性部材8は、前記補強リブ53に下方から支持された状態で、前記開口80を塞いでいる。通気性部材8は、例えばインサート成形や溶着などの公知の手段により開口80周辺および補強リブ53に固定されている。
【0039】
図1に戻って、エアクリーナホース6は、ゴム製もしくは樹脂製であって蛇腹筒状を呈している。エアクリーナホース6の上流端は、図2に示す樹脂製のホース接続筒510に接続されている。エアクリーナホース6の下流端には、筒状のスロットルボディ7の上流端が接続されている。スロットルボディ7の下流端には、燃焼室に分岐接続されたインテークマニホールド2が接続されている。外部から吸入された空気は、吸気装置1内に区画された吸気通路10を、吸気ダクト3→ダーティ側ケース50→エレメント52→クリーン側ケース51→エアクリーナホース6→スロットルボディ7→インテークマニホールド2の順に通過し、燃焼室20に流入する。
【0040】
次に、参考形態の吸気装置1の効果について説明する。図3に、中高周波用レゾネータ4および補強リブ53を配置しない場合の、吸気音の周波数分布を示す。なお、この周波数分布は、インテークマニホールド2下流側に配置したスピーカからホワイトノイズを発生させ、吸気口30上流側に配置したマイクロホンにより吸気音を採取することにより測定した。図中、実線は図14に示した通気性部材を持たない場合の周波数分布である。また、図中、点線は肉厚t=1mmの通気性部材を持つ場合の周波数分布である。また、図中、一点鎖線は肉厚t=2mmの通気性部材を持つ場合の周波数分布である。通気性部材については、PET不織布原反面重量840g/m2、PET不織布原反板厚(熱間プレス前)5mmのものを、熱間プレス成形にて板厚を変えることにより、PET不織布からの通気量を変えることにしている。
【0041】
図に示すように、通気性部材を配置すると、低周波こもり音の共鳴ピークEは低くなっている。具体的には、t=1mmの場合は約3dB、t=2mmの場合は約10dB、それぞれ共鳴ピークEが低くなっている。レゾネータによる共鳴ピーク低下効果が5dBから10dB程度であることに鑑みれば、通気性部材8はレゾネータとほぼ同等の共鳴ピーク低下効果を有することが判る。また、t=1mmの場合よりもt=2mmの場合の方が、共鳴ピークEの下がり幅が大きいことから、通気性部材の肉厚が厚い方が通気性が高く、より共鳴ピーク低下効果が大きいことが判る。また、特に30Hz以上150Hz以下の範囲に低周波域において、共鳴ピーク低下効果が大きいことが判る。
【0042】
参考形態の吸気装置1によると、低周波用のレゾネータは不要である。このため、吸気装置全体を小型化することができる。また、参考形態の吸気装置1の通気性部材8によると、反共鳴が起こるおそれがない。したがって、より簡単に低周波こもり音を抑制することができる。また、参考形態の吸気装置1によると、吸気ダクト3に絞り部を配置しなくても低周波こもり音を効果的に抑制できる。このため、所望のエンジン出力を簡単に確保することができる。
【0043】
また、参考形態の吸気装置1は、制振部材として補強リブ53を備えている。このため、通気性部材において空気の透過する面積が大きくても、通気性部材が面振動するおそれが小さい。上記補強リブ53は、クリーン側ケース51つまりエアクリーナケースと同材質であってもよく、エアクリーナケースを成形の際同時に成形してもよく、通気性部材8をエアクリーナケース成形時にインサート成形しエアクリーナケースと通気性部材8とを一体化するとともに通気性部材8と補強リブ53とを同時に一体化させてもよい。また、参考形態の吸気装置1の通気性部材8は、エアクリーナケースのクリーン側に配置されている。このため、通気性部材8が吸気中の塵埃により目詰まりするおそれが小さい。
【0044】
(2)第一実施形態
本実施形態と参考形態との相違点は、通気性部材の外方に遮音壁が配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0045】
まず、本実施形態の吸気装置の構成上の相違点について説明する。図4に、本実施形態の吸気装置のエアクリーナの一部分解図を示す。なお、図2と対応する部位については同じ記号で示す。図に示すように、遮音壁81は、樹脂製であって長方形板状を呈している。遮音壁81の四隅には、ピン孔810が穿設されている。一方、クリーン側ケース51の上底壁外面の四隅からは、ピン孔810に対向して、ピン82が立設されている。ピン82には、樹脂製であって円筒状のスペーサ83が環装されている。そして、ピン82は、円筒状のスペーサ83を介して、ピン孔810に挿入係止されている。このスペーサ83により遮音壁81は通気性部材8より外方に所定の離間幅だけ離れてクリーン側ケース51に固定されている。従って、通気性部材8と遮音壁81との間の空間は外気に開放されている。
【0046】
次に、本実施形態の吸気装置の参考形態とは異なる効果について説明する。図5に、中高周波用レゾネータ4を配置しない場合の、吸気音の周波数分布を示す。図中、実線は図14に示した通気性部材を持たない場合の周波数分布である。また、図中、点線は肉厚t=2mmの通気性部材のみを持ち、遮音壁を持たない場合の周波数分布である。また、図中、一点鎖線は肉厚t=2mmの通気性部材を持ち、かつ通気性部材から離間幅L=1mmだけ離れて遮音壁が配置されている場合の周波数分布である。また、図中、二点鎖線は肉厚t=2mmの通気性部材を持ち、かつ通気性部材から離間幅L=10mmだけ離れて遮音壁が配置されている場合の周波数分布である。
【0047】
図に示すように、L=1mmの場合は、通気性部材のみを持ち遮音壁を持たない場合と比較して、低周波こもり音の共鳴ピークEは高くなっている。また、L=10mmの場合は、通気性部材のみを持ち遮音壁を持たない場合と比較して、低周波こもり音の共鳴ピークEはほぼ同じ高さとなっている。このことから、離間幅Lが大きいほど、より吸気音低下効果は大きいことが判る。
【0048】
図6に、中高周波用レゾネータ4を配置しない場合の、透過音の周波数分布を示す。なお、透過音は、遮音壁81の外方にマイクロホンを配置することにより採取した。図中、実線は通気性部材を持たない場合の透過音の周波数分布である。また、図中、点線は肉厚t=2mmの通気性部材のみを持ち、遮音壁を持たない場合の周波数分布である。また、図中、一点鎖線は肉厚t=2mmの通気性部材を持ち、かつ通気性部材から離間幅L=1mmだけ離れて遮音壁が配置されている場合の周波数分布である。また、図中、二点鎖線は肉厚t=2mmの通気性部材を持ち、かつ通気性部材から離間幅L=10mmだけ離れて遮音壁が配置されている場合の周波数分布である。
【0049】
図に示すように、L=1mmの場合は、通気性部材のみを持ち遮音壁を持たない場合と比較して、約5dBほど低周波こもり音の共鳴ピークFは低くなっている。また、L=10mmの場合も、通気性部材のみを持ち遮音壁を持たない場合と比較して、約5dBほど低周波こもり音の共鳴ピークFは低くなっている。ただし、周波数分布全域を見るとL=1mmの場合の方が、L=10mmの場合よりも、各共鳴ピークは低くなっている。このことから、離間幅Lが小さいほど、より透過音低下効果は大きいことが判る。
【0050】
図5および図6から、遮音壁81を配置すると、遮音壁81を配置せず通気性部材8のみを配置した場合と比較して、ほぼ同等の吸気音低下効果が得られることが判る。また、遮音壁81を配置すると、遮音壁81を配置せず通気性部材8のみを配置した場合と比較して、大きな透過音低下効果が得られることが判る。また、離間幅Lを変えることにより、吸気音と透過音とのバランスを採ることができることが判る。
【0051】
したがって、本実施形態の吸気装置1によると、吸気音のみならず透過音をも抑制することができる。また、離間幅Lを変えることにより、吸気音と透過音とのバランスを最適化することができる。すなわち、離間幅Lは、例えばエンジンルームの遮音性や通気性部材の目詰まり防止効果などを考慮して、適切な値に設定すればよい。また、遮音壁81自体がエアクリーナケースに配設する通気性部材8よりも通気性の低い通気性部材であってもよい。
【0052】
(3)第二実施形態
本実施形態と第一実施形態との相違点は、通気性部材および遮音壁がダーティ側ケースに配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0053】
まず、本実施形態の吸気装置の構成上の相違点について説明する。図7に、本実施形態の吸気装置のエアクリーナの分解図を示す。なお、図4と対応する部位については同じ記号で示す。図に示すように、ダーティ側ケース50の側壁には、長方形状の開口80が開設されている。通気性部材8は、この開口80を塞いでいる。また、遮音壁81は通気性部材8の外方に配置されている。
【0054】
次に、本実施形態の吸気装置の効果について説明する。図8に、中高周波用レゾネータ4を配置しない場合の、吸気音の周波数分布を示す。図中、実線は図14に示した通気性部材を持たない場合の周波数分布である。また、図中、点線は肉厚t=1mmの通気性部材を持つ場合の周波数分布である。また、図中、一点鎖線は肉厚t=2mmの通気性部材を持つ場合の周波数分布である。
【0055】
図に示すように、通気性部材を配置すると、低周波こもり音の共鳴ピークEは低くなっている。具体的には、t=1mmの場合は約5dB、t=2mmの場合は約10dB、それぞれ共鳴ピークEが低くなっている。このことから、通気性部材8はレゾネータとほぼ同等の共鳴ピーク低下効果を有することが判る。また、t=1mmの場合よりもt=2mmの場合の方が、共鳴ピークEの下がり幅が大きいことから、通気性部材の肉厚が厚い場合すなわち通気性部材の通気性が高い場合には、より共鳴ピーク低下効果が大きいことが判る。また、特に30Hz以上150Hz以下の範囲に低周波域において、共鳴ピーク低下効果が大きいことが判る。本実施形態の吸気装置1の場合も、低周波こもり音を抑制することができる。
【0056】
(4)第三実施形態
本実施形態と第一実施形態との相違点は、通気性部材および遮音壁が吸気ダクト下流端付近に配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0057】
まず、本実施形態の吸気装置の構成上の相違点について説明する。図9に、本実施形態の吸気装置の吸気ダクトおよびエアクリーナの分解図を示す。なお、図4と対応する部位については同じ記号で示す。図に示すように、吸気ダクト3の下流端付近の側周壁には、長方形状の開口80が開設されている。通気性部材8は、この開口80を塞いでいる。また、遮音壁81は通気性部材8の外方に配置されている。
【0058】
次に、本実施形態の吸気装置の効果について説明する。図10に、中高周波用レゾネータ4を配置しない場合の、吸気音の周波数分布を示す。図中、実線は図14に示した通気性部材を持たない場合の周波数分布である。また、図中、点線は肉厚t=1mmの通気性部材を持つ場合の周波数分布である。また、図中、一点鎖線は肉厚t=2mmの通気性部材を持つ場合の周波数分布である。
【0059】
図に示すように、通気性部材を配置すると、低周波こもり音の共鳴ピークEは低くなることが判る。また、通気性部材の肉厚が厚い場合すなわち通気性部材の通気性が高い場合には、より共鳴ピーク低下効果が大きいことが判る。また、特に30Hz以上150Hz以下の範囲に低周波域において、共鳴ピーク低下効果が大きいことが判る。本実施形態の吸気装置1の場合も、低周波こもり音を抑制することができる。
【0060】
(5)第四実施形態
本実施形態と第一実施形態との相違点は、遮音壁がカップ状を呈している点である。また、遮音壁が遮音壁用制振リブを備えている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0061】
図11に本実施形態の吸気装置のエアクリーナの断面図を示す。なお、図4と対応する部位については同じ記号で示す。図に示すように、遮音壁81は、クリーン側ケース51方向に開口するカップ状を呈している。すなわち、遮音壁81は、通気性部材8をちょうど包み込むように配置されている。また、遮音壁81の上底壁下面からは、遮音壁用制振リブ811が立設されている。遮音壁用制振リブ811は、本発明の遮音壁用制振部材に含まれる。
【0062】
本実施形態によると、遮音壁81がカップ状を呈している。このため、遮音性が高くなる。また、遮音壁81が遮音壁用制振リブ811を備えている。このため、遮音壁81自体が振動し騒音を発生するおそれが小さい。
【0063】
(6)第五実施形態
本実施形態と第四実施形態との相違点は、遮音壁用制振リブの代わりに、遮音壁のカップ内面に不織布層が配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0064】
図12に本実施形態の吸気装置のエアクリーナの断面図を示す。なお、図11と対応する部位については同じ記号で示す。図に示すように、遮音壁81のカップ内面には、PET不織布製の不織布層812が積層されている。
【0065】
本実施形態によると、不織布層812により、通気性部材8から漏れる透過音を低減させることができる。このため、透過音低減効果が高い。
【0066】
(7)その他
以上、本発明の吸気装置の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することもできる。
【0067】
例えば、上記実施形態においては、エアクリーナまたは吸気ダクト下流端付近に通気性部材を配置した。しかしながら、他の部材が定在波の共鳴モードの腹に相当する場合は、例えばエアクリーナホースなどの他の部材に通気性部材を配置してもよい。
【0068】
また、上記各実施形態においては、エアクリーナまたは吸気ダクト下流端付近に、それぞれ単一の通気性部材を配置した。しかしながら、複数の通気性部材を組み合わせて配置してもよい。
【0069】
また、上記実施形態においては、PET不織布製の通気性部材を配置した。しかしながら、例えばPP不織布製、濾紙製、あるいはポリウレタン発泡体やポリエチレン発泡体やポリ塩化ビニル発泡体などの発泡樹脂製の通気性部材を配置してもよい。また、上記第二実施形態において、エアクリーナをエンジンのシリンダヘッド上面に搭載すると、シリンダヘッド上壁を遮音壁として利用することができる。こうすると、部品点数が少なくなる。
【0070】
【発明の効果】
本発明によると、小型化が可能で、所望のエンジン出力を確保でき、かつ低周波こもり音を抑制できる吸気装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考形態の吸気装置の概略図である。
【図2】 参考形態の吸気装置のエアクリーナの分解図である。
【図3】 参考形態の吸気装置の吸気音の周波数分布を示すグラフである。
【図4】 第一実施形態の吸気装置のエアクリーナの一部分解図である。
【図5】 第一実施形態の吸気装置の吸気音の周波数分布を示すグラフである。
【図6】 第一実施形態の吸気装置の透過音の周波数分布を示すグラフである。
【図7】 第二実施形態の吸気装置のエアクリーナの分解図である。
【図8】 第二実施形態の吸気装置の吸気音の周波数分布を示すグラフである。
【図9】 第三実施形態の吸気装置の吸気ダクトおよびエアクリーナの分解図である。
【図10】 第三実施形態の吸気装置の吸気音の周波数分布を示すグラフである。
【図11】 第四実施形態の吸気装置のエアクリーナの断面図である。
【図12】 第五実施形態の吸気装置のエアクリーナの断面図である。
【図13】 従来の吸気装置の概略図である。
【図14】 従来の吸気装置の吸気音の周波数分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1:吸気装置、10:吸気通路、2:インテークマニホールド、20:燃焼室、3:吸気ダクト、30:吸気口、4:中高周波用レゾネータ、5:エアクリーナ、50:ダーティ側ケース、500:ダクト接続筒、51:クリーン側ケース、510:ホース接続筒、52:エレメント、53:補強リブ(制振部材)、6:エアクリーナホース、7:スロットルボディ、8:通気性部材、80:開口、81:遮音壁、810:ピン孔、811:遮音壁用制振リブ(遮音壁用制振部材)、812:不織布層、82:ピン、83:スペーサ、E:共鳴ピーク、F:共鳴ピーク。
Claims (9)
- 外部に開口する吸気口と、該吸気口とエンジンの燃焼室とを連通する吸気通路と、を持つ吸気装置であって、
該吸気口から漏れる低周波こもり音を抑制するため、該吸気通路を区画する壁部のうち、該吸気通路全長における定在波の共鳴モードの腹に相当する部位もしくは該吸気通路の中で低周波域の音圧レベルの高い部位には開口が開設され、該開口は通気性部材により塞がれており、該通気性部材の外方に離間して、該通気性部材を透過する透過音を遮る遮音壁を持ち、該通気性部材と該遮音壁との間には外部に開放された空間が形成されていることを特徴とする吸気装置。 - 前記低周波こもり音の共鳴周波数は、200Hz以下である請求項1に記載の吸気装置。
- 前記開口は、エアクリーナに開設されている請求項1に記載の吸気装置。
- 前記開口は、前記エアクリーナのクリーン側に開設されている請求項3に記載の吸気装置。
- 前記開口は、前記エアクリーナのダーティ側に開設されている請求項3に記載の吸気装置。
- 前記開口は、前記エアクリーナとインテークマニホールドとを連通するエアクリーナホースの少なくとも一部に開設されている請求項1に記載の吸気装置。
- 前記開口は、吸気ダクトの一部に開設されている請求項1に記載の吸気装置。
- 前記通気性部材は、撥水性を有する請求項1に記載の吸気装置。
- 前記遮音壁は、前記通気性部材からの透過音により面振動が生じないように遮音壁用制振部材を持つ請求項1に記載の吸気装置。
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