JP3918983B2 - ポリエステル紡績糸強撚編物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
婦人用ドレス、ブラウス、ジャケット、スカート、ワンピース、コート等の無地染めやプリントに適した自然な生地外観を呈し、かつ発色性がよく、シャリ感・清涼風合に富み、耐久洗濯・抗ピリング性、軽量、イージーケア性等に優れるポリエステル強撚紡績糸編物及びその製造方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
清涼感に富む生地を得る方法として強撚糸を用いた綿編物や強撚マルチフィラメント糸編物がある。ナチュナルな外観を有し、清涼感に富む春夏用生地として綿糸を用いた強撚編物が一般的であるが、綿は軽量な生地を得るためには高級細番手綿糸が必要で、素材的に高価なものになる。また、綿は製品の洗濯収縮率が不良であり、シルケット加工や液体アンモニア加工による防縮加工が必要で全体に高コストな製品になる。
【０００３】
一方、安価で発色性や機能性に優れるポリエステル紡績糸を用いた強撚編物はまだ実用化されていない。その理由としてポリエステル紡績糸特有の毛羽強力によるピリングが解決されないこと、そのためポリエステル繊維編物においては加工コスト的に有利なマルチフィラメント編物やピリング性能を犠牲にした通常ポリエステル短繊維と綿の混紡糸による編物展開が一般的であったこと等が挙げられる。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、無地染めやプリントに適した自然な生地外観を呈し、かつ発色性がよく、シャリ感・清涼風合に富み、耐久洗濯・抗ピリング性、軽量、イージーケア性等に優れるポリエステル強撚紡績糸編物及びその製造方法を提供するものである。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
このような背景に鑑み、鋭意研究結果、下記編物および製造方法とすることで解決に至った。即ち、本発明は、
１．少なくも一部が撚り係数5.0以上であるポリエステル紡績糸からなり、ピリングが３級以上（JIS L1076A法）であることを特徴とするポリエステル強撚紡績糸編物とすること、
２．強度4.0ｃN/dtex以下のポリエステル短繊維からなる撚り係数5.0以上の紡績糸を少なくも一部に用いた編物と為し、次いで該編物を精練リラックス後、酸、またはアルカリ処理を施して仕上げることを特徴とする上記１記載のポリエステル強撚紡績糸編物の製造方法とすること。
３．強度4.0ｃN/dtex以下のポリエステル短繊維とポリエステルフィラメントとの混繊紡績糸、または引き揃え合撚紡績糸からなる撚り係数5.0以上の紡績糸を少なくも一部に用いて製編し、次いで該編物を精練リラックス後、酸、またはアルカリ処理を施して仕上げること、からなる上記１に記載のポリエステル強撚紡績糸編物およびその製造方法
から構成される。
【０００６】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の構成要因について詳細に説明する。ポリエステル短繊維：繊維強度4.0ｃN/dtex以下の短繊維とする。4.0ｃN/dtex以上では編物にアルカリ減量を施しても抗ピル性が得られず、好ましくない。好ましくは3.6ｃN/dtex以下とする。このような繊維はイソフタル酸共重合や5‐ナトリウムスルホイソフタル酸共重合、リン酸共重合、またはこれらの混合等の変性ポリエステル繊維とすることで得られる。また、繊維強度は3.0ｃN/dtex以上であることが好ましい。3.0ｃN/dtex以下では後工程通過性が不良になり好ましくない。単繊維デニールは3.30dtex以下、好ましくは2.8dtex、更に好ましくは2.2dtex以下である。3.3dtex以上では細番手が得られず、かつ硬風合となり好ましくない。繊維長は特に制約はなく通常の32‐76ｍｍでもよく、またそれ以上でもよい。繊維長が長い場合は細い単糸デニールが抗ピル性から好ましい。
【０００７】
添加物は酸化チタン、カオリナイト等の無機物、蛍光顔料等の顔料、抗菌剤・制菌剤、難燃剤等を含んでいてもよい。繊維の断面形状は中実の他、中空、三角形、Y字型、十字型、偏平型等の異型でもよく、特に限定されるものではない。
【０００８】
本発明においては、ポリエステルフィラメントとの混繊混紡糸・引き揃え合撚糸方法として、強撚紡績糸形態とするため、番手と撚り係数によっては紡績糸強力が低下し、編み立てや染色加工等の後加工工程通過性や製品強力に支障をきたす場合には、精紡工程においてポリエステルフィラメントの静電気混繊やコアヤーン等公知の技術により混繊混紡糸としたり、紡績糸とフィラメントを引き揃え、合撚糸とすることで紡績糸の強力を改善することが可能である。合撚糸の場合、紡績糸の元撚りと反対方向に施撚することでフィラメントが芯部に配される好ましい紡績糸形態になる。ポリエステルフィラメントとして好ましくは78dtex以下、強度5.0cN／dtex以上のマルチフィラメント、または33dtex以下のモノフィラメントが適宜用いられる。また、断面形状、単糸デニール等特に制約は無い。
【０００９】
番手と撚り係数：番手（英式綿番手）は特に制約はない。フィラメントとの複合糸は100‐50'等の細番手に好適である。撚り係数は元撚りと追加施撚数の合計であり、本発明では5.0以上、好ましくは5.5以上である必要がある。5.0以下ではシャリ感・清涼風合に乏しいものになり、好ましくない。精紡強撚糸としてもよく、また通常の撚り係数（3.0‐3.5）の精紡糸にイタリー撚糸機、アップツイスター、ダブルツイスター等で追加施撚してもよい。
【００１０】
撚り方向とビリ止めセット：紡績糸の撚り方向は編地の斜行性を考慮し、ダブルニットの場合はS撚、またはZ撚のいずれかの片撚り糸でよく、シングルニット等の斜行の発生し易い組織ではS撚、Z撚を交互に編み込み、紡績糸の解撚トルクを相殺させる。強撚紡績糸のビリ止めセット条件は80‐110℃、30‐60分程度が目安である。
【００１１】
本発明における編み立て方法において、生地の加工収縮率が元撚りのみの紡績糸生地より多くなる傾向にあるが、アルカリ減量率を考慮し、若干高密度に編み、編み条件を最適化することによって達成される。
【００１２】
ポリエステル紡績糸の最大の欠点はピリングであるが、本発明においては施撚中の若干の短繊維強力低下が効果的に抗ピル性発現に寄与する。生地に減量率8‐14％程度のアルカリ減量処理、またはｐH3.5-4.5の高圧液中で60‐90分程度の加水分解処理を施すことによりピルの発生を容易に抑制可能であり、本発明の優位性は明瞭である。本発明範囲外のポリエステル短繊維では高減量のアルカリ処理を施しても抗ピル性は得られない。逆に抗ピル性がアルカリ減量処理前品より悪化する傾向になる。これは強撚紡績糸にアルカリ減量により繊維間に空隙が生じ、短繊維が糸表面に引き出され、ピリングやスナッギングを形成し易くなるためと考えられる。
【００１３】
驚くべきことに本発明において、アルカリ減量処理後の生地からの着用時、または繰返し洗濯による毛羽の成長が阻害され、耐久抗ピル性に著しい効果があることがわかった。このことは、少なくも一部が撚り係数5.0以上であるポリエステル紡績糸からなり、ピリングが３級以上であることに起因すると考えられた。
【００１４】
本発明によって得られるポリエステル強撚紡績糸編物は婦人用ドレス、ブラウス、ジャケット、スカート、ワンピース、コート等に使用される。
【００１５】
[実施例]
以下、実施例によって本発明を説明する。評価方法としては、以下に示す。
・ピリング（級） JIS L1076 A法（ICI法 5時間）
・寸法変化率 級（％） JIS L0217 103法による洗濯後、JIS1096 I-1法低 温タンブル乾燥後の測定値
【００１６】
実施例１，２と比較例１−５に使用した銘柄を下記に示した。
銘柄：（１）抗ピル性ポリエステル短繊維 1.7dtex38ｍｍ TiO2＝0.35％、○断面形状、５−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4.0モル％共重合ポリエステル短繊維で原綿強度は3.4ｃN/dtex
（２）ホモポリマーポリエステル短繊維で原綿強度5.2cN/dtex
（３）綿
【００１７】
その他条件を下記に示した。
紡績糸：英式番手30'、撚り係数ｋ=3.4のZ撚り精紡糸にダブルツイスターでZ 方向に追加施撚
ビリ止めセット条件：ホモポリマーポリエステル（１）＆綿（３） 120℃x60分抗ピル性ポリエステル90℃x40分
編物 ：フライス組織で26吋 18G 生地目付170g／m2
加工 ：各紡績糸水準の編物を液流染色機で常圧98℃20分精練リラックス後、アルカリ減量処理、または高圧液流酸処理（pH4.0、130℃60分）を実施し、次いで130℃20分で分散染料染色し、フライスは開反し、ピンテンターにて170℃ 30秒の仕上げセットを施し、仕上げた。綿はアルカリ減量なしで80℃30分の液流染色（反応染料染色）を行う以外は他と同一工程で行なった。
【００１８】
【表１】
【００１９】
判定は以下の基準に従った。
【００２０】
実施例1,2は風合、ピリング、寸法変化率とも満足するものであったが、比較例1、3、4はピリングが、比較例2は風合が、比較例5は寸法変化率が劣るものであった。表１に結果を示した。
【００２１】
実施例３
コアヤーンとして、ポリエステルフィラメント33ｄtex d６ｆ （セミダル、Y字型断面、異型度＝外接円／内接円＝2.0、強度4.2ｃN/dtex）と実施例1,2と単糸デニールのみ1.1dtexとした以外は実施例１，２と同様の変性ポリエステル短繊維を用い、精紡工程で変性ポリエステル短繊維を鞘成分とし、撚り係数を4.0とするS撚り及びZ撚りのコアヤーン40'（英式番手）を製造した。 次いで同方向に追撚し、合計撚り係数7.0の強撚糸とし、100℃50分のセットを施した。S,Zを１本交互に用い、天竺（２８G）を編んだ。該編物を実施例１と同様の加工工程を経、ピリング４級、斜行度が3.1％でシャリ感風合に富む高品質の編物が得られた。
【００２２】
実施例４
ポリエステルフィラメント55ｄtex24f(セミダル、丸断面形状、強度5.0ｃN/dtex)と実施例３の変性ポリエステル短繊維からなる50'（英式番手、撚り係数3.4）を引き揃え、ダブルツイスターで紡績糸元撚りと反対方向に追撚し、追撚撚り係数7.5の強撚糸とし、100℃60分の撚り止めセットを施した。フィラメントを短繊維が覆う被覆性のよい強撚紡績糸が得られた。次いでフライスを編んだ。実施例1と同様の加工工程を経た編地はナチュラルなスパン外観を呈し、ピリング4級でシャリ感に富む高品質の編物が得られた。
【００２３】
比較例６．実施例４の引き揃え糸を紡績糸元撚りと同方向に追撚し、元撚りとの合計撚り係数を7.0の強撚糸を得、実施例４と同様工程を得た編物はシャリ感に富み、ピリング4級であったが、生地外観はフィラメントと短繊維がタスキ状に撚り合わされた糸外観を呈するため不自然な光沢を有し、実施例４に比較し、著しく品位を損ねるものであった。
【００２４】
【発明の効果】
本発明によれば自然な生地外観を呈し、かつ発色性がよく、シャリ感・清涼風合に富み、耐久洗濯・抗ピリング性、軽量、イージーケア性等に優れるポリエステル強撚紡績糸編物が容易に得られる。
【発明の属する技術分野】
婦人用ドレス、ブラウス、ジャケット、スカート、ワンピース、コート等の無地染めやプリントに適した自然な生地外観を呈し、かつ発色性がよく、シャリ感・清涼風合に富み、耐久洗濯・抗ピリング性、軽量、イージーケア性等に優れるポリエステル強撚紡績糸編物及びその製造方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
清涼感に富む生地を得る方法として強撚糸を用いた綿編物や強撚マルチフィラメント糸編物がある。ナチュナルな外観を有し、清涼感に富む春夏用生地として綿糸を用いた強撚編物が一般的であるが、綿は軽量な生地を得るためには高級細番手綿糸が必要で、素材的に高価なものになる。また、綿は製品の洗濯収縮率が不良であり、シルケット加工や液体アンモニア加工による防縮加工が必要で全体に高コストな製品になる。
【０００３】
一方、安価で発色性や機能性に優れるポリエステル紡績糸を用いた強撚編物はまだ実用化されていない。その理由としてポリエステル紡績糸特有の毛羽強力によるピリングが解決されないこと、そのためポリエステル繊維編物においては加工コスト的に有利なマルチフィラメント編物やピリング性能を犠牲にした通常ポリエステル短繊維と綿の混紡糸による編物展開が一般的であったこと等が挙げられる。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、無地染めやプリントに適した自然な生地外観を呈し、かつ発色性がよく、シャリ感・清涼風合に富み、耐久洗濯・抗ピリング性、軽量、イージーケア性等に優れるポリエステル強撚紡績糸編物及びその製造方法を提供するものである。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
このような背景に鑑み、鋭意研究結果、下記編物および製造方法とすることで解決に至った。即ち、本発明は、
１．少なくも一部が撚り係数5.0以上であるポリエステル紡績糸からなり、ピリングが３級以上（JIS L1076A法）であることを特徴とするポリエステル強撚紡績糸編物とすること、
２．強度4.0ｃN/dtex以下のポリエステル短繊維からなる撚り係数5.0以上の紡績糸を少なくも一部に用いた編物と為し、次いで該編物を精練リラックス後、酸、またはアルカリ処理を施して仕上げることを特徴とする上記１記載のポリエステル強撚紡績糸編物の製造方法とすること。
３．強度4.0ｃN/dtex以下のポリエステル短繊維とポリエステルフィラメントとの混繊紡績糸、または引き揃え合撚紡績糸からなる撚り係数5.0以上の紡績糸を少なくも一部に用いて製編し、次いで該編物を精練リラックス後、酸、またはアルカリ処理を施して仕上げること、からなる上記１に記載のポリエステル強撚紡績糸編物およびその製造方法
から構成される。
【０００６】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の構成要因について詳細に説明する。ポリエステル短繊維：繊維強度4.0ｃN/dtex以下の短繊維とする。4.0ｃN/dtex以上では編物にアルカリ減量を施しても抗ピル性が得られず、好ましくない。好ましくは3.6ｃN/dtex以下とする。このような繊維はイソフタル酸共重合や5‐ナトリウムスルホイソフタル酸共重合、リン酸共重合、またはこれらの混合等の変性ポリエステル繊維とすることで得られる。また、繊維強度は3.0ｃN/dtex以上であることが好ましい。3.0ｃN/dtex以下では後工程通過性が不良になり好ましくない。単繊維デニールは3.30dtex以下、好ましくは2.8dtex、更に好ましくは2.2dtex以下である。3.3dtex以上では細番手が得られず、かつ硬風合となり好ましくない。繊維長は特に制約はなく通常の32‐76ｍｍでもよく、またそれ以上でもよい。繊維長が長い場合は細い単糸デニールが抗ピル性から好ましい。
【０００７】
添加物は酸化チタン、カオリナイト等の無機物、蛍光顔料等の顔料、抗菌剤・制菌剤、難燃剤等を含んでいてもよい。繊維の断面形状は中実の他、中空、三角形、Y字型、十字型、偏平型等の異型でもよく、特に限定されるものではない。
【０００８】
本発明においては、ポリエステルフィラメントとの混繊混紡糸・引き揃え合撚糸方法として、強撚紡績糸形態とするため、番手と撚り係数によっては紡績糸強力が低下し、編み立てや染色加工等の後加工工程通過性や製品強力に支障をきたす場合には、精紡工程においてポリエステルフィラメントの静電気混繊やコアヤーン等公知の技術により混繊混紡糸としたり、紡績糸とフィラメントを引き揃え、合撚糸とすることで紡績糸の強力を改善することが可能である。合撚糸の場合、紡績糸の元撚りと反対方向に施撚することでフィラメントが芯部に配される好ましい紡績糸形態になる。ポリエステルフィラメントとして好ましくは78dtex以下、強度5.0cN／dtex以上のマルチフィラメント、または33dtex以下のモノフィラメントが適宜用いられる。また、断面形状、単糸デニール等特に制約は無い。
【０００９】
番手と撚り係数：番手（英式綿番手）は特に制約はない。フィラメントとの複合糸は100‐50'等の細番手に好適である。撚り係数は元撚りと追加施撚数の合計であり、本発明では5.0以上、好ましくは5.5以上である必要がある。5.0以下ではシャリ感・清涼風合に乏しいものになり、好ましくない。精紡強撚糸としてもよく、また通常の撚り係数（3.0‐3.5）の精紡糸にイタリー撚糸機、アップツイスター、ダブルツイスター等で追加施撚してもよい。
【００１０】
撚り方向とビリ止めセット：紡績糸の撚り方向は編地の斜行性を考慮し、ダブルニットの場合はS撚、またはZ撚のいずれかの片撚り糸でよく、シングルニット等の斜行の発生し易い組織ではS撚、Z撚を交互に編み込み、紡績糸の解撚トルクを相殺させる。強撚紡績糸のビリ止めセット条件は80‐110℃、30‐60分程度が目安である。
【００１１】
本発明における編み立て方法において、生地の加工収縮率が元撚りのみの紡績糸生地より多くなる傾向にあるが、アルカリ減量率を考慮し、若干高密度に編み、編み条件を最適化することによって達成される。
【００１２】
ポリエステル紡績糸の最大の欠点はピリングであるが、本発明においては施撚中の若干の短繊維強力低下が効果的に抗ピル性発現に寄与する。生地に減量率8‐14％程度のアルカリ減量処理、またはｐH3.5-4.5の高圧液中で60‐90分程度の加水分解処理を施すことによりピルの発生を容易に抑制可能であり、本発明の優位性は明瞭である。本発明範囲外のポリエステル短繊維では高減量のアルカリ処理を施しても抗ピル性は得られない。逆に抗ピル性がアルカリ減量処理前品より悪化する傾向になる。これは強撚紡績糸にアルカリ減量により繊維間に空隙が生じ、短繊維が糸表面に引き出され、ピリングやスナッギングを形成し易くなるためと考えられる。
【００１３】
驚くべきことに本発明において、アルカリ減量処理後の生地からの着用時、または繰返し洗濯による毛羽の成長が阻害され、耐久抗ピル性に著しい効果があることがわかった。このことは、少なくも一部が撚り係数5.0以上であるポリエステル紡績糸からなり、ピリングが３級以上であることに起因すると考えられた。
【００１４】
本発明によって得られるポリエステル強撚紡績糸編物は婦人用ドレス、ブラウス、ジャケット、スカート、ワンピース、コート等に使用される。
【００１５】
[実施例]
以下、実施例によって本発明を説明する。評価方法としては、以下に示す。
・ピリング（級） JIS L1076 A法（ICI法 5時間）
・寸法変化率 級（％） JIS L0217 103法による洗濯後、JIS1096 I-1法低 温タンブル乾燥後の測定値
【００１６】
実施例１，２と比較例１−５に使用した銘柄を下記に示した。
銘柄：（１）抗ピル性ポリエステル短繊維 1.7dtex38ｍｍ TiO2＝0.35％、○断面形状、５−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4.0モル％共重合ポリエステル短繊維で原綿強度は3.4ｃN/dtex
（２）ホモポリマーポリエステル短繊維で原綿強度5.2cN/dtex
（３）綿
【００１７】
その他条件を下記に示した。
紡績糸：英式番手30'、撚り係数ｋ=3.4のZ撚り精紡糸にダブルツイスターでZ 方向に追加施撚
ビリ止めセット条件：ホモポリマーポリエステル（１）＆綿（３） 120℃x60分抗ピル性ポリエステル90℃x40分
編物 ：フライス組織で26吋 18G 生地目付170g／m2
加工 ：各紡績糸水準の編物を液流染色機で常圧98℃20分精練リラックス後、アルカリ減量処理、または高圧液流酸処理（pH4.0、130℃60分）を実施し、次いで130℃20分で分散染料染色し、フライスは開反し、ピンテンターにて170℃ 30秒の仕上げセットを施し、仕上げた。綿はアルカリ減量なしで80℃30分の液流染色（反応染料染色）を行う以外は他と同一工程で行なった。
【００１８】
【表１】
判定は以下の基準に従った。
実施例1,2は風合、ピリング、寸法変化率とも満足するものであったが、比較例1、3、4はピリングが、比較例2は風合が、比較例5は寸法変化率が劣るものであった。表１に結果を示した。
【００２１】
実施例３
コアヤーンとして、ポリエステルフィラメント33ｄtex d６ｆ （セミダル、Y字型断面、異型度＝外接円／内接円＝2.0、強度4.2ｃN/dtex）と実施例1,2と単糸デニールのみ1.1dtexとした以外は実施例１，２と同様の変性ポリエステル短繊維を用い、精紡工程で変性ポリエステル短繊維を鞘成分とし、撚り係数を4.0とするS撚り及びZ撚りのコアヤーン40'（英式番手）を製造した。 次いで同方向に追撚し、合計撚り係数7.0の強撚糸とし、100℃50分のセットを施した。S,Zを１本交互に用い、天竺（２８G）を編んだ。該編物を実施例１と同様の加工工程を経、ピリング４級、斜行度が3.1％でシャリ感風合に富む高品質の編物が得られた。
【００２２】
実施例４
ポリエステルフィラメント55ｄtex24f(セミダル、丸断面形状、強度5.0ｃN/dtex)と実施例３の変性ポリエステル短繊維からなる50'（英式番手、撚り係数3.4）を引き揃え、ダブルツイスターで紡績糸元撚りと反対方向に追撚し、追撚撚り係数7.5の強撚糸とし、100℃60分の撚り止めセットを施した。フィラメントを短繊維が覆う被覆性のよい強撚紡績糸が得られた。次いでフライスを編んだ。実施例1と同様の加工工程を経た編地はナチュラルなスパン外観を呈し、ピリング4級でシャリ感に富む高品質の編物が得られた。
【００２３】
比較例６．実施例４の引き揃え糸を紡績糸元撚りと同方向に追撚し、元撚りとの合計撚り係数を7.0の強撚糸を得、実施例４と同様工程を得た編物はシャリ感に富み、ピリング4級であったが、生地外観はフィラメントと短繊維がタスキ状に撚り合わされた糸外観を呈するため不自然な光沢を有し、実施例４に比較し、著しく品位を損ねるものであった。
【００２４】
【発明の効果】
本発明によれば自然な生地外観を呈し、かつ発色性がよく、シャリ感・清涼風合に富み、耐久洗濯・抗ピリング性、軽量、イージーケア性等に優れるポリエステル強撚紡績糸編物が容易に得られる。
Claims (1)
- 強度３．０〜４．０ｃＮ／ｄｔｅｘのイソフタル酸共重合、５−ナトリウムスルホイソフタル酸共重合、リン酸共重合、またはこれらを混合してなる変性ポリエステル短繊維からなる撚り係数５．０以上のポリエステル紡績糸を少なくとも一部に用いた編物であって、該編物を精練リラックス後、減量率８〜１５％のアルカリ減量処理、またはｐH３．５〜４．５の高圧液中で６０〜９０分の加水分解処理を施して得られる、ピリングが３級以上（ＪＩＳ Ｌ１０７６Ａ法）であることを特徴とするポリエステル強撚紡績糸編物。
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