JP3900323B2 - 意匠性パイル布帛 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は立体的な模様を有するパイル布帛に関し、更に詳しくは、意匠性に優れた凹凸模様と、ソフト風合を有するパイル布帛に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
パイル布帛は縦、緯の地糸とパイル糸を用いて構成され、表面に立毛を有し、外観や触感、風合に優れているため、椅子張材、敷物類等のインテリア用途や、衣料用途など、多くの分野で用いられている。特に、インテリア分野ではファッション性が求められ、見栄のある外観を付加することが商品価値を高める上で重要な要素になっており、パイル製品の表面に凹凸模様を表現することで高級感を与える試みが様々な形でなされている。
従来より、起毛パイル布帛に立体的な模様を形成する方法としては、加熱エンボスローラにより立体模様を与えるエンボス法や、近赤外線を吸収して発熱する物質を利用する近赤外線法等が知られている。前者のエンボス法は、表面に所定の凹凸を有するエンボスローラを加熱して起毛布帛に圧着させ、エンボスローラの凸部に対応する部分のみの起毛繊維に熱溶着、または熱収縮を生ぜしめことで凹部を形成し、布帛に凹凸の立体模様を与える方法である。一方、後者の近赤外線法は、高効率で近赤外線を吸収、発熱する物質を布帛の起毛部に塗布し、近赤外線を照射して加熱することにより、起毛繊維を局部的に溶融または収縮させることで、布帛表面に凹凸模様を形成する方法である。
しかし、上記に述べた方法のいずれにおいても、繊維を高温で、溶融又は収縮させるという点に特徴があり、起毛繊維が加工の際に熱劣化を生じ、布帛の風合が硬化したり、強度が低下するという問題がある。また、上記の方法では処理工程において、特別な加工設備や処理薬剤を要するため、製品コストも著しく増大する。
【0003】
また、上記のような高温処理工程を用いることなく、表面に凹凸模様を形成する方法として、均一なパイル長の布帛を得た後に、柄に沿って、パイルの一部をカットすることも行われている。しかし、この場合においても、新たな工程が必要となり、製品を低価格で得ることはできない。
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解消するために行われたもので、布帛表面に立体的な凹凸模様を有する、風合のソフトなパイル布帛を低価格で提供するためになされたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、表面に立体模様を有する、意匠性に優れ、風合の良好なパイル布帛を容易、かつ安価に提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、単繊維繊度が0.5以上4d以下のポリエステル系偏芯型複合繊維を55重量%以上含有してなる潜在捲縮性紡績糸と、通常の非捲縮性繊維紡績糸とをパイル糸に用いてなり、前記ポリエステル系偏芯型複合繊維が160℃、無荷重下での熱処理時に発現する捲縮数が40ケ/インチ以上であり、前記潜在捲縮性紡績糸の捲縮発現により凹凸模様が形成されてなることを特徴とする意匠性パイル布帛であり、具体的には偏芯型複合繊維がエチレンテレフタレート単位を主体とする全酸成分に対し5−スルホイソフタル酸金属塩を1〜3モル%及びイソフタル酸を2〜10モル%含有する共重合ポリエステル(A)と、ポリエチレンテレフタレートまたはエチレンテレフタレート単位を主体とした前記共重合ポリエステル(A)よりも低収縮性の共重合ポリエステル(B)とが偏芯的に接合されている複合繊維であり、潜在捲縮性紡績糸の10%伸長時の伸長回復率が70%以上であることを特徴とする上記記載の意匠性パイル布帛およびパイルが減量率20%以下の減量加工が施されてなることを特徴とする上記記載の意匠性パイル布帛である。
【0006】
以下、詳細に説明する。本発明のパイル布帛には、ポリエステル系偏芯型複合繊維を55%以上含有する潜在捲縮性紡績糸と、通常の非捲縮性紡績糸をパイル糸として用いる。偏芯型複合繊維を含む紡績糸をパイル糸に用いることで、布帛の熱処理後に糸が捲縮するため非捲縮性のパイル糸との間にパイル長の差が生じ、凹凸模様が形成される。上記の潜在捲縮性紡績糸に含まれる、偏芯型複合繊維の含有率は55重量%以上であるこが、パイル糸の熱捲縮を十分に発現させるために必要である。55重量%以下では、撚の拘束状態下で、紡績糸の捲縮発現が不十分となる。偏芯型複合繊維の含有率は、好ましくは60重量%以上が望ましい。また、前記偏芯型複合繊維の単繊維繊度は0.5d以上、4d以下であることが必要である。単糸繊度が5d以上では、パイルの風合が堅くなり、0.5d未満では、糸の強度が十分に得られず、何れの場合にも布帛の品位が低下する。さらに良好な特性を与えるためには、単繊度は1d以上、4d以下であることがより好ましい。
【0007】
また、本発明において、上記潜在捲縮性パイル糸には勿論、通常のポリエステル、アクリル、ポリアミド等の合成繊維、アセテート繊維等の半合成繊維、レーヨン、ポリノジック、キュプラ等の再生繊維、或いは、綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維を適宜混綿して、他素材の特徴、機能を同時に付加された紡績糸を用いることも可能である。
また、上記潜在捲縮性紡績糸の伸長回復率は70%以上であることが望ましい。これは、糸の伸長回復率が70%未満では、製品使用時あるいは加工工程において加わる外力のため、布帛のパイル糸が局所的に伸びてしまい、表面形状が不均一になる可能性があるからである。布帛パイルの形態維持のために、更に好ましくい伸長回復率の条件は80%以上である。
以上に示された潜在捲縮紡績糸を構成する偏芯型複合繊維としては、所謂、サイドバイサイド型、芯鞘偏芯型の複合繊維が含まれるが、好ましい一例として、エチレンテレフタレート単位を主体とし、5−スルホイソフタル酸金属塩を1〜3モル%及びイソフタル酸2〜10モル%を共重合成分とする共重合ポリエステル(A)とポリエチレンテレフタレートまたはエチレンテレフタレート単位を主体とし前記共重合ポリエステル(A)よりも低収縮性の共重合ポリエステル(B)とがサイドバイサイドに接合されている複合繊維が挙げられる。
なお、スルホン酸の金属塩としてNa、K、Li等が例示される。
【0008】
前記潜在捲縮性を有する偏芯型複合繊維の形態例としては、すでに述べたようなサイドバイサイド型が望ましい。すなわち、この一代表例としてエチレンテレフタレート単位を主体とする全酸成分に対し5−スルホイソフタル酸金属塩を1〜3モル%およびイソフタル酸を2〜10モル%含有する共重合ポリエステル(A)と、ポリエチレンテレフタレートまたはエチレンテレフタレート単位を主体とした前記共重合ポリエステル(A)よりも低収縮性の共重合ポリエステル(B)とがサイドバイサイドに偏芯的接合した複合繊維が挙げられる。
本発明の偏芯型複合繊維において、その一方の高収縮成分を構成する共重合ポリエステル(A)は、共重合成分として金属塩スルホネート基を有する構成単位を含有しているので他方の低収縮成分のポリエチレンテレフタレートまたは共重合ポリエステル(B)に比べ、紡糸延伸後の弾性回復性に優れている。そのため、この複合繊維は、高収縮成分である共重合ポリエステル(A)の側を内側にして湾曲する。また、この共重合ポリエステル(A)は上記の金属塩スルホネート基を有する構成単位のほかにイソフタル酸を共重合成分として含有しているので、上記の金属塩スルホネート基を有する構成単位のみを含有する場合に比べて、高収縮成分としての熱収縮率が大きく、低収縮成分との熱収縮差がより一層大きくなる。その結果、潜在捲縮能が増すとともに、複合繊維としての強度が向上する。この場合、共重合ポリエステル(A)における金属塩スルホネート基を有する構成単位の共重合割合が1モル%未満では、延伸後の弾性回復が不足して潜在捲縮能が不十分となり、反対に3モル%を超えると複合繊維の強度が低下する。また上記共重合ポリエステル(A)におけるイソフタル酸の共重合量が2モル%以下の場合はポリエチレンテレフタレートまたは共重合ポリエステル(B)との熱収縮率の差が小さくなり、また10モル%を超えると延伸後の弾性回復性が不足するため、どちらの場合にも潜在捲縮能が不十分となる。
【0009】
さらに、ポリエステル(A)及び(B)には本発明の目的を損なわない範囲で他の共重合成分を含んでもよい。更には、ポリエステル(A)及び(B)またはどちらかに抗菌剤、消臭剤、親水化剤、難燃剤、撥水剤、柔軟剤、染料、顔料、セラミックス等の特性付与剤や添加物を必要に応じ配合することができる。
本発明の潜在捲縮性紡績糸に用いられる前記偏芯型複合繊維は、160℃における荷重36mg/dでの乾熱収縮率が10%以上である必要がある。これは、捲縮発現によって、高収縮部分と低収縮部分との間で糸長に差を生ぜしめるためである。また、糸の捲縮発現に必要な熱処理は、通常の染色加工、或いは、仕上加工により実施することができる。
【0010】
また、前記偏芯型複合繊維は、160℃、無荷重下での熱処理時に発現する捲縮数が40ケ/インチ以上であることが必要である。これは、パイル糸が十分に収縮とバルキー化を生じ、凹部形成能力や地糸被覆効果を高めるためである。発現する捲縮数が40ケ/インチ未満では、糸の収縮や膨らみにおいて非捲縮性パイル糸との差が十分に生じないため、表面に明瞭な凹凸模様は形成されない。パイル布帛の凹凸模様を十分に際だたせ、優れた意匠効果を与えると共に、ソフトで弾力性のある触感を得るためには、発現捲縮数は50ケ/インチ以上であることがより好ましい。更にまた、上述のポリエステル系偏芯型複合繊維を含んでなる、潜在捲縮性紡績糸の熱処理による収縮は、ポリエステル自体の乾熱収縮部と発現捲縮部とがミックスされたものであるため、160℃における糸の乾熱収縮率は20%以上であることが必要である。20%未満では捲縮性が低下するので好ましくない。
【0011】
本発明では、以上で述べた潜在捲縮性紡績糸を単糸または合撚糸の形でパイル糸に用いることで布帛を構成する。布帛は製織工程においては、上記の潜在捲縮性糸条からなるパイル糸と通常の非捲縮性糸条からなるパイル糸を、ドビー機またはジャカード機を用い、タテ/又はヨコ方向に所定の分布状態で織り込み、布体を形成する。
パイル布帛を構成する、経及び緯方向の地糸については特に素材の種類を限定するものではなく、ポリエステル、アクリル、ポリアミド等の合成繊維、或いは、アセテート繊維等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック、テンセル(登録商標)等の再生繊維は、或いは、木綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維を単独または2種類以上複合してなる糸条を用いることができる。また、糸条の形態としては、フィラメント糸、紡績糸、または、フィラメント糸に短繊維をカバリングしたもの等、任意の形態を有する糸条を用いることがでかる。
【0012】
上記により織製された布帛はその後、パイル糸のカッティング処理を行い、起毛パイル布帛を作製する。パイル糸のカッティング工程には通常カッティングマシンを用いることができる。また、布帛のカットパイル長は特に限定されないが、一般的には、10mm以内に設定することが望ましい。
次に、染色加工や仕上加工等において、加熱処理を行ない、潜在捲縮性紡績糸の捲縮能力を発現させることにより、生地の立体的な凹凸模様を形成する。この時、布帛に十分な凹凸感を与えるため、湿熱125℃以上または乾熱160℃以上で、しかもテンションフリーの状態を維持しながら加熱処理を行なう必要がある。これは、パイル糸の潜在捲縮機能をほぼ完全に発現させ、残留潜在捲縮を除くためである。熱処理条件としては、湿熱125℃未満または乾熱160℃未満になると捲縮発現が不完全となり、望ましくない。また、湿熱140℃以上または、乾熱180℃以上になると布帛の風合が低下するだけでなく、加熱温度の上昇により加工コストも増大する。従って、湿熱で125〜140℃、乾熱で160℃〜180℃で熱処理を実施するのがより好ましい。
染色加工においては、通常行なわれる染色方法や加工装置を用いることができる。更に、起毛パイルの調整や仕上げを行なうために、ブラッシング、シェアリング、バッキング等の処理を随意実施することが可能である。
【0013】
尚、パイル布帛表面の風合、感触をソフトに仕上げるため、熱処理前後で、減量率20%以下、好ましくは5%以上、10%以下の減量加工を実施することが推奨される。この減量処理に際しては、通常のポリエステル繊維の減量に用いられる加工方法や条件を使用することができる。
さらに本発明においては、必要に応じ、パイル布帛構成後の仕上げ工程において、抗菌剤、防臭剤、難燃剤、柔軟剤、撥水撥油剤、親水化剤、防汚剤、黄変防止剤、などの加工剤で処理を施すことにより、所望の機能を付加することも勿論可能である。
【0014】
本発明で作製されたパイル布帛は、後工程における熱処理にて、偏芯型複合繊維からなるパイル糸を織り込まれた部分は熱捲縮機能の発現により、パイルが引き締まり、窪み部が形成される。さらに、繊維の収縮、バルキー化により、通常の非捲縮性パイル糸を織り込まれた部分に比べ、地糸の被覆効果が顕著になり、布帛表面の形状や色合いに変化がもたらされる。その結果、表面に所定の立体的かつ審美的な外観を有する模様が形成され、優れた意匠性が得られることとなる。
【0015】
また、本発明では、潜在捲縮性を有するパイル糸の使用に関しては、1種類の潜在捲縮性糸条を用いるのみならず、熱捲縮率等が異なる2種類以上の糸条を用いても何ら差し支えない。この場合には、捲縮特性の異なるパイル糸を任意に使用することで、パイルの凹凸の度合が異なる模様が形成されるので、更に優れた意匠性を有する、多様な表面形態の実現が可能となる。捲縮特性の異なるパイル糸は、例えば、本発明のポリエステル系偏芯型複合繊維の含有率を種々に調整することで、容易に得ることができる。
【0016】
以上のようにして得られるパイル布帛は、意匠性の優れた凹凸模様を有しており、表面感触もソフトで、膨らみ感があるのが特徴である。また、耐熱性、耐薬品性、などの耐久性も極めて良好であり、品位の劣化が起こりにくい。また、パイル布帛の作製には特別な加工装置や処理工程及び特別な処理剤等を必要としないため、加工が極めて容易に行なえる共に、製品の低コスト化が図れるという利点がある。
上記に示したように、本発明のパイル布帛は、様々な特長、利点を有しているため、アウター衣料分野な、椅子張材、カーペット、シーツ、毛布、壁掛け、等のインテリア製品や日用品など、ファッション性や審美性、ソフト風合等を必要とされる用途や分野に、広く使用することができる。
【0017】
以下、本実施例で採用した測定方法について述べる。
外観:男性5人、女性5人からなる検査員による、布帛表面の外観について、目視による官能評価を行ない、良否を判定する。
○は意匠性が良好であることを示す。
風合:男性5人、女性5人からなる検査員により、布帛表面の風合について触感による官能評価を行い、良否を判定する。
○は風合、タッチが良好であることを示す。
パイル糸の伸長回復率(%):JISL1095 7.12.A法(一般紡績糸)に準じ、10%伸長時の回復率を求めた。
ステープルの乾熱収縮率(%):JISL1015 7.15法に準じ、表面が滑らかな紙片に長さ25mmの試料を1本づつ緩ませた状態で両端を貼り付け、垂下装置を用いてつかみ間隔を適当に設定して取り付け、試料を取り付けた紙片を切断した後、36mg/dの荷重をかけ、つかみ間の距離Lを測定する。試料を装置から外し、乾燥機(温度160℃)の中に吊り下げ、30分放置後取り出し、室温まで冷却後、再び前記の荷重をかけたときのつかみ間の距離L′を求め、[(L−L′)/L]×100の式より求める。
ステープル捲縮数(個/インチ):
JIS L1015 7.12法に準じ、表面から滑らかな紙片に長さ25mmの試料を1本づつ緩ませた状態で、両端を張り付け、捲縮試験機のつかみ取り付け、紙片を切断した後試料に2mg/dの荷重をかけたときのつかみ間の距離(mm)を読み、その間の山と谷との数を数え、2で除した値からインチ当たりに換算して求める。
製品コスト:○は低コストであることを示す。
【0018】
【実施例】
(実施例1)
高収縮成分としてエチレンテレフタレート単位を主体とし、5−ゾウムスルホイソフタル酸ジエチレングリコールエステル1.5モル%及びイソフタル酸8モル%を共重合した共重合ポリエステルを、低収縮成分としてポリエチレンテレフタレートを使用し、紡糸温度290℃、単孔吐出量1g/分(吐出割合50:50)、紡糸速度1600m/分で紡出し、サイドバイサイド型の未延伸糸を製造した。この未延伸糸を収束し、延伸倍率1.4倍、延伸温度140℃で延伸し、次いで、スタッフィングボックスで機械捲縮(10ケ/インチ)を付与し、ついで等長カットして繊維長50mm、繊度2.0デニールのサイドバイサイド型の偏芯型複合繊維ステープルを製造した。乾熱160℃、36mg/dの荷重下の乾熱収縮率は8%、乾熱160℃における無荷重下の熱処理時の発現捲縮数は55ケ/インチであった。
ついで、前記偏芯型複合繊維ステープル100重量%を用いて、英式綿番30′s/1の紡績糸(撚係数3.2)製造し、さらに右撚14t/インチの双糸(30′s/2)を製造した。
その後、20番単糸の通常ポリエステル糸を経、緯方向の地糸に用い、また前記偏芯型複合繊維からなる紡績糸の30番双糸と通常ポリエステル繊維の30番双糸とを一定間隔毎にパイル糸として用い、製織した後、パイルのカッティングを行ない、更に布帛にブラッシング、シェアリング処理を施した。その後、減量率5%の減量加工を行ない、通常のウインス染色機にて130℃の染色加工を行なったところ、得られた布帛は表面に意匠性に富む凹凸の縞模様が形成され、風合、タッチも極めて良好であった。上記布帛について各種物性の評価を行ない、その結果を表1に示した。
【0019】
(実施例2)
実施例1の偏芯型複合繊維80重量%と通常ポリエステル繊維20重量%とを混紡してなる30番双糸の紡績糸と、通常ポリエステル繊維の30番双糸とをパイル糸として用いた以外は、実施例1と同様にして、パイル布帛を作製した。得られた布帛は、表面に意匠性に富む凹凸模様が形成され、風合も極めて良好であった。上記布帛について各種物性の評価を行ない、その結果を表1に示した。
【0020】
(実施例3)
実施例1の偏芯型複合繊維60重量%と通常のポリエステル繊維40重量%とを混紡してなる30番双糸の紡績糸と、通常ポリエステル繊維の30番双糸とをパイル糸として用い、20番単糸のポリエステル/レーヨン混紡糸を経、緯方向の地糸に用いた以外は、実施例1と同様にしてパイル布帛を作製した。得られた布帛は意匠性に優れた凹凸模様が形成され、風合も極めて良好であった。上記の布帛について各種物性の評価を行ない、その結果を表1に示した。
【0021】
(実施例4)
実施例1の偏芯型複合繊維80重量%と綿20重量%とを混紡してなる30番双糸の紡績糸と、通常ポリエステル繊維の30番双糸とをパイル糸として用い、経及び緯方向の地糸には、20番単糸のポリエステル/綿の混紡糸を用いた以外は、実施例1と同様にしてパイル布帛を作製した。得られた布帛は、表面に意匠性に富む凹凸模様が形成され、触感も極めて良好であった。上記布帛について各種物性の評価を行ない、その結果を表1に示した。
【0022】
(比較例1)
実施例1の偏芯型複合繊維50重量%と通常ポリエステル繊維50重量%とを混紡してなる30番双糸の紡績糸と、通常ポリエステル繊維の30番双糸とをパイル糸として用いた以外は、実施例1と同様にしてパイル布帛を作製した。
得られた布帛は、パイル糸の捲縮発現が十分でないため、布帛表面に明瞭な凹凸模様が形成されなかった。上記布帛について、各種物性の評価を行ない、その結果を表1に示した。
【0023】
(比較例2)
潜在捲縮性パイル糸として、実施例1と同一のレジン組成からなる繊度5デニールの偏芯型複合繊維ステープルを含有する紡績糸(30′s/2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、パイル布帛を作製した。
得られた布帛の表面には良好な凹凸模様が形成されていたが、パイルの風合はソフト性に乏しいものであった。上記布帛について、各種物性評価を行ない、その結果を表1に示した。
【0024】
(比較例3)
パイル糸として、通常ポリエステル繊維からなる30番双糸の紡績糸を用い、経及び緯方向の地糸には20番単糸のポリエステル/レーヨン混紡糸を用い、通常方法により、起毛パイル布帛を作製した。次に、一般に実施される方法により、染色加工を行なった後、さらに、加熱エンボスローラーにて、パイル布帛に圧着し、繊維を部分的に熱溶着することで、表面に凹凸模様を形成した。得られた布帛は、高温処理のため、強度低下と風合の硬化が生じた。上記パイル布帛の物性評価を行ない、その結果を表1に示した。尚、表中*1)の「C−ES」は偏芯型複合繊維を、*2)の「ES」はレキュラーポリエステル繊維を意味する。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】
本発明による凹凸感のある意匠性に優れた表面形状を有すると同時に、品質の良好な起毛パイル布帛が得られる。さらに、本発明のパイル布帛は、ソフトな風合や、膨らみ感を有しているのが特徴どあり、パイル糸に用いる繊維の種類や混紡率を任意に設定することで、様々な表面形態や風合を有するパイル布帛を形成することができる。
また、本発明においては、繊維物性の劣化を生じるような加工条件や、特別な加工装置及び処理剤等を必要としないため、加工コストも安価であるのが特長であり、製品の高品質化を同時に図れることが利点である。
Claims (3)
- 単繊維繊度が0.5以上4d以下のポリエステル系偏芯型複合繊維を55重量%以上含有してなる潜在捲縮性紡績糸と、通常の非捲縮性繊維紡績糸とをパイル糸に用いてなり、前記ポリエステル系偏芯型複合繊維が160℃、無荷重下での熱処理時に発現する捲縮数が40ケ/インチ以上であり、前記潜在捲縮性紡績糸の捲縮発現により凹凸模様が形成されてなることを特徴とする意匠性パイル布帛。
- 偏芯型複合繊維がエチレンテレフタレート単位を主体とする全酸成分に対し5−スルホイソフタル酸金属塩を1〜3モル%及びイソフタル酸を2〜10モル%含有する共重合ポリエステル(A)と、ポリエチレンテレフタレートまたはエチレンテレフタレート単位を主体とした前記共重合ポリエステル(A)よりも低収縮性の共重合ポリエステル(B)とが偏芯的に接合されている複合繊維であり、潜在捲縮性紡績糸の10%伸長時の伸長回復率が70%以上であることを特徴とする請求項1記載の意匠性パイル布帛。
- パイルが減量率5%以上20%以下の減量加工が施されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の意匠性パイル布帛。
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