JP3680723B2 - 交織織物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タテ糸(またはヨコ糸)に高収縮成分をポリトリメチレンテレフタレートとし、低収縮成分をポリエステルとしたサイドバイサイド型に貼り合わせた捲縮発現能を有する複合繊維のマルチフィラメント糸、ヨコ糸(またはタテ糸)に有撚の短繊維紡績糸を用いた、ソフトなふくらみを有し、上品な表面感と高いストレッチを有する交織織物に関する。さらに詳しくは、従来の短繊維紡績糸単独では得られなかったふくらみと感とストレッチ性を合わせ持ち、またポリエステルマルチフィラメント織物では得られなかった、糸ムラ感のある自然な表情の表面感の優勢結合効果を有し、さらに着用時に快適な、また縫製での仕立て映え性に優れるカジュアルシャツ・パンツのような一般的なアウター、ゴルフやスキーなどのスポーツ用途、アンダーシャツのようなインナー用途に適する交織織物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これまで交織織物として合成繊維と天然繊維、短繊維と長繊維など各種繊維の、それぞれの特性を優性結合して特徴のある商品を創出してきた。例えば、薄地織物分野のカジュアルシャツ、パンツ地として、タテ糸にポリエステル綿混紡の短繊維紡績糸、ヨコ糸に単糸繊度が極細のポリエステルマルチフィラメント糸の有撚糸を配し、引裂強力面をアップし、またコスト的に安価にできる高級綿の風合いを表現している。また、タテ糸に新合繊の異収縮混繊糸、ヨコ糸にポリエステル綿混紡糸、麻混紡糸などを配して高い反発感とフクラミ感を持ち、短繊維の表面感(ムラ感など)や機能性(吸湿性など)を活かした交織織物が数多く商品化されている。
【0003】
しかしながら、近年、織物特性にストレッチ性を付与することが重要な要素になってきている。織物にストレッチ性を付与する技術は、従来ポリウレタン系弾性繊維、すなわちスパンデックスのカバーリング糸の使用によるものが主流であるが、当該織物は原糸・高次加工費の面でコストに問題があり、またスパンデックスではストレッチ性のパワーが強く、すべての用途に適用できるものではなく、また重いという欠点もあり、ソフトなストレッチ、高い伸長回復性といった機能性が新たに求められている。さらに、最近原糸から捲縮発現能を持つコンジュゲートフィラメント糸がストレッチ性素材として注目されいる。例えば、特開平11−043835号公報に見られる技術は、コンジュケートフィラメント糸に適正な実撚を施し、より高いコイル状捲縮を作り、高いストレッチ性を得ようとするものであり、該技術を応用して特開2000−212857号公報に交織織物素材として提案されている。しかしながら、ポリウレタン系弾性繊維と比較するとパワーが弱く、高い実撚を施す必要性からコストアップになり、また伸長回復性にも劣るという欠点が存在する。時代の要求としてして高齢化社会における衣料品に対する品質において、介護される人に対して介護する側の衣料として従来のニットジャージと異なる外着としても普通のシルエットであり、高いストレッチ性と回復性のある織物機能素材の要求が強く、また健常高齢者のスポーツ着兼外出着としても使用できる仕立て映えが良く、運動機能性ストレッチ特性を有する布帛に対する要求が極めて高くなってきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、有撚の短繊維紡績糸をタテ糸(またはヨコ糸)に配し、ヨコ糸(またはタテ糸)に高収縮成分をポリトリメチレンテレフタレートとし、低収縮成分をポリエステルとし、かつポリトリメチレンテレフタレートを35〜75重量%とした2種類のポリエステル系重合体を繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わせ、かつ実質的に実撚を有しない捲縮発現能を有する複合繊維のマルチフィラメント糸を使用して、ソフトなふくらみを有し上品な表面感とタテまたはヨコ方向に高いストレッチ性と回復性を有する交織織物を提供することを目的とするものである。さらに詳しくは、従来の短繊維紡績糸単独では得られなかったふくらみと反発性、およびストレッチ性と回復性を合わせ持ち、またポリエステルマルチフィラメント織物では得られなかった、糸ムラ感のある自然な表情の表面感の優勢結合効果を有し、さらに着用時に快適なソフトストレッチ性と回復性があり、また縫製での仕立て映え性に優れる交織織物を提供すること目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため次の構成を有する。すなわち、有撚の短繊維紡績糸をタテ糸(またはヨコ糸)に配し、高収縮成分をポリトリメチレンテレフタレートとし、低収縮成分をポリエステルとし、かつポリトリメチレンテレフタレートを35〜75重量%とした2種類のポリエステル系重合体を繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わせ、かつ実質的に実撚を有しない捲縮発現能を有する複合繊維のマルチフィラメント糸をヨコ糸(またはタテ糸)に配したシボ感のない織物であって、タテ方向および/またはヨコ方向に10%以上のの伸長率を有することを特徴とする交織織物である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる織物のタテ糸およびヨコ糸を構成する原糸について説明する。タテ糸あるいはヨコ糸のいずれかに高収縮成分をポリトリメチレンテレフタレートとし、低収縮成分をポリエステルとし、かつポリトリメチレンテレフタレートを35〜75重量%とした2種類のポリエステル系重合体を繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わせ、かつ実質的に実撚を有しない捲縮発現能を有する複合繊維のマルチフィラメント糸を使用して製織し、80℃以上の湿熱処理により捲縮発現されて高いストレッチ性と回復性が得られる。タテ糸に上記サイドバイサイド型の複合繊維を使用した場合には、ヨコ糸には、短繊維から構成される紡績糸を配し、タテ糸に上記短繊維から構成される紡績糸を配した場合には、ヨコ糸には、上記サイドバイサイド型の複合繊維を配するものである。
【0009】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
サイドバイサイド型の複合繊維は、固有粘度や共重合成分、共重合率等が異なる重合体を貼り合わせ、それらの弾性回復特性や収縮特性の差によって、捲縮を発現するものである。固有粘度差を有するサイドバイサイド型複合の場合、紡糸、延伸時に高固有粘度側に応力が集中するため、2成分間で内部歪みが異なる。そのため、延伸後の弾性回復率差および織物の熱処理工程での熱収縮率差により高粘度側が大きく収縮し、単繊維内で歪みが生じて3次元コイル捲縮の形態をとる。この3次元コイルの径および単位繊維長当たりのコイル数は、高収縮成分と低収縮成分との収縮差(弾性回復率差を含む)によって決まるといってもよく、収縮差が大きいほどコイル径が小さく、単位繊維長当たりのコイル数が多くなる。
【0011】
ストレッチ素材として要求されるコイル捲縮は、コイル径が小さく、単位繊維長当たりのコイル数が多い(伸長特性に優れ、見映えが良い)、コイルの耐へたり性が良い(伸縮回数に応じたコイルのへたり量が小さく、ストレッチ保持性に優れる)、さらにはコイルの伸長回復時におけるヒステリシスロスが小さい(弾発性に優れ、フィット感がよい)等である。これらの要求を満足しつつ、ポリエステルとしての特性、例えば適度な張り腰、ドレープ性、高染色堅牢性を有することで、トータルバランスに優れたストレッチ素材とすることができる。
【0012】
ここで、前記のコイル特性を満足するためには高収縮成分(高粘度成分)の特性が重要となる。コイルの伸縮特性は、低収縮成分を支点とした高収縮成分の伸縮特性が支配的となるため、高収縮成分に用いる重合体には高い伸長性および回復性が要求される。
【0013】
そこで、本発明者らはポリエステルの特性を損なうことなく前記特性を満足させるために鋭意検討した結果、高収縮成分にポリトリメチレンテレフタレート(以下PTTと略記する)を主体としたポリエステルを用いることを見出した。PTT繊維は、代表的なポリエステル繊維であるポリエチレンテレフタレート(以下PETと略記する)やポリブチレンテレフタレート(以下PBTと略記する)繊維と同等の力学的特性や化学的特性を有しつつ、伸長回復性が極めて優れている。これは、PTTの結晶構造においてアルキレングリコール部のメチレン鎖がゴーシュ−ゴーシュの構造(分子鎖が90度に屈曲)であること、さらにはベンゼン環同士の相互作用(スタッキング、並列)による拘束点密度が低く、フレキシビリティーが高いことから、メチレン基の回転により分子鎖が容易に伸長・回復するためと考えている。
【0014】
ここで、本発明におけるPTTとは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルである。ただし、20モル%、より好ましくは10モル%以下の割合で他のエステル結合の形成が可能な共重合成分を含むものであってもよい。共重合可能な化合物として、例えばイソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを添加してもよい。
【0015】
また、低収縮成分(低粘度成分)には高収縮成分であるPTTとの界面接着性が良好で、製糸性が安定している繊維形成性ポリエステルであれば特に限定されるものではないが、力学的特性、化学的特性および原料価格を考慮すると、繊維形成能のあるPETが好ましい。
【0016】
また、両成分の複合比率は製糸性および繊維長さ方向のコイルの寸法均質性の点で、高収縮成分:低収縮成分=75:25〜35:65(重量%)の範囲とするものであり、65:35〜45:55の範囲がより好ましい。
【0017】
本発明に用いるサイドバイサイド型複合繊維の断面形状は、丸断面、三角断面、マルチローバル断面、偏平断面、ダルマ型断面、X型断面などの異形断面であってもよいが、捲縮発現性と風合いのバランスから、丸断面の半円状サイドバイサイドや軽量、保温を狙った中空サイドバイサイド、ドライ風合いを狙った三角断面サイドバイサイドなどが好ましく用いられる。
【0018】
また、単糸繊度は、1.1〜10dtexが好ましく、より好ましくは1.1〜6dtexである。1.1dtex以上とすることで、捲縮によるストレッチ性の実効を得ることができ、また10dtex以下とすることによりシボ感を抑えることができる。
【0019】
また、前述のように布帛拘束力に打ち勝ってコイル捲縮を発現させるためには、サイドバイサイド型複合繊維の収縮応力が高いことが好ましい。布帛の熱処理工程で捲縮発現性を高めるには、収縮応力の極大を示す温度は110℃以上、応力の極大値は0.25cN/dtex以上であることが好ましく、より好ましくは応力の極大値は0.28cN/dtex以上、さらに好ましくは0.30cN/dtex以上である。また、シボの抑制という点では、0.50cN/dtex以下とすることが好ましい。
【0020】
また、本発明のサイドバイサイド型複合繊維は、荷重下捲縮発現伸長率が15%以上であることが好ましい。従来は、特開平6−322661号公報等に記載されているように、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を荷重フリーに近い状態で熱処理し、そこでの捲縮特性を規定していたが、これでは布帛拘束下での捲縮特性を必ずしも反映しているとはいえない。そこで本発明者らは、布帛拘束下での捲縮発現能力が重要であることに着目し、実施例中の「測定方法」に示すような方法で熱処理を行う、荷重下捲縮発現伸長率を定義した。
【0021】
すなわち、布帛内での拘束力に相当すると見立てた0.9×10-3cN/dtexの荷重を繊維カセに吊して熱処理することで、布帛拘束下での捲縮発現能力を繊維カセの捲縮伸長率で表すものである。この荷重下捲縮発現伸長率が高いほど捲縮発現能力が高いことを示しており、15%以上であれば本発明の目的とする適度なストレッチ特性を織物に与えることができる。捲縮伸長率は織物に求められるストレッチ性能と同様、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上である。
【0022】
なお、特公昭44−2504号公報に記載のような固有粘度差のあるPET系複合糸、あるいは特開平5−295634号公報、特開2000−212857号公報に記載のような非共重合PETと高収縮性共重合PETとの組み合わせでの複合糸では荷重下捲縮発現伸長率は高々10%程度である。
【0023】
本発明においては、このサイドバイサイド型複合繊維のマルチフィラメント糸は実質的に無撚のものを使用する。
【0025】
また本発明のサイドバイサイド型複合繊維は、捲縮の位相がマルチフィラメントを構成する単糸間で揃っていないことが好ましい。
【0026】
従来、サイドバイサイド型複合繊維を用いて織物とした場合、シボの発生が問題となったが、その要因としては、次のようなことが考えられる。つまり、サイドバイサイド型複合繊維において、マルチフィラメントの位相が揃い集合した形でSとZ方向のトルクを有するクリンプが交互に発現しやすく、するとSとZのトルクの変わり目においてマルチフィラメント全体が捩れ、これが織物においてはシボとなって品位の低下をもたらすのである。
【0027】
そこで本発明者らは、シボの発生を抑える手段として、単糸間の捲縮の位相をずらすことを見出した。ここで捲縮の位相とは、単糸においてS方向のトルクの捲縮とZ方向のトルクの捲縮とが交互に発現しているパターンをいう。通常、無撚の状態で捲縮を発現させると、織物構造における拘束や単糸同士の影響により捲縮の位相が揃いやすいのだが、例えばある単糸がSトルクの捲縮を呈している箇所に、別の単糸のZトルクの捲縮を配することにより、ストレッチ性は損なうことなく互いのトルクを消し合い、シボの発生を抑えることができる。
【0028】
高捲縮性ポリエステル系複合繊維の捲縮の位相をマルチフィラメントを構成する各単糸間でずらす方法としては、単糸間で低収縮成分と高収縮成分の複合比率を変更する方法、単糸間で単糸繊度を変更する方法などが考えられる。
【0029】
また、サイドバイサイド型複合繊維の未延伸糸を延伸し、次いで一旦巻き取ることなく弛緩させた後に巻き取る方法も考えられる。この方法は、複合比率や単糸繊度を制約することなく単糸間の捲縮の位相をずらすことができる。そのメカニズムとしては、次のようなことが考えられる。
【0030】
まず、PTTを用いたサイドバイサイド型複合繊維の場合は、前述のように弾性回復性に極めて優れているため、延伸時の張力からの弾性回復によっても捲縮を発現する。したがって、このサイドバイサイド型複合繊維の未延伸糸を延伸して巻き取り、解舒すると捲縮が発現するが、この場合は単糸同士が集束した状態であるため、互いに干渉し、単糸間の捲縮の位相が揃いやすくなってしまう。
【0031】
一方、延伸に次いで一旦巻き取ることなく弛緩させた後に巻き取る場合には、弛緩を行うローラー上およびローラー間においてはマルチフィラメントが扁平状に配列され、単糸同士が集束していないため、単糸同士が干渉せずに独立して捲縮を発現することができるため、捲縮の位相をずらすことができる。
【0032】
弛緩における好ましいリラックス率は0.95〜0.80倍、より好ましくは0.92〜0.85倍である。
【0033】
次に、交織の相手原糸として、短繊維紡績糸はポリエステル100%だけでなく天然繊維の綿、羊毛の混紡糸、またレーヨンなど再生繊維の混紡糸が包含される。この紡績糸は当該交織織物において、相手原糸との間で織物の毛羽によるソフトなタッチ、表面の自然な糸ムラによる表情に寄与する効果を担うものであり、使用される短繊維の間に染色性の異なるものであれば、さらに効果的である。
【0034】
この点からポリエステル100%においては染色性を異にできるカチオン可染のポリエステルが好んで使用される。また天然繊維では得られないソフトなタッチを得るため1〜0.4デニールの極細繊維が使用できる。極細繊維は直紡型、分割、海島型であっても良いが、海島型は、アルカリ減量処理により糸間の空隙ができ染色前のリラックス熱処理で捲縮発現後さらに染色でのサイドバイサイド型の複合繊維の捲縮が発現しやすくなり好ましい。
【0035】
また、サイドバイサイド型の短繊維を使用した紡績糸の場合、タテおよびヨコの両方向に伸縮性を有するいわゆる2ウエイストレッチ性を得る上で効果的である。また、羊毛、あるいはレーヨンを使用するとストレッチ性によい効果を現す。これは羊毛の場合も染色工程での織物が収縮するメカニズムは、羊毛繊維が乾・湿で螺旋状に収縮するいわゆる体積の増加を伴ったものであり、タテ糸およびヨコ糸間の空隙が大きくなるためと推定できる。レーヨンの場合は繊維の湿潤膨潤効果により、サイドバイサイド型の複合繊維の収縮を補助する効果があるためと推定する。
【0036】
本発明の交織織物は、タテ方向またはヨコ方向の一方、もしくは両方について、織物伸長率が10%以上であることが重要である。織物伸長率とは、実施例中の「測定方法」にて定義されるストレッチ性のパラメータである。例えば、シャツ地において織物伸長率が10%未満である場合には、着用時に伸縮性の快適感を得るのは難しい。より好ましくは15%以上である。
【0037】
次に製織について説明する。まず、織物にするに当たり、サイドバイサイド型複合繊維は実質的に無撚で使用される。実質的に無撚とは、撚糸機など物理的に実撚を施さないことを意味する。無撚のまま、タテ糸に使用する際は、通常のポリエステル加工糸や生糸と同様に工程通過性を良くするために糊付される。また、短繊維紡績糸をタテ糸に使用する場合は糊付けが重要となる。一方、サイドバイサイド型の複合繊維をヨコ糸に無撚で使用する場合はパーン、ボビン、ドラムなどの形状で織機に供給される。
【0038】
織機はサイドバイサイド型の複合繊維をタテ糸の場合ウオータジェット、エアージェット、レピアなど制約はないが、タテ糸が紡績糸の場合、ウオータジェットは適さない。織物の組織は特に制約を受けるものでないが、タテ・ヨコ密度のバランスが重要であり、サイドバイサイド型の複合繊維の捲縮構造を発現させるため、求めるストレッチ性にあわせ設定する。密度の適正範囲は、
CF=KW ・DW 1/2 +KF ・DF 1/2
ただし、CF:タテヨコ合計のカバーファクター
KW :タテ糸密度(本/2.54cm)
KF :ヨコ糸密度(本/2.54cm)
DW :タテ糸繊度(dtex換算)
DF :ヨコ糸繊度(dtex換算)
において、CFが1,800〜3,000が推奨される。1,800より小さいと品質問題があり、3,000より大きいと、ストレッチ性、ソフトなふくらみが達成できない。
【0039】
次に、加工工程は一般的なリラックス、中間セット、アルカリ減量、染色、仕上げセットによる通常条件で実施可能である。特に注意を必要とするのはリラックス処理である。サイドバイサイド型の複合繊維の捲縮発現力が非常に高いため、過度なリラックス処理を施すと表面にシボが発生し品位を損ねる。したがって、リラックス方法は、通常のオープンソーパなど拡布連続リラックス機が好ましい。液流リラックスはシワやシボ発生が懸念される。リラックス工程後、通常染色前にアルカリ減量処理をするが、該発明の交織織物においては余り必要としない。また、染色条件は通常のポリエステル交織織物に使用される条件でよい。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
(測定方法)
(1)織物伸長率
JIS L−1096の伸長率A法(定速伸長法)で測定した。
(2)荷重下捲縮発現伸長率
荷重下捲縮発現伸長率(%)=[(L0−L1)/L0]×100
L0:繊維カセに0.9×10-3cN/dtexの荷重を吊した状態で沸騰水処理を15分間行い風乾し、さらに同荷重を吊した状態で160℃乾熱処理を15分間行った後、前記熱処理荷重を取り除き、180×10-3cN/dtex荷重を吊した時のカセ長。
L1:L0を測定後、L0測定荷重を取り除いて再び0.9×10-3cN/dtexの荷重を吊した時のカセ長。
(3)収縮応力
カネボウエンジニアリング(株)社製熱応力測定器で、昇温速度150℃/分で 測定した。サンプルは10cm×2のループとし、初期張力は繊度(デシテックス)×0.9×(1/30)gfとした。
【0041】
(実施例1)
タテ糸の有撚短繊維に市販されている綿65%ポリエステル35%の131dtex(綿番手45s)番を使用した。一方ヨコ糸のサイドバイサイド型の複合繊維は、次のようにして得た。固有粘度(IV)が1.18のホモPTTと固有粘度(IV)が0.60のホモPETをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度280℃で24孔の複合紡糸口金から複合比(重量%)50:50で吐出し、紡糸速度1400m/分で引取り165デシテックス、24フィラメントのサイドバイサイド型複合未延伸糸を得た。さらにホットロール−熱板系延伸機(接糸長:20cm、表面粗度:3S)を用い、ホットロール温度85℃、熱板温度145℃、延伸倍率3.0倍で延伸して55デシテックス、24フィラメント(単繊維繊度2.3デシテックス)の延伸糸を得た。紡糸、延伸とも製糸性は良好であり、糸切れは発生しなかった。
得られたサイドバイサイド型複合繊維は、
収縮応力の極大温度 :130℃
収縮応力の極大値 :0.33cN/dtex
荷重下捲縮発現伸長率:20.5%
と優れた捲縮発現能力を示した。この高捲縮性ポリエステル複合繊維を合糸して110デシテックスとして供糸した。製織はエアージェット織機を用い平組織で、生機のタテ・ヨコ密度を116本/2.54cm、80本/2.54cmとした。得られた生機を通常の綿混紡織物の加工条件に準じて加工した。まず毛焼きを施し、続いてオープンソーパなど拡布連続リラックス機により糊抜き、精錬、漂白を実施した。続いて乾熱190℃でピンテンター方式により中間セットし、アルカリ減量はを省略した。染色は液流染色機を用い130℃でポリエステル系の染色を行ないその後綿サイドを染色した。その後180℃でピンテンター方式により仕上セットした。仕上げ反のタテ・ヨコ密度は140本/2.54cm、84本/2.54cmとなり、タテ糸およびヨコ糸のトータルカバーファクターCF値は2482であった。この織物はシボ感のないソフトな風合いを有し、ヨコ方向にソフトなストレッチを有する織物であった。この織物の織物伸長率を測定した結果、緯方向は23%であった。
【0042】
得られた織物をカジュアル用シャツ、パンツとして使用したところ動きへの抵抗が少なく着用快適性に優れるものであった。
【0043】
(比較例1)
タテ糸および織物規格は実施例1と同じで、ヨコ糸に極限粘度が0.51のポリエチレンテレフタレート100%からなる低粘度成分と、極限粘度が0.78のポリエチレンテレフタレートからなる高粘度成分とを、重量複合比50:50で並列型に貼り合わせたコンジュゲートマルチフィラメント未延伸糸を紡糸した後、通常の延伸機により延伸を行い、55dtex−12フィラメントを製造した。このマルチフィラメント糸を用い、2本合糸で110dtex−24フィラメントとした後、ダブルツイスターでSおよびZ撚に1000T/m、の追撚を施した。次いで、80℃で40分間真空スチームセットにより撚止めセットを行いヨコ糸とした供糸した。
【0044】
得られた生機は、リラックス機に液流染色機を用い、また、アルカリ減量を5%施した。それ以外は実施例1と同じ加工を実施した。得られた仕上品のタテ・ヨコ密度は124本/2.54cm、81本/2.54cmでタテ糸およびヨコ糸のトータルカバーファクターCF値は2482であった。織物は表面品位はシボがなく良好であったが、風合いはやや硬く、ソフト感に欠けるものであった。さらに、ヨコ方向の織物伸長率を測定した結果、7%と低く、着用快適感を満足するレベルではなかった。
【0045】
(実施例2)
タテ糸に実施例1で得られたサイドバイサイド型の複合繊維110dtex−24フィラメントの無撚糸を荒巻整経後、糊付を施しビーミングしてタテ糸としてエアージェットルームに仕掛けた。ヨコ糸として実施例1のタテ糸を使用して、生機のタテ・ヨコ密度を100/2.54cm、75本/2.54cmとし平組織で製織した。得られた生機の加工は実施例1と同じ条件で実施した。仕上品の
タテ・ヨコ密度は135本/2.54cm、85本/2.54cmでトータルCF値は2388であった。
【0046】
得られた仕上品は、シボ感のないきれいな表面感をし、非常にソフトな風合いでパンツ地として好適なものであった。また、タテ方向の伸長回復率も25%を有し着用時の快適性を充分満足するれべるのものであった。
【0050】
【発明の効果】
有撚の短繊維紡績糸と高収縮成分をポリトリメチレンテレフタレートとし、低収縮成分をポリエステルとし、かつポリトリメチレンテレフタレートを35〜75重量%とした2種類のポリエステル系重合体を繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わせ、かつ実質的に実撚を有しない捲縮発現能を有する無撚の複合繊維をそれぞれタテ糸またはヨコ糸に配した交織織物により、コスト的に安価で、シボ感がなく、非常にソフトなタッチの風合いと高いストレッチ性と回復性に優れた交織織物が得られる。
Claims (8)
- 有撚の短繊維紡績糸をタテ糸(またはヨコ糸)に配し、高収縮成分をポリトリメチレンテレフタレートとし、低収縮成分をポリエステルとし、かつポリトリメチレンテレフタレートを35〜75重量%とした2種類のポリエステル系重合体を繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わせ、かつ実質的に実撚を有しない捲縮発現能を有する複合繊維のマルチフィラメント糸をヨコ糸(またはタテ糸)に配したシボ感のない織物であって、タテ方向および/またはヨコ方向に10%以上の伸長率を有することを特徴とする交織織物。
- 前記サイドバイサイド型の複合繊維のマルチフィラメント糸が捲縮の位相がずれていることを特徴とする請求項1記載の交織織物。
- 前記短繊維紡績糸が収縮特性を異にする2種類以上のポリエステル繊維からなる混紡によるものであることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の交織織物。
- 前記短繊維紡績糸がカチオン可染型ポリエステルを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の交織織物。
- 前記短繊維紡績糸が0.2〜6.5重量%のセラミックス添加ポリエステルを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の交織織物。
- 前記短繊維紡績糸が中空断面形状ポリエステルを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の交織織物。
- 前記短繊維紡績糸がポリエステル短繊維と、綿、羊毛などの天然繊維、もしくはセルロース系短繊維から構成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の交織織物。
- 前記サイドバイサイド型マルチフィラメント糸が染色加工前に、その収縮応力の極大を示す温度が110℃以上であり、かつその収縮応力の極大値が0.25cN/dtex以上であり、荷重下捲縮発現伸張率が15%以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の交織織物。
Priority Applications (1)
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