JP3800915B2 - ポリエステル系ストレッチ織物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、着用快適な高ソフトストレッチを有するポリエステル系ストレッチ織物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルは、機械的特性をはじめ様々な優れた特性を有しているため、幅広く展開されている。また、近年のストレッチブームによりポリエステル系織物にもより優れたストレッチ性を付与することが望まれている。
【0003】
ポリエステル系繊維にストレッチ性を付与する手段として、仮撚加工糸や、弾性繊維の混用他に、サイドバイサイド型複合繊維が種々提案されている。サイドバイサイド型複合繊維は、仮撚加工糸のようなガサツキ、フカツキ感もなく、またポリウレタン系のような弾性繊維の混用のように、風合いやドレープ性、染色性に劣るといった問題もない。
【0004】
例えば、特公昭44−2504号公報や特開平4−308271号公報には固有粘度差あるいは極限粘度差を有するポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)のサイドバイサイド複合糸、特開平5−295634号公報には非共重合PETとそれより高収縮性の共重合PETのサイドバイサイド複合糸が記載されている。このようなサイドバイサイド型複合繊維を用いれば、ある程度のストレッチ性のある糸を得ることはできるが、織物にした際のストレッチ性が不充分となり、満足なストレッチ性織物が得られにくいという問題があった。これは、上記したようなサイドバイサイド型複合糸は織物拘束中での捲縮発現能力が低い、あるいは捲縮が外力によりヘタリ易いためである。サイドバイサイド型複合糸はポリウレタン系繊維のように繊維自身の伸縮によるストレッチ性を利用しているのではなく、複合ポリマ間の収縮率差によって生じる3次元コイルの伸縮をストレッチ性に利用している。このため、例えば、ポリマーの収縮が制限される織物拘束下で熱処理を受けるとそのまま熱固定され、それ以上の収縮能を失うためコイルが十分に発現せず、上記問題が発生するものと考えられる。
【0005】
一方、従来のサイドバイサイド型複合繊維を用いた織物においてたとえある程度のストレッチ性を得ることができたとしても、シボが発生するという問題があった。シボの発生した表面品位はブラウス、風呂敷等の一部の物では好まれるが外衣、スポーツ用途としては好まれる物ではなく、またシボ形態によっては肌触りが粗鋼になり好ましくない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような従来技術では得られなかった、表面にシボ感がなく、ソフト風合いを有し、かつ着用快適性に優れた高ソフトストレッチ性と回復性を有するポリエステル系ストレッチ織物を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記した課題を解決するため本発明のポリエステル系ストレッチ織物は、主として次の構成を有する。すなわち、一方がポリトリメチレンテレフタレートを主体としたポリエステルである2種類のポリエステル系重合体を繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わせた複合繊維のマルチフィラメントを下記式で示す撚係数Kが3000以上8000以下で加撚したことにより該マルチフィラメントのトルクをSまたはZの一方に規定した中空のスプリング状の形態をとる糸条を経糸および緯糸の少なくとも一方に用いたシボ感のない織物であって、当該糸条を用いた方向の織物伸長率が15%以上であるポリエステル系ストレッチ織物である。
T=K×[1/D1/2 ]
T:1m当たりの撚数、D:糸条の繊度(dtex)×0.9
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステル系ストレッチ織物には、経糸および緯糸の少なくとも一方に、ポリエステル系のサイドバイサイド型複合繊維を用いる。
【0009】
サイドバイサイド型の複合繊維は、固有粘度や共重合成分、共重合率等が異なる重合体を貼り合わせ、それらの弾性回復特性や収縮特性の差によって、捲縮を発現するものである。固有粘度差を有するサイドバイサイド型複合の場合、紡糸、延伸時に高固有粘度側に応力が集中するため、2成分間で内部歪みが異なる。そのため、延伸後の弾性回復率差および織物の熱処理工程での熱収縮率差により高粘度側が大きく収縮し、単繊維内で歪みが生じて3次元コイル捲縮の形態をとる。この3次元コイルの径および単位繊維長当たりのコイル数は、高収縮成分と低収縮成分との収縮差(弾性回復率差を含む)によって決まると言ってもよく、収縮差が大きいほどコイル径が小さく、単位繊維長当たりのコイル数が多くなる。
【0010】
ストレッチ素材として要求されるコイル捲縮は、コイル径が小さく、単位繊維長当たりのコイル数が多い(伸長特性に優れ、見映えが良い)、コイルの耐へたり性が良い(伸縮回数に応じたコイルのへたり量が小さく、ストレッチ保持性に優れる)、さらにはコイルの伸長回復時におけるヒステリシスロスが小さい(弾発性に優れ、フィット感がよい)等である。これらの要求を全て満足しつつ、ポリエステルとしての特性、例えば適度な張り腰、ドレープ性、高染色堅牢性を有することで、トータルバランスに優れたストレッチ素材とすることができる。
【0011】
ここで、前記のコイル特性を満足するためには高収縮成分(高粘度成分)の特性が重要となる。コイルの伸縮特性は、低収縮成分を支点とした高収縮成分の伸縮特性が支配的となるため、高収縮成分に用いる重合体には高い伸長性および回復性が要求される。
【0012】
更に本発明においては、後述するような加撚を施すため、無撚の場合に比して大きな拘束力が織物構造において繊維にかかるが、この様な状態においても、上記のような捲縮を発現できることが必要とされる。
【0013】
そこで、本発明者らはポリエステルの特性を損なうことなく前記特性を満足させるために鋭意検討した結果、高収縮成分にポリトリメチレンテレフタレート(以下PTTと略記する)を主体としたポリエステルを用いることを見出した。PTT繊維は、代表的なポリエステル繊維であるポリエチレンテレフタレート(以下PETと略記する)やポリブチレンテレフタレート(以下PBTと略記する)繊維と同等の力学的特性や化学的特性を有しつつ、伸長回復性が極めて優れている。これは、PTTの結晶構造においてアルキレングリコール部のメチレン鎖がゴーシュ−ゴーシュの構造(分子鎖が90度に屈曲)であること、さらにはベンゼン環同士の相互作用(スタッキング、並列)による拘束点密度が低く、フレキシビリティーが高いことから、メチレン基の回転により分子鎖が容易に伸長・回復するためと考えている。
【0014】
ここで、本発明におけるPTTとは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルである。ただし、20モル%、より好ましくは10モル%以下の割合で他のエステル結合の形成が可能な共重合成分を含むものであってもよい。共重合可能な化合物として、例えばイソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを添加してもよい。
【0015】
また、低収縮成分(低粘度成分)には高収縮成分であるPTTとの界面接着性が良好で、製糸性が安定している繊維形成性ポリエステルであれば特に限定されるものではないが、力学的特性、化学的特性および原料価格を考慮すると、繊維形成能のあるPETが好ましい。
【0016】
また、両成分の複合比率は製糸性および繊維長さ方向のコイルの寸法均質性の点で、高収縮成分:低収縮成分=75:25〜35:65(重量%)の範囲が好ましく、65:35〜45:55の範囲がより好ましい。
【0017】
本発明に用いるサイドバイサイド型複合繊維の断面形状は、丸断面、三角断面、マルチローバル断面、偏平断面、ダルマ型断面、X型断面その他公知の異形断面であってもよいが、捲縮発現性と風合いのバランスから、丸断面の半円状サイドバイサイドや軽量、保温を狙った中空サイドバイサイド、ドライ風合いを狙った三角断面サイドバイサイド等が好ましく用いられる。
【0018】
また、単糸繊度は、1.1〜10dtexが好ましく、より好ましくは1.1〜6dtexである。1.1dtex以上とすることで、捲縮によるストレッチ性の実効を得ることができ、また10dtex以下とすることによりシボ感を抑えることができる。
【0019】
また、前述のように布帛拘束力に打ち勝ってコイル捲縮を発現させるためには、サイドバイサイド型複合繊維の収縮応力が高いことが好ましい。布帛の熱処理工程で捲縮発現性を高めるには、収縮応力の極大を示す温度は110℃以上、応力の極大値は0.25cN/dtex以上であることが好ましく、より好ましくは応力の極大値は0.28cN/dtex以上、更に好ましくは0.30cN/dtex以上である。又、シボの抑制という点では、0.50cN/dtex以下とすることが好ましい。
【0020】
また、本発明のサイドバイサイド型複合繊維は、荷重下捲縮発現伸長率が15%以上であることが好ましい。従来は、特開平6-322661号公報等に記載されているように、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を荷重フリーに近い状態で熱処理し、そこでの捲縮特性を規定していたが、これでは布帛拘束下での捲縮特性を必ずしも反映しているとは言えない。そこで本発明者らは、布帛拘束下での捲縮発現能力が重要であることに着目し、実施例中の「測定方法」に示すような方法で熱処理を行う、荷重下捲縮発現伸長率を定義した。
【0021】
すなわち、布帛内での拘束力に相当すると見立てた0.9×10-3cN/dtexの荷重を繊維カセに吊して熱処理することで、布帛拘束下での捲縮発現能力を繊維カセの捲縮伸長率で表すものである。この荷重下捲縮発現伸長率が高いほど捲縮発現能力が高いことを示しており、15%以上であれば本発明の目的とする適度なストレッチ特性を織物に与えることができる。捲縮伸長率は織物に求められるストレッチ性能と同様、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上である。
【0022】
なお、特公昭44-2504号公報記載のような固有粘度差のあるPET系複合糸、あるいは特開平5-295634号公報記載のような非共重合PETと高収縮性共重合PETとの組み合わせでの複合糸では荷重下捲縮発現伸長率は高々10%程度である。
【0023】
本発明で用いるサイドバイサイド型複合繊維は、下記式で示す撚係数Kが3000〜15000で加撚することが重要である。
T=K×[1/D1/2 ]
T:1m当たりの撚数、D:糸条の繊度(dtex)×0.9
上記条件で加撚を施すことにより、織物にした際のシボの発生による品位の低下を防ぐことができる。
【0024】
従来、サイドバイサイド型複合繊維を用いて織物とした場合、シボの発生が問題となったが、その要因としては、次のようなことが考えられる。つまり、サイドバイサイド型複合繊維において、マルチフィラメントの位相が揃い集合した形でSとZ方向のトルクを有するクリンプが交互に発現しやすく、するとSとZのトルクの変わり目においてマルチフィラメント全体が捩れ、これが織物においてはシボとなって品位の低下をもたらすのである。
【0025】
そこで本発明のストレッチ織物においては、シボの発生を抑える手段として、上記の条件で加撚を施すことによりクリンプのトルクをSかZの一方に規定し、シボを抑えることとした。またこの加撚により、マルチフィラメントは中空のスプリング状の形態をとり、抵抗の少ない滑らかなストレッチ性を得ることができる。
【0026】
撚係数Kは、3000〜15000の範囲内とすることが重要である、撚係数Kが3000未満であると、シボを抑制することができない。撚係数Kが15000を超えると、目的とするストレッチが減少する。すなわち本発明では、サイドバイサイド型複合繊維の捲縮発現力と撚係数の適正な関係が重要であり、サイドバイサイド型複合繊維において高収縮成分をPTTとすることと、上記撚係数Kの範囲の組み合わせにより効果を奏するものである。
【0027】
また、撚係数Kは、織密度が小さく織物組織の交錯点が少ない場合には撚係数Kは上記範囲内で小さい傾向が好ましく、織密度が大きく交錯点が多い場合には撚係数Kは上記範囲内で大きい傾向が好ましい。例えば朱子織物のように交錯点の少ない組織においては撚係数Kは3000以上が好ましく、より好ましくは5000以上である。一方、平織物のように交錯点の多い組織においては好ましくは撚係数5000以上、より好ましくは8000以上である。また、ストレッチを充分に維持する点では、より好ましくは13000以下である。
【0028】
尚、撚糸方法は特に制限するものではなく、公知の技術で実施できる。又、撚糸後、より止めセットを実施しても良いが、セット温度は捲縮発現や製織に問題無い程度の低温が望ましい。
【0029】
加撚したサイドバイサイド型複合繊維糸条を経糸および緯糸の少なくとも一方のストレッチ付与を所望する方向に用い、ストレッチ織物とする。
【0030】
製織する織機においては限定するものではなく、ウオータジェットルーム、エアージェットルーム、レピアルームを用いることが出来る。
【0031】
上記加撚を施したサイドバイサイド型複合繊維糸条の他方の糸は任意に使用することが可能であり、表面感、風合い、使用用途により適宜選択することが出来る。
【0032】
他方に捲縮を有さない糸を用いる場合には、比較的シボが発現しやすいため、交錯点の少ない組織もしくは粗い織密度としたり、またはサイドバイサイド型複合繊維糸条の撚係数Kを5000以上、更には8000以上とすることが好ましい。
【0033】
他方に仮撚加工糸を用いる場合には、比較的シボが発現しにくいためサイドバイサイド型複合繊維糸条の撚係数Kは比較的少ない撚係数3000以上が好ましく、より好ましくは5000以上の設定でシボの無い織物表面で且つ目標のストレッチが得られる。
【0034】
製織後のリラックス熱処理、中間セット、アルカリ減量染色、仕上げセット等は通常条件で実施可能であるが、リラックス熱処理においては、加撚されたサイドバイサイド型複合繊維の潜在捲縮がスプリング構造として発現するように液中温度を80℃以上とすることが好ましい。
【0035】
本発明のポリエステル系ストレッチ織物は、経緯の少なくとも一方について、織物伸長率が15%以上であることが重要である。織物伸長率とは、実施例中の「測定方法」にて定義されるストレッチ性のパラメータである。織物伸長率が15%未満である場合には、人体の運動時の皮膚の伸縮に追随できず、満足の行く着心地のものが得られない。例えば、人体が肘を曲げる動作をした際の背中の皮膚の伸び率は14%であり、ジャケット等の上着においても15%以上が必要である。また例えば膝部の皮膚の伸び率は52%程度であり、使用部位に応じた高ストレッチ率の設定が好ましい。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例で詳細に説明する。
【0037】
(測定方法)
(1)織物伸長率
JIS L−1096の伸長率A法(定速伸長法)で測定した。
【0038】
(2)荷重下捲縮発現伸長率
荷重下捲縮発現伸長率(%)=[(L0−L1)/L0]×100
L0:繊維カセに0.9×10-3cN/dtexの荷重を吊した状態で沸騰水処理を15分間行い、風乾し、さらに同荷重を吊した状態で160℃乾熱処理を15分間行った後、前記熱処理荷重を取り除き、180×10-3cN/dtex荷重を吊した時のカセ長。
L1:L0を測定後、L0測定荷重を取り除いて再び0.9×10-3cN/dtexの荷重を吊した時のカセ長。
【0039】
(3)収縮応力
カネボウエンジニアリング(株)社製熱応力測定器で、昇温速度150℃/分で 測定した。サンプルは10cm×2のループとし、初期張力は繊度(デシテックス)
×0.9×(1/30)gfとした。
【0040】
(参考例1)
固有粘度(IV)が1.18のホモPTTと固有粘度(IV)が0.60のホモPETをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度280℃で24孔の複合紡糸口金から複合比(重量%)50:50で吐出し、紡糸速度1400m/分で引取り165デシテックス、24フィラメントのサイドバイサイド型複合未延伸糸を得た。さらにホットロール−熱板系延伸機(接糸長:20cm、表面粗度:3S)を用い、ホットロール温度85℃、熱板温度145℃、延伸倍率3.0倍で延伸して55デシテックス、24フィラメント(単繊維繊度2.3デシテックス)の延伸糸を得た。紡糸、延伸とも製糸性は良好であり、糸切れは発生しなかった。
【0041】
得られたサイドバイサイド型複合繊維は、
収縮応力の極大温度 :130℃
収縮応力の極大値 :0.33cN/dtex
荷重下捲縮発現伸長率:20.5%
と優れた捲縮発現能力を示した。
【0042】
得られた高捲縮性ポリエステル複合繊維を800t/m(撚係数K=8000に相当)の撚数で2本合撚して110デシテックスとして、次いで、70℃で40分間真空スチームセットにより撚り止めセットを行った。引き続いて、経糸と、緯糸の両方にこのマルチフィラメント糸を使用し、2/2綾組織の織物をウオータージェットルームにて98×76本/2.54cmの生機密度で製織した。
【0043】
得られた生機を次のように染色加工した。生機を、液流バッチ方式により110℃でリラックス熱処理し、乾熱190℃でピンテンター方式により中間セットし、15%のアルカリ減量をして、120℃で染色した。その後180℃でピンテンター方式により仕上セットした。仕上げ反の密度は134×98本/2.54cmであった。この織物はシボ感のないソフトな風合いを有し、経緯方向にソフトなストレッチを有する織物であった。この織物の織物伸長率を測定した結果、経方向は21%、緯方向は25%であった。
【0044】
得られた織物をテニス用パンツとして使用したところ運動時の動きへの抵抗が少なく着用快適性に優れる物であった。
【0045】
(参考例2)
経糸の2本合撚糸の撚数(撚係数)を150t/m(撚係数1500に相当)とし、緯糸として合撚することなく2本を引き揃えたのみとした以外は、参考例1を繰り返した。
【0046】
リラックス熱処理以降に細かいシボが発生して、仕上げセットでも解消出来なかった。
【0047】
また、シボ発現を制御するためリラックス温度を80℃まで下げた結果シボ発現は軽微になったが、いまだ満足するものではなかった。
【0048】
また、仕上げセットでシボが無くなるまで幅を広げた結果、仕上げ反の密度は108×88本/2.54cmであった。この織物のストレッチを測定した結果、経方向の織物伸長率は10%、緯方向の織物伸長率は4%で、ストレッチ性に劣るものであった。
【0049】
(参考例3)
経糸に84デシテックス72フイラメントの交絡を有するポリエステル仮撚加工糸を用い、緯糸は参考例1で得られたのと同じサイドバイサイド型複合繊維の2本合撚糸を用い、2/1綾組織の織物をウオータージェットルームにて110×80本/2.54cmの生機密度で製織した。
【0050】
得られた生機を参考例1と同様に染色等加工した。この時の仕上げ反の密度は155×90本/2.54cmであった。この織物はシボ感のないソフトな風合いを有し、緯方向にソフトなストレッチを有する織物であった。この織物のストレッチを測定した結果、経方向のストレッチは5%、緯方向のストレッチは32%であった。
【0051】
得られた織物をテニス用ショートパンツとして使用したところ運動時の抵抗が少なく着用快適性に優れる物であった。
(参考例4)
緯糸を比較例1と同様とした以外は参考例3を繰り返した。と同一組織、同一密度で製織した結果、生機密度もほぼ同一であった。
【0052】
リラックス熱処理以降にシボが発生した。
【0053】
【発明の効果】
本発明により、優れたストレッチ性と回復性を示し、かつシボが無く品位に優れた織物を得ることができる。
Claims (3)
- 一方がポリトリメチレンテレフタレートを主体としたポリエステルである2種類のポリエステル系重合体を繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わせた複合繊維のマルチフィラメントを下記式で示す撚係数Kが3000以上8000以下で加撚したことにより該マルチフィラメントのトルクをSまたはZの一方に規定した中空のスプリング状の形態をとる糸条を経糸および緯糸の少なくとも一方に用いたシボ感のない織物であって、当該糸条を用いた方向の織物伸長率が15%以上であるポリエステル系ストレッチ織物。
T=K×[1/D1/2 ]
T:1m当たりの撚数、D:糸条の繊度(dtex)×0.9 - サイドバイサイド型複合繊維が、その収縮応力の極大を示す温度が110℃以上であり、かつその収縮応力の極大値が0.25cN/dtex以上である請求項1に記載のポリエステル系ストレッチ織物。
- サイドバイサイド型複合繊維の荷重下捲縮発現伸張率が、15%以上である請求項1または2に記載のポリエステル系ストレッチ織物。
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