JP4038977B2 - 婦人衣服 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、着用に際して快適な高ソフトストレッチ性能を有するポリエステル系婦人衣服に関する。さらに詳しくは、ブラウス、ズボン、スカート、スーツなどの婦人衣服に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルは、機械的特性をはじめさまざまな優れた特性を有しているため、幅広く展開されている。また、近年のストレッチブームによりポリエステル系織物にもより優れたストレッチ性を付与することが望まれている。特に、婦人服の中でも、ブラウス、ズボン、スカート、スーツなどの婦人衣服においては、動きやすさ、着用時の快適性による意識も高まっている。
【0003】
ポリエステル系繊維にストレッチ性を付与する手段として、仮撚加工糸や、弾性繊維の混用の他に、サイドバイサイド型複合繊維が種々提案されている。サイドバイサイド型複合繊維は、仮撚加工糸のようなガサツキ、フカツキ感もなく、またポリウレタン系のような弾性繊維の混用のように、風合いやドレープ性、染色性に劣るといった問題もない。
【0004】
例えば、特公昭44−2504号公報や特開平4−308271号公報には固有粘度差あるいは極限粘度差を有するポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)のサイドバイサイド複合糸、特開平5−295634号公報には非共重合PETとそれより高収縮性の共重合PETのサイドバイサイド複合糸が記載されている。このようなサイドバイサイド型複合繊維を用いれば、ある程度のストレッチ性のある糸を得ることはできるが、織物にした際のストレッチ性が不充分となり、満足なストレッチ性織物が得られにくいという問題があった。これは、上記したようなサイドバイサイド型複合糸は織物拘束中での捲縮発現能力が低い、あるいは捲縮が外力によりヘタリ易いためである。サイドバイサイド型複合糸はポリウレタン系繊維のように繊維自身の伸縮によるストレッチ性を利用しているのではなく、複合ポリマ間の収縮率差によって生じる3次元コイルの伸縮をストレッチ性に利用している。このため、例えば、ポリマーの収縮が制限される織物拘束下で熱処理を受けるとそのまま熱固定され、それ以上の収縮能を失うためコイルが十分に発現せず、上記問題が発生するものと考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上述のような従来技術では得られなかった、着用快適性に優れた高ソフトストレッチ性と回復性を有し、さらに光沢や滑らかな触感、ソフトな風合いを有するポリエステル系婦人衣服を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記した課題を解決するため本発明のストレッチ性を有するポリエステル系婦人衣服は、主として次の構成を有する。
【0007】
すなわち、本発明は、一方がポリトリメチレンテレフタレートを主体としたポリエステルである2種類のポリエステル系重合体を繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わせた複合繊維のマルチフィラメント原糸を実質的に有撚りで、経糸および緯糸の少なくとも一方に用い、当該糸条はK=TD1/2の式(ただし、K:撚り係数、T:1メートル当たりの撚り数、D:デシテックス)において、K=6000〜25000の撚りが施されており、且つ、織物の目付が60g/m2〜400g/m2、織物伸長率が15%以上であって、伸長回復率が80%以上のストレッチ性を有する織地からなることを特徴とする婦人衣服である。
本発明の婦人衣服の好ましい態様によれば、衣服を構成する織地をなす織り糸が2または3本の合撚糸であり、その織り糸の繊度が50〜500デシテックスである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のストレッチ性を有するポリエステル系婦人外衣服は、経糸および緯糸の少なくとも一方に、ポリエステル系のサイドバイサイド型複合繊維を用いるものである。
【0009】
サイドバイサイド型の複合繊維は、固有粘度や共重合成分、共重合率等が異なる重合体を貼り合わせ、それらの弾性回復特性や収縮特性の差によって、捲縮を発現するものである。固有粘度差を有するサイドバイサイド型複合の場合、紡糸、延伸時に高固有粘度側に応力が集中するため、2成分間で内部歪みが異なる。そのため、延伸後の弾性回復率差および織物の熱処理工程での熱収縮率差により高粘度側が大きく収縮し、単繊維内で歪みが生じて3次元コイル捲縮の形態をとる。この3次元コイルの径および単位繊維長当たりのコイル数は、高収縮成分と低収縮成分との収縮差(弾性回復率差を含む)によって決まると言ってもよく、収縮差が大きいほどコイル径が小さく、単位繊維長当たりのコイル数が多くなる。
【0010】
ストレッチ素材として要求されるコイル捲縮は、コイル径が小さく、単位繊維長当たりのコイル数が多い(伸長特性に優れ、見映えが良い)、コイルの耐へたり性が良い(伸縮回数に応じたコイルのへたり量が小さく、ストレッチ保持性に優れる)、さらにはコイルの伸長回復時におけるヒステリシスロスが小さい(弾発性に優れ、フィット感がよい)等である。これらの要求を全て満足しつつ、ポリエステルとしての特性、例えば適度な張り腰、ドレープ性、高染色堅牢性を有することで、トータルバランスに優れたストレッチ素材とすることができる。
【0011】
ここで、前記のコイル特性を満足するためには高収縮成分(高粘度成分)の特性が重要となる。コイルの伸縮特性は、低収縮成分を支点とした高収縮成分の伸縮特性が支配的となるため、高収縮成分に用いる重合体には高い伸長性および回復性が要求される。
【0012】
そこで、本発明者らはポリエステルの特性を損なうことなく前記特性を満足させるために鋭意検討した結果、高収縮成分にポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTと略記する)を主体としたポリエステルを用いることを見出した。PTT繊維は、代表的なポリエステル繊維であるポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略記する)繊維と同等の力学的特性や化学的特性を有しつつ、弾性回復性、伸長回復性が極めて優れている。これは、PTTの結晶構造においてアルキレングリコール部のメチレン鎖がゴーシュ−ゴーシュの構造(分子鎖が90度に屈曲)であること、さらにはベンゼン環同士の相互作用(スタッキング、並列)による拘束点密度が低く、フレキシビリティーが高いことから、メチレン基の回転により分子鎖が容易に伸長・回復するためと考えられている。
【0013】
ここで、本発明においてPTTとは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルである。ただし、20モル%以下、より好ましくは10モル%以下の割合で他のエステル結合の形成が可能な共重合成分を含むものであってもよい。共重合可能な化合物として、例えばイソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを添加してもよい。
【0014】
また、低収縮成分(低粘度成分)には高収縮成分であるPTTとの界面接着性が良好で、製糸性が安定している繊維形成性ポリエステルであれば特に限定されるものではないが、力学的特性、化学的特性および原料価格を考慮すると、繊維形成能のあるPETが好ましい。
【0015】
また、両成分の複合比率は製糸性および繊維長さ方向のコイルの寸法均質性の点で、高収縮成分:低収縮成分=75:25〜35:65(重量%)の範囲が好ましく、65:35〜45:55の範囲がより好ましい。
【0016】
本発明に用いるサイドバイサイド型複合繊維の断面形状は、丸断面、三角断面、マルチローバル断面、偏平断面、ダルマ型断面、X型断面その他公知の異形断面であってもよいが、捲縮発現性と風合いのバランスから、丸断面の半円状サイドバイサイドや軽量、保温を狙った中空サイドバイサイド、ドライ風合いを狙った三角断面サイドバイサイド等が好ましく用いられる。
【0017】
また、単糸繊度は、1.1〜10dtexが好ましく、より好ましくは1.1〜6dtexである。1.1dtex以上とすることで、捲縮によるストレッチ性の実効を得ることができ、また10dtex以下とすることによりシボ感を抑えることができる。
【0018】
次に、本発明の婦人衣料にかかる布帛に用いられる糸状の撚について述べると、本発明の糸状の撚りとしては、K=TD1/2(K:撚り係数、1メートル当たりの撚り回数、D:デシテックス)の式において、撚り係数K=6000〜25000の撚りとするものである。撚り係数が6000の場合、甘撚りの領域に属するが、糸条が150dtexであれば500T/Mであることを意味する。一方、撚り係数Kが25000の場合、強撚の領域に属するが、同じく150dtexの場合、2000T/Mの撚に相当する。撚り係数Kが6000未満の場合は、撚り糸を用いた布帛の特徴であるドレープ性や着用時の良好なシルエット、落ち感に乏しいものになる。また、撚り係数Kが25000よりも大きい場合は、二重よりの発生などにより撚り線が乱れてしまい、このような撚り糸を用いた布帛は極めて品位の悪いものとなる
【0019】
本発明におけるストレッチ性の織物は、織物の目付が60g/m2〜400g/m2であることが重要である。織物の目付が60g/m2 未満の場合は、薄すぎて婦人用のブラウス用途には適さない。また、目付が400g/m2 を超えると、重衣料となり、ズボン、スカート、スーツ用途には適さない。
【0020】
本発明におけるストレッチ性の織物は、経緯の少なくとも一方について、織物伸長率が15%以上である。織物伸長率とは、実施例中の「測定方法」にて定義されるストレッチ性のパラメータである。織物伸長率が15%未満である場合には、人体の運動時の皮膚の伸縮に追随できず、満足の行く着心地のものが得られない。
【0021】
また、本発明におけるストレッチ性の織物は、伸長回復率が80%以上であることが重要である。伸長回復率とは、実施例中の「測定方法」にて定義されるストレッチ性のパラメータである。伸長回復率が80%未満の場合には、織物伸長率と同様に、人体の運動時の皮膚の伸縮に追随できず、満足の行く着心地のものが得られない。
【0023】
本発明の婦人衣服とは、糸繊度が50〜500dtexで構成されるものであれば限定されず、衣服の形態としては、ブラウス、ズボン、スカート、スーツが好ましい。
【0024】
50dtex未満のものは薄すぎて、ブラウスなどの薄地用には好ましくない。また、500dtexを越える糸繊度の物は、厚すぎて、ズボン、スカート、スーツなどの厚地用には好ましくない。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例で詳細に説明する。
(測定方法)
(1)織物伸長率:
JIS L−1096の伸長率A法(定速伸長法)で測定した。
L1:L0を測定後、L0測定荷重を取り除いて再び0.9×10-3cN/dtexの荷重を吊したときのカセ長。
(2)伸長回復率:
JIS L−1096の伸長回復率A法(くり返し定速伸長法)で測定した。実施例1
固有粘度(IV)が1.40のホモPTTと固有粘度(IV)が0.60のホモPETをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度275℃で24孔の複合紡糸口金から複合比(重量%)50:50で吐出し、紡糸速度1400m/分で引取り165dtex、24フィラメントのサイドバイサイド型複合構造未延伸糸(繊維断面は略半円接合型)を得た。さらにホットロール−熱板系延伸機(接糸長:20cm、表面粗度:3S)を用い、ホットロール温度75℃、熱板温度170℃、延伸倍率3.3倍で延伸し、次いでいったん引き取ることなく、連続して0.9倍でリラックスして巻き取り、55dtex、24フィラメントの延伸糸を得た。紡糸、延伸とも製糸性は良好であり、糸切れは発生しなかった。
【0026】
経糸は得られたサイドバイサイド型複合繊維を100t/mの撚数で2本合撚して110dtexとして用い、緯糸はサイドバイサイド型複合繊維55デシテックスを3本引き揃えて500t/mの撚を施した。撚り係数は6400であった。2/2綾組織の織物をウォータージェット織機にて経緯が109×60本/2.54cmの生機密度で製織した。
【0027】
得られた生機をオープンソーパーで95℃でリラックス熱処理し、乾燥後、乾熱180℃で中間セットし、120℃で染色した。その後160℃の乾熱でピンテンター方式により仕上セットした。仕上反の密度は経緯で145×75本/2.54cmであった。織物の目付は112gであった。
【0028】
得られた織物の表面は官能評価の結果、シボがなく、滑らかで光沢があり、かつソフト風合いで、経緯方向にソフトなストレッチを有する織物であった。また、この織物の織物伸率を測定した結果、経方向は20%、緯方向は25%であった。伸長回復率は87%であった。
実施例2
実施例1と同様の経糸および緯糸を用い、ウォータージェット織機にて生機密度が経緯で74×56本/2.54cmの平組織の織物を製織した。撚り係数は6400であった。
【0029】
得られた生機について実施例1と同一条件で染色加工を行った。仕上反の密度は経緯で95×68本/2.54cmであった。織物の目付は、85g/m2であった。
【0030】
得られた織物の表面は官能評価の結果、シボが無く、滑らかで光沢が有り、かつソフト風合いであった。また、この織物の織物伸率を測定した結果、経方向は17%、緯方向は22%であった。伸長回復率は83%であった。
実施例3
実施例1で用いた緯糸を経糸、緯糸に用い、ウォータージェット織機にて生機密度が経緯で118本×77本/2.54cmの2/1綾組織の織物を製織した。
【0031】
染色加工は実施例1と同様に実施しポリエステルストレッチ織物を得た。織り係数は6400であった。仕上反の密度は150×82本/2.54cmであった。織物の目付は127g/m2であった。
【0032】
得られた織物の表面は官能評価の結果、シボがなく、滑らかで光沢があり、かつソフト風合いであった。また、この織物の緯方向の伸率は、22%であった。伸長回復率は90%であった。
比較例1
経糸および緯糸にPETの55dtexの延伸糸を用い、実施例1と同様の規格で製織した。撚り係数は6400と同じであった。
【0033】
得られた生機を実施例1と同一条件で染色加工した。織物の目付は110g/m2であった。織物伸率を測定した結果、経方向は2%、緯方向は3%、伸長回復率は50%と、満足の行くものではなかった。
比較例2
比較例1で得たのと同じ生機を用い、液流染色機にて処理温度95℃でリラックス熱処理を行い、以降は実施例1と同様の染色加工を行った。
【0034】
その結果、大きなシボが発生し、織物としての品位に劣るものであった。また、織物はストレッチ性を有していたが、これはシボの構造に由来するものであった。
比較例3
経糸および緯糸ともに、PETの55dtexの延伸糸を用いて、1000t/mの撚数で3本合撚して165dtexとしてに用い、2/2綾組織の織物をウォータージェット織機にて経緯が89×60本/2.54cmの生機密度で製織した。撚り係数は12845であった。
【0035】
得られた生機を液流染色機にて処理温度95℃でリラックス熱処理を行い、以降は実施例1と同様の染色加工を行った。仕上反の密度は経緯で119×76本/2.54cmであった。織物の目付は97g/m2であった。
【0036】
得られた織物について織物伸率を測定した結果、経方向は22%、緯方向は25%で、伸長回復率は82%であった。しかし、織物表面は比較的シボ感の無いものの、光沢がなく、シャリ感が強く、本発明が目的とする、滑らかさ、光沢、ソフト風合いを有するものではなかった。
【0037】
【発明の効果】
本発明により、着用快適性に優れた高ソフトストレッチ性と回復性を有し、かつ表面にシボがなく、さらに光沢や滑らかな触感、ソフトな風合いを有するポリエステル系婦人衣服を提供することができる。

Claims (2)

  1. 一方がポリトリメチレンテレフタレートを主体としたポリエステルである2種類のポリエステル系重合体を繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わせた複合繊維のマルチフィラメント糸を実質的に有撚りで、経糸および緯糸の少なくとも一方に用い、当該糸条はK=TD1/2の式(ただし、K:撚り係数、T:1メートル当たりの撚り数、D:デシテックス)において、K=6000〜25000の撚りが施されており、且つ、織物の目付が60g/m2〜400g/m2、織物伸長率が15%以上であって、伸長回復率が80%以上のストレッチ性を有する織地からなることを特徴とする婦人衣服。
  2. 衣服を構成する織地をなす織り糸が2または3本の合撚糸であり、その織り糸の繊度が50〜500デシテックス(以下、dtexという)であることを特徴とする請求項1記載の婦人衣服。
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