JP3918768B2 - メッキ用熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

メッキ用熱可塑性樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面にメッキが施されるメッキ用成形品の製造に用いられるメッキ用熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ABS樹脂はアクリロニトリル(成分A)、ブタジエン(成分B)及びスチレン(成分S)の3成分からなるコポリマーである。この基本成分の他に、α−メチルスチレンやメチルメタアクリレートなどを配合して耐熱性や透明性を改良したり、あるいは硬質ポリ塩化ビニール、ポリカーボネート、ポリウレタンなどにABS樹脂をブレンドして耐衝撃性を改良することが行われている。このようにABS樹脂はその配合成分によってさまざまな性質を得ることができ、ポリマーアロイの名に価する重要な樹脂の一つである。
【0003】
そしてABS樹脂は、引っ張り強さ、曲げ剛性及び耐衝撃性が広い温度範囲で優れている点に長所を有するものであり、その他に電気絶縁性、耐薬品性、耐クリープ性や寸法安定性にも優れている。さらに成形性もよく、射出成形材料として好適である。
【0004】
ここで、ABS樹脂の製造方法には大別して3種類あり、一つはスチレン−アクリロニトリルの共重合物であるAS樹脂とブタジエン−アクリロニトリルの共重合物であるNBR樹脂を機械的に混合するブレンド法で、他の一つはポリブタジエンラテックスにアクリロニトリル−スチレンの共重合物を結合させるグラフト法である。またその中間がグラフト−ブレンド法と呼ばれているものである。それぞれの成分の役割については、アクリロニトリルは耐熱性、スチレンは成形加工性、ブタジエンは耐衝撃性に寄与することが明らかにされている。
【0005】
また、ABS樹脂はそれ自体メッキとの密着性が高く、メッキ性に非常に優れている。このためにABS樹脂はメッキ性を付与する成分として他の樹脂に配合して用いられている。例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂にABS樹脂をブレンドする方法が、特許文献1等に開示されている。他にも、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)中にABS樹脂を分散させてメッキ性を付与するようにしたものがある。
【0006】
ここで、ABS樹脂の構造はABSの母体の中にB成分であるゴム成分(ポリブタジエン)が直径0.1〜1μm程度の球状粒子として分散した二相構造をとるものであり、ABS樹脂成形品にメッキを施す工程での化学エッチング処理において、ABS樹脂成形品を酸化性のエッチング液中に浸漬すると、表面に近いゴム粒子が選択的に酸化溶解し、その結果、成形品の表面に無数の微小な孔を生じる。そしてメッキを行なう際に、これらの孔の中に金属メッキ膜が食い込んでいわゆるアンカー効果を生じることになり、これがABS樹脂成形品に対するメッキ膜の強固な密着性の原因と考えられている。従って、AS相中に分散したB相のゴム粒子の分布状態や粒子径、形状などがメッキ膜の密着性に微妙な変化を与えるものであり、特に、成形品の表面層におけるゴム粒子は成形品を射出成形する際に変形を受け易く、メッキの密着性は成形条件によって大きく影響されることになる。また、厚み0.15〜1mmの薄肉部は、成形時の変形を極めて受けやすい。従って、ABS樹脂において、成形条件の影響を受けないものが求められている。
【0007】
一方、最近の成形品には薄肉化の要求が高まっており、極薄肉の部分をもつ成形品が出現している。その一例として、スマートメディアやSDメモリーカードなどのメモリーカードがある。メモリーカードは、基板に半導体メモリーを実装し、ハウジングとなる成形品内にこの基板を内装することによって形成されるものである。そしてメモリーカード用の成形品は、基板の半導体メモリーを実装する凹所を形成するため、その部分を部分的に極薄肉部として成形する必要がある。そこでこのような部分的に極薄肉部を成形するのに適した図1のような射出圧縮成形法が本出願人等によって提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
すなわち図1において1は一対の分割金型1a,1bからなる成形金型であり、各分割金型1a,1bの対向面にはキャビティ2を形成するための半部2a,2bがそれぞれ凹設してある。3は圧縮成形用のコアであって、一方の分割金型1aにその先部をキャビティ2内に突出する状態で配設してあり、他方の分割金型1bの側へさらに突出するようにスライド移動自在にしてある。4は分割金型1a,1bの間に形成したゲートである。
【0009】
そして、射出成形機から射出された溶融状態の熱可塑性樹脂組成物の成形材料5は、まず(A1)及び(B1)に示すように均一な平行流となってキャビティ2内を流れるが、コア3が突出する部分に達すると、コア3の先端面とキャビティ2の内面との間の箇所は狭く流動抵抗が大きいので、コア3の先端面とキャビティ2の内面の間を流れる成形材料5aの流速よりコア3の両側を流れる成形材料5bの流速が速くなり、(A2)及び(B2)に示すように、両成形材料5a,5bの先端位置に差ができ、成形の最終段階でコア3の先端面とキャビティ2の内面の間を流れる成形材料5aに急激に圧力がかかって流速が速くなって薄肉部11の充填が進むものであり、このためこのままでは(A3)及び(B3)に示すように未充填部分が生じたり、あるいは成形材料5b,5bがキャビティ2の末端部で先に合流してウエルドラインが生じたりするおそれがある。そこで、(A3)及び(B3)のように不完全な状態でキャビティ2内に成形材料5が充填された後、射出を停止し、さらにコア3を分割金型1bの側へスライドさせてキャビティ2内に突出させることによって、(A4)及び(B4)に示すように、コア3で圧縮成形を行ない、コア3の先端面とキャビティ2の内面の間に成形材料5を完全に充填させると共に薄肉部11を成形することができる。このようにして、半導体メモリーを実装するための凹所12を薄肉部11の成形によって形成したメモリーカード用の成形品10を射出圧縮成形法で作製することができるものである。
【0010】
【特許文献1】
特開昭51−62849号公報
【特許文献2】
特開2002−240112号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のように薄肉部11を有する成形品10を作製する場合、キャビティ内に例えば射出速度が50mm/secやそれ以上の速度で射出されたABS系樹脂は、特に薄肉部11を通過する際に、成形時の最終段階で高速で移動することとなり、このため、成形品は樹脂の配向が発生し易くなり、表面層におけるABS樹脂のゴム粒子は大きな変形を受けることになる。従ってこのような射出成形法で得られた成形品において、同メッキの密着性が低くなるという問題を有するものであった。
【0012】
また特に射出速度が300mm/secを超えるような高速射出成形法では、ABS樹脂はキャビティ内に極めて高速で射出されるものであり、このため、成形品は樹脂の配向が更に発生し易くなり、表面層におけるABS樹脂のゴム粒子は大きな変形を受けることになる。従ってこのような高速射出成形法で得られた成形品においても、同様にメッキの密着性が低くなるという問題を有する。
【0013】
更に、射出圧縮成形法でABS樹脂を成形する場合、ABS樹脂はキャビティに高速射出される他に、キャビティ内で圧縮の作用も受けることになる。このため、特に成形品の薄肉部は通常の射出成形に比較して樹脂の配向が発生し易くなり、表面層におけるゴム粒子は大きな変形を受けることになる。この結果、ABS樹脂であっても射出圧縮成形法で得られた成形品は、メッキスキップが発生したり、またメッキ膜の密着強度が不十分になることがあり、メッキ膜の剥離やフクレが発生して、実用できるレベルのものを得ることが難しいという問題があった。
【0014】
また、高速射出成形法や射出圧縮成形法を行う代わりに、一つのキャビティに複数のゲートを接続して、この複数のゲートから同時にABS樹脂をキャビティ内に射出することも考えられるが、この場合は、キャビティへの射出速度は抑制できるが、複数箇所から同時に射出されるため、やはりキャビティ内を移動するABS樹脂の移動速度が大きくなったり、大きな圧縮の作用を受けたりするものであり、このため、上記と同様にメッキの密着性が低くなるという問題を有する。
【0015】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、射出成形時にキャビティ内でのABS系樹脂の移動速度が速くなったり、ABS系樹脂に圧力が作用したりしても、メッキの密着性に優れたメッキ用成形品を製造することができるメッキ用熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項に係るメッキ用熱可塑性樹脂組成物は、射出速度が300mm/sec以上で射出成形されることで厚み0.15〜1mmの薄肉部を有するメッキ用成形品を成形するために使用される熱可塑性樹脂組成物であって、ABS系樹脂、並びに酸化剤可溶性無機充填材として平均粒子径が6μm以下、窒素吸着法によるBET比表面積が15m 2 /g以下、純度が95質量%以上、且つ含水率が3.0質量%以下の炭酸カルシウムを、このABS系樹脂と酸化剤可溶性無機充填材の合計量中、ABS系樹脂を90〜98質量%、酸化剤可溶性無機充填材を10〜2質量%含有して成ることを特徴とするものである
【0020】
また請求項の発明は、請求項において、ABS系樹脂が、少なくとも1種のビニル系単量体をグラフト共重合したものであることを特徴とするものである。
【0021】
また請求項の発明は、請求項又はにおいて、ABS系樹脂が、グラフト−ブレンド法により製造されたものであることを特徴とするものである。
【0022】
また請求項の発明は、請求項乃至のいずれかにおいて、ABS系樹脂が、熱重量分析において、昇温10℃/分、温度300℃における重量減少が3%以下のものであることを特徴とするものである。
【0023】
また請求項の発明は、請求項乃至のいずれかにおいて、ABS系樹脂が、測定温度220℃、荷重10kgでのMFR値が5g/分以上のものであることを特徴とするものである。
【0024】
また請求項の発明は、請求項乃至のいずれかにおいて、ABS系樹脂が、23℃でのアイゾット衝撃強度が、100J/m以上のものであることを特徴とするものである。
【0025】
また請求項の発明は、請求項乃至のいずれかにおいて、ABS系樹脂が、−40℃でのアイゾット衝撃強度が、50J/m以上のものであることを特徴とするものである。
【0027】
また請求項の発明は、請求項乃至のいずれかにおいて、酸化剤可溶性無機充填材が、粒子径変位係数が0.8以下のものであることを特徴とするものである。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0033】
本発明に係るメッキ用熱可塑性樹脂組成物は、ABS系樹脂と酸化剤可溶性無機充填材を主成分とするものである。
【0034】
本発明において用いられるABS系樹脂は、ゴム状重合体の存在下に、スチレン、α−メチルスチレン等で代表される芳香族ビニル系単量体、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等で代表される(メタ)アクリル酸エステル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等で代表されるシアン化ビニル系単量体、N−フェニルマレイミドで代表されるα,β−不飽和ジカルボン酸イミド系単量体などから選ばれた少なくとも1種のビニル系単量体を、グラフト共重合させて得られるものであり、その代表例としてはABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、MBS(メチルメタクリレート−スチレン−ブタジエン)樹脂、AES(アクリロニトリル−エチレン−スチレン)樹脂などを挙げることができる。
【0035】
ここでゴム状重合体としてはポリブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)等のジエン系ゴム、ポリブチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート等のアクリル系ゴムおよびエチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)等を用いることができる。
【0036】
またこのゴム状重合体にグラフト共重合させるビニル系単量体は、芳香族ビニル系単量体0〜90質量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体0〜100質量%、シアン化ビニル系単量体及び/又はα,β−不飽和ジカルボン酸イミド系単量体0〜40質量%の割合が適当であり、この組成外においては耐衝撃性や他の機械的性質が阻害される場合がある。ゴム状重合体にグラフト共重合させるビニル系単量体の組合せとしては、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/メタクリル酸メチル/アクリロニトリル、メタクリル酸メチル単独、メタクリル酸メチル/アクリロニトリル、スチレン/メタクリル酸メチル、α−メチルスチレン/メタクリル酸メチル/アクリロニトリルなどを挙げることができる。但し、ABS系樹脂におけるゴム状重合体とビニル系単量体の割合は重要であり、ゴム状重合体5〜80質量部、特に15〜70質量部の存在下に、ビニル系単量体95〜20質量部、特に85〜30質量部(合計100質量部)を重合することが必要である。ゴム状重合体の割合が5質量部未満では得られるABS系樹脂の耐衝撃性が不充分になり、また80質量部を超えると、得られるABS系樹脂の機械的性質が劣り、耐衝撃性改良効果も発現しないため好ましくない。
【0037】
ここで、ABS系樹脂としては、熱重量分析において、昇温10℃/分、温度300℃における重量減少が3質量%以下であることが好ましい。重量減少が3質量%を超えるものであると、成形品の表面にモールドデポジットを生じるおそれがあり、好ましくない。重量減少はより小さいことが望ましく、重量減少の理想的な下限は0%である。
【0038】
またABS系樹脂としては、測定温度220℃、荷重10kgでのMFR(メルトフローレート)値が5g/分以上のものが好ましい。MFR値が5g/分未満であると、流動性が不十分であって、成形性が悪化するおそれがある。MFR値の上限値は特に限定されるものではないが、20g/分を超えるものは機械的強度が低下して実用上使用することが難しいので、MFR値は20g/分以下であることが望ましい。
【0039】
さらにABS系樹脂としては、23℃でのアイゾット衝撃強度が、100J/m以上であるものが好ましい。23℃でのアイゾット衝撃強度が100J/m未満であると、成形して得られた成形品の衝撃強度が不十分になるおそれがある。23℃でのアイゾット衝撃強度の上限値は特に設定されるものではないが、実用上の上限は320J/mである。またABS系樹脂は、−40℃でのアイゾット衝撃強度が、50J/m以上であることが好ましい。−40℃でのアイゾット衝撃強度が50J/m未満であると、成形して得られた成形品の衝撃強度が不十分になるおそれがある。尚、このアイゾット衝撃強度の数値は、ASTM D256に従って、13mm×65mm×6.4mmのアイゾット試験片(ノッチ付き)について測定された値である。
【0040】
ここで、ABS系樹脂の製造方法は、ブレンド法、グラフト法、グラフト−ブレンド法が知られている。ブレンド法はNBRとAS樹脂を機械的に混合したものであり、コストが安価であるが品質的には劣る。またグラフト法はブタジエン、アクリロニトリル、スチレンから乳化重合法、塊状重合法、塊状懸濁重合法などで製造する方法である。さらにグラフト−ブレンド法は、乳化重合法でゴム成分の多いABS樹脂のベースポリマーを製造し、さらに乳化重合法、塊状重合法、塊状懸濁重合法で得られたAS樹脂で希釈して最終製品に仕上げる方法である。これらのいずれの方法で製造されたABS系樹脂も広く知られているが、本発明では、グラフト−ブレンド法で製造されたABS系樹脂を用いるのが、メッキ膜との密着性をより高く得ることができる点で好ましい。これは、グラフト−ブレンド法で得られたABS系樹脂は、ブタジエン成分のサイズが小さくアンカー効果を効果的に作用させることができるためであると考えられる。
【0041】
上記のようなABS系樹脂は市販品を使用することができるものであり、例えば、日本エイアンドエル(株)製の「クララスチック」や「サンタック」、三菱レイヨン(株)製の「ダイヤペットABS」、東レ(株)製の「トヨラック」等(いずれも商品名)を挙げることができる。また、マレイミド系変性耐熱ABS樹脂として、三菱レイヨン(株)製の「ダイヤペットABS」等(商品名)を挙げることができる。ABS系樹脂は1種を単独で用いる他、2種以上を混合して用いることもできるものである。
【0042】
次に本発明において、酸化剤可溶性無機充填材としては酸化剤に対する溶解性が高い炭酸カルシウムが用いられる。
【0043】
また酸化剤可溶性無機充填材である炭酸カルシウムとしては、窒素吸着法によるBET比表面積が15m2/g以下、純度が95質量%以上、且つ含水率が3.0質量%以下のものを用いる。炭酸カルシウムのBET比表面積が15m2/gを超えると、この炭酸カルシウムを配合した熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が上昇し、成形性が悪化する傾向が生じる。BET比表面積の下限は特に限定されるものではないが、炭酸カルシウムのBET比表面積は1m2/gであることが好ましい。また炭酸カルシウムの純度が95質量%未満であると、メッキ密着性が低下してメッキスキップやメッキ剥がれなどの不良が生じるおそれがある。炭酸カルシウムの純度は高いほど好ましく、100%が理想的である。さらに炭酸カルシウムの含水率は3質量%を超えると、ABS系樹脂中への分散性が悪くなり、メッキ密着性が低下してメッキスキップやメッキ剥がれなどの不良が生じるおそれがある。炭酸カルシウムの含水率は低いほど好ましく、0%が理想的である。
【0044】
そしてメッキ用熱可塑性樹脂組成物にあって、上記のABS系樹脂と酸化剤可溶性無機充填材との配合割合は、両者の合計量に対して、ABS系樹脂が70〜99質量%、酸化剤可溶性無機充填材が30〜1質量%の範囲になるように設定するのが好ましい。ABS系樹脂の配合量が70質量%未満の樹脂組成物からなる成形品では、成形時の流動性や、射出圧縮成形時の圧縮性が低下し、ABS系樹脂の特性が発揮されないことがある。またABS系樹脂の配合量が99質量%を超えると、酸化剤可溶性無機充填材の量が少なくなり過ぎ、後述のように酸化剤可溶性無機充填材が酸性エッチング液で溶解されて生じるアンカー孔が不足し、メッキスキップが発生したり、メッキ膜の密着強度が不充分になるおそれがある。本発明では、ABS系樹脂の特性発現、メッキスキップの発生の抑制、メッキ膜の密着強度などの点から、ABS系樹脂が90〜98質量%、酸化剤可溶性無機充填材が10〜2質量%の範囲となるようにする。
【0045】
また、酸化剤可溶性無機充填材の平均粒子径は、6μm以下とし、その中でも5μm以下であることがより好ましく、4μm以下であることが更に好ましい。酸化剤可溶性無機充填材の粒子径が大き過ぎると、1つ1つのドメインが大きくなり、酸化剤可溶性無機充填材が溶出してできるアンカーも緻密なものはでき難いため、効果的なアンカー効果を望むことができなくなるおそれがある。このために酸化剤可溶性無機充填材の平均粒子径は上記のものが好ましいのである。酸化剤可溶性無機充填材の平均粒子径の下限は特に限定されるものではないが、0.1μm以上であることが望ましい。
【0046】
また酸化剤可溶性無機充填材の粒子径変位係数は0.8以下であることが好ましいが、その中でも0.6以下であることが好ましく、0.5以下であることが更に好ましい。酸化剤可溶性無機充填材の粒子径変位係数が大きいと、すなわち粒子径分布が広いと、均一な大きさのアンカーを得ることが難しくなるため、良好なメッキ密着強度が望めなくなるおそれがある。このために酸化剤可溶性無機充填材の粒子径変位係数は上記のものが好ましいのである。酸化剤可溶性無機充填材の粒子径変位係数の下限は特に限定されるものではないが、0.1以上であることが望ましい。
【0047】
尚、本発明において用いられる酸化剤可溶性無機充填材の平均粒子径及び粒子径変位係数の測定方法を次に示す。すなわち、本発明において酸化剤可溶性無機充填材の平均粒子径とは、レーザー回折法によって測定される体積平均粒子径であり、下記式(1)により求めることができる。
【0048】
(平均粒子径)=[(粒子の総体積)/(総粒子数)]1/3 …(1)
また、粒子径変位係数とは、同様にレーザー回折法によって測定される体積基準の粒子径の標準偏差と平均粒子径との比を示すものであり、下記式(2)により求めることができる。
(粒子径変位係数)=(粒子径の標準偏差)/(平均粒子径) …(2)
ここで、用いられる粒子径の標準偏差は、下記式(3)により求めることができる。
(粒子径の標準偏差)=[(各粒子と上記平均粒子径との差の2乗の総和)/(総粒子数)]1/2 …(3)
また、酸化物可溶性無機化合物として繊維状のものを使用する場合には、好ましくは平均繊維長10〜50μm、平均繊維径0.1〜5μmのものが用いられる。このような繊維状の酸化物可溶性無機化合物としてとしては、例えば丸尾カルシウム製「ウィスカル」など市販されているものを使用することができる。このような繊維状の酸化物可溶性無機化合物は、酸化物可溶性無機化合物以外の他の繊維状充填材(後述)と併用する場合に、両方が繊維状であり、それぞれが配向するため使用に適している。
【0049】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、ABS系樹脂と酸化剤可溶性無機充填材の他に、必要に応じて、本発明の目的を損なわない限り、繊維状充填材、他の合成樹脂、エラストマー、酸化防止剤、結晶化促進剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を配合することができる。
【0050】
繊維状充填材としては例えばカーボンファイバー、ガラスファイバー、ガラスミルドファイバー、ウィスカー等を挙げることができる。これらは、単独で使用することもでき、2種類以上を混合して使用することもできる。カーボンファイバーを用いる場合は、ABS系樹脂としてカーボンファイバを含有するものを用いることができ、この場合は、カーボンファイバーを含有したABS系樹脂として、たとえば、三菱レイヨン(株)製の「パイロン」等を使用することができる。
【0051】
また合成樹脂やエラストマーとしては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン6樹脂、ナイロン66樹脂、ナイロン610樹脂 、共重合ナイロン樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、石油樹脂、石炭樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の合成樹脂やポリオレフィンゴム、オレフィン系共重合体、水素添加ゴム等のエラストマーを挙げることができる。これらは、2種類以上を混合して使用することができる。
【0052】
また酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤等を挙げることができる。これらは、単独で使用することもでき、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0053】
またカップリング剤としては、シラン系化合物、チタネート系化合物、アルミニウム系化合物等を挙げることができ、特にシラン系化合物が好ましい。シラン系としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン、イミダゾールシラン、更に、エポキシ系、アミノ系、ビニル系の高分子タイプのシラン等がある。これらは、単独で使用することもでき、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0054】
本発明に係るメッキ用熱可塑性樹脂組成物を調製するにあたっては、上記の各成分をヘンシェルミキサー等の混合機で混合・混練し、これをペレタイズすることによって行うことができる。
【0055】
そして上記のようにして調製したメッキ用熱可塑性樹脂組成物を用い、例えば、既述の図1の方法で射出圧縮成形を行うことによって、厚みが0.15〜1mmの薄肉部を有するメッキ用成形品を作製することができるものである。このように射出圧縮成形法でメッキ用成形品を作製した後、メッキ用成形品の表面に化学メッキや電解メッキを施して、銅などの金属メッキ膜を形成することによって、メッキ成形品を得ることができるものである。
【0056】
ここで、メッキ用熱可塑性樹脂組成物を図1の方法で射出圧縮成形するにあたって、樹脂組成物はキャビティに高速射出され、またキャビティ内で圧縮の作用を受ける。このためにメッキ用成形品は樹脂の配向が発生し易くなり、特に圧縮作用を強く受ける薄肉部は樹脂の配向性が高くなり、樹脂組成物中のABS系樹脂のゴム粒子(B成分)は表面層において大きな変形を受ける。これに対して、樹脂組成物中の酸化剤可溶性無機充填材はこのような成形時の配向の影響を全く受けないので、メッキ用成形品の表面層に均一に存在する。そしてメッキ用成形品にメッキを施すメッキ工程において、メッキ用成形品に化学エッチング処理を行なう際の酸性エッチング液にこの表面層の酸化剤可溶性無機充填材が溶解され、メッキ用成形品の表面に多数のアンカー状の孔を形成することができるものである。従って、次の化学メッキ工程で、メッキ用成形品の表面の多数のアンカー状の孔にメッキ金属が食い込で強固に付着し、成形品の表面に対してメッキ膜を高密着強度で密着させることができるものである。
【0057】
また上記のような射出圧縮成形法のような圧縮を伴なわない通常の射出成形法でメッキ用成形品を作製することもできる。このとき、メッキ用熱可塑性樹脂組成物をキャビティに充填させる際の射出速度が300mm/sec以上のような高速射出成形法では、ABS樹脂はキャビティ内に極めて高速で射出される。このため、成形品は樹脂の配向が発生し易くなり、表面層におけるABS樹脂のゴム粒子(B成分)は大きな変形を受ける。これに対して、樹脂組成物中の酸化剤可溶性無機充填材はこのような成形時の配向の影響を全く受けないので、メッキ用成形品の表面層に均一に存在する。従って上記と同様に、メッキ用成形品にメッキを施すメッキ工程において、メッキ用成形品に化学エッチング処理を行なう際の酸性エッチング液にこの表面層の酸化剤可溶性無機充填材が溶解され、メッキ用成形品の表面に多数のアンカー状の孔を形成することができるものであり、次の化学メッキ工程で、メッキ用成形品の表面の多数のアンカー状の孔にメッキ金属が食い込で強固に付着し、成形品の表面に対してメッキ膜を高密着強度で密着させることができるものである。
【0058】
高速射出成形法とは上記のように射出速度が300mm/sec以上のものをいうものであり、800〜1500mm/secの射出速度が好ましい。射出速度が3000mm/secを超えると、バリが発生し易くなり、また樹脂焼けが発生するおそれがあるので、射出速度は3000mm/sec以下であることが望ましい。尚、上記の射出圧縮成形では射出した後に圧縮する工程があり、射出速度が遅いと樹脂の固化が始まって圧縮することができなくなることがあるので、射出圧縮成形においても射出速度を300mm/sec以上の高速に設定する。射出圧縮成形では射出速度は2000mm/sec以下であることが望ましい。
【0061】
また、メッキ用成形品の表面にメッキ処理を行なう前に、メッキ用成形品を60〜80℃で1〜5時間熱処理するようにしてもよい。このようにメッキ用成形品を熱処理することによって、メッキ用成形品の成形歪をとることができ、メッキ成形品の表面に対するメッキ膜の密着性を高めることができるものである。
【0062】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0063】
(実施例1〜11、参考例1〜、比較例1〜3)
ABS系樹脂、酸化剤可溶性無機充填材、及びポリカーボネート樹脂として下記のものを用い、表1〜表3の配合量で各成分をヘンシェルミキサーで均一に混合・混練し、これをペレタイズすることによって、熱可塑性樹脂組成物を調製した。
○樹脂
・ABS系樹脂A:日本エイアンドエル(株)製「クララスチック(品番GA501)」(グラフト−ブレンド法、220℃−10kgのMFR32g/分、23℃アイゾット衝撃強度294J/m、300℃での質量減少−0.76%)
・ABS系樹脂B:日本エイアンドエル(株)製「サンタック(品番AT08)」(グラフト法、220℃−10kgでのMFR44g/分、23℃アイゾット衝撃強度137J/m、300℃での質量減少−0.60%)
・ABS系樹脂C:三菱レイヨン(株)製「ダイヤペットABS(品番3001MF)」(グラフト−ブレンド法、220℃−10kgMFR25g/分、23℃アイゾット衝撃強度240J/m、−40℃アイゾット衝撃強度80J/m、300℃での質量減少−1.02%)
・ABS系樹脂D:三菱レイヨン(株)製「ダイヤペットABSバルクサム(品番TM20)」(グラフト−ブレンド法、220℃−10kgMFR6.5g/分、23℃アイゾット衝撃強度200J/m、300℃での質量減少−0.95%)
・ABS系樹脂E:三菱レイヨン(株)製「パイロフィルペレット(品番ABS−C−08)」(グラフト−ブレンド法)、カーボンファイバー8質量%含有、220℃−10kgMFR5g/分、23℃アイゾット衝撃強度50J/m、300℃での質量減少−1.01%)
・PC樹脂A:ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製「ユーピロン(品番H4000)」(280℃−2.1kgでのMFR70g/分)
○酸化剤可溶性無機充填材
・充填材A:炭酸カルシウム、白石工業(株)製「シルバー(品番W)」(比表面積5.5m2/g、水分0.7%、平均粒子径:3μm、純度99%、粒子径変位係数0.75)
・充填材B:炭酸カルシウム、白石工業(株)製「WHITON(品番P30)」(比表面積12m2/g、水分0.2%、平均粒子径5.5μm、純度99%、粒子径変位係数0.8)
・充填材C:炭酸カルシウム、白石工業(株)製「SHIPRON(品番A)」(水分0.04%、平均粒子径5μm、純度99.6%、粒子径変位係数0.79)
・充填材D:炭酸カルシウム、白石工業(株)製「WHITON(品番P50)」(比表面積7m2/g、水分0.1%、平均粒子径16.3μm、純度99%、粒子径変位係数0.66)
・充填材E:タルク、林化成(株)製「ミクロンホワイト(品番5000R)」(平均粒子径2.8μm)
・充填材F:繊維状炭酸カルシウム、(丸尾カルシウム(株)製「ウィスカル(品番A)」(比表面積7m/g、水分0.3%、平均繊維長25μm、平均繊維径0.75μm、純度98%以上)
上記のように調製した熱可塑性樹脂組成物を用いて成形を行なった。ここで、実施例1〜、参考例1〜及び比較例1,3については、図1のような圧縮を伴なう射出圧縮成形を行ない、このうち実施例1〜、参考例1〜、及び比較例1については高速射出成形を行った。また実施例〜1及び比較例2については、圧縮を伴なわない高速射出成形で、図2に示す中央部の厚みが0.15mm、外周部分の厚みが2mmの成形品を作製した。また参考例8,9については、圧縮を伴う射出や高速の射出を行わない射出成形を行い、またキャビティには3箇所にゲートを設けて、三点から同時に熱可塑性樹脂組成物の射出を行った。ここで、射出圧縮成形や高速圧縮成形、射出成形の条件は、熱可塑性樹脂組成物の加熱温度を230℃、射出速度を表1〜3に示すものに設定して行なった。
【0064】
次に、上記のように作製した成形品の表面にメッキを行なった。ここで、実施例2では、メッキ前に成形品を80℃で2時間加熱した。メッキの処理は次の工程で行なった。すなわちまず、脱脂・水洗を行なったのち、クロム酸400g/L、硫酸400g/Lの酸化剤エッチング溶液に50℃、4分の条件で成形品を浸漬してエッチング処理した。次に、水洗・酸洗したのち、塩化パラジウム0.2g/L、塩化第一錫10g/L、濃硫酸150mL/Lの溶液に成形品を3分間浸漬して表面にキャタリスト処理をし、さらに硫酸100g/Lの溶液に40℃、5分の条件で浸漬してアクセレーター処理をしたのち、硫酸ニッケル30g/L、次亜リン酸ソーダ20g/L、クエン酸アンモン50g/Lの溶液に、35℃、10分の条件で成形品を浸漬して無電解ニッケルメッキを行なった。この後、成形品をニッケルメッキ液に10分間浸漬して電解メッキすることによってニッケル下地メッキを行ない、次いで銅メッキ液に成形品を10分間浸漬して電解メッキすることによって銅メッキを行ない、さらにニッケルメッキ液に成形品を10分間浸漬して電解メッキすることによって表面ニッケルメッキを行ない、最後にクロムメッキ液に成形品を2分間浸漬して電解メッキすることによってクロムメッキを行なった。
【0065】
(評価)
(1)薄肉成形性
図2に示す薄肉成形品を10個射出成形し、外観を観察して変形の認められる成形品の個数をカウントすることによって、薄肉成形性を評価した。結果を表1〜3に示す。
【0066】
(2)ピール強度
メッキした成形品のメッキ膜を、10mmの幅で30mmの長さにわたって、メッキ面に対して垂直方向に50mm/分の一定速度で引き剥がし、その剥離強度を測定した。結果を表1〜3に示す。
【0067】
【表1】
Figure 0003918768
【0068】
【表2】
Figure 0003918768
【0069】
【表3】
Figure 0003918768
【0071】
【発明の効果】
上記のように本発明に係るメッキ用熱可塑性樹脂組成物は、射出速度が300mm/sec以上で射出成形されることで厚み0.15〜1mmの薄肉部を有するメッキ用成形品を成形するために使用される熱可塑性樹脂組成物であって、ABS系樹脂、並びに酸化剤可溶性無機充填材として平均粒子径が6μm以下、窒素吸着法によるBET比表面積が15m 2 /g以下、純度が95質量%以上、且つ含水率が3.0質量%以下の炭酸カルシウムを、このABS系樹脂と酸化剤可溶性無機充填材の合計量中、ABS系樹脂を90〜98質量%、酸化剤可溶性無機充填材を10〜2質量%含有するので、射出成形時にキャビティ内に射出された熱可塑性樹脂組成物が特に薄肉部を通過する際に高速で移動したり圧縮力を受けたりして、ABS系樹脂のゴム粒子が表面層において配向されて変形を受けても、酸化剤可溶性無機充填材は成形時の配向の影響を受けないものであって、メッキ用成形品の表面層に均一に存在するものであり、メッキ工程において酸性エッチング液にこの表面層の酸化剤可溶性無機充填材が溶解され、表面に多数のアンカー状の孔を形成することができ、アンカー状の孔に対するメッキ金属の食い込みによってメッキ膜の密着性を高めた成形品を成形することができるものであり、更に酸化剤可溶性無機充填材を配合した熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が上昇して成形性が悪化することを防止すると共にメッキ密着性が低下してメッキスキップやメッキ剥がれなどの不良が生じることを防止することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】射出圧縮成形工法を工程順に示す説明図であり、(A)は概略平面図、(B)は概略断面図である。
【図2】実施例及び比較例で成形した薄肉成形品の形状及び寸法を示すものであり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【符号の説明】
1 成形金型
2 キャビティ
3 コア
4 ゲート
5 成形材料

Claims (8)

  1. 射出速度が300mm/sec以上で射出成形されることで厚み0.15〜1mmの薄肉部を有するメッキ用成形品を成形するために使用される熱可塑性樹脂組成物であって、ABS系樹脂、並びに酸化剤可溶性無機充填材として平均粒子径が6μm以下、窒素吸着法によるBET比表面積が15m 2 /g以下、純度が95質量%以上、且つ含水率が3.0質量%以下の炭酸カルシウムを、このABS系樹脂と酸化剤可溶性無機充填材の合計量中、ABS系樹脂を90〜98質量%、酸化剤可溶性無機充填材を10〜2質量%含有して成ることを特徴とするメッキ用熱可塑性樹脂組成物
  2. ABS系樹脂が、少なくとも1種のビニル系単量体をグラフト共重合したものであることを特徴とする請求項1に記載のメッキ用熱可塑性樹脂組成物
  3. ABS系樹脂が、グラフト−ブレンド法により製造されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のメッキ用熱可塑性樹脂組成物。
  4. ABS系樹脂が、熱重量分析において、昇温10℃/分、温度300℃における重量減少が3%以下のものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のメッキ用熱可塑性樹脂組成物。
  5. ABS系樹脂が、測定温度220℃、荷重10kgでのMFR値が5g/分以上のものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のメッキ用熱可塑性樹脂組成物。
  6. ABS系樹脂が、23℃でのアイゾット衝撃強度が、100J/m以上のものであることを特徴とする請求項乃至5のいずれかに記載のメッキ用熱可塑性樹脂組成物。
  7. ABS系樹脂が、−40℃でのアイゾット衝撃強度が、50J/m以上のものであることを特徴とする請求項乃至6のいずれかに記載のメッキ用熱可塑性樹脂組成物。
  8. 酸化剤可溶性無機充填材が、粒子径変位係数が0.8以下のものであることを特徴とする請求項乃至7のいずれかに記載のメッキ用熱可塑性樹脂組成物。
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