JP3916368B2 - 糸条の交絡付与装置及び交絡付与方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、走行する糸条に流体を噴射して、糸条に交絡を付与する交絡付与装置及び該装置を使用した糸条の交絡付与方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
走行する糸条に流体を噴射して、糸条に交絡を付与する方法は、例えば撚糸・糊付け等を施すことなく製織する場合、あるいは性質の異なる糸条を混ぜ合わせた混繊糸を得る場合等に幅広く採用されており、そのための装置や処理方法としては特公昭55−67030号公報、特公昭55−67029号公報、特開平5−222640号公報等に様々なものが提案されている。
【0003】
一方、近年では紡糸・延伸速度を上げたり、これらの工程を連続化して生産の合理化を図ろうとする場合が多くなり、糸条に交絡を付与する際には必然的に2500m/分以上と高速度で走行する糸条に処理を施さなければならなくなる。また、仮撚加工、特に延伸同時仮撚加工においても高速化が進み(以下、高速延伸同時仮撚加工ということがある)、高速条件下での工程パフォ−マンス維持のために糸条の集束性が要求されているが、油剤による集束性向上はタ−ルやスカム発生の要因となるため、少ない油剤を均一に付着させると共に、糸条に交絡付与処理が施されている。
【0004】
しかし、2500m/分以上といった高速度で走行する糸条に交絡付与処理を施す場合、あるいは、高速延伸同時仮撚加工用の油剤付着量の少ない糸条を処理して交絡を付与すると同時に油剤を再分配させて均一化させる場合、どうしても圧力が0.2MPa(2.0kg/cm2)以上といった高圧の圧縮流体を糸条に噴射してやらないと十分な処理効果が得られない。ところが、前述の如き従来の交絡付与装置では、圧力が0.2MPa(2.0kg/cm2)以上の高圧の圧縮流体を噴射させると、圧縮流体圧及び流体量の変動に起因するものと推定され、交絡数のバラツキが大きくなるだけでなく、糸条にループや毛羽の発生も増大するという問題がある。特に糸条がポリエステル部分配向糸(POY)の場合、糸の繊維構造形成が未だ不十分な状態にあるため、より毛羽が発生しやすく、圧縮流体の圧力を十分には上げることができない。
【0005】
また、特公平3−61772号公報には、流体噴射孔を3つにした、流体の圧力を低下させても高い交絡数を与えることができる交絡付与装置が提案されている。しかし、この装置を用いて高速度で走行する糸条に処理を施しても、付与される糸条の集束性は未だ不十分であり、また、付与した油剤を再分配させて均一付着性を向上させる効果も不十分なレベルである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、走行糸条に高圧の圧縮流体を噴射して、毛羽やループの発生が極めて少なく、且つ均一な交絡を効率よく付与することができ、また、少ない油剤付着量でも均一に再分配することができ、特に高速延伸同時仮撚加工用ポリエステル糸を得るに適した交絡付与装置及び交絡付与方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らの研究によれば、上記本発明の目的は、
「糸導孔に流体噴射孔を開口せしめ該糸導孔を走行する糸条に流体噴射孔から圧縮流体を噴射するようにした交絡付与装置において、該流体噴射孔に連結した圧縮流体の導管を屈曲管にすると共に該屈曲部には該屈曲管の圧縮流体入り側導管の延長方向に圧縮流体滞留ゾーンを設け、その際、下記の要件A〜Cを同時に満足させたことを特徴とする糸条の交絡付与装置。
A:20°≦θ1≦160°
B:20°≦θ2<90°
C:L≧0.8D
但し、θ1は導管の屈曲部の屈曲角度、θ2は糸条の走行方向と流体の噴出方向とがなす角度、Lは滞留ゾーンの屈曲管圧縮流体入り側導管延長方向における長さ、Dは屈曲管圧縮流体入り側導管の径を表す。」
により達成できることが見出された。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の交絡付与装置の一例を示す部分断面図である。
図1において、1は糸導孔で、該糸導孔には流体噴射孔が開口している。この流体噴射孔に連結した圧縮流体の導管は、圧縮流体が供給される側(上流側)の導管2Aと、圧縮流体が糸導孔に噴射される側の導管2Bとが、互いに角度θ1で連結した屈曲管となっており、さらに導管2Aの延長方向に圧縮流体滞留ゾーン3が設けられている。
【0009】
図1に示す屈曲した導管の屈曲角度θ1は、屈曲角度が小さくなりすぎると前記圧縮流体滞留ゾーンを設ける効果が低下するだけでなく、交絡付与装置を形成する母材、例えばセラミック等の加工精度が低下するため好ましくなく、一方あまりに屈曲角度が大きくなりすぎても前記圧縮流体滞留ゾーンを設ける効果が不十分となるので、屈曲角度θ1は20°以上、160°以下(20°≦θ1≦160°)とする必要があり、特に45°以上120°以下(45°≦θ1≦120°)の範囲が好ましい。
【0010】
圧縮流体滞留ゾーン3の長さLは、あまりに短いと該ゾーンを設ける効果が得られなくなり、圧縮流体を走行糸条に均一に噴射できなくなり、長さ方向に交絡数の変動が大きくなると共に、また毛羽やループの発生も増大するので、前記導管2Aの径Dに対して0.8倍以上(L≧0.8D)とする必要があり、特に0.8D以上、3.0D以下(0.8D≦L≦3.0D)の範囲とするのが好ましい。
【0011】
なお、導管2Aの径Dと導管2Bの径dとの関係は特に限定する必要はないが、d/Dは1/3以上1/1以下の範囲が糸条に噴射する圧縮流体の均一性をより高める観点から好ましい。
【0012】
本発明においては、上記の要件に加えて、糸条の走行方向と流体の噴出方向とがなす角度θ2を20°以上90°未満(20°≦θ2<90°)とする必要がある。かくすることにより、毛羽及びループの発生を抑制しながら効率よく交絡を付与することができ、また、油剤の均一付着性を向上させることができる。この噴射角度が20°未満の場合には、糸条に付与できる交絡数が少なくなるために噴射流体の圧力をさらに高く設定しなければならず、得られる糸条の強伸度が低下するだけでなく、毛羽やループの増加を招くので好ましくない。一方、90°以上の場合には、噴射流体の糸条走行方向と逆方向への拡散量が増大するため、交絡付与装置入り口での糸弛みに起因する毛羽やループが増加するため好ましくない。より好ましい噴射角度θ2は45°以上85°以下の範囲である。
【0013】
なお、糸導孔径、流体噴射孔径、流体噴射孔数、流路径D等は、対象とする糸条の素材、繊度、フィラメント数、あるいは要求される交絡数等に応じて適宜設定すればよい。
【0014】
以上に説明した本発明の交絡付与装置は、従来走行糸条に交絡付与処理を施す際に使用されている公知の装置と単に置き換えるだけで、圧力が0.2MPa(2.0kg/cm2)以上0.6MPa(6.0kg/cm2)以下という高圧の圧縮流体を用いても、流体の圧力や噴出量の変動が抑制されるため安定して交絡を付与することができ、毛羽やループの発生も少ない。また、繊維表面に付着した油剤の再分配性も良好なため、油剤の付着量を少なくしても付着斑を抑制することができ、その結果、1000m/分以上といった高速延伸同時仮撚加工用の部分配向糸(POY)を効率よく生産することができる。
【0015】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例における各物性値は下記の測定方法によった。
<交絡数及びバラツキ>
帝人エンジニアリング株式会社製YT−2型インターレース測定器を使用し、測定モード3で交絡個数を測定した。10回測定を繰り返し、測定した交絡個数の平均値及びそのバラツキ(最小値〜最大値)を求め、平均交絡個数が10ケ/m以上であって、かつ測定した範囲内において交絡個数の最大値と最小値の差が10ケ/m以内のものを良好と判断した。
<ワーパー毛羽>
110本の糸条パッケージを抜き出し、毛羽、ループ検出器を備えた整経機にて測定を行い、100万m当りの毛羽及びループの総数で示した。
<摩擦延伸同時仮撚加工性(DTY加工性)>
得られた部分配向糸10kg捲のパッケージを、216錘立ての高速延伸同時仮撚加工装置(帝人製機株式会社製)にて1300m/分の速度で延伸同時仮撚加工を施し、5kg捲の仮撚加工糸を得る条件で1ケ月のランニングテストを行った。この時の断糸率で2%未満を非常に良好なレベル、2%以上5%未満を良好なレベル、5%以上を不調と判断した。
【0016】
[実施例1〜9、比較例1〜5]
固有粘度が0.63のポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸温度290℃で、孔数36個、孔径0.27mm、又は、孔数48個、孔径0.35mmの吐出孔を有する紡糸口金から溶融吐出し、該吐出糸条を冷却固化した後に油剤を0.3重量%付与し、次いで表1記載の交絡付与装置(流体噴射孔2個)を用いて圧力が0.35MPa(3.5kg/cm2)の圧空を噴射し交絡を付与した後に3300m/分の速度で巻取った。
【0017】
得られた糸条パッケージは、フィラメント数36、総繊度140dtexのマルチフィラメント糸、又は、フィラメント数48、総繊度270dtexのマルチフィラメント糸からなる10Kg巻のパッケージであった。得られた糸条パッケージの品質及び高速延伸同時仮撚加工性(表中には高速DTYと略記)の結果を表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の交絡付与装置によれば、走行する糸条に高圧の圧縮流体を噴射して交絡処理を施しても、糸長方向に均一な交絡を付与することができ、且つ毛羽やル−プ等の発生も少ない。また部分配向糸の製造工程に使用すれば、高圧の圧縮流体を噴射することにより油剤を均一に再分配することができるため、油剤付着量を低く抑えることが可能となって、1000m/分を超える高速延伸同時仮撚加工も可能な原糸を安定に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の交絡付与装置の一例を示す概略平面図である。
【符号の説明】
1 糸導孔
2A 圧縮流体が供給される側(上流側)の導管
2B 圧縮流体が糸導孔に噴射される側の導管
3 圧縮流体滞留ゾーン
Claims (2)
- 糸導孔に流体噴射孔を開口せしめ該糸導孔を走行する糸条に流体噴射孔から圧縮流体を噴射するようにした交絡付与装置において、該流体噴射孔に連結した圧縮流体の導管を屈曲管にすると共に該屈曲部には該屈曲管の圧縮流体入り側導管の延長方向に圧縮流体滞留ゾーンを設け、その際、下記の要件A〜Cを同時に満足させたことを特徴とする糸条の交絡付与装置。
A:20°≦θ1≦160°
B:20°≦θ2<90°
C:L≧0.8D
但し、θ1は導管の屈曲部の屈曲角度、θ2は糸条の走行方向と流体の噴出方向とがなす角度、Lは滞留ゾーンの屈曲管圧縮流体入り側導管延長方向における長さ、Dは屈曲管圧縮流体入り側導管の径を表す。 - 圧力が0.2MPa(2.0kg/cm2)以上0.6MPa(6.0kg/cm2)以下である圧縮流体を用いて走行糸条に交絡を付与するに際し、請求項1記載の交絡付与装置を用いることを特徴とする糸条の交絡付与方法。
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