JPS6325099B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は無撚紡績糸の製造方法および交絡処理
ノズルに関するものである。

更に詳しくは、粗糸あるいはスライバーあるい
は牽切トウなどの短繊維束を単独でもしくは連続
糸条と合体せしめて、交絡処理ノズルに導入し、
該短繊維束を構成する単繊維もしくは連続糸条を
構成する単繊維を相互に絡み合わせて連続した糸
条物となす新規な方法に関するものである。

従来から、短繊維束に流体処理を施こして高能
率に防績糸風合を有する糸を製造する方法が種々
提案されているが、いずれの方法による糸条にも
スラブやネツプあるいはループやタルミなどの発
生が多く、品質特に均一性の面で十分に従来防績
糸に近似させることは困難であつた。

本発明者等は、上記の品質の欠陥がどうして発
生するかについて鋭意研究した結果、その原因が
交絡処理ノズルにあることをつきとめ本発明に到
つた。すなわち、従来の交絡処理ノズルでは、繊
維束導入路に対し流体噴射孔が垂直又は該繊維束
導入路の出口側方向へ流体を噴射するように設け
られているため交絡処理ノズル前後での繊維束の
受ける張力はほゞ両者が等しくなつていた。

一方、交絡処理ノズルに導入される繊維束はそ
の交絡処理ノズルの上流においては、ほとんど繊
維束を構成する単繊維間に交絡がなく、その結束
力が非常に弱いので、各単繊維は僅かな力、即ち
前記の交絡処理ノズルの前後の張力によつても、
容易に滑動し移動し易い不安定な状態にあつた。
従つて、繊維束が交絡処理ノズルを通過する際に
繊維束を構成している単繊維の一部が交絡処理ノ
ズルの噴射流体によつて、容易に滑動し他の繊維
束より速く移送されて、たるみやループが生じた
り、あるいは単繊維の自由端が塊状にからみつい
てスラブやネツプになつたりして、糸としての均
一性を著しく害していた。本発明は上記の如き従
来の交絡処理ノズルの欠陥を改良し優れた均一性
と抱合性を有する無撚紡績糸を提供せんとするも
のである。

即ち、本発明は不連続繊維からなるか若しくは
それを主成分とする繊維束を引取流体ノズルによ
つて供給ローラーから引取り、次いで交絡処理ノ
ズルに導入して無撚紡績糸となす方法において、
該交絡処理ノズルの噴射流体を該繊維束の進行方
向と対向する方向に傾斜せしめ、かつ、該繊維束
の導入路の中心軸に向つて噴射せしめることによ
り、該繊維束を構成する単繊維に絡合性を付与せ
しめることを特徴とする無撚紡績糸の製造方法に
あり、かゝる方法に使用する交絡処理ノズルとし
ては、その繊維束導入路の中心軸と該繊維束導入
路の入口側に向かつて傾斜して開口する流体噴射
孔の中心軸とが交叉し、且つ前記繊維束導入路の
中心軸と流体噴射孔の中心軸との傾き角θが20゜
≦θ＜90゜の範囲にあるようなものを使用するこ
とが好ましい。

以下、本発明を詳細に説明する。

本発明の方法で使用する不連続繊維からなる繊
維束とは、有限長の長さを有する繊維からなる繊
維束であつて、ステープル繊維からなるもの、又
はトウをケン切して得られるスライバーであつて
もよい。

又、本発明では前記の繊維束に一部連続糸条を
混入せしめたものを用いてもよい。

以下、図により説明する。

第１図は本発明の１実施態様を示す工程図であ
る。

第１図において、繊維束１は吸引作用と旋回作
用を同時に行う引取流体ノズル３によつて供給ロ
ーラー２から撚をかけながら引取られる。続いて
該繊維束は解撚された状態で交絡処理ノズル５に
導入され、繊維束を構成する単繊維が相互に絡合
され、糸条６を形成する。その後該糸条６は無撚
紡績糸６としてデリベリーローラー７から移送さ
れ巻取ローラー８を介してパツケージ９に巻取ら
れる。

第２図イは第１図中に示した引取流体ノズル３
の一部である流体噴射孔を有するピースの側面図
および第２図ロはそのＡ―A′線上の断面を示す
断面図である。

第２図において、流体噴射孔１０は繊維束導入
孔１１に対して傾斜角αを成して繊維束導入孔１
１の出口に向けて流体を噴射するようになつてお
り繊維束の移動方向に推力を付与する。また該流
体噴射孔の中心軸は繊維束導入孔の中心軸に対し
て一方向に偏心しており繊維束に旋回力を付与す
るようになつている。このように構成することに
よつて抱合性の低い短繊維束を供給ローラーから
高速度でもローラーに単繊維が巻付くことなく安
定して引取ることができる。

第３図は第１図中に示した本発明による交絡処
理ノズル５の側面図およびＢ―B′線上の断面を
示す断面図であり、流体供給パイプ１５、流体移
送管１４、流体噴射孔１３、繊維束導入路１２か
ら成つている。該交絡処理ノズル５の流体噴射孔
１３は繊維束導入路１２に対して傾斜角θを成
し、繊維束導入路１２の入口に向けて流体を噴射
するようになつておりかつ流体噴射孔１３の中心
軸は繊維束導入孔１２の中心軸と交差するように
構成されている。このため交絡処理ノズル５に導
入される以前の抱合の弱い繊維束にはたらく外力
を小さくでき、繊維束の均一性を乱すことなく繊
維束を構成する単繊維間に絡合性を効率よく付与
することができる。

更に、本発明の交絡処理ノズル５により繊維束
が受ける作用について説明する。

本発明による交絡処理ノズル５によれば流体噴
射孔１３から噴射される流体が繊維束導入孔１２
の入口側へ向けて噴射されるため繊維束１は繊維
束の移動方向と反対方向の推力を受けることにな
る。従つて交絡処理ノズル５の上流側にある末だ
絡合性の弱い繊維束にはほとんど張力がかから
ず、主として、交絡処理ノズル５の下流側の絡合
状態の強い糸条物に張力がかかるという好都合の
作用効果が得られる。この結果、従来の方法では
抱合の弱い繊維束において、その単繊維の一部が
噴射流によつて下流側に他の単繊維より速い速度
で吸引されることによつて生じていたスラブやネ
ツプなどの欠点が大巾に改良され、均一な外観の
糸条物を得ることができるのである。これは本発
明の交絡処理ノズル５がその下流側への推力をほ
とんど有せず、かつ交絡処理ノズル５の下流側に
おいては、糸条物に張力がはたらいているため、
得られる糸条物はたるみやループが従来のものに
比べてはるかに少なく均一な外観のものとなる。

本発明のかゝる作用効果を最大限に発揮させる
ためには、本発明方法に使用する交絡処理ノズル
５が次のような構成を有することが好ましい。す
なわち、先ず繊維束導入路１２の中心軸に対する
流体噴射孔１３の中心軸の傾斜角θが20゜≦θ＜
90゜好ましくは30゜θ80゜の範囲にあり、且つそ
の噴射流体を繊維束導入路１２の入口側へ向けて
噴射することである。ここで前記の傾斜角θが
20゜に満ないときは繊維束１を構成する単繊維間
に十分な絡合が付与できないばかりか、交絡処理
ノズル５の上流側の抱合の弱い繊維束の配列を乱
して、スラブやネツプが増加する。一方、傾斜角
θが90゜を超えると、従来の方法と同様となり、
本発明の目的を達成することが出来ない。さら
に、交絡処理ノズル５の繊維束導入路１２の中心
軸は該繊維束導入路１２に開口する流体噴射孔１
３の中心軸と交叉することである。これら両者の
中心軸が交叉せず、偏心していると繊維束導入路
１２内に旋回渦流が生じ、繊維束１が加撚される
ため絡合性の付与が難かしくなり、単繊維の絡合
の弱い糸条物となり、本発明の目的とする糸条が
得られない。

ここで、流体噴射孔１３の配置およびその孔の
断面積については第３図に示す如く繊維束導入路
１２に対して対称の位置に一対を設けることが好
ましく、かつ該一対の流体噴射孔１３の断面積の
和が繊維束導入路１２の断面積の1.2倍以下にな
るようにするのが最も好ましいが、しかしながら
これは繊維束１を構成する単繊維のデニールやそ
の断面形状あるいは得ようとする糸条物の全デニ
ール等に合わせて適宜選定すれば良い。また、本
交絡処理ノズル５は１体式でもよく、または取扱
い易くするために適宜スリツトを設けたスリツト
式あるいは半割式にしても良く、この際工作し易
いように繊維束導入路１２および流体噴射孔１３
の断面を矩形あるいはＵ字形にしても構わない。

また、上記交絡処理ノズルの構造以外に引取流
体ノズル３の噴射流体の圧力、交絡処理ノズル５
の噴射流体の圧力、供給ローラー２のデリベリー
ローラー７に対するオーバーフイード率等も高品
質を得るために重要な条件である。すなわち、引
取流体ノズル圧は供給ローラー２に繊維束が巻付
かないようにする必要があり、３〜５Kg／cm²位が
適当である。また、交絡処理ノズル圧は繊維束に
十分な抱合を付与する必要があり３〜５Kg／cm²位
が適当である。これら２つのノズル圧は必要な範
囲内でできるだけ小さくすることが望ましい。デ
リベリーローラー７に対する供給ローラー２のオ
ーバーフイード率は１〜５％が適当で５％以上に
なると交絡処理ノズル５の上流側の繊維束１のた
るみが大きくなり、その結果バルーニングが不安
定になりかつ引取流体ノズル３による繊維束１の
仮撚数も増加し繊維束に撚が付与された状態のま
ま、それが交絡処理ノズル５に導入され易くなる
ため、糸条物の絡合が弱くなる欠点が生じるので
好ましくない。一方、オーバーフイード率が１％
未満になつても繊維束１にはたらく張力が高くな
り、単繊維の絡合が弱くなる欠点が生じる。

尚、上記引取流体ノズル圧、交絡処理ノズル
圧、オーバーフイード率は各々相互に関係してお
り供給される繊維束１の単繊維デニール短繊維
長、断面形状、油剤の種類、雰囲気の湿度、糸条
物のデニール、加工速度などによつて適宜適正な
条件が選定されるがいずれの場合にも交絡処理ノ
ズルに導入される以前に繊維束の燃がほぼ完全に
解撚されかつ無理な力がかからないような状態を
保つような条件を使用することが望ましい。

尚、本発明の方法で得られる無撚紡績糸を追撚
して従来の有撚紡績糸の用途に供せられることは
勿論である。

以下、本発明を実施例について説明する。

実施例 １ 第１図に示す工程にて無撚紡績糸を紡出した。

引取流体ノズル３には、第２図に示すような傾
斜角αが45゜、流体噴射孔１０の径1φ×２ケ、仮
撚方向Ｚのピース４を用い流体供給パイプ１６か
ら４Kg／cm²の圧空を供給した。

交絡処理ノズル５には、第３図に示すような傾
斜角θが45゜、流体噴射孔１３の径0.8φ×２ケ、
繊維束導入路１２の径1.3φのものを用い流体供給
パイプ１５から５Kg／cm²の圧空を供給した。

上記ノズル条件のもとで、供給繊維束１として
全デニール350、平均単糸デニール3.5、平均繊維
長400mmのポリエステル牽切スライバーを用いデ
リベリーローラー７に対する供給ローラー２のオ
ーバーフイード率を2.5％、供給ローラー２の表
面速度を200ｍ／minとした条件のもとで、無撚
紡績糸を紡出した。紡出中断糸やトラブルはほと
んどなく、得られた糸条をイーブネステスターを
用いて測定した結果、糸斑μ％10.3％、ネツプ１
ケ／125ｍであり、かつループやたるみの殆んど
ない非常に均一な外観を有するものが得られた。
また、抱合性も製織およびその準備工程に十分耐
えるだけの強力を有していた。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の１実施態様を示す工程図であ
る。第２図は第１図に示した引取流体ノズルのピ
ースの例を示す図で、イは側面図、ロは側面図Ａ
―A′線上の断面図を示す。第３図は第１図に示
した交絡処理ノズルの例を示す図で、イは側面
図、ロは側面図のＢ―B′線上の断面図を示す。 １…繊維束、５…交絡処理ノズル、６…無撚紡
績糸、１２…繊維束導入路、１３…流体噴射孔。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 不連続繊維からなるか若しくはそれを主成分
   とする繊維束を引取流体ノズルによつて供給ロー
   ラーから引取り、次いで交絡処理ノズルに導入し
   て無撚紡績糸となす方法において、該交絡処理ノ
   ズルの噴射流体を該繊維束の進行方法と対向する
   方向に傾斜せしめ、かつ該繊維束の導入路の中心
   軸に向つて噴射せしめることにより該繊維束を構
   成する単繊維に絡合性を付与せしめることを特徴
   とする無撚紡績糸の製造方法。 ２ 不連続繊維からなるか若しくはそれを主成分
   とする繊維束を引取流体ノズルによつて供給ロー
   ラーから引取り、次いで交絡処理ノズルに導入し
   て無撚紡績糸となす際に使用する該交絡処理ノズ
   ルであつて、 (イ) 繊維束導入路の中心軸と該繊維束導入路の入
   口側に向つて傾斜して開口する複数個の流体噴
   射孔の中心軸とがそれぞれ交叉すること (ロ) 前記繊維束導入路の中心軸と流体噴射孔の中
   心軸との傾き角θが20゜≦θ＜90゜の範囲にある
   ことを同時に満足することを特徴とする交絡処
   理ノズル。