JP3914489B2 - 高分子複合体、その延伸物及び高分子複合体の製造方法 - Google Patents

高分子複合体、その延伸物及び高分子複合体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は有機高分子と粘土鉱物とが三次元網目を形成してなる高分子複合体、その延伸物および該高分子複合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機高分子と無機材料を複合化して得られる高分子複合材料としては、ガラス繊維、炭素繊維などの他、タルクや炭酸カルシウムなどを有機高分子に充填したものが古くから知られている。近年、有機高分子の中にナノメートルスケールの微少サイズの無機成分を分散し複合化することより、優れた力学物性や熱特性の改良が発現され、有機・無機ナノコンポジット材料として注目を浴びている。
【0003】
ここで無機成分としては、ゾルゲル反応を利用して合成される金属酸化物、もしくは層状に剥離することが可能な粘土鉱物が主として用いられている(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照。)。
【0004】
この内、粘土鉱物を無機成分とするものは層状粘土のアスペクト比が大きいことにより、力学物性やガス遮蔽性などの改良に効果的である。かかる粘土鉱物と有機高分子との複合体(ナノコンポジット)においては、粘土層を有機高分子の中に微細に分散すること、また粘土層と有機高分子との相互作用を高めることが重要である。そのために、例えば有機高分子を無水マレイン酸やオキサゾリンなどで変性することや、粘土鉱物として、安価ではあるが有機高分子中に分散しにくい無機粘土鉱物ではなく、該粘土鉱物を予めアルキルアンモニウムカチオンなどで処理して層間の距離を広げ、層状剥離をしやすくすると共に有機溶媒や有機高分子に分散しやすくしたもの(未処理の粘土を無機粘土と呼ぶのに対して、有機化粘土と呼ぶ)が多く用いられている。
【0005】
これまで、ポリアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリウレタンなどの有機高分子を粘土と複合化することによりナノコンポジットと呼ばれる高分子複合体が調製されている。得られた高分子複合体はアスペクト比の大きい粘土層を微細に分散させていることから、弾性率、熱変形温度、ガス透過性、及び燃焼速度などが効果的に改良することが報告されている。(例えば、非特許文献3参照。)。
【0006】
かかる高分子複合体中に含まれる粘土鉱物量としては、性能強化の観点からは高い粘土鉱物含有が望まれるが、より低い粘土鉱物量で効果的な性能強化が達成されることも重要である。これまでの研究では通常0.2〜5質量%が用いられ、0.1質量%以下の低無機含有高分子複合体や10質量%を超える高無機含有高分子複合体は用いられていない。これは無機含有率が低くなると性能向上の効果が無視されるほど小さくなり、一方、無機含有率が高くなると製造時の粘度が大きく上昇して得られる複合体中でのナノスケールでの微細且つ均一な分散が達成できなかったり、また複合体の成形性が極端に低下して任意の形に均一成形できなかったり、更には複合体が脆くなり力学物性(強度や伸び)が大きく低下するためである。
【0007】
このため、粘土鉱物含有率が低くても効果的な性能向上を実現できる高分子複合体や、粘土鉱物含有率が高い高分子複合体であっても、無機成分の均一微細分散を達成し、優れた機械的性質を有する高分子複合体の開発が望まれていた。
【0008】
【非特許文献1】
ハラグチら(K.Haraguchi, et.al.)ジャーナル・オブ・マテリアル・サイエンス(J.Mater.Sci.)33巻、 3337−3344頁、1998年
【0009】
【非特許文献2】
ウスキら(A.Usuki, et.al.) ジャーナル・オブ・マテリアル・リサーチ(J.Mat.Res.)8巻、1174−1178頁、1993年
【0010】
【非特許文献3】
ピナバイア及びベアル編(T.J.Pinnavaia and G.W.Beall Eds.)「ポリマークレイナノコンポジット」(Polymer-Clay Nanocomposites)ワイリー社(Wiley)2000年出版)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、広い範囲の粘土鉱物含有率において、粘土鉱物が有機高分子中に均一微細に分散し、優れた延伸性と強度や弾性率などの力学物性を示す高分子複合体、その延伸物及び該高分子複合体の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究に取り組んだ結果、(メタ)アクリル酸エステルの重合体、または(メタ)アクリルアミドとN−置換(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体からなる有機高分子(A)と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成してなる高分子複合体が広い粘土鉱物含有率範囲において粘土鉱物の均一分散性に優れ、粘土鉱物を含まない重合体または共重合体に比べて、伸度や強度などの力学物性が顕著に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート及びエトキシエチルメタクリレートから選択される少なくとも1種のモノマー(a’)を重合させた有機高分子(A)と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成してなることを特徴とする高分子複合体、および該高分子複合体を延伸して得られることを特徴とする高分子複合体の延伸物を提供する。
【0014】
また、本発明は、
水または水と有機溶媒との混合溶媒中に溶解または均一に分散させた水膨潤性粘土鉱物(B)と重合開始剤または触媒の存在下に、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート及びエトキシエチルメタクリレートから選択される少なくとも1種のモノマー(a’)を重合させ、その後、前記水または水と有機溶媒との前記混合溶媒を除去し、乾燥させることを特徴とする高分子複合体の製造方法を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の高分子複合体は、(メタ)アクリル酸エステルの重合体、または(メタ)アクリルアミドとN−置換(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体からなる有機高分子(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成し、該有機高分子中に層状剥離可能な水膨潤性粘土鉱物を広い濃度範囲で均一に含有し、延伸性や柔軟性などの優れた力学物性を示す。
【0016】
本発明で用いる(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミドは、水または水と有機溶媒との混合溶媒に溶解可能なものが好ましい。一方、これらを重合もしくは共重合して得られる有機高分子(A)は必ずしも親水性である必要は無く、疎水性をより多く有し、水に溶解したり過度に膨潤することなく水中でも安定して存在するものが好ましい。また、高分子複合体の親水性と疎水性とのバランスを変化させたり、他の成分との相互作用を強めるために、親水性基、イオン性基及び/又は疎水性基などを必要に応じて重合体または共重合体中に導入することも可能である。
【0017】
(メタ)アクリル酸エステル(a)としては、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレートまたはエトキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。本発明の(メタ)アクリル酸エステル(a)の重合体は、これら(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる単独モノマーの重合体または複数モノマーの共重合体を含む。
【0018】
(メタ)アクリルアミドとN−置換(メタ)アクリルアミドとしては、(メタ)アクリルアミドとアルキル基の炭素数が1以上のアルキル(メタ)アクリルアミドであり、具体的には、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−エチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリディン、N−アクリロイルピペリディン、N−アクリロイルモロフォリン、N−アクリロイルメチルホモピペラジン、N−アクリロイルメチルピペラジンまたはN−メチルメタクリルアミドが挙げられる。
【0019】
有機高分子(A)が(メタ)アクリルアミドとN−置換(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種(b)と(メタ)アクリル酸エステル(a)との共重合体からなる場合は、前記共重合体の(a)に対する(b)の比は、得られる高分子複合体の室温での柔軟性が高く、水中での平衡水分率を低くするためには、モル比で0.5以下、より好ましくは0.25以下である。
【0020】
有機高分子(A)のガラス転移温度は必ずしも限定されず、広い範囲のものが用いられ得るが、加工性や室温での延伸性や伸縮性などからは、有機高分子(A)はガラス転移温度が100℃以下であるものが好ましく、30℃以下がより好ましく、0℃以下のものが特に好ましい。
【0021】
水膨潤性粘土鉱物(B)としては、層状に剥離可能な膨潤性粘土鉱物が用いられ、好ましくは水もしくは水と有機溶媒との混合溶液中で膨潤し均一分散可能な粘土鉱物、特に好ましくは水中で分子状(単一層)又はそれに近いレベルで均一分散可能な無機粘土鉱物が用いられる。具体的には、水膨潤性粘土鉱物として、水膨潤性スメクタイトや水膨潤性雲母などが用いられ、より具体的には、ナトリウムを層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、水膨潤性合成雲母などが挙げられる。
【0022】
本発明の高分子複合体は、水または水と有機溶媒との混合溶媒中に溶解または均一に分散させた水膨潤性粘土鉱物(B)と重合開始剤または触媒の存在下に(メタ)アクリル酸エステル(a)を重合させるか、もしくは、水または水と有機溶媒との混合溶媒中に溶解または均一に分散させた水膨潤性粘土鉱物(B)と重合開始剤または触媒の存在下に、(メタ)アクリルアミドとN−置換(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種(b)と(メタ)アクリル酸エステル(a)とを共重合させることにより得られる。
【0023】
例えば、水膨潤性粘土鉱物(B)を水または水と有機溶媒とを含む混合溶媒に均一に微細分散させた水溶液に、1種または複数の(メタ)アクリル酸エステル(a)、もしくは(メタ)アクリルアミドとN−置換(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種(b)と前記(メタ)アクリル酸エステル(a)とを混合したものを添加して溶解させ、次いで、開始剤及び/または触媒を添加し、電子線などの照射や加熱などの方法により水膨潤性粘土鉱物(B)の共存下でインシチュー(in situ)ラジカル重合させることにより、本発明の高分子複合体を得る。
【0024】
用いる開始剤および触媒としては、公知のラジカル重合開始剤や触媒を適時選択して用いることができる。好ましくは水分散性を有し、系全体に均一に含まれるものが好ましく用いられる。具体的には、重合開始剤として、水溶性の過酸化物、例えばペルオキソ二硫酸カリウムやペルオキソ二硫酸アンモニウム、水溶性のアゾ化合物、例えばVA−044、V−50、V−501(いずれも和光純薬工業株式会社製)の他、Fe2+と過酸化水素との混合物などが例示される。
【0025】
触媒としては、3級アミン化合物であるN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどは好ましく用いられる。重合温度は、重合触媒や開始剤の種類に合わせて例えば0℃〜100℃が用いられる。重合時間も数十秒〜数十時間の間で行うことが出来る。
【0026】
本発明の高分子複合体は、前記有機高分子(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)とが相互作用して三次元網目を形成している。相互作用は、効果的な三次元網目を形成できれば、イオン結合、水素結合、疎水結合、配位結合、共有結合などのいずれか一つまたは複数であって良い。なお、かかる三次元網目形成を妨げない限り、またはそれを促進する目的で、前記有機高分子(A)を構成する重合成分と共に他の重合性有機分子などを併用、または得られる高分子複合体に機能性を付与する目的で有機または無機の各種機能性分子や粒子を添加してよい。
【0027】
本発明においては、高分子複合体の三次元網目形成を水膨潤性粘土鉱物で行うことが好ましく、通常の有機架橋剤を全く用いないで水膨潤性粘土鉱物のみで三次元網目を形成することが特に好ましい。有機架橋剤を用いた場合は、得られる複合体は延伸性や強度などの力学物性の低い材料となる。
【0028】
本発明の高分子複合体は、有機高分子(A)に対する水膨潤性粘土鉱物(B)の質量比が0.003〜3であることが好ましく、より好ましくは0.005〜2、特に好ましくは0.01〜1である。該質量比が0.003未満では機械的性質が高分子複合体として不十分となりやすく、3を超えては粘土鉱物の均一微細分散が困難となりやすい。
【0029】
本発明の高分子複合体は、水膨潤性粘土鉱物の含有率によらず乾燥物は均一で透明性を有し水膨潤性粘土鉱物の凝集は観測されない。最終的な水膨潤性粘土鉱物の含有率は熱質量分析(TGA)により、また微細分散性は透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定される。本発明の高分子複合体は、用いた水膨潤性粘土鉱物の全量が高分子複合体に含まれていることがTGAにより確認され、且つ1〜数ナノメーターの厚みの層状粘土層がナノメータースケールで均一に分散しているのがTEMにより確認される。
【0030】
本発明の高分子複合体は、通常用いられる有機架橋剤を一切添加していないにも拘わらず、優れた力学物性、特に高い延伸性と伸縮性を示すことから、有機高分子と微細分散した水膨潤性粘土鉱物が相互作用して三次元網目を形成していると結論される。一方、水膨潤性粘土鉱物を含まない線状高分子および有機架橋剤を添加して三次元網目を形成したものは、比較例に示すように、いずれも本発明の高分子複合体に比べて極めて低い力学物性しか示さない。このことは、本発明の高分子複合体が、従来にない効果的な三次元網目を形成していることを示唆している。具体的には均一に分布した粘土層が多官能架橋剤として有効に働くことから、架橋点間距離が長く、且つ均一に制御されることとなり、且つ架橋点間の高分子は架橋点間距離が長いことから自由鎖に近い形態をとった構造を有していると推定される。このような有機高分子と水膨潤性粘土鉱物からなる三次元網目形成により、極めて大きい延伸性や優れた破断強度が実現される。
【0031】
かかる三次元網目構造の形成は、透過型電子顕微鏡観察による水膨潤性粘土鉱物の微細分散の他、以下に示す優れた延伸性や高い破断強度の達成、動的粘弾性測定などによる水膨潤性粘土鉱物層間の有機高分子の自由鎖に近いガラス転移温度の測定によっても確認された。
【0032】
本発明の高分子複合体は、優れた力学物性を示し、例えば、伸びについては、1000%〜3000%の破断伸びを示し、3000%以上の大きい破断伸びを有する高分子複合体も得られる。また、本発明の高分子複合体は有機架橋高分子や線状高分子に比べて非常に高い破断強度を示す。また、得られた高分子複合体を100%以上、100%〜1500%に延伸することにより、より高い柔軟性や優れた伸縮性を有する高分子複合体の延伸物を得ることができる。
【0033】
本発明の未延伸の高分子複合体は、多くの場合、高い初期弾性率および降伏点とネッキング現象及び優れた延伸性を示す。一方、これを延伸処理して得られる本発明の高分子複合体の延伸物は優れた延伸性と可逆的な回復性を示し、繰り返し延伸試験において良好な伸縮性を示す。本発明の高分子複合体の延伸は、有機高分子(A)のガラス転移温度以上の温度で、一軸延伸、二軸延伸の他、圧縮、圧延、押し出しなどの慣用の方法で行うことができる。
【0034】
本発明の高分子複合体は、乾燥状態だけでなく、乾燥サンプルに水分を吸湿させた状態でも優れた機械的性質を示す。吸湿水分率は高分子複合体の組成により変化し、必ずしも限定されないが、高分子複合体の吸湿水率が小さいほど、湿度の異なる大気中でもより安定した機械的性質を示すので、高分子複合体の吸湿水分率の範囲は、例えば温度25℃、湿度55%の大気中で好ましくは100質量%以下のものであり、より好ましくは70質量%以下のもの、特に好ましくは30質量%以下のものである。
【0035】
また、本発明の高分子複合体は水雰囲気でも優れた機械的性質を示す。本発明の高分子複合体の水中での平衡吸水率も、高分子複合体の組成により種々変えることができ、必ずしも限定されないが、平衡吸水率が小さい程、水中でもより安定した機械的性質を示すため、水中での平衡吸水率が500質量%以下のものが好ましく、より好ましくは300質量%以下のもの、特に好ましくは100質量%以下のものである。
【0036】
本発明の高分子複合体は、円柱状、棒状、フィルム状、糸状などの各種形状に成形でき、生体適合性、柔軟性に優れた人工透析器、人工心肺、人工血管などの人工臓器用材料や、カテーテルなどの治療用材料として、また伸縮性に優れた各種工業材料として用いられる。
【0037】
【実施例】
次いで本発明を実施例により、より具体的に説明するが、もとより本発明は、以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
水膨潤性粘土鉱物は、[Mg5.34Li0.66Si20(OH)]Na 0.66の組成を有する水膨潤性合成ヘクトライト(商標ラポナイトXLG、日本シリカ株式会社製)を真空乾燥して用いた。アクリレート誘導体は、2−メトキシエチルアクリレート(MEA)(和光純薬工業株式会社製)を用いた。MEAは、シリカゲルカラム(メルク社製)を用いて重合禁止剤を取り除いてから使用した。
重合開始剤は、ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS:関東化学株式会社製)をKPS/水=0.40/20(g/g)の割合で脱酸素した純水中に溶解し、水溶液にして使用した。触媒は、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED:和光純薬工業株式会社製)を使用した。純水は、全て高純度窒素をあらかじめ充分にバブリングさせ、含有酸素を除去してから使用した。
【0039】
20℃の恒温室において、平底ガラス容器に、純水19.02gとテフロン製攪拌子を入れ、攪拌しながら0.396gのラポナイトXLGを加え、無色透明の溶液を調製した。これにMEA2.3gを加え、攪拌して無色透明溶液を得た。次にKPS水溶液1.0gとTEMED16μlを攪拌しながら加えた。この溶液の一部を底の閉じた内径5.5mm、長さ150mmのガラス管容器3本に移した後、上部に密栓をし、20℃の恒温水槽中で20時間静置して重合を行った。
【0040】
残りの水溶液も平底ガラス容器内で20℃、20時間静置し、重合を行った。なお、これらの溶液調製から重合までの操作は、全て酸素を遮断した窒素雰囲気下で行った。20時間後に、平底ガラス容器内、及びガラス管内に均一な円柱状、及び棒状の固体(高分子複合体)が水中で遊離して生成した。
【0041】
得られた高分子複合体中に水膨潤性粘土鉱物などによる不均一な凝集は観測されず、高分子複合体は均一な白色固体として得られた。100℃で質量が一定になるまで真空乾燥することで、透明な高分子複合体を得た。乾燥質量から計算した高分子重合収率は99.5質量%であった。なお、乾燥した高分子複合体を25℃、湿度50%に5日間放置した場合の水分率は4.9質量%であった。高分子複合体を乾燥後、600℃までの熱質量分析(セイコー電子工業株式会社製TG−DTA220:空気流通下、昇温:10℃/分)を行い、粘土含有率を求めた。粘土含有率(無機粘土/高分子複合体)は17.1質量%で重合溶液組成からの計算値とほぼ一致した。またKBr法によるフーリエ変換赤外線吸収スペクトル(FT−IR)の測定において、ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)(PMEA)と水膨潤性粘土鉱物の特性ピークが確認された。
【0042】
乾燥した高分子複合体をエポキシ樹脂中に包埋後、厚さ約50mmの超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡観察を行った(日本電子株式会社製JEM−200CXを使用)ところ、1〜数nmの厚みの層状粘土が微細且つ均一に分散しているのが観察された。以上の結果より、本実施例で得られた固体は、水膨潤性粘土鉱物とPMEAからなる高分子複合体であって、粘土鉱物含有率は17.1質量%であり、且つ水膨潤性粘土鉱物が均一に微細分散したものであることが明らかとなった。この高分子複合体は、透明であり、且つ室温で90度以上に屈曲させても破壊することのない柔軟性を示した。
【0043】
乾燥した棒状の高分子複合体の動的粘弾性をセイコー電子工業株式会社製DMA−200を使用し、測定周波数1Hz、昇温2℃/分で測定した結果、高分子複合体は約−40℃にガラス転移温度(Tg:tanδの極大値が示す温度)を示した。また、Tgより低い温度では高い弾性率を示し、Tg以上の温度では広い温度範囲にわたって安定したゴム領域の弾性率を示した。
【0044】
一方、乾燥した棒状の高分子複合体(断面積3.40cm)をチャック部での滑りの無いようにして、引っ張り試験装置(株式会社島津製作所製、卓上型万能試験機AGS−H)に装着し、評点間距離20mm、引っ張り速度100mm/分にて引っ張り試験を行った結果を図1に示す。図1の縦軸は荷重(N)を横軸は伸び(%)を示す。延伸初期に明確な降伏点およびその後のネッキング現象が観測され、弾性率は15.2MPa、破断強度が1.88MPa、破断伸びが2017%であった(いずれも断面積としては、初期断面積を使用)。引っ張り試験後の高分子複合体は、ゴム的な伸縮性とタフネスを示した。特に伸びは応力を除くことにより瞬間的に回復する伸縮性が見られ、元の117.4%の長さまで回復した。
【0045】
以上の結果より、得られた高分子複合体は、17.1質量%の高い無機含有複合体であるにもかかわらず、高い延伸性や屈曲性を初めとする優れた機械的性質を有することが明らかである。また、かかる優れた力学物性、有機架橋剤を何ら使用していないのにゴム的な伸縮性を有すること、及び水膨潤性粘土鉱物の微細分散性、重合体のガラス転移温度などから、本発明の高分子複合体中では、有機高分子(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成していると結論した。
【0046】
(実施例2)
実施例1で得られた乾燥した高分子複合体を秤量後、20℃の水中で質量が平衡になるまで静置し平衡吸水率を測定した。その結果、平衡吸水率(吸水量/乾燥高分子複合体質量)は、28.2質量%であった。この高分子複合体は均一な白色固体であり、実施例1と同様の方法で引っ張り試験を行った結果、弾性率54.8kPa、破断強度25.3kPa、破断伸び1856%であり、高分子複合体は水中でも同様に、延伸性など優れた力学物性を示すことが明らかとなった。
【0047】
(実施例3)
実施例1で得られた高分子複合体を元の長さの5倍まで一軸延伸し、そのまま長さを固定した状態で、25℃、湿度50%で72時間保持した。その後、80℃で3時間真空乾燥して、高分子複合体の延伸物を調製した。得られた高分子複合体の延伸物は柔らかく、柔軟性、屈曲性に富み、90度の曲げ変形試験でも折れることはなく、直径1mmの金属棒に巻き付けても破断したり、傷つくことはなかった。さらにこの高分子複合体の延伸物は、その後の繰り返し延伸試験においてゴム状の可逆的な変形、優れた伸縮性を示した。実施例1と同様に延伸物の引っ張り試験を行った結果、弾性率124kPa、破断強度1.74MPa、破断伸び2310%であった。また、伸びは応力を除くことにより瞬間的に回復する伸縮性が見られ、元の長さの120%まで回復した。
【0048】
(実施例4)
MEAの重合を5℃の恒温水槽中で行うこと以外は、実施例1と同様にして、高分子複合体を調製した。得られた固体は、均一な水膨潤性粘土鉱物と重合体との複合体であり、水膨潤性粘土鉱物などの不均一な凝集は観測されなかった。棒状の高分子複合体を実施例1と同様に100℃で真空乾燥し、棒状の透明な高分子複合体を得た。実施例1と同様に測定したところ、この高分子複合体中の粘土鉱物含有率は17.1質量%であった。また実施例1と同様にして、棒状の乾燥した高分子複合体の引っ張り試験を行ったところ、降伏点やネッキング現象を示し、弾性率11.5MPa、破断強度2.13MPa、破断伸び1465%のタフネス、柔軟性のある高分子複合体であった。引っ張り試験後の高分子複合体は、ゴム的な伸縮性とタフネスを示した。
【0049】
(実施例5)
実施例4で得られた乾燥した高分子複合体を、実施例2と同様に、平衡状態になるまで吸水させた。このときの平衡吸水率は35.0質量%であった。この平衡吸水率に達した複合体の引っ張り試験を行った結果、弾性率25.9kPa、破断強度24.8kPa、破断伸び753%であった。
【0050】
(実施例6)
実施例4で得られた高分子複合体を1400%の長さまで延伸処理することにより、高分子複合体延伸物を得た。この高分子複合体延伸物の引っ張り試験を行ったところ、弾性率18.9MPa、破断強度5.50MPa、破断伸び740%のタフネス、柔軟性のある高分子複合体であった。またその後、500%迄の繰り返し延伸試験において、高分子複合体延伸物は、ゴム的な伸縮性とタフネスを示した。
【0051】
(実施例7)
MEAの重合を50℃の恒温水槽中で行うこと以外は、実施例1と同様にして、高分子複合体を調製した。得られた固体は、均一な水膨潤性粘土鉱物と重合体との複合体であり、水膨潤性粘土鉱物などの不均一な凝集は観測されなかった。棒状の高分子複合体を実施例1と同様に100℃で真空乾燥し、棒状で透明な高分子複合体を得た。実施例1と同様に測定したところ、この高分子複合体中の粘土鉱物含有率は17.1質量%であった。また実施例1と同様にして、棒状の乾燥した高分子複合体の引っ張り試験を行ったところ、弾性率8.94MPa、破断強度1.88MPa、破断伸び2127%のタフネス、柔軟性のある高分子複合体であった。引っ張り試験後の高分子複合体は、ゴム的な伸縮性とタフネスを示した。
【0052】
(実施例8)
実施例7で得られた高分子複合体を2100%の長さまで延伸処理することにより、高分子複合体の延伸物を得た。この高分子複合体の延伸物の引っ張り試験を行ったところ、弾性率18.0MPa、破断強度4.68MPa、破断伸び541%のタフネス、柔軟性のある高分子複合体であった。引っ張り試験後の高分子複合体は、ゴム的な伸縮性とタフネスを示した。
【0053】
(実施例9)
ラポナイトXLGを0.396g用いる代わりに、0.528gを用いること以外は実施例1と同様にして、高分子複合体を調製した。得られた固体は、均一な水膨潤性粘土鉱物と重合体の複合体であり、水膨潤性粘土鉱物などの不均一な凝集は観測されなかった。棒状の高分子複合体を実施例1と同様に100℃で真空乾燥し棒状の透明な高分子複合体を得た。実施例1と同様に測定したところ、この高分子複合体中の粘土鉱物含有率は22.9質量%であった。また透過型電子顕微鏡による観察で、1〜10nmの厚みの粘土層が均一に微細分散しているのが観測された。また実施例1と同様に棒状の乾燥した高分子複合体の引っ張り試験を行ったところ、降伏点及びネッキング現象を示し、弾性率3.24MPa、破断強度5.25MPa、破断伸び1850%のタフネス、柔軟性のある高分子複合体であった。引っ張り試験後の高分子複合体は、ゴム的な伸縮性とタフネスを示した。
【0054】
(実施例10)
ラポナイトXLG0.396gを0.0132gに変えた以外は実施例1と同様にして、高分子複合体を調製した。得られた固体は均一な白色であり、水膨潤性粘土鉱物などの不均一な凝集は観測されなかった。棒状の高分子複合体を実施例1と同様に、100℃の真空乾燥を行い、棒状の透明な高分子複合体を得た。実施例1と同様に測定したところ、この高分子複合体中の粘土鉱物含有率は0.5質量%であった。また実施例1と同様にして、高分子複合体の引っ張り試験を行ったところ、降伏点及びネッキング現象を示し、弾性率2.95kPa、破断強度89.4kPa、破断伸び235%であった。
【0055】
(実施例11)
MEA2.3gを用いる代わりに、MEA1.84gとN−イソプロピルアクリルアミド(NIPA:興人株式会社製)0.4gとの混合物を用いること以外は実施例1と同様にして、高分子複合体を調製した。得られた固体は、均一な水膨潤性粘土鉱物と共重合体からなる高分子複合体であり、水膨潤性粘土鉱物などの不均一な凝集は観測されなかった。得られた棒状の高分子複合体を実施例1と同様に、100℃で真空乾燥し棒状の透明な高分子複合体を得た。実施例1と同様に測定したところ、この高分子複合体中の粘土鉱物含有率は18.6質量%であった。また実施例1と同様にして、棒状の乾燥した高分子複合体の引っ張り試験を行ったところ、降伏点やネッキング現象を示し、弾性率4.81MPa、破断強度4.55MPa、破断伸び700%のタフネス、柔軟性のある高分子複合体であった。引っ張り試験後の高分子複合体は、ゴム的な伸縮性とタフネスを示した。
【0056】
(実施例12)
実施例11で得られた乾燥した高分子複合体を実施例2と同様に平衡状態になるまで吸水させ、均一で白色の高分子複合体を得た。平衡吸水率は135質量%であった。この平衡吸水率に達した高分子複合体の引っ張り試験を行ったところ、降伏点は示さず、弾性率1.81kPa、破断強度72.4kPa、破断伸び2700%であった。
【0057】
(実施例13)
実施例11で得られた棒状の高分子複合体を元の長さの5倍まで一軸延伸し、そのまま長さを固定した状態で、25℃、湿度50%で72時間保持して水分を除いた。その後、80℃で3時間真空乾燥して、高分子複合体の延伸物を調製した。得られた高分子複合体の延伸物は柔らかく、柔軟性、屈曲性に富み、90度の曲げ変形試験でも折れることはなく、直径1mmの金属棒に巻き付けても破断したり、傷つくことはなかった。さらにこの高分子複合体の延伸物は伸縮性にも優れたゴム状のものであった。この高分子複合体の延伸物の引っ張り試験を行った結果、弾性率3.4MPa、破断強度10.4MPa、破断伸び288%であり、引っ張り試験後の高分子複合体は、ゴム的な伸縮性とタフネスを示した。
【0058】
(実施例14)
MEA2.3gを用いる代わりに、MEA2.19gとNIPA0.1gとの混合物を用いること以外は実施例1と同様にして、高分子複合体を調製した。得られた固体は、均一な水膨潤性粘土鉱物と共重合体からなる高分子複合体であり、水膨潤性粘土鉱物などの不均一な凝集は観測されなかった。棒状の高分子複合体を実施例1と同様に、100℃で真空乾燥し乾燥した透明な棒状の高分子複合体を得た。実施例1と同様に測定したところ、この高分子複合体中の粘土鉱物含有率は17.2質量%であった。調製後の棒状の高分子複合体の引っ張り試験を行ったところ、降伏点やネッキング現象を示し、弾性率5.13MPa、破断強度2.74MPa、破断伸び1929%であった。
【0059】
(実施例15)
実施例14で得られた乾燥した高分子複合体を実施例2と同様に平衡状態になるまで吸水させた。このときの平衡吸水率は285%であった。この平衡吸水率に達したやや透明性のある高分子複合体の引っ張り試験を行ったところ、弾性率2.3kPa、破断強度35.0kPa、破断伸び3280%であった。
【0060】
(実施例16)
20℃の恒温室において、平底ガラス容器に、純水29.51gとテフロン製攪拌子を入れ、攪拌しながら0.99gのラポナイトXLGを加え、無色透明の溶液を調製した。これにMEA0.92gとNIPA0.2gを加え、攪拌して無色透明溶液を得た。次にKPS水溶液0.5gとTEMED8μlを攪拌しながら加えた。この溶液の一部を底の閉じた内径5.5mm、長さ150mmのガラス管容器3本に移した後、上部に密栓をし、20℃の恒温水槽中で20時間静置して重合を行った。残りの水溶液も平底ガラス容器内で20℃、20時間静置し、重合を行った。なお、これらの溶液調製から重合までの操作は、全て酸素を遮断した窒素雰囲気下で行った。20時間後に、平底ガラス容器内、及びガラス管内に均一な円柱状、及び棒状の白色固体(高分子複合体)が水中で生成しており、両容器から注意深く取り出した。得られた固体は、均一な水膨潤性粘土鉱物と共重合体からなる高分子複合体であり、水膨潤性粘土鉱物などの不均一な凝集は観測されなかった。
【0061】
棒状の高分子複合体を実施例1と同様に、100℃の真空乾燥を行い、棒状の透明な高分子複合体を得た。実施例1と同様に測定したところ、この高分子複合体中の粘土鉱物含有率は88.3質量%であった。この棒状の乾燥した高分子複合体の引っ張り試験を行ったところ、弾性率66.4MPa、破断強度5.02MPa、破断伸び30.5%を示した。
【0062】
(実施例17)
20℃の恒温室において、平底ガラス容器に、純水19.02gとテフロン製攪拌子を入れ、攪拌しながら0.396gのラポナイトXLGを加え、無色透明の溶液を調製した。これにエタノール2.5gとTHF0.2gを入れて撹拌後、2−エトキシエチルアクリレート(Aldrich Chemical Company,Inc.製)2.54gを加え、攪拌して無色透明溶液を得た。次にKPS水溶液1.0gとTEMED16μlを攪拌しながら加えた。この溶液の一部を底の閉じた内径5.5mm、長さ150mmのガラス管容器3本に移した後、上部に密栓をし、20℃の恒温水槽中で20時間静置して重合を行った。
【0063】
残りの水溶液も平底ガラス容器内で20℃、20時間静置し、重合を行った。なお、これらの溶液調製から重合までの操作は、全て酸素を遮断した窒素雰囲気下で行った。20時間後に、平底ガラス容器内、及びガラス管内に均一な白色の円柱状、及び棒状の固体(高分子複合体)が水中で生成しており、両容器から注意深く取り出した。得られた固体は、均一な水膨潤性粘土鉱物と重合体の高分子複合体であり、水膨潤性粘土鉱物などの不均一な凝集は観測されなかった。棒状の高分子複合体を実施例1と同様に、100℃の真空乾燥を行ったところ、柔軟で伸縮性のある透明な棒状の高分子複合体が得られた。
【0064】
(実施例18)
2−エトキシエチルアクリレートを2.54g用いる代わりに、2−エトキシエチルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)を2.80g用いること以外は実施例11と同様にして、高分子複合体を調製した。得られた固体は、均一白色の水膨潤性粘土鉱物と重合体の高分子複合体であり、水膨潤性粘土鉱物などの不均一な凝集は観測されなかった。棒状の高分子複合体を実施例1と同様に、100℃で真空乾燥し、柔軟で伸縮性のある棒状の透明な高分子複合体を得た。
【0065】
(比較例1)
水膨潤性粘土鉱物を用いないこと以外は実施例1と同様にして、20℃で20時間重合を行ったところ、白濁した固体の重合物が得られた。この重合物は柔らかいが非常に脆く、またガラスとの付着性が強く、ガラス管及び平底ガラス容器から取り出そうとしたところ、剥離が困難であり、剥離に伴いすぐに破壊された。またガラス管で調製した棒状の重合物を100℃で真空乾燥して、乾燥した棒状サンプルを得たが、乾燥後もガラスに付着したまま剥離が困難であり、また弱くて容易に破壊されるため、重合物、乾燥物のいずれも引っ張り試験を行うことは出来なかった。
【0066】
(比較例2)
水膨潤性粘土鉱物を用いないこと、MEAを添加した後、有機架橋剤をMEAの3モル%添加する以外は実施例1と同様にして、20℃で20時間重合を行ってMEAの有機架橋物を得た。有機架橋剤としては、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(BIS)(和光純薬工業株式会社製)をそのまま使用した。その結果、白濁した脆い含水ゲルが得られた。このゲルは柔らかいが非常に脆く、またガラスとの付着性が強く、ガラス管及び平底ガラス容器から取り出そうとしたところ、剥離が困難であり、すぐに破壊された。またガラス管で調製した棒状のゲルを100℃で真空乾燥して、乾燥した棒状サンプルを得たが、乾燥後もガラスに付着したまま剥離が困難であり、また弱くて容易に破壊され、含水ゲル、乾燥物のいずれも引っ張り試験を行うことは出来なかった。
【0067】
【発明の効果】
本発明の高分子複合体は、広い範囲の粘土鉱物含有率において、水膨潤性粘土鉱物が均一に分散し、特に高い濃度の粘土鉱物を含む場合でも、水膨潤性粘土鉱物の微細分散性に優れ、良好な延伸性と優れた強度と弾性率などの力学物性を有する。また、本発明の高分子複合体は大気中で安定して用いられる他、水中でも優れた力学物性を示す特徴を有する。更に該高分子複合体の延伸物は、更に優れた柔軟性や屈曲性を有し可逆的伸縮性を有する材料として利用可能である。
【0068】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた高分子複合体の引っ張り試験における荷重と伸びの関係を示す図である。

Claims (9)

  1. メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート及びエトキシエチルメタクリレートから選択される少なくとも1種のモノマー(a’)を重合させた有機高分子(A)と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成してなることを特徴とする高分子複合体。
  2. 前記有機高分子(A)が、(メタ)アクリルアミド及びN−置換(メタ)アクリルアミドから選択される少なくとも1種(b)を、前記モノマー(a’)と共に重合させた共重合体である請求項1記載の高分子複合体。
  3. 前記モノマー(a’)に対する前記(b)のモル比が0.5以下である請求項に記載の高分子複合体。
  4. 前記有機高分子(A)のガラス転移温度が100℃以下である請求項1〜3のいずれかに記載の高分子複合体。
  5. 前記高分子複合体の水膨潤性粘土鉱物(B)/有機高分子(A)の質量比が0.003〜3である請求項1〜4のいずれかに記載の高分子複合体。
  6. 平衡含水率が500質量%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の高分子複合体。
  7. 請求項1〜6のいずれか1つに記載の高分子複合体を延伸して得られることを特徴とする高分子複合体の延伸物。
  8. 水または水と有機溶媒との混合溶媒中に溶解または均一に分散させた水膨潤性粘土鉱物(B)と重合開始剤または触媒の存在下に、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート及びエトキシエチルメタクリレートから選択される少なくとも1種のモノマー(a’)を重合させ、その後、前記水または水と有機溶媒との前記混合溶媒を除去し、乾燥させることを特徴とする高分子複合体の製造方法。
  9. (メタ)アクリルアミド及びN−置換(メタ)アクリルアミドから選択される少なくとも1種(b)を、前記モノマー(a’)と共に共重合させる請求項8記載の高分子複合体の製造方法。
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