JP3913292B2 - ゴルフクラブ用シャフト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーボンシャフト等の中空先細り状の繊維強化樹脂(FRP)製ゴルフクラブ用シャフトに関し、さらに詳述すると、シャフトの管壁に金属箔含有FRP層を設けたゴルフクラブ用シャフトに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ゴルフクラブ用シャフトの素材は、スチールから繊維強化樹脂へと変化している。繊維強化樹脂製シャフトの代表例は、いわゆるカーボンシャフトと呼ばれる炭素繊維を熱硬化性樹脂で固めたもの(CFRP)である。カーボンシャフトを成形する場合、樹脂含浸シートであるプリプレグを最初に準備する。プリプレグは、例えば、直径4〜10μm程度の炭素繊維を1000本束ねて1つの単位とし、その6〜12単位を一緒に束ねたものを平行に並べてシート状にし、その上に熱硬化性樹脂の薄いシートを重ねた後、これを熱ローラ間に通して繊維シート上及び繊維相互間に樹脂を含浸させることにより作製することができる。
【0003】
次に、ややテーパ状をなした先細り円柱形(長軸円錐台状)のマンドレルの周囲に、マンドレルの軸線に対し所定の繊維角度を与えてプリプレグを巻き付け、通常4〜10層の積層体を形成する。この場合、マンドレルがややテーパ状をなした先細り円柱形であるため、1枚のプリプレグを例えば10回巻き付けて積層体を形成しようとすると、積層が進むにつれて繊維の配列角度が変化してしまうので、台形状に裁断した幅狭のプリプレグ裁断片を必要な枚数準備し、これらの裁断片を順次巻き付けて張り合わせていく。
【0004】
このようにして形成された積層体は、その周囲全体にラッピングテープを巻き付けて固定し、加熱炉内で加熱硬化させる。加熱硬化終了後にラッピングテープ及びマンドレルを外すと、素管が得られる。さらに、素管に表面仕上げ、塗装を施すことにより、ゴルフクラブ用シャフトが完成する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述したようにして得た中空先細り状のゴルフクラブ用シャフトを用いてゴルフクラブを作製する際には、シャフトの先端部にクラブヘッド、基端部にグリップを装着する。この場合、クラブヘッドの手前側、すなわちクラブヘッドの重心から離れた位置にシャフトの先端部を固定するので、シャフトの細い先端部に重量物であるクラブヘッドが偏心して配された状態になる。したがって、ゴルフクラブの使用時、すなわちスイング時には、クラブヘッドによってシャフトに著しく大きいねじりモーメントが加わる。その結果、ゴルフクラブを繰り返し使用しているうちに、シャフトのねじり破壊を招く可能性もある。
【0006】
上述したようにシャフトに著しく大きいねじりモーメントが作用することを防止するための対策としては、シャフトの管壁を構成する繊維強化樹脂層の層数を増やしたり、シャフトの径を大きくしたりすることが考えられるが、このような強化構造では曲げ剛性及びねじり剛性が大きくなりすぎ、ゴルフクラブ用シャフトとして基本的に必要な適度の曲げ剛性及びねじり剛性がなくなり、シャフトがしなやかさを失ってしまう。
【0007】
また、一般に、繊維強化樹脂からなるゴルフクラブ用シャフトは、ねじり方向の振動減衰特性がスチール製シャフトに比べて劣り、スイング時におけるねじり方向の振動が減衰しにくいという問題があり、この点で打感が悪くなるという欠点があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、スイング時にシャフトに加わる過剰なねじり変形を低減させることができるとともに、シャフトのねじり方向の振動減衰特性を向上させることができる繊維強化樹脂製のゴルフクラブ用シャフトを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、中空先細り状の繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトにおいて、前記シャフトの管壁が、強化繊維としてカーボン繊維及びボロン繊維から選ばれる1種以上を用いた繊維強化熱硬化性樹脂のみからなる管状のFRP単独層と、金属箔層と強化繊維としてカーボン繊維及びボロン繊維から選ばれる1種以上を用いた繊維強化熱硬化性樹脂層とが積層されてなる複合テープを螺旋状に巻くことにより形成され、前記FRP単独層の層間及び内周面上の一方又は両方に設けられた管状の金属箔含有FRP層とを有し、前記複合テープを2層以上に巻くことにより前記金属箔含有FRP層が形成され、かつ、隣接する複合テープ層の金属箔層はシャフトの軸線に対して互いに反対の方向に傾斜していることを特徴とするゴルフクラブ用シャフトを提供する。
【0010】
本発明のゴルフクラブ用シャフトでは、シャフトの管壁に前述した管状の金属箔含有FRP層を設けたので、該金属箔含有FRP層の金属箔層の作用によりシャフトのねじり剛性が適度に大きくなり、そのためスイング時にシャフトに加わるねじり変形が適宜低減されるとともに、スイング時におけるねじり方向の振動が減衰しやすくなるものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明におけるFRP単独層、複合テープ及び金属箔含有FRP層について詳しく説明する。
FRP単独層
FRP単独層は、実質的に繊維強化熱硬化性樹脂のみからなる管状のものである。FRP単独層は、例えば、マンドレル又はマンドレルの周囲に形成した金属箔含有FRP層にプリプレグを複数層に巻くことにより形成することができる。プリプレグとしては、例えば、平行に引き揃えたロービングやクロス、マットといった強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させて作製したシート状のものを用いることができる。この場合、強化繊維としてはカーボン繊維及びボロン繊維から選ばれる1種以上、副資材としては硬化剤、硬化促進剤、充填材、離型剤、顔料などを用いることができる。特に好ましいプリプレグは、強化繊維としてカーボン繊維、ボロン繊維、樹脂としてエポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂を用いたものである。
【0012】
プリプレグは、例えば、直径4〜10μm程度の強化繊維を1000本束ねて1つの単位とし、その6〜12単位を束ねたものを平行に並べてシート状にし、その上に熱硬化性樹脂の薄いシートを重ねた後、これを熱ローラ間に通して繊維シート上及び繊維相互間に樹脂を含浸させることにより作製することができる。プリプレグの樹脂含量は、27〜37重量%程度とすることが適当である。なお、プリプレグの樹脂含量とはプリプレグの全重量に対する樹脂重量の割合であり、この樹脂重量には硬化剤、充填材、離型剤等の副資材の重量も含まれる。この点は、後述する複合テープの繊維強化熱硬化性樹脂層の樹脂含量も同じである。また、プリプレグの厚みは、通常、約0.1〜約0.5mm程度とする。
【0013】
複合テープ
本発明で用いる複合テープは、図1に示すように、金属箔層2と繊維強化熱硬化性樹脂層4とを積層したものである。複合テープとしては、通常は金属箔層の片面のみに繊維強化熱硬化性樹脂層を積層したものを使用するが、目的を損なわない限り、金属箔層の両面に繊維強化熱硬化性樹脂層を積層したものを用いることができる。
【0014】
複合テープにおける金属箔層と繊維強化熱硬化性樹脂層との積層は、繊維強化熱硬化性樹脂層の粘着力を利用して行ってもよく、別途粘着剤等を使用して行ってもよい。また、金属箔層の繊維強化熱硬化性樹脂層と接する面には、リン酸塩処理、クロメート処理等の化成処理や、ブラスト処理といった表面処理を施すことができ、これにより金属箔層と繊維強化熱硬化性樹脂層との固着を強固にすることができる。さらに、金属箔層とFRP単独層とが接する場合、金属箔層のFRP単独層と接する面にも上記と同様の表面処理を施すことができ、これにより金属箔層とFRP単独層との固着を強固にすることができる。
【0015】
金属箔層2としては、例えば、チタン、アルミニウム、銅、マグネシウム、ステンレススチール等からなる金属箔テープを用いることができ、特にチタンからなる金属箔テープを用いることが、低比重で、かつ振動減衰性に優れる点で好ましい。また、繊維強化熱硬化性樹脂層4としては、例えば、平行に引き揃えたロービングやクロス、マットといった強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させて作製したテープ状のものを用いることができる。この場合、繊維強化熱硬化性樹脂層の強化繊維、熱硬化性樹脂、副資材等としては、FRP単独層について述べたのと同様のものを使用できる。ただし、FRP単独層の強化繊維及び熱硬化性樹脂と、複合テープの繊維強化熱硬化性樹脂層の強化繊維及び熱硬化性樹脂とは、それぞれ同種のものを用いることが、層間密着と強度維持の点で好ましい。また、繊維強化熱硬化性樹脂層の樹脂含量は、27〜37重量%程度とすることが適当である。
【0016】
複合テープの寸法に特に限定はないが、金属箔層の厚みは0.005〜0.1mm、特に0.01〜0.03mm、金属箔層の幅は2〜8mm、特に3〜5mm、繊維強化熱硬化性樹脂層の厚みは0.05〜0.3mm、特に0.05〜0.07mm、繊維強化熱硬化性樹脂層の幅は3〜9mm、特に4〜6mmが適当である。
【0017】
金属箔含有FRP層
図2に示すように、金属箔含有FRP層8は、FRP単独層10の層間(図2a)、内周面上(図2b)の1箇所以上に形成するものであり、このように層間及び内周面上の一方又は両方に設けることが、シャフトに加わるねじりモーメントの低減及びシャフトのねじり方向の振動減衰特性の向上を効果的に図る点で有効である。また、金属箔含有FRP層は、シャフトの軸方向の全長にわたって設けてもよく、一部のみに設けてもよいが、軸方向の一部のみに設ける場合には、シャフトの先端部に設けることが上記と同じ理由で好ましい。
【0018】
金属箔含有FRP層8は、図3に示すように、複合テープ6を螺旋状に巻くことにより形成するものであり、このとき金属箔層2とシャフトの軸線12とのなす角度xが35〜45度となるようにすることが、複合テープ端の引き吊りを防止する点、複合テープ間の隙間を補充し、余分な重なりを防止する点などで好ましい。また、金属箔層及び繊維強化熱硬化性樹脂層の強化繊維は、シャフトの軸線に対して実質的に同じ角度で傾斜していることが、複合テープの引張強度を維持し、巻き付けの作業性を高める点などで好ましい。したがって、本発明で用いる複合テープとしては、金属箔層の長手方向と繊維強化熱硬化性樹脂層の強化繊維の繊維方向とを一致させたものが好ましい。
【0019】
金属箔含有FRP層を形成する場合、複合テープを2層以上に巻く。複合テープを2層以上に巻く場合、隣接する各複合テープ層の金属箔層がシャフトの軸線に対して互いに反対の方向に傾斜するように巻くことが、シャフトに加わるねじりモーメントの低減及びシャフトのねじり方向の振動減衰特性の向上を図る点で有効である。
【0020】
また、金属箔含有FRP層を形成する場合、複合テープ6として、図4に示すように、金属箔層2の一面に金属箔層2より幅が広い繊維強化熱硬化性樹脂層4が積層され、金属箔層2の両側方に繊維強化熱硬化性樹脂層4が突出したものを用いることが好ましい。そして、金属箔層2間に隙間12を形成するとともに、繊維強化熱硬化性樹脂層4同士をほぼ接触させた状態で複合テープ6を螺旋状に巻くことが適当である。このようにした場合、複合テープ6の繊維強化熱硬化性樹脂層4と、金属箔層2上に形成されたFRP単独層10とが隙間12において固着一体化するため、強固な構造のシャフトを得ることができる。
【0021】
本発明のゴルフクラブ用シャフトは、先細り円柱形のマンドレルの周囲に前述した各層からなる積層体を形成した後、マンドレル周囲の積層体を加熱して硬化させることにより得ることができる。
【0022】
【実施例】
次に、実施例によって本発明を具体的に示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0023】
図5は、本発明ゴルフクラブ用シャフトの一実施例を示すもので、シャフトの長手方向の一部における軸線より上半分を断面図として示した図である。本例のゴルフクラブ用シャフトにおいて、22はシャフトの管壁20の最内層をなす管状の第1の金属箔含有FRP層、24は第1の金属箔含有FRP層22の外周面上に形成された管状の第2の金属箔含有FRP層、26は第2の金属箔含有FRP層24の外周面上に形成され、シャフトの管壁20の最外層をなす管状のFRP単独層を示す(図中28はシャフトの中空部、30はシャフトの軸線を示す)。本例において、各層22,24,26は、いずれもシャフトの軸方向の全長にわたって形成されている。本例のシャフトは、長軸円錐台状(例えば1000分の5〜8で傾斜)をなしたいわゆる中空先細り形状のものである。
【0024】
第1の金属箔含有FRP層22及び第2の金属箔含有FRP層24は、いずれも、チタン箔テープからなる金属箔層2に、カーボン繊維で強化したエポキシ樹脂からなるテープ状の繊維強化熱硬化性樹脂層4(樹脂含量30重量%)を裏打ちしてなる複合テープ6によって形成されている。すなわち、マンドレル上に複合テープ6を繊維強化熱硬化性樹脂層4を内側にして螺旋状に巻き付けることにより第1の金属箔含有FRP層22が形成され、第1の金属箔含有FRP層22上に複合テープ6を繊維強化熱硬化性樹脂層4を内側にして螺旋状に巻くことにより第2の金属箔含有FRP層が形成されている。ここで、金属箔層2とシャフトの軸線30とのなす角度、及び、繊維強化熱硬化性樹脂層4の強化繊維とシャフトの軸線30とのなす角度は、いずれも40度に形成されている。また、第1の金属箔含有FRP層22の金属箔層2と、第2の金属箔含有FRP層24の金属箔層2とは、シャフトの軸線30に対して互いに反対の方向に傾斜している。
【0025】
複合テープ6は、幅が約3mm、厚みが約0.02mmの金属箔層2の裏面に、幅が約4mm、厚みが約0.25mmの繊維強化熱硬化性樹脂層4が積層され、金属箔層2の両側方に繊維強化熱硬化性樹脂層4がそれぞれ約0.5mm突出したものであり、繊維強化熱硬化性樹脂層4同士をほぼ接触させて螺旋状に巻くことにより、金属箔層2間に幅が約1mmの隙間12が形成されている。そして、上記隙間12において各金属箔層2の上下の繊維強化樹脂が固着一体化している。
【0026】
FRP単独層26は、カーボン繊維で強化したエポキシ樹脂からなるプリプレグ(樹脂含量30重量%)を第2の金属箔含有FRP層24の外周面上に3枚巻き付けることにより厚みが約0.5mmに形成されている。本例において、これら3枚のプリプレグの強化繊維の繊維方向は、いずれもシャフトの軸方向と実質的に一致している。
【0031】
【発明の効果】
本発明のゴルフクラブ用シャフトは、適度の曲げ剛性及びねじり剛性を保持しつつ、スイング時にシャフトに加わるねじりモーメントを低減させたものであり、そのためゴルフクラブを繰り返し使用してもシャフトのねじり破壊を招くようなことがないとともに、シャフトのねじり方向の振動減衰特性が向上し、スイング時におけるねじり方向の振動が減衰しやすいため、良好な打感が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属箔層と繊維強化熱硬化性樹脂層とが積層されてなる複合テープの一例を示す部分側面図である。
【図2】 (a)〜(b)はそれぞれFRP単独層に対する金属箔含有FRP層の形成態様を示す断面図である。
【図3】複合テープを螺旋状に巻いた状態を示す説明図である。
【図4】複合テープの巻き付け態様の一例を示す説明図である。
【図5】本発明ゴルフクラブ用シャフトの一実施例を示すもので、シャフトの長手方向の一部における軸線より上半分を断面図として示した図である。
【符号の説明】
2 金属箔層
4 繊維強化熱硬化性樹脂層
6 複合テープ
8 金属箔含有FRP層
10 FRP単独層
12 シャフトの軸線
22 第1の金属箔含有FRP層
24 第2の金属箔含有FRP層
26 FRP単独層
28 中空部
30 シャフトの軸線
Claims (3)
- 中空先細り状の繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトにおいて、前記シャフトの管壁が、強化繊維としてカーボン繊維及びボロン繊維から選ばれる1種以上を用いた繊維強化熱硬化性樹脂のみからなる管状のFRP単独層と、金属箔層と強化繊維としてカーボン繊維及びボロン繊維から選ばれる1種以上を用いた繊維強化熱硬化性樹脂層とが積層されてなる複合テープを螺旋状に巻くことにより形成され、前記FRP単独層の層間及び内周面上の一方又は両方に設けられた管状の金属箔含有FRP層とを有し、前記複合テープを2層以上に巻くことにより前記金属箔含有FRP層が形成され、かつ、隣接する複合テープ層の金属箔層はシャフトの軸線に対して互いに反対の方向に傾斜していることを特徴とするゴルフクラブ用シャフト。
- 金属箔含有FRP層がシャフトの先端部のみに設けられている請求項1に記載のゴルフクラブ用シャフト。
- 複合テープが、金属箔層の一面に金属箔層より幅が広い繊維強化熱硬化性樹脂層が積層され、金属箔層の両側方に繊維強化熱硬化性樹脂層が突出したものであり、金属箔層間に隙間を形成するとともに、繊維強化熱硬化性樹脂層同士を接触させた状態で複合テープを螺旋状に巻くことにより金属箔含有FRP層が形成されている請求項1又は2に記載のゴルフクラブ用シャフト。
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