JP3908799B2 - 神経線維腫治療剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はビタミンD誘導体を有効成分として含有する神経線維腫治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
神経線維腫症は多発性の神経線維腫、色素斑を主徴とし骨変化、脳腫瘍、脊髄腫瘍、眼病変、貧血母斑、母斑性黄色内皮腫など多彩な症候がみられる。神経線維腫症は、臨床的にまたは遺伝的に大きくNF1とNF2の2つに分類され、NF1はまた、レックリングハウゼン病(von Recklinghausen病)とも呼ばれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
最近になり、この病態に関連する遺伝子が単離された。現在のところ、神経線維腫の一般的治療は存在せず、治療はおもに外科的手術により行われているが、症状が広範に及ぶために満足する結果が必ずしも期待できるものではなく、また手術により障害神経の機能は犠牲にされているのが現状であり、有効な薬剤の登場が待ち望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、神経線維腫の治療剤に関して鋭意研究を行った結果、一般式(I)
【化5】
(式中、R1,R2は同一または異なってそれぞれ炭素数1から4の低級アルキル基を示し、Aは酸素原子または硫黄原子を示し、nは2または3を示す)で表されるビタミンD誘導体が、神経線維腫細胞の増殖抑制作用を有することを見いだし本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明者は上記一般式(I)で表される化合物を有効成分として含有する神経線維腫治療剤を提供する。
【0006】
本発明において、炭素数1から4の低級アルキル基は直鎖のものでも分岐鎖状のものでもよく、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などがあげられ、好ましくはメチル基またはエチル基である。また、本発明のR1,R2は同一でも異なっていてもよいが、同一のものが好ましい。具体例として、例えば、一般式(I)または(II)または(III)において、R1,R2が同一または異なってそれぞれメチル基またはエチル基である場合、あるいは、一般式(I)または(II)または(III)において、R1,R2が同一でメチル基またはエチル基である場合を挙げることができる。
【0007】
本発明のビタミンD誘導体のうち一般式中のAが酸素原子のものは、たとえば特公平3−74656号公報、国際公開WO90/09991号公報などに記載されている。またAが硫黄原子のものは国際公開WO94/14766号公報、第15回メディシナルケミストリーシンポジウム講演要旨集(社団法人 日本薬学会、日本薬学会医薬化学部会、1994年11月1日発行、97から98ページ)に記載されている。
【0008】
一般的にビタミンD類は、カルシウム代謝調節作用、腫瘍細胞などの増殖抑制作用や分化誘導作用、免疫調節作用など多岐にわたって生理活性を示すことが知られている。しかし神経線維腫に有効であることを示唆する報告はまだない。
【0009】
本発明の神経線維腫治療剤の剤型としては、ビタミンD類の通常の製剤方法により製造される経口剤の他に、非経口剤としては、例えば水系の溶剤を主成分とした注射剤などの液剤、点鼻剤などの非侵襲的製剤、クリーム剤、軟膏剤等の外用剤も可能であるが経口剤、注射剤および外用剤が好ましい。
【0010】
本発明の薬剤の投与方法としては、経口剤あるいは注射剤を全身投与することが好ましいが、場合によって外用剤などによる局所投与も可能である。
【0011】
本発明のビタミンD誘導体の投与量は、年齢、性別、症状等により異なるが、通常一人あたり、0.01から10000μgであり、0.1から100μgが好ましく、特に1から20μgが好ましい。
【0012】
本発明の化合物のうち、Aが硫黄原子であるものはたとえば以下のようにして合成される。
【0013】
22位より先の側鎖の合成原料となるチオールは特表平5−505613号公報記載の方法または反応経路1
【化6】
(式中、Xはハロゲン原子を示し、R1,R2はそれぞれ炭素数1から4の低級アルキル基を示しnは2または3を示す)の方法により合成できる。すなわち、ハロゲン化されたエステルを原料として、これに▲1▼チオ酢酸カリウムなどのチオカルボン酸の金属塩を作用させ、▲2▼グリニャール試薬を作用させることにより得られる。また▲2▼の反応を先に行った後に▲1▼の反応を行い、得られた化合物を還元またはアルカリ条件下で加水分解しても得ることができる。
【0014】
さらに、たとえば反応経路2の方法で本発明の化合物を合成することができる。
【0015】
【化7】
(式中、R1,R2はそれぞれ炭素数1から4の低級アルキル基を示しnは2または3を示す)
出発原料となる化合物(6)は、たとえばMurayamaらの方法(Bioorg.Med.Chem.Lett.2,1289(1992))により合成される。この化合物(6)の水酸基の保護基を脱保護した後、アシル基好ましくはアセチル基で再び保護することにより化合物(8)が得られる。この化合物(8)を還元的チオアルキル化反応に付すと化合物(9)が得られる。還元的チオアルキル化はたとえば、三フッ化ホウ素エーテル錯体または三フッ化ホウ素ー水和物、およびトリエチルシランを作用させる方法、トリフルオロ酢酸−ボラン・ピリジン錯体を用いる方法などにより行われるが、好ましくは三フッ化ホウ素エーテル錯体およびトリエチルシランを作用させる方法で行われる。本反応に用いられる溶媒としてはたとえば、ハロゲン系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒などが用いられ、好ましくは、ハロゲン系溶媒さらに好ましくはジクロロメタンなどがあげられる。反応温度は用いる化合物の種類、試薬などにより異なるが5,7−ジエン部分が異性化しない温度好ましくは−30℃から室温さらに好ましくは0℃付近であり、反応時間は用いる試薬、化合物の量などにより異なるが1から12時間好ましくは3から10時間さらに好ましくは5から7時間である。
【0016】
次に得られた化合物(9)は常法により脱保護し、必要に応じジアステレオマーを分離した後、常法により光照射、熱異性化反応を行うことにより化合物(12)が得られる。この工程においてジアステレオマーの分離が困難な場合は、必要に応じ、1位または3位またはその両方の水酸基の保護基を適当な保護基へ変換することにより分離可能となる。
【0017】
【発明の効果】
本発明のビタミンD誘導体は神経線維腫細胞の増殖抑制作用を有し、神経線維腫治療剤として有用である。
【0018】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0019】
【実施例1】
1α,3β−ジヒドロキシ−20−オキソプレグナ−5,7−ジエン
アルゴン雰囲気下、1α,3β−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−20−オキソプレグナ−5,7−ジエン(4.10g, 7.33mmol)を乾燥テトラヒドロフラン(80ml)に溶解し、テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオライド(1M テトラヒドロフラン溶液、74ml、74.0mmol)を加えて16時間加熱還流後、水にあけ、酢酸エチルで抽出、10%-塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で有機層を洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:エタノール=15:1)で精製し、白色固体の標記化合物(1.68g, 69%)を得た。
【0020】
IR(neat):3400, 2930, 1700, 1360, 1050cm-1. 1H NMRδ:5.73-5.66(m,1H), 5.43-5.36(m,1H), 4.12-3.93(m,1H), 3.80-3.73(brs,1H), 2.16(s,3H), 0.93(s,3H), 0.59(s,3H). MS m/z:330(M+), 251(100%). UVλmax nm:271, 283, 294.
【0021】
【実施例2】
1α,3β−ジアセトキシ−20−オキソプレグナ−5,7−ジエン
実施例1で得られた化合物(1.68g, 5.08mmol) をピリジン(60ml)に溶解し、無水酢酸(30ml)及び4−ジメチルアミノピリジン(DMAP, 60mg)を加え、室温で4日間撹拌した。反応後、水にあけ、酢酸エチルで抽出、食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下で留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により精製して、白色固体の標記化合物(1.65g, 78%) を得た。
【0022】
IR(neat):2970, 1740, 1700, 1440, 1360, 1240, 1040cm-1. 1H NMRδ:5.70-5.60(m,1H), 5.44-5.34(m,1H), 5.07-4.85(m,2H), 2.14(s,3H), 2.10(s,3H), 2.04(s,3H), 1.01(s,3H), 0.57(s,3H). MS m/z:414(M+), 294(100%). UVλmax nm:270, 281, 292.
【0023】
【実施例3】
1α,3β−ジアセトキシ−20−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチルチオ)プレグナ−5,7−ジエン(20位のR体,S体の混合物)
アルゴン雰囲気下、実施例2で得られた化合物(200mg, 0.482mmol) 及び4−ヒドロキシ−4−メチルペンタンチオール(77.6mg, 0.578mmol)の乾燥ジクロロメタン(1ml)溶液を0℃に冷却し、三フッ化ホウ素エーテル錯体(71.0μl, 0.578mmol) を加え3分間撹拌後、トリエチルシラン(115μl, 0.723mmol)を加えて0℃で5.5時間撹拌した。反応後、水にあけ、酢酸エチルで抽出、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下溶媒を除去した。得られた残渣を分取用薄層クロマトグラフィー(4枚、ヘキサン:酢酸エチル=1:1、1回展開)で精製し、無色油状の標記化合物の混合物(93.3mg, 36%)及び原料(133mg)を得た。
【0024】
IR(neat):3450, 2950, 1740, 1371, 1240, 1030cm-1. 1H NMRδ:5.70-5.60(m,1H), 5.42-5.32(m,1H), 5.07-4.84(m,2H), 2.54(t, J=7.3Hz, 2H), 2.09(s,3H), 2.03(s,3H), 1.39 and 1.29(各ジアステレオマーの d, J=7.3 and 6.6Hz, 3H), 1.23(s,6H), 1.01(s,3H), 0.69 and 0.65(各ジアステレオマーの s, 3H). MS m/z:532(M+), 55(100%). UVλmax nm:270, 282, 293.
【0025】
【実施例4】
1α,3β−ジアセトキシ−20(S)−(3−エチル−3−ヒドロキシペンチルチオ)プレグナ−5,7−ジエンと1α,3β−ジアセトキシ−20(R)−(3−エチル−3−ヒドロキシペンチルチオ)プレグナ−5,7−ジエン
実施例2で得られた化合物(180mg, 0.434mmol)、3−エチル−3−ヒドロキシペンチルチオール(85.7mg, 0.578mmol)、三フッ化ホウ素エーテル錯体(71.0μl, 0.578mmol)、乾燥ジクロロメタン(1ml)、トリエチルシラン(115μl, 0.723mmol) を用い、実施例3と同様操作後、分取用薄層クロマトグラフィー(4枚、ジクロロメタン:酢酸エチル=9:1、1回展開)で精製し、無色油状の標記化合物の混合物及び原料回収(50.1mg)を得た。さらに得られた混合物を分取用薄層クロマトグラフィー(4枚、ジクロロメタン:酢酸エチル=30:1、5回展開)により精製して、標記化合物の20S体(12.5mg, 5%)及び20R体(28.2mg, 12%)を得た(いずれも無色油状)。
【0026】
20S体 IR(neat):3500, 2950, 1740, 1460, 1370, 1240, 1030cm-1. 1H NMRδ:5.68-5.60(m,1H), 5.40-5.31(m,1H), 5.07-4.85(m,2H), 2.59(t, J=7.8Hz, 2H), 2.09(s,3H), 2.04(s,3H), 1.49(q, J=7.3Hz, 4H), 1.40(d, J=6.6Hz, 3H), 1.01(s,3H), 0.87(t, J=7.3Hz, 6H), 0.65(s,3H). MS m/z:546(M+), 55(100%). UVλmax nm:270, 281, 293.
20R体 IR(neat):3500, 2950, 1740, 1460, 1370, 1240, 1030cm-1. 1H NMRδ:5.70-5.60(m,1H), 5.41-5.30(m,1H), 5.05-4.84(m,2H), 2.56(t, J=8.2Hz, 2H), 2.08(s,3H), 2.03(s,3H), 1.49(q, J=7.3Hz, 4H), 1.30(d, J=6.6Hz, 3H), 1.01(s,3H), 0.87(t, J=7.3Hz, 6H), 0.69(s,3H). MS m/z:546(M+), 55(100%). UVλmax nm:270, 281, 293.
【0027】
【実施例5】
1α,ヒドロキシ−3β−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−20(S)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチルチオ)プレグナ−5,7−ジエンと1α,ヒドロキシ−3β−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−20(R)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチルチオ)プレグナ−5,7−ジエン
アルゴン雰囲気下実施例3で得られた化合物(混合物)(93.3mg, 0.175mmol)を 乾燥テトラヒドロフラン(4ml) に溶解し、リチウムアルミニウムハイドライド(13.3mg, 0.350mmol)を少しずつ加え、室温で30分間撹拌後、10%-水酸化ナトリウム水溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下溶媒を除去した。得られた残渣を分取用薄層クロマトグラフィー(2枚、ジクロロメタン:エタノール=17:3、1回展開)で精製して、無色固体を 40.1mg 得た。これをアルゴン雰囲気下、ジメチルホルムアミド(2.6ml)に溶解し、t−ブチルジメチルシリルクロライド(72.5mg, 0.481mmol) およびイミダゾール(65.5mg, 0.962mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応後水にあけ、ヘキサン:酢酸エチル=3:1 で抽出、食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下溶媒を除去した。得られた残渣を分取用薄層クロマトグラフィー(2枚、ヘキサン:酢酸エチル=5:1、6回展開)により精製し、標記化合物の20S体(12.9mg, 13%)及び20R体(23.7mg, 24%)をそれぞれ得た(いずれも無色油状)。
【0028】
20S体 IR(neat):3450, 2950, 1460, 1380, 1260, 1090cm-1. 1H NMRδ:5.73-5.64(m,1H), 5.41-5.31(m,1H), 4.11-3.91(m,1H), 3.72(brs,1H), 1.40(d, J=6.6Hz, 3H), 1.22(s,6H), 0.94(s,3H), 0.89(s,9H), 0.66(s,3H), 0.08(s,6H). MS m/z:562(M+), 73(100%). UVλmax nm:271, 282, 294.
20R体 IR(neat):3450, 2950, 1460, 1380, 1260, 1090cm-1. 1H NMRδ:5.72-5.63(m,1H), 5.38-5.29(m,1H), 4.12-4.39(m,1H), 3.72(brs,1H), 1.23(d, J=6.6Hz, 3H), 1.22(s,6H), 0.94(s,3H), 0.88(s,9H), 0.71(s,3H), 0.08(s,6H). MS m/z:562(M+), 73(100%). UVλmax nm:271, 282, 294.
【0029】
【実施例6】
1α,3β−ジヒドロキシ−20(R)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチルチオ)プレグナ−5,7−ジエン
アルゴン雰囲気下、実施例5で得られた20R体(23.7mg, 42.1μmol)を乾燥テトラヒドロフラン(1.5ml)に溶解し、テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオライド(1M テトラヒドロフラン溶液, 1ml)を加え、穏やかに16時間加熱還流した。反応終了後、水にあけ、酢酸エチルで抽出、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下溶媒を除去した。得られた残渣を分取用薄層クロマトグラフィー(1枚、ジクロロメタン:エタノール=9:1、1回展開)により精製し、無色油状の標記化合物(10.0mg, 53%)を得た。
【0030】
IR(neat):3400, 2950, 1460, 1370, 1060cm-1. 1H NMRδ:5.80-5.67(m,1H), 5.41-5.31(m,1H), 4.18-3.96(m,1H), 3.78(brs,1H), 1.29(d, J=6.6Hz, 3H), 1.22(s,6H), 0.95(s,3H), 0.71(s,3H). MS m/z:448(M+), 55(100%). UVλmax nm:271, 282, 294.
【0031】
【実施例7】
1α,3β−ジヒドロキシ−20(R)−(3−エチル−3−ヒドロキシペンチルチオ)プレグナ−5,7−ジエン
アルゴン雰囲気下、実施例4で得られた20R体(28.2mg, 51.6μmol)を乾燥テトラヒドロフラン(2ml)に溶解し、これにリチウムアルミニウムハイドライド(5.9mg, 0.155mmol)を少しずつ加えた後、室温で30分間撹拌した。反応液を 10%-水酸化ナトリウム水溶液 でクエンチし、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を除去した。得られた残渣を分取用薄層クロマトグラフィー(1枚、ジクロロメタン:エタノール=9:1、1回展開)により精製し、無色油状の標記化合物(8.2mg, 77%)を得た。
【0032】
IR(neat):3400, 2950, 1460, 1370, 1030cm-1. 1H NMRδ:5.73-5.65(m,1H), 5.38-5.29(m,1H), 4.15-3.95(m,1H), 3.77(brs,1H), 2.56(t, J=8.0Hz, 2H), 1.49(q, J=7.3Hz, 4H), 1.31(d, J=6.6Hz, 3H), 0.94(s,3H), 0.87(t, J=7.3Hz, 6H), 0.71(s, 3H). MS m/z:462(M+), 55(100%). UVλmax nm: 271, 282, 294.
【0033】
【実施例8】
1α,3β−ジヒドロキシ−20(R)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチルチオ)−9,10−セコプレグナ−5,7,10(19)−トリエン
実施例6で得られた化合物(10.0mg, 22.3μmol)をエタノール(200ml)に溶解し、0℃でアルゴンをバブリングしながら400W高圧水銀灯バイコールフィルター透過光により1.25分間光照射を行った後、2時間穏やかに加熱還流を行った。溶媒を除去し、分取用薄層クロマトグラフィー(1枚、ジクロロメタン:エタノール 9:1、3回展開)により精製し、無色油状の標記化合物(1.9mg, 19%)を得た。
【0034】
IR(neat):3400, 2950, 1450, 1380, 1060cm-1. 1H NMRδ:6.38(d, J=11.2Hz, 1H), 6.01(d, J=11.2Hz, 1H), 5.33(s,1H), 5,00(s,1H), 4.48-4.37(br,1H), 4.28-4.16(br,1H), 1.28(d, J=6.6Hz, 3H), 1.22(s,6H), 0.62(s,3H). MS m/z:448(M+), 117(100%). UVλmax nm:262, λmin nm:227.
【0035】
【実施例9】
1α,3β−ジヒドロキシ−20(R)−(3−エチル−3−ヒドロキシペンチルチオ)−9,10−セコプレグナ−5,7,10(19)−トリエン
実施例7で得られた化合物(20.9mg, 45.2μmol)を用いて実施例8の合成と同様に反応を行った後(光照射3.25分間)、分取用薄層クロマトグラフィー(1枚、ジクロロメタン:エタノール=9:1、3回展開した後さらに ヘキサン:酢酸エチル:エタノール=5:5:0.3、4回展開)により精製し、無色油状の標記化合物(2.3mg, 11%)を得た。
【0036】
IR(neat):3400, 2950, 1460, 1370, 1050cm-1. 1H NMRδ:6.38(d, J=11.2Hz, 1H), 6.01(d, J=11.2Hz, 1H), 5.33(s,1H), 5,00(s,1H), 4.48-4.40(br,1H), 4.30-4.15(br,1H), 2.55(t, J=7.9Hz, 2H), 1.52(q, J=7.3Hz, 4H), 1.30(d, J=6.6Hz, 3H), 0.87(t, J=7.3Hz, 6H), 0.62(s,3H). MS m/z:462(M+), 55(100%). UVλmax nm:263, λmin nm:227.
【0037】
【試験例1】
レックリングハウゼン病患者から得られた神経線維腫細胞および正常線維芽細胞を用いて、下記式で示される本発明の化合物(化合物1、化合物2、化合物3)の同細胞に対する増殖抑制作用を以下の方法で検討した。
【0038】
【化8】
【化9】
【化10】
10%FCSおよび1%抗生物質を含むMEM培地中で各細胞を1プレートあたり0.5〜1×105個培養した。これに、本発明の化合物(化合物1、化合物2、化合物3)、比較化合物として1α,25−ジヒドロキシビタミンD3(1,25(OH)2VD3)を最終濃度10-7Mとなるように、各薬剤のエタノール溶液を培地中のエタノール濃度が0.1%となるようにして加えた。コントロールとしては薬物を含まないエタノールのみを添加したものを用いた。4日目に培地を交換し(各薬剤を含むもの)、7日目に各プレートの細胞数をカウントし、コントロールの細胞数と比較し、増殖抑制率を求めた。結果を図1に示す。
【0039】
図1から明らかなように比較化合物である1α,25−ジヒドロキシビタミンD3が正常線維芽細胞、神経線維腫細胞の増殖を同等に弱く抑制したに過ぎないのに対し、本発明の化合物は神経線維腫細胞の増殖を特異的に抑制することが明かになった。この結果より本発明の化合物は神経線維腫の治療剤として有用であるということができる。
【0040】
【試験例2】
レックリングハウゼン病患者から得られた神経線維腫細胞を用いて、下記式で示される本発明の化合物(化合物4)の同細胞に対する増殖抑制作用を以下の方法で検討した。
【0041】
【化11】
10%FCSおよび1%抗生物質を含むMEM培地中で神経線維腫細胞を1プレートあたり105個培養した。これに、化合物4(以下「OCT」と記す)および比較化合物として1α,25−ジヒドロキシビタミンD3(1.25(OH)2VD3)の各種濃度のエタノール溶液を培地中のエタノール濃度が1%となるようにして加えた。コントロールとしては薬物を含まないエタノールのみを添加したものを用いた。各プレートの細胞数を1,3,7日目にカウントし、コントロールの細胞数と比較した。1,3,7日目の増殖抑制効果を図2に示す(コントロールの細胞数に対する薬剤投与群の細胞数の割合を%で示した)。
【0042】
図2から明らかなように本発明の化合物OCTは比較化合物である1α,25−ジヒドロキシビタミンD3に比べ、優れた神経線維腫細胞の増殖抑制作用を有する。この結果より本発明の化合物は神経線維腫の治療剤として有用であるということができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】化合物1,2,3による神経線維腫細胞の増殖抑制効果を示すグラフである。
【図2】1,3,7日目におけるOCTおよび1.25(OH)2VD3による神経線維腫細胞の増殖抑制効果を示すグラフである。
Claims (6)
- R1,R2が同一または異なってそれぞれメチル基またはエチル基であることを特徴とする請求項1または2または3記載の神経線維腫治療剤。
- R1,R2が同一で、メチル基またはエチル基であることを特徴とする請求項1または2または3記載の神経線維腫治療剤。
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