JP3907360B2 - 樹脂組成物および積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、EVOHと略記する)を用いた積層体に関し、更に詳しくはガスバリア性、低温加熱延伸成形性、ロングラン溶融成形性等に優れた成形物を得ることができる積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、EVOHはその透明性、ガスバリア性、保香性、耐溶剤性、耐油性などに優れており、かかる特性を生かして、食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料等の各種包装材料に用いられており、かかるEVOHは、その機械的強度等の向上を目的として、加熱延伸処理されることも多く、延伸性能も重要な要求性能となってくる。特に最近、剛性、透明性、表面光沢性に優れたポリスチレン系樹脂とEVOHとの積層体(多層容器)が注目されており、両外層にポリスチレン系樹脂を配したポリスチレン系樹脂/接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂/ポリスチレン系樹脂なる積層体や、最内層にヒートシール性に優れたポリエチレン系樹脂を配したポリスチレン系樹脂/接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂/ポリエチレン系樹脂なる積層体などが魅力ある包装体として挙げられる。
【0003】
しかし、かかるEVOHは、ポリスチレン系樹脂やポリエチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂に比べて加熱延伸成形性に劣るため、かかる対策として、EVOHに可塑剤を添加する方法(特開昭53−88067号公報、特開昭59−20345号公報)、ポリアミド系樹脂をブレンドする方法(特開昭52−141785号公報、特開昭58−36412号公報)、二種類以上の組成の異なるEVOHからなる樹脂組成物を用いる方法(特開昭61−4752号公報、特開昭60−173038号公報、特開昭63−196645号公報、特開昭63−230757号公報、特開昭63−264656号公報、特開平2−261847号公報)、特定の融点を示す共重合ポリアミド系樹脂をブレンドする方法(特開昭62−225543号公報、特開昭62−225544号公報、特開昭63−114645号公報)などが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の各公報に記載されたブレンド物を本発明者が詳細に検討したところ、特開昭53−88067号公報や特開昭59−20345号公報に開示のブレンド物では、ガスバリア性が大幅に低下してしまい、また特開昭52−141785号公報、特開昭58−36412号公報に開示のブレンド物では、ロングラン溶融成形性が低下してしまい、更に特開昭61−4752号公報、特開昭60−173038号公報、特開昭62−225543号公報、特開昭62−225544号公報、特開昭63−114645号公報、特開昭63−196645号公報、特開昭63−230757号公報、特開昭63−264656号公報、特開平2−261847号公報に開示のブレンド物でも、加熱延伸成形性の向上はある程度認められるものの、ポリスチレン系樹脂との積層体を低温で高延伸倍率で加熱延伸成形する場合には充分とは言い難く、更なる改善の余地があることが判明し、ガスバリア性、低温加熱延伸成形性、ロングラン溶融成形性等に優れた樹脂組成物が望まれるところである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、かかる現況に鑑みて中間層に用いるEVOH組成物について鋭意研究を重ねた結果、EVOH(A)、融点が160℃以下で示差走査熱量計を用いて測定(昇温速度10℃/min)される融解熱量ΔHが5〜70J/gのポリアミド系樹脂(B)及びホウ素化合物(C)を含有してなる樹脂組成物が、上記の目的に合致することを見いだし本発明を完成するに至った。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に述べる。
本発明に用いられるEVOH(A)としては、特に限定されないが、エチレン含有量が10〜70モル%(更には20〜60モル%、特には25〜50モル%)、ケン化度が90モル%以上(更には95モル%以上、特には99モル%以上)のものが用いられ、該エチレン含有量が10モル%未満では高湿時のガスバリア性、溶融成形性が低下し、逆に70モル%を越えると充分なガスバリア性が得られず、更にケン化度が90モル%未満ではガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下して好ましくない。
また、該EVOHのメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)は、0.5〜100g/10分(更には1〜50g/10分、特には3〜35g/10分)が好ましく、該メルトフローレートが該範囲よりも小さい場合には、成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難となり、また該範囲よりも大きい場合には、得られる成形物の厚み精度が低下して好ましくない。
【0007】
該EVOHは(A)、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化によって得られ、該エチレン−酢酸ビニル共重合体は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより製造され、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
【0008】
また、本発明では、本発明の効果を阻害しない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合していてもよく、かかる単量体としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。又、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化等、後変性されても差し支えない。
【0009】
本発明に用いられるポリアミド系樹脂(B)としては、融点が160℃以下であることが必要であり、融点が160℃を越えるポリアミド系樹脂を使用しても本発明の効果を得ることはできず、更に好ましくは80〜150℃、特に好ましくは80〜140℃であり、具体的にかかるポリアミド系樹脂(B)としては、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン26)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8、6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン108)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)。
【0010】
ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン12/66)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン26/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン6/66/610)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド/テレフタルアミド共重合体あるいはこれらのポリアミド系樹脂をメチレンベンジルアミン、メタキシレンジアミン等の芳香族アミンで変性したものやメタキシリレンジアンモニウムアジペート等のうち、融点が160℃以下のものが挙げられる。
ここで融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/minで測定される融解ピーク温度(℃)を表す。
【0011】
ポリアミド系樹脂の融点を160℃以下とするための手法は特に限定されないが、工業的には上記のポリアミド系樹脂のうち、特定比率の共重合体を使用することが好ましく、該共重合体ナイロンとして具体的には、ナイロン6/12、ナイロン6/69、ナイロン6/66/610、ナイロン6/66/610/12、ナイロン6/66/610/11等やその芳香族アミン変性物が挙げられ、市販されている具体的な商品名としては、「アミランCM4000」「アミランCM8000」「アミランCM6541X3」「アミランCM831」「アミランCM833」(以上、東レ社製)、「エルバミド8061」「エルバミド8062S」「エルバミド8066」(以上、デュポンジャパン社製)、「グリロンCF6S」「グリロンCF62BS」「グリロンCA6E」「グリロンXE3381」(以上、エムスジャパン社製)などが挙げられる。
【0012】
また、該ポリアミド系樹脂の示差走査熱量計を用いて測定(昇温速度10℃/min)される融解熱量ΔHは、5〜70J/g(特には10〜60J/g)である必要がある。
さらに、該ポリアミド系樹脂のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160gg)は、1〜100g/10分(更には5〜80g/10分、特には10〜50g/10分)が好ましく、該メルトフローレートが該範囲から外れる場合には、低温加熱延伸成形性が低下する傾向にあり好ましくない。
【0013】
本発明においてポリアミド系樹脂(B)としては、構造、組成、分子量(MFR)、分子量分布などの異なるポリアミド系樹脂を併せて2種類以上用いることもできる。
【0014】
また、本発明に用いられるホウ素化合物(C)としては、ホウ酸、ホウ酸カルシウム、ホウ酸コバルト、ホウ酸亜鉛(四ホウ酸亜鉛,メタホウ酸亜鉛等)、ホウ酸アルミニウム・カリウム、ホウ酸アンモニウム(メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム等)、ホウ酸カドミウム(オルトホウ酸カドミウム、四ホウ酸カドミウム等)、ホウ酸カリウム(メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウム等)、ホウ酸銀(メタホウ酸銀、四ホウ酸銀等)、ホウ酸銅(ホウ酸第2銅、メタホウ酸銅、四ホウ酸銅等)、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等)。
【0015】
ホウ酸鉛(メタホウ酸鉛、六ホウ酸鉛等)、ホウ酸ニッケル(オルトホウ酸ニッケル、二ホウ酸ニッケル、四ホウ酸ニッケル、八ホウ酸ニッケル等)、ホウ酸バリウム(オルトホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、二ホウ酸バリウム、四ホウ酸バリウム等)、ホウ酸ビスマス、ホウ酸マグネシウム(オルトホウ酸マグネシウム、二ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、四ホウ酸三マグネシウム、四ホウ酸五マグネシウム等)、ホウ酸マンガン(ホウ酸第1マンガン、メタホウ酸マンガン、四ホウ酸マンガン等)、ホウ酸リチウム(メタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸リチウム等)などの他、ホウ砂、カーナイト、インヨーアイト、コトウ石、スイアン石、ザイベリ石等のホウ酸塩鉱物などが挙げられ、好適にはホウ砂、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等)が用いられる。
【0016】
尚、本発明の作用機構は定かではないが、ホウ素化合物がEVOHとポリアミド系樹脂の官能基(水酸基とアミド基)に作用することにより両者の反応に基づく熱劣化を抑制し、且つ隣接する熱可塑性樹脂との作用にもある程度寄与することにより、ロングラン溶融成形性と低温加熱延伸成形性が向上するものと推定される。ホウ素化合物がロングラン溶融成形性と加熱延伸成形性の両者に寄与することは後述する実施例・比較例からも推定されうる。
【0017】
上記の(A)〜(C)の含有割合は特に限定されないが、(A)及び(B)の含有重量比(A/B)は、50/50〜99/1(更には60/40〜97/3、特には70/30〜95/5)が好ましく、かかる重量比が50/50よりも小さいときはガスバリア性が不充分となることがあり、逆に99/1より大きいときは低温加熱延伸成形性が不充分となることがあり好ましくなく、また、(C)は(A)及び(B)の総量100重量部に対してホウ素換算で0.001〜1重量部(更には0.002〜0.5重量部、特に0.005〜0.2重量部)になるように含有させることが好ましく、かかる重量が0.001重量部よりも小さいときは、ロングラン溶融成形性や加熱延伸成形性が不充分となることがあり、逆に1重量部より大きいときは最終的に得られる成形物の外観性が低下することがあり好ましくない。
【0018】
上記の(A)〜(C)からなる樹脂組成物は、(A)〜(C)成分をブレンドすれば良いのであるが、具体的には、▲1▼(A)〜(C)成分を一括で混合した後に溶融混練する方法、▲2▼(A)成分及び(B)成分を溶融混練した後に(C)成分を添加して更に溶融混練する方法、▲3▼(A)成分に(C)成分を含有させた後に(B)成分を溶融混練する方法、▲4▼(B)成分に(C)成分を含有させた後に(A)成分を溶融混練する方法、▲5▼(A)、(B)両成分にそれぞれ(C)成分を含有させた後に両者を溶融混練する方法、▲6▼(A)〜(C)成分を溶解可能な溶剤中で均一に溶解して混合した後に該溶剤を除去する方法等を挙げることができ、好適には▲3▼の方法が用いられ、かかる方法について、更に詳細に説明をするが、これに限定されるものではない。
【0019】
EVOH(A)にホウ素化合物(C)を含有させるにあたっては、ホウ素化合物(C)の水溶液にEVOH(A)を接触させることで含有させることができ、このときの該水溶液中のホウ素化合物(C)の濃度は、ホウ素換算で0.001〜1重量%(更には0.005〜0.8重量%、特には0.01〜0.5重量部)が好ましく、0.001重量%未満では所定量のホウ酸を含有させることが困難となり、逆に1重量%を越えると最終的に得られる成形物の外観性が低下して好ましくない。
【0020】
かかる水溶液にEVOH(A)を接触させる方法としては特に限定されないが、通常は該水溶液にペレット状に成形されたEVOH(A)を投入して撹拌しながら、上記のホウ素化合物(C)を含有させることが好ましい。
尚、上記のEVOHペレットの調製(成形)にあたっては、公知の方法を採用することができ、例えば、EVOHの水とアルコールの混合溶液等を凝固液中にストランド状若しくはシート状に押出した後、得られるストランドやシートをカットしてペレット状にすればよい。かかるペレット状のEVOHの形状としては、円柱状、球状等のものが好ましく、円柱状の場合は直径が1〜10mm、長さが1〜10mmが好ましく、球状の場合は直径が1〜10mmが好ましい。
【0021】
またかかるEVOHは、直径が0.1〜10μm程度の細孔が均一に分布したミクロポーラスな内部構造をもつものが、ホウ素化合物(C)を均一に含有させ得る点で好ましく、通常EVOHの溶液(水/アルコール混合溶媒等)を凝固浴中に押し出すときに、EVOH溶液の濃度(20〜80重量%)、押し出し温度(45〜70℃)、溶媒の種類(水/アルコール混合重量比=80/20〜5/95等)、凝固浴の温度(1〜20℃)、滞留時間(0.25〜30時間)、凝固浴中でのEVOH量(0.02〜2重量%)などを任意に調節することで、該構造のEVOHを得ることが可能となる。更には含水率20〜80重量%のものが、上記の化合物等を均一にかつ迅速に含有させることができて好ましい。また、ホウ素化合物(C)の含有量の調整にあたっては、特に限定されないが、前述の水溶液との接触処理において、ホウ素化合物(C)の水溶液濃度、接触処理時間、接触処理温度、接触処理時の撹拌速度や処理されるEVOHの含水率等をコントロールすることで可能である。
【0022】
かくしてホウ素化合物(C)を含有したペレット状の含水EVOH樹脂組成物が得られるのであるが、通常は、上記の接触処理後に乾燥工程を経て、樹脂組成物が得られるのである。
【0023】
かかる乾燥方法としては、種々の乾燥方法を採用することが可能である。例えば、実質的にペレット状等の樹脂組成物が機械的にもしくは熱風により撹拌分散されながら行われる流動乾燥や、実質的にペレット状等の樹脂組成物が攪拌、分散などの動的な作用を与えられずに行われる静置乾燥が挙げられ、流動乾燥を行うための乾燥器としては、円筒・溝型撹拌乾燥器、円筒乾燥器、回転乾燥器、流動層乾燥器、振動流動層乾燥器、円錐回転型乾燥器等が挙げられ、また、静置乾燥を行うための乾燥器として、材料静置型としては回分式箱型乾燥器が、材料移送型としてはバンド乾燥器、トンネル乾燥器、竪型乾燥器等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。流動乾燥と静置乾燥を組み合わせて行うことも可能である。
【0024】
該乾燥処理時に用いられる加熱ガスとしては空気または不活性ガス(窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等)が用いられ、該加熱ガスの温度としては、40〜150℃が、生産性と樹脂組成物の熱劣化防止の点で好ましい。
該乾燥処理の時間としては、樹脂組成物の含水量やその処理量にもよるが、通常は15分〜72時間程度が、生産性と樹脂組成物の熱劣化防止の点で好ましい。
【0025】
上記の条件で樹脂組成物が乾燥処理されて、EVOH(A)及びホウ素化合物(C)からなる樹脂組成物が得られるのであるが、該乾燥処理後の樹脂組成物の含水率は0.001〜5重量%(更には0.01〜2重量%、特には0.1〜1重量部)になるようにするのが好ましく、該含水率が0.001重量%未満では、最終的に得られる本発明の樹脂組成物のロングラン成形性が低下する傾向にあり、逆に5重量%を越えると後述のポリアミド系樹脂(B)との溶融混練時に発泡が発生しやすくなり好ましくない。
【0026】
かくして得られたEVOH(A)及びホウ素化合物(C)からなる樹脂組成物[(C)が含有された(A)のペレット]に、更にポリアミド系樹脂(B)を溶融混練するのであるが、かかる溶融混練にあたっては、特に限定はなく、該樹脂組成物とポリアミド系樹脂(B)が十分に溶融混練されればよく、公知の方法を採用することができる。例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、プラストミル等の公知の混練装置を用いることができ、通常は150〜300℃(更には180〜280℃)で、1分〜1時間程度溶融混練することが好ましく、工業的には単軸押出機、二軸押出機等の押出機を用いることが有利であり、また必要に応じて、ベント吸引装置、ギヤポンプ装置、スクリーン装置等を設けることも好ましい。
【0027】
特に水分や副生成物(熱分解低分子量物等)を除去するために、押出機に1個以上のベント孔を設けて減圧下に吸引したり、押出機中への酸素の混入を防ぐために、ホッパー内に窒素等の不活性ガスを連続的に供給したりすることにより、熱着色や熱劣化が軽減された品質の優れた樹脂組成物を得ることができる。該溶融混練においては、1)固体状の該樹脂組成物とポリアミド系樹脂(B)を一括して混合して溶融混練する方法、2)溶融状態の該樹脂組成物に固体状のポリアミド系樹脂(B)を投入して溶融混練する方法、3)溶融状態のポリアミド系樹脂(B)に固体状の該樹脂組成物を投入して溶融混練する方法、4)溶融状態の該樹脂組成物とポリアミド系樹脂(B)を混合して溶融混練する方法等を挙げることができる。
【0028】
かくして、(A)〜(C)からなる本発明の樹脂組成物が得られるわけであるが、かかる樹脂組成物中に酢酸、ホウ酸、リン酸等の酸類やそのアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の金属塩を含有させることも、樹脂組成物の熱安定性、ロングラン成形性、積層体としたときの接着性樹脂との層間接着性、加熱延伸成形性等が向上する点で好ましく、特にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩がその効果に優れる点で好ましく用いられる。
【0029】
かかる金属塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸や、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸等の無機酸の金属塩が挙げられ、好適には酢酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩である。また、該金属塩の含有量としては、樹脂組成物に対して金属換算で5〜1000ppm(更には10〜500ppm、特には20〜300ppm)とすることが好ましく、かかる含有量が5ppm未満ではその含有効果が充分得られないことがあり、逆に1000ppmを越えると得られる成形物の外観が悪化して好ましくない。尚、樹脂組成物中に2種以上のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩が含有される場合は、その総計が上記の含有量の範囲にあることが好ましい。
【0030】
樹脂組成物中に酸類やその金属塩を含有させる方法については、特に限定されず、予め1種以上のEVOHに含有させておいたり、EVOHとポリアミド系樹脂(B)のブレンド時に同時に含有させたり、EVOHとポリアミド系樹脂(B)のブレンド後の樹脂組成物に含有させたり、これらの方法を組み合わせたりすることができる。本発明の効果をより顕著に得るためには、予めEVOHに含有させておく方法が、酸類やその金属塩の分散性に優れる点で好ましい。
【0031】
予めEVOHに含有させておく方法としては、ア)含水率20〜80重量%のEVOHの多孔性析出物を、酸類やその金属塩の水溶液と接触させて、酸類やその金属塩を含有させてから乾燥する方法、イ)EVOHの均一溶液(水/アルコール溶液等)に酸類やその金属塩を含有させた後、凝固液中にストランド状に押し出し、次いで得られたストランドを切断してペレットとして、更に乾燥処理をする方法、ウ)EVOHと酸類やその金属塩を一括して混合してから押出機等で溶融混練する方法、エ)EVOHの製造時において、ケン化工程で使用したアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を酢酸等の酸類で中和して、残存する酢酸等の酸類や副生成する酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属塩の量を水洗処理により調整したりする方法等を挙げることができる。本発明の効果をより顕著に得るためには、酸類やその金属塩の分散性に優れるア)、イ)またはエ)の方法が好ましい。
【0032】
さらに、本発明においては、かかる樹脂組成物に本発明の目的を阻害しない範囲において、飽和脂肪族アミド(例えばステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(例えばオレイン酸アミド等)、ビス脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10,000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレン等)などの滑剤、無機塩(例えばハイドロタルサイト等)、可塑剤(例えばエチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコールなど)
【0033】
酸素吸収剤(例えば無機系酸素吸収剤として、還元鉄粉類、さらにこれに吸水性物質や電解質等を加えたもの、アルミニウム粉、亜硫酸カリウム、光触媒酸化チタン等が、有機化合物系酸素吸収剤として、アスコルビン酸、さらにその脂肪酸エステルや金属塩等、ハイドロキノン、没食子酸、水酸基含有フェノールアルデヒド樹脂等の多価フェノール類、ビス−サリチルアルデヒド−イミンコバルト、テトラエチレンペンタミンコバルト、コバルト−シッフ塩基錯体、ポルフィリン類、大環状ポリアミン錯体、ポリエチレンイミン−コバルト錯体等の含窒素化合物と遷移金属との配位結合体、テルペン化合物、アミノ酸類とヒドロキシル基含有還元性物質の反応物、トリフェニルメチル化合物等が、高分子系酸素吸収剤として、窒素含有樹脂と遷移金属との配位結合体(例:MXDナイロンとコバルトの組合せ)、三級水素含有樹脂と遷移金属とのブレンド物(例:ポリプロピレンとコバルトの組合せ)、炭素−炭素不飽和結合含有樹脂と遷移金属とのブレンド物(例:ポリブタジエンとコバルトの組合せ)、光酸化崩壊性樹脂(例:ポリケトン)、アントラキノン重合体(例:ポリビニルアントラキノン)等や、更にこれらの配合物に光開始剤(ベンゾフェノン等)や過酸化物補足剤(市販の酸化防止剤等)や消臭剤(活性炭等)を添加したものなど)。
【0034】
熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤(例えばタルク微粒子等)、スリップ剤(例えば無定形シリカ等)、充填材(例えば無機フィラー等)、他樹脂(例えばポリオレフィン、ポリエステル等)などを配合しても良い。
また、EVOHとして、異なる2種以上のEVOHを用いることも可能で、このときは、エチレン含有量が5モル%以上異なり、及び/又はケン化度が1モル%以上異なり、及び/又はMFRの比が4以上であるEVOHのブレンド物を用いることにより、ガスバリア性を保持したまま、更に柔軟性、熱成形性、製膜安定性等が向上するので有用である。
【0035】
かくして得られた本発明の樹脂組成物は、ガスバリア性、低温加熱延伸成形性、ロングラン溶融成形性等に優れ、勿論単層として各種用途に用いることは可能であるが、特に該樹脂組成物からなる層の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を積層して用いることで、耐水性、機械的特性、ヒートシール性等が付与された実用に適した積層体が得られる。
該積層体は、本発明の樹脂組成物を用いているため、ガスバリア性、低温加熱延伸成形性、ロングラン溶融成形性等に非常に優れた効果を示すものである。以下にかかる積層体について説明する。
【0036】
該積層体を製造するに当たっては、本発明の樹脂組成物の片面又は両面に、他の基材(熱可塑性樹脂等)を積層するのであるが、積層方法としては、例えば本発明の樹脂組成物のフィルム、シート等に他の基材を溶融押出ラミネートする方法、逆に他の基材に該樹脂組成物を溶融押出ラミネートする方法、該樹脂組成物と他の基材とを共押出する方法、本発明の樹脂組成物(層)と他の基材(層)とを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法等が挙げられる。上記の溶融押し出し時の溶融成形温度は、150〜300℃の範囲から選ぶことが多い。
【0037】
かかる他の基材としては、熱可塑性樹脂が有用で、具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン(ブロック又はランダム)共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン、ポリメチルペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどの広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(共重合ポリアミドも含む)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、芳香族または脂肪族ポリケトン、更にこれらを還元して得られるポリアルコール類、更には他のEVOH等が挙げられるが、積層体の特性(特に強度と外観)等の実用性の点から、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン(ブロック又はランダム)共重合体、ポリアミド、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が好ましく用いられ、特に剛性、透明性、表面光沢性に優れたポリスチレンが好ましい。
【0038】
更に、本発明の樹脂組成物のフィルムやシート等の成形物に他の基材を押出コートしたり、他の基材のフィルム、シート等を接着剤を用いてラミネートする場合、かかる基材としては、前記の熱可塑性樹脂以外に任意の基材(紙、金属箔、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシートおよびその無機物蒸着物、織布、不織布、金属綿状、木質等)が使用可能である。
【0039】
積層体の層構成は、本発明の樹脂組成物の層をa(a1、a2、・・・)、他の基材、例えば熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、フィルム、シート、ボトル状であれば、a/bの二層構造のみならず、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2、b2/b1/a/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能であり、さらには、少なくとも樹脂組成物と熱可塑性樹脂の混合物からなるリグラインド層をRとするとき、b/R/a、b/R/a/b、b/R/a/R/b、b/a/R/a/b、b/R/a/R/a/R/b等とすることも可能であり、フィラメント状ではa、bがバイメタル型、芯(a)−鞘(b)型、芯(b)−鞘(a)型、或いは偏心芯鞘型等任意の組み合わせが可能である。
【0040】
尚、上記の層構成において、それぞれの層間には、必要に応じて接着性樹脂層を設けることができ、かかる接着性樹脂としては、種々のものを使用することもでき、延伸性に優れた積層体が得られる点で好ましく、bの樹脂の種類によって異なり一概に言えないが、不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体(上述の広義のポリオレフィン系樹脂)に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるたカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を挙げることができ、具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロック又はランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等から選ばれた1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。
【0041】
このときの、熱可塑性樹脂に含有される不飽和カルボン酸又はその無水物の量は、0.001〜3重量%が好ましく、更に好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.03〜0.5重量%である。該変性物中の変性量が少ないと、接着性が不充分となることがあり、逆に多いと架橋反応を起こし、成形性が悪くなることがあり好ましくない。またこれらの接着性樹脂には、本発明の樹脂組成物や他のEVOH、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレンゴム等のゴム・エラストマー成分、更にはb層の樹脂等をブレンドすることも可能である。特に、接着性樹脂の母体のポリオレフィン系樹脂と異なるポリオレフィン系樹脂をブレンドすることにより、接着性が向上することがあり有用である。
【0042】
積層体の各層の厚みは、層構成、bの種類、用途や容器形態、要求される物性などにより一概に言えないが、通常は、a層は5〜500μm(更には10〜200μm)、b層は10〜5000μm(更には30〜1000μm)、接着性樹脂層は5〜400μm(更には10〜150μm)程度の範囲から選択される。a層が5μm未満ではガスバリア性が不足し、またその厚み制御が不安定となり、逆に500μmを越えると耐衝撃性が劣り、かつ経済的でなく好ましくなく、またb層が10μm未満では剛性が不足し、逆に5000μmを越えると重量が大きくなり、かつ経済的でなく好ましくなく、接着性樹脂層が5μm未満では層間接着性が不足し、またその厚み制御が不安定となり、逆に400μmを越えると重量が大きくなり、かつ経済的でなく好ましくない。
【0043】
該積層体は、そのまま各種形状のものに使用されるが、前述のように、本発明の樹脂組成物はガスバリア性、低温加熱延伸成形性、ロングラン溶融成形性等に優れているので、更に該積層体の物性を改善したり目的とする任意の容器形状に成形するためには加熱延伸処理を施すことも好ましい。ここで加熱延伸処理とは、熱的に均一に加熱されたフィルム、シート、パリソン状の積層体をチャック、プラグ、真空力、圧空力、ブローなどにより、カップ、トレイ、チューブ、ボトル、フィルム状に均一に成形する操作を意味し、かかる延伸については、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、できるだけ高倍率の延伸を行ったほうが物性的に良好で、延伸時にピンホールやクラック、延伸ムラや偏肉、デラミ等の生じない、ガスバリア性に優れた延伸成形物が得られる。
【0044】
延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等のうち延伸倍率の高いものも採用できる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は60〜170℃、好ましくは80〜160℃程度の範囲から選ばれる。
【0045】
延伸が終了した後、次いで熱固定を行うことも好ましい。熱固定は周知の手段で実施可能であり、上記延伸フィルムを緊張状態を保ちながら80〜170℃、好ましくは100〜160℃で2〜600秒間程度熱処理を行う。
また、生肉、加工肉、チーズ等の熱収縮包装用途に用いる場合には、延伸後の熱固定は行わずに製品フィルムとし、上記の生肉、加工肉、チーズ等を該フィルムに収納した後、50〜130℃、好ましくは70〜120℃で、2〜300秒程度の熱処理を行って、該フィルムを熱収縮させて密着包装をする。
【0046】
かくして得られた積層体の形状としては任意のものであってよく、フィルム、シート、テープ、カップ、トレイ、チューブ、ボトル、パイプ、フィラメント、異型断面押出物等が例示される。又、得られる積層体は必要に応じ、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。
【0047】
上記の如く得られたカップ、トレイ、チューブ、ボトル等からなる容器や延伸フィルムからなる袋や蓋材は一般的な食品の他、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、飲料、化粧品、医薬品、洗剤、香粧品、工業薬品、農薬、燃料等各種の容器として有用であるが、本発明の積層体は、特に、ゼリー、プリン、ヨーグルト、マヨネーズ、味噌等の半固形状食品・調味料用のカップ状容器や、生肉、畜肉加工品(ハム、ベーコン、ウインナー等)用のトレー状容器等の加熱延伸成形容器用途に有用である。
【0048】
最も好ましい容器構成としては、両外層に(接着性樹脂層を介して)ポリスチレン系樹脂を配したポリスチレン系樹脂層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/ポリスチレン系樹脂層や、最内層にヒートシール性に優れたポリエチレン系樹脂層を配したポリスチレン系樹脂層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/ポリエチレン系樹脂層、ポリエチレン系樹脂層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/ポリプロピレン系樹脂層、ポリエチレン系樹脂層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/ポリエチレン系樹脂層が挙げられる。
【0049】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
尚、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準を示す。
ポリアミド系樹脂の融点の測定については、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製「DSC−7」)を用いて昇温速度10℃/minで測定することにより行った。
また、EVOH中のホウ酸含有量の測定については、EVOHをアルカリ溶融してICP発光分光分析法によりホウ素を定量することにより行った。
更に、アルカリ金属含有量の測定については、EVOHを灰化後、塩酸水溶液に溶解して原子吸光分析法によりアルカリ金属を定量することにより行った。
【0050】
実施例1
EVOH[エチレン含有量34モル%、ケン化度99.5モル%、MFR20g/10分(210℃、荷重2160g)](A)の水/メタノール(水/メタノール=40/60混合重量比)混合溶液(60℃、EVOH濃度45%)を5℃に維持された水槽にストランド状に押し出して凝固させた後、カッターで切断して多孔性ペレット状(直径4mm、長さ4mm)のEVOHを得た。
次いで、得られた多孔性ペレット状のEVOHを水洗後、0.3%のホウ酸(C)と0.1%の酢酸ナトリウムを含有する水溶液に投入し、35℃で約4時間攪拌して、更に回分式塔型流動層乾燥器により75℃で3時間および回分式通気流箱型乾燥器により125℃で18時間乾燥を行って、ホウ酸(C)をホウ素換算で0.03部および酢酸ナトリウムをナトリウム換算で120ppm含有したEVOH組成物(ペレット状)を得た。
【0051】
次に該組成物(A+C)90部とポリアミド系樹脂[エムスジャパン社製『グリロンCF6S』、ナイロン6/12の共重合体、密度1.05g/cm3、融点133℃、ΔH51J/g、MFR18g/10分(210℃、荷重2160g)](B)10部を二軸押出機にて以下の条件で溶融混練して、本発明の樹脂組成物を得た。
上記で得られた樹脂組成物を用いて以下の方法で積層体の製造(加熱延伸成形)を行って、ガスバリア性、低温加熱延伸成形性、ロングラン溶融成形性の評価を行った。
【0052】
[積層体(カップ)の製造]
上記で得られた樹脂組成物をフィードブロック3種5層の多層Tダイを備えた多層押出装置に供給して、ポリスチレン(エーアンドエムスチレン社製『ダイアレックス HT516』)層/接着性樹脂(三菱化学社製『モディックAP F502』)層/樹脂組成物層/接着性樹脂層(同左)/ポリスチレン層(同左)の層構成(厚み480/60/120/60/480μm)の多層シートを得て、次にプラグアシスト型真空圧空成形機(浅野研究所製)にて、ヒーター温度が500℃でシート表面温度が125℃及び130℃の2条件で、カップ(上面65mmΦ、底面60mmΦ、深さ55m及び107mmの2種)の加熱延伸成形加工を行って積層体(カップ)を4種類(シート表面温度が125℃でカップ深さが55mmのもの、シート表面温度が125℃でカップ深さが107mmのもの、シート表面温度が130℃でカップ深さが55mmのもの、シート表面温度が130℃でカップ深さが107mmのもの)作製した。尚、シート表面温度はヒーターの加熱時間を調整することにより行った。
かかる積層体(カップ)について、外観性、ガスバリア性、ロングラン溶融成形性を下記の如く評価した。
【0053】
(外観性)
上記で得られたカップを、目視で観察して下記の基準により評価した。
◎ −−− クラックやピンホール、局部的な偏肉は全く認められない
○ −−− カップの側面部に局部的な偏肉が若干認められる
△ −−− カップの側面部に局部的な偏肉が著しく認められる
× −−− カップの側面部に局部的な偏肉が著しく認められ、更に破断も数カ所に認められる
【0054】
(ガスバリア性)
上記で得られたカップの上面をアルミ金属板で密封して酸素透過度を測定(モダンコントロール社製「OXTRAN10/50」を用いて、カップ内側:23℃,100%RH、カップ外側:23℃,50%RHの条件下)した。
【0055】
(ロングラン溶融成形性)
上記の多層シート成形を連続して24時間行った後に得られた多層シートを用いて、同様に加熱延伸成形加工を行い、得られたカップについて上記の外観性と同様の評価を行った。
【0056】
実施例2
実施例1において、エチレン含有量29モル%、ケン化度99.6モル%、MFR15g/10分(210℃、荷重2160g)]のEVOH(A)を用い、かつホウ酸(C)をホウ素換算で0.02部および酢酸ナトリウムをナトリウム換算で100ppm含有するようにEVOH組成物(ペレット状)を作製し、ポリアミド系樹脂(B)とのブレンド比率を、組成物(A+C)85部、ポリアミド系樹脂(B)15部とした以外は同様に行って、同様に評価した。
【0057】
実施例3
実施例1において、エチレン含有量29モル%、ケン化度99.6モル%、MFR15g/10分(210℃、荷重2160g)]のEVOH(A)を用い、かつホウ酸(C)をホウ素換算で0.02部含有するようにEVOH組成物(ペレット状)を作製し、ポリアミド系樹脂(B)とのブレンド比率を、組成物(A+C)85部、ポリアミド系樹脂(B)15部とした以外は同様に行って、同様に評価した。
【0058】
実施例4
実施例1において、エチレン含有量38モル%、ケン化度99.5モル%、MFR35g/10分(210℃、荷重2160g)]のEVOH(A)を用い、かつホウ酸(C)をホウ素換算で0.04部および酢酸ナトリウムをナトリウム換算で200ppm含有するようにEVOH組成物(ペレット状)を作製し、ポリアミド系樹脂(B)とのブレンド比率を、組成物(A+C)94部、ポリアミド系樹脂(B)6部とした以外は同様に行って、同様に評価した。
【0059】
実施例5
実施例1において、ポリアミド系樹脂(B)として、東レ社製『アミランCM8000』[ナイロン6/66/610/12の共重合体、密度1.12g/cm3、融点131℃、ΔH40J/g、MFR25g/10分(210℃、荷重2160g)]を用いた以外は同様に行って、同様に評価した。
【0060】
実施例6
実施例1において、ポリアミド系樹脂(B)として、エムスジャパン社製『グリロンCA6E』[ナイロン6/12共重合体、密度1.06g/cm3、融点124℃、ΔH39J/g、MFR26g/10分(210℃、荷重2160g)]を用いた以外は同様に行って、同様に評価した。
【0061】
実施例7
実施例1において、ポリアミド系樹脂(B)として、東レ社製『アミランCM6541−X3』[ナイロン6/12の共重合体、密度1.11g/cm3、融点135℃、ΔH40J/g、MFR12g/10分(210℃、荷重2160g)]を用いた以外は同様に行って、同様に評価した。
【0062】
実施例8
実施例1において、多層シートの層構成を、ポリスチレン(エーアンドエムスチレン社製『ダイアレックス HT516』)層/接着性樹脂(三菱化学社製『モディックAP F502』)層/樹脂組成物層/接着性樹脂層(同左)/ポリエチレン層(日本ポリケム社製『ノバテックLD YF30』)の層構成(厚み990/30/60/30/200μm)とした以外は同様に行って、同様に評価した。ただし、カップ内側がポリエチレン層となるようにした。
【0063】
実施例9
実施例4において、多層シートの層構成を、ポリエチレン系樹脂層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/ポリエチレン系樹脂層とした以外は同様に行って、同様に評価した。
【0064】
実施例10
実施例6において、ポリスチレン層をポリプロピレン系樹脂層とポリエチレン系樹脂層に変更して多層シートの層構成を、ポリプロピレン系樹脂層(日本ポリケム社製『ノバテックPP EG7F』)/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/ポリエチレン系樹脂層とした以外は同様に行って、同様に評価した。
【0065】
比較例1
実施例1において、樹脂組成物にポリアミド系樹脂(B)を含有させなかった以外は同様に行って、同様に評価した。
【0066】
比較例2
実施例1において、樹脂組成物にホウ酸(C)を含有させなかった以外は同様に行って、同様に評価した。
【0067】
比較例3
実施例1において、ポリアミド系樹脂(B)として、東レ社製『アミランCM6541−X4』(ナイロン6/12の共重合体、密度1.10g/cm3、融点196℃)を用いた以外は同様に行って、同様に評価した。
実施例及び比較例の評価結果を表1および2にまとめて示す。
【0068】
【0069】
【0070】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、ガスバリア性、低温加熱延伸成形性、ロングラン溶融成形性等に優れ、各種包装用途(食品、飲料、化粧品、医薬品、工業薬品、農薬、溶剤、燃料等)の包装材料として有用であり、特にポリスチレン系樹脂との積層体として非常に有用である。
Claims (7)
- エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)、融点が160℃以下で示鎖走査熱量計を用いて測定(昇温速度10℃/min)される融解熱量ΔHが5〜70J/gのポリアミド系樹脂(B)及びホウ素化合物(C)を含有し、(A)及び(B)の含有重量比(A/B)が70/30〜95/5である樹脂組成物を含有する層の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を有することを特徴とする積層体。
- ホウ素化合物(C)の含有量が(A)及び(B)の総量100重量部に対してホウ素換算で0.001〜1重量部であることを特徴とする請求項1記載の積層体。
- 熱可塑性樹脂がポリスチレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
- [内側]ポリスチレン系樹脂層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/ポリスチレン系樹脂層[外側]の層構成を有することを特徴とする請求項3記載の積層体。
- [内側]ポリエチレン系樹脂層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/ポリスチレン系樹脂層[外側]の層構成を有することを特徴とする請求項3記載の積層体。
- [内側]ポリエチレン系樹脂層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/ポリエチレン系樹脂層[外側]の層構成を有することを特徴とする請求項3記載の積層体。
- [内側]ポリエチレン系樹脂層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/ポリプロピレン系樹脂層[外側]の層構成を有することを特徴とする請求項3記載の積層体。
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