JP3903172B2 - 金属酸化物焼結体の製造方法 - Google Patents

金属酸化物焼結体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属酸化物焼結体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
我が国で消費される全一次供給エネルギーは、その70%近くが廃熱として捨てられている。この莫大な廃熱エネルギ−の有効利用は、21世紀における重要課題の一つである。
【0003】
二酸化炭素、放射性物質などの有害物質を排出することなく、またタ−ビンなどの可動部を使用することなく、廃熱を電気エネルギーに直接変換することのできる方法として熱電発電がある。熱電発電は、一次供給エネルギ−の削減とこれに伴う二酸化炭素排出量の削減に直接貢献するものであり、その実現が大いに期待されている技術である。
【0004】
熱電発電の最も大きな利点の一つとして、小規模の廃熱源に対しても大規模の廃熱源に対しても原理的には同じ変換効率で駆動し、廃熱源のスケ−ルを問わない点が挙げられる。従って、熱電発電では、ゴミ焼却場、工場、自動車、ディ−ゼルエンジン、燃料電池等からの廃熱;太陽熱;ガスの触媒燃焼熱などの広く分散した様々な形態の熱源の利用が想定される。
【0005】
熱電発電による廃熱回収を実現するために最も重要な技術開発課題は、耐熱性に優れた高性能の熱電材料(熱電変換材料)を開発することである。これまで、カルコゲナイド化合物または金属間化合物を用いた熱電発電システムの実用化が検討されている。しかしながら、これらの材料は、耐熱性が低く、変換効率が充分ではなく、しかも、有毒性を有する元素や稀少元素を使用するなどの問題点を持つため、広く応用されるには至っていない。従って、熱電発電の普及を図るためには、広い温度範囲において高い変換効率を有し、且つ安定して稼動させることが可能な熱電素子の開発が必要である。
【0006】
一般に熱電変換効率の指標として、以下の式で表される性能指数(ZT)が用いられている。
【0007】
ZT=TS2/ρκ
[式中、Tは絶対温度、Sは熱起電力、ρは電気抵抗率、κは熱伝導率を示す]また熱起電力と電気抵抗率から計算される(S2/ρ)は出力因子と呼ばれる。
【0008】
優れた熱電材料とは、熱起電力(ゼーベック係数)が大きく、電気抵抗率と熱伝導率が小さい物質であり、熱電発電の実用化には、ZTが1を上回る熱電材料が必要とされている。
【0009】
現在、熱電材料として、熱的安定性、化学的安定性に優れた物質である酸化物材料が注目されているが、金属酸化物は、導電率が低いために熱電特性が低いというのが従来の常識であった。近年、これを覆すような先駆的な研究結果が、国内の研究グル−プによって発表されている。この発表によると、(Ca,Sr,Bi)2Co25で表される酸化物単結晶は、600℃以上の空気中でZTが1を越えることが報告されており、熱電発電の実用化へ向けた有望な材料として期待されている。
【0010】
しかしながら、上記酸化物単結晶は、性能指数については実用化の目標値をクリアしているものの、単結晶のサイズが小さく、量産化が困難であるという欠点を有している。このため、上記酸化物単結晶自体を用いて廃熱回収を目的とした電熱発電素子を実用化するには至っていない。
【0011】
以上の様な点から、実用的な電熱素子を得るためには、形状の自由度が高く、しかも製造が比較的容易な酸化物の焼結体、即ち、酸化物多結晶体により性能指数の高い熱電材料を作製することが望まれる。従来、酸化物焼結体の製造方法としては、主として、金属酸化物粉末を常圧焼結法、ホットプレス法などの方法で焼結する方法が採用されている。しかしながら、斯かる方法では、電気抵抗値が低く性能指数の高い焼結体は得られていない。例えば、Ca3Co49の粉末を金型成形し常圧焼結することにより得られた多結晶焼結体について、熱電特性が測定されているが、その性能指数は単結晶に比べ一桁程度低い値に過ぎない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した如き従来技術に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、熱起電力(ゼーベック係数)が大きく、電気抵抗率と熱伝導率が小さい、優れた熱電変換性能を有する金属酸化物の焼結体を効率よく製造できる方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の組成を有する金属酸化粉末を原料として用い、これを一軸加圧下に加圧し、加圧方向と垂直方向に通電して放電プラズマ焼結法によって焼結させる方法によれば、結晶粒の配向性の良い高密度の焼結体を得ることができ、得られた焼結体は、熱起電力が大きく、電気抵抗率が低く、優れた熱電変換性能を有する材料となることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、以下の金属酸化物焼結体の製造方法を提供するものである。
1. 金属酸化物粉末を成形用型に充填した後、一軸加圧下に放電プラズマ焼結法によって焼結させる方法であって、放電プラズマ焼結における加圧軸方向と通電方向が垂直であり、該金属酸化物粉末がCdI2構造のCoO2層を含む層状構造を有し、且つ構成元素としてCa、Sr、Bi及びNaから選ばれた少なくとも一種の元素を含む酸化物の粉末であることを特徴とする金属酸化物焼結体の製造方法。
2. 金属酸化物粉末が、以下の酸化物1〜酸化物6からなる群から選択される少なくとも一種の酸化物の粉末である上記項1に記載の金属酸化物焼結体の製造方法:
酸化物1:一般式[Ca2CoO3]xCoO2(式中、0.5≦x≦1)で表される複合酸化物であって、CdI2型構造を有するCoO2層と、3層岩塩型構造を有し金属元素としてCaおよびCoを含む層とが、交互に積層した層状構造を有する酸化物、
酸化物2:上記酸化物1において、Ca及びCoから選ばれた少なくとも一種の元素が他の金属元素で部分的に置換された酸化物、
酸化物3:CdI2構造を有するCoO2層と、Naからなる層とが交互に積層した層状構造の酸化物、
酸化物4:上記酸化物3において、Co及びNaから選ばれた少なくとも一種の元素が他の金属元素で部分的に置換された酸化物、
酸化物5:一般式[Bi2Sr24]xCoO2(式中、0.9≦x≦1.1)で表される複合酸化物であって、CdI2型構造を有するCoO2層と、4層岩塩型構造を有し金属元素としてBiおよびSrを含む層とが、交互に積層した層状構造を有する酸化物、
酸化物6:上記酸化物5において、Co、Bi及びSrから選ばれた少なくとも一種の元素が他の金属元素で部分的に置換された酸化物。
3. 得られる金属酸化物焼結体が、次の特性を有するものである上記項1又は2に記載の金属酸化物焼結体の製造方法:
(1)相対密度が95%以上、
(2)熱起電力(S)が、500℃において100μVK-1以上、
(3)下記式で表される出力因子が、700℃において3×10-4Wm-1-2以上
出力因子=S2/ρ
(式中、Sは熱起電力(VK-1)であり、ρは電気抵抗率(Ωm)である)。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の金属酸化物焼結体の製造方法では、原料としては、CdI2構造のCoO2層を含む層状構造を有し、且つ構成元素としてCa、Sr、Bi及びNaから選ばれた少なくとも一種の元素を含む金属酸化物粉末を用いる。
【0016】
原料として用いる金属酸化物粉末の具体例としては、以下に示す酸化物1〜酸化物6を挙げることができる。
酸化物1:一般式[Ca2CoO3]xCoO2(式中、0.5≦x≦1)で表される複合酸化物であって、CdI2型構造を有するCoO2層と、3層岩塩型構造を有し金属元素としてCaおよびCoを含む層とが、交互に積層した層状構造を有する酸化物。
酸化物2:上記酸化物1において、Ca及びCoから選ばれた少なくとも一種の元素が他の金属元素で部分的に置換された酸化物。
酸化物3:CdI2構造を有するCoO2層と、Naからなる層とが交互に積層した層状構造の酸化物。
酸化物4:上記酸化物3において、Ca及びNaから選ばれた少なくとも一種の元素が他の金属元素で部分的に置換された酸化物。
酸化物5:一般式[Bi2Sr24]xCoO2(式中、0.9≦x≦1.1)で表される複合酸化物であって、CdI2型構造を有するCoO2層と、4層岩塩型構造を有し金属元素としてBiおよびSrを含む層とが、交互に積層した層状構造を有する酸化物。
酸化物6:上記酸化物5において、Bi及びSrから選ばれた少なくとも一種の元素が他の金属元素で部分的に置換された酸化物。
【0017】
上記酸化物1は、CoO6の8面体ユニットが稜共有したCoO2層(CdI2型構造)と3層岩塩型構造を持つCa2CoO3層が交互に積層した層状構造を有する酸化物である。
【0018】
上記酸化物2は、上記酸化物1と同様の構造を有する酸化物であって、Ca及びCoから選ばれた少なくとも一種の元素が他の金属元素で部分的に置換された酸化物である。Caを置換する元素としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Bi、Pb、Tl、Sc、Y、La等の希土類元素を例示でき、これらの元素の一種又は二種以上により置換することができる。置換量は、置換元素にもよるが置換前のCa量を基準として、元素比で40%程度以下の置換量とすることができる。Coを置換する元素としては、Ti等の3d遷移金属、Zn、Ga、Ge、Al、In、Sn、Sb、Mo、Ru、W、Re等を例示でき、これらの元素の一種又は二種以上により置換することができる。置換量は置換元素にもよるが、置換前のCo量を基準として、元素比で30%程度以下の置換量とすることができる。
【0019】
上記酸化物3は、CdI2構造のCoO2層と、Naからなる層とが交互に積層した層状構造の酸化物である。Naからなる層の構造については特に限定的ではなく、酸化物全体として層状構造を形成していればよい。酸化物3におけるCoとNaの元素比は、Co:Na=1:0.4〜0.8程度の範囲内とすることができる。
【0020】
上記酸化物4は、上記酸化物3と同様の構造を有する酸化物であって、Na及びCoから選ばれた少なくとも一種の元素が他の金属元素で部分的に置換された酸化物である。Naを置換する元素としては、Li、K等のアルカリ金属、Ca、Sr等のアルカリ土類金属を例示でき、これらの元素の一種又は二種以上により置換することができる。置換量は置換元素にもよるが、置換前のNa量を基準として、元素比で40%程度以下の置換量とすることができる。Coを置換する元素としては、Ti等の3d遷移金属、Pd、Zn、Ga、Ge、Al、In、Sn、Sb、Mo、Ru、W、Re等を例示でき、これらの元素の一種又は二種以上により置換することができる。置換量は置換元素にもよるが、置換前のCo量を基準として、元素比で30%程度以下の置換量とすることができる。
【0021】
上記酸化物5は、CoO6の8面体ユニットが稜共有したCoO2層(CdI2型構造)と4層岩塩型構造を持つBi2Sr24層が交互に積層した層状構造を有する酸化物である。
【0022】
上記酸化物6は、上記酸化物5と同様の構造を有する酸化物であって、Bi、Sr及びCoから選ばれた少なくとも一種の元素が他の金属元素で部分的に置換された酸化物である。Bi又はSrを置換する元素としては、Li、K等のアルカリ金属、Ca、Ba等のアルカリ土類金属、Bi、Pb、Tl、Te、Sc、Y、La等の希土類元素を例示でき、これらの元素の一種又は二種以上により置換することができる。置換量は置換元素にもよるが、Bi又はSrが置換される場合には、置換前のBi及びSrの合計量を基準として、元素比で40%程度以下の置換量とすることができる。Coを置換する元素としては、Ti等の3d遷移金属、Zn、Ga、Ge、Al、In、Sn、Sb、Mo、Ru、W、Re等を例示でき、これらの元素の一種又は二種以上により置換することができる。置換量は置換元素にもよるが、置換前のCo量を基準として、元素比で30%程度以下の置換量とすることができる。
【0023】
本発明の金属酸化物焼結体の製造方法では、上記各金属酸化物粉末の粒径は、特に限定的ではないが、電子顕微鏡観察による測定値として、通常、0.5〜10μm程度のものを用いればよく、1〜4μm程度のものを用いることが好ましい。
【0024】
該金属酸化物粉末の調製方法については特に制限されず、固相法などの公知の方法を適宜採用できる。例えば、焼成により酸化物を形成し得る原料物質を焼成することにより、原料とする金属酸化物粉末を調製することができる。この際、金属酸化物粉末を調製するための原料物質として、例えば、金属単体、金属化合物(炭酸塩、硝酸塩、水酸化物など)等を用いることができる。金属酸化物粉末は、2種以上の金属元素を含んでいてもよい。2種以上の金属元素を含む金属酸化物粉末は、例えば、2種以上の金属単体、金属化合物(炭酸塩、硝酸塩、水酸化物など)、金属酸化物等を焼成することにより調製することができる。
【0025】
金属酸化物粉末を調製するための焼成温度、焼成時間などの焼成条件は、使用する原料物質の種類、組成比などにより適宜設定することができる。焼成温度は、通常700〜1000℃程度、好ましくは750〜950℃程度である。焼成時間は、5〜20時間程度、好ましくは10〜15時間程度である。焼成雰囲気は、特に制限されず、大気中、酸素雰囲気などの酸化雰囲気下などを例示することができる。焼成手段は、特に限定されず、電気加熱炉、ガス加熱炉、光加熱炉など任意の手段を採用できる。反応を完結させるために、必要に応じて、上記焼成物を粉砕し、さらに同様の条件にて焼成することを繰り返してもよい。このようにして得られた焼成物を粉砕する方法などにより、原料とする金属酸化物粉末を得ることができる。
【0026】
本発明の金属酸化物焼結体の製造方法では、上記した金属酸化物粉末を成形用型に充填した後、一軸加圧下に放電プラズマ焼結法によって焼結させることが必要である。
【0027】
この際、成形用型としては、通常の放電プラズマ焼結法において用いられる各種の導電性を有する型を用いることができ、例えば、カーボン製型等を好適に用いることができる。
【0028】
本発明では、一軸加圧下に放電プラズマ焼結を行う際に、加圧軸方向と通電方向を互いに垂直方向とすることが必要である。
【0029】
図1に、本発明で採用する加圧軸方向と通電方向が垂直方向である放電プラズマ焼結方法と、従来の放電プラズマ焼結方法である加圧軸方向と通電方向が同方向である放電プラズマ焼結方法についての概略図を示す。
【0030】
本発明方法では、原料とする金属酸化物粉末は、層状構造を有するものであり、その形状は結晶構造を反映して板状である。この様な板状結晶粉末を一軸加圧すると、板状のよく発達した面が加圧軸に対して垂直となるよう配向する。
【0031】
一方、層状構造を有する酸化物は、電気輸送特性に異方性があり、電気をよく通す層方向とこれと垂直方向の抵抗率は数百倍以上の差がある。この様な金属酸化物粉末に電流を印加すると、結晶粒は電流をよく流す方向に配向する傾向がある。よって、層状構造の酸化物では、電気をよく通す層方向に配向し、結晶粒は、板状のよく発達した面が一定方向に揃った状態となる。
【0032】
本発明方法では、加圧軸方向と通電方向を垂直方向とすることによって、加圧による結晶粒の配向方向と、通電による結晶粒の配向方向とが一致して、配向性に優れた焼結体を得ることができる。
【0033】
これに対して、従来の放電プラズマ焼結法では、機械的な加圧軸と印加電流の方向が同方向であり、これらの2つの要因が配向性に与える影響は反対であることにより、結晶粒を一定方向に配向させることができない。
【0034】
本発明における放電プラズマ焼結の条件は、使用する型のサイズ、金属酸化物粉末の組成などにより適宜設定することができる。
【0035】
圧力は、通常20〜80MPa程度、好ましくは40〜80MPa程度とすればよい。昇温速度は、通常10〜200℃/分程度、好ましくは50〜150℃/分程度とすればよい。焼結温度は、通常700〜1100℃程度、好ましくは750〜1000℃程度とすればよい。
【0036】
通電条件は、上記した焼結条件を達成できるように決めれば良い。例えば、電流値は、通常、350〜1400A程度、好ましくは400〜1200A程度の範囲内とすることができる。電流としては、例えば、直流パルス電流を好適に利用できる。この場合、パルス幅については特に限定的ではないが、例えば、通電時のパルス幅が2〜3ミリ秒程度、好ましくは2.4〜2.6ミリ秒程度の直流パルス電流を使用することができる。
【0037】
焼結時間、即ち、上記した焼結温度範囲に保持する時間は、通常1〜30分間程度、好ましくは2〜15分程度とすればよい。焼成雰囲気は、特に制限されず、大気中などの酸化雰囲気下、真空雰囲気下などを例示することができる。得られた焼結体の表面に、カーボン製型などに由来する炭素などが付着している場合などには、必要に応じて、空気中、酸素気流中等で熱処理する方法や焼結体表面を研磨する方法等により、これを取り除いてもよい。この際、熱処理条件については特に限定はないが、通常700〜900℃程度の加熱温度、2〜10時間程度の加熱時間でよい。
【0038】
上記した金属酸化物焼結体の製造方法によれば、焼結体を構成する結晶粒が一方向に配向した金属酸化物焼結体を得ることができる。例えば、本発明方法によって得られたNa1.6Co24焼結体は、X線回折から求めた(004)ピークと(100)ピークの強度比I(100)/I(004)は0.09であり、加圧方向と通電方向を同方向とする従来型の放電プラズマ焼結法で作製した試料の強度比I(100)/I(004)=0.14より減少しており、本発明方法が結晶粒配向化に有効であることが認められた。
【0039】
本発明方法によって得られる焼結体は、高密度で緻密な多結晶体であり、多結晶体を構成する金属酸化物結晶粒の大きさは、原料とする金属酸化物粉末の組成や粒径により異なるが、通常、1〜100μm程度の範囲内となり、特に、10〜80μm程度の範囲のものが好ましい。
【0040】
また、該焼結体は、常圧で焼結させて得られる焼結体と比較すると15〜30%程度高い密度を有するものとなり、相対密度は、通常、95%程度以上となり、特に98%以上であることが好ましい。なお、相対密度とは、理想密度に対する実測密度の比(%)を意味する。
【0041】
以上の通り、本発明方法によって得られる焼結体は、結晶粒が配向し、且つ緻密な多結晶体となる。該焼結体は、電導性が良好であり、加圧方向と通電方向が平行である従来型の放電プラズマ法で焼結した焼結体と比較すると、電気抵抗率は、通常、10〜40%程度低い値となる。具体的な電気抵抗率は、その組成などによって異なるが、500℃において、約8mΩcm以下という低い電気抵抗率となり、特に、7mΩcm以下であることが好ましく、2〜7mΩcm程度であることがより好ましい。
【0042】
更に、熱起電力(S)についても非常に高い値となり、500℃において、通常、約100μVK-1以上であり、特に、約120μVK-1以上であることが好ましく、150〜250μVK-1程度であることがより好ましい。
【0043】
また、熱起電力と電気抵抗率から計算される出力因子(S2/ρ(式中、Sは熱起電力(VK-1)であり、ρは電気抵抗率(Ωm)である))は、700℃において、通常、約3×10-4Wm-1-2以上という高い値となり、特に、5×10-4Wm-1-2以上であることが好ましく、6×10-4Wm-1-2以上であることがより好ましい。
【0044】
本発明方法によって得られる金属酸化物焼結体は、上記した優れた特性を利用して、高性能の熱電材料(熱電変換材料)として好適に用いることができる。
【0045】
該金属酸化物をからなる熱電材料をp型熱電変換素子として用いた熱電発電モジュールの一例の模式図を図2に示す。該熱電発電モジュールの構造は、公知の熱電発電モジュールと同様であり、高温部用基板、低温部用基板、p型熱電変換材料、n型熱電変換材料、電極、導線等により構成される熱電発電モジュールであり、本発明の複合酸化物はp型熱電変換材料として使用できる。
【0046】
【発明の効果】
本発明の金属酸化物焼結体の製造方法によれば、焼結体を構成する結晶粒の配向性が向上し、しかも高密度の焼結体を得ることができる。
【0047】
得られる金属酸化物焼結体は、高い出力因子を有する金属酸化物の多結晶体であり、高性能の熱電材料として利用できる。
【0048】
特に、本発明方法により得られる金属酸化物焼結体は、焼結法によって得られる多結晶体であることから、所望の大きさのものを容易に製造できるので、電熱素子(電熱発電素子)として、各種の用途に有効に用いることができる。
【0049】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。
【0050】
なお、実施例および比較例において、各原子源とて使用した原料は下記の通りである。
*Bi源:酸化ビスマス(Bi23
*Sr源:炭酸ストロンチウム(SrCO3
*Ca源:炭酸カルシウム(CaCO3
*Co源:酸化コバルト(Co34
*La源:酸化ランタン(La23
*Cu源:酸化銅(CuO)
*Na源:炭酸ナトリウム(Na2CO3
*Pb源:酸化鉛(PbO)
実施例1
Na源としての炭酸ナトリウム(Na2CO3)とCo源としての酸化コバルト(Co34)をNa:Co(元素比)=1.6:2となるように混合し、これを大気中、800℃で12時間加熱した。
【0051】
得られた焼成物を粉砕して粉末とし、この焼成と粉砕の操作を二度繰り返すことによって、Na1.6Co24粉末を得た。得られた酸化物粉末の粒径は、電子顕微鏡観察による測定値として、1〜2μmであった。また、走査型電子顕微鏡観察の結果、粉末形状は、結晶構造を反映し板状であった。
【0052】
得られた粉末をカーボン製金型(内径15mm、外径30mm、高さ35mm)に充填し、80MPaの一軸加圧下、加圧軸と垂直方向にパルス直流電圧(最大電流:800A、パルス幅(ON時):2.5ミリ秒、パルス幅ON/OFF比=6/1)を印加して、放電プラズマ焼結を行った。
【0053】
昇温速度は100℃/分、保持温度は850℃、処理時間(保持時間)は5分間とした。
【0054】
得られた焼結体の700℃における出力因子(S2/ρ)は、9.7×10-4Wm-1-2であり、後述する加圧軸方向と通電方向が平行である従来型の方法で放電プラズマ焼結した試料(比較例1)と比べて、30%程度高い性能指数を示した。
【0055】
実施例2〜5
原料とする金属酸化物粉末の化学組成、焼結の処理条件を表1に示した条件とした以外は、実施例1の方法に準じて、表1に示す組成比を持つ多結晶焼結体を製造した。
【0056】
得られた各焼結体の出力因子、電気抵抗率、熱起電力及び相対密度を下記表1に示す。
【0057】
比較例1
実施例1と同様にして得られたNa1.6Co24粉末を、カーボン製金型に入れ、80MPaの一軸加圧下、加圧軸と平行方向にパルス直流電圧(最大電流:800A、パルス幅(ON時):2.5ミリ秒、パルス幅ON/OFF比=6/1)を印加して、放電プラズマ焼結を行った。昇温速度、保持温度、処理時間は実施例1と同条件とした。
【0058】
得られた焼結体の出力因子、電気抵抗率、熱起電力及び相対密度を下記表1に示す。
【0059】
比較例2
実施例3と同様にして得られたCa2.7Sr0.2La0.1Co3.9Cu0.19粉末をカーボン製金型に充填し、加圧方向と通電方向を平行方向とすること以外は実施例3と同条件で放電プラズマ焼結を行い、金属酸化物の焼結体を得た。
【0060】
得られた焼結体の出力因子、電気抵抗率、熱起電力及び相対密度を下記表1に示す。
【0061】
【表1】
Figure 0003903172
【0062】
性能比較試験
本発明製造方法による効果、特に、加圧軸と通電方向が垂直である放電プラズマ焼結法による効果を明確にするために、実施例1で得られた焼結体と比較例1で得られた焼結体について、電気抵抗率の温度依存性を示すグラフを図3に、熱起電力の温度依存性を示すグラフを図4に、出力因子の温度依存性を示すグラフを図5に示す。
【0063】
実施例1で得られた焼結体は、機械的な加圧軸と通電方向が垂直である放電プラズマ焼結法で作製した焼結体であり、比較例1の焼結体は、実施例1の焼結体と化学組成は同一であるが、機械的な加圧軸と通電方向が平行である放電プラズマ焼結法で作製した焼結体である。
【0064】
図3〜図5から明らかなように、両焼結体において熱起電力には大きな差はないが、電気抵抗率については実施例1の焼結体が低い値であるため、実施例1の焼結体の出力因子が高い値を示すことが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で採用する放電プラズマ焼結方法と、従来の放電プラズマ焼結方法とを比較した概略図。
【図2】本発明方法で得られる金属酸化物焼結体を熱電変換材料として用いた熱電発電モジュールの模式図。
【図3】実施例1および比較例1において得られた焼結体の電気抵抗率の温度依存性を示すグラフ。
【図4】実施例1および比較例1において得られた焼結体の熱起電力の温度依存性を示すグラフ。
【図5】実施例1および比較例1において得られた焼結体の出力因子の温度依存性を示すグラフ。

Claims (3)

  1. 金属酸化物粉末を成形用型に充填した後、一軸加圧下に放電プラズマ焼結法によって焼結させる方法であって、
    放電プラズマ焼結における加圧軸方向と通電方向が垂直であり、
    該金属酸化物粉末がCdI 2 構造のCoO 2 層を含む層状構造を有し、且つ構成元素としてCa、Sr、Bi及びNaから選ばれた少なくとも一種の元素を含む酸化物の粉末であることを特徴とする金属酸化物焼結体の製造方法。
  2. 金属酸化物粉末が、以下の酸化物1〜酸化物6からなる群から選択される少なくとも一種の酸化物の粉末である請求項1に記載の金属酸化物焼結体の製造方法:
    酸化物1:一般式[Ca2CoO3]xCoO2(式中、0.5≦x≦1)で表される複合
    酸化物であって、CdI2型構造を有するCoO2層と、3層岩塩型構造を有し金属元素としてCaおよびCoを含む層とが、交互に積層した層状構造を有する酸化物、
    酸化物2:上記酸化物1において、Ca及びCoから選ばれた少なくとも一種の元素が他の金属元素で部分的に置換された酸化物、
    酸化物3:CdI2構造を有するCoO2層と、Naからなる層とが交互に積層した層状構造の酸化物、
    酸化物4:上記酸化物3において、Co及びNaから選ばれた少なくとも一種の元素が他の金属元素で部分的に置換された酸化物、
    酸化物5:一般式[Bi2Sr24]xCoO2(式中、0.9≦x≦1.1)で表される複合酸化物であって、CdI2型構造を有するCoO2層と、4層岩塩型構造を有し金属元素としてBiおよびSrを含む層とが、交互に積層した層状構造を有する酸化物、
    酸化物6:上記酸化物5において、Co、Bi及びSrから選ばれた少なくとも一種の元素が他の金属元素で部分的に置換された酸化物。
  3. 得られる金属酸化物焼結体が、次の特性を有するものである請求項1又は2に記載の金属酸化物焼結体の製造方法:
    (1)相対密度が95%以上、
    (2)熱起電力(S)が、500℃において100μVK-1以上、
    (3)下記式で表される出力因子が、700℃において3×10-4Wm-1-2以上
    出力因子=S2/ρ
    (式中、Sは熱起電力(VK-1)であり、ρは電気抵抗率(Ωm)である)。
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