JP3902112B2 - 光モジュールの組立方法、光モジュールの組立装置およびプログラム - Google Patents

光モジュールの組立方法、光モジュールの組立装置およびプログラム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光モジュールの組立方法および光モジュールの組立装置に関し、より詳細には、光モジュールを構成する複数個の光部品間の高精度な光軸合わせを可能とする光モジュールの組立方法および光モジュールの組立装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数個の光部品で構成される光学装置の組立に際しては、その装置に使用する光の波長レベルの精度で各部品間の位置合わせ(光軸合わせ)を行うことが必要であり、これまでにも種々の位置合わせ方法が提案されてきた。なかでも、光導波路回路基板上に複数個の光部品を集積させて構成される光モジュールの分野においては、光部品の側面等にその光部品が配置されるべき光導波路構造上の位置との相対位置をモニタするための位置決め用マークを予め設けておき、そのマークを観察しながら各光部品のマーク同士を位置合わせして光部品同士の光軸合わせを行ったりする、いわゆる「パッシブアライメント法」が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
このパッシブアライメント法による光軸合わせでは、例えば、平面光導波路と光素子の各々の表面に予めマークを設けておき、これらのマークの画像をカメラ等で認識し、これらのマーク同士が重なるように(パターンマッチング)位置合わせして平面光導波路と光素子との光軸調整を行う。なお、通常の光モジュール組立装置では、組立作業のためのスペース等を考慮してマークの画像認識のための光学系を適当な倍率に制限する必要があるため、そのマーク画像の認識精度は1μm程度が限界であった。
【0004】
【非特許文献1】
T.Hashimoto, et al. "Hybrid integration of spot-size converted laser diode on planar lightwave circuit platform by passive alignment technique" IEEE Photon. Technol. Lett., Vol.8, No.11, 1996
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、光モジュールの集積化に伴って、光部品同士の光軸調整には1μm以上の高い精度が必要とされるようになってきており、従来のパッシブアライメント法による光軸合わせでは充分な精度が得られなくなってきている。
【0006】
図1は、従来のパターンマッチングによる位置合わせが抱える問題点を説明するための図で、この図に示した例では、光導波路または光素子の何れかに設けられた位置合わせ用マークを画像認識し、この認識画像(取込画像)をもとに位置合わせの基準となる算出点(算出基準点)を導出する様子を示している。実際の位置合わせにおいては、光導波路と光素子のそれぞれのマークを別々に認識し、これらの認識画像に基づいて各々の算出点を設定し、コンピュータ数値制御により位置合わせが実施される。なお、実際の光部品同士の位置合わせにおいては、画像全体の数十分の1程度以下の誤差が問題とされるが、かかる微細な誤差を図面上に正確に表現することが困難であるため、画像として取り込んだ像を著しく変形させた場合を例として示した。
【0007】
図1(a)には、2つのマークを画像認識して得られる取込画像(11および12)と位置合わせの基準となる基準画像(13および14)とが図示されており、取込画像から求められる算出基準点Aと基準画像に対応して予め定められている基準点Bとが互いに重なっている理想的な位置合わせの状態が示されている。これに対して図1(b)には、取込画像に歪がある場合の位置合わせの状態が示されており、取込画像に歪があるとパターンマッチングの精度が低下し、その結果、取込画像から求まる算出基準点Aと基準点Bとの位置は一致せず位置ずれが発生することとなる。なお、これらの図中のXY座標軸は、マーキングされた光部品に固有の絶対座標軸である。
【0008】
一般に、取込画像や基準画像には画像認識時に生じる歪や基準画像作製時の誤差が含まれており、このような画像不完全性に起因して、算出基準点と基準点との間に位置ずれが生じてしまう。特に、マークの作製精度は通常1μm程度であり、取込画像には1μm程度の歪みが含まれているものと考えられ、従来のパターンマッチングによる位置合わせ方法ではこのような歪を充分に修正することは困難であり、取込画像の不完全性に起因して容易に位置ずれが発生してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、光モジュールを構成する複数個の光部品間の高精度な光軸合わせを可能とする光モジュールの組立装置および光モジュールの組立方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数の光部品で構成される光モジュールの組立方法であって、前記光部品の相互の位置決めの基準となるn(nは2以上の整数)回対称性を有する位置合わせ用マークを前記複数の光部品の各々に設ける第1のステップと、前記複数の光部品のうちの第1の光部品と第2の光部品の各々に設けられた位置合わせ用マークを互いにパターンマッチングさせる第2のステップと、当該パターンマッチングされた状態の前記第1の光部品と第2の光部品の各々に設けられた前記位置合わせ用マークを画像として認識する第3のステップと、前記第3のステップで認識された画像中に座標空間を設け、前記第1の光部品と第2の光部品との相対的位置関係を決定するための第1の基準点を算出する第4のステップと、前記第1の光部品と第2の光部品との相対的位置関係を維持しながら前記座標空間中でπ/(n−1)だけ回転させて位置合わせ用マークを再度画像として認識する第5のステップと、前記第5のステップで認識された画像を基に前記座標空間中での新たな基準点を算出する第6のステップと、前記第5および第6のステップを(n−2)回繰り返す第7のステップと、前記第および第のステップで求められたn個の基準点の重心を原点として設定する第8のステップと、前記原点を位置決めの基準として前記第1および第2の光部品同士を位置合わせする第9のステップと、を備えていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光モジュールの組立方法において、前記複数の光部品の各々には2以上の独立した位置合わせ用マークが設けられており、前記第1乃至第9のステップが前記複数の位置合わせ用マークの各々について実行されることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、複数の光部品で構成される光モジュールの組立方法であって、2回対称性を有するように配置された2つの位置合わせ用マークを前記光部品の相互の位置決めの基準として前記複数の光部品の各々に設ける第1のステップと、前記複数の光部品のうちの第1の光部品と第2の光部品の各々に設けられた2つの位置合わせ用マークを互いにパターンマッチングさせる第2のステップと、当該パターンマッチングされた状態の前記第1の光部品と第2の光部品の各々に設けられた前記位置合わせ用マークを画像として認識する第3のステップと、前記第3のステップで認識された前記第1の光部品に設けられた2つの位置合わせ用マークの認識画像の各々の中心を結んで得られる直線を基準線として設定する第4のステップと、前記第3のステップで認識された前記第2の光部品に設けられた2つの位置合わせ用マークの認識画像の一方の前記基準線に対する反転画像を認識する第5のステップと、前記第3のステップで認識された前記第2の光部品に設けられた2つの位置合わせ用マークの認識画像の他方と前記第5のステップで得られた反転画像の各々の中心とを結んで得られる直線の中心を原点として設定する第6のステップと、前記原点を位置決めの基準として前記第1および第2の光部品同士を位置合わせする第7のステップと、を備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、コンピュータを用いて複数の光部品で構成される光モジュールを組立てるためのプログラムであって、第1の光部品と第2の光部品の各々に設けられ、当該第1および第2の光部品相互の位置決めの基準となるn(nは2以上の整数)回対称性を有する位置合わせ用マークを互いにパターンマッチングさせる第1のステップと、当該パターンマッチングされた状態の前記第1の光部品と第2の光部品の各々に設けられた前記位置合わせ用マークを画像として認識する第2のステップと、前記第2のステップで認識された画像中に座標空間を設け、前記第1の光部品と第2の光部品との相対的位置関係を決定するための第1の基準点を算出する第3のステップと、前記第1の光部品と第2の光部品との相対的位置関係を維持しながら前記座標空間中でπ/(n−1)だけ回転させて位置合わせ用マークを再度画像として認識する第4のステップと、前記第4のステップで認識された画像を基に前記座標空間中での新たな基準点を算出する第5のステップと、前記第4および第5のステップを(n−2)回繰り返す第6のステップと、前記第および第のステップで求められたn個の基準点の重心を原点として設定する第7のステップと、前記原点を位置決めの基準として前記第1および第2の光部品同士を位置合わせする第8のステップと、を備えていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、コンピュータを用いて複数の光部品で構成される光モジュールを組立てるためのプログラムであって、第1の光部品と第2の光部品との相互の位置決めの基準として当該第1および第2の光部品の各々に設けられ、2回対称性を有するように配置された各々2つの位置合わせ用マークを互いにパターンマッチングさせる第1のステップと、当該パターンマッチングされた状態の前記第1の光部品と第2の光部品の各々に設けられた前記位置合わせ用マークを画像として認識する第2のステップと、前記第2のステップで認識された前記第1の光部品に設けられた2つの位置合わせ用マークの認識画像の各々の中心を結んで得られる直線を基準線として設定する第3のステップと、前記第2のステップで認識された前記第2の光部品に設けられた2つの位置合わせ用マークの認識画像の一方の前記基準線に対する反転画像を認識する第4のステップと、前記第2のステップで認識された前記第2の光部品に設けられた2つの位置合わせ用マークの認識画像の他方と前記第4のステップで得られた反転画像の各々の中心とを結んで得られる直線の中心を原点として設定する第5のステップと、前記原点を位置決めの基準として前記第1および第2の光部品同士を位置合わせする第6のステップと、を備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、光モジュールの組立装置であって、水平面内で駆動可能とされ第1の光部品を載置する光部品載置手段と、上下方向に駆動可能とされ第2の光部品を保持する光部品保持手段と、前記第1の光部品側から赤外光を入射し前記第2の光部品側から赤外光を射出させるための光源と、前記第2の光部品側に配置され前記第2の光部品側から射出される赤外光を感知して画像認識する撮像手段と、前記撮像手段により得られた画像データを基に前記第1と第2の光部品の相対位置関係を解析する演算手段とを備え、当該演算手段には請求項4または5に記載のプログラムが格納されており、前記撮像手段は、前記第1および第2の光部品の各々に予め設けられた位置合わせ用マークを画像データとして前記演算手段に送信し、前記光部品載置手段は、前記第1および第2の光部品と前記撮像手段との相対的位置関係を調節可能とされ、前記演算手段は、前記撮像手段により得られる画像データを基に位置決めの基準となる原点を設定する、ことを特徴とする。
【0016】
さらに、請求項7に記載の発明は、光モジュールの組立装置であって、水平面内で駆動可能とされ第1の光部品を載置する光部品載置手段と、上下方向に駆動可能とされ第2の光部品を保持する光部品保持手段と、前記第1の光部品に設けられた位置合わせ用マークの画像を認識する第1の撮像手段と、前記第2の光部品に設けられた位置合わせ用マークの画像を認識する第2の撮像手段と、前記第1および第2の撮像手段により得られた画像データを基に前記第1と第2の光部品の相対位置関係を解析する演算手段とを備え、当該演算手段には請求項4または5に記載のプログラムが格納されており、前記第1および第2の撮像手段は、前記第1および第2の光部品の各々に予め設けられた位置合わせ用マークを画像データとして前記演算手段に送信し、前記光部品載置手段は、前記第1および第2の光部品と前記撮像手段との相対的位置関係を調節可能とされ、前記演算手段は、前記第1および第2の撮像手段により得られる画像データを基に位置決めの基準となる原点を設定する、ことを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図2は、本発明の光モジュールの組立方法の基本的な構成を説明するためのフローチャートで、この組立方法は、少なくとも、光部品に設けられた位置合わせ用マークをカメラ等の撮像装置を用いて画像認識するステップ(S201)と、得られた認識画像から第1の基準点を求めるステップ(S202)と、光部品と撮像装置との幾何学的な相対関係を180度回転(反転)させて再度位置合わせ用マークを画像認識するステップ(S203)と、この認識画像から第2の基準点を求めるステップ(S204)と、これら第1の基準点と第2の基準点とを結ぶ直線の中心点(不動点)を原点として設定するステップ(S205)と、この原点位置を基準として光部品を位置合わせするステップ(S206)とを備えている。
【0019】
なお、ここで示した例では180度回転(反転)を1回の操作で実行するものとしたが、この反転を複数回の操作で実行することとしてもよい。この場合の「不動点」とは、各操作ごとに得られる基準点の統計上の中心(重心)とされる。
【0020】
すなわち、この方法では、先ず、光部品にn(nは2以上の整数)回対称性を有する位置合わせ用マークを予め設けて画像を認識し、この認識画像から第1の基準点を算出する。次に、光部品と撮像装置との相対的位置関係をπ/(n−1)だけ回転させて再度位置合わせ用マークを画像認識し新たな基準点を算出し、この操作を(n−2)回繰り返す。そして求められたn個の基準点の重心を原点として設定し、この原点位置を基準として光部品の位置合わせを実行する。
【0021】
ここで「重心」とは、例えば180度回転変換の場合は、この変換に伴って移される2つの基準点の中点のことであり、また、例えば90度回転変換の場合は、90度回転変換ごとに得られる基準点の重心である。
【0022】
本発明では、このようにして得られる不動点を基準として光部品の位置合わせを実行する。また、各光部品に複数の位置合わせ用マークを設け、各々のマークについてそれぞれ独立に位置合わせ処理を施すこととすれば、より正確な位置合わせを行うことが可能であることは言うまでもない。
【0023】
なお、一般に、位置合わせに用られる座標空間は、認識画像の歪や位置合わせ用マークの汚れに起因する誤差を含んだ状態で設定されるため、光部品の位置合わせではこのような微細な誤差が問題となるが、本発明の光モジュール組立方法においては、かかる誤差が相殺されるように画像変換して不動点が決定されこの不動点を基準に位置合わせが実行されるため、認識画像中の歪に影響を受けることのない正確な位置合わせが可能となる。
【0024】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、これらの実施例では、光モジュールを構成する光導波路をシリカ製のステップインデックス型コア構造を有するものとして説明するが、本発明はそのような構造の光導波路を備える光モジュールに限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
図3は、本発明により光モジュールを組立てる様子を説明するための概念図で、この図には、シリコンの光導波路基板31上に設けられた光導波路32とインジウムリンを基板とする光半導体素子33との光軸合わせのために、光半導体素子33を光導波路基板31上の適正位置に位置合わせする様子が示されており、光導波路基板31の上面と光半導体素子33の下面の各々には、位置合わせ用の長方形型の点対称(180度回転対称)のマーク(34および35)が予め設けられている。ここで、光半導体素子33とは、例えば、レーザーダイオード、半導体光アンプ、受光面の小さなフォトダイオードあるいは電界吸収素子などである。
【0026】
図4は、本発明の光モジュール組立装置の構成例を説明するための図で、図4(a)は光モジュール用基板の裏面側から赤外光を透過させて位置合わせ用マークを画像認識する方式の装置構成図であり、図4(b)は光モジュール用基板と実装される構成部品との間にCCDカメラを挿入して各々の位置合わせ用マークを個別に画像認識する方式の装置構成図である。
【0027】
これらの光モジュールの組立装置は、光導波路基板403等の光モジュール用部品を載置するためのヒータステージ402と、このヒータステージ402を微動するための微動ステージ401と、微動ステージ401を駆動するためのモータドライバ407と、光半導体素子405等の部品を保持するためのアーム404と、位置合わせに必要な画像処理等を実行する数値制御用コンピュータ406とを備えており、微動ステージ401は水平面内での移動が可能であり、アーム404は図示しない駆動部によって上下方向への移動が可能なように構成されている。
【0028】
これらの構成要素に加え、図4(a)に示した構成の装置では、微動ステージ401の内部に設けられた赤外光源409から射出する光を受光する赤外カメラ408が備えられ、図4(b)に示した構成の装置では、ヒータステージ402上に載置された光導波路基板403とアーム404に保持された光半導体素子405との間の空間に設けられたCCDカメラ410aおよび410bとが備えられている。
【0029】
図4(a)に示した構成の装置では、赤外光源409からの光は光導波路基板403と光半導体素子405とを透過し、これらに予め設けられた位置合わせ用のマークの像が赤外カメラ408によって撮像され、その画像データが数値制御用コンピュータ406へと送られる。数値制御用コンピュータ406には、本発明の光モジュール組立方法を実行するためのプログラムが格納されており、送信されてきた画像データを処理して光導波路基板403と光半導体素子405との位置合わせ用マークが互いに一致するように微動ステージ401を駆動させる信号をモータドライバ407に送信する。
【0030】
図4(b)に示した構成の装置の基本動作もこれと同様であるが、この構成の装置の場合には、光導波路基板403上の位置合わせ用マークをCCDカメラ410aで画像認識し、光半導体素子405上に設けられた位置合わせ用マークはCCDカメラ410bで認識される。これらのCCDカメラによって撮像された各々の位置合わせ用マークの画像データは数値制御用コンピュータ406に送信され、数値制御用コンピュータ406内でこれらのマークの位置を一致させるために必要な光導波路基板403の移動距離を算出して、そのデータをもとに微動ステージ401が駆動される。
【0031】
例えば、図4(a)に示した構成の光モジュール組立装置を用いて図3に示した光半導体装置と光導波路基板との位置合わせを行うには、先ず、光半導体素子33のマーク35が光導波路基板31上面のマーク34に概ね一致するように光半導体素子33と光導波路基板31との水平面内での相対位置を粗く調整した後にアーム404を用いて互いに接近させる。次に、光導波路基板31のシリコンと光半導体素子33の基板であるインジウムリンに対して透明な赤外光を光導波路基板31の下面より入射させ、光半導体素子33の上面側から射出されてくる透過像中の2つのマーク(34および35)の像を数値制御用コンピュータ406によって解析し、各マークにつき予め登録してある基準画像とパターンマッチングを実行し、微動ステージ409を用いて2つのマークの水平面内での相対距離を微調整する。
【0032】
図5は、図3および図4において、互いに対向する光導波路基板31のマーク34と光半導体素子33のマーク35のうちの何れか一方のマークに着目して位置合わせを実行する場合の、数値制御用コンピュータ406が行う処理を説明するための概念図である。なお、この図では、光半導体素子33に設けられた2つのマーク(35aおよび35b)に着目して位置合わせする場合が示されている。
【0033】
この位置合わせ工程においては、実際のマーク(35aおよび35b)の位置は予め設定された基準画像(36および37)に対する画像認識により算出され、これを算出基準点Aとする。一方、基準点Bは算出基準点Aを絶対座標(光部品を搭載する光導波路基板に固定された座標)に固定した点として定義される。
【0034】
位置合わせが理想的に実行された場合には、図5(a)に示したように、算出基準点と基準点Bとは一致することとなるが、実際の位置合わせにおいては、認識画像の歪等に起因して算出基準点Aと基準点Bの位置が一致せず、図5(b)に示すように算出基準点の位置が基準点Bの位置とずれを生じる。この場合の算出基準点をA1とする。
【0035】
これに続いて、認識画像が反転するようにカメラと光部品との相対的な位置関係を180度回転させるとともに座標変換し、再度パターンマッチングを実施すると、マークは180度回転対称に配置されているために図5(c)に示すようになる。ここで、パターンマッチングには基準となる点(原点)を必要としないことから、回転変換の不動点として、算出基準点A1と適当な点とを結びその中点を不動点とすればよい。ここでは、算出基準点Aを求めることが目的であるのでその値をA2とすると、求めるべき不動点はA1とA2の中点((A1+A2)/2)となる(図5(d))。
【0036】
このようにして求まる不動点は、認識画像の歪やマークの汚れがどのようなものであっても本来の不動点に一致する。そのため、この不動点を基準とすることにより、マークの認識画像の歪に起因するずれを相殺することができる。すなわち、以上の工程により、2つのマークの相対位置を正確に合わせることが可能となる。
【0037】
本実施例の場合には、図3に示すように、各々の位置合わせ用マークを180度回転対称としているので、面内の2点を決定することが可能となり、高さ方向以外の位置合わせが完全に行われ極めて正確な位置合わせが可能となる。実測して求めた光導波路基板と光半導体素子の位置合わせの位置ずれは0.2μm程度であり、従来方法での位置すれが0.7μm程度であるのに比較して、大幅にずれを抑制することができた。
【0038】
なお、上述の説明では基準画像が歪や汚れを有しない完全なものと仮定したが、現実には、実際のマークの画像をパソコンに取込んで、適当な算出位置を画像上で規定して基準画像としている。このため、元となるマークの画像の歪や汚れが基準画像の歪の原因ともなるが、これらの双方の画像の歪に対して統計的な平均化が行われることとなり、マーク認識上の位置ずれ抑制に対して極めて有効である。
【0039】
また、マークの対称性は180度回転対称(点対称)である必要はなく、複数回の等分割回転対称でもよい。この場合には、分割回転させるごとに求まる算出点の平均位置が統計的な不動点となる。
【0040】
図6は、マークの対称性が等分割回転対称(n回対称)である場合の処理を説明するためのフローチャートで、通常のパターンマッチングによって基準点を算出し(S601)、これを算出基準点A1として記録する(S602)。次に、パターンと算出基準点の座標変換を行い(S603)、通常のパターンマッチングにより新たな算出基準点を得る(S604)。この算出基準点をA2として記録し(S605)、算出基準点AkがAn+1(=A1)か否かを判断し(S606)、求められていない算出基準点が残されている場合(S606:no)にはステップS603〜S605を繰り返す。この操作により、n回目に得られる算出基準点はA1に一致することとなる。最後に、n個の算出基準点(A1〜An)の統計平均から不動点を算出してマーク位置を決定する(S607)。マークの対称性を180度回転対称とした上述のケースは、分割数nが2の場合に相当する。
【0041】
(実施例2)
図7は、光導波路71と光半導体素子72の位置合わせの第2の実施例を説明するための図で、位置合わせの様子を上から眺めた様子を示している。
【0042】
この図において、光半導体素子72の導波路構造73は前後の光導波路74と結合する構造になっており、図7(a)に示した位置に配置されることが求められるものとする。この位置合わせにおいては、光半導体素子72の端面を認識して光半導体素子72を図7(a)に示した位置に配置することが必要となる。
【0043】
たとえば、半導体光アンプでは、反射抑制などの観点からこのような曲がったコア形状が採用されることがある。曲がったコア形状を有する光部品については、チップの切り出し誤差のためにチップの搭載位置を補正する必要があり、この搭載位置補正は、光導波路71側のマーク75a、76aと光半導体素子72側のマーク75b、76bとの間の相対位置関係と端面までの距離で決まる。このため、画像認識の位置ずれが発生すると、図7(b)に示すように端面の位置からのずれが一方の方向に現れる。なお、この図では、画像認識と直接関係するマークのみを記した。図7(c)には、従来の位置合わせ方法で光半導体素子を位置決めした場合の様子が示されており、光軸ずれが発生していることがわかる。
【0044】
これに対し、実施例1で説明したのと同様の方法でこのずれを抑制することができるが、より簡易な方法として、光半導体素子72の端面位置を検出する際に、図7(a)に示した左側のマーク75に対して180度反転認識画像、右側のマーク76に対して通常の認識画像を用いることとすれば、光半導体素子72が回転しているように認識される。
【0045】
すなわち、この方法では、先ず、2つのマークが180度対称性(2回対称性)を有するように配置させておき、位置合わせしようとする2つの光部品の各々に設けられたこれら2つの位置決め用マークを互いにパターンマッチングさせ、このパターンマッチングされた状態での2つの光部品の各々に設けられた位置合わせ用マークを画像として認識する。次に、一方の光部品に設けられた2つの位置決め用マークの認識画像の各々の中心を結んで得られる直線を基準線として設定し、他方の光部品に設けられた2つの位置決め用マークの認識画像の一方をこの基準線に対して反転させた画像を認識し、この反転画像と2つの位置決め用マークの認識画像の他方との中心とを結んで得られる直線の中心を原点として設定する。そして、この原点を位置決め用の基準として光部品同士を位置合わせする。
【0046】
この方法によれば、マーク同士が180度回転対称の関係にあることから、マーク75、76作製時の誤差(すなわち両方のマークに含まれる誤差)を相殺して位置合わせすることができる。ここで、このような変換として、例えば、上下方向の鏡映変換を用いれば、光素子全体の変換としてみたときに2つのマークの鏡映軸が不変となるから上下方向に正確な位置あわせが可能となる。
【0047】
図8は、図7に示した位置合わせ処理をより具体的に説明するためのフローチャートで、通常のパターンマッチングによって算出点を求め(S801)、次に、同一光部品上のマーク全体を変換したときに1つ前のパターンが移される位置にあるマークについてパターンおよび算出点の座標を変換し(S802)、通常のパターンマッチングにより算出点を得る(S803)。得られたパターンが元のパターンに戻ったか否かを判断し(S804)、元のパターンに戻っていない場合(S804:no)にはステップS802〜S803を繰り返す。得られたパターンが元のパターンに戻った(S804:yes)ら、得られたデータをもとに光半導体素子と光導波路基板の位置合わせを行う(S805)。
【0048】
この方法では、位置合わせ回数が少なくて済むことに加え、統計平均処理などを行う必要がないため、通常の位置合わせ方法との整合性がよくなっている。
【0049】
なお、これまでに実施例1および実施例2で説明してきた変換は、パターンマッチングの基準画像かマークの観察画像の何れか一方に施せばよく、また、基準画像に予め変換を施しておくことにより位置合わせ工程を高速化することも可能である。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光モジュールの組立方法によれば、少なくとも、光部品に設けられた画像変換に関して不変性を有する位置合わせ用マークをカメラ等の撮像装置を用いて画像認識するステップと、得られた認識画像から第1の算出基準点を求めるステップと、光部品と撮像装置との幾何学的な相対関係を180度回転(反転)させて再度位置合わせ用マークを画像認識するステップと、この認識画像から第2の算出基準点を求めるステップと、これら第1の算出基準点と第2の算出基準点とを結ぶ直線の中心(不動点)を原点として設定するステップと、この原点を基準に光部品を位置合わせするステップとを備える構成としたので、位置合わせ用のマーク汚れや認識画像の歪に起因する位置ずれを容易に抑制することが可能となる。特に、誤差を含んだ基準画像を直接取り込んで用いる場合には極めて有効であり、光モジュールの組立て精度を著しく改善することができる。
【0051】
すなわち、本発明によれば、光モジュールを構成する複数個の光部品間の高精度な光軸合わせを可能とする光モジュールの組立方法および光モジュールの組立装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のパターンマッチングによる位置合わせが抱える問題点を説明するための図である。
【図2】本発明の光モジュールの組立方法の基本的な構成を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明により光モジュールを組立てる様子を説明するための概念図である。
【図4】本発明の光モジュールの組立装置の構成例を説明するための図で、(a)は光モジュール用基板の裏面側から赤外光を透過させてマークを画像認識する方式の装置構成図であり、(b)は光モジュール用基板と実装される構成部品との間にCCDカメラを挿入して各々のマークを画像認識する方式の装置構成図である。
【図5】互いに対向する光導波路基板のマークと光半導体素子のマークを用いて位置合わせを実行する場合の、数値制御用コンピュータが行う処理を説明するための概念図である。
【図6】マークの対称性が等分割回転対称である場合の処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】光導波路と光半導体素子の位置合わせの第2の実施例を説明するための図である。
【図8】第2の実施例での位置合わせ処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
31 光導波路基板31
32 光導波路32
33 光半導体素子33
34、35 マーク
401 微動ステージ
402 ヒータステージ
403 光導波路基板
404 アーム
405 光半導体素子
406 数値制御用コンピュータ
407 モータドライバ
408 赤外カメラ
409 赤外光源
410a、410b CCDカメラ

Claims (7)

  1. 複数の光部品で構成される光モジュールの組立方法であって、
    前記光部品の相互の位置決めの基準となるn(nは2以上の整数)回対称性を有する位置合わせ用マークを前記複数の光部品の各々に設ける第1のステップと、
    前記複数の光部品のうちの第1の光部品と第2の光部品の各々に設けられた位置合わせ用マークを互いにパターンマッチングさせる第2のステップと、
    当該パターンマッチングされた状態の前記第1の光部品と第2の光部品の各々に設けられた前記位置合わせ用マークを画像として認識する第3のステップと、
    前記第3のステップで認識された画像中に座標空間を設け、前記第1の光部品と第2の光部品との相対的位置関係を決定するための第1の基準点を算出する第4のステップと、
    前記第1の光部品と第2の光部品との相対的位置関係を維持しながら前記座標空間中でπ/(n−1)だけ回転させて位置合わせ用マークを再度画像として認識する第5のステップと、
    前記第5のステップで認識された画像を基に前記座標空間中での新たな基準点を算出する第6のステップと、
    前記第5および第6のステップを(n−2)回繰り返す第7のステップと、
    前記第および第のステップで求められたn個の基準点の重心を原点として設定する第8のステップと、
    前記原点を位置決めの基準として前記第1および第2の光部品同士を位置合わせする第9のステップと、
    を備えていることを特徴とする光モジュールの組立方法。
  2. 前記複数の光部品の各々には2以上の独立した位置合わせ用マークが設けられており、前記第1乃至第9のステップが前記複数の位置合わせ用マークの各々について実行されることを特徴とする請求項1に記載の光モジュールの組立方法。
  3. 複数の光部品で構成される光モジュールの組立方法であって、
    2回対称性を有するように配置された2つの位置合わせ用マークを前記光部品の相互の位置決めの基準として前記複数の光部品の各々に設ける第1のステップと、
    前記複数の光部品のうちの第1の光部品と第2の光部品の各々に設けられた2つの位置合わせ用マークを互いにパターンマッチングさせる第2のステップと、
    当該パターンマッチングされた状態の前記第1の光部品と第2の光部品の各々に設けられた前記位置合わせ用マークを画像として認識する第3のステップと、
    前記第3のステップで認識された前記第1の光部品に設けられた2つの位置合わせ用マークの認識画像の各々の中心を結んで得られる直線を基準線として設定する第4のステップと、
    前記第3のステップで認識された前記第2の光部品に設けられた2つの位置合わせ用マークの認識画像の一方の前記基準線に対する反転画像を認識する第5のステップと、
    前記第3のステップで認識された前記第2の光部品に設けられた2つの位置合わせ用マークの認識画像の他方と前記第5のステップで得られた反転画像の各々の中心とを結んで得られる直線の中心を原点として設定する第6のステップと、
    前記原点を位置決めの基準として前記第1および第2の光部品同士を位置合わせする第7のステップと、
    を備えていることを特徴とする光モジュールの組立方法。
  4. コンピュータを用いて複数の光部品で構成される光モジュールを組立てるためのプログラムであって、
    第1の光部品と第2の光部品の各々に設けられ、当該第1および第2の光部品相互の位置決めの基準となるn(nは2以上の整数)回対称性を有する位置合わせ用マークを互いにパターンマッチングさせる第1のステップと、
    当該パターンマッチングされた状態の前記第1の光部品と第2の光部品の各々に設けられた前記位置合わせ用マークを画像として認識する第2のステップと、
    前記第2のステップで認識された画像中に座標空間を設け、前記第1の光部品と第2の光部品との相対的位置関係を決定するための第1の基準点を算出する第3のステップと、
    前記第1の光部品と第2の光部品との相対的位置関係を維持しながら前記座標空間中でπ/(n−1)だけ回転させて位置合わせ用マークを再度画像として認識する第4のステップと、
    前記第4のステップで認識された画像を基に前記座標空間中での新たな基準点を算出する第5のステップと、
    前記第4および第5のステップを(n−2)回繰り返す第6のステップと、
    前記第および第のステップで求められたn個の基準点の重心を原点として設定する第7のステップと、
    前記原点を位置決めの基準として前記第1および第2の光部品同士を位置合わせする第8のステップと、
    を備えていることを特徴とするプログラム。
  5. コンピュータを用いて複数の光部品で構成される光モジュールを組立てるためのプログラムであって、
    第1の光部品と第2の光部品との相互の位置決めの基準として当該第1および第2の光部品の各々に設けられ、2回対称性を有するように配置された各々2つの位置合わせ用マークを互いにパターンマッチングさせる第1のステップと、
    当該パターンマッチングされた状態の前記第1の光部品と第2の光部品の各々に設けられた前記位置合わせ用マークを画像として認識する第2のステップと、
    前記第2のステップで認識された前記第1の光部品に設けられた2つの位置合わせ用マークの認識画像の各々の中心を結んで得られる直線を基準線として設定する第3のステップと、
    前記第2のステップで認識された前記第2の光部品に設けられた2つの位置合わせ用マークの認識画像の一方の前記基準線に対する反転画像を認識する第4のステップと、
    前記第2のステップで認識された前記第2の光部品に設けられた2つの位置合わせ用マークの認識画像の他方と前記第4のステップで得られた反転画像の各々の中心とを結んで得られる直線の中心を原点として設定する第5のステップと、
    前記原点を位置決めの基準として前記第1および第2の光部品同士を位置合わせする第6のステップと、
    を備えていることを特徴とするプログラム。
  6. 光モジュールの組立装置であって、
    水平面内で駆動可能とされ第1の光部品を載置する光部品載置手段と、
    上下方向に駆動可能とされ第2の光部品を保持する光部品保持手段と、
    前記第1の光部品側から赤外光を入射し前記第2の光部品側から赤外光を射出させるための光源と、
    前記第2の光部品側に配置され前記第2の光部品側から射出される赤外光を感知して画像認識する撮像手段と、
    前記撮像手段により得られた画像データを基に前記第1と第2の光部品の相対位置関係を解析する演算手段とを備え、
    当該演算手段には請求項4または5に記載のプログラムが格納されており、
    前記撮像手段は、前記第1および第2の光部品の各々に予め設けられた位置合わせ用マークを画像データとして前記演算手段に送信し、
    前記光部品載置手段は、前記第1および第2の光部品と前記撮像手段との相対的位置関係を調節可能とされ、
    前記演算手段は、前記撮像手段により得られる画像データを基に位置決めの基準となる原点を設定する、
    ことを特徴とする光モジュールの組立装置。
  7. 光モジュールの組立装置であって、
    水平面内で駆動可能とされ第1の光部品を載置する光部品載置手段と、
    上下方向に駆動可能とされ第2の光部品を保持する光部品保持手段と、
    前記第1の光部品に設けられた位置合わせ用マークの画像を認識する第1の撮像手段と、
    前記第2の光部品に設けられた位置合わせ用マークの画像を認識する第2の撮像手段と、
    前記第1および第2の撮像手段により得られた画像データを基に前記第1と第2の光部品の相対位置関係を解析する演算手段とを備え、
    当該演算手段には請求項4または5に記載のプログラムが格納されており、
    前記第1および第2の撮像手段は、前記第1および第2の光部品の各々に予め設けられた位置合わせ用マークを画像データとして前記演算手段に送信し、
    前記光部品載置手段は、前記第1および第2の光部品と前記撮像手段との相対的位置関係を調節可能とされ、
    前記演算手段は、前記第1および第2の撮像手段により得られる画像データを基に位置決めの基準となる原点を設定する、
    ことを特徴とする光モジュールの組立装置。
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