JP3901659B2 - 電磁式燃料噴射弁 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,主として内燃機関の燃料供給系に使用される電磁式燃料噴射弁に関し,特に,中空の固定コアと,その外端に連なる燃料入口筒と,固定コアに対置される可動コアを有する弁組立体と,固定コアの中空部に収容されて弁組立体を閉弁方向に付勢する弁ばねと,燃料入口筒から固定コアの中空部に挿入されて,弁ばねの固定端を支承するリテーナパイプとを備えた,電磁式燃料噴射弁の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,かゝる電磁式燃料噴射弁において,弁ばねのセット荷重の調整は,燃料入口筒へのリテーナパイプの挿入深さを加減することにより行うことが知られている。またその調整後のリテーナパイプを固定するための手段として,リテーナパイプを燃料入口筒に圧入する手段(特許文献1参照),並びに燃料入口筒の外周面にカシメ力を加えて塑性変形を付与する手段も既に知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−4013号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで,前者の手段では,燃料入口筒へのリテーナパイプの圧入深さの微妙な調節に熟練を要するので,生産性が悪い。また後者の手段では,燃料入口筒へのリテーナパイプの隙間嵌めにより,その挿入深さの調節が容易であり,弁ばねのセット荷重の調整後の燃料入口筒のカシメも比較的容易であるので,生産性が良好であるが,燃料入口筒が塑性変形可能な性質を持つ場合に限られる。したがって,燃料入口筒を,高硬度磁性材により,固定コアやヨーク等の磁路形成部材と共に一体に成形した場合には,後者の手段の適用は不向きとさていた。
【0005】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,燃料入口筒を高硬度磁性材で構成した場合でも,カシメにより,燃料入口筒にリテーナパイプを固定することを可能にして,生産性の高い電磁式燃料噴射弁を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために,本発明は,材料硬度がHRC20以上のフェライト系高硬度磁性材からなる中空の固定コアと,その外端に連なって一体に形成される燃料入口筒と,前記固定コアに対置される可動コアを有し,その可動コアに嵌合固定されたストッパ要素が前記固定コアの吸引面に当接することにより開弁限界が規定される弁組立体と,前記固定コアの中空部に収容されて前記弁組立体を閉弁方向に付勢する弁ばねと,前記燃料入口筒から前記固定コアの中空部に挿入されて,前記弁ばねの固定端を支承するリテーナパイプとを備えた,電磁式燃料噴射弁において,前記燃料入口筒と前記固定コアとの間で前記リテーナパイプと対向する部分に縮径部を形成すると共にその縮径部を局部加熱することにより前記縮径部に高硬度領域と硬度がHRC20以下の軟化領域との境界を形成し,この燃料入口筒の軟化領域をリテーナパイプに向けて部分的にカシメ加工することにより燃料入口筒にリテーナパイプを固定して,前記弁ばねのセット荷重を決定するようにしたことを第1の特徴とする。
【0007】
この第1の特徴によれば,燃料入口筒は高硬度磁性材製であるにも拘らず,上記縮径部の軟化領域にはカシメ加工が可能となる。したがって,燃料入口筒へのリテーナパイプ隙間嵌めにより,その挿入深さの調節を容易にして,弁ばねのセット荷重を容易に調整することを可能にすると共に,その調整後は,上記縮径部の軟化領域をカシメることにより,燃料入口筒にリテーナパイプを固定することができ,生産性の向上を図ることができる。しかも,前記軟化領域の硬度をHRC20以下としたことにより,前記軟化領域に略50%以上の絞り度を付与することができて,カシメによる燃料入口筒へのリテーナパイプの固定を容易且つ確実にすることができる。
【0008】
また本発明は,第1特徴に加えて,前記フェライト系の高硬度磁性材が,Crを10〜20wt%,Siを0.1wt%,Al及びNiの少なくとも一方を1wt%以上,残部としてフェライト系Fe,Mn,C,P,Sを含み,且つAl及びNiの合計を1.15〜6wt%とした合金であることを第の特徴とする。
【0009】
この第の特徴によれば,磁気特性が良好で,しかも表面硬化処理を施さずとも硬度がHRC20〜40と高く,耐摩耗性に優れた磁路形成部材を,燃料入口筒と共に安価に得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の実施例に基づいて以下に説明する。
【0011】
図1は本発明の実施例に係る内燃機関用電磁式燃料噴射弁の縦断面図,図2は図1の2−2線に沿う断面図,図3は上記電磁式燃料噴射弁における燃料入口筒の軟化領域の硬度及び絞り度とカシメ結合の良否との関係を示す線図,図4は同燃料燃料入口筒の高硬度領域及び軟化領域の境界周辺部の顕微鏡組織図である。
【0012】
先ず,図1において,内燃機関用電磁式燃料噴射弁Iの弁ハウジング2は,前端に弁座8を有する円筒状の弁座部材3と,この弁座部材3の後端部に同軸に結合される磁性筒体4と,この磁性筒体4の後端に同軸に結合される非磁性筒体6とで構成される。
【0013】
弁座部材3は,その外周面から環状肩部3bを存して磁性筒体4側に突出する連結筒部3aを後端部に有しており,この連結筒部3aを磁性筒体4の前端部内周面に圧入して,磁性筒体4の前端面を環状肩部3bに当接させることにより,弁座部材3及び磁性筒体4は互いに同軸且つ液密に結合される。磁性筒体4及び非磁性筒体6は,対向端面を突き合わせて全周に亙りレーザビーム溶接することにより互いに同軸且つ液密に結合される。
【0014】
弁座部材3は,その前端面に開口する弁孔7と,この弁孔7の内端に連なる円錐状の弁座8と,この弁座8の大径部に連なる円筒状のガイド孔9とを備えている。弁座部材3の前端面には,上記弁孔7と連通する複数の燃料噴孔11を有する鋼板製のインジェクタプレート10が液密に全周溶接される。
【0015】
非磁性筒体6の内周面には,その後端側から中空円筒状の固定コア5が液密に圧入固定される。その際,非磁性筒体6の前端部には,固定コア5と嵌合しない部分が残され,その部分から弁座部材3に至る弁ハウジング2内に弁組立体Vが収容される。
【0016】
弁組立体Vは,前記弁座8と協働して弁孔7を開閉する半球状の弁部16及びそれを支持する弁杆部17からなる弁体18と,弁杆部17に連結され,磁性筒体4から非磁性筒体6に跨がって,それらに挿入されて固定コア5に同軸で対置される可動コア12とからなっている。弁杆部17は,前記ガイド孔9より小径に形成されており,その外周には,半径方向外方に突出して,前記ガイド孔9の内周面に摺動可能に支承される前後一対のジャーナル部17a,17aが一体に形成される。その際,両ジャーナル部17a,17aは,両者の軸方向間隔を極力あけて配置される。
【0017】
弁組立体Vには,可動コア12の後端面から始まり半球状弁部16の球面中心Oを超えて行き止まりとなる縦孔19と,この縦孔19を,可動コア12外周面に連通する複数の第1横孔20aと,同縦孔19を両ジャーナル部17a,17a間の弁杆部17外周面に連通する複数の第2横孔20bと,同縦孔19を前側のジャーナル部17aより弁部18寄りで弁杆部17外周に連通する複数の第3横孔20cとが設けられる。その際,第3横孔20cは弁部18の球面中心Oよりも前寄りに配置されることが望ましく,また前側のジャーナル部17aは,弁部16の球面中心Oに極力近接して配置することが望ましい。
【0018】
縦孔19の途中には,固定コア5側を向いた環状のばね座24が形成されている。
【0019】
固定コア5は,可動コア12の縦孔19と連通する中空部21を有し,この中空部21に内部が連続する燃料入口筒26が固定コア5の後端に一体に連設される。燃料入口筒26は,固定コア5の後端に連なる縮径部26aと,それに続く拡径部26bとからなっており,その縮径部26aから中空部21に亙り挿入,固定されるリテーナパイプ23と前記ばね座24との間に可動コア12を弁体18の閉弁側に付勢する弁ばね22が縮設される。その際,リテーナパイプ23の中空部21への挿入深さにより弁ばね22のセット荷重が調整される。そのセット荷重の調整については,後で詳述する。
【0020】
燃料入口筒26の拡径部26bには燃料フィルタ27が装着される。
【0021】
弁組立体Vにおいて,可動コア12には,固定コア5の吸引面5aと対向する吸引面12aに嵌合凹部13が形成され,この嵌合凹部13に,前記弁ばね22を囲繞するカラー状のストッパ要素14が圧入により固定され,又は嵌合後,溶接もしくはカシメにより固定される。ストッパ要素14は非磁性材料,例えばJIS SUS304材で構成される。
【0022】
上記ストッパ要素14は可動コア12の吸引面12aから突出していて,通常,弁体18の開弁ストロークに相当する間隙sを存して固定コア5の吸引面5aと対置される。ストッパ要素14の吸引面12aから突出量gは,コイル30の励磁により可動コア12が固定コア5に吸引されて,可動コア12のストッパ要素14が固定コア5の吸引面5aに当接したとき,両コア5,12の吸引面5a,12a間に形成されるエアギャップに相当する。
【0023】
弁ハウジング2の外周には,固定コア5及び可動コア12に対応してコイル組立体28が嵌装される。このコイル組立体28は,磁性筒体4の後端部から非磁性筒体6全体にかけてそれらの外周面に嵌合するボビン29と,これに巻装されるコイル30とからなっており,このコイル組立体28を囲繞するコイルハウジング31の前端が磁性筒体4の外周面に溶接され,その後端には,固定コア5の後端部外周からフランジ状に突出するヨーク5bの外周面に溶接される。コイルハウジング31は円筒状をなし,且つ一側に軸方向に延びるスリット31aが形成されている。
【0024】
上記コイルハウジング31,コイル組立体28,固定コア5及び燃料入口筒26の前半部は,射出成形による合成樹脂製の被覆体32に埋封される。その際コイルハウジング31内への被覆体32の充填はスリット31aを通して行われる。また被覆体32の中間部には,前記コイル30に連なる接続端子33を備えたカプラ34が一体に連設される。
【0025】
前記燃料入口筒26は,固定コア5及びヨーク5bと共にフェライト系の高硬度磁性材により一体に形成され,具体的には次のような組成の合金を切削することにより形成される。
【0026】
Cr・・・10〜20wt%
Si・・・0.1wt%
Al及びNi・・・両方を含むと共に,それらの少なくとも一方が1wt%以上,且つ両方の合計が1.15〜6wt%
残部・・・フェライト系Fe,不純物のMn,C,P,S
而して,上記合金中,特にAl及びNiの合計が1.15〜6wt%であることが固定コア5及びヨーク5bの耐摩耗性,磁力及び応答性の向上に大きく関与する。即ち,Al及びNiは,それらの合計含有率の略95%が析出物となり,それが固定コア5及びヨーク5bの硬度,磁束密度及び体積抵抗に大きな影響を与えるのであり,硬度は耐摩耗性を得る上で大きいことが望ましく,磁束密度は磁力を強化する上で大きいことが望ましく,体積抵抗は応答性を高める上で小さいことが望ましい。
【0027】
Al及びNiの合計含有率が1.15〜6wt%である限り,合金の硬度はHRC20〜40である。この範囲の硬度は,合金の切削加工後,メッキ等の特別な耐摩耗処理を施さずとも,固定コア5に充分な耐摩耗性を付与するに足るものである。したがって,固定コア5は特別な耐摩耗処理を必要としない。
【0028】
またAl及びNiの合計含有率が6wt%を超えると,固定コア5及びヨーク5bの磁束密度が低下して,充分な磁力が得られなくなるのみならず,体積抵抗の上昇により磁束の流れに遅れが生じ,弁組立体Vの応答性が低下してしまう。
【0029】
したがって,Al及びNiの合計含有率を1.15〜6wt%としたことにより,固定コア5及びヨーク5bの耐摩耗性及び磁力,並びに弁組立体Vの応答性を実用上,満足させることができる。
【0030】
尚,前記合金中のCr 10〜20wt%,Si 0.1wt%,残部 フェライト系Fe,不純物のMn,C,P,Sは,従来のコアに一般的に含有されるものである。
【0031】
さて,弁ばね22のセット荷重の調整要領と,燃料入口筒26へのリテーナパイプ23の固定構造について,図1及び図2を参照しながら説明する。
【0032】
先ず,燃料入口筒26の縮径部26aから固定コア5の中空部21にリテーナパイプ23が隙間嵌めにより挿入され,その挿入深さを加減することにより,弁ばね22のセット荷重は調整される。その調整後は,縮径部26aを半径方向内方へカシメることにより,料入口筒26にリテーナパイプ23を固定するのであるが,燃料入口筒26は,前記高硬度磁性材製であるから,そのまゝでカシメると,カシメ部に亀裂が生じて,カシメ不良となる。
【0033】
そこで,予め縮径部26aの,リテーナパイプ23と対向する部分には局部加熱により軟化領域Aが形成される。そして,図2に示すように,合成樹脂製の被覆体32に形成された,その外周面から縮径部26a外周面に達する同軸一対の工具孔40,40にカシメ工具T,Tを挿入し,これらカシメ工具T,Tにカシメ力を加えて縮径部26aを半径方向内方へカシメれば,軟化領域Aがリテーナパイプ23と共に無理なく塑性変形して,料入口筒26にリテーナパイプ23を固定することができる。
【0034】
かくして,弁ばね22のセット荷重の調整を特別な熟練を要することなく,容易に行うことができると共に,その調整後は,カシメにより,高硬度磁性材製の燃料入口筒26にリテーナパイプ23を固定することができ,生産性の向上を図ることができる。
【0035】
この場合,軟化領域Aの硬度及び絞り度と,カシメ結合の良否との関係について調べてみると,図3の結果を得た。即ち,軟化領域Aの硬度がHRC20以下であれば,絞り度50%以上を得て,カシメ結合を確実に行うことができるが,その硬度がHRC20を上回ると,カシメ力により軟化領域Aに亀裂が発生してしまい,結合不良となる。したがって,良好なカシメ結合を得るために,軟化領域Aの硬度はHRC20以下とすることを要する。
【0036】
また軟化領域Aを形成する際,高周波加熱又はレーザビーム加熱が適当である。高周波加熱又はレーザビーム加熱によれば,図4に示すように,高硬度磁性材の本来の高硬度領域と軟化領域Aとの境界を明確にすることができる。したがってカシメ加工を行う所定箇所のみを軟化領域Aに形成して,塑性加工箇所以外の部分の本来の高硬度磁性材の特性が損なわれるのを防ぐことができる。
【0037】
こうして構成された電磁式燃料噴射弁Iにおいて,コイル30を通電により励磁すると,それにより生ずる磁束が固定コア5,コイルハウジング31,磁性筒体4及び可動コア12を順次走り,その磁力により弁組立体Vの可動コア12が弁ばね22のセット荷重に抗して固定コア5に吸引され,弁体18が弁座8から離座するので,弁孔7が開放され,弁座部材3内の高圧燃料が弁孔7を出て,燃料噴孔11からエンジンの吸気弁に向かって噴射される。
【0038】
このとき,弁組立体Vの可動コア12に嵌合固定されたストッパ要素14が固定コア5の吸引面5aに当接することにより,弁体18の開弁限界が規定され,可動コア12の吸引面12aは,エアギャップgを存して固定コア5の吸引面5aと対向し,固定コア5との直接接触が回避される。特にストッパ要素14の,可動コア12の吸引面12aからの突出量の寸法管理により,上記エアギャップgを精密且つ容易に得ることができ,ストッパ要素14が非磁性であることゝ相俟って,コイル30の消磁時の両コア5,12間の残留磁気は速やかに消失して,弁体18の閉弁応答性を高めることができる。
【0039】
弁組立体Vは,その開閉動作中,弁杆部17上の前後一対のジャーナル部17a,17aが弁座部材3の内周面に摺動することにより,常に倒れのない適正な姿勢に保持されるので,燃料噴射特性の安定化を図ることができる。
【0040】
また弁組立体Vの外周面には,縦孔19に連通する第1〜第3横孔20a〜20cが開口しているから,縦孔19流入した燃料は,第1〜第3横孔20a〜20cを通して,ジャーナル部17a,17aの摺動面,並びに可動コア12及び磁性筒体4間の間隙に供給され,ジャーナル部17a,17a摺動面の潤滑は勿論,可動コア12及び磁性筒体4の冷却を効果的に行うことができ,弁組立体Vの応答性及び耐摩耗性の向上を図ることができる。
【0041】
しかも固定コア5は,前述のようなフェライト系の高硬度磁性材製であり,それ自体で良好な磁気特性と高い耐摩耗性を発揮することができるので,可動コア12の耐摩耗性と弁組立体Vの応答性の向上に寄与し,燃料噴射特性を長期に亙り安定させることが可能となる。そしてフェライト系の高硬度磁性材製の固定コア5には,特別な耐摩耗処理を施す必要がないから,製造工数が削減され,高硬度のヨーク5b付き固定コア5を,燃料入口筒26と共に安価に得ることができる。
【0042】
また可動コア12を横切る第1横孔20aは,コイル30の励,消磁時,可動コア12に渦電流が生ずることを抑え,渦電流に起因する可動コア12の加熱を防ぐことができる。
【0043】
さらに半球状の弁部16の球面近くまで延びる深い縦孔19は,第1〜第3横孔20a〜20cと共に,燃料通路の役目を果す他に,弁組立体Vの贅肉を除去する役目をも果たし,弁組立体Vの軽量化,延いては応答性の向上に寄与する。
【0044】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【0045】
【発明の効果】
以上のように本発明の第1の特徴によれば,材料硬度がHRC20以上のフェライト系高硬度磁性材からなる中空の固定コアと,その外端に連なって一体に形成される燃料入口筒と,前記固定コアに対置される可動コアを有し,その可動コアに嵌合固定されたストッパ要素が前記固定コアの吸引面に当接することにより開弁限界が規定される弁組立体と,前記固定コアの中空部に収容されて前記弁組立体を閉弁方向に付勢する弁ばねと,前記燃料入口筒から前記固定コアの中空部に挿入されて,前記弁ばねの固定端を支承するリテーナパイプとを備えた,電磁式燃料噴射弁において,前記燃料入口筒と前記固定コアとの間で前記リテーナパイプと対向する部分に縮径部を形成すると共にその縮径部を局部加熱することにより前記縮径部に高硬度領域と硬度がHRC20以下の軟化領域との境界を形成し,この燃料入口筒の軟化領域をリテーナパイプに向けて部分的にカシメ加工することにより燃料入口筒にリテーナパイプを固定して,前記弁ばねのセット荷重を決定するようにしたので,燃料入口筒は高硬度磁性材製であるにも拘らず,上記縮径部の軟化領域にはカシメ加工が可能となる。したがって燃料入口筒へのリテーナパイプに隙間嵌めにより,その挿入深さの調節を容易にして,弁ばねのセット荷重を容易に調整することを可能にすると共に,その調整後は,上記縮径部の軟化領域をカシメることにより,燃料入口筒にリテーナパイプを固定することができ,生産性の向上を図ることができる。しかも,前記軟化領域の硬度をHRC20以下としたことにより,前記軟化領域に略50%以上の絞り度を付与することができて,カシメによる燃料入口筒へのリテーナパイプの固定を容易且つ確実にすることができる。
【0046】
また本発明の第の特徴によれば,第1特徴に加えて,燃料入口筒と,それに連なる磁路形成部材とを高硬度磁性材により一体に成形し,その高硬度磁性材が,Crを10〜20wt%,Siを0.1wt%,Al及びNiの少なくとも一方を1wt%以上,残部としてフェライト系Fe,Mn,C,P,Sを含み,且つAl及びNiの合計を1.15〜6wt%とした合金であるので,磁気特性が良好で,しかも表面硬化処理を施さずとも硬度がHRC20〜40と高く,耐摩耗性に優れた磁路形成部材を,燃料入口筒と共に安価に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例に係る内燃機関用電磁式燃料噴射弁の縦断面図
【図2】 図1の2−2線に沿う断面
【図3】 上記電磁式燃料噴射弁における燃料入口筒の軟化領域の硬度及び絞り度とカシメ結合の良否との関係を示す線図
【図4】 同燃料入口筒の高硬度領域及び軟化領域の境界周辺部の顕微鏡組織図
【符号の説明】
A・・・・・軟化領域
I・・・・・電磁式燃料噴射弁
2・・・・・弁ハウジング
5,5a・・・磁路形成部材(固定コア,ヨーク)
22・・・・弁ばね
23・・・・リテーナパイプ
26・・・・燃料入口筒

Claims (2)

  1. 材料硬度がHRC20以上のフェライト系高硬度磁性材からなる中空の固定コア(5)と,その外端に連なって一体に形成される燃料入口筒(26)と,前記固定コア(5)に対置される可動コア(12)を有し,その可動コア(12)に嵌合固定されたストッパ要素(14)が前記固定コア(5)の吸引面(5a)に当接することにより開弁限界が規定される弁組立体(V)と,前記固定コア(5)の中空部(21)に収容されて前記弁組立体(V)を閉弁方向に付勢する弁ばね(22)と,前記燃料入口筒(26)から前記固定コア(5)の中空部(21)に挿入されて,前記弁ばね(22)の固定端を支承するリテーナパイプ(23)とを備えた,電磁式燃料噴射弁において,
    前記燃料入口筒(26)と前記固定コア(5)との間で前記リテーナパイプ(23)と対向する部分に縮径部(26a)を形成すると共にその縮径部(26a)を局部加熱することにより前記縮径部(26a)に高硬度領域と硬度がHRC20以下の軟化領域(A)との境界を形成し,この燃料入口筒(26)の軟化領域(A)をリテーナパイプ(23)に向けて部分的にカシメ加工することにより燃料入口筒(26)にリテーナパイプ(23)を固定して,前記弁ばね(22)のセット荷重を決定するようにしたことを特徴とする,電磁式燃料噴射弁。
  2. 請求項1記載の電磁式燃料噴射弁において,
    前記フェライト系の高硬度磁性材が,Crを10〜20wt%,Siを0.1wt%,Al及びNiの少なくとも一方を1wt%以上,残部としてフェライト系Fe,Mn,C,P,Sを含み,且つAl及びNiの合計を1.15〜6wt%とした合金であることを特徴とする,電磁式燃料噴射弁。
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