JP7167666B2 - 燃料噴射弁 - Google Patents

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Description

この明細書における開示は、燃料を噴射する燃料噴射弁に関する。
特許文献1に記載の燃料噴射弁は、燃料を噴射する噴孔が形成された金属製の噴孔ボデーと、噴孔ボデーに溶接(溶融接合)されて噴孔ボデーを保持する金属製のホルダとを備える。ホルダは、噴孔ボデーが挿入される挿入口を有した円筒形状であり、噴孔ボデーのうち挿入口から挿入される部分と溶接されている。
特許第4491474号公報
さて、噴孔ボデーの母材には、耐食性を持たせるためにクロムが含有されている。また、母材に含まれる炭素が多いと、噴孔ボデーのうち溶融部の近傍箇所にクロム炭化物が析出する。この析出に起因して、噴孔ボデーのうち溶融部の近傍箇所には、クロムが欠乏した熱影響部が生じる。そして、近年の内燃機関では、排ガスの一部を吸気へ還流させる量(EGR量)を増大させる傾向にあるため、噴孔ボデーに付着する凝縮水が強酸性となる傾向にある。そうすると、強酸性の凝縮水によって熱影響部が腐食し、噴孔ボデーの強度低下が懸念されるようになる。
開示される1つの目的は、噴孔ボデーの腐食抑制を図った燃料噴射弁を提供することである。
上記目的を達成するため、開示された第1態様は、
燃料を噴射する噴孔(11a)が形成された金属製の噴孔ボデー(11)と、
噴孔ボデーが挿入される挿入口(120a)を有した円筒形状であり、噴孔ボデーのうち挿入口の内部に位置する部分と溶融接合された金属製のホルダ(12)と、
を備え、
噴孔ボデーは、
溶融接合により形成されたボデー側溶融部(11x)と、
ボデー側溶融部に対して挿入口の側に位置し、溶融接合の熱で組織変化した熱影響部(11z)と、
熱影響部に対してボデー側溶融部の反対側に位置し、ホルダの円筒中心線周りに環状に延びてホルダに密着するシール部(111、112、113)と、
を有する燃料噴射弁とされる。
これによれば、噴孔ボデーは、熱影響部に対してボデー側溶融部の反対側に位置する箇所に、環状に延びるシール部を有する。そのため、噴孔ボデーとホルダとの間に浸入した凝縮水が熱影響部に到達することを抑制できる。よって、噴孔ボデーの熱影響部が腐食することを抑制できる。
開示された第2態様は、
燃料を噴射する噴孔(11a)が形成された金属製の噴孔ボデー(11)と、
噴孔ボデーが挿入される挿入口(120a)を有した円筒形状であり、噴孔ボデーのうち挿入口の内部に位置する部分と溶融接合された金属製のホルダ(12)と、
噴孔ボデーとホルダとの間に配置され、ホルダの円筒中心線周りに環状に延び、噴孔ボデーおよびホルダに密着してシールするシール部材(80、90)と、
を備え、
噴孔ボデーは、
溶融接合により形成されたボデー側溶融部(11x)と、
ボデー側溶融部に対して挿入口の側に位置し、溶融接合の熱で組織変化した熱影響部(11z)と、
を有し、
シール部材は、熱影響部に対してボデー側溶融部の反対側に配置されている燃料噴射弁とされる。
これによれば、噴孔ボデーとホルダの間のうち、熱影響部に対してボデー側溶融部の反対側に位置する箇所に、環状に延びるシール部材が配置される。そのため、噴孔ボデーとホルダとの間に浸入した凝縮水が熱影響部に到達することを抑制できる。よって、噴孔ボデーの熱影響部が腐食することを抑制できる。
尚、上記括弧内の参照番号は、後述する実施形態における具体的な構成との対応関係の
一例を示すものにすぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
第1実施形態に係る燃料噴射弁の断面図。 図1に示す噴孔部分の拡大図。 図1に示す可動コア部分の拡大図。 第1実施形態に係る燃料噴射弁の作動を示す模式図であり、図中の(a)は閉弁状態を示し、(b)は磁気吸引力で移動する可動コアが弁体に衝突した状態を示し、(c)は磁気吸引力でさらに移動する可動コアがガイド部材に衝突した状態を示す。 噴孔ボデーのクロム濃度分布を示す図。 ボデー側溶融部からの離間距離と溶接時の温度推移との関係を示す図。 図6に示す離間距離を、ボデー側溶融部と熱影響部との位置関係で示す図。 第1実施形態に係る燃料噴射弁の製造手順を示すフローチャート。 図8に示すリフト量調整に用いる圧延ロールおよび計測機器を示す図。 第2実施形態に係る燃料噴射弁の断面図。 第2実施形態の比較例に係る燃料噴射弁の断面図。 第3実施形態に係る燃料噴射弁の断面図。 第4実施形態に係る燃料噴射弁の断面図。 第5実施形態に係る燃料噴射弁の断面図。 第6実施形態に係る燃料噴射弁の断面図。 第7実施形態に係る燃料噴射弁の断面図。
以下、本開示の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。そして、複数の実施形態及び変形例に記述された構成同士の明示されていない組み合わせも、以下の説明によって開示されているものとする。
(第1実施形態)
図1に示す燃料噴射弁1は、車両に搭載された点火着火式内燃機関のシリンダヘッドまたはシリンダブロックに取り付けられている。車載燃料タンクに貯留されているガソリン燃料は、図示しない燃料ポンプにより加圧されて燃料噴射弁1へ供給され、供給された高圧燃料は、燃料噴射弁1に形成された噴孔11aから内燃機関の燃焼室へ直接噴射される。
燃料噴射弁1の外周面には、シール材70が取り付けられている。シール材70は、燃料噴射弁1とシリンダヘッドとの隙間をシールする。これにより、燃焼室内のガスや凝縮水が、上記隙間を通じて燃焼室の外部へ漏れ出ることを防止する。
燃料噴射弁1は、噴孔ボデー11、ホルダ12、固定コア13、非磁性部材14、コイル17、支持部材18、第1バネ部材SP1、第2バネ部材SP2、ニードル20、可動コア30、スリーブ40、カップ50およびガイド部材60等を備える。噴孔ボデー11、ホルダ12、固定コア13、支持部材18、ニードル20、可動コア30、スリーブ40、カップ50およびガイド部材60は金属製である。
図2に示すように、噴孔ボデー11は、燃料を噴射する複数の噴孔11aを有する。噴孔ボデー11の内部にはニードル20が位置しており、ニードル20の外周面と噴孔ボデー11の内周面との間で、高圧燃料を噴孔11aへ流通させる流路11bが形成されている。噴孔ボデー11の内周面には、ニードル20に形成された弁体側シート20sが離着座するボデー側シート11sが形成されている。弁体側シート20sおよびボデー側シート11sは、ニードル20の軸線C周りに環状に延びる形状である。ニードル20がボデー側シート11sに離着座することで、流路11bが開閉されて噴孔11aが開閉されることとなる。
ホルダ12および非磁性部材14は円筒形状である。ホルダ12のうち、ホルダ12に対して噴孔11aへ近づく方向の側(噴孔側)の円筒端部であるホルダ端部120は、噴孔ボデー11の円筒端部であるボデー端部110に溶融接合(溶接)して固定されている。ホルダ12のうち、ホルダ12に対して噴孔11aから離れる方向の側(反噴孔側)の円筒端部は、非磁性部材14の円筒端部に溶接して固定されている。非磁性部材14のうち反噴孔側の円筒端部は、固定コア13に溶接して固定されている。
なお、噴孔ボデー11の材質にはマルテンサイト系のステンレスが用いられ、ホルダ12の材質にはフェライト系のステンレスが用いられている。噴孔ボデー11には、ホルダ12より高硬度の材質が用いられている。噴孔ボデー11の母材に含まれる炭素濃度は、ホルダ12の母材に含まれる炭素濃度よりも高い。ホルダ12の母材に含まれる炭素濃度は0.02%未満であり、噴孔ボデー11の母材に含まれる炭素濃度は0.4%以上である。
ナット部材15は、ホルダ12の係止部12cに係止された状態で、固定コア13のネジ部13Nに締結されている。この締結により生じる軸力は、ナット部材15、ホルダ12、非磁性部材14および固定コア13に対し、軸線C方向(図1の上下方向)に互いに押し付け合う面圧を生じさせている。なお、このような面圧をネジ締結で生じさせることに替えて、圧入で生じさせてもよい。
ホルダ12は、磁性材で形成され、燃料を噴孔11aへ流通させる流路12bを内部に有する。流路12bには、ニードル20が軸線C方向に移動可能な状態で収容されている。ホルダ12および非磁性部材14は、燃料が充填される可動室12aを内部に形成する。可動室12aには、ニードル20、可動コア30、第2バネ部材SP2、スリーブ40およびカップ50を組み付けた組付体である可動部Mが、移動可能な状態で収容されている。
流路12bは、可動室12aの下流側に連通し、軸線C方向に延びる形状である。流路12bおよび可動室12aの中心線は、ホルダ12の円筒中心線(軸線C)と一致する。ニードル20のうちの噴孔側部分は、噴孔ボデー11の内壁面11c(図2参照)に摺動支持され、ニードル20のうちの反噴孔側部分は、カップ50の内壁面51b(図3参照)に摺動支持されている。このようにニードル20の上流端部と下流端部の2箇所が摺動支持されることにより、ニードル20の径方向への移動が制限され、ホルダ12の軸線Cに対するニードル20の傾倒が制限される。
ニードル20は、噴孔11aを開閉する「弁体」に相当し、ステンレス等の磁性材で形成され、軸線C方向に延びる形状である。ニードル20の下流側端面には、先述した弁体側シート20sが形成されている。ニードル20が軸線C方向の下流側へ移動(閉弁作動)すると、弁体側シート20sがボデー側シート11sに着座して、流路11bおよび噴孔11aが閉弁される。ニードル20が軸線C方向の上流側へ移動(開弁作動)すると、弁体側シート20sがボデー側シート11sから離座して、流路11bおよび噴孔11aが開弁される。
図3に示すように、ニードル20は、燃料を噴孔11aへ流通させる内部通路20aおよび横穴20bを有する。内部通路20aは、ニードル20の軸線C方向に延びる形状である。内部通路20aの上流端には流入口が形成され、内部通路20aの下流端には横穴20bが接続されている。横穴20bは、軸線C方向に対して交差する方向に延び、可動室12aと連通する。
図1に示す如く、ニードル20は、弁体側シート20sの反対側(上端側)から下端側へ向けて順に、当接部21、コア摺動部22、圧入部23および噴孔側支持部24を有する。当接部21は、カップ50の閉弁力伝達当接面52cに当接する閉弁時弁体当接面21bを有する。当接部21にはカップ50が摺動可能な状態で組み付けられ、当接部21の外周面はカップ50の内周面と摺動する。コア摺動部22には可動コア30が摺動可能な状態で組み付けられ、コア摺動部22の外周面は可動コア30の内周面と摺動する。圧入部23にはスリーブ40が圧入固定されている。噴孔側支持部24は、噴孔ボデー11の内壁面11cに摺動支持される。
カップ50は、円板形状の円板部52および円筒形状の円筒部51を有する。円板部52は、軸線C方向に貫通する貫通穴52aを有する。円板部52の反噴孔側の面は、第1バネ部材SP1と当接するバネ当接面52bとして機能する。円板部52の噴孔側の面は、ニードル20と当接して第1弾性力(閉弁弾性力)を伝達する閉弁力伝達当接面52cとして機能する。円板部52は、第1バネ部材SP1とニードル20に当接して第1弾性力をニードル20へ伝達する「弁体伝達部」として機能する。円筒部51は、円板部52の外周端から噴孔側へ延びる円筒形状である。円筒部51の噴孔側端面は、可動コア30と当接するコア当接端面51aとして機能する。円筒部51の内壁面51bは、ニードル20の当接部21の外周面と摺動する。
固定コア13は、ステンレス等の磁性材で形成され、燃料を噴孔11aへ流通させる流路13aを内部に有する。流路13aは、ニードル20の内部に形成されている内部通路20a(図3参照)および可動室12aの上流側に連通し、軸線C方向に延びる形状である。流路13aには、ガイド部材60、第1バネ部材SP1および支持部材18が収容されている。
支持部材18は円筒形状であり、固定コア13の内壁面に圧入固定されている。第1バネ部材SP1は、支持部材18の下流側に配置されたコイルスプリングであり、軸線C方向に弾性変形する。第1バネ部材SP1の上流側端面は支持部材18に支持され、第1バネ部材SP1の下流側端面はカップ50に支持されている。第1バネ部材SP1の弾性変形により生じた力(第1弾性力)により、カップ50は下流側に付勢される。支持部材18の軸線C方向における圧入量を調整することで、カップ50を付勢する弾性力の大きさ(第1セット荷重)が調整されている。
ガイド部材60は、ステンレス等の磁性材で形成された円筒形状であり、固定コア13に形成された拡径部13cに圧入固定されている。拡径部13cは、流路13aを径方向に拡大した形状である。ガイド部材60は、円板形状の円板部62および円筒形状の円筒部61を有する。円板部62は、軸線C方向に貫通する貫通穴62aを有する。円板部62の反噴孔側の面は、拡径部13cの内壁面に当接する。円筒部61は、円板部62の外周端から噴孔側へ延びる円筒形状である。円筒部61の噴孔側端面は、可動コア30と当接するストッパ当接端面61aとして機能する。円筒部61の内壁面は、カップ50に係る円筒部51の外周面51dと摺動する摺動面61bを形成する。
要するに、ガイド部材60は、軸線C方向に移動するカップ50の外周面を摺動させるガイド機能と、軸線C方向に移動する可動コア30に当接して可動コア30の反噴孔側への移動を規制するストッパ機能と、を有する。つまりガイド部材60は、可動コア30に当接して、可動コア30の噴孔11aから離れる方向への移動を規制する「ストッパ部材」として機能する。
固定コア13の外周面には樹脂部材16が設けられている。樹脂部材16はコネクタハウジング16aを有し、コネクタハウジング16aの内部には端子16bが収容されている。端子16bはコイル17と電気接続されている。コネクタハウジング16aには、図示しない外部コネクタが接続され、端子16bを通じてコイル17へ電力が供給される。コイル17は、電気絶縁性を有するボビン17aに巻き回されて円筒形状をなし、固定コア13、非磁性部材14および可動コア30の径方向外側に配置されている。固定コア13、ナット部材15、ホルダ12および可動コア30は、コイル17への電力供給(通電)に伴い生じる磁束を流す磁気回路を形成する(図3中の点線矢印参照)。
可動コア30は、固定コア13に対して噴孔側に配置され、軸線C方向に移動可能な状態で可動室12aに収容されている。可動コア30はアウタコア31およびインナコア32を有する。アウタコア31は、ステンレス等の磁性材で形成された円筒形状であり、インナコア32は、ステンレス等の非磁性材で形成された円筒形状である。アウタコア31は、インナコア32の外周面に圧入固定されている。
インナコア32の円筒内部にはニードル20が挿入配置されている。インナコア32は、ニードル20に対して軸線Cに摺動可能な状態でニードル20に組み付けられている。インナコア32の内周面とニードル20の外周面との隙間(インナ隙間)は、アウタコア31の外周面とホルダ12の内周面との隙間(アウタ隙間)より小さく設定されている。これらの隙間は、インナコア32がニードル20に接触することを許容しつつ、アウタコア31がホルダ12に接触しないように設定されている。
インナコア32は、ストッパ部材としてのガイド部材60、カップ50およびニードル20に当接する。そのため、インナコア32には、アウタコア31に比べて高硬度の材質が用いられている。アウタコア31は、固定コア13に対向する可動側コア対向面31cを有し、可動側コア対向面31cと固定コア13との間にはギャップが形成されている。したがって、上述の如くコイル17へ通電して磁束が流れた状態では、上記ギャップが形成されていることにより、固定コア13に吸引される磁気吸引力がアウタコア31に作用する。
スリーブ40は、ニードル20に軸線C方向へ圧入固定された「固定部材」として機能する。スリーブ40は、貫通穴40a(図3参照)を有する円筒の金属製である。スリーブ40は、ニードル20の圧入部23に圧入固定されている。スリーブ40は、第2バネ部材SP2の噴孔側端面を支持する。なお、ニードル20はスリーブ40より高硬度であることが望ましい。スリーブ40は可動コア30より高硬度であることが望ましい。ニードル20の材質の具体例としては、マルテンサイト系のステンレスが挙げられる。スリーブ40の材質の具体例としては、フェライト系のステンレスが挙げられる。
第2バネ部材SP2は、軸線C方向に弾性変形するコイルスプリングである。第2バネ部材SP2の噴孔側端面はスリーブ40に支持され、反噴孔側端面はアウタコア31に支持されている。第2バネ部材SP2の弾性変形により生じた力(第2弾性力)により、アウタコア31は反噴孔側に付勢される。スリーブ40のニードル20への圧入量を調整することで、閉弁時に可動コア30を付勢する第2弾性力の大きさ(第2セット荷重)が調整されている。なお、第2バネ部材SP2に係る第2セット荷重は、第1バネ部材SP1に係る第1セット荷重より小さい。また、閉弁時に限らず、他の状況で可動コア30を付勢している時の第2弾性力の大きさを、上記圧入量により調整される第2セット荷重としてもよい。
<作動の説明>
次に、燃料噴射弁1の作動について、図4を用いて説明する。
図4中の(a)欄に示すように、コイル17への通電をオフにした状態では、磁気吸引力が生じないので、可動コア30には、開弁側へ付勢される磁気吸引力は作用しない。そして、第1バネ部材SP1による第1弾性力で閉弁側に付勢されたカップ50は、ニードル20の閉弁時弁体当接面21b(図3参照)およびインナコア32に当接して第1弾性力を伝達している。
可動コア30は、カップ50から伝達された第1バネ部材SP1の第1弾性力により閉弁側へ付勢されるとともに、第2バネ部材SP2の第2弾性力により開弁側へ付勢されている。第2弾性力より第1弾性力の方が大きいため、可動コア30はカップ50に押されて噴孔側へ移動(リフトダウン)した状態になる。ニードル20は、カップ50から伝達された第1弾性力により閉弁側へ付勢され、カップ50に押されて噴孔側へ移動(リフトダウン)した状態、つまりボデー側シート11sに着座して閉弁した状態となる。この閉弁状態では、ニードル20の開弁時弁体当接面21a(図3参照)と可動コア30(インナコア32)との間には隙間が形成されており、閉弁状態での隙間の軸線C方向長さをギャップ量L1と呼ぶ。
図4中の(b)欄に示すように、コイル17への通電をオフからオンに切り替えた直後の状態では、開弁側へ付勢される磁気吸引力が可動コア30に作用して、可動コア30が開弁側への移動を開始する。そして、可動コア30がカップ50を押し上げながら移動し、その移動量がギャップ量L1に達すると、ニードル20の開弁時弁体当接面21aにインナコア32が衝突する。この衝突時点では、ガイド部材60とインナコア32との間には隙間が形成されており、この隙間の軸線C方向長さをリフト量L2と呼ぶ。
この衝突時点までの期間には、ニードル20に印加された燃圧による閉弁力が可動コア30にかかっていないので、その分、可動コア30の衝突速度を増大できる。そして、このような衝突力を磁気吸引力に加算して、ニードル20の開弁力として利用するので、開弁に必要な磁気吸引力の増大を抑制しつつ、高圧の燃料であってもニードル20を開弁作動させることができる。
上記衝突の後、可動コア30は磁気吸引力によりさらに移動を続け、衝突後の移動量がリフト量L2に達すると、図4中の(c)欄に示すように、ガイド部材60にインナコア32が衝突して移動停止する。この移動停止時点での、ボデー側シート11sと弁体側シート20sとの軸線C方向における離間距離は、ニードル20のフルリフト量に相当し、先述したリフト量L2と一致する。
その後、コイル17への通電をオンからオフに切り替えると、駆動電流の低下とともに磁気吸引力も低下して、可動コア30がカップ50とともに閉弁側へ移動を開始する。ニードル20は、カップ50との間に充填された燃料の圧力に押されて、可動コア30の移動開始と同時にリフトダウン(閉弁作動)を開始する。
その後、ニードル20がリフト量L2の分だけリフトダウンした時点で、弁体側シート20sがボデー側シート11sに着座して、流路11bおよび噴孔11aが閉弁される。その後、可動コア30はカップ50とともに閉弁側への移動を継続し、カップ50がニードル20に当接した時点で、カップ50の閉弁側への移動が停止する。その後、可動コア30は、慣性力で閉弁側への移動(慣性移動)をさらに継続した後、第2バネ部材SP2の弾性力により開弁側へ移動(リバウンド)する。その後、可動コア30は、カップ50に衝突してカップ50とともに開弁側へ移動(リバウンド)するが、閉弁弾性力により迅速に押し戻されて、図4の(a)欄に示す初期状態に収束する。
したがって、このようなリバウンドが小さく、収束に要する時間が短いほど、噴射終了から初期状態に復帰するまでの時間が短くなる。そのため、内燃機関の1燃焼サイクルあたりに燃料を複数回噴射する多段噴射を実行するにあたり、噴射間のインターバルを短くでき、多段噴射に含まれる噴射回数を多くできる。また、上述の如く収束時間を短くすることで、以下に説明するパーシャルリフト噴射を実行した場合の噴射量を高精度に制御できるようになる。パーシャルリフト噴射とは、開弁作動するニードル20がフルリフト位置に達する前に、コイル17への通電を停止させて閉弁作動を開始させることで、短い開弁時間による微小量の噴射のことである。
<噴孔ボデーの構造>
先述したホルダ12のホルダ端部120は、噴孔ボデー11のボデー端部110が挿入される挿入口120a(図2参照)を有した円筒形状である。ホルダ端部120の内周面はボデー端部110の外周面に圧入されて接触している。ホルダ端部120にボデー端部110が挿入された状態で、ホルダ端部120の外周面にレーザを照射することで、ホルダ端部120とボデー端部110とはレーザ溶接されている。ホルダ端部120にボデー端部110を固定して所定の強度を発揮させるように溶接されている。
以下の説明では、噴孔ボデー11のうち、溶接に起因して形成された溶融部をボデー側溶融部11xと呼ぶ。ホルダ12のうち、溶接に起因して形成された溶融部をホルダ側溶融部12xと呼ぶ。
溶融部(fusion)とは、母材がレーザにより加熱されて溶融して固化した部分のことである。このような溶融固化により、ボデー側溶融部11xとホルダ側溶融部12xとは一体化している。これらの溶融部は、軸線C周りに環状に形成されている。 ボデー端部110の外周面におけるボデー側溶融部11xが形成される範囲であって、ボデー側溶融部11xの軸線C方向の長さを、ボデー側溶融部11xの溶接幅W1と呼ぶ。ボデー端部110の外周面におけるボデー側溶融部11xとシール部111との離間距離Laは、溶接幅W1よりも大きい。より詳細には、離間距離Laは、溶接幅W1の2倍以上の長さである。
噴孔ボデー11およびホルダ12の材質には、鉄にクロムや炭素等を含ませたステンレスが用いられている。クロムは、耐腐食性を向上させている。炭素は、耐摩耗性を向上させている。噴孔ボデー11は、ニードル20が衝突するボデー側シート11sを有するため、ホルダ12に比べて炭素量の多い材質が用いられている。そして、炭素量が多いほど、溶接時の温度上昇に伴い、以下に説明する熱影響部11zが、溶融部の近傍で生じやすくなる。
図5の横軸は、ボデー側溶融部11xからの軸線C方向距離(離間距離)を示し、縦軸は、母材中のクロム濃度を示す。図中の斜線に示すように、ボデー端部110のうち離間距離が所定範囲となる領域では、クロムと炭素との結合によるクロム炭化物が結晶粒界に析出する。それ故、結晶粒界にクロム炭化物が析出する領域とその周囲の領域では、母材中のクロム濃度が著しく低下したクロム欠乏領域となる。クロム欠乏領域では、クロムによる耐腐食性の効果が低下し、腐食しやすくなっている。このようにクロムが欠乏して腐食しやすくなっている部分が、先述した熱影響部11z(heat-affected zone)である。要するに、熱影響部11zとは、溶融していない母材の部分であり、溶接時に加熱された影響により、耐腐食性が低下する程度にクロム量が少なくなっている部分のことである。
なお、母材中の炭素量が少ない場合には、クロム炭化物が多く生じなくなるので、クロム欠乏領域も生じなくなる。つまり、炭素量が多いボデー端部110では熱影響部11zが生じるのに対し、ボデー端部110に比べて炭素量が少ないホルダ端部120では、熱影響部は殆ど生じない。本実施形態に係る炭素含有率は、噴孔ボデー11では約0.4%、ホルダ12では約0.015%であり、溶接時の温度は約750℃である。炭素含有率が0.02%以上になると熱影響部が生じ得ると推察される。
図6の横軸は、溶接開始からの経過時間を示す。図6の縦軸は、図7に示すA点、B点、C点、D点の4箇所における温度変化を示す。A点は、ボデー側溶融部11xと非溶融部との境界に位置する。B点は、熱影響部11zに位置する。C点は、B点よりもボデー側溶融部11xから離間した部分の非熱影響部に位置する。D点は、C点よりもさらにボデー側溶融部11xから離間した部分の非熱影響部に位置する。
図6に示すように、各点において、溶接開始とともに一時的に温度上昇し、溶接終了とともに温度低下していく。この温度変化の過程において、図6中のドットを付した温度領域、つまり650℃~850℃の温度を継続した時間が所定時間以上となる地点では、クロム欠乏した熱影響部となる。例えば、C点およびD点の場合には、650℃~850℃の温度領域に達していないため、非熱影響部となっている。B点の場合には、650℃~850℃の継続時間が9秒であり、所定時間以上であったため、熱影響部11zとして形成されている。A点の場合には、650℃~850℃の継続時間が7秒であり、所定時間以上であったため、B点より高温になっているものの、非熱影響部となっている。
図2に示すように、噴孔ボデー11は、熱影響部11zに対してボデー側溶融部11xの反対側に位置し、ホルダ12の軸線C(円筒中心線)周りに環状に延びてホルダ12に密着するシール部111を有する。さらにシール部111は、ボデー端部110の外周面から径方向外側に突出する凸形状であり、ボデー端部110をホルダ端部120に圧入する際に、ホルダ端部120を弾塑性変形させながらホルダ12に密着する。図2に示すシール部111は、断面三角形状であるが、断面円弧形状であってもよい。
先述した通り、熱影響部11zは、ボデー端部110のうちボデー側溶融部11xからの離間距離が所定範囲となる部分に形成される。そして、燃焼室内の凝縮水が、ボデー端部110とホルダ端部120との隙間である浸入経路を通じて熱影響部11zに到達することの抑制を図るべく、浸入経路のうち熱影響部11zの上流側にシール部111を位置させている。つまり、シール部111は、軸線C方向において、熱影響部11zに対してボデー側溶融部11xの反対側に位置する。先述した通り、ボデー側溶融部11xとシール部111との離間距離Laは、溶接幅W1の2倍以上の長さに設定されている。そのため、熱影響部11zの上流側にシール部111を位置させることの確実性が向上されている。
なお、熱影響部11zは、円筒形状部分であるボデー端部110に発生し、ボデー端部110の外周面から内周面に亘って貫通して分布している。したがって、熱影響部11zは、ボデー端部110の外周面および内周面の両面に露出している。また、図2の例では、ボデー側溶融部11xに対して軸線C方向の一端側に生じる熱影響部11zと他端側に生じる熱影響部11zとが、内周側で連結して分布している。これに対し、これらの熱影響部11zが分離して分布する場合もある。
<製造方法の説明>
次に、燃料噴射弁1の製造方法について説明する。
この製造方法は、以下に説明する可動部組付工程、溶接工程、締結工程、樹脂モールド工程および第1セット荷重調整工程を含む。
可動部製造工程では、可動コア30、第2バネ部材SP2、スリーブ40およびカップ50をニードル20に組み付けて可動部Mを製造する。可動コア30に付勢される第2バネ部材SP2による弾性力が、第2セット荷重の目標値となるように可動部Mは製造される。
次に実行される溶接工程では、先ず、ホルダ12に噴孔ボデー11を溶接して結合する。次に、ホルダ12の可動室12aに可動部Mを配置し、その後、支持部材18および第1バネ部材SP1が組み付けられた固定コア13と、可動部Mが配置されたホルダ12と、非磁性部材14とを溶接して結合する。
次に実行される締結工程では、コイル17が巻回された状態のボビン17aを、ナット部材15と固定コア13の間に配置する。その後、ナット部材15を固定コア13に締結することで、ホルダ12、非磁性部材14および固定コア13に面圧を生じさせて組み付ける。
次に実行される樹脂モールド工程では、固定コア13の外周面に溶融樹脂を流し込んで固化させることで、コネクタハウジング16aを有する樹脂部材16を樹脂モールド成形する。
その後行われる第1セット荷重調整工程では、先ず、第1バネ部材SP1を固定コア13の流路13aに組み付ける。その後、固定コア13の流路13aに支持部材18を所定位置まで圧入する。圧入に係る所定位置は、第1バネ部材SP1の弾性係数および軸線C方向長さのばらつきや、固定コア13の各部位の寸法ばらつきに応じて決定してもよい。いずれにしても、ニードル20に付勢される第1弾性力が第1セット荷重の目標値となるように、上記所定位置(圧入位置)を設定する。以上の各工程を含む製造方法により、燃料噴射弁1は製造される。
上述した噴孔ボデー組付工程は、図8に示す圧入工程S10、および溶接工程S20を含む。さらに、燃料噴射弁1の製造方法は、図8に示す計測工程S30、圧延工程S40および確認工程S50を含む。
圧入工程S10では、噴孔ボデー11のボデー端部110をホルダ12のホルダ端部120へ圧入する。この圧入の量に応じて、ニードル20のリフト量L2は変化する。そのため、リフト量L2が所望の値となるように圧入量が設定されている。但し、この圧入工程S10は、リフト量L2を仮に調整するものであり、後述する圧延工程S40によりリフト量L2は精密に調整される。
次に実行される溶接工程S20では、マルチモードレーザをホルダ端部120の外周面に照射する。これにより、ボデー端部110およびホルダ端部120がレーザ溶接され、ボデー側溶融部11xおよびホルダ側溶融部12xが形成される。
この溶接工程S20では、例えば、レーザ溶接装置の加工ヘッドをホルダ12の周りに1周移動させることで、環状にレーザ溶接する。
次に実行される計測工程S30は、樹脂モールド工程または第1セット荷重調整工程の後に実施される。この計測工程S30では、以下の手順でリフト量L2を計測する。先ず、図9に示すように、固定コア13の流路13aおよびニードル20の内部通路20aへ、棒形状の計測治具E10を挿入し、計測治具E10の一端をニードル20に押し当てる。次に、通電装置E11で端子16bへ通電して、ニードル20を閉弁位置からフルリフト位置へと開弁作動させる。この通電の前後で、計測治具E10の他端の移動量をストローク計E12で計測することで、リフト量L2を計測する。
次に実行される圧延工程S40では、ホルダ12の外周面に圧延ロールE13を押し当てて、ホルダ12を径方向に圧縮する向きの外力を付与する。これにより、ホルダ12の外径寸法が縮小するとともに、ホルダ12の軸線C方向寸法が拡大するよう、ホルダ12は塑性変形する。ホルダ12の軸線C方向寸法が拡大すると、ストッパ当接端面61aとボデー側シート11sとの軸線C方向における離間距離が長くなる。このことはリフト量L2が大きくなることを意味する。
圧延ロールE13は、自転軸Caが軸線Cと平行な向きとなるよう、自転可能な状態で複数配置されている。複数の圧延ロールE13は、ホルダ12の周方向に公転可能な状態で、等間隔に配置されている。圧延ロールE13からの外力をホルダ12が受ける箇所は、ホルダ端部120よりも反噴孔側、かつ、ナット部材15よりも噴孔側に位置する部分である。
次に実行される確認工程S50では、計測工程S30と同じ要領で、計測治具E10、通電装置E11およびストローク計E12を用いてリフト量L2を計測する。このように計測されたリフト量L2が、所望のリフト量より小さい場合には、圧延工程S40による圧延を再度実行する。
要するに図8に示す手順では、先ずは圧入でリフト量L2を仮調整するとともに、シール部111の部分で面圧を高くさせる。その後、噴孔ボデー11をホルダ12にレーザ溶接し、その後、圧延でリフト量L2を精密調整する。これによれば、レーザ溶接による熱の影響でホルダ12および噴孔ボデー11が変形して、リフト量L2が変化した場合であっても、その後の圧延で精密調整されるので、リフト量L2を高精度で調整できる。
以上により、本実施形態に係る噴孔ボデー11は、ホルダ側溶融部12xと一体化したボデー側溶融部11xと、熱影響部11zと、シール部111と、を有する。ボデー側溶融部11xは、レーザ溶接(溶融接合)により溶融固化して形成されたものである。熱影響部11zは、ボデー側溶融部11xに対して挿入口120aの側に位置し、レーザ溶接の熱で溶融はしていないものの組織変化した部分である。シール部111は、熱影響部11zに対してボデー側溶融部11xの反対側に離間して位置し、ホルダ12の円筒中心線(軸線C)周りに環状に延びてホルダ12に密着する。
これによれば、噴孔ボデー11とホルダ12の間のうち、熱影響部11zに対してボデー側溶融部11xの反対側に位置する箇所に、環状に延びるシール部111が設けられる。そのため、燃焼室内の凝縮水が、ボデー端部110とホルダ端部120との隙間である浸入経路を通じて熱影響部11zに到達することを、シール部111で遮断できる。よって、噴孔ボデー11に付着する凝縮水が、内燃機関の吸気へ還流させる排ガスの一部(EGRガス)に含まれる硫黄成分によって強酸性となっている場合であっても、その凝縮水で熱影響部11zが腐食することを抑制できる。
さらに本実施形態では、シール部111は、噴孔ボデー11の外周面から径方向外側に突出する凸形状であり、ホルダ12を弾塑性変形させながらホルダ12に密着する。そのため、噴孔ボデー11およびホルダ12との間にシール部材を介在させてシールする場合に比べて、部品点数を少なくできる。また、リフト量L2を仮調整する圧入工程S10を実施することで上記シールを実現できるので、シールに要する作業工程を少なくできる。
さらに本実施形態に係る燃料噴射弁1は、以下に説明するコアブースト構造を備えている。すなわち、ニードル20を開弁作動させるにあたり、先ずはニードル20に係合していない状態で可動コア30の移動を開始させ、その後、可動コア30が所定量移動した時点で、可動コア30をニードル20に当接させて開弁作動を開始させる構造である。
このようなコアブースト構造によれば、通電開始直後には、可動コア30は未だニードル20に係合していないので、燃圧の力を受けていない可動コア30は、初期の小さな起磁力で可動コア30の移動速度を迅速に立ち上げることができる。そして、移動速度が十分に速くなった時点、つまり可動コア30が所定量移動した時点で、可動コア30がニードル20に当接して開弁作動を開始させるので、磁気吸引力に加えて、可動コア30の衝突力を利用して開弁させることができる。よって、開弁に必要な磁気吸引力の増大を抑制しつつ、高圧の燃料であってもニードル20を開弁作動させることができる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、ボデー端部110に形成された凸形状のシール部111でシール機能を発揮させている。これに対し本実施形態では、ボデー端部110の外周面のうちボデー側溶融部11xに対して挿入口120aの側に位置する部分であるシール圧入面112を十分に長く設定することで、シール機能を発揮させている。具体的には、図10に示すように、シール圧入面112の軸線C方向長さであるシール長Lbを、ボデー側溶融部11xの溶接幅W1の2倍以上に設定している。
ここで、本実施形態に反してシール長Lbを溶接幅W1の2倍未満に設定した場合、図11に示すように、ボデー端部110のうちシール圧入面112の部分が径方向に拡大するように変形しやすくなる。この変形は、ボデー側溶融部11xおよびホルダ側溶融部12xに係る溶接時の熱の影響で生じるものと推察される。
これに対し、シール長Lbを溶接幅W1の2倍以上に設定した本実施形態によれば、上記変形のおそれを抑制でき、十分なシール機能が発揮される。よって、噴孔ボデー11とホルダ12との間に浸入した凝縮水が熱影響部11zに到達することを抑制できる。
なお、本実施形態に係るシール圧入面112は、噴孔ボデー11とホルダ12との間に配置されて軸線C周りに環状に延び、ホルダ12に密着してシールするシール部として機能する。
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、ボデー端部110に形成された凸形状のシール部111でシール機能を発揮させているのに対し、本実施形態では、以下に詳述するかしめ構造でシール機能を発揮させている。
具体的には、図12に示すように、ホルダ端部120の先端には、ホルダ側溶融部12xが形成されている部分に比べて薄肉のかしめ部123が形成されている。かしめ部123は、軸線C周りに環状に延びる円筒形状である。
また、ボデー端部110のうち、熱影響部11zに対してボデー側溶融部11xの反対側に位置する部分には、かしめ部123によりかしめられてホルダ端部120に密着する被かしめ部113が形成されている。被かしめ部113は、軸線C周りに環状に延びる形状である。かしめ部123は、直径を縮小させる向きに塑性変形している。これにより、かしめ部123の内周面が、被かしめ部113の外周面に押し付けられて密着している。
以上により、本実施形態によれば、噴孔ボデー11とホルダ12の間のうち、熱影響部11zに対してボデー側溶融部11xの反対側に位置する箇所に、環状に延びる被かしめ部113(シール部)が設けられる。そのため、噴孔ボデー11とホルダ12との間に浸入した凝縮水が熱影響部11zに到達することを抑制でき、噴孔ボデー11の腐食抑制を図ることができる。
さらに本実施形態では、かしめ部123および被かしめ部113によるかしめ構造でシール機能を発揮させる。
(第4実施形態)
上記第3実施形態では、かしめ部123の内周面が被かしめ部113の外周面に押し付けられて密着している。これに対し本実施形態では、図13に示すように、かしめ部123の外周面が被かしめ部113の内周面に押し付けられて密着している。被かしめ部113は、噴孔ボデー11に形成された溝113aの壁面で形成されている。溝113aの直径は、かしめ部123の直径より小さく設定されている。
上記第3実施形態の場合には、かしめ部123の外周面を縮径方向に押し付ける器具を用いてかしめ部123を塑性変形させている。これに対し、本実施形態の場合には、噴孔ボデー11に形成された溝113aにかしめ部123を挿入することで、かしめ部123を塑性変形させている。
(第5実施形態)
上記第1実施形態では、噴孔ボデー11の一部(シール部111)でシール機能を発揮させている。これに対し本実施形態では、噴孔ボデー11およびホルダ12とは別部材である、以下に説明するシール部材80でシール機能を発揮させている。
具体的には、図14に示すように、ボデー端部110の外周面のうち熱影響部11zに対してボデー側溶融部11xの反対側に位置する部分と、ホルダ端部120の内周面との間に、円筒形状のシール部材80が配置されている。シール部材80には、耐熱性および耐腐食性を有する弾性体が用いられている。シール部材80は、径方向に圧縮される向きに弾性変形した状態で、ボデー端部110の外周面とホルダ端部120の内周面との間に配置されている。
また、シール部材80の軸線C方向長さを十分に確保するべく、ボデー端部110の外周面のうちボデー側溶融部11xに対して挿入口120aの側に位置する部分の軸線C方向長さLcを、ボデー側溶融部11xの溶接幅W1の2倍以上に設定している。
以上により、本実施形態によれば、噴孔ボデー11とホルダ12の間のうち、熱影響部11zに対してボデー側溶融部11xの反対側に位置する箇所に、環状に延びるシール部材80が配置される。そのため、噴孔ボデー11とホルダ12との間に浸入した凝縮水が熱影響部11zに到達することを抑制でき、噴孔ボデー11の腐食抑制を図ることができる。
(第6実施形態)
上記第5実施形態では、シール部材80は、径方向に圧縮される向きに弾性変形した状態で、ボデー端部110の外周面とホルダ端部120の内周面との間に配置されている。これに対し本実施形態では、図15に示すように、シール部材80は、軸線C方向に圧縮される向きに弾性変形した状態で、ボデー端部110の軸方向端面と噴孔ボデー11との間に配置されている。
(第7実施形態)
本実施形態では、上記第5実施形態に係るシール部材80に替えて、図16に示す皿バネ90がシール部材として用いられている。皿バネ90は、軸線C方向に弾性変形した状態で、ボデー端部110の軸方向端面と噴孔ボデー11との間に配置されている。
図16に示す例では、皿バネ90の内周端部がホルダ端部120に当接し、皿バネ90の外周端部が噴孔ボデー11に当接している。これに対し、皿バネ90の内周端部が噴孔ボデー11に当接し、皿バネ90の外周端部がホルダ端部120に当接していてもよい。
(他の実施形態)
この明細書における開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、1つの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。
上記第1実施形態では、凸形状のシール部111を、ボデー端部110の外周面に形成しているが、ホルダ端部120の内周面に形成してもよい。 上記第1および第2実施形態では、図8の圧入工程S10に示す如く、ホルダ12に噴孔ボデー11を圧入することを必須としているが、それら以外の実施形態では、ホルダ12に噴孔ボデー11を圧入することを廃止してもよい。
上記第3および第4実施形態では、かしめ部123をホルダ12に形成し、被かしめ部113を噴孔ボデー11に形成しているが、かしめ部123を噴孔ボデー11に形成し、被かしめ部113をホルダ12に形成してもよい。
上記第5~7実施形態では、シール部材80、90は、弾性変形した状態で噴孔ボデー11とホルダ12との間に配置された弾性体である。これに対し、塑性変形した状態で噴孔ボデー11とホルダ12との間に配置された部材を、上記シール部材80、90に置き換えてもよい。
上記第1実施形態では、ニードル20のうち噴孔ボデー11の内壁面11cに対向する部分(ニードル先端部)と、カップ50の外周面51dとの2箇所で、可動部Mは径方向に支持されている。これに対し、可動コア30の外周面とニードル先端部との2箇所で、可動部Mは径方向から支持されていてもよい。
上記第1実施形態では、インナコア32が非磁性材で形成されているが、磁性材で形成されていてもよい。また、インナコア32が磁性材で形成される場合、アウタコア31に比べて磁性の弱い弱磁性材で形成されてもよい。同様にして、ニードル20およびガイド部材60が、アウタコア31に比べて磁性の弱い弱磁性材で形成されてもよい。
上記第1実施形態では、可動コア30が所定量移動した時点で、可動コア30をニードル20に当接させて開弁作動を開始させるコアブースト構造を実現するにあたり、第1バネ部材SP1と可動コア30との間にカップ50を介在させている。これに対し、カップ50を廃止して、第1バネ部材SP1とは別の第3バネ部材を設け、第3バネ部材により可動コア30を噴孔側へ付勢させるコアブースト構造であってもよい。
上記各実施形態では、コアブースト構造を採用しているが、通電に伴い可動コア30が移動を開始すると同時にニードル20も移動(開弁作動)を開始する構造であってもよい。また、上記各実施形態では、ニードル20と可動コア30とが軸線C方向に相対移動可能な状態で組み付けられた2体化構造であるが、上記相対移動が不能となるようなニードル20と可動コア30とが一体化された構造であってもよい。
上記第1実施形態に係る可動コア30は、アウタコア31とインナコア32の2部品を有する構造である。そして、インナコア32は、アウタコア31より高硬度の材質であり、カップ50およびガイド部材60と当接する面と、ニードル20と摺動する面とを有する。これに対し、可動コア30は、インナコア32を廃止した構造であってもよい。
上述の如く可動コア30がインナコア32を廃止した構造である場合、可動コア30のうちカップ50およびガイド部材60と当接する当接面と、ニードル20と摺動する摺動面に、メッキが施されていることが望ましい。当接面に施されるメッキの具体例の1つにクロムが挙げられる。摺動面に施されるメッキの具体例の1つにニッケルリンが挙げられる。
上記第1実施形態に係る燃料噴射弁1は、固定コア13に取り付けられたガイド部材60に可動コア30が当接する構造である。これに対し、ガイド部材60を廃止した固定コア13に可動コア30が当接する構造であってもよい。要するに、ガイド部材60にインナコア32が当接する構造であってもよいし、ガイド部材60を廃止した固定コア13にインナコア32が当接する構造であってもよい。また、ガイド部材60に、インナコア32を廃止した可動コア30が当接する構造であってもよいし、ガイド部材60を廃止した固定コア13に、インナコア32を廃止した可動コア30が当接する構造であってもよい。
上記第1実施形態に係るカップ50は、ガイド部材60の内周面に接触しながら軸線C方向に摺動する。これに対し、カップ50は、ガイド部材60の内周面との間に所定の隙間を形成しつつ軸線C方向に移動する構造であってもよい。
上記第1実施形態では、第2バネ部材SP2の一端は可動コア30に支持され、第2バネ部材SP2の他端は、ニードル20に取り付けられたスリーブ40に支持されている。これに対し、上記スリーブ40が廃止された構成であり、第2バネ部材SP2の他端がホルダ12に支持されていてもよい。
上記各実施形態では、ボデー端部110がホルダ端部120に圧入されているが、当該圧入は廃止されていてもよい。上記各実施形態に係る燃料噴射弁1は、内燃機関の燃焼室へ燃料を直接噴射する直噴式であるが、内燃機関の燃焼室へ吸気を流通させる吸気通路へ燃料を噴射するポート噴射式であってもよい。
11 噴孔ボデー、 111、112、113 シール部、 11a 噴孔、 11x ボデー側溶融部、 11z 熱影響部、 12 ホルダ、 120a 挿入口、 123 かしめ部、 12x ホルダ側溶融部、 80、90 シール部材。

Claims (5)

  1. 燃料を噴射する噴孔(11a)が形成された金属製の噴孔ボデー(11)と、
    前記噴孔ボデーが挿入される挿入口(120a)を有した円筒形状であり、前記噴孔ボデーのうち前記挿入口の内部に位置する部分と溶融接合された金属製のホルダ(12)と、
    を備え、
    前記噴孔ボデーは、
    前記溶融接合により形成されたボデー側溶融部(11x)と、
    前記ボデー側溶融部に対して前記挿入口の側に位置し、前記溶融接合の熱で組織変化した熱影響部(11z)と、
    前記熱影響部に対して前記ボデー側溶融部の反対側に位置し、前記ホルダの円筒中心線周りに環状に延びて前記ホルダに密着するシール部(111、112、113)と、
    を有する燃料噴射弁。
  2. 前記シール部(111)は、前記噴孔ボデーの外周面から径方向外側に突出する凸形状であり、前記ホルダを弾塑性変形させながら前記ホルダに密着する請求項1に記載の燃料噴射弁。
  3. 前記ホルダは、前記噴孔ボデーをかしめるかしめ部(123)を有し、
    前記シール部(113)は、前記かしめ部にかしめられて前記ホルダに密着する請求項1に記載の燃料噴射弁。
  4. 燃料を噴射する噴孔(11a)が形成された金属製の噴孔ボデー(11)と、
    前記噴孔ボデーが挿入される挿入口(120a)を有した円筒形状であり、前記噴孔ボデーのうち前記挿入口の内部に位置する部分と溶融接合された金属製のホルダ(12)と、
    前記噴孔ボデーと前記ホルダとの間に配置され、前記ホルダの円筒中心線周りに環状に延び、前記噴孔ボデーおよび前記ホルダに密着してシールするシール部材(80、90)と、
    を備え、
    前記噴孔ボデーは、
    前記溶融接合により形成されたボデー側溶融部(11x)と、
    前記ボデー側溶融部に対して前記挿入口の側に位置し、前記溶融接合の熱で組織変化した熱影響部(11z)と、
    を有し、
    前記シール部材は、前記熱影響部に対して前記ボデー側溶融部の反対側に配置されている燃料噴射弁。
  5. 前記シール部材は、弾性変形した状態で前記噴孔ボデーと前記ホルダとの間に配置された弾性体である請求項4に記載の燃料噴射弁。
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