JP3898344B2 - 伸縮特性に優れた織編物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、伸縮性仮撚構造加工糸を用いた織編物に関し、さらに詳しくは、ソフトで嵩高なウール織物様の風合いに加え、同時に優れた伸縮性を付与することによって新しい質感とソフトストレッチ機能を備えた織編物に関する。
【0002】
【従来の技術】
新合繊の例を挙げるまでもなく、熱可塑性のポリエステルフィラメントからなる織物は生産技術・加工技術の進化と共に、その表現力を次第に拡大している。なかでも2種以上の伸度の異なる原糸を同時に仮撚して得られる複合加工糸は仮撚構造加工糸と呼ばれ、スパンライク糸として生産が開始されたが、その後も進化を続け、梳毛調織物の表現が可能なまでに至っている。
【0003】
通常、仮撚構造加工糸は嵩高性には優れるが、無撚で織物とした場合ピリングやスナッキングが発生しやすく、またドレープ性に欠けるため追撚して使用される。追撚された仮撚構造加工糸はその構造上、芯糸は比較的直線的で突っ張った状態であり、かつ撚りによって捲縮の発現が疎外されるため伸縮性に劣る傾向がある。これを改善するために、特開平5−311533号公報では、構造加工糸の芯糸にサイドバイサイド型複合繊維を用い、適度な伸縮性を与え、縫製性を良好にする技術が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記技術によって得られる織物では高々25%の伸長性しか得られず、さらなる伸長性を望む分野においては不十分なものであった。本発明の目的は、上記の課題を解決し、梳毛調織編物に優れた伸縮性を付与することによって、新しい質感と高いストレッチ機能を合わせ持つ織編物を得ることを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、実撚を施した仮撚構造加工糸を含む織編物であって、該加工糸の非交絡部の断面空隙率が70〜80%であり、該断面の中心部に空隙率20〜30%の空洞を有し、該加工糸を構成する芯糸の撚角度が側糸の撚角度よりも小さい撚構造を呈しており、かつ該加工糸を構成する芯糸が、低収縮成分と高収縮成分とを貼り合わせたサイドバイサイド型複合繊維であって、該高収縮成分がトリシクロデカンジメタノールを5モル%以上共重合した共重合ポリエステルからなり、該織編物から解舒した加工糸の伸長率が25%以上、かつ25%伸長時の回復率が80%以上であることを特徴とする織編物である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の織編物の最大の特徴は、織編物を構成する伸縮性仮撚構造加工糸にある。まずその形態について述べる。本発明の織編物を構成する伸縮性仮撚構造加工糸は、一般の仮撚構造加工糸同様、ピリングやスナッキングの発生を防止するためおよびドレープ性を得るために実撚を有している。撚係数をT√D(T:撚数(回/m)、D:構造加工糸の繊度(デニール))で定義すると、7,000〜35,000の撚が施されている。7,000未満ではスナッギングが発生する懸念があったり、ドレープ性に欠ける場合がある。また35,000を越えると風合が粗硬になったり、最大の特徴とも言える高い空隙率や空洞が確保できなくなり満足な伸縮性が得られなくなる。風合上好ましい撚係数の範囲は、織物では15,000〜35,000、編物では7,000〜20,000である。
【0007】
本発明の織編物を構成する伸縮性仮撚構造加工糸は、7,000〜35,000の撚係数での実撚が施されているにも拘わらず、図1(写真1)に見られる様に、非交絡部の糸断面において70〜80%、という高い空隙率を有している。同程度の糸長差を有する通常の仮撚構造加工糸の空隙率は高々30%程度であって(図2(写真2)参照)、これらを対比すると、本発明の織編物を構成する伸縮性仮撚構造加工糸の空隙率は非常に高いと言える。
【0008】
さらに本発明の織編物を構成する伸縮性仮撚構造加工糸は、糸中心部に空洞が存在しており、この空洞部の空隙率が20〜30%もある(写真1参照)。かかる高い空隙率および中心部の空洞は、構造加工糸ひいては織編物の伸縮性を得るために非常に重要である。空隙が少なく単糸間の抵抗が大きいと高い伸長性が得られず、また回復性も悪くなる。特に本発明では、中心部が空洞となっているため、比較的低張力でも伸びやすくかつ戻りやすい構造と言える。
【0009】
構造加工糸の内層部を構成する芯糸は、熱収縮率を異にするポリマーを貼り合せてなるサイドバイサイド型複合繊維からなるマルチフィラメントであるが、少なくとも高収縮ポリマー成分は共重合ポリエステルで、さらには共重合率が5モル%以上の共重合ポリエステルであることが必要である。高収縮成分に5モル%以上の共重合ポリエステルを使用しない場合、サイドバイサイド型複合繊維が仮撚時に熱セットされ、本発明に必要な伸縮性が得られない。またサイドバイサイド型複合繊維の熱応力は0.2g/d以上であることが望ましい。熱応力が低い場合には特に中心部の空洞が小さくなる場合がある。
【0010】
かかる共重合成分としては、トリシクロデカンジメタノールが用いられる。
【0011】
一方、構造加工糸の外層部を構成する側糸はポリエステルマルチフィラメントであって、ポリエチレンテレフタレートからなる通常のポリエステル糸、5-金属スルホネート基を有するイソフタル酸等で変性されたカチオン染料に可染のポリエステル糸、あるいはそれらのシックアンドシン糸を単独または混用して使用することができる。
【0012】
構造加工糸において、芯糸を構成するサイドバイサイド型複合繊維からなるマルチフィラメント糸と側糸を構成するポリエステルマルチフィラメント糸の糸長差は20〜35%であることが好ましい。糸長差が20%未満では側糸の拘束力のため、芯糸の捲縮発現が疎外され本発明に必要な空隙率が確保できない場合がある。また図3(写真3)の様に側糸の撚角度が大きく、芯糸の撚角度が小さくなりにくい。一方、糸長差が35%を越えると撚糸、製織等の工程通過性が悪くなり断糸や毛羽が発生するため好ましくない。図3(写真3)の側糸の構造はあたかもコイル状であり、撚角度が大きければ大きいほどコイル密度が増すため伸縮性に有効であると考えられる。
すなわち、従来の仮撚構造加工糸にとっての撚りは捲縮発現を拘束し、伸縮性を疎外するものであるが、本発明では伸縮性を増加させる要素とするものである。
【0013】
芯糸はテンションメンバーあるいは張り・腰に有効であり撚角度は少ない方が好ましい。かかる観点から、側糸の撚角度としては45°以上が好ましく、60°以上がさらに好ましい。芯糸の撚角度としては30°以下が好ましい。またこれらの角度差は15°以上が好ましい。
【0014】
また、構造加工糸における芯糸と側糸との交絡数は50〜150個/mであることが好ましい。50個/m未満では糸長差が20〜35%と大きいため、芯糸と側糸が分離し、撚糸、製織等の工程通過性が悪くなり断糸や毛羽が発生する場合がある。150個/mを越えると空隙率が低下し、構造加工糸の伸縮性が満足されない場合がある。
【0015】
以上、本発明の織編物を構成する仮撚構造加工糸の形態的特徴を述べてきたが、伸縮性能としては、織編物から解舒した加工糸での伸長率が25%以上であることが好ましく、30%以上であればさらに好ましい。また25%伸長時の回復率が80%以上であることが好ましく、90%以上であればさらに好ましい。この優れた伸縮特性は上述した、構造加工糸における65〜85%という非交絡部の高い断面空隙率、空隙率15〜35%の糸断面の中心部に存在する空洞、側糸の撚角度が芯糸の撚角度よりも大きい撚構造、とりわけ撚角度の大きい側糸による相乗的な効果であり、さらには芯糸として共重合ポリエステルを高収縮成分とするサイドバイサイド型複合繊維を用いることにより一層明瞭化するものである。
【0016】
また、本発明の織編物から解舒した構造加工糸の伸長率は25%以上でなければならない。伸長率が25%未満では、目的とする伸長率が20%以上好ましくは25%以上となる織編物が得られない。また該構造加工糸は25%伸長時の回復率が80%以上でなければならない。80%未満では、伸縮性が優れている織編物と言えず、縫製時や着用時にパッカリング欠点が発生する恐れがある。
【0017】
伸縮性について言えば、特に織物ではその構造上、伸縮性を得るのが困難であり、前述の空隙率が高々30%程度の従来公知の構造加工糸からなる織物から解除した糸(撚り係数:26,000)の伸長率は12%である(織物の伸長率は10%)が、例えば、空隙率が73%、中心部の空洞の空隙率が22%、側糸の撚角度が70°、芯糸の撚角度が25°、芯糸の高収縮成分が6モル%共重合のポリエステルであるサイドバイサイド型複合繊維である本発明の織物から解舒した糸(撚り係数:26,000)の伸長率は38%であり(織物の伸長率は32%)、この糸の25%伸長時の回復率は92%であり、35%伸長時の回復率は90%である。このことから、本発明の織物が従来公知の構造加工糸織物に比して極めて伸縮特性に優れていることが分かる。
【0018】
なお本発明の織編物を得るためには製編織において密度に注意することが必要で、染色加工において20%以上収縮することを前提に設計することが好ましい。また染色加工においては20%以上収縮させることが好ましく、収縮を阻害する張力をかけないことが好ましい。
【0019】
次に本発明を構成する伸縮性仮撚構造加工糸の製造法について述べる。図4には、加工糸を製造するための仮撚加工機のモデル図を示すが、本発明を達成するものであればこの図の方法に限定されるものではない。
【0020】
本発明では伸度の異なる2種類の原糸を同時に仮撚する方法を採用する。これは20〜35%という高い糸長差を安定的に確保し、しかも安価に製造するためである。この目的を達するならば他の方法を採用しても良い。複合化に際しては、コストやコントロール性から、インターレースによるエアー交絡が好ましい。交絡複合後に仮撚加工を行うが、仮撚機はピン仮撚機であってもフリクション仮撚機であってもベルトフリクション仮撚機であってもかまわない。
【0021】
この時供給する芯糸用マルチフィラメントの伸度と側糸用マルチフィラメントとの伸度差は100%以上あることが好ましい。この伸度差を確保するために高伸度原糸の伸度を例えば250%以上とすると、仮撚時に膠着や未解撚が発生するので好ましくない。本発明では芯糸用マルチフィラメントの伸度は20〜50%が好ましく、側糸用マルチフィラメントの伸度は120〜200%が好ましい。仮撚後の構造加工糸は、芯糸に明確な捲縮発現は見られず、芯糸が比較的直線的で突っ張った従来の構造加工糸と同様な形態である。
【0022】
構造加工糸に高い空隙や空洞を形成させる手法としては、例えば通常の構造加工糸に水溶性繊維や易溶解性繊維を混入し、該構造加工糸を製編織後に水溶性繊維や易溶解性繊維を溶解除去する方法があるが、かかる方法では本発明で使用する構造加工糸と同一の形態を得ることはできず、またかかる手法は、製造コストが高くなる欠点を有する。
【0023】
供給原糸について重要であるのは、芯糸に使用する原糸であり、熱収縮を異にするポリマーによるサイドバイサイド型複合繊維からなるマルチフィラメントを使用するのが好ましい。特にサイドバイサイド型複合繊維からなるマルチフィラメントを構成するポリマーの内、少なくとも高収縮成分は、先に記載したように共重合ポリエステル、特に5モル%以上共重合されたポリエステルであることが好ましい。
この理由は、例えば、低収縮成分が共重合しない低粘度ポリエステル、高収縮成分が共重合しない高粘度ポリエステルであるサイドバイサイド型複合繊維からなるマルチフィラメントを使用する場合は、本発明を構成する伸縮性構造加工糸を製造する際の仮撚工程の仮撚ヒータにおいて、緊張張力下で熱固定(セット)されるため、仮撚以降の例えば染色工程では、もはやサイドバイサイド型複合繊維特有の捲縮発現をしなくなる場合があるからである。
すなわち、潜在捲縮糸であるはずのサイドバイサイド型複合繊維が、仮撚によって、その機能をなくす場合があるためである。このような現象は、高収縮成分の共重合率が5モル%未満の場合においても同様に起こる場合がある。
【0024】
芯糸となるサイドバイサイド型複合繊維からなるマルチフィラメントおよび側糸となるポリエステルマルチフィラメントのヤーンデニールやフィラメントデニールは、仮撚後の加工糸を想定しかつ目的によって決定すれば良いが、仮撚後のヤーンデニールとしては、衣料用としては70〜400デニールが好ましい。芯糸と側糸の比率は,芯糸:側糸=30〜70:70〜30が好ましい。芯糸の比率が30%未満では本発明に規定の構造や伸縮性が得られない場合がある。また側糸が30%未満では、本発明の目的とするソフトで嵩高な梳毛調織編物が得られない場合がある。
また芯糸となるサイドバイサイド型複合繊維からなるマルチフィラメント糸のフィラメントデニールは2〜6デニールが好ましい。2デニール未満では仕上がり生地が張り腰のない風合となる場合があり好ましくない。また6デニールを越えると交絡が不良となる場合があり好ましくない。
側糸となるポリエステルマルチフィラメントのフィラメントデニールは風合を重視して決定すれば良いが、0.1〜5デニールが好ましい、さらに好ましくは1〜4デニールである。1デニール未満では発色性が不良であったり、嵩高性が得られない場合が有る。また梳毛調織編であるよりは、スエード調織編物となる。5デニールを越えると風合が粗硬になる場合が有る。
【0025】
構造加工糸の段階では、特開平5-311533号公報の図1に記載の複合加工糸の形態、すなわち芯糸と側糸が明解ではなく混在している形態よりは芯糸と側糸が明確に区別されかつ芯糸が中心部に略直線状にあってそのまわりを側糸が包んでいる形態が、梳毛調風合を得るには好ましい。構造加工糸の熱水収縮率(Wsr)の好ましい範囲は4〜12%であり、さらに好ましくは5〜8%である。また構造加工糸の捲縮発現率(K1値)の好ましい範囲は4〜15%である。ポリエステルで伸縮性に優れた織編物を得るには、熱水収縮率はできるだけ低くし、捲縮発現率はできるだけ高くするのが一般的であるが、本発明で使用する構造加工糸は、熱水収縮率が4%未満では収縮が不足し、織編物の欠点が発生しやすくなるので好ましくない。また、12%を超えると優れた伸縮性が得られなくなる場合がある。捲縮発現率が4%未満では伸長性が満足されない場合があるし、15%を超えると芯糸と側糸が明解ではなく、2種の仮撚加工糸が混在している形態となったり、本発明に使用の伸縮性構造加工糸の形態が得られない。
【0026】
本発明においては、仮撚後の構造加工糸に撚を付与するが、この時の撚糸数は撚係数=T√Dにより決定される。撚係数は目的に応じて採用すればよいが、本発明に使用の撚糸後の構造加工糸は、染色加工において、解撚、捲縮発現(仮撚捲縮および潜在捲縮)等により20%以上収縮させるのが好ましいため、5,800〜29,000の範囲で選択するのが好ましい。本発明に使用する撚糸後の構造加工糸は、通常の構造加工糸の撚糸後とほとんど同様であり、未だ特有の構造を呈さない。撚糸に際しては、合撚機、イタリー撚糸機、ダブルツイスター等通常の撚糸機を使用することができる。
【0027】
撚糸後の構造加工糸は製編織されるが、製編織する編機や織機は限定されるものではなく、シングル丸編機、ダブル丸編機、パイル編機、トリコット編機、ラッセル編機等通常使用される編機、ウオータジェットルーム織機、エアージェットルーム織機、レピア織機等通常使用される織機を使用することができる。ただし前述の如く、染色において収縮を20%以上させることを見越して、生地の設計を行うのが好ましい。
【0028】
ついで染色加工について述べる。染色加工に際しては、ポリエステル染色に使用する通常の精練機、解撚機、減量機、セッター、染色機等を使用することができる。ただしこの工程で加工糸を20%以上収縮させることが好ましい。20%以上収縮させることによって、本発明の織編物を構成する伸縮性構造加工糸となる。20%未満の収縮では、本発明の織編物を得られない場合がある。
20%以上収縮させるためには、張力と染色温度に留意する必要がある。染色温度は染色しようとする主体ポリエステルに応じて決めれば良く、高圧下での高温で100〜135℃が好ましい。100℃未満の場合は収縮不足で本発明の織編物を得られない場合が有る。染色張力については低い方が好ましく、生地全体で10kg以下の張力が好ましい。この点エアーフロータイプの染色機は浴比が低く、染色張力が低いので好ましい。染色後で初めて、本発明の織編物が得られる。
【0029】
製編織までは通常の構造加工糸と同様であった本発明に使用の構造加工糸が、いかにして本発明に記載の伸縮性構造加工糸となるかは、明確では無いが、次のごとく考えられる。糸長差を20〜35%と大きくとっているので、交絡部以外では芯糸と側糸の干渉は少なく、撚の拘束が解けると、収縮、捲縮発現等の内部応力によって、芯糸と側糸が比較的独自に動きやすい状態にある。
解撚が始まると側糸はより外側に膨らみ側糸フィラメント間の空隙が拡大する、また仮撚による側糸の捲縮発現が始まり側糸フィラメント間の空隙がさらに拡大する。側糸のこの動きによって芯糸と側糸間の空隙層も拡大する。この時、撚による側糸の芯糸に対する拘束力が解けて、収縮力および潜在収縮力等を有する芯糸が収縮を開始する。
側糸と芯糸は交絡部によって接結しているため、芯糸が収縮すると側糸も収縮し、撚角度が増大する。サイドバイサイド型複合繊維からなるマルチフィラメントは、収束してコイルクリンプを発現するが、仮撚が施されているために仮撚捲縮も発現しマルチフィラメントが個々にコイルクリンプを発現する。以上の説明で高い空隙率を有することと側糸の撚角度が高いことが言える。
中心部の空洞の形成については、推測の域をでないが、芯糸の解撚力(撚りを戻す力・外に広がろうとする力)が非常に強く、また仮撚をされているためにバラけて動くため、前述の側糸の解撚によって芯糸と側糸の間に発生する空間を埋め尽くすことが考えられる。芯糸の撚角度が小さいのも、この芯糸の強い解撚によってある程度説明される。以上のことはほとんど同時に起こっていると思われる。
【0030】
【実施例】
さらに詳細な説明を実施例によって説明する。なお本発明で使用した測定方法は次の通りである。
織物の伸長率:
JIS L−1096のA法に従い、荷重1.8kgで測定した伸長率。
織物から解除した糸の伸長率:
織物よりほとんど張力をかけない様に糸を解舒し、無荷重で試料の300mmに印を入れる。0.015g/dの荷重をかけ、そのまま標準状態の条件下で5分間放置する。ついで荷重をかけたまま糸長を測定し(印の中央間)、この長さをL1(mm)とする。
糸の伸長率(%)=[(L1−300)/300]×100
n=5の平均の値を採用する。
織物から解除した糸の回復率:
上記L1を測定した後、荷重を除去し標準状態の 条件下で5分間放置する。ついで無荷重のままこの糸長を測定し(印の中央間)この長さをL2(mm)とする。
糸の回復率(%)=[(L1−L2)/(L1−300)]×100
n=5の平均の値を採用する。
糸断面の空隙率:
糸断面の電子顕微鏡写真を撮影し(500倍)、ついでカラーコピーする。コピー紙上で最も離れた関係にある単繊維断面間の各々中央を結びこの線をA1とし、この長さをL1(mm)とする。ついでA1の中点OでA1に直行する直線を描く。この直線に最も近くにあり、かつ線A1から最も離れた単繊維断面の各々中央を結びこの線をA2とし、この長さをL2(mm)とする。コピー紙上に、A1とA2の交わる点を中心Cとし、(L1+L2)/2を直径とする円を描く。この円の重量を測定し、この重さをS1mg)とする(糸断面の総面積とみなす)。ついでこの円内に存在する全ての単繊維断面の重量を測定し、この総和をS2(mg)とする(図5参照)。
空隙率(%)=(S2−S1)/S1×100
n=5の平均の値を採用する。
糸断面の中心部の空洞の空隙率:
糸断面の最内に位置する隣り合う二つの単繊維断面の中央を順次直線で結んでできる多角形の重量を測定し、この重さをS3(mg)とする(図5参照)。
空洞の空隙率(%)=(S3/S1)×100
n=5の平均の値を採用する。
糸長差:
織編物からの糸は解撚し、仮撚後の糸はそのまま、無撚状態でサンプルを採取する。芯糸と側糸を分離し、各々0.02g/dの荷重下で糸長を測定する。側糸の長さをL1(mm),芯糸の長さをL2(mm)とするとき、
糸長差(%)=[(L1−L2)/L2]×100
n=5の平均の値を採用する。
但し、芯糸と側糸が分離しにくい場合があるので、試料長は問わない。
交絡数(個/m):
織編物から糸を解舒し、ついで検撚機で無撚となるまで解撚する(糸長50cm)。解撚した糸に、改めて50cmの印をする。ついで、試料を軽く手で数回こすって節の数を目視する。
交絡数(個/m)=目視で確認した数×2
n=5の平均の値を採用する。
捲縮発現率(K1):
カセ巻取り機にて5000デニールのカセとなるまで試料を巻き取った後、カセの下端中央に10gの荷重を吊るして上部中央でこのカセを固定し、0.001g/デニールの荷重が掛かった状態で90℃にて30分間熱処理を行う。次いで無荷重状態で室温に放置乾燥した後、再び10gの荷重を掛け5分間放置した後の糸長を測定しこれをL1(mm)とする。次に1Kgの荷重を掛け30秒間放置後の糸長を測定しL2(mm)とする。K1値は次式により求められる。
K1=〔(L2-L1)/L2〕×100
極限粘度:温度25℃においてオルソクロロフェノール10mlに対し、ポリエステル試料を0.8g溶解し、オストワルド粘度計を用いて次式で相対粘度ηγにより算出した。
ηγ=(η/η0 )−(t・d/t0 ・d0
極限粘度=0.0243ηγ+0.2634
η:ポリエステルの溶液粘度
η0 :溶媒の粘度
t:溶液の落下時間(秒)
d:溶液の密度(g/cm3
0 :オルソクロロフェノールの落下時間(秒)
0 :オルソクロロフェノールの密度(g/cm3
【0031】
実施例1
極限粘度が0.51のポリエチレンテレフタレート100%からなる低粘度成分と、極限粘度が0.74のトリシクロデカンジメタノールを6モル%共重合した変性ポリエチレンテレフタレート100%からなる高粘度成分とを重量複合比50:50でサイドバイサイド型に貼り合わせた半延伸複合フィラメント糸を紡糸速度2850m/分で紡糸した後、延伸して50d−24fの複合フィラメント糸を製造した。原糸物性は強度2.80g/d、伸度32.9%、熱水収縮率13.8%であった。
【0032】
他方、ポリエチレンテレフタレート100%を紡糸速度2,720m/分で紡糸し、130d−36fの単成分からなる伸度170%のマルチフィラメント半延伸糸を製造した。
【0033】
上記複合フィラメント糸とマルチフィラメント半延伸糸とを使用し、伸度差複合仮撚方法により複合捲縮糸を製造した。この伸度差複合仮撚方法においては上記複合フィラメント糸とマルチフィラメント半延伸糸とを引きそろえた後に交絡ノズルを用いて、次の条件で交絡処理を施し、引き続き図4の方式でフリクション仮撚を行った。
仮撚条件は次の通りである。
交絡条件:
オーバーフィード:4%
インターレース:空気圧4kg/cm2
糸速度:280m/分
仮撚温度:175℃
延伸倍率:1.01倍
仮撚数:2100回/m
【0034】
得られた加工糸は、交絡数が95個/mで、複合フィラメント糸が芯糸を形成し、ポリエステルマルチフィラメントが側糸を形成する構造加工糸であった。この構造加工糸の糸物性は、184デニール、強度1.54g/d,伸度30%、熱水収縮率が6%、であった。糸長差は28%であり、K1は12%であった。
【0035】
ついでこの構造加工糸にダブルツイスターで1、600回/mの撚をかけた(撚係数:21,703)。その後通常の撚糸セットを90℃で40分間実施した。この時点では通常の構造加工糸と同様の形態をしており、断面観察においても中心部の空洞等の特徴は出ていなかった。
【0036】
ついでこの糸を経および緯糸としてレピア織機で製織した。製織条件は次の通りである。
組織:経二重
生機密度:経90本/インチ、緯65本/インチ
得られた生機を次の条件で染色加工した。
精練・糊抜き:95℃
解撚:130℃×20分
減量率:15%
染色:135℃×60分
Sumikaron Red S-BL(住友化学社製) 3%owf
ファイナルセット:170℃
【0037】
仕上げた生地の密度は、経132本/インチ、緯65本/インチであり、染色加工における収縮率は経46%、緯32%であった。この生地から緯糸を解舒し、電子顕微鏡写真で観察した。非交絡部の断面は図1(写真1)に示すような極めて特徴的様態が観察された。1つにはその高い空隙率であり、また1つは、その中心部の空洞であった。糸断面全体での空隙率は73%で、中心部の空洞の空隙率は22%であった。また非交絡部の側面も図3(写真3)に示す様な特徴的様態が観察された。側糸は芯糸より大きく離れており、その撚角度は芯糸の撚角度よりも明確に大きく、芯糸の撚角度は70°、芯糸の撚角度は25°であった。この糸の伸長率は38%であった、またこの糸の25%伸長時の回復率は92%であり、35%伸長時の回復率は90%であった。また、この緯糸の撚係数は28,200であった。ついで経糸についても同様な観察を行ったが緯糸と同様の結果であった。なお交絡部では明確は空洞や顕著な撚角度差は見られなかった。
得られた織物の伸長率は横方向で32%、縦方向で33%であった。
【0038】
【発明の効果】
本発明は、梳毛調風合と高い伸縮性を合わせ持つ、新しい質感と高いストレッチ機能の織編物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の織編物を構成する伸縮性構造加工糸の非交絡部の1例を示す断面写真。
【図2】 従来の構造加工糸の非交絡部の1例を示す断面写真。
【図3】 本発明の織編物を構成する伸縮性構造加工糸の非交絡部の1例を示す側面写真。
【図4】 本発明の織編物を構成する伸縮性構造加工糸の製造に使用する仮撚機のモデル図
【図5】 伸縮性構造加工糸の断面空隙率及び空洞部の空隙率の求め方を説明するための加工糸断面図。
【符号の説明】
A:ポリエステルマルチフィラメント糸
B:サイドバイサイド型複合繊維からなるマルチフィラメント
1:インターレースノズル
2:仮撚ヒーター
3:フリクションディスク

Claims (1)

  1. 実撚を施した仮撚構造加工糸を含む織編物であって、該加工糸の非交絡部の断面空隙率が70〜80%であり、該断面の中心部に空隙率20〜30%の空洞を有し、該加工糸を構成する芯糸の撚角度が側糸の撚角度よりも小さい撚構造を呈しており、かつ該加工糸を構成する芯糸が、低収縮成分と高収縮成分とを貼り合わせたサイドバイサイド型複合繊維であって、該高収縮成分がトリシクロデカンジメタノールを5モル%以上共重合した共重合ポリエステルからなり、該織編物から解舒した加工糸の伸長率が25%以上、かつ25%伸長時の回復率が80%以上であることを特徴とする織編物。
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