JP3897641B2 - ミシン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はミシンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ジグザグ型等の形状の縫い目を形成するミシンの駆動アクチュエータとして、例えば、ソレノイドを用いていたが、糸さばき,糸切り,布押え等の種々の機構をより高い精度で制御するため、駆動アクチュエータとしてサーボモータ及びパルスモータ等のモータを用いるようになってきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、モータとカムとを併用して布押えを上昇及び下降する布押え機構と糸切りを行う糸切り機構とを駆動する駆動系において、ミシンのサイクルタイムを短縮するためには、モータの回転速度や加速レートを大きくすることが考えられる。しかしながら、モータの回転速度や加速レートは、使用するモータの性能と負荷とのバランスにより制限され限度がある。そのため、高出力のモータを使用することも考えられるが、そのようなモータを使用することは、コストアップにつながり、更に、モータが大型化して装置全体が大型化するのみならずモータ自体のイナーシャも大きくなり制御性が悪くなってしまうという問題がある。
【0004】
本発明の課題は、高出力のモータを使用することなくミシンのサイクルタイムを短縮できるミシンを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、例えば、図1〜図8に示すように、
布押え(51)を上昇及び下降させる押え上げ機構(30)と、
糸切りを行う糸切り機構(10)と、
これら両機構を駆動する単一の駆動モータ(押え糸切りパルスモータ70)と、
前記駆動モータの回転を制御する制御手段(制御装置8)と、
前記布押えの上昇を操作する操作手段(押えスイッチ95)と、を備え、
前記操作手段の操作に基づき布押えは上昇し、かつ、縫製動作終了時に糸切り機構と押え上げ機構とが順次作動して糸切りと布押えの上昇とを順次行うミシン(1)において、
前記駆動モータの回転駆動力を糸切り機構に対応した糸切り駆動力に変換する第一作動部(変曲部X2)、及び、糸切り機構に対して駆動モータの回転駆動力を伝達しない第一空走部(円弧部X1)を有する第一カム(61)と、
一端が第一カムの第一作動部を摺動するとき他端が糸切り機構に連結されて前記糸切り駆動力を糸切り機構に伝達する第一連結部材(糸切りリンク11)と、
前記駆動モータの回転駆動力を押え上げ機構に対応した押え上げ駆動力に変換する第二作動部(楕円部Y2)、及び、押え上げ機構に対して駆動モータの回転駆動力を伝達しない第二空走部(円弧部Y1)を有し、第一カムに対して所定の位相差をもって配置される第二カム(62)と、
一端が第二カムの第二作動部を摺動するとき他端が押え上げ機構に連結されて前記押え上げ駆動力を押え上げ機構に伝達する第二連結部材(押え上げリンク31)と、
を備え、
前記制御手段は、
前記操作手段の操作に基づき布押えが上昇する場合、第二連結部材が第二空走部を摺動せずに第二作動部を摺動するように駆動モータを制御して押え上げ機構を作動させ、
縫製終了時に布押えが上昇する場合、第一連結部材が第一空走部と第一作動部とを順次摺動するように駆動モータを制御して糸切り機構を作動させ、次に、第二連結部材が第二空走部と第二作動部とを順次摺動するように駆動モータを制御して押え上げ機構を作動させ、
縫製終了時に布押えが上昇する場合の駆動モータの制限速度及び加速レートの少なくとも一方を、操作手段の操作に基づき布押えが上昇する場合の駆動モータの制限速度及び加速レートよりも大きくするように制御することを特徴とする。
【0006】
請求項1記載の発明では、操作手段の操作に基づき布押えが上昇する場合、第二連結部材は第二空走部を摺動せずに第二作動部を摺動するので、駆動モータは、回転速度を加速させるためのトルク負荷(以下この段落では単に「加速負荷」という。)と押え上げ機構を作動させるためのトルク負荷(以下この段落では単に「押え上げ負荷」という。)とを受けた状態で回転する。これに対して、縫製終了時に布押えが上昇する場合は、第一連結部材は第一空走部と第一作動部とを順次摺動し、次に、第二連結部材は第二空走部と第二作動部とを順次摺動するので、第二連結部材が第二空走部を摺動している間に、駆動モータは、押え上げ負荷を受けずに加速負荷のみを受けた状態で回転する。つまり、操作手段の操作に基づき布押えが上昇する場合に比較して、縫製終了時に布押えが上昇する場合には、駆動モータを助走駆動させる期間が存在する。
【0007】
そして、請求項1記載の発明では、縫製終了時に布押えが上昇する場合の駆動モータの制限速度及び加速レートの少なくとも一方を、操作手段の操作に基づき布押えが上昇する場合の駆動モータの制限速度及び加速レートよりも大きくするように制御するから、操作手段の操作に基づき布押えが上昇する場合の駆動モータの回転よりも縫製終了時に布押えが上昇する場合の駆動モータの回転を、より負荷の少ない状態で高速回転させて、押え上げ機構を作動させることができる。これにより、高出力のモータを使用することなくミシンのサイクルタイムを短縮できる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のミシンにおいて、
前記制御手段は、
前記縫製終了時の糸切りの際に、前記第一連結部材が第一空走部と第一作動部とを順次摺動するときの駆動モータの制限速度及び加速レートの少なくとも一方を、操作手段の操作に基づき布押えが上昇する際の駆動モータの制限速度及び加速レートよりも大きくするように制御することを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明に関して上記した通り、操作手段の操作に基づき布押えが上昇する際には、駆動モータは、回転速度を加速させるためのトルク負荷(以下この段落では単に「加速負荷」という。)と押え上げ機構を作動させるためのトルク負荷とを受けた状態で回転する。これに対して、縫製終了時の糸切りの際には、第一連結部材は第一空走部と第一作動部とを順次摺動するので、第一連結部材が第一空走部を摺動している間に、駆動モータは、糸切り機構を作動させるためのトルク負荷を受けずに加速負荷のみを受けた状態で回転する。つまり、操作手段の操作に基づき布押えが上昇する際に比較して、縫製終了時の糸切りの際には、駆動モータを助走駆動させる期間が存在する。
【0010】
そして、請求項2記載の発明では、縫製終了時の糸切りの際の駆動モータの制限速度及び加速レートの少なくとも一方を、操作手段の操作に基づき布押えが上昇する際の駆動モータの制限速度及び加速レートよりも大きくするように制御するから、操作手段の操作に基づき布押えが上昇する際の駆動モータの回転よりも縫製終了時の糸切りの際の駆動モータの回転を、より負荷の少ない状態で高速回転させて、糸切り機構を作動させることができる。これにより、高出力のモータを使用することなくミシンのサイクルタイムを短縮できる。
【0011】
請求項3記載の発明は、例えば、図1〜図8に示すように、
所定の縫製パターンを記憶する記憶手段(制御装置8)と、
布押えを上昇及び下降させる押え上げ機構と、
前記押え上げ機構を駆動する駆動モータと、
前記駆動モータの回転を制御する制御手段と、
前記布押えの上昇を操作する操作手段と、を備え、
前記操作手段の操作に基づき布押えは上昇し、かつ、縫製パターンに従う縫製動作終了時に押え上げ機構が自動的に作動して布押えが上昇するミシンにおいて、
前記駆動モータの回転駆動力を押え上げ機構に対応した押え上げ駆動力に変換する作動部(楕円部Y2)、及び、押え上げ機構に対して駆動モータの回転駆動力を伝達しない空走部(円弧部Y1)を有するカム(第二カム62)と、
一端がカムの作動部を摺動するとき他端が押え上げ機構に連結されて前記押え上げ駆動力を押え上げ機構に伝達する連結部材(押え上げリンク31)と、
を備え、
前記制御手段は、
前記操作手段の操作に基づき布押えが上昇する場合、連結部材が空走部を摺動せずに作動部を摺動するように駆動モータを制御して押え上げ機構を作動させ、
縫製パターンに従う縫製動作終了時に布押えが上昇する場合、連結部材が空走部と作動部とを順次摺動するように駆動モータを制御して押え上げ機構を作動させ、
前記縫製パターンに従う縫製動作終了時に布押えが上昇する場合の駆動モータの制限速度及び加速レートの少なくとも一方を、操作手段の操作に基づき布押えが上昇する場合の駆動モータの制限速度及び加速レートよりも大きくするように制御することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明では、操作手段の操作に基づき布押えが上昇する場合、連結部材は空走部を摺動せずに作動部を摺動するので、駆動モータは、回転速度を加速させるためのトルク負荷(以下この段落では単に「加速負荷」という。)と押え上げ機構を作動させるためのトルク負荷(以下この段落では単に「押え上げ負荷」という。)とを受けた状態で回転する。これに対して、縫製パターンに従う縫製動作終了時に布押えが上昇する場合は、連結部材は空走部を摺動してから作動部を摺動するので、連結部材が空走部を摺動している間に、駆動モータは押え上げ負荷を受けずに加速負荷のみを受けた状態で回転する。つまり、操作手段の操作に基づき布押えが上昇する場合に比較して、縫製動作終了時に布押えが上昇する場合には、駆動モータを助走駆動させる期間が存在する。
【0013】
そして、請求項3記載の発明では、縫製動作終了時に布押えが上昇する場合の駆動モータの制限速度及び加速レートの少なくとも一方を、操作手段の操作に基づき布押えが上昇する場合の駆動モータの制限速度及び加速レートよりも大きくするように制御するから、操作手段の操作に基づき布押えが上昇する場合の駆動モータの回転よりも縫製動作終了時に布押えが上昇する場合の駆動モータの回転を、より負荷の少ない状態で高速回転させて、押え上げ機構を作動させることができる。これにより、請求項1同様、高出力のモータを使用することなくミシンのサイクルタイムを短縮できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のミシンに係る実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明の範囲は、図示例に限定されない。
図1は、本実施形態に係るミシン1の側面図である。このミシン1は、被縫製物(図示略)に本縫いを施すミシンとしての基本構成を具備するものである。すなわち、ミシン1は、略水平なベッド面2aを有するベッド部2と、ベッド部2の後端部に立設された縦胴部3と、縦胴部3の上部からベッド部2と略平行になるように前方に延出するアーム部4と、アーム部4の前端部から下方に向けて延出する針棒5と、針棒5の下端部に取り付けられた針6と、ベッド部2の内部空間に設けられた半回転釜(図示略)と、縫製動作の駆動源となる主軸モータ7と、種々のデータ入力を行うために用いる操作パネル100(図8及び図9参照)と、ミシン1全体を制御する制御装置8(図8参照)と、を具備する。
【0015】
ベッド部2のベッド面2aには被縫製物が載置され、この被縫製物は送り機構(図示略)によって前後方向及び左右方向に送られる。なお、この送り機構は、送り台(図示略)前後送りパルスモータ89(図8参照)及び左右送りパルスモータ91(図8参照)等を備え、制御装置8によって被縫製物の布送り動作が制御されるようになっている。
【0016】
針棒5は、上下動自在に設けられている。針棒5は主軸モータ7によって駆動される。つまり、主軸モータ7の駆動取出軸には回転自在な主軸(図示略)が直結しており、主軸の回転運動を針棒5の上下の往復運動に変換するクランク機構(図示略)が主軸と針棒5との間に介在している。従い、主軸モータ7が作動すると、主軸モータ7の運動が主軸及びクランク機構によって針棒5に伝動して、針棒5が上下に往復移動する。なお、主軸モータ7の駆動取出軸又は主軸にエンコーダ7a(図8参照)が設けられている。エンコーダ7aは主軸モータ7の駆動取出軸及び主軸の回転角度を検知するものであり、例えば、主軸モータ7の駆動取出軸が1°回転するごとにパルス信号を制御装置8に出力するようになっている。
【0017】
針棒5には針6が固定されている。針6の下端部分に糸通し孔が形成されており、上糸供給源から導き出された上糸は針6に至って糸通し孔を通っている。一方、針6の直下に半回転釜(図示略)が配置されており、半回転釜は、下降した針6から上糸を捕捉する剣先を具備している。半回転釜には、下糸が巻回されているボビンが収納されている。半回転釜は、半回転の往復運動するように構成されており、主軸モータ7によって駆動される。つまり、半回転釜には下軸が連結しており、下軸は伝動機構(図示略)に連結しており、伝動機構は主軸に連結している。従い、主軸モータ7が作動すると、主軸モータ7の運動が主軸、伝動機構及び下軸によって半回転釜に伝動して、半回転釜が半回転の往復運動をする。なお、ベッド部2のベッド面2aには針板9(図2参照)が固定されており、針板9には針穴9a(図2参照)が形成されている。針6は、この針穴9aを通ってベッド部2内に挿入される。
【0018】
針6が上下に一回往復運動する間に半回転釜が往復運動を一回行う。そして、針6が下降した際に半回転釜が剣先で上糸を捕捉することによって縫い目から針6の糸通し孔に至る上糸ループが形成され、半回転釜が往動することによって上糸ループが広がり、半回転釜が復動し始めたときに剣先から上糸が開放されて、上糸が下糸に絡む。このような針6と半回転釜との協働によって上糸に下糸が絡み、被縫製物に本縫いの縫い目が形成される。これが、ミシン1の縫製に係る動作であって、以下の説明では、上述の動作を単に「縫製動作」という。
【0019】
図2〜図4に示すように、このミシン1は、糸切りを行う糸切り機構10と、布押えを上昇及び下降させる押え上げ機構30と、被縫製物の布押えを行う布押え機構50と、を具備する。図2には、糸切り機構10、押え上げ機構30及び布押え機構50の斜視図を示した。図3には、図2において針板9に隠れて見えない、糸切り機構10を構成する一部の部材を示す平面図を示した。図4には、布押え機構50の斜視図を示した。
【0020】
まず、糸切り機構10の構成について説明する。糸切り機構10は、ボビンから針板9上に載置された被縫製物に連なる下糸及び上糸供給源から針板9上に載置された被縫製物に連なる上糸を、縫製動作終了直後に切断するものであって、主に、糸切りリンク11、糸切り連結棒13、固定メス部材14、可動メス部材15等から構成される。
【0021】
本発明の第一連結部材としての糸切りリンク11は、縦胴部3内において上下に延在した部材であって、途中でわずかに屈曲した細長い棒状に形成され、屈曲部11bにおいて、支持ピン12によって回動自在に縦胴部3に取り付けられている。糸切りリンク11の上端部には、後述する第一カム61のカム溝61aに摺動自在に嵌合する嵌合ピン11aが設けられている(図5(a)参照)。
【0022】
糸切りリンク11の下端部11cは、糸切り連結棒13の後端部とともに回動自在な状態で、取付板16に対してネジ17によって取り付けられている。取付板16の端部には、水平方向に曲げられた遮光板18aを有する遮光部材18が固定されている。一方、遮光部材18の近傍には、発光素子と受光素子からなるフォトインタラプタ19がベッド部2に固定されている。このフォトインタラプタ19は、糸切り機構10の原点位置を検出するもので、フォトインタラプタ19の発光素子と受光素子の間に遮光板18aが位置している状態のとき、原点位置にある旨の信号を制御装置8に出力するようになっている(図8参照)。
【0023】
糸切り連結棒13は、ベッド部2内において前後に延在した部材である。この糸切り連結棒13は、上方に少しずつ向かうように所定箇所で屈曲している細長い棒状の部材であり、その先端部13aは針板9の下方にまで達している。図3に示すように、先端部13aには、ネジ21を介して可動メス連結部材20が回動自在に連結されている。さらに、可動メス連結部材20上に糸切りレバー23が固定されている。可動メス連結部材20と糸切りレバー23には、針板9に固定されている連結ピン22が挿通し、可動メス連結部材20と糸切りレバー23は、連結ピン22を中心に共に回動可能となっている。糸切りレバー23の先端には可動メスリンク24の一端部24aが回動自在に接続されている。
【0024】
可動メスリンク24の他端部24bに対して、回動自在に可動メス部材15の中央部分が連結されている。可動メス部材15の端部15aは、止めネジ25に対して回動自在に取り付けられている。止めネジ25は針板9に固定されている。可動メス部材15の先端には、糸切りを行う際に上糸及び下糸を切断することなく払う糸払い部15bと、糸払い部15bで払った上糸及び下糸を捕捉するもので内側に湾曲している糸捕捉部15cと、さらに上糸及び下糸の糸切りを行うための可動刃15dが形成されている。可動メス部材15の近傍には、針板9にネジ止めされている固定メス部材14が設けられ、固定メス部材14の先端には、可動刃15dとの間で上糸及び下糸を挟持しこれを切断する固定刃14aが形成されている。
【0025】
次に、糸切り機構10の動作について説明する。上記構成を備える糸切り機構10は、縫製動作中は、図3(a)の状態であって、縫製動作が終了すると、押え上げ機構30及び布押え機構50が作動する前に、後述するカム部材60によって糸切りリンク11が、支持ピン12を中心に図2の反時計方向(矢印A方向)に回動し、その下端部は前方に移動する。これによって、図3(b)に示すように、糸切り連結棒13が前方に移動して、ネジ21を介して可動メス連結部材20が押されることから、連結ネジ22を中心に可動メス連結部材20及び糸切りレバー23が回転する。
【0026】
この糸切りレバー23の動作により、その先端に接続された可動メスリンク24が後方に押され、可動メス部材15は止めネジ25を中心に時計方向に回転する。この回転動作により、糸払い部15bによって、ボビンから被縫製物に連なる下糸及び上糸供給源から被縫製物に連なる上糸がさばかれ、切断すべき下糸及び上糸は糸捕捉部15cと固定刃14aとの間に位置するようになる。これが、ミシン1の糸さばきに係る動作であって、以下の説明では、上述の動作を単に「糸さばき動作」という。
【0027】
次いで、糸切りリンク11が支持ピン12を中心に時計方向に回動し、その下端部が後方に戻ると、糸切り機構10を構成する各部材が逆の動作をする。つまり、可動メス部材15は、図3(b)の状態から元に戻るように回転動作し、そのとき糸捕捉部15cによって上糸及び下糸を捕捉しながら回動することで、固定刃14aに下糸及び上糸が近づいていき、図3(c)に示すように、可動刃15dと固定刃14aが合致し、上糸及び下糸が切断される。可動メス部材15はそのまま逆転を続け、図3(a)の状態に戻る。これが、糸さばき動作後に行われる、ミシン1の糸切りに係る動作であって、以下の説明では、上述の動作を単に「糸切り動作」という。
【0028】
次に、押え上げ機構30の構成について説明する。押え上げ機構30は、縫製動作の前後において、布押え51を上昇及び下降させるもので、主に、押え上げリンク31と、押え駆動リンク32と、押え駆動腕35、押え駆動脚36等から構成される。
【0029】
本発明の第二連結部材としての押え上げリンク31は、縦胴部3内に配置された部材であって、略く字型に形成され、その屈曲部31bにおいて支点ピン42によって縦胴部3に対して回転自在に取り付けられている。押え上げリンク31の下端部31cには左側に突出するように、コロ43(図5(c)参照。図2では押え上げリンク31の陰になって見えない。)が固定され、このコロ43は後述するカム部材60の第二カム62の外周面62aに当接している(図5(a)(c)参照)。
【0030】
なお、押え上げリンク31と縦胴部3に固定されたモータ土台70aとには、巻きバネ44が掛けられており、押え上げリンク31は、巻きバネ44によりこのコロ43が第二カム62に当接するよう常に付勢されている。押え上げリンク31の上端部31aには、押え駆動リンク32の一端部32aが回動自在に連結されている。
【0031】
押え駆動リンク32は、アーム部4内において前後に延在した長尺な平棒状の部材であって、その他端部32bは、連動アーム33の下端部に回動自在に接続されている。押え駆動リンク32の一端部32aの近くの側面には、水平方向に曲げられた遮光板41aを有する遮光部材41が固定されている。一方、その遮光部材41の近傍には、発光素子と受光素子からなるフォトインタラプタ40がアーム部4に固定されている。このフォトインタラプタ40は、押え上げ機構30の原点位置を検出するもので、フォトインタラプタ40の発光素子と受光素子の間に遮光板41aが位置している状態のとき、原点位置にある旨の信号を制御装置8に出力するようになっている(図8参照)。
【0032】
連動アーム33は、その上端部において、アーム部4に回転自在に支持された軸部材34に対して、抱き締め固定されており、さらに軸部材34に対して、連動アーム33の左側において、横長に形成された押え駆動腕35が抱き締め固定され、軸部材34を支点として共に揺動するようになっている。従って、連動アーム33が軸部材34を支点として揺動すると、押え駆動腕35も、連動アーム33の揺動に連動して軸部材34を支点として揺動するようになっている。この押え駆動腕35の前端部35aには、上下に長い押え駆動脚36が回動自在に連結されている。
【0033】
押え駆動脚36は、水平方向の断面が略コ字状に形成され、その下縁部36aは下降した際に、後述する布押え機構50の当接ピン55に当接するようになっている。押え駆動脚36の途中には、横長の支持棒37の一端部が回動自在に支持されている。この支持棒37の他端部は、アーム部4にピン38を介して回動自在に取り付けられ、押え駆動脚36の下降時の方向は支持棒37によって規制されるようになっている。
【0034】
なお、押え駆動脚36と、その下方に位置する布押え機構50の当接ピン55との間には、所定寸法の間隔が設けられている。このため、押え駆動脚36が下降し始めてからこの間隔の分だけ遅れて布押え機構50の当接ピン55に当接するようになっている。
【0035】
次に、布押え機構50の構成について説明する。
図2及び図4に示すように、布押え機構50は、布押え51、支持台52、布押え駆動リンク53等から構成されている。
【0036】
支持台52は、ベッド部2に設けられており、布押え駆動リンク53を支持するように機能する。布押え駆動リンク53は、支持台52の左右両側面に略沿うように対となって配置されている。この一対の布押え駆動リンク53,53は、軸部材54によって支持台52に回動可能にそれぞれ取り付けられている。各布押え駆動リンク53の一端部53aには、縫製動作中に被縫製物を押える布押え51が固定されている。また、各布押え駆動リンク53の一部には上方延在部53bがそれぞれ設けられている。これら二つの上方延在部53b,53bの各上端の間には、当接ピン55が架け渡されるように設けられており、この当接ピン55は、押え上げ機構30の押え駆動脚36の下方近傍に配置されている。
【0037】
また、支持台52には、左右それぞれの方向に突出する二つのピン56,56が設けられている。そして、各ピン56と各布押え駆動リンク53の他端部53cとの間には巻きバネ(図示略)がそれぞれ掛けられており、各ピン56と各他端部53cとが互いに近づくように常に付勢された状態となっている。従って、上述した押え上げ機構30の押え駆動脚36が当接ピン55に当接していない場合には、各布押え駆動リンク53の一端部53aは、軸部材54を中心に下降した状態となっている。つまり、押え駆動脚36が当接ピン55に当接していない場合には、各布押え駆動リンク53の一端部53aに固定された布押え51は、下降した状態となっている。
【0038】
なお、詳細には説明しないが、上記構成を備える布押え機構50においては、支持台52の下端部52a近傍に下板57が設けられており、支持台52は、下板57とともに前後方向に移動可能であり、また、軸部52bを中心にして左右方向にも揺動可能である。
【0039】
次に、押え上げ機構30及び布押え機構50の動作について説明する。
図2に示す状態において、後述するカム部材60により押え上げリンク31が図2における反時計方向(矢印B方向)に回動すると、押え駆動リンク32は後方に引かれる。この動作によって、連動アーム33が、軸部材34を中心に後方に揺動することで、押え駆動腕35も軸部材34を中心に図2における時計方向に回動する。この押え駆動腕35の回動に従って、押え駆動脚36が支持棒37に規制されながら下降する。
【0040】
ここで、前述したように、押え駆動脚36と布押え機構50の当接ピン55との間には間隔をあけていることから、押え駆動脚36が下降し始めてから所定時間遅れて、下降した押え駆動脚16が当接ピン55に当接し、そのまま当接ピン55は押え駆動脚16によって下方に押し下げられる。そして、当接ピン55が下方に押し下げられることにより、支持台52に設けられた各ピン56と各布押え駆動リンク53の他端部53cとの間に掛かった巻きバネの付勢力に抗して、各布押え駆動リンク53が軸部材54を中心に図2における反時計方向に回動し、布押え51が上昇する。これが、ミシン1の布押え51の上昇に係る動作であって、以下の説明では、上述の動作を単に「布押え上昇動作」という。
【0041】
また、布押え上昇動作が行われて布押え51が上昇した状態において、押え上げリンク31が図2における時計方向に回動すると、布押え上昇動作とは逆の動作が行われて布押え51が下降する。これが、ミシン1の布押え51の下降に係る動作であって、以下の説明では、上述の動作を単に「布押え下降動作」という。なお、布押え下降動作が行われる際には、当接ピン55は押え駆動脚36に当接した状態で上昇し、やがて当接ピン55と押え駆動脚36との当接が解除されて押え駆動脚36のみが上昇する。何故なら、上述した通り、押え上げ機構30の押え駆動脚36と布押え機構50の当接ピン55との間には、所定寸法の間隔が設けられているからである。
【0042】
ここで、上述の説明からも分かるように、押え上げ機構30が作動することにより押え上げ機構30の動作が布押え機構50に伝達されて、布押え機構50が作動する。そして、布押え機構50が作動することにより、布押え上昇動作及び布押え下降動作が行われる。つまり、押え上げ機構30が作動することにより、布押え上昇動作及び布押え下降動作が行われるようになっている。
【0043】
また、詳細には説明しないが、ミシン1には、押え上げ機構30に連動して作動する糸払い機構59が備えられている。糸払い機構59は、糸切り機構10により上糸が切断された後でかつ布押え機構50の布押え51が上昇する前に、針6から被縫製物に連なる上糸を払い、針6側の糸端を被縫製物上に引き出す。
【0044】
以上説明した通り、糸切り機構10では糸切りリンク11が、押え上げ機構30及び布押え機構50では押え上げリンク31が、それぞれ起点となって動作を行う。糸切りリンク11及び押え上げリンク31は、押え糸切りパルスモータ70の回転駆動力がカム部材60を介して所定のタイミングで伝達されて、動作するように構成されている。以下、これら押え糸切りパルスモータ70及びカム部材60について説明する。
【0045】
本発明の駆動モータとしての押え糸切りパルスモータ70は、モータ土台70aとともに縦胴部3に固定されている。押え糸切りパルスモータ70の出力軸71には、後述するカム部材60の中央部が固定されており、カム部材60は、押え糸切りパルスモータ70によって所定角度回転するようになっている。
【0046】
押え糸切りパルスモータ70は、後述する制御装置8のCPU80によって駆動制御されるようになっている。糸切り機構10、押え上げ機構30及び布押え機構50の各動作は、このCPU80によって、押え糸切りパルスモータ70の回転方向と、動作中のパルス数と、をカウントしながらカム部材60の動作を制御することで行うようになっている。
【0047】
カム部材60は、図2に示すように、図2の正面から見て外形上が一部直線部分を含む略円形の箱体である第一カム61と、その正面側に一体に設けられている第二カム62と、から構成される。なお、図5(a)に、カム部材60を背面側から見た斜視図を示した。
【0048】
第一カム61は、図5(a)に示すように、裏面側に、略ハート型のカム溝61aが形成されている。糸切りリンク11の嵌合ピン11aは、このカム溝61aに嵌合し、その面に沿って摺動する。
【0049】
図5(b)にカム溝61aの形状を示した。P1〜P7は、一周の中のポイントとなる角度位置を便宜的に示したものである。カム溝61aは、P2からP3を経てP7までの間は、回転中心C1に対しての距離が等しい円弧を描くように形成されている。一方、P1を中心にP2からP7までの間は、P1に向かって回転中心との距離が短くなるように対称形に形成されている。以下、P2からP3を経てP7までの間を「円弧部X1」と称し、P1を中心にP2からP7までの間を「変曲部X2」と称することとする。
【0050】
前記した嵌合ピン11aは、図5(b)に模式的に示すように、カム部材60の回転に従って、カム溝61a内を相対的に移動する。よって、例えば、押え糸切りパルスモータ70が正方向に回転することで、嵌合ピン11aが円弧部X1であるP2からP3を経てP7までの間を移動しているときは、嵌合ピン11aと回転中心C1との距離は変わらず、糸切りリンク11は回転しない。押え糸切りパルスモータ70が逆方向に回転してP7からP3を経てP2に向かうときも同様である。従って、押え糸切りパルスモータ70が回転して嵌合ピン11aが円弧部X1を移動する際には、押え糸切りパルスモータ70の回転駆動力は糸切り機構10に伝達されない。つまり、円弧部X1が、本発明における第一空走部である。
【0051】
一方、嵌合ピン11aがP7からP1に移動するときには徐々に回転中心C1に近づいていく。これにより糸切りリンク11は、図2における反時計方向(矢印A方向)に回転し、前述のように可動メス部材15が固定刃14aを超えて移動するようになる。
【0052】
次いで、嵌合ピン11aがP1からP2を移動するときには徐々に回転中心C1から遠ざかり、糸切りリンク11は図2における時計方向に回転し、可動メス部材15は上糸及び下糸を捕捉しつつ固定刃14aとの間で上糸及び下糸を切断する。押え糸切りパルスモータ70が逆方向に回転して、嵌合ピン11aがP2からP1を経てP7に向かうときも同様である。すなわち、変曲部X2が、本発明における第一作動部である。
【0053】
第二カム62は、図2に示すように、第一カム61の正面側に一体に固定されている。図5(c)に第二カム62の形状を示した。図5(c)に示すように、この第二カム62は略だるま型に形成され、その外周面62aに押え上げリンク31のコロ43が当接している。図5(c)のQ1〜Q7は、一周の中のポイントとなる角度位置を便宜的に示したものである。外周面62aは、Q6からQ1を経てQ3までの間は、回転中心C1に対しての距離が等しい円弧を描くように形成されている。
【0054】
一方、Q3からQ4、及びQ6からQ5までの間は、それぞれQ4及びQ5に向かって回転中心との距離が長くなるように対称形に形成されている。さらに、Q4からQ5までの間は、回転中心C1までの距離が等しい円弧を描くように形成されている。以下、Q6からQ1を経てQ3までの間を「円弧部Y1」と称し、Q3からQ4、Q5を含めてQ6までの間を「楕円部Y2」と称することとする。
【0055】
前記したコロ43は、図5(c)に模式的に示すように、カム部材60の回転に従って、外周面62aに沿って相対的に移動する。よって、例えば、押え糸切りパルスモータ70が正方向に回転して、コロ43がQ6からQ1を経てQ3までの間を移動しているときは、コロ43と回転中心C1との距離は変わらず、押え上げリンク31は回転しない。押え糸切りパルスモータ70が逆方向に回転して、コロ43がQ3からQ1を経てQ6に向かうときも同様である。従って、押え糸切りパルスモータ70が回転してコロ43が円弧部Y1を移動する際には、押え糸切りパルスモータ70の回転駆動力は押え上げ機構30及び布押え機構50に伝達されない。つまり、円弧部Y1が、本発明における第二空走部である。
【0056】
一方、コロ43がQ3からQ4までを移動するときには、コロ43は徐々に回転中心C1から離れていく。これにより押え上げリンク31は、図2における反時計方向(矢印B方向)に回転し、前述のように押え駆動リンク32が後方に移動し、布押え51が上昇するようになる。
【0057】
また、押え糸切りパルスモータ70が逆方向に回転し、コロ43がQ4からQ3まで戻ると、コロ43は徐々に回転中心C1に近づき、押え上げリンク31は図2における時計方向に回転し、押え駆動リンク32が前方に戻り、布押え51が下降するようになる。Q6−Q5間でも同様であり、Q5に向かうときコロ43を介して押え駆動リンク31は図2における反時計方向に回転し、Q6に向かうとき図2における時計方向に回転する。すなわち、楕円部Y2が、本発明における第二作動部である。
【0058】
なお、第二カム62においてQ4−Q5間が円弧に形成されているのは、次の理由による。布押え51の場合、基本的に上昇と下降を連続して動作させることは少なく、例えば下降させた後、縫製し上昇させる、といった動作の流れになる。コロ43がQ4あるいはQ5に到達することで布押え51を上昇させたところで、押え糸切りパルスモータ70が停止しても、それに対するカム部材60の回転停止には機械的なずれが生じ、わずかにQ4又はQ5を過ぎてしまうことがある。Q4−Q5間を円弧に形成しておくことで、停止が遅くなって、Q4又はQ5をさらに超えて回転しても下降の動作が始まるといったことを防止できる。
【0059】
また、糸さばき動作、糸切り動作及び布押え上昇動作が所望の順序で行われるように考慮して、第一カム61及び第二カム62は、互いの位相関係と、嵌合ピン11aとコロ43それぞれの当接位置と、が設定されている。具体的には、P1−P7間、P1−P2間、Q1−Q7間、Q1−Q2間の角度はいずれも同じで(角度m1とする)であり、嵌合ピン11aがP7からP1を経てP2に向かうとき、ちょうどコロ43もQ7からQ1を経てQ2に向かうようになっている。すなわち、糸切り動作中は、押え上げ機構30及び布押え機構50は作動しない。
【0060】
また、コロ43がQ3からQ4に向かう布押え上昇動作中、嵌合ピン11aがP3−P4間を移動し糸切り機構10は作動しない。コロ43がQ5−Q6間を移動して押え上げ機構30及び布押え機構50を作動させている間も、嵌合ピン11aはP5−P6間を移動して糸切り機構10は作動しない。なお、コロ43が、Q4−Q5間に位置するとき、嵌合ピン11aはP4−P5間に位置するようになっている。
【0061】
さらに、カム部材60には、押え糸切りパルスモータ70の回転駆動力を、糸切り機構10、押え上げ機構30及び布押え機構50の何れの機構にも伝達させない領域(不作動領域)が設けられている。すなわち、嵌合ピン11aがP2−P3間にあってコロ43がQ2−Q3間にあるとき、および、嵌合ピン11aがP6−P7間にあってコロ43がQ6−Q7間にあるとき、糸切り機構10、押え上げ機構30及び布押え機構50のいずれも作動することはない。すなわち、図5(b)のP2−P3間及びP6−P7間の領域と、図5(c)のQ2−Q3間及びQ6−Q7間の領域は、不作動領域である。
【0062】
次に、カム部材60を中心とした糸切り機構10、押え上げ機構30及び布押え機構50の動作について、図6及び図7に基づいて説明する。図6及び図7は、カム部材60を中心とした動作を説明するための説明図である。なお、ここでは、糸切り機構10、押え上げ機構30及び布押え機構50の順で作動させる動作について説明する。
【0063】
まず、図6(a)に示した状態Iから糸切り動作を開始する。この状態Iにおいては、嵌合ピン11aは第一カム61のカム溝61aの円弧部X1に位置し、コロ43は第二カム62の外周面62aの円弧部Y1に当接している。
【0064】
この状態Iから、カム部材60は、押え糸切りパルスモータ70が正方向(図6及び図7矢印F参照。以下同じ。)に回転することで、図2及び図6における時計方向に回転する。嵌合ピン11aは円弧部X1を、コロ43は円弧部Y1を、そのまま相対的に移動していくが、やがて、嵌合ピン11aが円弧部X1と変曲部X2との境の位置(図5(b)のP7)に移動した状態IIとなる。
【0065】
ここから、嵌合ピン11aは変曲部X2内を移動し始め、糸切り機構10が動作を開始する。そして、嵌合ピン11aが変曲部X2の中央部(図5(b)のP1)に到達した状態III(図6(c)参照)になると、可動メス部材15は、前記した図3(b)の最も移動した状態になる。なお、状態IIから状態IIIに移行する際に、糸切り機構10による糸さばき動作が行われる。また、状態II及び状態IIIのいずれにおいても、コロ43は円弧部Y1を移動中であり、押え上げ機構30及び布押え機構50は作動しない。
【0066】
次いで、嵌合ピン11aは変曲部X2内をP1からP2に進み、この過程において、可動メス部材15は元に戻るよう動作し、その動作の途中で糸切り機構10は、糸切り動作を行う。そして、嵌合ピン11aは変曲部X2の終点位置(P2)に達し図7(a)に示した状態IVとなる。このとき、糸切り機構10の動作は終了する。さらに、同方向にカム部材60は回転し、嵌合ピン11aは図5(b)のP2−P3間(不作動領域)、コロ43は図5(c)のQ2−Q3間(不作動領域)を移動する。このとき、糸切り機構10、押え上げ機構30及び布押え機構50いずれの機構も作動しない。
【0067】
そして、図7(b)のように、コロ43が外周面62aの楕円部Y2(図5(c)の位置Q3)に達し(状態V)、ここから、押え上げリンク31が図2及び図7における反時計方向に回転し始め、押え上げ機構30及び布押え機構50が作動し、布押え機構50による布押え上昇動作が行われる。そして、図7(c)に示すように、コロ43がQ4−Q5間に達して状態VIとなり、布押え機構50による布押え上昇動作が終了し、ここで押え糸切りパルスモータ70は停止する。なお、状態V及び状態VIのいずれにおいても、嵌合ピン11aは円弧部X1に沿って移動するので糸切り機構10は作動しない。
【0068】
次に、図8に示すブロック図を参照して制御装置8の構成について説明する。制御装置8は、その基本構成として、予めミシン制御するための制御プログラム及びこの制御プログラムで使用されるデータ等が記憶されたROM82と、制御プログラムに基づく各種処理を行うCPU80と、ROM82から読み出したデータ及び制御プログラムに基づいてCPU80により算出されたデータ等が記憶されるRAM81と、縫製動作中における各針落ちの間での送り台(送り台にセットされた被縫製物)の前後方向及び左右方向への送り量等に関する所定の縫製パターンが複数記憶されているEEPROM83と、を備えるものである。
【0069】
CPU80には、インターフェース84a等を介して操作パネル100が接続されている。CPU80は、操作パネル100から入力されるデータに基づき、EEPROM83に記憶された複数の縫製パターンのなかから一つの縫製パターンを選択し、さらに、縫製パターンの変更をも行う。操作パネル100についてはさらに後述する。
【0070】
また、CPU80には、インターフェース84a等を介して押えスイッチ95が接続されている。CPU80は、押えスイッチ95から入力信号が入力された場合に押え上げ機構30及び布押え機構50を制御して布押え上昇動作及び布押え下降動作を行わせる処理を行う。なお、押えスイッチ95は、本発明の操作手段としての機能を有するものであって、後述するように、オペレータが押えスイッチ95を操作する(押す)毎に布押え上昇動作と布押え下降動作とが繰り返し行われるようになっている。
【0071】
また、CPU80には、インターフェース84a等を介してスタートスイッチ96が接続されている。CPU80は、スタートスイッチ96から縫製の開始を指示する入力信号が入力された場合に上記した縫製パターンに基づいて送り機構及びその他の機構を制御して縫製動作を行わせる処理を行い、縫製動作終了後は、糸切り機構10、押え上げ機構30及び布押え機構50等を制御して糸さばき動作、糸切り動作及び押え上昇動作等を行わせる処理を行う。
【0072】
また、CPU80には、インターフェース84b等を介して、押え糸切りパルスモータ70を駆動させるための駆動回路85が接続されている。さらに、CPU80には、インターフェース84b及び駆動回路85等を介して、押え糸切りパルスモータ70に設けられたエンコーダ72が接続されている。CPU80は、エンコーダ72から入力される入力信号により押え糸切りパルスモータ70の回転角度を認識して押え糸切りパルスモータ70の回転を制御し、糸切り機構10、押え上げ機構30及び布押え機構50等の動作を制御する。
【0073】
また、CPU80には、インターフェース84b等を介して、糸切り機構10の原点位置を検知するためのフォトインタラプタ19及び押え上げ機構30の原点位置を検知するためのフォトインタラプタ40が接続されている。CPU80は、フォトインタラプタ19から糸切り機構10が原点位置に位置しているか否かを示す入力信号を入力されてこの入力信号に基づく制御を行う。これと同様に、CPU80は、フォトインタラプタ40から押え上げ機構30が原点位置に位置しているか否かを示す入力信号を入力されてこの入力信号に基づく制御を行う。
【0074】
また、CPU80には、インターフェース84b等を介して、送り機構に備えられる前後送りパルスモータ89及び左右送りパルスモータ91をそれぞれ駆動する駆動回路86,87が接続されており、CPU80は、送り機構の送り台の前後方向及び左右方向の動作を制御する。さらに、CPU80には、送り台の原点位置(縫製動作を開始する位置)を検知するための前後送り原点センサ90及び左右送り原点センサ92が接続されている。CPU80は、前後送り原点センサ90及び左右送り原点センサ92から送り台が原点位置に位置しているか否かの入力信号を入力されてこの入力信号に基づく制御を行う。
【0075】
また、CPU80には、インターフェース84b等を介して、主軸モータ7を駆動する駆動回路88が接続されている。さらに、CPU80には、インターフェース84b及び駆動回路88等を介して、主軸モータ7に設けられたエンコーダ7aが接続されている。CPU80は、エンコーダ7aから入力される入力信号により主軸モータ7の回転角度を認識して主軸モータ70の回転を制御し、主軸及び下軸を含む針棒5及び反回転釜等の動作を制御する。
【0076】
次に、オペレータが縫製パターンの選択及び変更を行うための操作パネル100について図9を参照して説明する。
【0077】
操作パネル100には、複数ある縫製パターンから一つの縫製パターンを選択するための縫製パターン選択部101と、縫製動作の準備となる作業をCPU80に行わせる場合に操作する準備キー102と、が備えられている。
【0078】
縫製パターン選択部101は、複数ある縫製パターンの中から選択された縫製パターンをパターンNo.として表示する縫製パターン表示部101aと、押される度に表示されているパターンNo.に1を加算して選択される縫製パターンを変更する縫製パターンプラスキー101bと、押される度に表示されているパターンNo.に1を減算して選択される縫製パターンを変更する縫製パターンマイナスキー101cと、を備えている。
【0079】
次に、図5、図6、図7及び図11を参照しながら図10のフローチャートに従って、ミシン1が制御動作を行う際のCPU80における処理を説明する。なお、図11(a)は、押え糸切りパルスモータ70の回転角度(0°〜360°)に対する各種動作を模式的に示したものであって、特に、実線部分は押え上げ機構30及び布押え機構50に係る動作及び押え上げリンク31の移動量を示し、点線部分は糸切り機構10に係る動作及び糸切りリンク11の移動量を示すものである。図11(b)は、押え糸切りパルスモータ70の回転角度(0°〜360°)に対する回転速度を示すものである。
【0080】
図11に示す各回転角度において、「0°」は図7(c)の状態VIに対応し、「A点」は図6(a)の状態Iに対応し、「B点」は図6(b)の状態IIに対応し、「180°」は図6(c)の状態IIIに対応し、「C点」は図6(c)の状態IIIと図7(a)の状態IVとの間の状態に対応し、「D点」は図7(a)の状態IVに対応し、「E点」は図7(b)の状態Vに対応し、「360°」は図7(c)の状態VIに対応する。なお、押え糸切りパルスモータ70は、A点から回転駆動されるようになっている。
【0081】
まず、オペレータによりミシン1の電源が入れられると、操作パネル100の縫製パターンプラスキー101b又は縫製パターンマイナスキー101cが操作されたかをチェックし(ステップS1)、縫製パターンプラススイッチ101bが押されている場合にはデフォルト値としての縫製パターンに1を加算し、縫製パターンマイナスキー101cが押されている場合にはデフォルト値としての縫製パターンに1を減算して、縫製パターンを更新する(ステップS2)。
【0082】
次いで、操作パネル100の準備キー102が押されたか否かをチェックし(ステップS3)、押されている場合には、送り機構を作動させて送り台を原点位置まで移動させるとともに、布押え機構50を作動させて布押え51を原点位置(縫製動作を開始する位置)まで移動させる(ステップS4)。この状態において、押え上げ機構30は作動しないので、布押え51は下降した状態となっている。
【0083】
そして、被縫製物を所定位置にセットするために布押え機構50を作動させて布押え上昇動作を行わせる(ステップS5)。ここで、布押え上昇動作が行われる際に、図6(a)の状態Iから押え糸切りパルスモータ70が逆方向に回転することで図7(c)の状態VIに移行する。詳細には、コロ43が図5(c)のQ6からQ5へ向かうように楕円部Y2を移動して、コロ43がQ5−Q4間に達したところで押え糸切りパルスモータ70が停止する。このとき、図11(a)に示すように、押え糸切りパルスモータ70の回転角度はA点から0°に移行するが、図11(b)に示すように、押え糸切りパルスモータ70は、布押え51を上昇させるように布押え機構50を作動させるためのトルク負荷(以下単に「布押え上昇負荷」という。)及び回転加速度を大きくするためのトルク負荷(以下単に「加速負荷」という。)を受けた状態で制限速度V1まで加速しながら回転し、そのまま布押え上昇負荷のみを受けた状態で制限速度V1で定速で回転し、さらに布押え上昇負荷及び回転加速度を小さくするためのトルク負荷(以下単に「減速負荷」という。)を受けた状態で減速しながら回転して、最終的に停止する。
【0084】
次いで、操作パネル100の準備キー102が押されたか否かをチェックし(ステップS6)、押されている場合(ステップS6:YES)にはステップS1に戻り再度縫製パターンを変更することができ、押されていない場合(ステップS6:NO)には押えスイッチ95が押されたか否かをチェックする(ステップS7)。押されている場合には布押え機構50を作動させて布押え下降動作を行わせる(ステップS8)。このとき、図7(c)の状態VIから押え糸切りパルスモータ70が正方向に回転することで図6(a)の状態Iに移行し、図11(a)に示すように、押え糸切りパルスモータ70の回転角度は0°からA点に移行する。
【0085】
次いで、押えスイッチ95が押されたか否かをチェックし(ステップS9)、押されている場合(ステップS9:YES)にはステップS5同様の布押え上昇動作を行わせて(ステップS10)、ステップS7に戻る。ここで、ステップS7からステップS9までの工程において、押えスイッチ95が押される毎に布押え上昇動作と布押え下降動作とが繰り返し行われ、これにより被縫製物を所望の位置にセットし直すことができる。
【0086】
押えスイッチ95が押されていない場合(ステップS9:NO)には、スタートスイッチ96が押されたか否かをチェックし(ステップS11)、押されている場合には選択された縫製パターンに基づく縫製動作を行わせる(ステップS12)。次いで、主軸モータ7の最終回転動作に同期させた状態で、押え糸切りパルスモータ70を駆動させて糸切り機構10を作動させ、糸さばき動作を行わせる(ステップS13)。
【0087】
ここで、糸さばき動作が行われる際に、まず、図6(a)の状態Iから押え糸切りパルスモータ70が正方向に回転することで図6(b)の状態IIに移行する。詳細には、嵌合ピン11aが図5(b)のP6からP7へ向かうように円弧部X1を移動し、一方、コロ43が図5(c)のQ6からQ7へ向かうように円弧部Y1を移動する。このとき、図11(a)に示すように、押え糸切りパルスモータ70の回転角度はA点からB点に移行するが、図11(b)に示すように、押え糸切りパルスモータ70は、加速負荷のみを受けた状態で制限速度V3まで加速しながら回転する。
【0088】
そして、図6(b)の状態IIから押え糸切りパルスモータ70がさらに正方向に回転し続けることで図6(c)の状態IIIに移行する。詳細には、嵌合ピン11aが図5(b)のP7からP1へ向かうように変曲部X2を移動し、一方、コロ43が図5(c)のQ7からQ1へ向かうように円弧部Y1を移動する。このとき、図11(a)に示すように、押え糸切りパルスモータ70の回転角度はB点から180°に移行するが、図11(b)に示すように、押え糸切りパルスモータ70は、糸切り機構10による糸さばき動作を行わせるためのトルク負荷(以下単に「糸さばき負荷」という。)を受けた状態で制限速度V3で定速で回転する。
【0089】
さらに、図6(c)の状態IIIから押え糸切りパルスモータ70がさらに正方向にやや回転し続けることで図6(c)の状態IIIと図7(a)の状態IVとの間の状態に移行する。詳細には、嵌合ピン11aが図5(b)のP1からP2へ向かうように変曲部X2を移動し、かつ、コロ43が図5(c)のQ1からQ2へ向かうように円弧部Y1を移動して、嵌合ピン11aがP1−P2間の所定位置に達したところで、かつ、コロ43がQ1−Q2間の所定位置に達したところで押え糸切りパルスモータ70が停止する。このとき、図11(a)に示すように、押え糸切りパルスモータ70の回転角度は180°からC点に移行するが、図11(b)に示すように、押え糸切りパルスモータ70は、糸さばき負荷を受けた状態で制限速度V3で定速で回転し、やがて糸さばき負荷及び減速負荷を受けた状態で減速しながら回転して、最終的に停止する。この状態において、糸さばき動作が終了する。
【0090】
次いで、押え糸切りパルスモータ70を再度駆動させて糸切り機構10を再度作動させ、糸切り動作を行わせる(ステップS14)。ここで、糸切り動作が行われる際に、図6(c)の状態IIIと図7(a)の状態IVとの間の状態から押え糸切りパルスモータ70が正方向にやや回転することで図7(a)の状態IVに移行する。詳細には、嵌合ピン11aが図5(b)の前述したP1−P2間の所定位置からP2へ向かうように変曲部X2を移動し、かつ、コロ43が図5(c)の前述したQ1−Q2間の所定位置からQ2へ向かうように円弧部Y1を移動する。このとき、図11(a)に示すように、押え糸切りパルスモータ70の回転角度はC点からD点に移行するが、図11(b)に示すように、押え糸切りパルスモータ70は、糸切り機構10による糸切り動作を行わせるためのトルク負荷(以下単に「糸切り負荷」という。)及び加速負荷を受けた状態で加速しながら回転する。この状態において、縫製動作及び糸切り動作が終了する。
【0091】
次いで、布押え機構50を作動させて布押え上昇動作を行わせる(ステップS15)。ここで、布押え上昇動作が行われる際に、図7(a)の状態IVから押え糸切りパルスモータ70がさらに正方向に回転し続けることで図7(b)の状態Vに移行する。詳細には、嵌合ピン11aが図5(b)のP2からP3へ向かうように円弧部X1を移動し、かつ、コロ43が図5(c)のQ2からQ3へ向かうように円弧部Y1を移動する。このとき、図11(a)に示すように、押え糸切りパルスモータ70の回転角度はD点からE点に移行するが、図11(b)に示すように、押え糸切りパルスモータ70は、加速負荷のみを受けた状態で制限速度V2まで加速しながら回転し、やがて制限速度V2で定速で回転する。
【0092】
そして、図7(b)の状態Vから押え糸切りパルスモータ70がさらに正方向に回転し続けることで図7(c)の状態VIに移行する。詳細には、嵌合ピン11aが図5(b)のP3からP4へ向かうように円弧部X1を移動し、かつ、コロ43が図5(c)のQ3からQ4へ向かうように楕円部Y2を移動して、嵌合ピン11aがP4−P5間に達したところで、かつ、コロ43がQ4−Q5間に達したところで押え糸切りパルスモータ70が停止する。このとき、図11(a)に示すように、押え糸切りパルスモータ70の回転角度はE点から360°に移行するが、図11(b)に示すように、押え糸切りパルスモータ70は、布押え上昇負荷のみを受けた状態で制限速度V2で定速で回転し、やがて布押え負荷及び減速負荷を受けた状態で減速しながら回転して、最終的に停止する。この状態において、布押え上昇動作が終了する。
【0093】
そして、ステップS6へ戻り、上述したステップS6〜ステップS15の各動作を何回も続けることが可能となる。
【0094】
以上、本実施形態に係るミシン1では、押えスイッチ95の操作に基づき布押え上昇動作が行われる場合(図10のステップS9及びステップS10参照)には、巻きバネ44の付勢力に抗して押え上げリンク31を回転させかつ支持台52の各ピン56と各布押え駆動リンク53の他端部53cとの間の巻きバネの付勢力に抗して当接ピン55を押し下げている。この場合、押え糸切りパルスモータ70は、加速負荷に加えてこれら二つの巻きバネの付勢に対する抗力を含む布押え上昇負荷を受けた状態で回転する。これに対して、縫製動作終了時に布押え上昇動作が行われる場合(図10のステップS15参照)には、押え糸切りパルスモータ70は、布押え上昇動作前に糸切り負荷を受けるものの、糸切り動作後は布押え上昇負荷を受けずに加速負荷のみを受けた状態で回転が開始され、布押え上昇負荷を受ける際には、既にモータの加速が完了しており、布押え上昇負荷のみを受けた状態で回転することができる。
【0095】
従って、縫製動作終了時に布押え上昇動作が行われる場合の押え糸切りパルスモータ70の加速レートを、押えスイッチ95の操作に基づき布押え上昇動作が行われる場合の押え糸切りパルスモータ70の加速レートよりも大きくするように制御できる。加えて、縫製動作終了時に布押え上昇動作が行われる場合の押え糸切りパルスモータ70の制限速度V2を、押えスイッチ95の操作に基づき布押え上昇動作が行われる場合の押え糸切りパルスモータ70の制限速度V1よりも大きくするようにも制御できる。これらのことより、高出力のモータを使用することなくミシン1のサイクルタイムを短縮できる。
【0096】
また、本実施形態に係るミシン1では、糸さばき動作が行われる場合(図10のステップS13参照)に、押え糸切りパルスモータ70の回転角度が糸さばき動作を開始するB点ではなくA点で停止するように押え糸切りパルスモータ70を制御している。これは次の理由による。すなわち、上記した通りに主軸モータ7の最終回転動作に同期させた状態で押え糸切りパルスモータ70を駆動させて糸さばき動作を行わせる必要があり、また、ミシン1のサイクルタイムをより短縮するためにも押え糸切りパルスモータ70をできるだけ早く回転させた状態で糸さばき動作を開始させる必要がある。そこで、押え糸切りパルスモータ70の回転角度がB点ではなくA点で停止するように押え糸切りパルスモータ70を停止させ、押え糸切りパルスモータ70が加速負荷のみしか受けない期間、すなわち押え糸切りパルスモータ70の回転角度がA点からB点に移行する期間に、押え糸切りパルスモータ70を既に回転させた状態で(制限速度V3まで加速させた状態で)糸さばき動作が開始されるように、押え糸切りパルスモータ70の回転を制御している。
【0097】
従って、縫製動作終了時の糸切りの際(縫製動作終了時の糸切り機構10を作動させる際)において糸さばき動作が行われる際には、押え糸切りパルスモータ70は、回転角度がA点からB点に移行する期間に、加速負荷のみを受けた状態で回転が開始され、糸切り機構10を作動させるためのトルク負荷を受ける際には既にモータの加速が完了しており、この糸切り機構10を作動させるためのトルク負荷のみを受けた状態で回転することができる。これにより、縫製動作終了時に糸さばき動作が行われる際の押え糸切りパルスモータ70の加速レートを、押えスイッチ95の操作に基づき布押え上昇動作が行われる際の押え糸切りパルスモータ70の加速レートよりも大きくするように制御できる。加えて、縫製動作終了時に糸さばき動作が行われる際の押え糸切りパルスモータ70の制限速度V3を、押えスイッチ95の操作に基づき布押え上昇動作が行われる際の押え糸切りパルスモータ70の制限速度V1よりも大きくするようにも制御できる。これらのことより、高出力のモータを使用することなくミシン1のサイクルタイムを更に短縮できる。
【0098】
なお、本発明のミシン1の実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計の変更等が行われたものであってもよい。
例えば、上述の構成を備えるミシン1において、押え糸切りパルスモータ70を駆動源とする糸切り機構10を押え上げ機構30及び布押え機構50から差別化して、糸切り機構及びこの糸切り機構の駆動源等を別途備える実施形態も可能である。すなわち、このような実施形態に係るミシン1では、所定の縫製パターンの縫製動作終了時(例えば、ラベル付けといったラベルの各辺の縫製を行う際に、各辺の長さに対応する針数を予め設定しておきその針数分の縫製動作終了時)に、布押え上昇動作が自動的に行われる。そして、このミシン1では、前記の通り各辺の縫製が終了する毎に布押え上昇動作が自動的に行われるが、布押え上昇動作が行われた時点でオペレータ自身がラベルの取り回しを行う必要があり、オペレータがラベルを回転させて再度押えスイッチ95を操作することで、次ぎの縫製パターンに従う縫製(次ぎの辺の縫製)が開始される。
【0099】
ここで、ラベルの各辺の縫製動作が行われる際に各辺の針数が予め設定されているから、残りの針数を検知して布押え上昇動作を行わせるタイミングを制御できる。つまり、上述の実施形態と同様に、布押え上昇動作が行われる前の工程において押え糸切りパルスモータ70を予め助走駆動させておき押え糸切りパルスモータ70をより高速回転させた状態で布押え上昇動作を行わせることができる。勿論、この場合にも、縫製動作終了時に布押え上昇動作が行われる場合の押え糸切りパルスモータ70の制限速度及び加速レートの少なくとも一方を、押えスイッチ95の操作に基づき布押え上昇動作が行われる場合の押え糸切りパルスモータ70の制限速度及び加速レートよりも大きくするように制御できる。これらのことより、高出力のモータを使用することなくミシン1のサイクルタイムを短縮できる。
【0100】
また、本実施形態では、駆動モータをパルスモータ(押え糸切りパルスモータ70)としたが、パルスモータに限らずサーボモータであっても適用可能なことは勿論である。
【0101】
【発明の効果】
本発明によれば、高出力のモータを使用することなくミシンのサイクルタイムを短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係るミシンを示す側面図である。
【図2】本実施の形態に係る糸切り機構、押え上げ機構及び布押え機構を示す斜視図である。
【図3】前記糸切り機構を構成する固定メス部材と可動メス部材の糸切り時の動作を示す平面図である。
【図4】前記布押え機構を示す斜視図である。
【図5】(a)は本実施の形態に係るカム部材を背面から見た斜視図であり、(b)は前記カム部材の第一カムを示す平面図であり、(c)は前記カム部材の第二カムを示す平面図である。
【図6】前記ミシンの糸さばき動作、糸切り動作及び布押え上昇動作を説明するための説明図である。
【図7】図6から続く説明図である。
【図8】本実施の形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本実施の形態に係る操作パネルを示す正面図である。
【図10】前記制御装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】本実施の形態に係る押え糸切りパルスモータの動作を説明するための説明図である。
【符号の説明】
1 ミシン
8 制御装置(制御手段)
10 糸切り機構
11 糸切りリンク(第一連結部材)
11a 嵌合ピン
30 押え上げ機構
31 押え上げリンク(第二連結部材)
43 コロ
50 布押え機構
59 糸払い機構
60 カム部材
61 第一カム
61a カム溝
62 第二カム
62a 外周面
70 押え糸切りパルスモータ(駆動モータ)
95 押えスイッチ(操作手段)
X1 円弧部(第一空走部)
X2 変曲部(第一作動部)
Y1 円弧部(第二空走部)
Y2 楕円部(第二作動部)

Claims (3)

  1. 布押えを上昇及び下降させる押え上げ機構と、
    糸切りを行う糸切り機構と、
    これら両機構を駆動する単一の駆動モータと、
    前記駆動モータの回転を制御する制御手段と、
    前記布押えの上昇を操作する操作手段と、を備え、
    前記操作手段の操作に基づき布押えは上昇し、かつ、縫製動作終了時に糸切り機構と押え上げ機構とが順次作動して糸切りと布押えの上昇とを順次行うミシンにおいて、
    前記駆動モータの回転駆動力を糸切り機構に対応した糸切り駆動力に変換する第一作動部、及び、糸切り機構に対して駆動モータの回転駆動力を伝達しない第一空走部を有する第一カムと、
    一端が第一カムの第一作動部を摺動するとき他端が糸切り機構に連結されて前記糸切り駆動力を糸切り機構に伝達する第一連結部材と、
    前記駆動モータの回転駆動力を押え上げ機構に対応した押え上げ駆動力に変換する第二作動部、及び、押え上げ機構に対して駆動モータの回転駆動力を伝達しない第二空走部を有し、第一カムに対して所定の位相差をもって配置される第二カムと、
    一端が第二カムの第二作動部を摺動するとき他端が押え上げ機構に連結されて前記押え上げ駆動力を押え上げ機構に伝達する第二連結部材と、
    を備え、
    前記制御手段は、
    前記操作手段の操作に基づき布押えが上昇する場合、第二連結部材が第二空走部を摺動せずに第二作動部を摺動するように駆動モータを制御して押え上げ機構を作動させ、
    縫製終了時に布押えが上昇する場合、第一連結部材が第一空走部と第一作動部とを順次摺動するように駆動モータを制御して糸切り機構を作動させ、次に、第二連結部材が第二空走部と第二作動部とを順次摺動するように駆動モータを制御して押え上げ機構を作動させ、
    縫製終了時に布押えが上昇する場合の駆動モータの制限速度及び加速レートの少なくとも一方を、操作手段の操作に基づき布押えが上昇する場合の駆動モータの制限速度及び加速レートよりも大きくするように制御することを特徴とするミシ。
  2. 前記制御手段は、
    前記縫製終了時の糸切りの際に、前記第一連結部材が第一空走部と第一作動部とを順次作動するときの駆動モータの制限速度及び加速レートの少なくとも一方を、操作手段の操作に基づき布押えが上昇する際の駆動モータの制限速度及び加速レートよりも大きくするように制御することを特徴とする請求項1記載のミシン。
  3. 所定の縫製パターンを記憶する記憶手段と、
    布押えを上昇及び下降させる押え上げ機構と、
    前記押え上げ機構を駆動する駆動モータと、
    前記駆動モータの回転を制御する制御手段と、
    前記布押えの上昇を操作する操作手段と、を備え、
    前記操作手段の操作に基づき布押えは上昇し、かつ、縫製パターンに従う縫製動作終了時に押え上げ機構が自動的に作動して布押えが上昇するミシンにおいて、
    前記駆動モータの回転駆動力を押え上げ機構に対応した押え上げ駆動力に変換する作動部、及び、押え上げ機構に対して駆動モータの回転駆動力を伝達しない空走部を有するカムと、
    一端がカムの作動部を摺動するとき他端が押え上げ機構に連結されて前記押え上げ駆動力を押え上げ機構に伝達する連結部材と、
    を備え、
    前記制御手段は、
    前記操作手段の操作に基づき布押えが上昇する場合、連結部材が空走部を摺動せずに作動部を摺動するように駆動モータを制御して押え上げ機構を作動させ、
    縫製パターンに従う縫製動作終了時に布押えが上昇する場合、連結部材が空走部と作動部とを順次摺動するように駆動モータを制御して押え上げ機構を作動させ、
    前記縫製パターンに従う縫製動作終了時に布押えが上昇する場合の駆動モータの制限速度及び加速レートの少なくとも一方を、操作手段の操作に基づき布押えが上昇する場合の駆動モータの制限速度及び加速レートよりも大きくするように制御することを特徴とするミシン。
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