JP3896232B2 - 有機質正特性サーミスタおよびその製造方法 - Google Patents

有機質正特性サーミスタおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、温度センサーや過電流保護素子として用いられ、温度上昇とともに抵抗値が増大するPTC(positive temperature coefficient of resistivity )特性を有する有機質正特性サーミスタに関する。
【0002】
【従来の技術】
結晶性熱可塑性高分子に導電性粒子を分散させた有機質正特性サーミスタはこの分野では公知であり、米国特許第3243753号明細書および同第3351882号明細書等に開示されている。抵抗値の増大は、結晶性高分子が融解に伴って膨張し、導電性微粒子の導電経路を切断するためと考えられている。
【0003】
有機質正特性サーミスタは、自己制御型発熱体、過電流保護素子、温度センサー等に利用することができる。これらに要求される特性としては、非動作時の室温抵抗値が十分低いこと、室温抵抗値と動作時の抵抗値の変化率が十分大きいこと、繰り返し動作による抵抗値の変化が小さいことが挙げられる。
【0004】
熱可塑性結晶性高分子として、これまでポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフイン、エチレンと各種コモノマーとのポリオレフイン系コポリマー(エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー等)、もしくはポリビニリデンフルオライドなどのフツ素系のポリマーが使われてきた。これらの中でも、実質結晶性の高い高密度ポリエチレンが主に用いられている。この理由は、高結晶性高分子ほど膨張率が大きく、大きな抵抗変化率が得られること、低結晶性の高分子ほど結晶化速度が遅く、溶融後冷却した時、元の結晶状態に復帰できず室温での抵抗値の変化が大きくなることがあげられる。
【0005】
高密度ポリエチレンを用いるときの欠点に、その動作温度の高さが挙げられる。過電流保護素子として用いたときの素子の動作温度はその融点の130℃前後となり、回路基板上の他の電子部品への熱的な影響が無視できない場合がある。また、2次電池の加熱保護部品としては動作温度がやはり高すぎ、より低い温度で動作する保護素子が求められている。
【0006】
動作温度を下げるためにポリオレフインの融点を下げるには、低密度ポリエチレンのように側鎖の多い構造にし密度を下げる、またコモノマーを導入して共重合体とし(上記ポリオレフイン系コポリマー等)、融点を下げる等の方法がある。しかし、いずれの方法でも結晶化度を下げるととになり、充分な抵抗変化率が得られなかったり、結晶化に要する時間が長くなることから一度動作した後冷却したときの室温抵抗の復帰性が著しく損なわれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の有機質正特性サーミスタより動作温度を低くし、また特性に優れた有機質正特性サーミスタ、およびその製造方法を実現することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、メタロセン触媒を用いて重合されたポリマー、特に直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を使うことで、上記欠点を克服できることを見いだした。すなわち、動作温度を高密度ポリエチレンより低い100℃前後にしながら、良好な抵抗復帰性を維持するというものである。メタロセン触媒を使って重合することで、ポリマーの分子量分布は狭く、低密度・低分子量成分が少ないことが原因の一つと考えられる。更に従来のLLDPEでは高密度成分が結晶化し、それが結晶核になって結晶化が進むのに対し、メタロセン触媒を用いると結晶核が均一に生成・成長するため、素子が動作して融解してもその後の特性変化が小さいと考えられる。
【0009】
本発明では、スパイク状の突起を持つ導電性粒子を用い、これにより低い室温抵抗と大きい抵抗変化率が両立できる。
【0010】
なお、特開平5−47503号公報には、結晶性重合体とこれにスパイク状の突起を有する導電性粒子を混練してなる有機質正特性サーミスタが開示されている。また米国特許5378407号にはスパイク状の突起を有するフィラメント状のNiと、ポリオレフイン、オレフイン系コポリマー、又はフルオロポリマーからなる導電性ポリマー組成物が開示されているが、これら先行技術は、本発明のメタロセン触媒を用いたポリマーを用いることは全く教示していない。
【0011】
また、さらに動作温度を下げる必要があるときは、さらに低分子有機化合物を混入させることもできる。特開平11−168005号公報において、本発明者らは、熱可塑性高分子マトリックス、低分子有機化合物、スパイク状の突起を有する導電性粒子を含む有機質正特性サーミスタを提案しており、低い室温抵抗と大きい抵抗変化率を示し、動作温度も従来の高密度ポリエチレンをマトリックスとしたものより低くなっている。また、低分子有機化合物を動作物質にすると、ポリマーのように過冷却状態を取らないために加熱時に抵抗が増加する転移温度(動作温度)と、冷却時に低抵抗に復帰する温度をほとんど同じにできる可能性がある。
【0012】
この公報における熱可塑性高分子マトリックスが低密度ポリエチレンの場合、動作後素子が冷却するとき抵抗が高抵抗から低抵抗に復帰する温度は、素子が加熱し低抵抗から高抵抗へ変化する温度(動作温度)とほぼ同じである(R−T特性のヒステリシスが小さい)。また抵抗が増加した後に抵抗が液少するNTC現象もほとんど見られない。しかしながら、前述したようにその低い結晶化度により動作前後での抵抗値の復帰性に劣るという欠点が見られる。
【0013】
一方、前記公報における熱可塑性高分子マトリックスが高密度ポリエチレンの場合、抵抗値の復帰性は良好だが、低分子有機化合物の融点で動作し抵抗が増加した後に抵抗が減少するNTC現象が見られ、また動作後素子が冷却するとき抵抗が高抵抗から低抵抗に復帰する温度は、素子が加熱して低抵抗から高抵抗へ変化する温度よりも高くなる(R−T特性のヒステリシスが大きい)。
【0014】
これらは、低分子有機化合物が溶融するとその溶融粘度が低いために導電性粒子の再配列が容易に起こり動作後抵抗値が低下したり融点以上の温度でも抵抗値が減少するためと考えられる。低密度ポリエチレンがマトリックスの場合、その融点は高密度ポリエチレンよりも低く、低分子有機化合物が溶融したときマトリックスの低密度ポリエチレンの一部も溶融し、溶融成分全体の粘度を高くする。
【0015】
そのため導電性粒子の再配列を抑えることができ、これがヒステリシスは小さく、NTC現象も見られない原因と考えられる。NTC現象は動作したとき素子の熱暴走を引き起こすことがあり、また後者の大きなヒステリシスは、加熱保護素子のように温度センサー的使用法をするとき問題になりうる。本発明によるメタロセン触媒で重合したポリマーをマトリックスに用いることで、NTC現象やR−T特性のヒステリシスも小さく、抵抗値の復帰性も良好な有機質正特性サーミスタ素子を得ることができる。
【0016】
すなわち、このような目的は、下記の本発明により達成される。
(1)メタロセン触媒により合成されたポリマーである直鎖状低密度ポリエチレンおよびスパイク状の突起を有する導電性粒子を有し、前記直鎖状低密度ポリエチレンは、190℃における荷重2.16kgでのメルトフローレートが0.05〜20g/10分であり、且つ、密度が0.900〜0.940g/cm のものである有機質正特性サーミスタ。
(2)前記直鎖状低密度ポリエチレンは、長鎖分岐数が、主鎖の炭素数に対して、5/1000炭素数以下のものである上記(1)の有機質正特性サーミスタ。
(3)前記メタロセン触媒は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも1個有する周期律表第IVB、VB、VIB族の遷移金属化合物からなるメタロセン触媒成分(a)、有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)、および微粒子状担体(c)を少なくとも含んで構成されるものである上記(1)または(2)の有機質正特性サーミスタ。
(4)前記スパイク状の突起を有する導電性粒子は、鎖状に連なっている上記(1)〜(3)のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
(5)さらに低分子有機化合物を含有する上記(1)〜(4)のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
(6)前記低分子有機化合物は、融点が40〜100℃のものである上記(5)の有機質正特性サーミスタ。
(7)動作温度が200℃以下である上記(1)〜(6)のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
(8)非動作時における室温比抵抗値が10−2〜10Ω・cmである上記(1)〜(7)のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
(9)非動作時から動作時にかけての抵抗変化率が6桁以上である上記(1)〜(8)のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
(10)メタロセン触媒により、190℃における荷重2.16kgでのメルトフローレートが0.05〜20g/10分であり、且つ、密度が0.900〜0.940g/cm である直鎖状低密度ポリエチレンをポリマーとして合成し、このポリマーにスパイク状の突起を有する導電性粒子を含有させ、これらの混合物をシラン系カップリング剤で処理して有機質正特性サーミスタを得る有機質正特性サーミスタの製造方法。
【0017】
【作用】
本発明の有機質正特性サーミスタは、メタロセン触媒を用いて合成されたポリマー、スパイク状の突起を有する導電性粒子を含むことを特長とする。
【0018】
本発明では、スパイク状の突起を有する導電性粒子を用いているので、その形状によりトンネル電流が流れやすくなり、球状の導電性粒子と比較して低い室温抵抗が得られる。また、導電性粒子間の間隔が球状のものと比較して大きいため、動作時にはより大きな抵抗変化が得られる。
【0019】
さらに本発明では、メタロセン触媒を用いて合成されたポリマーを用い、従来の有機質正特性サーミスタより動作温度を低くすることができ、従来は困難であった低動作温度でありながら特性の安定性に優れた素子を得ることができる。また、本発明では低分子有機化合物を混入させることもでき、さらに動作温度を低くすることができる。また、その特性の安定性も優れている。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の有機質正特性サーミスタは、メタロセン触媒により合成されたポリマーおよびスパイク状の突起を有する導電性粒子を有するものである。
【0021】
本発明で用いるポリマーは、メタロセン触媒、すなわち有機金属化合物のメタロセンを主成分にした触媒を用いて合成される。本発明でいうメタロセン触媒とは、サンドイッチ化合物の一種で、ビス(シクロペンタジエニル)金属錯体系の触媒をいう。
【0022】
このようなメタロセン系触媒は、通常、例えばシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも1個有する周期律表第IVB、VB、VIB族の遷移金属化合物からなるメタロセン触媒成分(a)、有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)、微粒子状担体(c)、および必要に応じて有機アルミニウム化合物触媒成分(d)、イオン化イオン性化合物触媒成分(e)から形成される。
【0023】
本発明で好ましく用いられるメタロセン触媒成分(a)としては、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも1個有する周期律表第IVB、VB、VIB族の遷移金属化合物がある。このような遷移金属化合物としては、たとえば下記の一般式[I]で示される遷移金属化合物が挙げられる。
【0024】
ML1x ・・・ [I]
式中、xは、遷移金属原子Mの原子価である。Mは、好ましくは周期律表第IVB族から選ばれる遷移金属原子であり、具体的には、ジルコニウム、チタン、ハフニウムである。中でも、ジルコニウムおよびチタンが好ましい。
【0025】
L1 は、遷移金属原子Mに配位する配位子であり、これらのうち、少なくとも1個の配位子L1 は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子である。上記のような遷移金属原子Mに配位するシクロペンタジエニル骨格を有する配位子L1 としては、具体的には、シクロペンタジエニル基等のアルキル置換シクロペンタジエニル基、あるいはインデニル基、4,5,6,7-テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などが挙げられる。これらの基は、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基などで置換されていてもよい。
【0026】
上記一般式[I]で表わされる化合物がシクロペンタジエニル骨格を有する基を2個以上含む場合には、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する基同士は、エチレン、プロピレン等のアルキレン基、シリレン基またはジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基等の置換シリレン基などを介して結合されていてもよい。
【0027】
有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)としては、アルミノオキサンが好ましく用いられる。具体的には、式 −Al(R)O− [ただし、Rはアルキル基である] で表わされる繰り返し単位が通常3〜50程度のメチルアルミノオキサン、エチルアルミノオキサン、メチルエチルアルミノオキサン等が用いられる。また、鎖状の化合物の他、環状の化合物も用いることができる。
【0028】
オレフィン重合用触媒の調製で用いられる微粒子状担体(c)は、無機あるいは有機の化合物であって、粒径が通常10〜300μm程度であり、好ましくは20〜200μmの顆粒状ないし微粒子状の固体である。
【0029】
無機担体としては多孔質酸化物が好ましく、具体的にはSiO2 、Al23 、MgO、ZrO2 、TiO2 等を例示することができる。オレフィン重合用触媒の調製において必要に応じて用いられる有機アルミニウム化合物触媒成分(d)としては、具体的には、トリメチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド、メチルアルミニウムセスキクロリド等のアルキルアルミニウムセスキハライドなどを例示することができる。
【0030】
イオン化イオン性化合物触媒成分(e)としては、たとえばUSP−5,321,106号公報に記載されたトリフェニルボロン、MgCl2 、Al23 、SiO2 −Al23 等のルイス酸;トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のイオン性化合物;ドデカボラン、ビスn-ブチルアンモニウム(1-カルベドデカ)ボレート等のカルボラン化合物が挙げられる。
【0031】
本発明で用いられるポリマーは、上記のような触媒の存在下に、気相、またはスラリー状あるいは溶液状の液相で種々の条件で、原材料を重合させることにより得ることができる。
【0032】
エチレン系ポリマー(エチレンの単独重合体、エチレンと炭素数4〜20程度のα−オレフィンや環状オレフインとの共重合体、プロピレンの単独重合体、プロピレンとα−オレフインの共重合体等)やスチレン系ポリマーがある。なかでもエチレン系ポリマーが好ましく、エチレンとα−オレフインの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。
【0033】
直鎖状低密度ポリエチレンは、好ましくはエチレンと炭素原子数4〜20のα−オレフィンとを共重合させることにより得られる。
【0034】
エチレンとの共重合に用いられる炭素原子数4〜20のα- オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1- ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなどが挙げられる。これらの中では、炭素原子数4〜10のα- オレフィン、特に炭素原子数4〜8のα- オレフィンが好ましい。
【0035】
上記のようなα- オレフィンは、単独で、または2種以上組合わせて用いることができる。本発明で用いられる直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンから導かれる構成単位が50重量%以上100重量%未満、好ましくは75〜99重量%、さらに好ましくは80〜95重量%、特に好ましくは85〜95重量%の量で存在し、炭素原子数3〜20のα- オレフィンから導かれる構成単位が50重量%以下、好ましくは1〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%、特に好ましくは5〜15重量%の量で存在することが望ましい。
【0036】
本発明で用いられる直鎖状低密度ポリエチレンは、好ましくは密度が0.900〜0.940g/cm3 、より好ましくは0.910〜0.930g/cm3 の範囲にある。
【0037】
また、この直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃、荷重2.16kg)は、好ましくは0.05〜20g/10分、より好ましくは0.1〜10g/10分の範囲である。
【0038】
本発明で用いられる直鎖状低密度ポリエチレンの分子量分布は、前述したように狭いことが好ましく、分子量分布の尺度であるMw /Mn は6以下、さらに好ましくは4以下である。Mw は重量平均分子量、Mn は数平均分子量で、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法で測定される。
【0039】
また、本発明で用いられる直鎖状低密度ポリエチレンの長鎖分岐数は、主鎖の炭素数に対して、5/1000炭素数以下、さらに1/1000炭素数以下が好ましい。長鎖分岐数は、13C−NMR法で測定される。
【0040】
本発明では上記メタロセン触媒を用いて重合されたポリマーに加え、他のポリマーも混入させることができる。混入可能なポリマーとしては、熱可塑性ポリマーが好ましく、その重量はメタロセン触媒を用いて重合されたポリマーの25%以下であることが好ましい。
【0041】
具体的には、ポリオレフィン〔メタロセン触媒を用いずに重合されたポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリエチルアクリレート等のポリアルキルアクリレート、ポリメチル(メタ)アクリレート等のポリアルキル(メタ)アクリレート等〕、フッ素系ポリマー(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、これらのコポリマー等)、塩素系ポリマー(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、これらのコポリマー等)、ポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、これらのコポリマー等)、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0042】
本発明に用いるスパイク状の突起を有する導電性粒子は、1個、1個が鋭利な突起をもつ一次粒子から形成されており、粒径の1/3〜1/50の高さの円錘状のスパイク状の突起が1個の粒子に複数(通常10〜500個)存在するものである。その材質は金属、特にNi等が好ましい。
【0043】
このような導電性粒子は、1個、1個が個別に存在する粉体であってもよいが、一次粒子が10〜1000個程度鎖状に連なり二次粒子を形成していることが好ましい。鎖状のものには、一部一次粒子が存在してもよい。前者の例としては、スパイク状の突起をもつ球状のニッケルパウダがあり、商品名INCO Type 123ニッケルパウダ(インコ社製)として市販されており、その平均粒径は3〜7μm 程度、見かけの密度は1.8〜2.7g/cm3程度、比表面積は0.34〜0.44m2/g程度である。
【0044】
また、好ましく用いられる後者の例としては、フィラメント状ニッケルパウダがあり、商品名INCO Type 210、255、270、287ニッケルパウダ(インコ社製)として市販されており、このうちINCO Type 255、287が好ましい。そして、その一次粒子の平均粒径は、好ましくは0.1μm 以上、より好ましくは0.5以上4.0μm以下程度である。これらのうち、一次粒子の平均粒径は1.0以上4.0μm以下が最も好ましい。導電粒子の配合量は、ポリマー、またはポリマーおよび後述の低分子有機化合物の合計重量の1.5〜5倍、特に2.5〜4.5倍とすることが好ましい。配合量が少なくなると非動作時の室温抵抗を十分に低くできず、多くなると大きな抵抗率が得難くなり、また均一に分散することが困難になり、安定した特性が得られ難くなる。また、見かけの密度は0.3〜1.0g/cm3程度、比表面積は0.4〜2.5m2/g程度である。
【0045】
なお、この場合の平均粒径はフィッシュー・サブシーブ法で測定したものである。
【0046】
このような導電性粒子については、特開平5−47503号公報、米国特許第5378407号明細書に記載されている。
【0047】
本発明では上記ポリマーに加えて低分子有機化合物を用いることが好ましい。低分子有機化合物を添加することにより、温度変化に伴う抵抗変化が鋭くなり、また、動作温度の調節もポリマー自体で行うよりも容易となる。
【0048】
低分子有機化合物は、分子量が4000程度まで、好ましくは1000程度まで、さらに好ましくは200〜800の結晶性物質であれば特に制限はないが、常温(25℃程度の温度)で固体であるものが好ましい。その融点としては、好ましくは40〜100℃である。
【0049】
具体的には、炭化水素(具体的には、炭素数22以上のアルカン系の直鎖炭化水素等)、脂肪酸(具体的には、炭素数12以上のアルカン系の直鎖炭化水素の脂肪酸等)、脂肪酸エステル(具体的には、炭素数20以上の飽和脂肪酸とメチルアルコール等の低級アルコールとから得られる飽和脂肪酸のメチルエステル等)、脂肪酸アミド(具体的には、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド等)、脂肪族アミン(具体的には、炭素数16以上の脂肪族第1アミン)、高級アルコール(具体的には、炭素数16以上のn−アルキルアルコール)などであるが、これら自体を単独で、もしくは併用して用いることができる。
【0050】
低分子有機化合物は、各成分の分散を良好にするために、ポリマーの特性を考慮して適宜選択すればよい。低分子有機化合物としては脂肪酸が好ましい。
【0051】
これらの低分子有機化合物は、市販されており、市販品をそのまま用いることができる。
【0052】
本発明では、動作温度が好ましくは200℃以下、さらに好ましくは100℃以下であるサーミスタを目的としているため、低分子有機化合物としては、融点mpが40〜200℃、さらに好ましくは40〜100℃であるものを用いることが好ましい。このようなものとしては、炭化水素(パラフィンワックス、商品名HNP−10、(日本精蝋製);mp75℃など)、脂肪酸(例えば、ベヘン酸(日本精化製);mp81℃、ステアリン酸(日本精化製);mp72℃、パルミチン酸(日本精化製);mp64℃など)、脂肪酸エステル(例えば、アラキン酸メチルエステル(東京化成製);mp48℃など)、脂肪酸アミド(例えば、オレイン酸アミド(日本精化製);mp76℃)などがある。また、ポリエチレンワックス(例えば商品名三井ハイワックス110(三井石油化学工業社製);mp100℃)、ステアリン酸アミド(mp109℃)、ベヘン酸アミド(mp111℃)、N−N’−エチレンビスラウリン酸アミド(mp157℃)、N−N’−ジオレイルアジピン酸アミド(mp119℃)、N−N’−ヘキサメチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド(mp140℃)などもある。また、パラフィンワックスに樹脂類を配合した配合ワックスやこの配合ワックスにマイクロクリスタリンワックスを混合したものであって融点を40〜200℃にしたものも好ましく用いることができる。
【0053】
低分子有機化合物は、動作温度等によって1種あるいは2種以上を選択して用いることができる。
【0054】
用いる低分子有機化合物の重量は、上記ポリマーの合計重量の0.2〜4倍、特に0.2〜2.5倍であることが好ましい。この混合比が小さくなって低分子有機化合物の量が少なくなると、抵抗変化率が十分得られにくくなってくる。反対に混合比が大きくなって低分子有機化合物の量が多くなると、低分子化合物が溶融する際に素体が大きく変形する他、導電性粒子との混合が困難になってくる。
【0055】
また、補助的に導電性を付与するための導電性粒子として、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、金属被覆カーボンブラック、グラファイト化カーボンブラック、金属被覆炭素繊維等の炭素系導電性粒子、球状、フレーク状、繊維状等の金属粒子、異種金属被覆金属(銀コートニッケル等)粒子、炭化タングステン、窒化チタン、窒化ジルコニウム、炭化チタン、ホウ化チタン、ケイ化モリブデン等のセラミック系導電性粒子、また、特開平8−31554号、同9−27383号公報に記載されている導電性チタン酸カリウムウィスカー等を添加してもよい。このような導電性粒子は、スパイク状の突起を有する導電性粒子の25重量%以下とすることが好ましい。
【0056】
用いる導電性粒子の重量は、メタロセン触媒を用いて合成されたポリマーと低分子有機化合物の合計重量(硬化剤等を含む有機成分の合計重量)の1.5〜5倍であることが好ましい。この混合比が小さくなって導電性粒子の量が少なくなると、非動作時の室温抵抗を十分低くすることができなくなってくる。反対に導電性粒子の量が多くなると、大きな抵抗変化率が得られにくくなり、また、均一な混合が困難になって安定した特性が得られにくくなってくる。
【0057】
次に、本発明の有機質正特性サーミスタの製造方法について説明する。
まず、所定量のポリマー、必要により低分子有機化合物およびスパイク状の突起を有する導電性粒子を混練、分散する。
【0058】
混合・分散は既知の方法によればよく、用いるポリマーの融点以上の温度、好ましくは5〜40℃高い温度においてミル等で5〜90分程度混練すればよい。また、低分子有機化合物を用いる場合、あらかじめポリマーと低分子有機化合物を溶融混合、または溶媒中で溶解し混合することもできる。各種撹拌機、分散機、ミル、塗料用ロール機等が用いられる。混合中に気泡が混入した場合は真空脱泡を行う。粘度の調製のために、芳香族炭化水素、ケトン類、アルコール類等各種溶媒を用いてもよい。
【0059】
得られた混練物は必要に応じて架橋処理を行っても良い。具体的には、有機過酸化物を用いる化学架橋、放射線照射による架橋、シラン系カップリング剤をグラフト化させ水の存在下でシラノール基の縮合反応を用いるシラン架橋法を用いることができる。
【0060】
ポリマーと低分子有機化合物の熱劣化を防止するため酸化防止剤を混入することもでき、フェノール類、有機イオウ類、フォスファイト類などが用いられる。
【0061】
混練物は所定の厚さのシート形状にプレス成形し、Ni、Cu等の金属電極を熱圧着したり、導電性ペースト等を塗布して電極とする。
【0062】
得られたシート成形体は所望の形状に打ち抜いてサーミスタ素子とする。
【0063】
また、良熱導電性添加物として、特開昭57−12061号公報に記載されている窒化ケイ素、シリカ、アルミナ、粘土(雲母、タルク等)、特公平7−77161号公報に記載されているシリコン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ベリリア、セレン、特開平5−217711号公報に記載されている無機窒化物、酸化マグネシウム等を添加してもよい。
【0064】
耐久性向上のために、特開平5−226112号公報に記載されている酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、シリカ、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化クロム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化鉛、特開平6−68963号公報に記載されている高比誘電率の無機固体、具体的には、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム等を添加してもよい。
【0065】
耐電圧改善のために、特開平4−74383号公報に記載されている炭化ホウ素等を添加してもよい。
【0066】
強度改善のために、特開平5−74603号公報に記載されている水和チタン酸アルカリ、特開平8−17563号公報に記載されている酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、シリカ等を添加してもよい。
【0067】
結晶核剤として、特公昭59−10553号公報に記載されているハロゲン化アルカリ、メラミン樹脂、特開平6−76511号公報に記載されている安息香酸、ジベンジリデンソルビトール、安息香酸金属塩、特開平7−6864号公報に記載されているタルク、ゼオライト、ジベンジリデンソルビトール、特開平7−263127号公報に記載されているソルビトール誘導体(ゲル化剤)、アスファルト、さらには、リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム等を添加してもよい。
【0068】
ア−ク調節制御剤としては、特公平4−28744号公報に記載されているアルミナ、マグネシア水和物、特開昭61−250058号公報に記載されている金属水和物、炭化ケイ素等を添加してもよい。
【0069】
金属害防止剤として、特開平7−6864号公報に記載されているイルガノックスMD1024(チバガイギー製)等を添加してもよい。
【0070】
また、難燃剤として、特開昭61−239581号公報に記載されている三酸化二アンチモン、水酸化アルミニウム、特開平5−74603号公報に記載されている水酸化マグネシウム、さらには、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のハロゲンを含有する有機化合物(重合体を含む)、リン酸アンモニウム等のリン系化合物等を添加してもよい。
【0071】
これら以外にも、硫化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノシリケート粘土(雲母、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト等)、ガラス粉、ガラスフレーク、ガラス繊維、硫酸カルシウム等を添加してもよい。
【0072】
これらの添加剤は、高分子マトリックス、低分子有機化合物および導電性粒子の合計重量の25重量%以下であることが好ましい。
【0073】
本発明の有機質正特性サーミスタは、非動作時における初期抵抗が低く、その室温比抵抗値は10-2〜100Ω・cm程度であり、動作時における抵抗の立ち上がりが急峻であり、非動作時から動作時にかけての抵抗変化率が6桁以上と大きい。
【0074】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例とともに示し、本発明を具体的に説明する。
<実施例1>
メタロセン触媒を用いて気相法合成された直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学製、商品名エボリューSP2020、MFR=1.5g /10min 融点:117℃)、導電性粒子としてフィラメント状ニッケルパウダ(INCO社製、商品名Type255ニッケルパウダ、平均粒径2.2〜2.8μm 、見かけ密度0.5〜0.659/cm3 、比表面積0.68m2 /g )を用いた。直鎖状低密度ポリエチレン4倍重量のニッケルパウダとをミル中135℃で20分間混練した。
【0075】
混練物を135℃で厚さ1.1mmのシート状に熱プレス機で成形し、両面を厚さ約30μm のNi箔電極で挟み、熱プレス機で135℃でNi箔を熱圧着し、全体で厚さ1mmとした。これを直径1cmの円盤状に打ち抜き、有機質正特性サーミスタ素子とした。
【0076】
このサーミスタ素子の概略断面図を図1に示す。図1に示されるように、サーミスタ素子はNi箔から形成された電極11間に、ポリマーと導電性粒子とを含むシート状硬化物であるサーミスタ素体12を挟み込んだものである。
【0077】
この素子を恒温槽内で室温(25℃)から120℃まで2℃/minで加熱、冷却し、所定の温度で、4端子法で抵抗値を測定して温度−抵抗曲線を得た。この結果を図2に示す。
【0078】
初期室温抵抗(25℃)は4.9×10-3Ω(3.8×10-2Ω・cm)、融点100℃付近で抵抗値は急激に上昇し、抵抗変化率は11桁以上であった。室温に冷却された後の抵抗値は、3.6×10-3Ω(2.8×10-2Ω・cm)でほとんど変化がなく、抵抗値の復帰性は良好だった。
【0079】
<実施例2>
ポリマーとしてメタロセン触媒を用いて合成された直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学製、商品名エボリューSP2020、MFR=1.5g /10min 融点:117℃)、導電性粒子としてフィラメント状ニッケルパウダ(INCO社製、商品名Type255ニッケルパウダ、平均粒径2.2〜2.8μm 、見かけ密度0.5〜0.659/cm3 、比表面積0.68m2 /g )を用い、さらに低分子有機化合物としてパラフィンワックス(日本精蝋製、商品名HNP−10、融点75℃)を用いた。直鎖状低密度ポリエチレンと、その4倍重量のニッケルパウダとをミル中135℃で5分間混練した。
【0080】
その後直鎖状低密度ポリエチレンの66重量%のパラフィンワックスとワックスの4倍重量のニッケルパウダを加え、さらに有機物合計重量の0.5重量%のシランカップリング剤(ビニルトリエトキシシラン、信越化学工業製、商品名KBE1003)、シランカップリング剤の20重量%の有機過酸化物(2−2’−ジ−(−t−ブチルパーオキシ)ブタン、化薬アクゾ製、商品名トリゴノックスDT50)とを加え、さちに15分間混練した。
【0081】
混練物を135℃で厚さ1.1mmのシート状に熱プレス機で成形し、これをジブチルすずジラウレート(東京化成製)20重量%乳濁水液に浸漬し、65℃で8時間架橋処理を行った。
【0082】
架橋処理したシートを真空乾燥後、両面を厚さ約30μm のNi箔電極で挟み、熱プレス機で150℃でNi箔を熱圧着し、全体で厚さ1mmとした。これを直径1cmの円盤状に打ち抜き、有機質正特性サーミスタ素子とした。
【0083】
温度−抵抗特性を図3に示す。初期室温抵抗は4.2×10-3Ω(3.3×10-2Ω・cm)、パラフィンワックスの融点付近で急激に抵抗が増加し、抵抗変化率は11桁以上が得られた。抵抗が増加した後さらに加熱を120℃まで続けてもNTC現象は見られず、冷却時の温度−抵抗曲線は加熱時のそれとほとんど変化することなく、ヒステリシスは充分小さいものであった。室温に冷却された後の抵抗値は3.6×10-3Ω(2.8×10-2Ω・cm)でほとんど変化がなく、抵抗値の復帰性は良好であった。
【0084】
この素子を80℃80%RHに設定した恒温恒湿槽に放置して加速試験を行った。500時間後の室温抵抗値は2.3×10-3Ω(1.8×10-2Ω・cm)でほとんど変化が無く、抵抗変化率も11桁以上が得られ、充分なPTC特性が保たれていた。この温度−抵抗曲線を図3に示すが、抵抗増加後のNTC現象は全く見られず、加熱と冷却時のプロファイルの変化が小さいことがわかる。この加速条件は、絶対湿度に換算すると東京で20年以上、那覇で10年以上の湿度寿命に相当する。
【0085】
また、この素子に10A−5VDCの電流を印加しジュール熱で10秒間動作(ON状態)させ、50秒間電流を切る(OFF状態)ことによる断続負荷試験を行った。室温抵抗値は3.9×10-3Ω(3.1×10-2Ω・cm)、抵抗変化率は11桁以上が得られ、充分なPTC特性が保たれることがわかった。加速試験後と同様、抵抗増加後のNTC現象は見られず、加熱と冷却時のプロファイルの変化は小さくヒスチリシスは十分小さいことがわかった。
【0086】
<実施例3>
実施例2のパラフィンワックスに代え、融点66℃のパラフィンワックス(日本精蝋製、商品名HNP−3)を用いた他は実施例2と同様にして有機質サーミスタ素子を作製した。
【0087】
この素子の温度−抵抗特性を実施例2と同様にして測定した。室温抵抗は3.4×10-3Ω(2.6×10-2Ω・cm)、65℃で急激に抵抗が増加し、抵抗変化率は11桁以上が得られた。動作温度は用いる低分子有機化合物の融点により容易に調整が可能であることがわかった。抵抗が増加した後の加熱でもNTC現象は見られず、加熱と冷却時の温度−抵抗曲線はほとんど変化することなく、ヒステリシスは充分小さいものであった。室温に冷却された後の抵抗値は4.4×10-3Ω(3.5×10-2Ω・cm)でほとんど変化がなく、抵抗値の復帰性は良好であった。
【0088】
<実施例4>
実施例2のパラフィンワックスに代え、アラキン酸メチルエステル(東京化成製、融点48℃)を用いた他は実施例2と同様にして有機質サーミスタ素子を作製した。
【0089】
この素子の温度−抵抗特性を実施例2と同様にして測定した。室温抵抗は3.9×10-3Ω(3.1×10-2Ω・cm)、50℃で急激に抵抗が増加し、抵抗変化率は11桁以上が得られた。抵抗が増加した後の加熱でもNTC現象は見られず、加熱と冷却時の温度−抵抗曲線はほとんど変化することなく、ヒステリシスは充分小さいものであった。室温に冷却された後の抵抗値は4.2×10-3Ω(3.3×10-2Ω・cm)でほとんど変化がなく、抵抗値の復帰性は良好であった。
【0090】
<実施例5>
実施例2のパラフィンワックスに代え、ベヘン酸(日本精化製、融点81℃)を用いた他は実施例2と同様にして有機質サーミスタ素子を作製した。
【0091】
この素子の温度−抵抗特性を実施例2と同様にして測定した。室温抵抗は3.4×10-3Ω(2.6×10-2Ω・cm)、83℃で急激に抵抗が増加し、抵抗変化率は11桁以上が得られた。抵抗が増加した後の加熱でもNTC現象は見られず、加熱と冷却時の温度−抵抗曲線はほとんど変化することなく、ヒステリシスは充分小さいものであった。室温に冷却された後の抵抗値は4.1×10-3Ω(3.2×10-2Ω・cm)でほとんど変化がなく、抵抗値の復帰性は良好であった。
【0092】
<比較例1>
ポリマーに高密度ポリエチレン(日本ポリケム製、商品名HY540、MFR=1.0g /10min 、融点:135℃)を用いた他は実施例1と同様にサーミスタ素子を作製した。
【0093】
この素子を室温−150℃−室温のサイクルで実施例1と同様に温度−抵抗特性を測定した。初期室温抵抗は5.5×10-3Ω(4.3×10-2Ω・cm)、抵抗変化率は11桁以上が得られたが、動作温度は130℃以上の高い温度であった。
【0094】
<比較例2>
比較例1の高密度ポリエチレンを低密度ポリエチレン(日本ポリケム製、商品名LC500、MFR=4.0g /10min 、融点:106℃)にした他は同条件で有機質サーミスタ素子を作製した。
【0095】
室温抵抗は1.2×10-10Ω(9.4×10-2Ω・cm)、動作温度は85℃で抵抗変化率は9桁以上が得られたが、室温に冷却された後の抵抗値は1.69Ω(13.3Ω・cm)で1桁以上上昇し、抵抗値の復帰性は非常に悪いものであった。
【0096】
<比較例3>
実施例2の直鎖状低密度ポリエチレンを高密度ポリエチレン(日本ポリケム製、商品名HY540、MFR=1.0g /10min 、融点:135℃)に代えて素子を調整した。高密度ポリエチレンと、その4倍重量のニッケルパウダとをミル中135℃で5分間混練し、その後高密度ポリエチレンの1.5倍重量のパラフィンワックスとワックスの4倍重量のニッケルパウダを加えたほかは実施例2と同様に素子を作製した。
【0097】
室温抵抗は2.9×10-3Ω(2.3×10-2Ω・cm)、パラフィンワックスの融点75℃付近で抵抗は急激に増大し、抵抗変化率は11桁以上が得られた。しかし、抵抗値が増大した後120℃まで加熱を続けたところ、大きく抵抗が減少するNTC現象が見られた。
【0098】
また冷却時には、加熱時の動作温度75℃よリ40℃高い115℃付近から抵抗の減少が始まり大きなヒステリシスを示した。室温に冷却された後の抵抗値は4.1×10−3Ω(3.2×10−2Ω・cm)でほとんど変化せず、抵抗値の復帰性は良好であった。
【0099】
<比較例4>
比較例3の高密度ポリエチレンを低密度ポリエチレン(日本ポリケム製、商品名LC500MFR=4.0g /10min 、融点:106℃)に代えた他は同様にサーミスタ素子を作製した。室温抵抗は3.0×10-3Ω(2.4×10-2Ω・cm)で、75℃付近で抵抗値は急激に上昇し、抵抗変化率は11桁以上が得られた。加熱時と冷却時の温度−抵抗曲線はほぼ同一で、ヒステリシスはほとんど見られなかった。また、NTC現象もほとんど示さなかった。しかし、冷却後の室温抵抗値は2.5×10-2Ω(2.0×10-1Ω・cm)で1桁弱増加した。室温抵抗の増加は加速試験でより顕著に見られ、80℃80%RHの条件で100時間後の抵抗値は7.0×10-1Ω(5.5Ω・cm)で、実施例2と比較して大きく劣る特性を示した。
【0100】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、従来の有機質正特性サーミスタより動作温度を低くし、また特性に優れた有機質正特性サーミスタを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機質正特性サーミスタ素子の概略断面図である。
【図2】実施例1のサーミスタ素子の温度−抵抗曲線である。
【図3】実施例2のサーミスタ素子の温度−抵抗曲線である。
【符号の説明】
11 電極
12 サーミスタ素体

Claims (10)

  1. メタロセン触媒により合成されたポリマーである直鎖状低密度ポリエチレンおよびスパイク状の突起を有する導電性粒子を有し、
    前記直鎖状低密度ポリエチレンは、190℃における荷重2.16kgでのメルトフローレートが0.05〜20g/10分であり、且つ、密度が0.900〜0.940g/cm のものである有機質正特性サーミスタ。
  2. 前記直鎖状低密度ポリエチレンは、長鎖分岐数が、主鎖の炭素数に対して、5/1000炭素数以下のものである請求項の有機質正特性サーミスタ。
  3. 前記メタロセン触媒は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも1個有する周期律表第IVB、VB、VIB族の遷移金属化合物からなるメタロセン触媒成分(a)、有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)、および微粒子状担体(c)を少なくとも含んで構成されるものである請求項1または2の有機質正特性サーミスタ。
  4. 前記スパイク状の突起を有する導電性粒子は、鎖状に連なっている請求項1〜のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
  5. さらに低分子有機化合物を含有する請求項1〜のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
  6. 前記低分子有機化合物は、融点が40〜100℃のものである請求項の有機質正特性サーミスタ。
  7. 動作温度が200℃以下である請求項1〜のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
  8. 非動作時における室温比抵抗値が10−2〜10Ω・cmである請求項1〜のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
  9. 非動作時から動作時にかけての抵抗変化率が6桁以上である請求項1〜のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
  10. メタロセン触媒により、190℃における荷重2.16kgでのメルトフローレートが0.05〜20g/10分であり、且つ、密度が0.900〜0.940g/cm である直鎖状低密度ポリエチレンをポリマーとして合成し、このポリマーにスパイク状の突起を有する導電性粒子を含有させ、これらの混合物をシラン系カップリング剤で処理して有機質正特性サーミスタを得る有機質正特性サーミスタの製造方法。
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