JP3894144B2 - 酸化チタン系光触媒とその製造方法および応用 - Google Patents

酸化チタン系光触媒とその製造方法および応用 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線のみならず、可視光の照射によっても光触媒作用を発揮しうる酸化チタン系光触媒とその製造方法、ならびにこの光触媒を利用した光触媒機能部材およびコーティング液と、当該光触媒機能部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、酸化チタンが示す光触媒作用は、防臭、抗菌、防汚等さまぎまな環境浄化技術に応用されている。光触媒として一般に用いられるアナターゼ型酸化チタンのバンドギャップは約3.2 eVであり、波長約380 nmより短波長の紫外線を受けて反応が進行する。従って、その光触媒活性の発現には紫外線の照射が必要になり、設置環境、用途などが限定されるという問題点があった。
【0003】
光触媒のエネルギー源として太陽光線や室内光に多く存在する可視光が利用可能になれば、反応活性が強化され、さまざまな場所での光触媒の利用が可能となる。そこで、可視光の照射により光触媒活性を発現する材料の開発が進められている。
【0004】
例えば、特開平9−262482号には、バナジウムまたはクロムをイオン注入したことを特徴とする、可視光活性を有するアナターゼ型TiO2が開示されている。特開2001−205103号公報には酸化チタン結晶中に窒素を含有させることで、WO 00/10706 号には酸化チタン中に安定した欠陥を与えることで、それぞれ可視光応答性を発現可能にした酸化チタン系光触媒が報告されている。
【0005】
可視光触媒活性が酸素欠陥を有する酸化チタンにおいて発現されることは、日本化学会誌8, p.1084-1091, 1986および特開平10−146530号に記載されている。酸素欠陥は、ESR (電子スピン共鳴) スペクトルによって最も効果的に同定および定量することができる。
【0006】
そこで、特許第3252136 号には、酸素欠陥を有する酸化チタンであって、77K真空中、暗黒条件で測定されたESRスペクトルにg値が 2.003〜4のシグナルが観測され、かつこのシグナルは同じく77K真空中、可視光照射下で測定した場合には強度が高くなることを特徴とする、可視光照射下で活性を有する光触媒が報告されている。
【0007】
特開2001−190953号には、ESRスペクトルにおいてg値が 1.930〜2.030 の間に3つ以上のピークを有し、それらのピーク中の最大ピークがg値 1.990〜2.020 の間に存在することを特徴とする酸化チタン光触媒が報告されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、酸化チタン中に金属イオンや欠陥を存在させることは可視光応答性を付与するには有効であるが、他方では電子、正孔の分離を伴う光触媒反応を失活させる起点となるため、光触媒活性の発現の再現性が悪くなり、光触媒活性自体も低くなることがある。また、窒素含有型を含めて、従来の可視光応答性の光触媒は、その製造にイオン注入装置やスパッタ装置が必要で、量産に向かないという問題点もある。
【0009】
本発明の目的は、可視光によって高い光触媒活性を安定的に発現可能な光触媒と、量産に適したその製造方法、その光触媒を利用した光触媒機能部材とこの光触媒機能部材の製造に使用できるコーティング液、ならびに該光触媒機能部材の製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は下記 (1)〜(4) の知見に基づく:
(1) 酸化チタンに金属ハロゲン化物等の金属化合物を含有させると、可視光により光触媒活性を発現するようになる;
(2) 金属化合物を含有させた酸化チタンを、水と接触させるか、および/または熱処理して、金属化合物を金属水酸化物または酸化物に変換しても、実用上十分に高い可視光による光触媒活性を維持でき、触媒が安定化する;
(3) 金属化合物を含有させた酸化チタンに直接、或いはそれを水との接触処理および/または熱処理した後に、ヘテロポリ酸および/またはイソポリ酸を接触させて多核金属錯体を含有させると、光触媒活性がさらに高まる;および
(4) 上記材料は新規なESRスペクトルを示し、ESRスペクトルによっても可視光による光触媒活性が高い材料を特定できる。
【0011】
本発明は、下記 (a)〜(d) のいずれかで規定され、好ましくは下記(e) の性質も有する酸化チタン系光触媒を提供する。
(a) 他の金属化合物、好ましくは金属ハロゲン化物、金属錯体、金属水酸化物または金属酸化物、を含有させた酸化チタンからなり、可視光の照射によって光触媒活性を発現する。
【0012】
(b) 金属ハロゲン化物、好ましくは金属塩化物、を含有させた酸化チタンからなり、昇温脱離スペクトルにおいて623 K以上にハロゲン含有物質の分子イオンまたはフラグメントイオンピークを有する。
【0013】
(c) 可視光の照射によって光触媒活性を発現し、少なくとも5Kの温度で、ESRスペクトルに可視光照射時にはg値 1.950〜2.030 の間にピークが観測され、該ピークが暗黒下では実質的に観測されない。
【0014】
(d) 可視光の照射によって光触媒活性を発現し、酸素を実質的に含まない雰囲気下、室温で測定したESRスペクトルにおいて、可視光照射時に観測されるg値 1.950〜2.030 の範囲の最大ピークが、可視光照射停止後に3分以上のピーク強度半減期を有する。
【0015】
(e) 77Kより低温で測定したESRスペクトルにおいてg値 1.986〜1.994 に位置するピークを有する。
本発明において、「可視光」とは、波長400 nm以上の光の意味である。
【0016】
上記(a) および(b) に記載の酸化チタン系光触媒における金属化合物または金属ハロゲン化物の存在形態は、現状では明らかではないが、金属ハロゲン化物や、金属水酸化物、金属酸化物、金属錯体等に含まれる中心金属イオンや配位 (金属) イオンが酸化チタンと何らかの相互作用をすることによって、光触媒機能に寄与している。
【0017】
特に酸化チタンが可視光を吸収するタイプ、例えば、低次チタンイオン (Ti3+, Ti2+) を含んだ酸化チタン、酸素欠陥を含んだ酸素欠陥型酸化チタン、もしくはこれらが混在した酸化チタン、さらには、クロムイオン、鉄イオン、バナジウムイオン、窒素、硫黄、塩素などの、Tiと酸素以外の元素もしくはイオンを酸化チタンに導入して新たに可視光応答性を付与したものであると、上記の相互作用が強くなり、より高活性な光触媒となるので好ましい。
【0018】
金属化合物が金属錯体である場合、金属錯体としては、ヘテロポリ酸やイソポリ酸といった多核金属錯体が好ましい。その場合、酸化チタンが酸素欠陥型であると、より高活性化できるので、非常に有利である。
【0019】
また、配位子がハロゲンである金属錯体のハロゲン配位子が酸化チタンと相互作用している可能性もある。特に金属化合物が金属ハロゲン化物である場合、少なくともその一部が酸化チタン表面に化学的に結合していることが好ましい。
【0020】
本発明はまた、上述した酸化チタン系光触媒の製造方法も提供する。
第1の方法は、酸化チタンおよび/またはその前駆体を、式:MXn またはMOXn (M=金属、X=ハロゲン、n=整数) で示される金属ハロゲン化物を含有する反応媒体に接触させることからなる。この方法により、上記 (a)〜(c) および(e) のいずれかで規定される酸化チタン系光触媒を、容易にかつ再現性よく製造することができる。
【0021】
第2の方法は、第1における反応媒体との接触処理の後に、生成物をさらに水と接触させるか、および/または熱処理して、後処理を施すことからなる。この後処理により、上記(d) で規定される酸化チタン系光触媒を製造することができる。
【0022】
第3の方法は、第1の方法における反応媒体との接触の後、あるいは第2の方法における水との接触および/または熱処理による後処理の後、生成物をさらにヘテロポリ酸および/またはイソポリ酸と接触させることからなる。この方法により、金属錯体を含む酸化チタン系光触媒を製造することができる。
【0023】
より高活性な酸化チタン系光触媒を得るには、いずれの方法でも、酸化チタンおよび/またはその前駆体を、反応媒体と接触させる前に、前処理として、 323〜823 Kでの熱処理または湿式処理を施すことが好ましい。
【0024】
本発明の酸化チタン系光触媒は、粉末状、皮膜状(薄膜状を含む)、繊維状などさまざまな形態で利用できる。特に、この光触媒を基材表面に付着 (例、皮膜状で) させて固定したものは、光触媒活性を有する光触媒機能部材 (光触媒機能部材) として利用することができる。
【0025】
好ましい光触媒機能部材は、上記酸化チタン系光触媒とバインダー成分とを含有する皮膜を基材表面に有し、該皮膜中の酸化チタン光触媒の含有量が5〜95 mass%である。
【0026】
本発明はまた、このような光触媒機能部材を製造するのに利用できる光触媒分散液およびコーティング液も提供する。
本発明の光触媒機能部材は、このコーティング液を基材表面に塗布することを含む方法により製造することができる。
【0027】
別の方法として、光触媒機能部材は、基材表面に予め酸化チタンおよび/またはその前駆体を付着させた後、基材表面を式:MXn またはMOXn (M、X、nは前記と同じ意味) で示される金属ハロゲン化物を含有する反応媒体と接触させることによっても製造できる。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の酸化チタン系光触媒は、可視光によって光触媒活性を発現する。ここで、可視光とは、前述したように、波長400 nm以上の光である。
【0029】
通常の酸化チタン系光触媒は、波長390 nm以上の光では光触媒活性を示さないので、可視光を照射しても実質的な光触媒活性を示さない。本発明の酸化チタン系光触媒は、可視光により光触媒活性を示すが、もちろん紫外光の照射を受けた場合も光触媒として機能する。さらに、 390〜400 nmの狭い範囲の近紫外光を照射した場合にも光触媒活性を示すが、この点も、通常の酸化チタン系光触媒とは異なる性質である。このような光触媒活性は、以下に説明する本発明の各種態様の光触媒に共通して見られる。
【0030】
1側面において、可視光によって光触媒活性を発現する本発明の酸化チタン系光触媒は、他の (即ち、酸化チタン以外の) 金属化合物を含有する。
この「他の金属化合物」は、酸化チタン粒子の内部、外部またはその両方に存在しうる。金属化合物としては、金属ハロゲン化物、金属水酸化物、金属酸化物、金属錯体などが挙げられる。その含有によって可視光光触媒活性を示すようになれば、これら以外の金属化合物でもよい。金属ハロゲン化物や金属水酸化物の場合には、この化合物の少なくとも一部が酸化チタンの表面に化学反応により結合していることが好ましい。例えば、金属ハロゲン化物は酸化チタン表面の水酸基と反応して、脱ハロゲン化水素を経て酸化チタン表面に結合することができる。ただし、一部の金属ハロゲン化物が酸化チタン表面と結合し、他は酸化チタン表面に吸着されている状態であってもよい。
【0031】
本発明の酸化チタン系光触媒における金属ハロゲン化物の存在形態は、四塩化チタンのようなMXn ( M=金属、X=ハロゲン、n=整数) で表される、金属ハロゲン化物そのままであってもよい。しかし、普通には、金属ハロゲン化物が酸化チタン表面に化学結合し、ハロゲンが部分的に脱ハロゲン化水素を受けて生成する−O−M−Xn ( Oは酸化チタン表面由来の酸素) の形態、または残留するハロゲンがさらに加水分解その他の反応を受けて生ずる−O−M−(L)mXn' (Lは、オキソ (O) 、水酸基、アンミン (アンモニア) 、アルキルアミン、アルキルホスフィン、フェニルホスフィン、アルキル、アセテート、カルボニル、またはピリジル、ピペリジル等の含窒素ヘテロ環化合物等の配位子、mは整数、n'は0または整数) である。また、金属ハロゲン化物は、加水分解によってすべてのXが水酸基に変化した金属水酸化物の形態となっていてもよく、さらに脱水(縮合)反応を受けて酸化物ネットワークを形成し、金属酸化物の形態になっていてもよい。
【0032】
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれか単独でもよく、あるいは2種以上でもよい。中でも、塩素が最も高い光触媒活性を与えるので好ましい。
【0033】
金属化合物は、例えば、金属錯体といったハロゲンを含まない化合物であってもよい。金属錯体の存在形態は、MLn ( M=金属、L=配位子、n=整数) で表される金属錯体そのまでも、酸化チタン表面と化学結合した−O−M(L)nといった形態でもよい。
【0034】
配位子Lとしては、オキソ (O) 酸素、水酸基、アンミン (アンモニア) 、アルキルアミン、アルキルホスフィン、フェニルホスフィン、アルキル、アセテート、カルボニル、ならびにピリジル、ピペリジル等の含窒素ヘテロ環化合物等が例示される。複数の配位子Lが存在する場合、それらは同一でも異なるものでもよい。
【0035】
金属化合物は、同種または異種の複数の金属を含有する化合物、例えば、複核金属錯体であってもよい。また、2種以上の異なる金属化合物を酸化チタンに含有させることもできる。複核金属錯体の中では、オキソ酸多核錯体であるヘテロポリ酸 (アニオン) やイソポリ酸 (アニオン) がより高い可視光光触媒活性を示す点で好ましい。ヘテロポリ酸の例としてPW12O40 3-, SiW12O40 3-, PMo12O40 3-等が例示され、イソポリ酸類の例としてはMo7O24 6-, W7O24 6- 等が例示される。カウンターカチオンはプロトンでも、あるいはCs+, NH4 +等のカチオンであってもよい。これらは、酸化チタン表面と化学結合していも、単に吸着させた状態であってもよい。
【0036】
金属化合物が金属ハロゲン化物、金属水酸化物、金属酸化物、金属錯体の何れであっても、金属Mとしては、Ti、Si、Zr、Al、B、C、P、Mg、Sc、Cr、Co、Zn、Hf、Fe、Sb、W、V、Sn、Bi、Mn、Mo、Cs、Ge、As、Ceなどが例示される。このうち、P、Si、W、Mo、Cs、Ge、As、Ceは、金属化合物がヘテロポリ酸またはイソポリ酸型の金属錯体である場合に好ましい金属である。中でも、金属MがTi、Si、V、Sn、Sb、Si、W、Nb、Bi、P、Mo、Cs、Ge、AsおよびCeから選ばれる少なくとも1種の金属であると、高い光触媒活性が得られるので好ましい。
【0037】
金属化合物の含有量は、酸化チタンに対して金属として0.1 mass% 以上、300 mass% 以内とすることが好ましい。0.1 mass% 未満の量では、酸化チタンに可視光で発現する光触媒活性を付与することができない場合がある。金属化合物の含有量が多すぎると、金属化合物の特性が強くなり、光触媒活性が低下することがある。金属化合物が、後述する接触処理により導入した金属ハロゲン化物またはその分解 (加水分解や熱分解) で生成した金属水酸化物もしくは酸化物である場合、金属化合物を10 mass%より多量に導入することは困難であるので、上限は10mass% 程度となることが多いが、可能であれば、より多量に含有させてもよい。金属化合物が、ヘテロポリ酸やイソポリ酸である場合には、ずっと多量の金属化合物の導入が可能であるが、300 mass% を超える量になると、光触媒活性が著しく低下する。
【0038】
金属ハロゲン化物を含有する、上述した酸化チタン系光触媒は、昇温脱離ガス分析で測定した昇温脱離スペクトル (いわゆる、TDSまたはTPDスペクトル) において、573 K以上の温度域にハロゲンを含む物質の分子イオンあるいはフラグメントイオンのピークを有するという特徴を持つ。
【0039】
昇温脱離スペクトルの測定は、試料を十分に乾燥させ、約10-6〜10-9 Torr まで脱気した後、試料を一定速度で赤外線照射などによって昇温させながら、試料から脱離してくるガスのスペクトルを質量分析器で測定することよって行われる。温度の測定は、同定が正確に行われるように試料表面で測定することが好ましい。分子イオンまたはフラグメントイオンは昇温脱離スペクトル中に複数のピークを有するのが普通である。
【0040】
ハロゲンを含有する酸化チタンであっても、昇温脱離スペクトルにおいて観測されるハロゲン含有物質の分子イオンまたはフラグメントイオンのピークがすべて573 Kより低温側に存在する場合には、ハロゲンまたはハロゲン含有物質と酸化チタンとの相互作用が弱く、可視光光触媒活性はきわめて低くなるので、可視光では光触媒として実質的に機能しないであろう。昇温脱離スペクトルにおいて少なくとも1つのピークを573 K以上の温度域に有する酸化チタンは、可視光によってより高い光触媒活性が期待できる。このピークは、好ましくは623 K以上の温度域にある。それにより、可視光による光触媒活性がさらに高くなる。
【0041】
昇温脱離スペクトルにおいて573 K以上に分子イオンあるいはフラグメントイオンピークを有する金属ハロゲン化物としては、ハロゲンが塩素の場合、塩化チタン類、チタンオキシクロライド、これらの重合体などが例示されるが、これらに限られない。ここに例示した金属ハロゲン化物はいずれも623 K以上にピーク温度を有する。
【0042】
別の側面において、可視光により光触媒活性を発現する本発明の酸化チタン系光触媒は新規なESRスペクトルを有する。
具体的には、少なくとも5Kの温度で、可視光照射時にはESRスペクトルのg値 1.950〜2.030 の間に少なくとも1つのピークが観測され、このESRピークが暗黒下においては実質的に観測されないという、第1の特徴を示す。「実質的に観測されない」とは、装置の測定限界以下であることを意味する。本発明に係る一部の光触媒は、この第1の特徴を5K〜室温のすべての温度範囲で示す。別の光触媒は、第1の特徴を、5Kまたはその近傍の低温でのみ示し、室温では示さない。
【0043】
ESRスペクトル測定時の可視光の照射は、ハロゲンランプ、キセノンランプなどを用いて行うことができ、照射時間は少なくとも1分以上とすることが好ましい。照射する光に紫外線が多く含まれるとピーク強度が小さくなるので、必要によりフィルター等を使用して、実質的に400 nm以上の可視光だけを照射することが好ましい。ESRの測定雰囲気は特に制限されず、大気中、不活性ガス雰囲気中、真空下のいずれであっても、上記第1の特徴を示す。
【0044】
暗黒下でのESRスペクトルの測定は、酸化チタン系光触媒を、その光照射の履歴の有無に関わらず、測定温度と同じ温度で3日以上暗黒下に遮光保存した後、遮光状態のまま行う。この状態に続けて、可視光を照射してESRスペクトルを測定すると、暗黒下の測定では現れないg値 1.950〜2.030 のESRピークが出現するようになる。
【0045】
ESRスペクトルが上記第1の特徴を有する酸化チタン系光触媒の一部は、さらに、実質的に酸素を含まない雰囲気中、室温で測定したESRスペクトルにおいて可視光照射時に観測されるg値 1.950〜2.030 の範囲の最大ピークが、可視光停止後の3分以上のピーク強度半減期を有するという第2の特徴を示す。この第2の特徴を有することだけでも、可視光活性を有する光触媒であることがわかる。より高活性な光触媒とするには、この半減期は4分以上が好ましい。ESRピーク強度は活性種の濃度を表すことから、ピーク強度の半減期は、一般的には活性種の濃度が減衰して初期の半分になる期間に対応する。
【0046】
「実質的に酸素を含まない」とは、酸素分圧が0.1 Torr以下であることを意味する。この雰囲気は真空下と高純度不活性ガス雰囲気のいずれであってもよい。第2の特徴は、このような雰囲気下、室温でESRスペクトルを測定した場合に見られる。
【0047】
ESRスペクトルにおけるg値 1.950〜2.030 におけるピークはトリプレットシグナルであり、触媒9(第21回討論会予稿集)p.45-48, 1963 に示されるように、酸化チタンの酸素欠陥が関与する活性種に基づくと考えられる。この活性種は、可視光触媒反応において中心的な役割を担う。
【0048】
この活性種は酸化チタンの粒子内部と表面の両方に存在しうるが、いずれも再結合または酸素などの物質との反応によりで緩和(消光)され、減衰する。上記の第1のESRスペクトルの特徴は、活性種の減衰が、酸素存在下では極めて早いことを示すものである。このことから、本発明の光触媒は、活性種が酸素と反応しやすい構造、例えば、大部分の活性種が酸化チタン表面に位置する等の構造を有すると推測される。従って、本発明の光触媒を、通常の反応条件下、つまり酸素を含有する雰囲気下 (典型的には大気雰囲気下) で機能させると、可視光照射で生成した活性種がすぐに酸素と反応するため、可視光照射により非常に高い光触媒活性を示す。
【0049】
一方、脱酸素雰囲気、室温下での最大ピーク強度の半減期が3分以上という第2のESRスペクトルの特徴は、可視光光触媒反応において中心的役割を果たす上記活性種の減衰が脱酸素雰囲気下では非常に緩やかであることを意味している。この測定条件では酸素との反応が起こり得ないことから、粒子内部や表面に存在する最大ピーク強度を示す活性種が、本質的に再結合しにくい構造になっていると考えられる。
【0050】
従って、第1の特徴に加えて第2の特徴を併せ持つ光触媒は、酸素を含有する雰囲気下では、可視光照射により生成した活性種が、酸化チタン粒子の内部や表面ではほとんど失活されることなく、酸素と優先的に反応するため、後続の光触媒反応が効率的に進行して、可視光による光触媒活性が持続する。
【0051】
上記第1または第2の特徴を示す酸化チタン系光触媒触媒は、さらに77Kより低温で測定したESRスペクトルにおいて、g値 1.986〜1.994 という非常に狭い範囲に位置するピークを有するという第3の特徴を示すことが好ましい。それにより光触媒活性が一層高まる。第3の特徴は、ESRスペクトルの測定雰囲気が大気中、真空下、不活性ガス雰囲気中のいずれであっても認められる。測定温度は、77K未満、好ましくは30K未満、より好ましくは5Kである。このピークは低温ほど大きくなる。
【0052】
本発明の酸化チタン系光触媒における酸化チタンの構造は、非晶質でも結晶質のいずれでもよく、部分的に結晶質であってもよい。結晶質を含む場合、結晶はアナターゼ、ルチル、ブルッカイトのいずれでもよく、またそれらの混合物でもよい。最も高い可視光光触媒活性を得るには、酸化チタンの主たる結晶構造がアナターゼであることが好ましい。
【0053】
酸化チタンは、低次チタンイオンを含んだ酸化チタン、酸素欠陥型酸化チタン、またはこれらが混在した酸化チタンといった、可視光を吸収するものであることが好ましく、特に酸素欠陥型が好ましい。光触媒を構成する酸化チタンが可視光吸収性であることは、光触媒が着色することでわかる。酸化チタンが可視光吸収性であると、太陽光または人工光源 (蛍光灯、ハロゲンランプ等) の大部分のエネルギーを有機物 (汚染物質や有害物質等) の分解に用いることができる、従来の紫外光活性型の光触媒に比べて反応効率が高くなる。中でも、光触媒に含有させた金属化合物がヘテロポリ酸やイソポリ酸である場合、酸素欠陥型の酸化チタンであると、高い可視光触媒活性を有する酸化チタン系光触媒となる。
【0054】
低次チタンイオンを含んだ酸化チタン、酸素欠陥型酸化チタン、またはこれらが混在した酸化チタンを、全体としてTiO(2-Y) として表した時に、好ましいYの値は 0.5>Y>0である。Yが0.5 より大きくなると、金属化合物を含有させた状態では光触媒活性がほとんどなくなる。
【0055】
また、他の技術 (例、Cr、FeもしくはVイオンの導入) によって可視光応答性を付与した酸化チタンに対して、本発明を適用することにより、可視光応答性をさらに高めることができる。
【0056】
本発明の酸化チタン系光触媒は、酸化チタンまたはその前駆体を、式:MXn またはMOXn (M=金属、X=ハロゲン、n=整数、具体的には、MXn の場合はn=金属価数、MOXn の場合はn=金属価数−2) で示される金属ハロゲン化物を含有する反応媒体に接触させ、場合により、その後で水と接触させるか、および/または熱処理を行うことを含む方法により製造することができる。
【0057】
この方法に使用する原料は、酸化チタン、酸化チタン前駆体、および両者の混合物のいずれかである。「酸化チタン前駆体」とは、加熱されると、主構造が酸化チタンに変化する化合物のことである。酸化チタン前駆体の具体例としては、水酸化チタン、含水酸化チタン、チタンオキシクロライド、チタンアルコキシド部分加水分解物等が挙げられる。
【0058】
原料が酸化チタンである場合、その形態は非晶質でも結晶質のいずれでもよく、これらが混合したものでもよい。原料が結晶質酸化チタンを含む場合、結晶はアナターゼ型、ルチル型、あるいはそれらが混在したものでよい。ただし、高い光触媒活性を有する酸化チタンとするには、アナターゼ型酸化チタンを原料として用いることが好ましく、より好ましい原料は非晶質部分がいくらか残ったアナターゼ型酸化チタンである。前述したように、原料は他の技術によって可視光応答性を付与した酸化チタンであってもよい。
【0059】
酸化チタンおよびその前駆体は、市販品と合成品のいずれでもよいが、合成品の方が好ましい。合成品は、例えば、チタンアルコキシド、硫酸チタニル、硫酸チタン、四塩化チタン等のチタン化合物の水溶液または有機溶媒溶液を、水、酸または塩基の存在下で加水分解した後、必要に応じて加水分解物を焼成する方法や、チタン化合物を酸素を含む雰囲気下で焼成する方法によって調製することができる。
【0060】
本発明においては、硫酸チタニル、硫酸チタンおよび四塩化チタンから選んだ少なくとも1種のチタン化合物を含窒素塩基(即ち、アンモニアまたはアミン)を用いて加水分解する工程を経て製造した、酸化チタンおよび/またはその前駆体を原料として用いることが好ましい。こうすると、より高活性な酸化チタン系光触媒を得ることができる。原料のチタン化合物は、原液と水溶液のいずれの状態でも加水分解に供することができるが、取扱い面から水溶液が好ましい。
【0061】
酸化チタンおよび/またはその前駆体に、金属ハロゲン化物を含有する反応媒体を接触させる。この反応媒体はガスと液体のいずれでもよいが、酸化チタンに均一に金属ハロゲン化物を含有させるには、ガスの方が好ましい。以下では、ガス状の反応媒体(反応ガスと称する)を使用する場合について主に説明する。
【0062】
酸化チタンおよび/または酸化チタン前駆体と反応ガスとの接触は、常温でも実施できるが、好ましくは加熱下に行う。好ましい接触温度は323 K以上、873 K以下であり、この範囲を外れると、酸化チタンに十分な可視光応答性を付与できないことがある。より好ましい温度範囲は473 K以上、673 K以下である。
【0063】
反応ガスとの接触時間は、接触温度によっても異なるが、通常は1分以上、数時間以内である。工業的に行うには120 分以内とすることがが好ましい。例えば、接触温度が573 Kの場合、5分〜40分程度で十分な性能を有する光触媒を得ることができる。
【0064】
反応ガス中に含有させる金属ハロゲン化物は、前述したように、式:MXn またはMOXn で示される化合物である。式:MXn の金属Mは、Ti、Si、Zr、Al、B、C、P、Mg、Sc、Cr、Co、Zn、Hf、Fe、Sb、W、V、Sn、Bi、Mnなど、前述した接触温度範囲内で液体または気体状のハロゲン化物を形成する任意の金属でよい。式:MOXn で示される化合物の例としてはVOCl3 などがある。ハロゲンXは、F、Cl、Br、Iのいずれでもよいが、前述したように、光触媒活性の面からはClが好ましい。
【0065】
好ましい金属ハロゲン化物は、TiCl4, VOCl3, SnCl4, SbCl5, SiCl4, WCl6 およびBiCl3 ある。これらの1種もしくは2種以上を含む反応ガスを用いると、可視光活性の高い酸化チタン系光触媒を製造することができる。
【0066】
中でもTiCl4 が、入手しやすさ、扱い易さ、さらに製造後の光触媒が可視光に対して高活性であるといった点から、最も好ましい。TiCl4 は常温で液体であり、蒸気圧も比較的高いため、気化しやすく、反応ガスも作りやすい。
【0067】
金属ハロゲン化物は、加熱下に酸化チタンと接触させた場合、酸化チタンの表面に結合すると同時に、母体の酸化チタンを還元して酸素欠陥を導入し、酸化チタンを可視光吸収型に変化させることができる。特に、反応ガスのベースガス(希釈ガス)が水素および/または窒素を含有すると、その効果が高く、可視光活性がより高い光触媒が得られる。
【0068】
反応ガスは、一般に金属ハロゲン化物とベースガス (例、バブリングに使用するキャリアガス) との混合ガスである。ベースガスは、水素、窒素、アルゴン、一酸化炭素、アンモニアなどの非酸化性ガスから選んだ1種または2種以上とすることが好ましい。但し、体積%で合計3%以内なら、酸素および/または水蒸気などの酸化性ガスを含んでいても差し支えない。しかし、その場合には、非酸化性ガスと酸化性ガスとの副反応に注意する必要がある。
【0069】
前述したように、ベースガスが水素と窒素の少なくとも一方を含んでいると、より高い光触媒活性を示す光触媒を得ることができるので、ベースガスの少なくとも一部を水素および/または窒素とすることが好ましい。
【0070】
反応ガス中の金属ハロゲン化物の含有量は、雰囲気温度や化合物の蒸気圧によって制限を受けるが、概ね10 vol% 以下とすることが好ましい。この含有量が10 vol% を越えても、製造される酸化チタン系光触媒の性能に格段の差はない上、歩留まりが悪く、不経済となるからである。
【0071】
前述したように、反応媒体は液体でもよく、その場合でも可視光光触媒活性を示す酸化チタン系光触媒を得ることができる。液体の反応媒体としては、金属ハロゲン化物を溶媒に溶解させた溶液が一般に使用される。適当な溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼンなどの炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、DMF等が例示されるが、これらに限定されない。金属ハロゲン化物を溶解させた溶液に酸化チタンおよび/または酸化チタン前駆体を投入し、必要に応じて加熱すると、金属ハロゲン化物を含む本発明の光触媒を得ることができる。液体の反応媒体から取り出した酸化チタンおよび/またはその前駆体を、必要であれば加熱しながら乾燥させて溶媒を除去する。その後、後述する後処理、特に熱処理を施してもよい。原料が前駆体の場合は、熱処理によって酸化チタンに変換させる。
【0072】
原料の酸化チタンおよび/またはその前駆体を、上記のように金属ハロゲン化物を含有する反応媒体、好ましくは反応ガスと接触させる前に、前処理として、原料を熱処理してもよい。予め原料の酸化チタンや前駆体を熱処理しておくと、その表面の水の除去、結晶化、さらには表面官能基の変化などが起こり、上記接触処理中のハロゲン化金属との反応に好影響を与える。その結果、より高活性の光触媒を得ることができる。
【0073】
前処理としての熱処理温度は、好ましくは323 K以上、823 K以下であり、より好ましくは373 K以上、673 K以下である。熱処理雰囲気は特に制限されず、真空下、大気中、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気中、さらにはアンモニア中で熱処理を実施しうる。熱処理時間は、温度にも依存するが、通常は30〜120 分間程度とすることが好ましい。原料が酸化チタン前駆体である場合、前処理として大気中で熱処理を行って、予め前駆体を酸化チタンに変換させてもよい。
【0074】
原料の前処理は、熱処理の代わりに、湿式処理により行うこともできる。湿式処理は、常圧だけでなく、オートクレーブを用いて高温高圧下で行う (即ち、水熱処理とする) ことも可能である。湿式処理は、窒素を含む物質、例えば、アンモニア、アンモニウム塩、アミン、ヒドラジンなどを含有する水溶液を用いて行うことが好ましく、それによっても高活性な光触媒を得ることができる。湿式処理の処理温度は室温から473 K程度が可能であるが、好ましくは 373〜473 Kの範囲である。この場合の処理時間は、通常120 分以上とすることが好ましい。
【0075】
原料の酸化チタンおよび/またはその前駆体を、場合により上記のように前処理してから、前述したようにして金属ハロゲン化物を含有する反応媒体と接触させて金属ハロゲン化物を反応させることにより、酸化チタンに他の金属化合物を含有させた本発明の酸化チタン系光触媒が得られる。この光触媒は、可視光によって非常に高い光触媒活性を発現する。この光触媒はまた、そのESRスペクトルが温度5Kで上記の第1の特徴を示し、好ましくはさらに上記第3の特徴も示す。また、この光触媒は、好ましくは前述した昇温脱離スペクトルを有する。
【0076】
上記方法で製造された酸化チタン系光触媒を、さらに水と接触させるか、および/または熱処理することによって、後処理してもよい。酸化チタンおよび/または酸化チタン前駆体を金属ハロゲン化物を含有する反応媒体と接触させると、酸化チタンまたはその前駆体の表面反応基 (例えば、水酸基など) と金属ハロゲン化物との間で化学反応が起こる。そのため、得られた光触媒には、ハロゲンを含む反応生成物が表面に結合しており、さらに副生した塩化水素や未反応ハロゲン化物が吸着していることもある。
【0077】
後処理することで、酸化チタンの表面に結合または吸着しているハロゲン含有物質が分解または除去され、含有させた金属化合物が別の金属化合物、例えば、水酸化物および/または酸化物になるため、光触媒が安定化する。但し、後処理により、可視光による光触媒活性は低下する。しかし、上記方法で製造された酸化チタン系光触媒は、後処理した後もなお実用に十分なレベルの可視光光触媒活性を保持しており、化学的に安定化することで取扱いが容易となるため、実用上は後処理する方が好ましい。
【0078】
反応媒体中に含有させた金属ハロゲン化物がハロゲン化チタンである場合、後処理によって光触媒中の含有金属化合物が水酸化物や酸化物になり、ハロゲンを含有しなくなると、化学組成上は普通の酸化チタンと区別がつき難い。しかし、反応媒体との接触時の反応によって導入された酸素欠陥が残存するため、後処理後の生成物は普通の酸化チタンとは異なるESRスペクトルを示すようになるので、ESRスペクトルによって本発明に係る光触媒であることが判別できる。即ち、普通の酸化チタンのESRスペクトルは上記第1〜第3のいずれの特徴も示さないのに対し、後処理後に得られた生成物のESRスペクトルは、上記の第1および第2の特徴を示し、好ましくは第3の特徴も示す。また、第1の特徴を、5K〜室温の広い温度範囲で示すようになる。
【0079】
後処理は、水との接触および/または熱処理により行うことができる。いずれか一方の処理だけでも十分な効果があるが、両方を併用してもよく、その場合の順序はいずれが先でもよい。
【0080】
水との接触処理により、光触媒の表面に化学結合したハロゲン含有物質は加水分解を受け、ハロゲン含有吸着物は洗浄除去されるため、ハロゲンが光触媒表面から除去される。水との接触は、水中に光触媒を加えて静置または攪拌することにより実施することができるが、水を散布するといった他の方法も採用できる。使用する水は、純水でも、あるいは純水に塩基(例、アンモニア、アミン等の含窒素塩基)などの適当な成分を含有させたものでもよい。その後、回収した光触媒を乾燥することが好ましい。
【0081】
なお、後述するコーティング液を調製する際に、分散媒として水を使用すると、光触媒と水との接触が起こるため、光触媒は必然的に水との接触による後処理を受ける。しかし、それによりハロゲン含有物質がコーティング液中に放出されるので、コーティング液を調製する前に、別工程として後処理を実施する方が好ましい。
【0082】
熱処理を行うと、光触媒の表面に結合または吸着したハロゲン含有物質は、熱分解または蒸発により除去される。熱処理は、酸化チタンの結晶化を進め、光触媒の高活性化を導く場合もある。熱処理温度 373〜873 Kの範囲が好ましく、この温度範囲を外れると、上記目的を十分には達成できないことがある。より好ましい熱処理温度は 473〜673 Kである。熱処理雰囲気は大気、不活性ガス、あるいは真空でよい。熱処理時間は制限されないが、通常は60〜180 分の範囲が実用的である。
【0083】
金属錯体を含有する本発明の光触媒は、上述したようにして酸化チタンに金属ハロゲン化物を含有させた後、またはそれに続いて前述した水との接触および/もしくは熱処理による後処理を施した後、生成物に化学反応を受けさせて、酸化チタンに所望の金属錯体を導入することにより製造することができる。但し、金属ハロゲン化物との接触だけ、あるいは続く後処理だけでも、金属錯体を含む酸化チタン系光触媒が生成することがある。
【0084】
特に、ヘテロポリ酸やイソポリ酸などの金属錯体を含有させた本発明の光触媒は、酸化チタンおよび/または前駆体を上記のように金属ハロゲン化物と接触させた後、続いてヘテロポリ酸やイソポリ酸と接触させることによって製造することができる。金属ハロゲン化物との接触後、上記の後処理、即ち、水との接触または熱処理を受けさせて、表面に存在するハロゲン化物を除去してから、ヘテロポリ酸やイソポリ酸との接触を行っても良い。
【0085】
いずれの場合も、接触はヘテロポリ酸やイソポリ酸を溶解させた溶液を用いて、含浸法、沈殿法、混練等の方法で行うとよい。溶液は水、アセトン、アルコール、THF、ピリジンなどの極性溶媒が好ましい。また、ヘテロポリ酸やイソポリ酸との接触は加熱下に行うことが好ましい。それに代えて、または加えて、接触処理に用いた溶媒を留去した後、 373〜773 Kの温度範囲で熱処理すると、金属錯体が強固に酸化チタンに固定され、高活性の光触媒となるので好ましい。
【0086】
こうしてヘテロポリ酸および/またはイソポリ酸の金属錯体を含有させた本発明の光触媒も、そのESRスペクトルが、5Kの温度において上記第1の特徴を示し、好ましくは上記第3の特徴も示す。
【0087】
本発明の光触媒は、例えばシリカ、アルミナ、活性炭、ゼオライトなどの、光触媒作用を持たない担体または吸着剤に担持してよい。また、反応の効率向上などを目的に、白金、ルテニウム、パラジウムなどの貴金属類といった助触媒をドープすることもできる。
【0088】
光触媒の形状は、粒子状、繊維状、皮膜状(薄膜状を含む)などが挙げられ、用途に応じて使い分けるのが好ましい。粒子状の光触媒は、1nm程度の微粒子から数mm程度の造粒体までを包含し、その大きさ、形態などは特に限定されない。皮膜の場合は基材表面に固定することが一般的であるが、その厚み等は特に限定されない。皮膜や繊維状など、光触媒を任意の形に成形する場合には、本発明の酸化チタン系光触媒の粒子に加えて、バインダーを含有するのが普通である。バインダーの含有によって、その皮膜の厚みや繊維径を増したり、また膜や繊維の強度、加工性などを増大させることが可能である。バインダーに代えて、または加えて、成形助剤を使用してもよい。
【0089】
本発明の酸化チタン系光触媒は、これを基材表面に付着させて固定化することにより、光触媒機能部材として利用することができる。固定化形態は基材の表面形状や用途などに応じて選択すればよく、特定の形態に限定されないが、代表的には皮膜である。
【0090】
基材の材質は特に限定されず、炭素鋼、メッキ鋼、クロメート処理鋼、琺瑯、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、各種合金等の金属材料;セラミック、ガラス、陶磁器、石英などの無機材料;プラスチック、樹脂、活性炭などの有機材料等のいずれでもよく、これらが組合わさった、例えば塗装鋼板などの複合材料であってもよい。ただし、全体または表面が有機材料である基材には、光触媒の酸化力により劣化ないし分解するものがあるので、そのような場合には、光触媒を固定化する基材表面を、光触媒で分解しない材料により予め被覆しておけばよい。
【0091】
基材の形状も特に制限されず、薄板、厚板、繊維状 (編織物、不織布を含む) 、網状、筒状など任意の形状でよい。そのまま製品として使用されるような複雑形状の物体、さらには既設または使用中の物体であってもよい。基材の表面は、多孔質でも、緻密質でもよい。
【0092】
上述した光触媒機能部材は、次に述べる2種類の製造方法のいずれかにより製造することができる。
第1の方法は、粒子状の本発明の酸化チタン系光触媒を溶媒中に分散させたコーティング液を調製し、そのコーティング液を基材に塗布する方法である。コーティング液は、実質的に光触媒と溶媒とからなるものでもよいが、好ましくはさらにバインダーを含有する。
【0093】
本発明の酸化チタン系光触媒を単に溶媒または溶媒およびバインダーと十分に混合してコーティング液を調製することも可能である。しかし、上記方法で製造された酸化チタン系光触媒は、一般に平均一次粒子径が数nm〜百nmと小さいため、それらが凝集した粉末の形態をとり、凝集した粉末の平均粒子径は、例えば数十μm と大きい。単に成分を混合しただけでコーティング液を調製すると、光触媒粒子の大半はこのような凝集状態にとどまる。
【0094】
本発明の好適態様においては、酸化チタン系光触媒の粒子を溶媒中で分散処理して、溶媒中に光触媒粒子を分散させた分散液を調製し、この分散液を利用してコーティング液を調製する。こうすると、より薄く、より均質な光触媒の皮膜を形成することが可能となり、皮膜特性や光触媒活性が大幅に向上する。
【0095】
分散液中の光触媒の平均粒子径は500 nm以下であることが好ましい。光触媒の平均粒子径が500 nmより大きいと、皮膜の粉化や剥離が起こり易くなる。また、粒子の沈降が起こり易く、分散液の保存安定性も低下する。光触媒の平均粒子径は、より好ましくは300 nm以下、さらに一層好ましくは200 nm以下である。理想的には、分散液中の光触媒粒子は一次粒子の形態である。
【0096】
光触媒粒子を分散させる溶媒 (即ち、分散媒) としては、蒸留水、イオン交換水、超純水などの水;メタノール、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類;メチルエチルケトンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、などが挙げられる。これらは、任意に混合して使用してもよい。
【0097】
分散処理は、光触媒を固形分濃度が数mass% 〜30 mass%の範囲となるように溶媒と混合して行うことが好ましい。固形分濃度がこの範囲外では、分散性が低下することがある。必要に応じて、分散剤や解膠剤を添加してもよい。分散剤としてはカルボニル系、スルホン系等が、解膠剤としては塩酸、硫酸等が例示される。また、pH調整のため、塩基や酸を添加してもよい。
【0098】
分散処理は、本発明の酸化チタン系光触媒のバルク構造、表面構造を極力保持しながら十分に解凝集されるように行うことが好ましい。分散処理は、コーティング液の調製に慣用されているペイントシェーカーを用いて行うこともできるが、例えば、メディアミル、回転刃を用いた剪断、薄膜旋回、超音波といった、より強力な分散が可能な手段により実施することが好ましい。2種以上の分散手段を組合わせて利用してもよい。
【0099】
得られた分散液が凝集した粗大粒子を含んでいる場合、それらを濾過または遠心分離によって除去することが好ましい。粗大粒子は、皮膜中で剥離や粉化の起点となり易いからである。分散処理後の分散液に溶媒を加えて、固形分濃度を調整することもできる。
【0100】
この分散液を、そのままコーティング液として使用し、基材に塗布することもできる。光触媒が、平均粒子径500 nm以下の微粒子になると、バインダーがなくても成膜可能となり、実質的に光触媒粒子のみからなる皮膜を形成することができる。しかし、そのままでは皮膜強度と密着性が低いので、その上にバインダー溶液を塗布して、光触媒の粒子間にバインダーを含浸させてもよい。
【0101】
好ましいコーティング液は、光触媒と溶媒に加え、さらにバインダーを含有する。溶媒は、上記の分散液に対して述べたものと同様でよいが、バインダーが溶解または乳化するように選択する。上記の酸化チタン系光触媒を含有する分散液にバインダーを混合することによって、コーティング液を調製すると、光触媒粒子の分散性に優れ、保存安定性が良好で、光触媒活性の高い皮膜を形成できるコーティング液を得ることができる。
【0102】
バインダーの量は、生成する皮膜中の酸化チタン系光触媒の含有量が5〜95 mass%となるように調整する。光触媒の含有量が5 mass% 未満の皮膜は、可視光照射による光触媒活性をほとんど示さない。この含有量が95 mass%を超えると、バインダー成分が少なすぎて、成膜性が悪化し、皮膜が剥離し易くなる。光触媒の含有量は好ましくは30〜90 mass%であり、光触媒活性を十分に得るには50 mass%以上であることがより好ましい。
【0103】
バインダー成分としては、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、ジルコニアなどの金属酸化物ゾル (皮膜中ではゲルになる) 、有機シラン化合物、ならびにシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などの有機樹脂が利用できる。ただし、光触媒の酸化力によりバインダー成分の分解が起こるときは、金属酸化物ゾルやシリコーン樹脂などの難分解性のものを用いることが望ましい。また、光触媒機能部材に強い加工性や高い強度が要求される場合には、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などの有機樹脂を前記難分解性のバインダー成分に適量添加することによって、要求される特性を確保することができる。
【0104】
好ましいバインダー成分は、シリカ (例、シリカゾル) 、有機シラン化合物の加水分解/縮合物、シリコーン樹脂などといったケイ素化合物である。シリカは、ケイ酸エステル (例、エチルシリケート) の加水分解と縮合により生成させたシリカゾル (シリカコロイド) でもよい。有機シラン化合物としては、皮膜形成性のある加水分解性の有機シラン化合物、例えば、アルコキシシラン類やシランカップリング剤を使用することができる。
【0105】
コーティング液は、上記以外の他の成分を含有していてもよい。そのような他の成分としては、可視光活性を有していない酸化チタン系光触媒 (例、従来の酸化チタン系光触媒) 、光触媒が担持粒子である場合の担体が挙げられる。また、着色剤 (好ましくは無機顔料) 等の少量成分も皮膜中に含有させうる。
【0106】
コーティング液の塗布は、コーティング液の性状や基材の形状に合わせて、周知の各種方法から選択することができる。塗布後、必要に応じて加熱しながら塗膜を乾燥 (場合によりさらに硬化) させる。乾燥 (硬化) 温度は、コーティング液の組成 (溶媒やバインダーの種類) 、基材の耐熱温度などに合わせて決めればよい。
【0107】
基材上に形成された光触媒を含有する皮膜の厚みは0.5 μm以上とすることが好ましい。皮膜が0.5 μmより薄いと、光触媒の量が少なすぎて、可視光照射による光触媒活性が非常に低くなる。皮膜の厚みは、必要とする触媒性能やコストによって適宜選択しうるが、触媒性能の安定性と触媒活性の面から、より好ましくは3μm以上であり、5μm以上とするのが一層好ましい。厚みの上限は特に規定されないが、コストや効果の飽和を考慮すると、30μm以下、好ましくは25μm以下である。
【0108】
光触媒機能部材を製造する第2の方法は、基材表面に予め酸化チタンおよび/またはその前駆体を付着させた後、基材表面を式:MXn またはMOXn (M、X、nは前記と同じ意味) で示される金属ハロゲン化物を含有する反応媒体と接触させながら熱処理する方法である。
【0109】
この第2の方法において、基材表面への酸化チタンおよび/またはその前駆体の付着は、酸化チタンおよび/またはその前駆体を含有するコーティング液を調製して、すぐ上に述べたのと同様に塗布および乾燥することによって実施できる。次工程で、付着させた酸化チタンおよび/またはその前駆体を反応媒体と接触させる必要があるので、チタニアゾル以外のバインダーは使用しないか、その量を少なくすることが望ましい。
【0110】
好ましい付着方法は、部分的に加水分解を受けたチタン化合物 (例、チタンアルコキシドの部分加水分解物) またはチタニアゾルを溶媒に溶解させた溶液型のコーティング液を調製し、これを基材表面に塗布して、乾燥後に実質的に酸化チタン前駆体のみからなる皮膜を基材表面に形成することである。
【0111】
別の好ましい方法として、酸化チタン (またはその不溶性前駆体) の粒子とバインダーのチタニアゾルとから調製したコーティング液を使用すれば、実質的に酸化チタンおよびその前駆体のみからなる皮膜が基材表面に形成される。
【0112】
基材表面に酸化チタンおよび/またはその前駆体を付着させる方法は、上記のコーティング法に限られるものではなく、操作が煩雑で高コストになるが、周知のCVD、PVD等の気相成膜法を利用してもよい。
【0113】
基材表面に酸化チタンおよび/またはその前駆体を付着させて、その皮膜を形成した後、基材表面 (より正確には酸化チタンおよび/または前駆体の皮膜) を金属ハロゲン化物を含有する反応媒体と接触させる。反応媒体との接触は、光触媒の製造方法に関して上述したのと同様に実施できる。そこに述べたように、反応媒体は液体でも気体でもよいが、好ましくは気体、即ち、反応ガスである。反応ガスの接触は、基材が耐えることができれば、上述したように加熱下で実施することが好ましい。
【0114】
また、反応媒体と接触させる前に、酸化チタンおよび/またはその前駆体を付着させた基材を熱処理により前処理してもよい。さらに、反応媒体と接触させた後の基材を、水との接触および/または熱処理により後処理して、基材表面の光触媒を安定化させることが、実用上は好ましい。
【0115】
付着した光触媒に金属錯体を含有させたい場合は、光触媒の製造方法について説明したように、化学反応によって所望の配位子に交換することができる。特に、金属錯体がヘテロポリ酸および/またはイソポリ酸である場合には、酸化チタンおよび/またはその前駆体の皮膜を形成した基材を、反応媒体と接触処理した後、または続いて水との接触処理および/もしくは熱処理により後処理を施した後、ヘテロポリ酸および/またはイソポリ酸を用いて接触処理を行い、必要であれば、さらに熱処理を行えばよい。
【0116】
また、第1の方法と同様に、バインダーを含有しない酸化チタン微粒子の分散液の塗布によって酸化チタンを基材に付着させ、次いで上記のように反応媒体と接触処理した後、必要によりバインダーを含浸させることも可能である。
【0117】
以上に説明した本発明の酸化チタン系光触媒および光触媒機能部材は、紫外線のみならず、波長400 nm以上の可視光だけを照射することによっても、光触媒作用を発現し、さまざまな有害物質、付着物質などの分解、除去、無害化などに優れた効果を発揮する。
【0118】
実際の使用に際しては、光触媒が分解対象となる物質と接触可能で、同時に光触媒に可視光を照射できる環境下で使用すればよい。光源は、少なくとも400 nm以上の可視光を含むものであればよく、例えば、太陽光、蛍光灯、ハロゲンランプ、ブラックライト、キセノンランプ、水銀ランプなどが利用できる。
【0119】
有害物質としては、NOx 、SOx 、フロン、アンモニア、硫化水素などの大気中に含まれるガス;アルデヒド類、アミン類、メルカプタン類、アルコール類、BTX、フェノール類等の有機化合物;トリハロメタン、トリクロロエチレン、フロン等の有機ハロゲン化合物;除草剤、殺菌剤、殺虫剤等の種々の農薬;蛋白質やアミノ酸等の種々の生物学的酸素要求物質;界面活性剤;シアン化合物、硫黄化合物等の無機化合物;種々の重金属イオン;さらには細菌、放射菌、菌類、藻類等の微生物のうち水中に含まれるものが挙げられる。付着物質は、光触媒または光触媒機能部材の表面に直接付着するものであり、大腸菌、ブドウ球菌、緑濃菌、カビ等の菌類;油、タバコのヤニ、指紋、雨筋、泥などが例示される。
【0120】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。実施例中、光触媒中の金属ハロゲン化物の含有量はいずれも金属としての含有量(mass%) である。また、実施例中の部は、特に指定しない限り、全て質量部である。
【0121】
【実施例】
【0122】
【実施例1】
酸化チタン系光触媒の合成
紫外線光触媒活性を示す市販アナターゼ型酸化チタン粉末 (石原産業製ST-01 、部分的に非晶質) 0.5 g を石英管(直径33 mm)に入れ、アルゴン置換した後、573 Kまで昇温した。次いで、反応ガスとして、四塩化チタン(TiCl4) を1.4 vol%含有する水素ガスを石英管に流して、酸化チタンに接触させながら、573 Kで20分間の接触処理を行った。反応ガスの流量は2.0 L/分であった。その後、石英管内をアルゴンガスに置換し、室温まで徐冷して、本発明に係る酸化チタン系光触媒を取り出した。
【0123】
この光触媒は、四塩化チタンが酸化チタン表面の水酸基と脱塩化水素反応して酸化チタンの表面に結合したチタンハロゲン化物を含有していた。光触媒中に導入されたTi金属の量を、接触処理後の重量増と光触媒中のハロゲン量より算出した。
【0124】
この光触媒について、下記の要領でESRスペクトルの測定と光触媒活性の測定(アセトアルデヒドの分解試験)とを行った。また、この材料の吸光スペクトルを測定したところ、波長400 nm以上の可視光領域に吸収性を有していた。
【0125】
ESR測定
大気中でESR用テフロン(R)チューブに入れて封かんした試料に、室温にて200 W ハロゲンランプを用いて可視光を10分以上照射した後、照射を続けながらESR測定を行った。その後試料をチューブごと暗黒下におき、可視光照射をせずに、ESR測定を行った。
【0126】
ESRの測定条件は次のとおりである:
測定装置:日本電子製Xバンド(9 GHz帯)電子スピン共鳴装置(JES-RE2X)
ESR信号検出下限(条件): 1E lO個/mT
[同一ESR信号に寄与するスピン(不対電子)が試料中に1E 10 個]
磁場走査域: 330±25 mT
磁場変調幅: 0.1 mT
磁場変調周波数: 100 kHz
走査時間:2分
走査回数:1回
増幅率 : 500倍
遅延時間: 0.1秒
マイクロ波出力:0.1 mW。
【0127】
g値の計算法は次の通りである:
Mn2+/MgOマーカー(装置付属)の3本目(g=2.0303)と4本目(g=1.981)を基準として、次式により試料のESR信号のg値を算出した。
【0128】
g=2.0303−(2.0303−1.981)×L3/(L3+L4)
L3:マーカー(3本目)と試料のESR信号の磁場の差
L4:マーカー(4本目)と試料のESR信号の磁場の差
またESRピーク強度については、検出されるESR信号が微分信号であるため、微分信号の最大値と最小値の差をESR信号強度とした。
【0129】
5Kで測定したESRスペクトルを図3に示す。これからわかるように、5Kの温度で可視光照射時に観測されるg値 1.950〜2.030 の間のピークが、暗黒下では観測されなかった (上記第1の特徴) 。また、そのESRスペクトルには、酸素欠陥に帰属できるトリプレットシグナルのg値 2.002〜2.010, 2.020〜2.028, 1.982〜1.988 とは異なったg値 1.986〜1.994 に新たなピークが出現していた (上記第3の特徴) 。
【0130】
光触媒活性の測定(アセトアルデヒドの分解試験 )
試料(0.3 g) を40 mm 角の皿に置き、この皿を石英製の反応セルに入れ、閉鎖循環ラインに接続し(合計内体積約3.0 L)、酸素を20 vol% 含む窒素ガスでアセトアルデヒドを希釈したガス(アセトアルデヒド濃度約240 ppm)を系内に導入した。このガスを循環させながら、250 W 高圧水銀灯から、紫外線カットフィルター(東芝製 L42) を通して反応セルへの光照射を行った。この光には、フィルターの特性上、波長390 nm以上から400 nmまでの近紫外線が僅かに含まれるが、ほとんど(エネルギー強度で99.9%以上)は400 nm以上の可視光であった。反応の追跡は、アセトアルデヒドが分解して生成する二酸化炭素の濃度を、循環ラインに接続した自動ガスクロマトグラフで経時的に測定することにより行った。触媒性能は、二酸化炭素の生成速度から評価した。結果を表1にまとめて示す。
【0131】
【比較例1】
実施例1で原料粉末として使用したのと同じ市販の酸化チタンを、そのまま未処理で光触媒として使用し、実施例1に記載したのと同様の方法で可視光照射下でのアセトアルデヒドの分解試験を行った。結果を表1に示す。この紫外線活性型の酸化チタンは吸光スペクトルにおいて可視光波長域に吸収ピークを示さず、可視光吸収性を有していない。
【0132】
【実施例2】
(a) 触媒実験ハンドブック (講談社サイエンティック発行)に記載の合成法に準拠して酸化チタンを調製した。即ち、TiCl4 の水溶液(Ti分濃度16.5%)200 ccを氷冷し、攪拌しながらアンモニア水溶液 (28%) をpHがアルカリ性になるまで滴下して、水溶液を中和した。析出した固形物を濾取し、よく水洗した後、353 Kで真空乾燥して、酸化チタン粉末を合成した。
【0133】
得られた酸化チタンの結晶部分の結晶形はアナターゼ型であった。この酸化チタン粉末を、実施例1と同様の方法により、水素中にTiCl4 を1.4 vol%含有する反応ガスを用いて接触処理し、本発明に係る酸化チタン系光触媒を調製した。
【0134】
(b) 上記(a) で得た酸化チタン系光触媒に、さらにアルゴン雰囲気下にて573 Kで20分間の熱処理を施して後処理した。このアルゴン雰囲気下での熱処理により、前記反応ガスとの熱処理によって酸化チタン中に導入された金属ハロゲン化物のかなりの部分が除去された。
【0135】
上記の実施例(a) および(b) で得た酸化チタン系光触媒について、上記方法で、金属ハロゲン化物 (金属化合物) のTi (金属) の定量と可視光照射下でのアセトアルデヒドの分解試験を行った。結果を表1に一緒に示す。
【0136】
ESRスペクトルにおいて、上記(a) と(b) のいずれの生成物も、実施例1の生成物と同様に、上記第1および第3の特徴を示した。また、(b) の生成物は、上記第2の特徴も示した。
【0137】
【表1】
Figure 0003894144
【0138】
実施例1〜2と比較例1との対比からわかるように、金属ハロゲン化物 (四塩化チタン) を含有させる処理を行った本発明の酸化チタン系光触媒は、可視光の照射によって十分な光触媒活性を示すことが確認された。一方、この処理を行っていない市販の酸化チタン (比較例1) では、可視光の照射では実質的な光触媒活性が認められなかった。
【0139】
実施例2の(a) と(b) を比較すると、金属ハロゲン化物の含有量が多いと光触媒活性が高くなることがわかる。実施例1と実施例2(a) の光触媒は、金属ハロゲン化物の含有量はそれほど違わないが、光触媒活性は実施例2(a) の方が著しく高くなった。これは、酸化チタンの結晶化度、粒子径といった状態の違いによって、可視光による活性発現を可能にする金属ハロゲン化物を含む構造・部位が違ってくるためと推測される。
【0140】
実施例2(a) および(b) で得た酸化チタン系光触媒について、下記の要領で昇温脱離スペクトル (TDS) の測定を行った。結果をそれぞれ図1および図2に示す。
【0141】
昇温脱離スペクトルの測定
昇温脱離スペクトルの測定は、高精度昇温脱離ガス分析装置(電子科学製EMD-WA1000S 型) を用いて行った。試料を白金の容器に置き、10-6 Torr の真空に排気した後、1K/秒の昇温速度で試料を昇温しながら、脱離してくるガス成分を質量分析器で分析した。
【0142】
図1および図2からわかるように、反応ガスとの接触処理によって酸化チタンに1.3 mass% の金属ハロゲン化物を導入した実施例2(a) の光触媒 (図1) と、この光触媒をアルゴンガス雰囲気でさらに熱処理して金属ハロゲン化物の含有量を0.156 mass% に低減させた実施例2(b) の光触媒 (図2) のいずれでも、ハロゲンを含む物質の分子イオンあるいはそのフラグメントイオンとしてTiCl2(M/Z=118)、TiCl3(M/Z=154)、TiCl4(M/Z=189)、HCl(M/Z=36) などが検出され、そのうち最初の3種類のチタン塩化物のイオンは、ピーク温度623 K以上の温度領域に検出された。従って、これらの光触媒はいずれも、昇温脱離スペクトルにおいて623 K以上にハロゲン含有物質の分子イオンまたはフラグメントイオンのピークを有している。
【0143】
【実施例3】
TiCl4 を1.4vol% 含む水素ガスに代えて、VOCl3, SnCl4, SbCl5, SiCl4, WCl6, BiCl6, FeCl3または TiCl4を約1vol%含む含むアルゴンガスを反応ガスとして使用したことを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法により、本発明の酸化チタン系光触媒を調製した。これらの光触媒を用いて、上記方法で可視光照射下でのアセトアルデヒドの分解試験を行った結果を表2に示す。
【0144】
【表2】
Figure 0003894144
【0145】
どの金属ハロゲン化物を用いても、可視光による光触媒作用を示す酸化チタン系光触媒が得られることが明らかとなった。中でも、TiCl4, BiCl6, WCl6などが、高い光触媒活性を与えることができた。
【0146】
【実施例4】
TiCl4 を1.4 vol%含有する水素ガスからなる反応ガスの接触条件 (温度および時間) を表3に示すように変更した点を除いて、実施例1に記載したのと同様の方法により、本発明の酸化チタン系光触媒を調製した。これらの光触媒を用いて上記方法で可視光照射下でのアセトアルデヒド分解試験を行った。試験結果を熱処理条件と一緒に表3に示す。
【0147】
【表3】
Figure 0003894144
【0148】
323 K以上の温度で接触処理を行うことにより、可視光による光触媒活性を示す酸化チタン系光触媒が得られたが、光触媒活性が高くなる接触温度は 373〜773 Kの範囲であり、中でも 473〜873 Kの範囲でよりよい結果が得られた。低温処理の場合は処理時間を長め、高温処理の場合は処理時間を短くすることで、より高活性の光触媒が得られた。
【0149】
【実施例5】
実施例2に記載したのと同様に、TiCl4 の水溶液をアンモニア水溶液で中和することにより、原料酸化チタン粉末を合成した。但し、TiCl4 水溶液の濃度は実施例2の半分、即ち、Ti分濃度で8.25%であった。
【0150】
この酸化チタン粉末1.0 g を、実施例1に記載したのと同様の方法により、水素中にTiCl4 を1.4 vol%含有する反応ガスを用いて接触処理した。続いて、得られた処理物1.0 g を10 gの水中で攪拌して濾過する、水との接触工程を3回繰り返して、後処理した。その後、処理物を323 Kで24時間以上乾燥して、本発明に係る酸化チタン系光触媒を調製した。
【0151】
X線回折の結果、この橙色の酸化チタン系光触媒の主たる結晶型はアナターゼであったが、極く僅かにブルッカイトの存在も確認された。
この本発明の光触媒について、実施例1に記載したようにして空気中でのESRスペクトルの測定 (温度5Kと293 K) と可視光光触媒活性の測定(アセトアルデヒドの分解試験)とを行った。測定結果を図4と表4に示す。この光触媒は可視光吸収性を有していた。
【0152】
本実施例では、次のようにして脱酸素雰囲気中でのESRスペクトルも測定した。試料をESR用石英管にいれ、ロータリ型真空ポンプを用いて真空封管した(約10-3 Torr)。クライオスタットを用いて5〜293 K(室温)の範囲で任意温度とし、可視光を10分以上照射したのち、照射を続けながらESR測定を行った。引き続きピーク強度の半減期を調査する場合は、可視光照射を停止した後、所定時間にESR測定を行って、ピーク強度の減衰を追跡した。その結果を図6に示す。
【0153】
【比較例2】
既知の可視光活性型の酸化チタン光触媒粉末を用いて、実施例5と同様に空気中と脱酸素雰囲気中でのESRスペクトルの測定と可視光照射下でのアセトアルデヒドの分解試験を行った。結果を図5、6と表4に示す。この光触媒は着色しており、可視光吸収性を有していた。
【0154】
【表4】
Figure 0003894144
【0155】
表4に示す通り、本発明の酸化チタン系光触媒は、水との接触処理により安定化した後でも、既知の可視光活性型光触媒より高い活性を示す。従って、後処理により光触媒活性が低下しても、なお実用レベルに十分な可視光光触媒活性を保持していることがわかる。
【0156】
図4に示すとおり、本発明の光触媒のESRスペクトルでは、g値 1.950〜2.030 の範囲に、酸素欠陥により捕捉された不対電子に基づくトリプレットシグナルが観測された (最も低磁場側のピークはマンガンマーカと重なっている) 。このことから、この酸化チタンは酸素欠陥を有する可視光吸収型であることがわかる。
【0157】
さらに、293 K (室温)と5Kのいずれの温度でも、可視光照射時に観測されるg値 1.950〜2.030 の間のピークが、暗黒下では観測されなかった (上記第1の特徴) 。一方、比較例2では、可視光照射下で観測されるピークが、暗黒下でも観測され、特に暗黒下5Kでは極めて大きなピークが観測された (図5) 。
【0158】
また、図4の5Kでの測定結果から、本発明の光触媒では、g値 1.986〜1.994 (1.99 近傍) に、室温測定では見られない新たなピークが出現していた (上記第3の特徴) 。一方、図5の比較例2の光触媒では、5Kの測定結果にこのようなピークは全く観測されなかった。
【0159】
図6に示した、脱酸素雰囲気下で測定した最大ピーク (g=2.005)の強度変化、即ち、活性種の濃度変化の追跡結果によると、本発明の光触媒ではその減衰は緩やかで、半減期は4.8 分であった (上記第2の特徴) 。一方、比較例では減衰は速やかに起こり、半減期は1.7 分であった。
【0160】
以上のESRスペクトルの結果から、本発明の光触媒と比較例の光触媒では、酸化物としての構造が大きく異なることが示唆される。ESRスペクトルが本発明で規定するいずれか少なくとも1つの特徴を有すると、優れた可視光触媒活性を有する酸化チタン系光触媒が得られる。
【0161】
【実施例6】
合成した原料酸化チタン粉末に代えて、実施例1で使用したのと同じ市販酸化チタン粉末(ST-Ol) を原料とする以外は、実施例5に記載した方法に従って、本発明の酸化チタン系光触媒を得た。
【0162】
この光触媒について実施例1と上記方法で可視光照射下でのアセトアルデヒドの分解試験を行った。その結果、CO2 の生成速度は1.2 μmol/h であった。
なお、比較例1に示すように、この原料酸化チタン粉末の可視光光触媒活性は、CO2 の生成速度で 0.1μmol/h 未満であり、活性を示さなかった。本発明の製造方法を用いると、市販の酸化チタンから、可視光触媒活性を有し、取扱いも容易な本発明の酸化チタン系光触媒を製造できる。
【0163】
【実施例7】
製造条件を表5に示すように変更した点を除いて、実施例5に記載した同様の方法で、本発明の酸化チタン系光触媒を得た。
【0164】
実施例5は試験No.7に相当する。前処理の熱処理と後処理は、特に断らない限り大気中で行った。試験No.14 および15では、後処理を、水との接触処理の代わりに、表中の条件での熱処理により実施した。試験No.16 では、反応ガスとして四塩化チタンを(1.4 vol%)含む窒素を用いて接触処理を行った。試験No.29 では、前処理をアンモニア(2 vol%)−アルゴン雰囲気中で行った。試験No.30 では、前処理を、テフロン(R)ライニングを施したオートクレーブ中で塩化アンモニウム(1M)−塩酸(1M)を含む純水を用いた水熱湿式処理 (条件は表中の通り) により実施した。
【0165】
得られた光触媒を用いて、上記方法で可視光照射下でのアセトアルデヒドの分解試験を行った。試験結果を製造条件と一緒に表5に示す。
【0166】
【比較例3】
実施例5で合成した原料酸化チタン粉末を、大気下 573Kで1時間焼成し、光触媒を得た。この試料を用いて、上記方法で可視光照射下でのアセトアルデヒドの分解試験を行った。試験結果を製造条件と一緒に表5に示す(試験No.31)。
【0167】
【表5】
Figure 0003894144
【0168】
金属ハロゲン化物(ここでは四塩化チタン)を含む反応ガスと酸化チタンの接触処理と、続く後処理によって、可視光光触媒活性を示す本発明の酸化チタン系光触媒が得られた。光触媒活性が高くなる反応ガスとの接触温度は 373〜673 Kの範囲であり、中でも 523〜673 Kの範囲でよりよい結果が得られた。
【0169】
接触処理が低温であったために十分な活性が得られない場合でも、反応ガスとの接触処理後に、後処理として熱処理を行うことで活性を高めることができる。反応ガスとの接触時間については、低温処理の場合は接触時間を長くし、高温処理の場合は接触時間を短くすると良いことがわかる。573 Kでは接触時間10分から40分程度で高活性な光触媒となった。なお、反応ガスのベースガスを水素に代えて窒素としても可視光活性を有する光触媒が得られた。
【0170】
反応ガスとの接触の前に行う熱処理 (前処理) については 373〜573 Kの範囲で行うと、より高い活性を持った光触媒となることがわかる。また、前処理を還元性を有するアンモニア含有雰囲気で行ったり、あるいは液中で湿式処理としても効果があることが確認された。
【0171】
一方、四塩化チタンを含む反応ガスとの接触処理を行わずに、単に大気下で焼成した試験No.31(比較例3) の光触媒は、試験No.32(実施例2(a))の光触媒に比べて可視光触媒活性が著しく低かった。
【0172】
【実施例8】
実施例5と全く同様に、原料の合成酸化チタン粉末にTiCl4 ガスとの接触処理と、その後の水との接触による後処理とを行って、乾燥後に可視光光触媒活性を示す酸化チタン粉末を得た。
【0173】
この酸化チタン粉末を、H3PW12O40 またはH3SiW12O40を蒸留水に溶かした水溶液 (濃度約50%) に含浸させた。4時間後、水溶液を濾過し、回収した酸化チタン粉末を50℃で一晩乾燥した。その後、773 Kで2時間の熱処理による固定を行って、酸化チタン表面にヘテロポリ酸を含有させた2種類の酸化チタン系光触媒を作製した。
【0174】
金属錯体の含有量は、酸化チタンの重量に対する金属の量で、H3PW12O40 含有触媒では77 mass%、H3SiW12O40含有触媒では63 mass%であった。
これらの光触媒を上記方法で可視光照射下でのアセトアルデヒドの分解試験に供した。光触媒活性は、CO2 生成速度で、H3PW12O40 含有触媒では7.7 μmol/hr、H3SiW12O40含有触媒では7.0 μmol/hrであった。後処理のみの場合に比べて、金属錯体を導入することによって、光触媒活性が著しく向上することがわかる。即ち、金属錯体を導入することで、後処理で得られる安定性を保持しながら、光触媒活性を高めることができる。
【0175】
【実施例9】
本例は本発明の光触媒機能部材の製造を例示する。
(a) 成膜原料としてTiCl4 を用いたCVD法により、ガラスクロス上に酸化チタンの皮膜を約100 nmの厚みで形成した。
【0176】
この酸化チタン皮膜を表面に形成したガラスクロスに対して、TiCl4 1.4 vol%を含有する水素ガスを反応ガスとする接触処理を施して、酸化チタンの皮膜に塩化チタンを含有させた。接触処理は、酸化チタン粉末の代わりに、上記ガラスクロスを用いることを除いて、実施例1に記載したのと同様に実施した。こうして、ガラスクロスの表面に本発明の酸化チタン系光触媒の皮膜を有する光触媒機能部材が得られた。
【0177】
この光触媒機能部材の試料を、実施例1に記載したのと同様の方法で、可視光照射下でのアセトアルデヒドの分解試験に供した。試料の大きさは16 cm2であった。得られたCO2 生成速度は0.35μmol/h であった。
【0178】
(b) 実施例1で調製した本発明の酸化チタン系光触媒粉末3部、従来の光触媒である実施例1で用いた酸化チタン粉末 (ST-01)1部、バインダーのシリカコロイド (日産化学製スノーテックスO、SiO2 20 mass%)2部 (SiO2として) を、アルコールと水の混合溶媒36部に加え、ペイントシエーカー (レッドデビル製) を用いてよく混合し、光触媒コーティング液を調製した。
【0179】
予めシリコーン樹脂を主成分とするプライマー層(厚み約1μm)を形成しておいた塗装鋼板の表面に、このコーティング液をバーコータで塗布し、423 Kで3分間乾燥して、基材の塗装鋼板の表面に本発明の酸化チタン系光触媒を含んだ皮膜を有する光触媒機能部材を得た。皮膜 (光触媒層) の厚みは約1μmであった。この光触媒機能部材の試料を、上記(a) と同様に可視光照射下でのアセトアルデヒドの分解試験に供した。CO2 生成速度は0.25μmol/h であった。
【0180】
【比較例4】
(a) 実施例9(a) で作製した、酸化チタン皮膜を表面に形成したガラスクロスをそのまま (反応ガスとの接触処理を行わずに) 試験材として用い、実施例9と同様に可視光照射下でのアセトアルデヒドの分解試験を実施した。CO2 生成速度は0.0 μmol/h であった。
【0181】
(b) 実施例9(b) に記載したコーティング液を、本発明の酸化チタン系光触媒粉末の代わりに、従来の酸化チタン光触媒粉末 (ST-01)3部を使用した (この粉末の使用量は合計4部となる) 点を除いて同様に調製した。このコーティング液を用いて、実施例9(b) と同様に、塗装鋼板の表面に皮膜を形成した。こうして得られた比較用の光触媒機能部材を可視光照射下でのアセトアルデヒドの分解試験に供した。CO2 生成速度は0.0 μmol/h であった。
【0182】
【実施例10】
本例は本発明の光触媒機能部材の別の製造例を示す。
(a) TiCl4 (16.5 mass%)水溶液1部に対してヒドラジン3部を加えて、酸化チタンコロイドゾルを作製した。このゾルを透析チューブを用いて脱イオン化処理し、エタノールを適量加えた後、石英基板上に塗布し、373 Kで乾燥することにより、石英基板上に酸化チタン皮膜を形成した。
【0183】
この酸化チタン皮膜を、TiCl4 を1.4 vol%含有する水素ガスを反応ガスとして用いて接触処理した。接触処理は、酸化チタン粉末の代わりに、上記の酸化チタン皮膜を形成した石英基板を用いることを除いて、実施例1に記載した方法と同様に実施した。次いで、石英基板を大気中673 Kで1時間熱処理する後処理を行って、酸化チタン系光触媒の皮膜を有する、本発明に係る光触媒機能部材を得た。皮膜の厚みは約 0.6μm であった。この光触媒機能部材を、実施例9と同様の方法により可視光照射下でのアセトアルデヒド分解試験に供した。CO2 生成速度は1.1 μmol/h であった。
【0184】
(b) 実施例5で調製した本発明の酸化チタン系光触媒粉末3部、従来の光触媒である酸化チタン (ST-01) 1.5部、バインダーのシリカコロイド (実施例9(b) と同じもの) 1.5 部 (SiO2として) を、アルコールと水の混合溶媒20部に加え、ペイントシェーカーを用いてよく混合し、光触媒コーティング液を調製した。
【0185】
このコーティング液を用いて、実施例9(b) と同様に塗布および乾燥を行い、基材の塗装鋼板の上に本発明の酸化チタン系光触媒を約50 mass%含有する皮膜を有する光触媒機能部材を得た。皮膜の厚みは約 0.8μm であった。この光触媒機能部材を上記方法でアセトアルデヒドの分解試験に供したところ、CO2 の生成速度は0.45μmol/h であった。
【0186】
【比較例5】
(a) 実施例10(a) で作製した、酸化チタン皮膜を有する石英基板を、TiCl4 を含有する反応ガスとの接触処理を行わずに、そのまま大気中673 Kで1時間熱処理することにより試験材を製作した。この試験材を、実施例9と同様に可視光照射下でのアセトアルデヒド分解試験に供した。CO2 生成速度は0.19μmol/h であった。
【0187】
(b) 実施例10(b) に記載したコーティング液を、本発明の酸化チタン系光触媒粉末に代えて、従来の酸化チタン粉末(ST-Ol)を3.0 部使用した(この粉末の使用量は合計4.5 部)ことを除いて、同様に調製した。このコーティング液を用いて、実施例10(b) と同様に、塗装鋼板の表面に酸化チタンのみからなる光触媒を含む皮膜を形成した。この比較用の光触媒機能部材を、実施例9と同様に可視光照射下でのアセトアルデヒド分解試験に供した。CO2 生成速度は 0.0μmol/h であった。
【0188】
【実施例11】
実施例5で調製した本発明の酸化チタン系光触媒30部を270 部の蒸留水と混合し、メディアミルを使用して、ジルコニアビーズ (0.4 mm径) と一緒に60分間の分散処理を行って、固形分量10 mass%の光触媒分散液を作製した。
【0189】
得られた分散液の酸化チタン系光触媒粒子の平均粒子径を、堀場製作所製粒度測定装置LA-700で測定したところ、約310 nmであった。分散処理前の光触媒の平均粒子径は約34μm であった。
【0190】
この光触媒分散液100 部に、シリカコロイド50部 (日産化学製スノーテックスO、SiO2 20 mass%)、メチルトリエトキシシラン4部、およびメタノール150 部を加え後、ペイントシェーカーを用いて60分間よく振盪混合することにより、コーティング液を作製した。
【0191】
このコーティング液を用いて、乾燥時間を10分とする以外は実施例9(b) と同様に塗布・乾燥を行い、基材の塗装鋼板の上に酸化チタン系光触媒を含む皮膜を有する光触媒機能部材を得た。皮膜の厚みは約0.8 μm であり、皮膜中の光触媒の含有量は約42 mass%であった。
【0192】
この光触媒機能部材を、実施例9と同様の方法により可視光照射下でのアセトアルデヒド分解試験に供した。CO2 生成速度は0.72μmol/h であった。実施例10(b) との比較からわかるように、光触媒粒子を分散処理してからコーティング液を調製することにより、可視光光触媒活性が向上した。
【0193】
【実施例12】
コーティング液の調製
実施例5で調製した粉末状の酸化チタン系光触媒0.05〜1部を分散処理した後、バインダー成分のシリカコロイド (日産化学製スノーテックスOXS 、SiO2 10 mass% 、粒子径4〜6nm) 1部 (SiO2分として) と共に、エタノールと水との混合溶媒 (エタノール10部、水30部) に加え、ペイントシェーカーを用いて十分に混合して、コーティング液を用意した。
【0194】
また、バインダー成分のシリカを含有しない皮膜を形成するため、上記と同じ酸化チタン系光触媒1部のみを同様に混合溶媒に添加し、混合したコーティング液も用意した。
【0195】
光触媒皮膜の形成
これらのコーティング液に、100 mm角、厚み0.5 mmの石英板を常温で浸漬した後、150 ℃で10分間乾燥させた。この浸漬と乾燥を、必要に応じて繰返し、石英板上の厚さ 1.0±0.1 μmの光触媒皮膜を形成し、光触媒機能部材を得た。
【0196】
可視光光触媒活性の測定(アセトアルデヒドの分解試験 )
反応セル光触媒皮膜を表面に有する石英板 (光触媒機能部材) を40 mm 角に切断した試験片を石英製の反応セルに入れた点と、閉鎖循環ラインの合計内体積が1.0 L であった点を除いて、実施例1に記載したようにして可視光光触媒活性を測定した。結果を表6と図7にまとめて示す。
【0197】
【表6】
Figure 0003894144
【0198】
光触媒皮膜中の酸化チタン系光触媒の含有量が5mass% 以上で、可視光照射により光触媒活性を示す。含有量が100 mass% である時の光触媒活性と比べた場合、含有量が30 mass%で光触媒活性は含有量100 mass% 時の活性の約50%に達し、含有量が約50 mass%では光触媒活性が含有量100 mass% 時の活性の約75%に達する。含有量の増大による可視光光触媒活性の増大は、含有量が約90 mass%あたりでほぼ頭打ちになる。従って、好ましい光触媒含有量は30〜90 mass%であり、特に50〜90 mass%である。
【0199】
酸化チタン系光触媒100 mass% の皮膜は、可視光光触媒活性は最も高くなるが、バインダー成分が存在しないため、光触媒粉末の結合が非常に弱く、指でこする程度で、容易に石英板から剥離した。
【0200】
【実施例13】
実施例8で調製した金属錯体を含有させた粉末状の酸化チタン系光触媒1部と、バインダー成分のコロイダルシリカ (実施例1と同じもの) 1部とを用いて、実施例12と同様に、厚み約1μmの光触媒皮膜の形成と可視光光触媒活性の測定を行った。
【0201】
光触媒皮膜中の酸化チタン系光触媒の含有量は50 mass%であった。同じ含有量の実施例12の光触媒皮膜に比べて、可視光光触媒活性の測定で得られたCO2 生成量は約2倍に増大した。
【0202】
【実施例14】
実施例12を繰り返したが、コーティング液中の酸化チタン系光触媒の量を1部に固定し、石英板のコーティング液への浸漬と乾燥の反復回数を変化させて、石英板上に形成した光触媒皮膜の厚さを 0.5〜25.5μm の範囲内で変化させた光触媒機能部材を作製した。皮膜中の可視光活性の酸化チタン系光触媒の含有量は50 mass%で一定であった。これらの光触媒機能部材の可視光光触媒活性を実施例12と同様に測定した結果を表7と図8に示す。
【0203】
【表7】
Figure 0003894144
【0204】
光触媒皮膜の厚みが0.5 μm以上で可視光照射による光触媒活性を示すようになるが、厚みが25.5μmである時の可視光光触媒活性に比べて、厚みが3μm以上で50%以上の活性が、厚みが5μm以上では60%以上の活性が得られるようになり、可視光光触媒活性が十分に高くなる。
【0205】
【発明の効果】
本発明の酸化チタン系光触媒および光触媒機能部材は、効率的な量産が可能であり、紫外線だけでなく可視光の照射によっても、高い光触媒作用を示す。従来の紫外線型の酸化チタン光触媒に比べて光をより有効に利用できるので、光触媒活性が極めて強く、強い環境浄化作用が期待できる。また、北向き、日陰部分、実質的に蛍光灯の光しか利用できない屋内など、紫外線光量が低く、従来の酸化チタン光触媒では十分な効果が得られなかった場所でも、新たに光触媒作用を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2(a) で調製した本発明に係る酸化チタン系光触媒の昇温脱離スペクトル (TDS) である。
【図2】実施例2(b) で調製した本発明に係る別の酸化チタン系光触媒の昇温脱離スペクトル (TDS) である。
【図3】実施例1で得られた本発明の酸化チタン系光触媒の空気中5KでのESRスペクトルを示す。
【図4】実施例5で得られた本発明の酸化チタン系光触媒の空気中293 Kおよび5KでのESRスペクトルを示す。
【図5】可視光活性を有する既知の酸化チタン系光触媒 (比較例2) の空気中293 Kおよび5KでのESRスペクトルを示す。
【図6】実施例5および比較例2の酸化チタン光触媒の脱酸素雰囲気中でのESRスペクトルのg値 1.950〜2.030 の範囲における最大ピーク強度の光停止後の減衰状況を示すグラフである。
【図7】実施例における光触媒皮膜中の酸化チタン系光触媒の含有量と可視光光触媒活性(CO2生成速度) との関係を示すグラフである。
【図8】実施例における光触媒皮膜の厚みと可視光光触媒活性(CO2生成速度) との関係を示すグラフである。

Claims (31)

  1. 酸化チタンおよび/またはその前駆体に四塩化チタンを含有するガスを接触させることにより導入された塩化チタン分を含有することを特徴とする、可視光の照射によって光触媒活性を発現する酸化チタン系光触媒。
  2. 化チタンとして含有されるTi量が酸化チタンに対して0.1 mass%以上、300 mass%以下である、請求項1に記載の酸化チタン系光触媒。
  3. 温脱離スペクトルにおいて623K以上に塩化チタンの分子イオンまたはフラグメントイオンピークを有する、請求項1に記載の酸化チタン系光触媒。
  4. 可視光の照射によって光触媒活性を発現する酸化チタン系光触媒であって、その製造過程において酸化チタンおよび/またはその前駆体に四塩化チタン含有ガスを接触させる処理を受けており、かつ5Kの温度で測定したESRスペクトルにおいて、可視光照射時にはg値1.950〜2.030の間にピークが観測され、該ピークが暗黒下では実質的に観測されないことを特徴とする、酸化チタン系光触媒。
  5. 可視光の照射によって光触媒活性を発現する酸化チタン系光触媒であって、その製造過程において酸化チタンおよび/またはその前駆体に四塩化チタン含有ガスを接触させる処理を受けており、かつ酸素を実質的に含まない雰囲気下、室温で測定したESRスペクトルにおいて、可視光照射時に観測されるg値1.950〜2.030の範囲の最大ピークが、可視光照射停止後に3分以上のピーク強度半減期を有することを特徴とする、酸化チタン系光触媒。
  6. 5Kで測定したESRスペクトルにおいて、g値1.986〜1.994に位置するピークを有する、請求項4または5に記載の酸化チタン系光触媒。
  7. 製造過程において、四塩化チタン含有ガスを接触させる処理の後、水との接触処理および/または熱処理をさらに受けている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の酸化チタン系光触媒。
  8. 酸化チタンが可視光を吸収する特性を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の酸化チタン系光触媒。
  9. 酸化チタンが酸素欠陥を有するものである、請求項1〜8のいずれかに記載の酸化チタン系光触媒。
  10. 酸化チタンの主たる結晶構造がアナターゼ型である、請求項1〜9のいずれかに記載の酸化チタン系光触媒。
  11. 酸化チタンおよび/またはその前駆体に四塩化チタン含有ガスを接触させることを特徴とする、酸化チタン系光触媒の製造方法。
  12. 前記四塩化チタン含有ガスとの接触の後、さらに水との接触、および/または熱処理を行う、請求項11に記載の酸化チタン系光触媒の製造方法。
  13. 請求項1〜10のいずれかに記載の酸化チタン系光触媒が基材表面に付着していることを特徴とする、光触媒機能部材。
  14. 請求項1〜10のいずれかに記載の酸化チタン系光触媒とバインダー成分とを含有する皮膜を基材表面に有し、皮膜中の該光触媒の含有量が5〜95 mass%であることを特徴とする、光触媒機能部材。
  15. 溶媒中に請求項1〜10のいずれかに記載の酸化チタン系光触媒を分散させたことを特徴とする光触媒分散液。
  16. 光触媒の平均粒子径が500 nm以下である請求項1に記載の光触媒分散液。
  17. 溶媒中に請求項1〜10のいずれかに記載の酸化チタン系光触媒を含有することを特徴とする、光触媒コーティング液。
  18. 溶媒中に請求項1〜10のいずれかに記載の酸化チタン系光触媒とバインダーとを含有し、前記酸化チタン系光触媒の含有量が不揮発分の合計量に基づいて5〜95 mass%の範囲内であることを特徴とする、光触媒コーティング液。
  19. 請求項1または1に記載の光触媒分散液を用いて調製されたことを特徴とする、光触媒コーティング液。
  20. 請求項1、1または19に記載のコーティング液を基材表面に塗布することを特徴とする、光触媒機能部材の製造方法。
  21. 基材表面に予め酸化チタンおよび/またはその前駆体を付着させた後、この酸化チタンおよび/またはその前駆体に四塩化チタンを含有するガスを接触させることを特徴とする、光触媒機能部材の製造方法。
  22. 前記四塩化チタン含有ガスとの接触の後、基材表面をさらに水と接触させるか、および/または熱処理を行う、請求項2に記載の方法。
  23. 熱処理を373〜873Kの温度範囲で行う請求12または2に記載の方法。
  24. 四塩化チタン含有ガスと接触させる前に、酸化チタンおよび/またはその前駆体あるいは基材に、323〜823Kの温度範囲での熱処理または湿式処理を施す、請求項11、12および2〜2のいずれかに記載の方法。
  25. 四塩化チタン含有ガスとの接触を323〜873Kの温度範囲で行う、請求項11、12および2〜2のいずれかに記載の方法。
  26. 四塩化チタン含有ガスのベースガスが非酸化性ガスである、請求項11、12および2〜2のいずれかに記載の方法。
  27. ベースガスが水素および/または窒素を含有する請求項2に記載の方法。
  28. 酸化チタンおよび/またはその前駆体が、四塩化チタン、硫酸チタンおよび硫酸チタニルから選んだ少なくとも1種の化合物を含窒素塩基で中和する工程を経て製造されたものである請求項11、12および2〜2のいずれかに記載の方法。
  29. 可視光の照射によって光触媒活性を発現する酸化チタン系光触媒であって、5Kの温度で測定したESRスペクトルにおいて、可視光照射時にはg値1.950〜2.030の間にピークが観測され、該ピークが暗黒下では実質的に観測されず、かつこのスペクトルがg値1.986〜1.994に位置するピークをさらに有することを特徴とする、酸化チタン系光触媒。
  30. 可視光の照射によって光触媒活性を発現する酸化チタン系光触媒であって、酸素を実質的に含まない雰囲気下、室温で測定したESRスペクトルにおいて、可視光照射時に観測されるg値1.950〜2.030の範囲の最大ピークが、可視光照射停止後に3分以上のピーク強度半減期を有し、かつ5Kで測定したESRスペクトルにおいてg値1.986〜1.994に位置するピークを有することを特徴とする、酸化チタン系光触媒。
  31. 可視光の照射によって光触媒活性を発現する酸化チタン系光触媒であって、5Kの温度で測定したESRスペクトルにおいて、可視光照射時にはg値1.950〜2.030の間にピークが観測され、該ピークが暗黒下では実質的に観測されず、このスペクトルが、g値1.986〜1.994に位置するピークをさらに有し、かつ酸素を実質的に含まない雰囲気下、室温で測定したESRスペクトルにおいて、可視光照射時に観測されるg値1.950〜2.030の範囲の最大ピークが、可視光照射停止後に3分以上のピーク強度半減期を有することを特徴とする酸化チタン系光触媒。
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