JP2007117999A - 酸化チタン系光触媒とその用途 - Google Patents

酸化チタン系光触媒とその用途 Download PDF

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克浩 西原
Yasuhiro Masaki
康浩 正木
Rie Kuzui
理恵 葛井
Tadashi Fukuda
匡 福田
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Abstract

【課題】優れた可視光光触媒活性を発現することができ、かつ容易に量産できる酸化チタン系光触媒を提供する。
【解決手段】Tiに対する原子比が0.0001以上、1.0以下となる量のビスマスを含有する酸化チタンからなり、XPS測定により得られたBi−4f内殻準位に基づくスペクトル図が、(a)165〜162.5eVおよび159.7〜157.2eV、(b)163〜161eVおよび157.7〜155.7eV、ならびに(c)162.5〜160eVおよび157.2〜154.7eVの各範囲に位置する3組の対ピークのうちの少なくとも2組の対ピークを有し、前記(a)、(b)、(c)の各組の対ピークの合計面積をそれぞれa,b,cとして、(b+c)/aのピーク面積比の値が0.15以上である。好ましくは、b/aのピーク面積比の値が0.05以上、c/aのピーク面積比が0.1以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は、可視光の照射によっても光触媒作用を発揮しうる、酸化チタン系光触媒とその用途に関する。
近年、酸化チタンが示す光触媒作用は、防臭、抗菌、防汚等さまざまな環境浄化技術に応用されている。光触媒として一般に用いられるアナターゼ型酸化チタンのバンドギャップは約3.2eVであり、波長約380nmより短波長の紫外線を受けて反応が進行する。従って、その光触媒活性の発現には紫外線の照射が必要になり、設置環境、用途などが限定されるという問題点があった。
光触媒のエネルギー源として太陽光線や室内光に多く存在する可視光が利用可能になれば、光触媒は、その反応活性が強化され、さまざまな場所で光触媒の利用が可能となる。そこで、可視光の照射により光触媒活性を発現する光触媒材料の開発が進められている。
可視光活性を有する光触媒には下記のものがある:
(1)酸化チタン中に窒素を含有させた窒素型(例えば、Chem. Phys. Lett 123 (1986) 126-128、日本化学会誌、1986(8), p.1084、およびWO 01/010552);
(2)酸化チタン中に酸素欠陥を導入した酸素欠陥型(例えば、特開2001−205103号公報);
(3)酸化チタン中に他の金属(または金属イオン)をドーパントとして含有させるか、或いは金属酸化物を組み合わせた金属ドープ型。
金属ドープ型の酸化チタン系光触媒の例としては、次に述べるように多様なものが提案されている。
例えば特開平9−262482号公報には、バナジウムまたはクロムをイオン注入した酸化チタンが開示されている。
Chem. Commun. 2001, 2718-2719には、V、Cr、Nb、Moなどの遷移金属類を含有する、可視光活性を有する酸化チタンが報告されている。
特開2004−43282号公報には、さまざまな金属化合物とチタン化合物とを混合する酸化チタンの製造方法が開示されている。
特開2004−275999号公報には、Si、Ti、V、Sn、Sb、W、Nb、Bi、P、Mo、Cs、Ge、As、Ceなどから選ばれる金属化合物を含有する酸化チタンが開示されている。
J. Mat. Sci. Lett. 21, 2002, 1655-1656には、ビスマス含有による酸化チタン系光触媒活性の増進と吸収スペクトルの長波長化についての報告がある。
特開2001−205103号公報 特開平9−262482号公報 特開2004−43282号公報 特開2004−275999号公報 WO 01/010552号公報 Chemical Physics Letters 123(1986)p.126〜128 Chem. Commun. 2001, p.2718-2719 日本化学会誌、1986(8), p.1084 J. Mat. Sci. Lett. 21, 2002, p.1655-1656
上記の可視光応答性を有する酸化チタン系光触媒は、窒素型、酸素欠陥型、金属ドープ型のいずれも、可視光照射下での活性は高いとはいえない。また、それらには、製造にイオン注入装置やスパッター装置が必要なものが多く、量産に向かないという別の問題点もある。
本発明は、優れた可視光光触媒活性を発現することができ、かつ容易に量産できる酸化チタン系光触媒を提供するものである。
本発明者らは、ビスマスを特定の割合で含有させた酸化チタンからなる酸化チタン系光触媒のうち、XPS(X線光電子分光法)測定により得られたスペクトルが特定のピークを示すものが優れた可視光光触媒活性を示すことを見出した。
本発明の酸化チタン系光触媒は、チタンに対するビスマスの金属原子比が0.0001以上、1.0未満となる量でビスマスを含有する酸化チタンからなり、XPS測定により得られたBi−4f内殻準位に基づくスペクトル図が、(a)165〜162.5eVおよび159.7〜157.2eV、(b)163〜161eVおよび157.7〜155.7eV、ならびに(c)162.5〜160eVおよび157.2〜154.7eVの各範囲に位置する3組の対ピークのうち少なくとも2組の対ピークを有し、前記(a)、(b)、(c)の各組の対ピークの合計面積をそれぞれa,b,cとして、(b+c)/aのピーク面積比の値が0.15以上であることを特徴とする。
好ましくは、本発明の酸化チタン系光触媒は、
・ビスマスの少なくとも一部がBi2+および/またはBi0(金属Bi)として存在し、
・ビスマスのチタンに対する金属原子比が0.001以上、0.3以下であり、
・0.0005質量%以上、1.0質量%以下の窒素をさらに含み、および/または
・酸化チタンの主たる結晶がアナターゼである。
本発明はさらに、
・基材の表面に上記酸化チタン系光触媒を有する光触媒機能部材;
・基材の表面に、上記酸化チタン系光触媒とバインダー成分とを含有する皮膜を有し、該皮膜中の該光触媒の含有量が5〜95質量%である光触媒機能部材;
・基材が主に金属からなる、上記光触媒機能部材;
・液体媒質中に上記酸化チタン系光触媒が分散された光触媒分散液;
・上記光触媒分散液を用いて調製された光触媒コーティング液;
・液体媒質中に上記酸化チタン系光触媒とバインダーとを含有し、該酸化チタン系光触媒の含有量が不揮発分の合計量に基づいて5〜95質量%である光触媒コーティング液;
・上記光触媒分散液または光触媒コーティング液を基材に塗布する工程を含む、光触媒機能部材の製造方法;ならびに
・上記酸化チタン系光触媒または光触媒機能部材に可視光を含む光照射下で被処理物質(例、有害物質)を接触させ、被処理物質を分解および/または除去する、酸化チタン系光触媒の利用方法、
もまた提供する。
ビスマスをドープした酸化チタンからなる酸化チタン系光触媒の報告例は従来もあったが、酸化チタン中におけるビスマスの存在状態については最適化がなされておらず、十分な可視光触媒活性を発現するに至らなかった。本発明により、酸化チタンにビスマスを含有させた酸化チタン系光触媒のうち、ビスマスの存在状態がXPS測定において特徴的なパターンを示すものが優れた可視光触媒活性を発現することが明らかにされた。
具体的には、本発明の酸化チタン系光触媒は、XPS測定で得られたBi−4f内殻準位に基づくスペクトル図が、
(a)165〜162.5eVおよび159.7〜157.2eV、
(b)163〜161eVおよび157.7〜155.7eV、ならびに
(c)162.5〜160eVおよび157.2〜154.7eV
の各範囲に位置する3組の対ピークのうち少なくとも2組の対ピークを有しており、かつ前記(a)、(b)、(c)の各組の対ピークの合計面積をそれぞれa,b,cとして、(b+c)/aのピーク面積比の値が0.15以上である、という条件を満たす。
前記スペクトル図は、より好ましくは、次のいずれかである:
(1)前記(a)、(b)および(c)の3組の対ピークを有する;
(2)前記(a)、(b)の各組の対ピークの合計面積をそれぞれa,bとして、b/aのピーク面積比の値が0.05以上である;および/または
(3)前記(a)、(c)の各組の対ピークの合計面積をそれぞれa,cとして、c/aのピーク面積比の値が0.1以上である。
Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena, 25 (1982) 181-189によると、酸化チタン系光触媒のBi−4f内殻準位に基づくXPSスペクトル図において、(a)165〜162.5eVおよび159.7〜157.2eVの各範囲に位置する対ピークは、Bi3+(Bi23)のそれぞれBi4f5/2状態およびBi4f7/2状態に帰属され、(c)162.5〜160eVおよび157.2〜154.7eVの各範囲に位置する対ピークは、Bi0(金属Bi)のそれぞれBi4f5/2状態およびBi4f7/2状態に帰属される。また、上記文献に加えて、Chemistry of Materials, 8 (1996), p.1287-1291によると、(b)163〜161eVおよび157.7〜155.7eVの各範囲に位置する対ピークはBi2+(BiO)のそれぞれBi4f5/2状態およびBi4f7/2状態に帰属される。これからわかるように、各組の対ピークにおけるBi4f5/2状態とBi4f7/2状態のピーク間のエネルギー差は5.3(±0.1)eVである。
従って、上記XPSスペクトル図が上記(a)〜(c)の各範囲に位置する3組の対ピークのうち少なくとも2組の対ピークを有するということは、本発明の酸化チタン系光触媒において、酸化チタン中に含まれるビスマスが、通常の3価ビスマス(Bi3+)だけでなく、少なくとも部分的に2価(Bi2+)および/または0価(Bi0)の状態、つまり、3価に比べて低次(低原子価)である還元された状態で存在していることを意味する。この還元ビスマスの含有量が一定以上となると、優れた可視光光触媒性能が発現されるものと推測される。
本発明の酸化チタン系光触媒は、酸化チタンが所定量の窒素をさらに含有すると、可視光応答性がより強化されるので好ましい。酸化チタン中への窒素の含有あるいは添加による可視光応答性の発現および強化は、上記非特許文献1および3ならびに特許文献5に示されている。触媒が窒素を含有することによって、窒素が触媒中のカチオンと新たな電子相互作用を起こし、可視光応答性の増強につながるものと思われる。
しかし、本発明にあっては、ビスマスの含有による可視光活性への相乗的作用効果の上に、さらにN含有量を規定することによる作用効果を加えるのであり、Nを単独で規定する従来技術の酸化チタン系光触媒と比較して、その可視光活性の増強効果は著しく顕著である。
本発明の酸化チタン系光触媒の製造方法は、所定量のビスマスを含有し、かつ前述した特定のXPSスペクトルを有する酸化チタン系光触媒が得られる限り、特に制限されるものではない。
量産が可能な方法として、酸化チタンおよび酸化ビスマスの前駆体どうしの混合物を熱処理する方法がある。例えば、いずれも加水分解性のチタン化合物およびビスマス化合物(例、四塩化チタンおよび三塩化ビスマス)を混合し、次いで加水分解してチタンおよびビスマスの水酸化物からなる前駆体の混合物を得る。この混合物にBiを還元することができる化合物を含有させて熱処理するか、あるいは混合物を還元性雰囲気中で熱処理することにより、本発明に係る特定のXPSスペクトルを示す酸化チタン系光触媒を製造することができる。
本発明の酸化チタン系光触媒は、効率的な量産が可能であり、可視光の照射により高い光触媒作用を示す。従って、本発明の酸化チタン系光触媒は、従来の可視光型酸化チタン系光触媒に比べて、光触媒活性が極めて強く、強い環境浄化作用が期待できる。
次に、本発明をより具体的に説明する。本明細書において「%」は、特にことわりがない限り、「原子%(at%)」である。
可視光活性に優れた本発明の光触媒は、ビスマスを含有する酸化チタンからなり、ビスマスの含有量は、ビスマスのチタンに対する金属原子比(Bi/Ti原子比)が0.0001(=0.01%)以上、1.0(=100%)以下となる量である。この範囲外では、可視光活性は著しく低くなる。Bi/Ti原子比の好ましい範囲は0.001(=0.1%)〜0.3(=30%)である。Bi/Ti原子比がこの好ましい範囲内であると、可視光活性が高く、触媒の製造も行いやすい。
本発明の酸化チタン系光触媒は、XPS測定で得られたスペクトル図が特徴的なパターンを示すことを特徴とする。具体的には、該光触媒のXPS測定によって得られたBi−4f内殻準位に基づくスペクトル図が、(a)165〜162.5eVおよび159.7〜157.2eV、(b)163〜161eVおよび157.7〜155.7eV、並びに(c)162.5〜160eVおよび157.2〜154.7eVの各範囲に位置する3組の対ピークのうちの少なくとも2組の対ピークを有することである。これは、前述したように、ビスマスの少なくとも一部が、還元された状態(Bi2+および/またはBi0)で酸化チタン中に含有されていることを意味する。
上記のXPSスペクトル図は、上記(a)〜(c)の3組すべての対ピークを有することが好ましい。この場合、ビスマスは、Bi3+、Bi2+、およびBi0として存在する。
上記(a)〜(c)3組の対ピークの各組の対ピークの合計面積をそれぞれa,b,cとして、(b+c)/aのピーク面積比の値は0.15以上であることが好ましく、この値はより好ましくは0.2以上である。それにより、優れた可視光光触媒活性を安定して示す光触媒を得ることができる。bとcのいずれか一方は0であってもよい。
b/aのピーク面積比の値は、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上である。このような酸化チタン系光触媒は、ビスマスの少なくとも一部がBi2+となっていることを意味する。それにより、可視光光触媒活性は増進する。
c/aのピーク面積比の値は、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.2以上である。このような酸化チタン系光触媒は、ビスマスの少なくとも一部がBi0になっていることを意味する。それにより、可視光光触媒活性はさらに増進される。
XPSスペクトルによるピーク面積、強度、ピーク位置の算出については、隣接するピークが重なり合ってピーク強度の読み取りが困難な場合は、必要に応じて市販の適当なソフトウェアなどを使ってピーク分離を行ってから、各々のピーク強度を算出する。
XPS測定条件、試料の形態などによってはピークの位置がシフトし、ピークの帰属が困難な場合がある。この場合の目安として、上記のように規定したXPSスペクトル図において、(a)165〜162.5eVおよび159.7〜157.2eVの各範囲に位置する各々Bi4f5/2状態およびBi4f7/2状態のBi3+(Bi23) の位置を基準とし、それより1〜2eVだけ低エネルギー側に位置するピークをBi2+(BiO)と帰属し、さらに2eV以上低エネルギー側に位置するピークをBiO(金属Bi)と帰属すればよい。
本発明の酸化チタン系光触媒が示すXPSスペクトルのBi−4f内殻準位に基づくスペクトル図の上記(a)〜(c)の3組の対ピークのうち、低次ビスマスに帰属される組の対ピーク、即ち、(b)163〜161eVおよび157.7〜155.7eV、ならびに(c)162.5〜160eVおよび157.2〜154.7eVの2組の対ピークは、試料をそのままXPS測定すると、触媒表面が酸化されていて低次ビスマスがBi3+に変化しているため、実際よりピーク強度が低くなるか、或いはピークが全く観測されないことがある。その場合は、試料の表面をアルゴンなどで数nm以上の深さでエッチングまたはスパッターしてから、XPS測定を行うことが好ましい。
本発明の酸化チタン系光触媒において、酸化チタンは部分的に非晶質でもよく、完全に結晶質でもよい。酸化チタンの結晶型は、アナターゼ、ルチル、ブルッカイトのいずれかの単相でもよく、これらの2種以上が混ざっていてもよい。しかし、高い活性を発現させるには、酸化チタンがアナターゼ単相であるのが好ましい。
本発明の酸化チタン系光触媒は、可視光応答性を高めるために、ビスマスに加えてさらに窒素を含有させることができる。光触媒中の窒素の好ましい含有量は0.0005質量%以上、1.0質量%以下の範囲であり、より好ましくは0.001質量%以上、0.1質量%以下である。窒素の含有量が0.0005質量%未満では可視光応答性は強化されず、一方1.0質量%を超えると可視光活性が低下し、光触媒の製造も煩雑になる。
本発明の酸化チタン系光触媒は、光触媒作用を持たない担体に担持させることができる。担体の例としては、例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライトなどを挙げることができる。また、光触媒活性が著しく阻害されない限り、ビスマスに加えて、微量の他の金属、例えば、タングステン、クロム、鉄、白金、ルテニウム、パラジウムなどの他の金属をドーパントなどとして酸化チタン中に含有させることができる。
光触媒の形状は、粒子状、繊維状、薄膜状などが挙げられ、用途に応じて使い分けるのが好ましい。粒子状の場合、粒子は数nm程度の微粉末から数十ミクロン程度の造粒体までに及び、その大きさ、形態は限定されない。薄膜の場合、基材の上に固定することが一般的であるが、その厚みは限定されない。
薄膜や繊維状など任意の形に成形する場合は、光触媒の粒子に加えて、バインダーを添加することが望ましい。バインダーの添加によって、薄膜の厚みや繊維径を大きくしたり、薄膜や繊維の強度、加工性などを上げることが可能となる。
この酸化チタン系光触媒は、前述したBi/Ti原子比とXPSスペクトルにおける特徴を有するビスマス含有酸化チタンが得られる限り、任意の方法で製造することができる。製造方法は、スパッターなどの乾式合成法と、ゾルゲル法、共沈法、含浸法などの湿式合成法のいずれであってもよい。
量産性の点から、湿式合成法が有利である。本発明の酸化チタン系光触媒の湿式合成は、例えば、少なくとも一方が加水分解性であるチタン化合物とビスマス化合物を接触させ(例、水溶液の混合により)、加水分解性の化合物を加水分解させて光触媒の前駆体を調製し、この前駆体を熱処理することにより実施することができる。
前述したように、本発明の酸化チタン系光触媒は窒素を含有することにより可視光応答性を強化できる。窒素の付与方法は特に限定されないが、湿式合成の場合には、湿式での処理中に窒素を導入して、熱処理を受ける前駆体が窒素を含有するようにすることが好ましい。例えば、チタン化合物および/またはビスマス化合物として塩化物などの加水分解性の酸性化合物を使用し、その化合物の加水分解をアンモニア、アンモニウム塩、アミンなどの窒素含有塩基を使用することにより、加水分解で得られた前駆体中に窒素を含有させることができる。その場合、加水分解で得られた沈殿の洗浄(例、蒸留水またはアルコールによる)や濾過の程度によって、前駆体中の窒素含有量を調節することができる。窒素はまた、雰囲気ガス中から導入することもできる。熱処理前の前駆体中の窒素量は、乾燥基準で0.1質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは1質量%以上である。それにより、熱処理後に得られる酸化チタン系光触媒中の窒素量が上述の適正量となる。
前述した湿式法による本発明の酸化チタン系光触媒の製造に使用される原料のうち、チタン化合物としては、四塩化チタン、三塩化チタン、硫酸チタン、水酸化チタン、フッ化チタンなどの無機化合物と、チタンテトラエトキシド、チタンイソプロキシドなどのアルコキシドで代表される有機化合物のいずれも使用できる。
ビスマス化合物の例としては、塩化ビスマス、硝酸ビスマス、硫酸ビスマス、酸化ビスマス、酸化チタンビスマス、オキシ塩化ビスマス、燐酸ビスマス、フッ化ビスマス、炭酸ビスマスなどの無機化合物、ならびにナフテン酸ビスマス、酢酸ビスマス、ビスマスアルコキシドなどの有機化合物が挙げられる。ビスマスは通常は3価化合物であるが、その一部または全部が2価以下の低次ビスマス化合物であってもよい。
原料として特に好ましいのは、塩化物、即ち、四塩化チタンおよび塩化ビスマスである。これらは安価で高純度なものが入手しやすく、かつ優れた光触媒活性を有する酸化チタン系光触媒を与える。
チタン化合物とビスマス化合物の接触は、例えば、それぞれの水溶液を混合することにより行うことができる。その後の加水分解は、水、酸、塩基いずれで行ってもよい。なお、少なくとも一方の原料化合物をます加水分解した後、混合を行うことも可能である。
原料が塩化物のように酸性化合物である場合、好ましい加水分解方法は、塩基で中和しながら加水分解することである。使用する塩基は、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの金属化合物でもよいが、好ましいのは窒素を含有する塩基、例えば、アンモニア、アンモニウム塩、ヒドラジンなどの無機系含窒素塩基、並びにトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ピリジン、ピロリドンなどの有機系の含窒素塩基である。窒素を含有する塩基は、加水分解で得られた前駆体中に一部残留することによって、前駆体に窒素分を付与する。
加水分解で生じた沈殿を濾過などにより分離し、必要に応じて洗浄および乾燥し、得られた前駆体を熱処理すると、本発明の酸化チタン系光触媒が得られる。
前駆体の熱処理は300〜800℃の温度で行うことが、十分な可視光活性を示す光触媒を得るという目的にとって好ましい。より好ましい熱処理温度範囲は400℃以上、700℃以下である。この温度範囲では、酸化ビスマスと酸化チタンの複合化が整然と起こり、結晶性、比表面積とも高次でバランスされた、可視光活性に優れた酸化チタン系光触媒が得られる。熱処理温度の保持時間は、10分から6時間の範囲が適当である。昇温速度は、光触媒活性と生産性の面から5℃/分以上とすることが好ましい。
熱処理雰囲気は、空気、純空気、酸素などの酸化性雰囲気、窒素やアルゴンなどの不活性雰囲気、或いは水素、アンモニアなどの還元性ガスを含む還元性雰囲気のいずれでも良く、これらを組み合わせた雰囲気でも良い。
熱処理を受ける前駆体混合物が、予め低次ビスマスの化合物を含んでいるか、或いはビスマスを還元できる物質を含んでいる場合には、空気などの酸化性雰囲気中で熱処理しても、本発明の酸化チタン系光触媒を得ることができる。この場合でも、熱処理雰囲気が還元性雰囲気であると、可視光光触媒活性がさらに改善される可能性がある。
ビスマスを還元できる化合物とは、アンモニア、アンモニウムイオン、ヒドラジン、アミン類などの窒素含有化合物、ならびにNaBH4などの水素化物が挙げられる。この化合物は、熱処理を受ける混合物中に任意の段階で導入することができる。例えば、これを熱処理前の混合物に添加することにより導入してもよい。還元作用を有する塩基性窒素含有化合物を使用する場合には、この化合物を加水分解工程において中和のために使用することにより混合物中に導入するのが便利である。
熱処理を受ける混合物がビスマスを還元できる窒素含有化合物を含有している場合、熱処理後に得られる本発明の酸化チタン系光触媒は一般に窒素を含有することになる。上述したように、酸化チタン系光触媒が0.0005質量%以上、1.0質量%以下の窒素を含有していると、その可視光応答性が強化される。この窒素は、上記のように加水分解工程(B)で窒素含有化合物を使用するという方法以外に、熱処理を受ける混合物に窒素供給源を添加する(例、窒素化合物を含有する溶液を接触させる、あるいは窒素ガス、アンモニアガスなどを吸収させる)ことによって導入することもできる。
熱処理を受ける混合物がビスマスを還元できる化合物を含有していない場合には、熱処理雰囲気は非酸化性雰囲気(すなわち、不活性雰囲気または還元性雰囲気)とすることが好ましい。特に好ましい熱処理雰囲気は、アンモニア、ヒドラジン、アミンといった還元力の強い窒素化合物、および/または水素を含有する、還元性の雰囲気である。
これまでも還元性窒素化合物の存在下で熱処理することによる酸化チタン系光触媒の製造方法は知られていたが、従来はTiを部分的に3価に還元する、酸化チタン結晶に酸素欠陥を導入する、および/またはTiを部分的に窒化物にする、といったTiとの相互作用を目的とするものであった。本発明では、還元性窒素化合物をBiの部分的還元の目的で利用するものであり、作用と結果が従来のものとは異なる。
熱処理により得られた酸化チタン系光触媒は、Biの一部が、Bi3+から低次ビスマス(Bi2+,Bi0)に還元されている。TiO2がこのような低次ビスマスを含有すると、酸化チタン系光触媒の可視光活性が特に高くなる。
上記方法で製造された本発明の酸化チタン系光触媒は、そのまま粉末の状態で利用してもよい。しかし、取扱いの面からは、これを基材表面に付着させて固定化した光触媒機能部材として利用することが便利である。
固定化の形態は、基材の表面形状や用途などに応じて選択することができ、例えば、薄膜状、粒子状、繊維状などが例示される。基材の種類は限定されないが、炭素鋼、メッキ鋼、クロメート処理鋼、琺瑯、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム等の金属材料、セラミック、ガラス、陶磁器、石英などの無機材料、プラスティック、樹脂、活性炭などの有機材料が例示される。また、これらが複合した材料、例えば、塗装鋼板などであってもよい。
好ましい基材は金属もしくはその表面が光触媒で分解しない材料で被覆されたものである。全体または表面が有機材料である基材は、光触媒の酸化力により劣化ないし分解することがあるので、その場合には、基材表面を、光触媒で分解しない材料を用いて予め被覆しておく。有機材料でも、例えば、シリコーン樹脂は光触媒による劣化を受けにくいので、条件にもよるが、被覆しなくてもよいことがある。
基材の形状も特に限定されず、薄板、厚板、繊維状 (編織物、不織布を含む) 、網状、筒状など、任意の形状でよい。そのまま製品として使用されるような複雑な形状の物体、さらには既設または使用中の物体であってもよい。基材の表面は、多孔質でも、緻密質でもよい。
光触媒機能部材は、本発明の酸化チタン系光触媒の粒子を溶媒中に分散させた分散液またはコーティング液を基材に塗布し、塗膜を乾燥させることにより製造することができる。基材に固定するのは、本発明の酸化チタン系光触媒の前駆体であってもよい。例えば、前述した湿式合成法において原料化合物の接触と加水分解を基材の表面で実施する(例、原料化合物の溶液を基材表面に塗布し、次いで加水分解させる)ことにより、前駆体を基材表面に付着させ、その基材を熱処理することにより、光触媒機能部材を製造することができる。
コーティング液は、実質的に光触媒(またはその前駆体)と分散媒(液体媒質)のみからなるものでもよいが、好ましくはバインダーをさらに含有する。
本発明の酸化チタン系光触媒を単に媒質およびバインダーと十分に混合することによりコーティング液を調製することも可能である。しかし、上述した方法では製造された酸化チタン系光触媒は、一般に平均一次粒子系が数nmから百nmと微細であるため、非常に凝集し易く、凝集体となると、その径は数十μmと大きくなり、媒質中に均質に分散させることが困難となる。
そのため、本発明の好適態様においては、酸化チタン系光触媒の粒子を予め媒質中で十分に分散処理して、光触媒粒子の分散液を調製する。この分散液を利用して、これにバインダーを含有させることによりコーティング液を調製することが好ましい。このコーティング液を使用すると、より薄く、より均質な光触媒皮膜の形成が可能となり、皮膜特性や光触媒活性が向上する。
分散液中の光触媒の平均粒子径(凝集体の粒子径)は、500nm以下であることが好ましい。この粒子径より大きいと、皮膜が粉化しやすくなり、保存安定性が低下する。光触媒の平均粒子径は、より好ましくは300nm以下、さらに一層好ましくは200nmである。
光触媒粒子を分散させる液体媒質としては、蒸留水、イオン交換水、超純水などの水;メタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール類;メチルエチルケトンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、などが挙げられるが、他の有機溶媒も使用可能である。これらは任意に混合して使用してもよいが、その場合には互いに相溶性の溶媒の組合わせを使用する。
分散処理は、光触媒を固形分濃度が数質量%〜50質量%の範囲となるように媒質と混合して行うことが好ましい。固形分濃度がこの範囲外では、分散性が低下することがある。必要に応じて、分散剤や解膠剤を添加してもよい。分散剤としてはカルポニル系、スルホン系などが、解膠剤としては硝酸、塩酸、硫酸などが例示される。また、pH調整のため、塩基や酸を添加してもよい。
分散処理は、コーティング液の調製に慣用されているペイントシェーカーを用いて行うこともできるが、例えば、メディアミル、回転刃を用いた剪断、薄膜旋回、超音波といった、より強力な分散手段により実施することが好ましい。2種以上の分散手段を組合わせて利用してもよい。
得られた分散液が凝集した粗大粒子を含んでいる場合、それらを濾過または遠心分離によって除去することが好ましい。粗大粒子は、皮膜中で剥離や粉化の起点となり易いからである。分散処理後の分散液に溶媒を加えて、固形分濃度を調整することもできる。
この分散液をそのままコーティング液として使用し、基材に塗布することもできる。光触媒が平均粒子径500nm以下の微粒子になると、バインダーがなくても皮膜形成が可能となり、実質的に光触媒粒子のみからなる皮膜を形成することができる。しかし、そのままでは皮膜強度と密着性が低いので、その上にバインダー溶液を塗布して、光触媒の粒子間にバインダーを含浸させてもよい。
好ましいコーティング液は、光触媒と媒質に加え、さらにバインダーを含有する。媒質は、上記の分散液に対して述べたものと同様でよいが、バインダーが溶解または乳化するように選択する。上記の酸化チタン系光触媒を含有する分散液にバインダーを混合することによってコーティング液を調製すると、光触媒粒子の分散性に優れ、保存安定性が良好で、光触媒活性の高い皮膜を形成できるコ−ティング液を得ることができる。
バインダーの量は、生成する皮膜中の酸化チタン系光触媒の含有量が5〜95質量%となるように調整する。光触媒の含有量が5質量%未満の皮膜は、可視光照射による光触媒活性をほとんど示さない。この含有量が95質量%を超えると、バインダー成分が少なすぎて成膜性が悪化し、皮膜が剥離し易くなる。皮膜中の光触媒の含有量は好ましくは30〜90質量%であり、光触媒活性を十分に得るには50質量%以上であることがより好ましい。
バインダー成分としては、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、ジルコニアなどの金属酸化物ゾル(皮膜中ではゲルになる)、有機シラン化合物、ならびにシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などの有機樹脂が利用できる。光触媒の酸化力によりバインダー成分の分解が起こるときは、金属酸化物ゾルやシリコーン樹脂、アクリルシリコーン、アクリルウレタンなとの難分解性のものを用いることが望ましい。また、光触媒機能部材に強い加工性や高い強度が要求される場合には、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などの有機樹脂を前記難分解性のバインダー成分に適量添加することによって、要求される特性を確保することができる。
好ましいバインダー成分は、シリカ(例、シリカゾル)、有機シラン化合物の加水分解/縮合物、シリコーン樹脂などといったケイ素化合物である。シリカは、ケイ酸エステル(例、エチルシリケート)の加水分解と縮合により生成させたシリカゾル(コロイダルシリカ)でもよい。有機シラン化合物としては、皮膜形成性のある加水分解性の有機シラン化合物、例えば、アルコキシシラン類やシランカップリング剤を使用することができる。バインダー成分は媒質中に均一に溶解させた形で使用してもよく、あるいは媒質中で乳化させたエマルジョンの形態でも良い。
コーティング液は、上記以外の他の成分を含有していてもよい。そのような他の成分としては、可視光応答型ではない酸化チタン系光触媒(例、従来の酸化チタン系光触媒)、光触媒が担持粒子である場合の担体が挙げられる。また、着色材(好ましくは無機顔料)や体質顔料などの少量成分も皮膜中に含有させうる。
コーティング液の塗布は、コーティング液の性状や基材の形状に合わせて、周知の各種方法から選択することができる。塗布後、必要に応じて加熱しながら塗膜を乾燥(場合によりさらに硬化)させる。乾燥(硬化)温度は、コーティング液の組成(溶媒やバインダーの種類)、基材の耐熱温度などに合わせて決めればよい。コーティング液が酸化チタン光触媒の前駆体を含有している場合には、前駆体から酸化チタンに変化するように加熱を行う。
基材上に形成された光触媒を含有する皮膜の厚みは0.1μm以上とすることが好ましい。皮膜が0.1μmより薄いと、光触媒の量が少なすぎて、可視光照射による光触媒活性が非常に低くなる。皮膜の厚みは、必要とする触媒性能やコストによって適宜選択しうるが、触媒性能の安定性や触媒活性の点から、より好ましくは1μm以上であり、5μm以上とするのが一層好ましい。厚みの上限は特に規定されないが、コストや効果の飽和を考慮すると、50μm以下、好ましくは20μm以下である。
本発明の酸化チタン系光触媒やそれを表面に設けた光触媒機能部材は、波長400nm以上の可視光線が照射された条件下で被処理物質をそれに接触させることにより、光触媒作用を発現して、様々な有害物質、付着物質などを分解、除去、または無害化することができる。光触媒は、分解対象となる物質をそれに接触可能で、かつ可視光線を照射できる環境下で使用すればよい。光源は、少なくとも可視光線の一部の波長域を含むものであればよく、たとえば、太陽光線、蛍光灯、ハロゲンランプ、ブラックライト、キセノンランプ、水銀ランプなどが利用できる。
本発明の酸化チタン系光触媒が処理できる有害物質または付着物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエンなどのVOCガス類;NOx、SOx、フロンなどの大気汚染ガス;アンモニア、硫化水素、メルカプタン類などの臭気ガス;アルコール、BTX、フェノール類等の有機化合物;トリハロメタン、トリクロロエチレン、フロン等の有機ハロゲン化物;除草剤、殺菌剤、殺虫剤等の種々の農薬;蛋白質やアミノ酸等の種々の生物学的酸素要求物質;界面活性剤;シアン化合物、硫黄化合物等の無機化合物;種々の重金属イオン;大腸菌、ブドウ球菌、緑濃菌などの菌類、カビ類、藻類等の微生物;油、タバコのヤニ、指紋、雨筋、泥などが例示される。
以下の実施例により本発明を例示する。但し、実施例は本発明を制限するものではない。実施例中のBi/Tiは金属原子比を意味する。
(実施例1)
[酸化チタン系光触媒の合成]
試料No.1:
四塩化チタン(TiCl4)溶液(Ti含有量=9.3質量%)216gに塩化ビスマス(13.4g)の水溶液をゆっくり滴下し、十分攪拌した。この混合液を氷冷攪拌しながら、ビスマスを還元できる加水分解用の塩基としてアンモニア水溶液(7質量%)を滴下し、前記塩化物を加水分解させた。生成した沈殿物を濾過し、濾過ケーキを蒸留水200mlで洗浄し、洗液の導電率が50(±5)mSになることを確認して洗浄を終えた。洗浄した濾過ケーキを80℃で6時間真空乾燥して、窒素含有量が約4質量%の前駆体を得た。
この前駆体を大気雰囲気下500℃で2時間焼成して、本発明の酸化チタン系光触媒(Bi/Ti=0.101)を得た。この光触媒に含まれる酸化チタンの結晶型は実質的にアナターゼ100%であった。また、光触媒中の窒素含有量は0.002質量%であった。
試料No.2:
塩化ビスマスを滴下せず四塩化チタン溶液だけを加水分解した点を除いて、試料No.1と同様の方法で、ビスマスを含有しない酸化チタンを作製した。
本発明に係る試料No.1の光触媒と比較例である試料No.2の光触媒、さらにチタン酸ビスマス(Bi2Ti27)、酸化チタンビスマス(Bi4Ti312)、および酸化ビスマス(Bi23)の合計5種類について、下記に示す方法でXPSおよび光触媒活性を調べた。
[XPSの測定]
使用装置:走査型X線光電子分光分析器
アルバック・ファイ社製PHI Quantum 2000 (使用X線源:mono-AlKα線44.8W、17kV)
取出し角:45°
X線ビーム径:約200μmφ
中和銃:1.0V,20mA(Ar+低速イオン銃を併用)
エネルギー分解能:純AgのAg3d 5/2ピーク(368.1eV)で半値幅約0.75eVの条件にて使用
真空度:約2.0×10-8torr。
各試料について得られたBi−4f内殻準位のXPSスペクトルを図1に示す。また、これらのXPSスペクトルについて、市販のソフトによりピーク分離を行ってから、(a)165〜162.5eVおよび159.7〜157.2eV、(b)163〜161eVおよび157.7〜155.7eV、ならびに(c)162.5〜160eVおよび157.2〜154.7eVの各範囲に位置する3組の対ピークの各ピークの位置とその面積、さらに各対ピークの合計面積をa,b,cとしたときのc/a、b/a、および(b+c)/aのピーク面積比の値を求めた結果を表1に示す。
[触媒活性の測定(アセトアルデヒドの分解試験)]
試料(0.3g)を40mm角の皿に置き、それを石英製反応セルに入れ、閉鎖循環ラインに接続し(合計内体積約3.7L)、酸素を20vol%含む窒素ガスで希釈したアセトアルデヒド(約240ppm)を系内に導入した。ガスを循環させながら250W高圧水銀灯から、紫外線カットフィルター(東芝製L42)を通して可視光の照射を行った。反応の追跡は、アセトアルデヒドが分解して生成する二酸化炭素の濃度を循環ラインに接続した自動ガスクロマトグラフで経時的に測定することにより行った。光触媒性能は二酸化炭素の生成速度から評価した。結果を表1に併せて示す。
Figure 2007117999
図1に示すように、本発明に係るNo.1の酸化チタン系光触媒では、Bi−4f内殻準位のスペクトル図が上記(a)〜(c)の3組の対ピークの全てを有しており、(b+c)/aのピーク面積比が0.15以上であり、かつb/aとc/aの各ピーク面積比の値も本発明の好ましい範囲内であった。このことから、実施例で作製した本発明の酸化チタン系光触媒は、Bi2+とBi0の2種類の低次ビスマスを含有していることが示唆される。また、この光触媒は優れた可視光触媒活性を示した。
一方、比較例であるNo.2の酸化チタンは、可視光光触媒活性が低かった。
チタン酸ビスマス(Bi2Ti27)、酸化チタンビスマス(Bi4Ti312)および酸化ビスマス(Bi23)は、いずれも可視光光触媒活性を実質的に示さなかった。また、これらはいずれもb/a、c/a、(b+c)/aの値が本発明で規定する範囲に達していなかった。これは、これらのビスマス化合物が低次ビスマスを実質的に含有していないことを意味する。
(実施例2)
試料No.3:
実施例1の試料No.1と同様にしてBiを含有する酸化チタン系光触媒を合成したが、四塩化チタン溶液と塩化ビスマス水溶液との混合液に添加する加水分解用の塩基として、アンモニア水溶液の代わりに、ビスマスを還元する力のないNaOHの1N−水溶液を使用した。その後の濾過、洗浄、乾燥、および熱処理(焼成)は、試料No.1と同様に実施した。
試料No.4:
実施例1の試料No.1と同様にBiを含有する酸化チタン系光触媒を合成したが、試料No.3と同様に、加水分解用の塩基として、アンモニア水溶液の代わりに、ビスマスを還元する力のないNaOHの1N−水溶液を使用した。その後の濾過、洗浄、および乾燥は試料No.1と同様に実施したが、焼成は還元性雰囲気(水素気流中)、500℃で2時間実施した。
試料No.3および4のBi−4f内殻準位のXPSスペクトル図の上記(a)〜(c)の各組の対ピークの合計面積をa,b,cとしたときのb/aとc/a、および(b+c)/aのピーク面積比の値を、試料No.1の結果と一緒に表2にまとめて示す。
Figure 2007117999
表2に示すように、四塩化チタンと塩化ビスマスの加水分解に使用した塩基が、Biを還元する力のないNaOHであり、かつ焼成を大気雰囲気で実施した試料No.3の酸化チタン系光触媒は、ピーク面積比(b+c)/aの値が0.15より小さく、本発明で規定する要件を満たしていなかった。また、b/aの値も0.05より小さくなった。この比較例の酸化チタン系は、Biを含有するにもかかわらず、可視光光触媒活性は試料No.1に比べて著しく小さくなった。
一方、加水分解に用いた塩基がNaOHであっても、最後の焼成を還元性雰囲気である水素気流中で実施した試料No.4では、ピーク面積比(b+c)/aの値が0.15以上となり、b/aとc/aのピーク面積比も十分に大きくなった。また、可視光光触媒活性も、試料No.1に近い高い値を示した。
以上より、熱処理時にBiの一部が低次Bi(Bi2+,Bi0)に還元されることが、Biを含有する酸化チタン系光触媒の可視光光触媒活性に決定的な影響を及ぼすことがわかる。
(比較例1)
酸化チタンに含有させる金属元素として、ビスマスの代りに別の元素を用いて酸化チタン系光触媒を製造した。製造方法は実施例1の試料No.1と同様であったが、塩化ビスマスの代りに、6塩化タングステン、四塩化珪素または四塩化ジルコニウムを用いた。各金属化合物の量は、Tiに対する金属原子比が0.101となる量とした。得られた酸化チタン系光触媒の可視光光触媒活性の結果を表3にまとめて示す。
Figure 2007117999
表3からわかるように、Tiに対する原子比が0.101という少量の金属を酸化チタンに含有させて複合酸化物とした酸化チタン系光触媒において、添加金属がBiである試料No.1では、添加金属を含有しない試料No.2より光触媒活性が著しく増大した。一方、添加金属がBi以外であると、添加金属を含有しない試料No.2より可視光光触媒活性が低くなり、金属の添加は逆効果であった。これから、Biによる可視光光触媒活性の増進効果が特異的なものであることがわかる。
(実施例3)
メディアミルに、実施例1で作製した酸化チタン系光触媒20質量部と蒸留水80質量部とを装入し、解膠剤として適量の硝酸を加えてからジルコニアビーズと一緒に分散処理して、固形分20質量%の光触媒分散液を作製した。
この分散液50質量部にバインダーのコロイダルシリカ(日産化学社製スノーテックスOL、固形分20質量%)を20質量部および硝酸を用いて部分的に加水分解させたメチルトリエトキシシラン含有水溶液10質量部(SiO2換算で固形分20質量%)を加えたものを、ペイントシェーカーを用いて60分間よく混合して、コーティング液を作製した。このコーティング液中の光触媒の含有量は、全固形分に基づいて62.5質量%であった。
このコーティング液をスリガラス基板上に広げ、基板下から加熱してゆっくりと乾燥させることによって、表面に膜厚約12μmの光触媒皮膜を有する光触媒機能部材を作製した。この光触媒機能部材について、実施例1と同様の方法でアセトアルデヒドの分解を行った。その結果CO2生成速度は1.2μmol/時であった。
実施例におけるXPSの測定で得られたBi−4f内殻準位のスペクトル図を示す。

Claims (17)

  1. チタンに対するビスマスの金属原子比が0.0001以上、1.0以下となる量でビスマスを含有する酸化チタンからなり、XPS測定で得られたBi−4f内殻準位に基づくスペクトル図が、(a)165〜162.5eVおよび159.7〜157.2eV、(b)163〜161eVおよび157.7〜155.7eV、並びに(c)162.5〜160eVおよび157.2〜154.7eVの各範囲に位置する3組の対ピークのうちの少なくとも2組の対ピークを有し、前記(a)、(b)、(c)の各組の対ピークの合計面積をそれぞれa,b,cとして、(b+c)/aのピーク面積比の値が0.15以上であることを特徴とする、酸化チタン系光触媒。
  2. 前記スペクトル図が前記(a)、(b)および(c)の3組の対ピークを有する請求項1に記載の酸化チタン系光触媒。
  3. 前記(a)、(b)の各組の対ピークの合計面積をそれぞれa,bとして、b/aのピーク面積比の値が0.05以上である、請求項1または2に記載の酸化チタン系光触媒。
  4. 前記(b)、(c)の各組の対ピークの合計面積をそれぞれb,cとして、b/cのピーク面積比の値が0.1以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の酸化チタン系光触媒。
  5. ビスマスの少なくとも一部がBi2+および/またはBi0として存在する、請求項1〜4のいずれかに記載の酸化チタン系光触媒。
  6. ビスマスのチタンに対する金属原子比が0.001以上、0.3以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の酸化チタン系光触媒。
  7. 0.0005質量%以上、1.0質量%以下の窒素をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の酸化チタン系光触媒。
  8. 前記酸化チタンの主たる結晶がアナターゼである請求項1〜7のいずれかに記載の酸化チタン系光触媒。
  9. 基材の表面に、請求項1〜8のいずれかに記載の酸化チタン系光触媒を有する光触媒機能部材。
  10. 基材の表面に、請求項1〜8のいずれかに記載の酸化チタン系光触媒とバインダー成分とを含有する皮膜を有し、該皮膜中の該光触媒の含有量が5〜95質量%である光触媒機能部材。
  11. 基材が主に金属からなる、請求項9または10に記載の光触媒機能部材。
  12. 液体媒質中に請求項1〜8のいずれかに記載の酸化チタン系光触媒が分散された光触媒分散液。
  13. 請求項12に記載の光触媒分散液を用いて調製された光触媒コーティング液。
  14. 液体媒質中に請求項1〜8のいずれかに記載の酸化チタン系光触媒とバインダーとを含有し、該酸化チタン系光触媒の含有量が不揮発分の合計量に基づいて5〜95質量%である光触媒コーティング液。
  15. 請求項12記載の光触媒分散液または請求項13もしくは14に記載の光触媒コーティング液を基材に塗布する工程を含む、光触媒機能部材の製造方法。
  16. 請求項1〜8のいずれかに記載の酸化チタン系光触媒または請求項9もしくは10に記載の光触媒機能部材に可視光を含む光照射下で被処理物質を接触させ、被処理物質を分解および/または除去する、酸化チタン系光触媒の利用方法。
  17. 被処理物質が有害物質である請求項16に記載の方法。
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