JP3887973B2 - Soiウエーハの製造方法及びsoiウエーハ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はSOIウエーハに関し、特にSOI層の重金属不純物が極めて少ないSOIウエーハの製造方法及びSOIウエーハに関する。
【0002】
【従来の技術】
素子が構成される単結晶シリコン層(SOI層)を埋め込み酸化膜上に形成するSOI(Silicon on insulator)ウエーハは、素子間の完全分離ができるため、絶縁耐圧、耐ラッチアップ等の特性向上が容易であり、素子と基板間の寄生容量を低減できるため、デバイス作動の高速化が可能であるといった優れた特性を有する。そのため、今日の高集積化半導体デバイスに対するさらなる高集積化、高速化の要求により、SOIウエーハの重要性は今後も増大するものと予想される。
【0003】
このような高集積化半導体デバイスに使用されるSOIウエーハの活性SOI層に重金属不純物が存在すると、半導体デバイスの特性不良を起こしてしまう。特に最先端のデバイスに必要とされるクリーン度は重金属不純物濃度が1×109 atoms/cm2 以下と考えられており、SOI層に存在する重金属不純物は極力減少させなければならない。このような重金属不純物を低減させる技術の一つとしてゲッタリング技術の重要性がますます高くなってきている。
【0004】
ゲッタリングとは、素子形成領域以外に結晶欠陥等のゲッタリングサイトを形成し、これに重金属不純物を捕獲、固着する技術である。このゲッタリング技術をSOIウエーハに適用するために、過去において種々の提案がなされた。
【0005】
まず、SOI層下部の埋め込み酸化膜上にゲッタリングサイトを形成する方法が考えられた。すなわち、SOI層と埋め込み酸化膜の間に、ゲッタリングサイトとなる多結晶シリコン(ポリシリコン)層を形成し、SOI層の重金属不純物をゲッタリングしようとする方法である(特許第2535596号、特開平6−275525号公報参照)。
【0006】
しかし、この方法では、ゲッタリングサイトがデバイス活性層であるSOI層の近接領域にあるため、デバイスプロセス等の熱処理により、一旦ゲッタリングされた不純物がSOI層に再放出される危険性がある。特に、薄いSOI層を有するウエーハの場合、その危険性が高く問題であった。
【0007】
そこで、SOI層と埋め込み酸化膜の間ではなく、埋め込み酸化膜下部の支持基板側にゲッタリングサイトを形成する方法が考えられた。すなわち、埋め込み酸化膜と支持基板の間、又は支持基板の裏面にゲッタリング層を形成するか、あるいは、支持基板にIG(Intrinsic gettering )熱処理を加えてゲッタリングサイトとなる酸素析出核や酸素析出物を析出させる方法である(特開平8−116038号公報、特開平9−326396号公報参照)。
【0008】
しかし、SOI層中に取り込まれた重金属不純物がゲッタリングされるためには埋め込み酸化膜を通り抜ける必要があるが、最近の研究によるとNi等の重金属は酸化膜中をほとんど拡散せず、通り抜けることができないことが判った。しかも、近年のデバイスプロセスの低温化に伴い、支持基板側にゲッタリングサイトを設けるゲッタリングはさらに困難になってきている。
【0009】
そこで、支持基板側にゲッタリングサイトを形成してSOI層中の不純物をゲッタリングするために、埋め込み酸化膜中に貫通孔を設け、SOI層と支持基板との連結領域を形成することが考えられた(特開平5−129309号公報、特開平6−216136号公報参照)。このような方法であれば、支持基板側のゲッタリングサイトからSOI層の重金属不純物を有効にゲッタリングすることが可能である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従来、このようなSOI層と支持基板との連結領域が形成されたSOIウエーハは、例えば以下のような方法で製造されていた。
すなわち図3に示すように、まず、支持基板となるベースウエーハ1とSOI層となるボンドウエーハ2を用意する(図3(1))。支持基板となるベースウエーハ1の表面にゲッタリングサイトとなるポリシリコン層4を堆積する(図3(2))。次にベースウエーハ1の表面にSi3 N4 膜11を形成し(図3(3))、それを選択酸化マスクとするためにフォトリソグラフィー技術により選択的にエッチング除去する(図3(4))。次にSi3 N4 膜11をマスクとして、ベースウエーハ1の表面に埋め込み酸化膜となる酸化膜3を形成する(図3(5))。そしてマスクのSi3 N4 膜11を除去する(図3(6))。次に機械的研磨によって、ベースウエーハ1を平坦化する(図3(7))。そしてSOI層となるボンドウエーハ2を結合する(図3(8))。最後に、ボンドウエーハ2を研削・研磨加工、あるいは水素イオン注入剥離法等により薄膜化し、所望の膜厚のSOI層12を有するSOIウエーハ6を完成させる(図3(9))。
【0011】
しかし、このような方法で製造されたSOIウエーハには問題があった。すなわち上記の方法では、酸化膜(SiO2 )とシリコンの両方が露出している面を研磨により平坦化しているので、その境界部には両者の研磨速度の差に起因した段差が発生し易く、この段差が発生した状態でボンドウエーハと結合するとボイドの発生や結合強度が低下する原因となった。このため、この製造方法でのSOIウエーハの生産性は低く、より適当な製造方法が望まれていた。
【0012】
本発明は、上記問題に対してなされたもので、高いゲッタリング効果によりSOI層の重金属不純物が少なく、かつ生産性も高いSOIウエーハの製造方法及びSOIウエーハを提供することを主たる目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に記載した発明は、ゲッタリングサイトを形成した基板となるベースウエーハと、SOI層となるボンドウエーハとを、埋め込み酸化膜となる酸化膜を介して結合し、該ボンドウエーハを簿膜化してSOI層とするSOIウエーハの製造方法において、
前記SOI層の表面に埋め込み酸化膜に達する開口部を形成し、該開口部に露出した埋め込み酸化膜をエッチングしてSOI層のオーバーハング部を形成した後に熱処理を施すことにより、埋め込み酸化膜を貫通するSOI層と基板との連結領域を形成することを特徴とするSOIウエーハの製造方法である。
【0014】
このように、ゲッタリングサイトをベースウエーハに形成するSOIウエーハの製造方法において、SOI層の表面に埋め込み酸化膜に達する開口部を形成し、該開口部に露出した埋め込み酸化膜をエッチングしてSOI層のオーバーハング部を形成した後に熱処理を施すことにより、埋め込み酸化膜を貫通するSOI層と基板との連結領域を形成するようにすれば、この連結領域からSOI層の重金属不純物を有効にゲッタリングすることが可能であり、後のデバイスプロセス等の熱処理により、一旦ゲッタリングされた不純物が再放出されることもない。さらに、この方法によれば、ベースウエーハとボンドウエーハとの間にボイドが発生したり、両ウエーハの結合強度が低下することもないため、生産性が低下することもない。
【0015】
この場合、請求項2に記載したように、前記熱処理は、急速加熱・急速冷却装置を用いて、水素を含む還元性雰囲気中で行うことが好ましい。
このように、前記熱処理を急速加熱・急速冷却装置を用いて、水素を含む還元性雰囲気中で行えば、シリコンのリフローが生じやすくなるので、オーバーハング部がベースウエーハ側に付着し易くなる。さらに熱処理時間が短くて済むのでSOI層中の結晶欠陥から雰囲気中の水素が侵入し埋め込み酸化膜をエッチングするという問題も生じない。
尚、ここで、急速加熱・急速冷却とは、ランプ加熱器等で直ちに加熱処理する方法や、熱処理炉内にウエーハを直ちに投入し、直ちに取り出す方法等のように、熱処理炉への出し入れや昇降温を極めて短時間に行う方法のことである。
【0016】
また、本発明の請求項3に記載した発明は、ゲッタリングサイトを形成した基板となるベースウエーハと、SOI層となるボンドウエーハとを、埋め込み酸化膜となる酸化膜を介して結合し、該ボンドウエーハを薄膜化してSOI層とするSOIウエーハの製造方法において、
前記SOI層の表面に開口部のあるパターンを形成し、この開口部よりシリコンをイオン注入し、埋め込み酸化膜中にこれを貫通するシリコンリッチ領域を部分的に形成して、SOI層と基板との連結領域を形成することを特徴とするSOIウエーハの製造方法である。
【0017】
このように、ゲッタリングサイトをベースウエーハに形成するSOIウエーハの製造方法において、SOI層の表面に開口部のあるパターンを形成し、この開口部よりシリコンをイオン注入し、埋め込み酸化膜中にこれを貫通するシリコンリッチ領域を部分的に形成して、SOI層と基板との連結領域を形成するようにすれば、この連結領域からSOI層の重金属不純物を有効にゲッタリングすることが可能であり、後のデバイスプロセス等の熱処理により、一旦ゲッタリングされた不純物が再放出されることもない。さらに、この方法によれば、ベースウエーハとボンドウエーハとの間にボイドが発生したり、両ウエーハの結合強度が低下することもないため、生産性が低下することもない。
【0018】
この場合、請求項4に記載したように、前記ゲッタリングサイトはベースウエーハをIG熱処理して酸素析出核あるいは酸素析出物を析出することにより形成することができる。
このようにゲッタリングサイトをベースウエーハをIG(Intrinsic gettering )熱処理して酸素析出核あるいは酸素析出物を析出することにより形成すれば、ゲッタリングプロセス自体が新たな不純物を導入する恐れはなく、IG熱処理をクリーンルームで行えるといった利点を有する。
【0019】
また、この場合請求項5に記載したように、前記ゲッタリングサイトはベースウエーハの少なくとも一方の面にポリシリコン層を堆積することによって形成することができる。
このようにゲッタリングサイトをベースウエーハの少なくとも一方の面にポリシリコン層を堆積することによって形成すれば、後のデバイスプロセス等の熱処理を複数回行ったとしてもゲッタリング効果が持続し、さらにポリシリコン層は酸素析出を促進するため、IG効果も高めることができる。
【0020】
さらに、この場合請求項6に記載したように、前記ゲッタリングサイトはベースウエーハの少なくとも一方の面にダメージ層を設けることによって形成することができる。
このようにゲッタリングサイトをベースウエーハの少なくとも一方の面にダメージ層を設けることによって形成すれば、ゲッタリングサイト形成工程は簡易なものとなり、低コストでSOIウエーハ製造を行うことができる。
【0021】
そして、請求項7に記載したように、前記埋め込み酸化膜を貫通するSOI層と基板との連結領域は、スクライブラインと一致するように形成することが好ましい。
このように上記連結領域をデバイス作製時のスクライブラインに一致するように形成しておけば、デバイス作製後は各チップごとに分離して完全なSOI構造を得ることができる。
【0022】
さらに、本発明の製造方法により製造されたSOIウエーハ(請求項8)は、例えば、本発明の請求項9に記載したようにゲッタリングサイトを形成した基板とSOI層と両者の間の埋め込み酸化膜から成り、該埋め込み酸化膜を貫通するSOI層と基板との連結領域を有するSOIウエーハであって、
該連結領域は、SOI層の表面に埋め込み酸化膜に達する開口部を形成し、該開口部に露出した埋め込み酸化膜をエッチングしてSOI層のオーバーハング部を形成した後に熱処理を加えることにより形成されたものであることを特徴とするSOIウエーハである。
さらに、この場合、請求項10に記載したように、前記熱処理は、急速加熱・急速冷却装置を用いて、水素を含む還元性雰囲気中で行われたものとすることができる。
【0023】
あるいは、本発明の請求項11に記載したように、ゲッタリングサイトを形成した基板とSOI層と両者の間の埋め込み酸化膜から成り、該埋め込み酸化膜を貫通するSOI層と基板との連結領域を有するSOIウエーハであって、
該連結領域は、SOI層の表面よりシリコンをイオン注入し、埋め込み酸化膜を貫通するシリコンリッチ領域を部分的に設けることにより形成されたものであることを特徴とするSOIウエーハである。
【0024】
このようなSOIウエーハであれば、高いゲッタリング能力により、デバイスが形成されるSOI層中の重金属不純物が非常に少なく、かつSOI層と支持基板との結合強度も高いSOIウエーハとなる。
【0025】
この場合、前記ゲッタリングサイトは、請求項12に記載したようにベースウエーハをIG熱処理して酸素析出核あるいは酸素析出物を析出することにより形成されたものとすることができ、請求項13に記載したようにベースウエーハの少なくとも一方の面にポリシリコン層を堆積することによって形成されたものとすることができ、また請求項14に記載したようにベースウエーハの少なくとも一方の面にダメージ層を設けることによって形成されたものとすることができる。
【0026】
さらに、請求項15および請求項16に記載したように、連結領域はスクライブラインと一致して形成されているものとすることができる。
このようなSOIウエーハであれば、デバイス作製後に各チップに分離して、完全なSOI構造を得ることができる。
【0027】
以下、本発明についてさらに詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明は、高いゲッタリング能力を得るために、支持基板となるベースウエーハ側にゲッタリングサイトを形成し、埋め込み酸化膜を貫通するSOI層と基板との連結領域を形成したSOIウエーハを製造するにあたって、ベースウエーハとボンドウエーハとを結合した後に、SOI層と基板との連結領域を形成する方法により、高いゲッタリング能力と高い生産性とを合せ持つSOI基板を得ることができることを見出し、具体的な諸条件を精査して完成されたものである。
【0028】
すなわち、従来の連結領域を有するSOIウエーハの製造方法の欠点は、基板となるベースウエーハとSOI層となるボンドウエーハとを結合する前に、埋め込み酸化膜に連結領域となる部分を形成することにあった。このような方法では、埋め込み酸化膜のSiO2 と連結領域のSiとは研磨速度等が違うため、例えば研磨を行っても完全に平坦な面を得ることは難しかった。そのため、この面を結合面としてベースウエーハとボンドウエーハとを結合させると、ボイドが発生したり、結合強度が低下し、ウエーハの生産性の低下をもたらしていた。
【0029】
そこで、本発明者はベースウエーハとボンドウエーハとを結合した後に、SOI層と基板との連結領域を形成することを発想した。このようにすれば、ベースウエーハとボンドウエーハとの結合自体にはなんら影響を及ぶことがないため、ウエーハの結合不具合からウエーハの生産性や品質の低下が生じることもない。そこで本発明者は、ベースウエーハとボンドウエーハとの結合後に、SOI層と基板との連結領域を形成する具体的な方法を鋭意検討を重ねて本発明を開発した。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
図1は本発明の製造方法の一例を示した流れ図であり、SOI層の表面に埋め込み酸化膜に達する開口部を形成し、該開口部に露出した埋め込み酸化膜をエッチングしてSOI層のオーバーハング部を形成した後に熱処理を施すことにより、埋め込み酸化膜を貫通するSOI層と基板との連結領域を形成する方法について示したものである。
【0031】
まず、ベースウエーハ1とボンドウエーハ2を用意する(図1(1))。ボンドウエーハ2の表面には後に埋め込み酸化膜となる熱酸化膜3を形成し(図1(2))、次に該酸化膜の上からボンドウエーハに水素イオンを注入し、微小気泡層(封入層)5を形成する(図1(3))。一方、ベースウエーハ1の表面にはゲッタリングサイトとなるポリシリコン層4を堆積する(図1(4))。そして、ボンドウエーハ2のイオン注入した面を酸化膜3を介してポリシリコン層4を形成したベースウエーハ1と室温で密着させる(図1(5))。次に500℃以上の熱処理によりボンドウエーハ2を封入層5により剥離することによって薄膜化し(図1(6))、次いで結合熱処理を施して強固に結合することによって支持基板側にゲッタリングサイトを有するSOIウエーハ6が作製される(図1(7))。
【0032】
次に、埋め込み酸化膜を貫通するSOI層と基板との連結領域を形成する。
まずSOI層表面に熱酸化膜13を形成し(図1(8))、フォトレジスト7を塗布し(図1(9))、露光・現像して部分的に開口部8のあるパターンを形成する(図1(10))。そして、HF水溶液により開口部8の酸化膜13を除去した後(図1(11))、硫酸と過酸化水素水溶液でフォトレジスト7を除去する(図1(12))。さらに、KOH水溶液により、開口部8のSOI層12を除去する(図1(13))。そして、HF水溶液により、SOI層表面の酸化膜13を除去するとともに開口部8に露出した埋め込み酸化膜3をオーバーエッチングして、SOI層のオーバーハング部9を形成する(図1(14))。最後に例えば高温水素アニールを施し、オーバーハング部9をベースウエーハ1側に付着させ、SOI層と基板との連結領域10を形成する(図1(15))。
【0033】
また、上記実施形態では、ボンドウエーハの薄膜化にイオン注入分離法(いわゆるスマートカットと呼ばれる技術)を用いたが、他の方法、例えば研削・研磨、気相エッチング、通常のエッチング等一般に用いられている方法でボンドウエーハの薄膜化を行ってもかまわない。
【0034】
さらに、オーバーハング部をベースウエーハ側に付着させる熱処理は、急速加熱・急速冷却装置を用いて、水素を含む還元性雰囲気中で行うこともできる。このようにすると、シリコンのリフローが生じやすくなり、オーバーハング部がベースウエーハ側に付着し易くなる。また、急速加熱・急速冷却装置を用いた場合は熱処理時間が極めて短いため、SOI層中の結晶欠陥から雰囲気中の水素が侵入し、埋め込み酸化膜をエッチングするようなことは生じない。
尚、このような、SOIウエーハを還元性雰囲気下で急速加熱・急速冷却することができる装置としては、熱放射によるランプ加熱器のような装置を挙げることができる。また、市販されているものとして、例えばAST社製、SHS−2800のような装置を挙げることができ、これらは特別複雑で高価なものではない。
【0035】
次に、本発明の製造方法の別の一例を示す。図2は、SOI層の表面に開口部のあるパターンを形成し、この開口部よりシリコンをイオン注入し、埋め込み酸化膜中にこれを貫通するシリコンリッチ領域を部分的に形成することにより、SOI層と基板との連結領域を形成する方法について示したものである。
【0036】
まず、ベースウエーハ1とボンドウエーハ2を用意する(図2(1))。ボンドウエーハ2の表面には後に埋め込み酸化膜となる熱酸化膜3を形成し(図2(2))、ベースウエーハ1の表面にはゲッタリングサイトとなるポリシリコン層4を堆積する(図2(3))。この酸化膜3を形成したボンドウエーハ2とポリシリコン層4を形成したベースウエーハ1とを室温で密着させて(図2(4))、例えば、1100℃以上の熱処理を施し両ウエーハを強固に結合する(図2(5))。次にボンドウエーハ2を、研削・研磨の後、気相エッチングを施すことによりにより薄膜化してSOI層12を形成し、支持基板側にゲッタリングサイトを有するSOIウエーハ6が作製される(図2(6))。
【0037】
次に、SOI層と基板との連結領域を形成する。
まずSOI層12にフォトレジスト7を塗布し(図2(7))、露光・現像して部分的に開口部8のあるパターンを形成する(図2(8))。この開口部8よりシリコンをイオン注入する(図2(9))。開口部8から注入されたシリコンは埋込み酸化膜3に注入されるように、注入深さを調整する。開口されていない部分は、シリコンイオンがフォトレジスト7に捕捉されることになる。次に硫酸と過酸化水素水溶液でフォトレジスト7を除去する(図2(10))。最後に窒素雰囲気でアニールしてイオン注入したシリコンを活性化して、埋め込み酸化膜中にこれを貫通するシリコンリッチ領域を部分的に形成することにより、SOI層12と基板との連結領域10を形成する(図2(11))。
【0038】
上記実施形態では、ボンドウエーハの薄膜化を研削・研磨から気相エッチングを施すことによって行ったが、前述のように他の方法、例えばイオン注入分離法等一般に用いられる方法により行ってもかまわない。
また、部分的に開口部のあるパターンを形成する際には、フォトレジストを塗布する方法に限られず、例えば酸化膜を形成する方法によってもよい。
【0039】
図1及び図2に示した方法では、ベースウエーハ側に形成するゲッタリングサイトをベースウエーハの表面にポリシリコン層を堆積することで形成した。このようにしてゲッタリングサイトを形成すると、デバイスプロセス等の熱処理を複数回行ったとしても、熱処理ごとにポリシリコン層からゲッタリングサイトとなる小さな積層欠陥が供給されるため、ゲッタリング効果が持続するという長所がある。さらにポリシリコン層は酸素析出を促進するため、IG効果をも高めることができる。
【0040】
また、ベースウエーハの少なくとも一方の面にサンドブラスト等でダメージ層を設けることによっても、ゲッタリングサイトを形成することができる。このようにしてゲッタリングサイトを形成すると、極めて簡易に低コストでゲッタリングサイトを形成することができるという長所がある。
【0041】
一方、ベースウエーハをIG熱処理して酸素析出核や酸素析出物を析出させてゲッタリングサイトを形成しても良い。このようにしてゲッタリングサイトを形成すれば、ゲッタリングプロセス自体が新たな不純物を導入することがなく、IG熱処理をクリーンルーム内で行うことができる等の長所がある。
【0042】
なお、埋め込み酸化膜を貫通するSOI層と基板との連結領域は、デバイス作製時のスクライブラインに一致するように形成しておけば、デバイス作製後はこのスクライブラインから各チップに分離して完全なSOI構造を得ることができる。あるいは、必ずしも連結領域とスクライブラインとが一致していなくとも、デバイスの構成上、SOI構造が不要な部位が連結領域になるように配置すれば、必要な箇所はSOI構造とすることができ、かつ高いゲッタリング効果を得ることができる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示す方法でSOIウエーハを製造した。
まず、それぞれ直径200mm、P型、方位〈100〉、抵抗率10Ω・cmのベースウエーハ1及びボンドウエーハ2を用意して(図1(1))、ボンドウエーハ2の表面に熱酸化により膜厚75nmの酸化膜3を形成し(図1(2))、水素イオンを31keVの注入エネルギーで8×1016atoms/cm2 の密度となるように注入し、封入層5を形成した(図1(3))。一方、ベースウエーハ1の表面にはポリシリコン層を1μm堆積した(図1(4))。
【0044】
ボンドウエーハ2のイオン注入をした面とベースウエーハ1とを室温で密着させた(図1(5))。次に、窒素雰囲気下で500℃、30分間の剥離熱処理を加えて、ボンドウエーハ2を剥離・薄膜化し、厚さ200nmのSOI層12を得た(図1(6))。窒素雰囲気下で1100℃、2時間の結合熱処理を加えてSOI層12を強固に結合し(図1(7))、ベースウエーハ1にポリシリコン層4を形成したSOIウエーハ6を作製した。
【0045】
次に、SOI層と埋め込み酸化膜との連結部を形成した。
SOI層表面に膜厚200nmの熱酸化膜13を形成した後(図1(8))、フォトレジスト7を塗布し(図1(9))、露光・現像して部分的に開口部8のあるパターンを作成した(図1(10))。5%HF水溶液により開口部8の酸化膜13を除去した後(図1(11))、硫酸と過酸化水素水溶液でフォトレジスト7を除去した(図1(12))。10%KOH水溶液(60℃)により開口部8のSOI層12を除去し(図1(13))、5%HF水溶液により、開口部8に露出した埋め込み酸化膜をオーバーエッチングし、SOI層のオーバーハング部9を形成した(図1(14))。最後に1200℃、60秒の急速加熱急速冷却装置による水素アニールを行い、オーバーハング部をベースウエーハ1側に付着させ、SOI層と埋め込み酸化膜との連結部10を形成した(図1(15))。
【0046】
このSOI基板のSOI層の表面に、5×1012atoms/cm2 の銅及びニッケルを故意に塗布し、1100℃で水蒸気を含む酸素雰囲気下の酸化を施した後、一般的な選択エッチング手法で表面の結晶欠陥密度を測定した。その結果、SOI層表面の結晶欠陥密度は10個/cm2 以下であり、高いゲッタリング効果を有することがわかった。またベースウエーハとボンドウエーハとの結合強度に問題はなく、この方法で100枚のSOIウエーハを製造した場合の良品率は100%であった。
【0047】
(実施例2)
図2に示す方法でSOIウエーハを製造した。
まず、それぞれ直径200mm、P型、方位〈100〉、抵抗率10Ω・cmのベースウエーハ1及びボンドウエーハ2を用意して(図2(1))、ボンドウエーハ2の表面に熱酸化により膜厚500nmの酸化膜3を形成し(図2(2))、ベースウエーハ1の表面にはポリシリコン層4を1μm堆積した(図2(3))。そして、ボンドウエーハ2とベースウエーハ1とを室温で密着させて(図2(4))、窒素雰囲気下で1100℃、2時間の結合熱処理を加えた(図2(5))。さらに、研削・研磨によりボンドウエーハ2を厚さ4μmにして、さらにPACE加工と呼ばれる特許第2565617号に記載の気相エッチングを施して厚さ0.3μmのSOI層12を有するSOIウエーハ6を作製した(図2(6))。
【0048】
次に、SOI層と埋め込み酸化膜との連結部を形成した。
SOI層12の表面にフォトレジスト7を塗布し(図2(7))、露光及び現像して部分的に開口部8のあるパターンを形成した(図2(8))。Siイオンを埋め込み酸化膜3に注入し(図2(9))、硫酸と過酸化水素水溶液でレジスト7を除去した(図2(10))。最後に窒素雰囲気でアニールしてイオン注入したシリコンを活性化して、埋め込み酸化膜中にこれを貫通するシリコンリッチ領域を部分的に形成することにより、SOI層と基板との連結領域10を形成した(図2(11))。
【0049】
このSOI基板のSOI層12の表面に、5×1012atoms/cm2 の銅及びニッケルを塗布し、1100℃で水蒸気を含む酸素雰囲気下の酸化を施した後、一般的な選択エッチング手法で表面の結晶欠陥密度を測定した。その結果、SOI層表面の結晶欠陥密度は10個/cm2 以下であり、高いゲッタリング効果を有することがわかった。またベースウエーハとボンドウエーハとの結合強度に問題はなく、この方法で100枚のSOIウエーハを製造した場合の良品率は100%であった。
【0050】
(比較例)
図3に示す方法でSOIウエーハを製造した。
まず、それぞれ直径200mm、P型、方位〈100〉、抵抗率10Ω・cmのベースウエーハ1及びボンドウエーハ2を用意した(図3(1))。ベースウエーハ1の表面にはポリシリコン層4を1μm堆積した(図3(2))。次にベースウエーハ1の表面にSi3 N4 膜11を形成し(図3(3))、それを選択酸化マスクとするためにフォトリソグラフィにより選択的にエッチング除去した(図3(4))。次にSi3 N4 膜11をマスクとして、ボンドウエーハ2の表面に熱酸化により膜厚500nmの酸化膜3を形成した(図3(5))。そしてマスクのSi3 N4 膜11を除去する(図3(6))。次に機械的研磨によって、ベースウエーハ1を平坦化する(図3(7))。そしてボンドウエーハ2とベースウエーハ1とを室温で密着させて、窒素雰囲気下で1100℃、2時間の結合熱処理を加えた(図3(8))。さらに、研削・研磨によりボンドウエーハ2を厚さ4μmにして、PACE加工により厚さ0.3μmのSOI層12を有するSOIウエーハを作製した(図3(9))。
【0051】
このSOI基板のSOI層の表面に、5×1012atoms/cm2 の銅及びニッケルを塗布し、1100℃、2時間の水蒸気を含む酸素雰囲気下の酸化を施した後、一般的な選択エッチング手法で表面の結晶欠陥密度を測定した。その結果、SOI層表面の結晶欠陥密度は10個/cm2 以下であり、高いゲッタリング効果を有することがわかった。 しかし、べースウエーハとボンドウエーハとの間にはボイド(未結合部)が発生してしまった箇所があり、その部分の結合強度は低いものとなった。そのため、この方法で100枚のSOIウエーハを製造した場合の良品率は60%にとどまった。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0053】
例えば、上記実施形態で示した製造工程は例示列挙したにとどまり、この他にも洗浄、熱処理等種々の工程があり得るし、工程順の一部変更、一部省略等目的に応じ適宜工程は変更使用することができる。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の方法を用いることにより、ゲッタリング効果が高く、SOI層中の重金属不純物が少ないSOIウエーハを高い生産性で生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の一例を示した流れ図であり、SOI層の表面に埋め込み酸化膜に達する開口部を形成し、該開口部に露出した埋め込み酸化膜をエッチングしてSOI層のオーバーハング部を形成した後に熱処理を施すことにより、埋め込み酸化膜を貫通するSOI層と基板との連結領域を形成する方法について示した図である。
【図2】本発明の製造方法の別の一例を示した流れ図であり、SOI層の表面に開口部のあるパターンを形成し、この開口部よりシリコンをイオン注入し、埋め込み酸化膜中にこれを貫通するシリコンリッチ領域を部分的に形成することにより、SOI層と基板との連結領域を形成する方法について示した図である。
【図3】従来のSOI層と支持基板との連結領域が形成されたSOIウエーハの製造方法を示した流れ図である。
【符号の説明】
1…ベースウエーハ、 2…ボンドウエーハ、 3,13…酸化膜、
4…ポリシリコン層、 5…微小気泡層(封入層)、 6…SOIウエーハ、
7…フォトレジスト、 8…開口部、 9…オーバーハング部、
10…連結領域、 11…Si3 N4 膜、 12…SOI層。
Claims (16)
- ゲッタリングサイトを形成した基板となるベースウエーハと、SOI層となるボンドウエーハとを、埋め込み酸化膜となる酸化膜を介して結合し、該ボンドウエーハを簿膜化してSOI層とするSOIウエーハの製造方法において、
前記SOI層の表面に埋め込み酸化膜に達する開口部を形成し、該開口部に露出した埋め込み酸化膜をエッチングしてSOI層のオーバーハング部を形成した後に熱処理を施すことにより、埋め込み酸化膜を貫通するSOI層と基板との連結領域を形成することを特徴とするSOIウエーハの製造方法。 - 前記熱処理は、急速加熱・急速冷却装置を用いて、水素を含む還元性雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1に記載のSOIウエーハの製造方法。
- ゲッタリングサイトを形成した基板となるベースウエーハと、SOI層となるボンドウエーハとを、埋め込み酸化膜となる酸化膜を介して結合し、該ボンドウエーハを薄膜化してSOI層とするSOIウエーハの製造方法において、
前記SOI層の表面に開口部のあるパターンを形成し、この開口部よりシリコンをイオン注入し、埋め込み酸化膜中にこれを貫通するシリコンリッチ領域を部分的に形成して、SOI層と基板との連結領域を形成することを特徴とするSOIウエーハの製造方法。 - 前記ゲッタリングサイトはベースウエーハをIG熱処理して酸素析出核あるいは酸素析出物を析出することにより形成することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のSOIウエーハの製造方法。
- 前記ゲッタリングサイトはベースウエーハの少なくとも一方の面にポリシリコン層を堆積することによって形成することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のSOIウエーハの製造方法。
- 前記ゲッタリングサイトはベースウエーハの少なくとも一方の面にダメージ層を設けることによって形成することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のSOIウエーハの製造方法。
- 前記埋め込み酸化膜を貫通するSOI層と基板との連結領域は、スクライブラインと一致するように形成することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のSOIウエーハの製造方法。
- 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の方法により製造されたSOIウエーハ。
- ゲッタリングサイトを形成した基板とSOI層と両者の間の埋め込み酸化膜から成り、該埋め込み酸化膜を貫通するSOI層と基板との連結領域を有するSOIウエーハであって、
該連結領域は、SOI層の表面に埋め込み酸化膜に達する開口部を形成し、該開口部に露出した埋め込み酸化膜をエッチングしてSOI層のオーバーハング部を形成した後に熱処理を加えることにより形成されたものであることを特徴とするSOIウエーハ。 - 前記熱処理は、急速加熱・急速冷却装置を用いて、水素を含む還元性雰囲気中で行われたものであることを特徴とする請求項9に記載のSOIウエーハ。
- ゲッタリングサイトを形成した基板とSOI層と両者の間の埋め込み酸化膜から成り、該埋め込み酸化膜を貫通するSOI層と基板との連結領域を有するSOIウエーハであって、
該連結領域は、SOI層の表面よりシリコンをイオン注入し、埋め込み酸化膜を貫通するシリコンリッチ領域を部分的に設けることにより形成されたものであることを特徴とするSOIウエーハ。 - 前記ゲッタリングサイトはベースウエーハをIG熱処理して酸素析出核あるいは酸素析出物を析出することにより形成されたものであることを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれか1項に記載のSOIウエーハ。
- 前記ゲッタリングサイトはベースウエーハの少なくとも一方の面にポリシリコン層を堆積することによって形成されたものであることを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれか1項に記載のSOIウエーハ。
- 前記ゲッタリングサイトはベースウエーハの少なくとも一方の面にダメージ層を設けることによって形成されたものであることを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれか1項に記載のSOIウエーハ。
- 前記連結領域はスクライブラインと一致して形成されているものであることを特徴とする請求項9ないし請求項14のいずれか1項に記載のSOIウエーハ。
- ゲッタリングサイトを形成した基板とSOI層と両者の間の埋め込み酸化膜から成り、該埋め込み酸化膜を貫通するSOI層と基板との連結領域を有するSOIウエーハであって、
前記連結領域はスクライブラインと一致して形成されているものであることを特徴とするSOIウエーハ。
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