JP3885557B2 - 結晶シリコン製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコン融液を冷却して一方向に徐々に凝固する結晶シリコン製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
多結晶シリコン太陽電池は、今日最も多く製造されている太陽電池である。
多結晶シリコン太陽電池の発電素子(ソーラー・セル)では、多結晶シリコンの品質がその性能を大きく左右する。そのため、多結晶シリコンの製造には、これまで様々な改良がなされてきたが、今日、多結晶シリコンの製造における最大の課題は、結晶中の不純物元素の低減及び結晶性の向上である。
【0003】
多結晶シリコンの製造工程は、大きく分けて、金属シリコンから高純度シリコンを製造するプロセスとその高純度シリコンの融液を一方向凝固法により固化するプロセスの2段階に分けられるが、従来、不純物元素を低減するために、前者のプロセスにおいて、金属シリコンを塩酸と反応させてトリクロロ・シランとしてガス化し、そのガスを精留し、水素ガスと反応させながら、ガスから析出させた高純度シリコンを製造している。
【0004】
また、不純物元素を低減するために、一方向凝固時に、シリコン融液を攪拌しながら行うことも有効である。
攪拌の方法としては、例えば、特開昭61−141612号公報に鋳型を回転する方法が、特開平5−254817号公報に磁界の作用でシリコン融液内に攪拌力を発生させる方法が、特開平10−182135号公報にシリコン融液内の固液界面より上部にランスを差し込んで不活性ガスを吹き込む方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、第一の方法は、設備コストやメンテナンス方法に問題があり、製造コストが高くなるという問題がある。第二の方法も、設備コストが高いという問題がある。第三の方法は、ランスが溶融してシリコン融液内で不純物となり純度を低減させるという問題がある。
【0006】
また、酸素濃度が高い場合、太陽電池のセル特性は低下する。しかし、主な原料としている単結晶シリコンのスクラップである塊状リメルトには多量の酸素が溶け込んでいることから、これを溶解、一方向凝固時に低減する必要があった。さらに、不活性ガスで溶湯表面を覆っていない場合、COガス、SiOガス等が浸入して、シリコン融液内の不純物濃度が増加し、前記セル特性が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、不純物濃度が低く、結晶性が高い高品質の多結晶シリコンを安価で容易に製造できる結晶シリコン製造装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成を採用した。鋳型に収容したシリコン融液に該鋳型の内側底面から上方に正の温度勾配を付与して、前記鋳型の内側底面から上方に前記シリコン融液を結晶化する結晶シリコン製造装置において、先端を前記鋳型内の前記シリコン融液の表面に向けられるガス吐出管と、該ガス吐出管内に不活性ガスを供給するガス供給装置とを有し、前記ガス吐出管は、外管と、該外管内に挿通状態にして設けられる内管とを有し、前記外管と前記内管との間のリング状空間には、前記ガス供給装置から前記シリコン融液の表面を覆う流れを形成する不活性ガスが供給され、前記内管内には前記ガス供給装置から前記シリコン融液表面に吹き付けられて該表面にキャビティを形成する流れを形成する不活性ガスが供給される構成とされていることを特徴とする。
【0009】
このように構成される結晶シリコン製造装置においては、ガス供給装置から供給されるArガス等の不活性ガスが、ガス吐出管によってシリコン融液の表面に向けて吐出される。
ガス吐出管は、外管と内管とを有しており、外管と内管との間のリング状空間から吐出される不活性ガスは、シリコン融液の表面を覆う流れを形成するので(以下、この流れを形成する不活性ガスをシール用ガスとする)、周囲の雰囲気中のCOガスやSiOガス等の不純物ガスのシリコン融液内への侵入が防止される。
このシール用ガスは、ガス吐出管から吐出された後は、ガス吐出管を中心としてシリコン融液の表面を鋳型の側壁に向けて放射状に流れて、順次鋳型外に流出する。
【0010】
そして、内管内から吐出される不活性ガスは、シリコン融液の表面に吹き付けられてその圧力によってシリコン融液の表面に凹み(キャビティ)を形成することとなる(以下、この流れを形成する不活性ガスをキャビティ形成用ガスとする)。これによってシリコン融液が攪拌されるとともにその表面が常に新生面となるので、シリコン融液内に含まれる不純物であるOが効果的に除去される。
さらに、このようにキャビティを形成するのに寄与したキャビティ形成用ガスは、リング状空間から吐出されるシール用ガスの流れによって速やかに鋳型外に排出されるので、シリコン融液表面での不純物を含む不活性ガスの滞留が生じにくくなってシリコン融液内に含まれる不純物の除去がより効果的に行われることとなる。
また、ガス吐出管は、シリコン融液から離間されているので、ガス吐出管から不純物がシリコン融液内に混入することがない。
【0011】
さらに、ガス吐出管から、シール用ガスとキャビティ形成用ガスとを独立して吐出させているので、これらのそれぞれについて、吐出量または吐出圧力、さらには使用する不活性ガスの種類も含めて、用途に合わせて適切に設定することができる。
例えば、リング状空間からは、シリコン融液の表面を不活性ガスで十分に覆うことができ、かつシリコン融液の表面に沿って適切な速度で流れる程度の流量でシール用ガスを吐出させる。また、内管内からは、シリコン融液の表面にキャビティを形成してシリコン融液の攪拌を十分に行うことができるよう、十分な吐出圧でキャビティ形成用ガスを吐出させる。
【0012】
ここで、ガス吐出管を、外管と内管とを有する二重管とする構成ではなく、単一の管によって構成した場合には、単一の管から吐出される不活性ガスによってシリコン融液の表面にキャビティを形成する役割と、シリコン融液の表面を覆う役割の両方を果たさなくてはならない。
シリコン融液の表面にキャビティを形成するためには、不活性ガスの吐出圧がある程度高くなくてはならない。しかし、このようにシリコン融液の表面にキャビティが形成されるほど不活性ガスの吐出圧を高くすると、シリコン融液表面に吹き付けられた不活性ガスは、その吐出圧自体によって、またキャビティの内面によって案内されることによって、大部分がガス吐出管に向かって跳ね返されることとなり、シリコン融液の表面に沿っては流れにくくなる。
このため、跳ね返された不活性ガスをシリコン融液の表面近傍にとどめるために鋳型の上に不活性ガスを受けるサセプタ−等を設ける必要が生じる上、このようにサセプタ−を設けることで、鋳型内で不活性ガスが滞留しやすくなってしまう。
【0013】
この結晶シリコン製造装置において、前記リング状空間の先端開口がその半径外方に向けられていてもよい。この場合には、リング状空間から吐出されるシール用ガスがリング状空間の半径外方に向けて吐出され、シール用ガスが確実にシリコン融液の表面に沿って流れることとなるので、シール用ガスによるシリコン融液表面の封止が確実になる。
さらに、このようにシール用ガスの流れがスムーズになることで、シール用ガスによる、キャビティ形成に寄与したキャビティ形成用ガスの鋳型からの排出がよりスムーズに行われることとなる。
【0014】
また、内管の先端が、外管の先端よりも突出されている構成とすれば、外管と内管との間のリング状空間から吐出されるシール用ガスは、内管内から吐出されるキャビティ形成用ガスよりも早い段階でガス吐出管から開放されることとなる。このため、シール用ガスがガス吐出管の周囲に拡散しやすくなり、シリコン融液の表面に沿ってスムーズに流れることとなる。
【0015】
また、内管の先端に、外径が拡径された拡径部が設けられている構成とすることで、外管と内管との間に形成されるリング状空間の先端開口が半径外方に向けられることとなり、リング状空間から吐出されるシール用ガスが拡径部によって半径外方に向けて案内されて、シール用ガスがシリコン融液の表面に沿ってスムーズに流れることとなる。
ここで、拡径部は、例えば、内管の先端の少なくとも外周面を、先端に向かうにつれて拡径される傾斜面または曲面形状とすることで構成される。
【0016】
【発明の実施の形態】
〔第一の実施の形態〕
以下、本発明にかかる結晶シリコン製造装置の一実施形態について、図を参照して説明する。ここで、図1は、本発明の第一の実施の形態にかかる結晶シリコン製造装置の構成を示す縦断面図、図2は、図1に示す結晶シリコン製造装置の要部拡大図、図3は図2のA−A矢視断面図である。
結晶シリコン製造装置1は、図示せぬチャンバー内に設置された鋳型2と、鋳型2の上方に配置された上ヒーター3aと、鋳型2の下部に配置される冷却板4と、冷却板4の下部に配置された下ヒーター3bと、鋳型2、上ヒーター3a、下ヒーター3b、及び冷却板4とを囲む保温材5と、保温材5の外部から挿入されて先端を鋳型2内に向けて鋳型2の上方に配置されたガス供給ランス6(ガス吐出管)と、ガス供給ランス6内にArガス等の不活性ガスを供給するガス供給装置7とを有している。
【0017】
ガス供給ランス6は、外管11と、外管11内に挿通状態にして設けられる内管12とを有し、外管11と内管12との間に形成されるリング状空間S、及び内管12内には、それぞれガス供給装置7から不活性ガスが供給される構成とされている。
外管11と内管12とは、例えば互いに略同心にして設けられる円筒状部材とされている。また、ガス供給装置7は、リング状空間S内、及び内管12内に供給する不活性ガスの流量を、それぞれ独立して設定可能とされている。
【0018】
このように構成される結晶シリコン製造装置1を用いた結晶シリコンの製造方法について以下に説明する。
まず、鋳型2内に原料の固体シリコンを収容する。そして、雰囲気ガスとしてArガス等の不活性ガスを図示しないチャンバー上部からチャンバー内に流入させ、鋳型2内の固体シリコンを上ヒーター3a、下ヒーター3bにより加熱して溶融させてシリコン融液13とする。
【0019】
次に、ガス供給装置7から供給される不活性ガスを、ガス供給ランス6によって鋳型2内に供給する。
ガス供給ランス6は、前記のように外管11と内管12とを有しており、リング状空間S、及び内管12内からそれぞれ鋳型2内のシリコン融液13の表面に向けて不活性ガスを吐出するようになっている。
外管11、内管12は、それぞれ先端を、鋳型2内に形成されるシリコン融液13の表面から離間させて設けられており(本実施形態では3cm以上離間させている)、シリコン融液13及びそのスプラッシュとも接触することのないように図られている。本実施の形態では、外管11及び内管12の先端を、シリコン融液13の表面から同一距離離間させて設けている。
【0020】
リング状空間Sから吐出される不活性ガス(シール用ガス)は、図2において矢印で示すように、シリコン融液13の表面を覆う流れを形成する。
このシール用ガスの流量f1は、シール用ガスによってシリコン融液13の表面が確実に覆われるように、50L/min以上とし、かつシール用ガスがシリコン融液表面13に跳ね返されてシリコン融液13の表面から離間してしまうことのないよう、100L/min以下としている。
一方、内管12内から吐出される不活性ガス(キャビティ形成用ガス)は、シリコン融液13の表面に吹き付けられてキャビティを形成する流れを形成する。
ここで、キャビティ形成用ガスによってシリコン融液13の表面にキャビティCを形成することができるように、キャビティ形成用ガスの流量が確保されている。
【0021】
ついで、下ヒーター3bによる加熱を停止し、冷却板4により鋳型2の底部からシリコン融液13の冷却を開始させる。鋳型2内のシリコン融液13は、底部から上方へ形成された正の温度勾配に沿って、一方向に結晶化していく。
【0022】
上記のように、シリコン融液13表面にガス供給ランス6によって上方からシール用ガスを吹き付けることで、リング状空間Sから吐出されるシール用ガスがシリコン融液13の表面を覆うこととなり、このシール用ガスの流れによりCOガス等の不純物ガスの周囲雰囲気からの混入を防止することができる。
そして、このシール用ガスは、ガス供給ランス6から吐出された後は、ガス供給ランス6を中心としてシリコン融液13の表面を鋳型2の側壁に向けて放射状に流れて、順次鋳型2外に流出する。
【0023】
また、ガス供給ランス6の内管12から吐出されるキャビティ形成用ガスによって、シリコン融液13の表面にはキャビティCが形成され、これによってシリコン融液13が攪拌されるとともにシリコン融液13の表面に常に新生面が形成されることとなる。
そのため、シリコン融液13内部で発生するSiOガスの周囲雰囲気への排出が促進され、シリコン融液13内の不純物であるOを効果的に除去することができる。さらに、キャビティ形成用ガスは、キャビティCの形成に寄与した後は、シール用ガスの流れによって速やかに鋳型2外に排出されることとなり、不純物であるOを含むシール用ガスの鋳型2内での滞留が防止される。
【0024】
この状態でシリコン融液13の凝固が進行するので、凝固完了後の結晶シリコンのインゴットは、CやOの不純物濃度が低くなる。さらに、この場合は、不純物が少ないので、結晶性がよい高品質の結晶シリコンを製造することができる。また、ガス供給ランス6の外管11及び内管12は、それぞれ先端を、鋳型2内に形成されるシリコン融液13の表面から離間させて設けられていてシリコン融液13に接触していないので、ガス供給ランス6から不純物がシリコン融液13内に混入することがない。
ここで、鋳型2内でのシリコンの固液界面の上昇に応じて、キャビティ形成用ガスの流量を順次減じることで、固液界面が乱されずにシリコン融液13の凝固が進行するので、より結晶性がよい結晶シリコンの製造が可能となる。
【0025】
〔第二の実施の形態〕
以下、本発明にかかる結晶シリコン製造装置の第二の実施形態について図を参照して説明する。ここで、図4は、本実施形態にかかる結晶シリコン製造装置の要部拡大図である。
本実施形態にかかる結晶シリコン製造装置21は、第一の実施の形態で示した結晶シリコン製造装置1において、ガス供給ランス6の内管12の先端を、外管11の先端よりも突出させたものである。
【0026】
このように構成される結晶シリコン製造装置21によれば、外管11と内管12との間に形成されるリング状空間Sから吐出される不活性ガスは、内管12内から吐出される不活性ガスよりも早くガス供給ランスから開放されることとなる。これによってシール用ガスがより周囲に拡散しやすくなるので、シール用ガスがシリコン融液13の表面に沿ってスムーズに流れることとなり、シリコン融液13表面の封止が確実となる。
また、リング状空間Sから吐出されるシール用ガスによって、内管12内から吐出されてシリコン融液13表面にキャビティCを形成するのに寄与したキャビティ形成用ガスが速やかに鋳型2外に搬送されるので、鋳型2内にOを含んだキャビティ形成用ガスが滞留せず、シリコン融液13の不純物濃度の増加を抑えることができる。
【0027】
〔第三の実施の形態〕
以下、本発明にかかる結晶シリコン製造装置の第三の実施形態について図を参照して説明する。ここで、図5は、本実施形態にかかる結晶シリコン製造装置の要部拡大図である。
本実施形態にかかる結晶シリコン製造装置31は、第二の実施の形態で示した結晶シリコン製造装置21において、ガス供給ランス6のリング状空間Sの先端開口を、その半径外方に向けたものである。本実施の形態では、外管11の先端に半径外方に向けて突出する第一のフランジ11aを形成し、内管12において外管11の先端よりも突出される先端に半径外方に向けて突出する第二のフランジ12aを設けることで、リング状空間Sの先端開口を半径外方に向けている。
ここで、リング状空間Sの先端開口を半径外方に向けるための構成としては、他の任意の構成を採用することができる。
【0028】
このように構成される結晶シリコン製造装置31によれば、外管11と内管12との間に形成されるリング状空間Sの先端開口が、その半径外方に向けられているので、リング状空間Sから吐出されるシール用ガスが半径外方に向けて案内されて、シール用ガスがシリコン融液13の表面に沿ってスムーズに流れることとなり、シリコン融液13表面の封止が確実となる。
また、リング状空間Sから吐出されるシール用ガスによって、内管12内から吐出されてシリコン融液13の表面にキャビティCを形成することに寄与したキャビティ形成用ガスが速やかに鋳型2外に搬送される。
【0029】
〔第四の実施の形態〕
以下、本発明にかかる結晶シリコン製造装置の第四の実施形態について図を参照して説明する。ここで、図6は、本実施形態にかかる結晶シリコン製造装置の要部拡大図である。
本実施形態にかかる結晶シリコン製造装置41は、第二の実施の形態で示した結晶シリコン製造装置21において、ガス供給ランス6の内管12の先端に、外径が拡径された拡径部12bを形成したものである。
拡径部12bの構成は任意であって、本実施の形態では、拡径部12bは、先端に向かうにつれて拡径された傾斜面としている。ここで、拡径部12bは、その外周面を、先端に向かうにつれて漸次拡径される傾斜曲面としてもよい。
【0030】
このように構成される結晶シリコン製造装置によれば、内管12の先端に設けられる拡径部12bによって外管11と内管12との間に形成されるリング状空間Sの先端開口が半径外方に向けられることとなり、リング状空間Sに供給されるシール用ガスが半径外方に向けて案内されるので、この不活性ガスがシリコン融液13の表面に沿ってスムーズに流れることとなり、シリコン融液13表面の封止が確実となる。
また、リング状空間Sから吐出されるシール用ガスによって、内管12内から吐出されてシリコン融液13の表面にキャビティCを形成することに寄与したキャビティ形成用ガスが速やかに鋳型2外に搬送される。
【0031】
【実施例】
本発明にかかる結晶シリコン製造装置の性能を調べるため、上記第一の実施の形態で示した結晶シリコン製造装置1により実際に結晶シリコンのインゴットを製造した。
ここで、鋳型2は石英製で平面視の寸法が約55.0×55.0cmのものを使用し、原料の固体シリコンには半導体用シリコン単結晶の端材を使用した。
また、ガス供給ランス6の外管11の外半径R1は4.0cm、内半径r1は3.5cm、内管12の外半径R2は2.5cm、内半径r2は2.0cmとし、ガス供給装置7が供給する不活性ガスはArガスとした。
【0032】
そして、チャンバー内の雰囲気ガスとしてArガスを用い、ヒーターを1hで1500°Cまで昇温し、その後約1.5h後に原料の融解を完了した。ここで、溶解完了後の鋳型2内でのシリコン融液13の深さは、15.0cmである。また、 シール用ガス、キャビティ形成用ガスの流量は、溶解完了後に設定した。
ここで、内管12から吐出されるキャビティ形成用ガスの流量f2、内管12の内半径r2、および内管12のシリコン融液13表面からの距離とは、次式の関係にある。
3≦f2/(r2H2)≦60
(ただし、f2[L/min]:吹き付けるキャビティ形成用ガスの流量
r2[cm] :内管の内半径
H2[cm] :内管の先端のシリコン融液表面からの距離 )
ここで、f2/(r2H2)<3であると、キャビティ形成用ガスの流量が少なすぎて、シリコン融液13の攪拌及び新生面の形成が不十分となるので、シリコン融液13からの不純物の排出が不十分となり、得られるインゴットの不純物濃度が高くなってしまう。一方、60<f2/(r2H2)であると、キャビティ形成用ガスの流量が多すぎて、シリコン融液13のスプラッシュが生じる上、シリコン融液13の固液界面が乱されるので、得られるインゴットの結晶性が乱れ、インゴットから得られるセルの特性が低下してしまう。
ここでは、ガス供給ランス6の外管11及び内管12のシリコン融液13の表面からの距離H1、H2は、それぞれ5.0cmとし、シール用ガスの流量f1=40L/min、キャビティ形成用ガスの流量f2=80L/minとした。
この条件下で製造されたインゴット内の不純物濃度(酸素濃度)は、1.5×1017atom/ccであった。
【0033】
さらに、比較のために、第一の実施の形態に示す結晶シリコン製造装置1において、ガス供給ランス6の代わりに、図7に示すように、外半径R3=4.0cm、内半径r3=2.0cmの単管からなるガス供給ランス51を用い、さらに鋳型2の上に、シリコン融液13表面に吹き付けられて跳ね返された不活性ガスを受けるサセプターを設けて、上記と同じ条件で結晶シリコンのインゴットを製造した。ここで、ガス供給ランスから吐出される不活性ガスの流量f3は、80L/minとした。
このとき得られたインゴット内の不純物濃度(酸素濃度)は、1.5×1018atom/ccと、本発明にかかる結晶シリコン製造装置1によって製造されるシリコンインゴットよりも不純物濃度が約10倍高かった。
このことから、本発明にかかる結晶シリコン製造装置によれば、シール用ガスとキャビティ形成用ガスを鋳型内のシリコン融液に向けてそれぞれ独立して吐出するので、各ガスの役割が十分に果たされて、不純物濃度が低く、結晶性が高い高品質の多結晶シリコンを安価で容易に製造することができることがわかる。
【0034】
【発明の効果】
上記のように、本発明にかかる結晶シリコン製造装置によれば、外管と内管との間のリング状空間から吐出されるシール用ガスによってシリコン融液の表面が覆われて周囲の雰囲気中のCOガスやSiOガス等の不純物ガスのシリコン融液内への侵入が防止される。
そして、内管内から吐出されるキャビティ形成用ガスは、シリコン融液の表面に吹き付けられてその圧力によってシリコン融液の表面にキャビティを形成するので、シリコン融液が攪拌されるとともにその表面が常に新生面となるので、シリコン融液内に含まれる不純物であるOが効果的に除去される。
さらに、このようにキャビティを形成するのに寄与したキャビティ形成用ガスは、リング状空間から吐出されるシール用ガスの流れによって速やかに鋳型外に排出されるので、シリコン融液表面での不純物を含む不活性ガスの滞留が生じにくくなってシリコン融液内に含まれる不純物の除去がより効果的に行われることとなる。
また、ガス吐出管は、シリコン融液から離間されているので、ガス吐出管から不純物がシリコン融液内に混入することがない。
これにより、不純物濃度が低く、結晶性が高い高品質の多結晶シリコンを安価で容易に製造することができる。
【0035】
さらに、ガス吐出管から、シリコン融液の表面をシールするシール用ガスと、シリコン融液の表面にキャビティを形成するキャビティ形成用ガスとを独立して吐出させているので、これらガスのそれぞれについて、吐出量または吐出圧力、さらには不活性ガスの種類も含めて、用途に合わせて適切に設定することができる。
【0036】
また、リング状空間の先端開口をその半径外方に向けたり、内管の先端を外管の先端よりも突出させたり、内管の先端に、外径が拡径された拡径部を設けるなどすることで、シール用ガスが確実にシリコン融液の表面に沿って流れるので、シール用ガスの表面の封止が確実となる。
さらに、このようにシール用ガスの流れがスムーズになることで、シール用ガスによる、キャビティ形成に寄与したキャビティ形成用ガスの鋳型からの排出がよりスムーズに行われることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一の実施の形態にかかる結晶シリコン製造装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】 図1に示す結晶シリコン製造装置の要部拡大図である。
【図3】 図2のA−A矢視断面図である。
【図4】 本発明の第二の実施の形態にかかる結晶シリコン製造装置の要部の構成を示す縦断面図である。
【図5】 本発明の第三の実施の形態にかかる結晶シリコン製造装置の要部の構成を示す縦断面図である。
【図6】 本発明の第四の実施の形態にかかる結晶シリコン製造装置の要部の構成を示す縦断面図である。
【図7】 比較例の結晶シリコン製造装置の要部の構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1、21、31、41 結晶シリコン製造装置 2 鋳型
6 ガス供給ランス(ガス吐出管) 7 ガス供給装置
11 外管 12 内管
12a 拡径 13 シリコン融液
S リング状空間

Claims (4)

  1. 鋳型に収容したシリコン融液に該鋳型の内側底面から上方に正の温度勾配を付与して、前記鋳型の内側底面から上方に前記シリコン融液を結晶化する結晶シリコン製造装置において、
    先端を前記鋳型内の前記シリコン融液の表面に向けられるガス吐出管と、該ガス吐出管内に不活性ガスを供給するガス供給装置とを有し、
    前記ガス吐出管は、外管と、該外管内に挿通状態にして設けられる内管とを有し、前記外管と前記内管との間のリング状空間には、前記ガス供給装置から前記シリコン融液の表面を覆う流れを形成する不活性ガスが供給され、前記内管内には前記ガス供給装置から前記シリコン融液表面に吹き付けられて該表面にキャビティを形成する流れを形成する不活性ガスが供給される構成とされていることを特徴とする結晶シリコン製造装置。
  2. 前記リング状空間の先端開口がその半径外方に向けられていることを特徴とする請求項1に記載の結晶シリコン製造装置。
  3. 前記内管の先端が、前記外管の先端よりも突出されていることを特徴とする請求項1または2に記載の結晶シリコン製造装置。
  4. 前記内管の先端に、外径が拡径された拡径部が設けられていることを特徴とする請求項3記載の結晶シリコン製造装置。
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