JP3885492B2 - アンチスキッド制御装置 - Google Patents

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、各輪に配設された制動用シリンダの制動流体圧を最適状態に制御して車輪のロックを防止するアンチスキッド制御装置に関し、特に路面の摩擦係数状態に応じて制御パラメータを調整する場合に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
車両の制動時における車輪のロックを防止するアンチスキッド制御装置は、例えば制御対象車輪の車輪速度を検出して、車体速度との偏差の比からスリップ率を算出し、このスリップ率が基準スリップ率を越えるような場合には制動用シリンダへの流体圧を減圧し、この減圧によって当該車輪速度が増速して当該車輪のスリップ率が基準スリップ率以下となると再び制動用シリンダへの流体圧を増圧し、所謂ポンピングブレーキ的な操作を自動制御することによって,当該制御対象車輪のスリップ率が基準スリップ率に維持されるように制動力を調整制御する。なお、このアンチスキッド制御中の作動流体の増圧調整制御は、所定時間毎に制限された微小増圧を繰り返して、マクロ的には各車輪の制動用シリンダの流体圧が比較的ゆっくりと増圧される(以下,緩増圧とも記す)ようにしている。
【0003】
一方、制動中は正確な車体速度を検出しにくい。そのため、車輪速度を用いて車体速度を推定する、推定車体速度が制御に用いられる。具体的には、各車輪速度のうちの最も速度い最大車輪速度をセレクトハイ処理等によって選出し、通常はこの最大車輪速度を推定車体速度度として用いるが、この最大車輪速度が,当該車輪の制動用シリンダの制動力によりロック傾向となって車体速度から大きく減速しようとするとき、具体的には当該最大車輪速度の微分値である負値の車輪加速度が所定減速度値を下回るときの速度を基準速度(以下,この速度を分岐速度とも記す)とし、この分岐速度に、予め設定された或いは前記分岐速度から算出された車体減速度の時間積分値を減じて推定車体速度度を算出する。
【0004】
このような推定車体速度度の算出において、特開平1−63452号公報では、路面の摩擦係数状態(以下、単にμとも記す)が低い状態から高い状態に急速度に変化する、所謂μジャンプが生じたときの実際の車体速度に対する推定車体速度の追従させている。具体的には、前述のようにして設定した分岐速度から車体減速度を算出すると共に、合わせて前述のような制動流体圧制御中の増圧量又は微小増圧回数を検出し、車体減速度が所定値以下、つまり減速度が或る程度小さく、且つ増圧量又は微小増圧回数が所定値以上であるときに、高μ路面であると判定し、例えば前記分岐速度を、直前のスキッドサイクル開始時における車輪速度に変更するなど、制御パラメータを調整することで、路面μジャンプに起因する実車速度の変化に対し、推定車体速度との追従応答性を向上させている。また、特開平1−63453号公報では、前述した制動流体圧制御中の増圧量又は微小増圧回数に代えて、制御対象車輪のロック時間、具体的には制動流体圧制御中の減圧量又は減圧時間を検出し、同様に車体減速度が所定値以下、つまり減速度が或る程度小さく、且つ減圧量又は減圧時間が所定値以下であるときに高μ路面であると判定し、同様の制御パラメータの調整を行っている。また、この二つの判定要件を同時に盛り込んだアンチスキッド制御装置も実用に供されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前記従来のアンチスキッド制御装置では、例えば低μ路面で、車輪がロックするかしないかの、所謂ぎりぎりの低制動力であるときには、マスタシリンダなどで発生する元来の制動流体圧が低く、車輪がロック状態に陥って減圧すると、制動流体圧がすぐに大気圧に飽和するため、減圧時間が短く、また緩増圧を繰り返しても、元圧が低いために、十分に昇圧せず、その結果、なかなかロック状態にならずに、増圧回数が増大する。従って、何れの場合も、低μ路面であるにも関わらず、高μ路面であると判定され、制御用のパラメータが不必要に調整されてしまうという問題がある。
【0006】
本発明はこれらの諸問題に鑑みて開発されたものであり、低μ路面低制動力時に誤判断することなく、路面μを適切に判定することができるアンチスキッド制御装置を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、本発明のアンチスキッド制御装置は、制動流体圧を増圧又は減圧又は保持して制動力を制御すると共に、路面の摩擦係数状態に応じて制御パラメータを調整するアンチスキッド制御装置において、車体の減速度を検出する車体減速度検出手段と、制動流体圧制御中の増圧量又は増圧回数を検出する増圧量又は増圧回数検出手段と、制動流体圧制御中の減圧量又は減圧時間を検出する減圧量又は減圧時間検出手段と、車輪の加速度を検出する車輪加速度検出手段と、前記車体減速度検出手段で検出された車体減速度が所定値以下であり、且つ前記増圧量又は増圧回数検出手段で検出された増圧量又は増圧回数が所定値以上であり、且つ前記減圧量又は減圧時間検出手段で検出された減圧量又は減圧時間が所定値以下であり、且つ非制動流体圧制御中に前記車輪加速度検出手段で検出された車輪加速度が所定値以下のとき、当該路面の摩擦係数状態が小さいと判定する路面摩擦係数状態判定手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
【発明の効果】
而して、本発明のうち請求項1に係るアンチスキッド制御装置によれば、路面の摩擦係数状態に応じて制御パラメータを調整するアンチスキッド制御装置にあって、車体減速度が所定値以下であり、つまり緩やかな減速度状態にあり、且つ制動流体圧の増圧量又は増圧回数が所定値以上であり、且つ制動流体圧の減圧量又は減圧時間が所定値以下であり、且つ非制動流体圧制御中に検出された車輪加速度が所定値以下の時、当該路面の摩擦係数状態が小さいと判定する構成としたため、低μ路面での低制動力時に高μ路面と誤判断することがなく、路面μを確実に判定することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のアンチスキッド制御装置の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明のアンチスキッド制御装置を,FR(フロントエンジン・リアドライブ)方式をベースにした後輪駆動車両に展開した一実施例である。
【0010】
図中、1FL,1FRは前左右輪、1RL,1RRは後左右輪であって、後左右輪1RL,1RRにエンジンEGからの回転駆動力が変速度機T、プロペラシャフトPS及びディファレンシャルギヤDGを介して伝達され、各車輪1FL〜1RRには、それぞれ制動用シリンダとしてのホイールシリンダ2FL〜2RRが取付けられ、更に前輪1FL,1FRにこれらの車輪回転数に応じたパルス信号PFL,PFRを出力する車輪速度検出手段としての車輪速度センサ3FL,3FRが取付けられ、プロペラシャフトPSに後輪の平均回転数に応じたパルス信号PR を出力する車輪速度検出手段としての車輪速度センサ3Rが取付けられている。
【0011】
各前輪側ホイールシリンダ2FL,2FRには、ブレーキペダル4の踏込みに応じて前輪側及び後輪側の2系統のマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダ5からのマスタシリンダ圧が前輪側アクチュエータ6FL,6FRを介して個別に供給されると共に、後輪側ホイールシリンダ2RL,2RRには、マスタシリンダ5からのマスタシリンダ圧が共通の後輪側アクチュエータ6Rを介して供給される。
【0012】
前記アクチュエータ6FL〜6Rの夫々は、図2に示すように、マスタシリンダ5に接続される油圧配管7とホイールシリンダ2FL〜2RRとの間に介装された電磁流入弁8と、この電磁流入弁8と並列に接続された電磁流出弁9、油圧ポンプ10及び逆止弁11の直列回路と、電磁流出弁9及び油圧ポンプ10間の油圧配管に接続されたアキュームレータ12とを備えている。
【0013】
そして、各アクチュエータ6FL〜6Rの電磁流入弁8、電磁流出弁9及び油圧ポンプ10は、車輪速度センサ3FL〜3Rからの車輪速度パルス信号PFL〜PR が入力されるコントロールユニットCRからの液圧制御信号EV,AV及びMRによって制御される。
前記コントロールユニットCRは、車輪速度センサ3FL〜3Rからの車輪速度パルス信号PFL〜PR が入力され、これらと各車輪1FL〜1RRのタイヤ転がり動半径とから各車輪の周速度でなる車輪速度VwFL〜VwR を演算する車輪速度演算回路15FL〜15Rと、前記車輪速度演算回路15FL〜15Rの車輪速度VwFL〜VwR に基づいてアクチュエータ6FL〜6Rに対する制御信号EV,AV及びMRを出力する制御手段としてのマイクロコンピュータ20とを備えており、マイクロコンピュータ20から出力される制御信号EVFL〜EVR ,AVFL〜AVR 及びMRFL〜MRR が駆動回路22aFL〜22aR ,22bFL〜22bR 及び22cFL〜22cR を介してアクチュエータ6FL〜6Rに供給される。
【0014】
そして、前記マイクロコンピュータ20では、前記各車輪速度VwFL〜VwR を用いて例えば後述する図3の演算処理に従って最大車輪速度VwMAX 等から車体速度算出値としての推定車体速度VC を算出し、この推定車体速度VC に対して、例えば本出願人が先に提案した特開平8−324415号公報の図5の演算処理に従って車輪速度VwFL〜VwR からスリップ率SFL〜SR を算出すると共に、各車輪速度VwFL〜VwR の微分値として車輪加速度V'wFL〜V'wR を算出し(本実施形態では、車輪が減速するときの減速度は、負値の車輪加速度で表す)、これら車輪速度VwFL〜VwR ,車輪加速度V'wFL〜V'wR 及び基準スリップ率Si0を満足する目標車輪速度V* wに基づいてアクチュエータ6FL〜6Rに対する制御信号EVFL〜EVR ,AVFL〜AVR 及びMRFL〜MRR を出力する。また、これらと平行して、図4〜図7の演算処理を行い、路面の摩擦係数状態の判定を行う。
【0015】
次に、前記目標車輪速度V* wを設定するために必要な推定車体速度VC を算出するための演算処理について、図3のフローチャートに従って説明する。この図3の演算処理は、前述したアンチスキッド制御のためのホイールシリンダ増減圧制御演算処理と同じ所定サンプリング時間ΔT毎のタイマ割込として実行される。
【0016】
そして、この推定車体速度算出の演算処理では、まずステップS1で、推定車体速度算出カウンタnをインクリメントする。
次にステップS2に移行して、車体減速度算出カウンタqをインクリメントする。
次にステップS3に移行して、同ステップ内で行われる個別の演算処理に従って、前記車輪速度演算回路15FL〜15Rから読込まれた各車輪速度Vwi からセレクトハイ処理によってセレクトハイ車輪速度VwMAX を選出する。
【0017】
次にステップS4に移行して、同ステップ内で行われる個別の演算処理に従って、後述する図7の演算処理で算出される各車輪加速度V'wi から,前記ステップS3でセレクトハイ車輪速度VwMAX に選出された車輪の車輪加速度をセレクトハイ車輪加速度V'wMAX として選出する。
次にステップS5に移行して、前記ステップS4で選出されたセレクトハイ車輪加速度V'wMAX が,予め設定された負値の所定車輪加速度値V'w0 より小さいか否かを判定し、当該セレクトハイ車輪加速度V'wMAX が所定車輪加速度値V'w0 より小さい場合にはステップS6に移行し、そうでない場合にはステップS7に移行する。
【0018】
前記ステップS6では、分岐速度設定フラグFBRK が“0”のリセット状態であるか否かを判定し、当該分岐速度設定フラグFBRK がリセット状態である場合にはステップS8に移行し、そうでない場合には前記ステップS7に移行する。前記ステップS8では、前記ステップS3で選出されたセレクトハイ車輪速度VwMAX を分岐速度VC0に設定してからステップS9に移行する。
【0019】
前記ステップS9では、分岐速度設定フラグFBRK を“1”にセットすると共に、分岐カウンタmをインクリメントしてから前記ステップS7に移行する。
前記ステップS7では、前記分岐速度設定フラグFBRK が“1”のセット状態にあるか否かを判定し、当該分岐速度設定フラグFBRK がセット状態にある場合にはステップS10に移行し、そうでない場合にはステップS11に移行する。
【0020】
前記ステップS10では、低μ路面判定フラグFLOが“1”のセット状態であるか否かを判定し、当該低μ路面判定フラグFLOがセット状態である場合にはステップS12に移行し、そうでない場合にはステップS16に移行する。
前記ステップS12では、初回分岐フラグFINT が“0”のリセット状態であるか否かを判定し、当該初回分岐フラグFINT がリセット状態である場合には前記ステップS13に移行し、そうでない場合にはステップS14に移行する。
【0021】
前記ステップS13では、前記車体減速度算出カウンタqをクリアしてからステップS15に移行する。
前記ステップS15では、前記ステップS8で設定された分岐速度VC0を初回分岐速度VC00 に設定してからステップS16に移行する。
前記ステップS16では、例えば1.1G程度に設定された、予め実験値等から求めた減速度値からなる所定減速度値V'c0 を車体減速度V'cに設定してからステップS17に移行する。
【0022】
前記ステップS17では、前記初回分岐フラグFINT を“1”にセットしてからステップS18に移行する。
一方、前記ステップS14では、前記分岐カウンタmが“1”であるか否かを判定し、当該分岐カウンタmが“1”である場合にはステップS18に移行し、そうでない場合にはステップS26に移行する。
【0023】
前記ステップS26では、後述する図7の演算処理で求めた車体減速度V'cをそのまま車体減速度V'cに設定してから前記ステップS18に移行する。
また、前記ステップS11では、前記推定車体速度算出カウンタnをクリアしてから前記ステップS18に移行する。
そして、前記ステップS18では、同ステップ内で行われる個別の演算処理に従って、今回のアンチスキッド制御が終了可能であるか否かを判定し、終了可能である場合にはステップS19に移行し、そうでない場合にはステップS20に移行する。
【0024】
前記ステップS19では、前記初回分岐フラグFINT 及び分岐速度設定フラグFBRK を共に“0”にリセットすると共に、前記分岐速度VC0及び分岐カウンタmをクリアしてから前記ステップS20に移行する。
前記ステップ20では、下記1式に従って推定車体速度VC を算出設定する。
C =VC0ーV'c・n・ΔT ……… (1)
次にステップS21に移行して、前記分岐速度設定フラグFBRK が“1”のセット状態であるか否かを判定し、当該分岐速度設定フラグFBRK がセット状態である場合にはステップS22に移行し、そうでない場合にはステップS23に移行する。
【0025】
前記ステップS22では、前記ステップS20で算出された推定車体速度VC が前記ステップS3で選出されたセレクトハイ車輪速度VwMAX 以下であるか否かを判定し、当該推定車体速度VC がセレクトハイ車輪速度VwMAX 以下である場合にはステップS24に移行し、そうでない場合にはステップS25に移行する。
【0026】
前記ステップS24では、分岐速度設定フラグFBRK を“0”にリセットしてから前記ステップS23に移行する。
前記ステップS23では、前記前記ステップS3で選出されたセレクトハイ車輪速度VwMAX を推定車体速度VC に設定してからメインプログラムに復帰する。
【0027】
一方、前記ステップS25では、前記ステップS20で算出された推定車体速度VC をそのまま推定車体速度VC に設定してからメインプログラムに復帰する。
また、本実施形態のアンチスキッド制御装置による基本的なアンチスキッド制御は、前述した特開平8−324415号公報の図5の演算処理に従って行われる。
【0028】
次に、後述する図7の路面状態判定のために、前記アンチスキッド制御における減圧時間を検出する図4の演算処理について説明する。この演算処理も、前記図3の演算処理と同じ、所定サンプリング時間ΔT毎のタイマ割込として実行される。
この演算処理では、まずステップS31で、同ステップ内で行われる個別の演算処理に従って、該当するホイールシリンダ2FL〜2RRに対して、現在減圧制御中であるか否かを判定し、減圧中である場合にはステップS32に移行し、そうでない場合にはステップS33に移行する。
【0029】
前記ステップS32では、各アクチュエータ6FL〜6Rの減圧カウンタnDiをインクリメントしてからステップS34に移行する。
前記ステップS34では、同ステップ内で行われる個別の演算処理に従って、前記減圧カウンタnDiの値をマイクロコンピュータ20に更新記憶してからメインプログラムに復帰する。
【0030】
また、前記ステップS33では、同ステップ内で行われる個別の演算処理に従って、該当するホイールシリンダ2FL〜2RRに対して、現在増圧制御中(緩増圧制御中)であるか否かを判定し、増圧中である場合にはステップS35に移行し、そうでない場合にはメインプログラムに復帰する。
前記ステップS35では、前記減圧カウンタnDiをクリアしてからメインプログラムに復帰する。
【0031】
同様に、後述する図7の路面状態判定のために、前記アンチスキッド制御における増圧回数(微小ステップ増圧回数)を検出する図5の演算処理について説明する。この演算処理も、前記図3の演算処理と同じ、所定サンプリング時間ΔT毎のタイマ割込として実行される。
この演算処理では、まずステップS41で、同ステップ内で行われる個別の演算処理に従って、該当するホイールシリンダ2FL〜2RRに対して、直前のアンチスキッド制御によって緩増圧(微小ステップ増圧)制御が行われたか否かを判定し、緩増圧したときにはステップS42に移行し、そうでない場合にはステップS43に移行する。
【0032】
前記ステップS42では、各アクチュエータ6FL〜6Rの増圧カウンタnEiをインクリメントしてからステップS44に移行する。
前記ステップS44では、同ステップ内で行われる個別の演算処理に従って、前記増圧カウンタnEiの値をマイクロコンピュータ20に更新記憶してからメインプログラムに復帰する。
【0033】
また、前記ステップS43では、同ステップ内で行われる個別の演算処理に従って、該当するホイールシリンダ2FL〜2RRに対して、現在減圧中(減圧制御中)であるか否かを判定し、減圧中である場合にはステップS45に移行し、そうでない場合にはメインプログラムに復帰する。
前記ステップS45では、前記増圧カウンタnEiをクリアしてからメインプログラムに復帰する。
【0034】
同様に、後述する図7の路面状態判定のために、低μ路面で制動力が小さい状態を検出すべく、各スキッドサイクルにおける各車輪毎の車輪加速度V'wi の最大値、即ち最大車輪加速度V'wiMAXを更新記憶する図6の演算処理について説明する。この演算処理も、前記図3の演算処理と同じ、所定サンプリング時間ΔT毎のタイマ割込として実行される。但し、この最大車輪加速度V'wiMAX更新記憶の演算処理では、正値の車輪加速度V'wi のみを更新記憶の対象とする。
【0035】
この演算処理では、まずステップS51で、同ステップ内で行われる個別の演算処理に従って、該当するホイールシリンダ2FL〜2RRに対して、現在アンチスキッド制御中であるか否かを判定し、アンチスキッド制御中であるときにはステップS53に移行し、そうでない場合にはステップS52に移行する。
前記ステップS52では、各車輪の現在の車輪加速度V'wi がそれまでの最大車輪加速度V'wiMAX以上であるか否かを判定し、その車輪加速度V'wi がそれまでの最大車輪加速度V'wiMAX以上である場合にはステップS54に移行し、そうでない場合にはメインプログラムに復帰する。
【0036】
前記ステップS54では、各車輪の現在の車輪加速度V'wi を最大車輪加速度V'wiMAXに設定してからステップS55に移行する。
前記ステップS55では、同ステップ内で行われる個別の演算処理に従って、新たな最大車輪加速度V'wiMAXをマイクロコンピュータ20に更新記憶してからメインプログラムに復帰する。
【0037】
また、前記ステップS53では、当該車輪の最大車輪加速度V'wiMAXをクリアしてからメインプログラムに復帰する。
次に、路面状態判定のための図7の演算処理について説明する。この演算処理も、前記図3の演算処理と同じ、所定サンプリング時間ΔT毎のタイマ割込として実行される。なお、この演算処理で算出される車体減速度は、常時、絶対値でのみ算出される。
【0038】
この演算処理では、まずステップS58で、前記図3の演算処理で設定された初回分岐フラグFINT が“1”のセット状態であるか否かを判定し、当該初回分岐フラグFINT がセット状態である場合にはステップS59に移行し、そうでない場合にはステップS60に移行する。
前記ステップS59では、前記図3の演算処理で設定された分岐カウンタmが“1”であるか否かを判定し、当該分岐カウンタmが“1”である場合にはステップS61に移行し、そうでない場合には前記ステップS60に移行する。
【0039】
前記ステップS61では、前記図3の演算処理で設定された初回分岐速度VC00 、分岐速度VC0、車体減速度算出カウンタq、及び前記サンプリング時間ΔTを用いて、下記2式に従って、車体減速度V'cを算出してからステップS62に移行する。
V'c=|(VC00 ーVC0)/(q×ΔT)| ……… (2)
一方、前記ステップS60では、前記所定車体減速度値V'c0 を車体減速度V'cに設定してから前記ステップS62に移行する。
【0040】
前記ステップS62では、前記ステップS61で算出した車体減速度V'c、又は前記ステップS60で設定した車体減速度V'cが、例えば0.4G程度に設定された、所定車体減速度値V'cLO以下であるか否かを判定し、当該車体減速度V'cが所定車体減速度値V'cLO以下である場合にはステップS63に移行し、そうでない場合にはステップS70に移行する。
【0041】
前記ステップS63では、前記図5の演算処理で算出された前左輪の増圧カウンタnEFL が、例えば“5”程度に設定された所定増圧回数値nE0以上であるか否かを判定し、当該前左輪の増圧カウンタnEFL が所定増圧回数値nE0以上である場合にはステップS64に移行し、そうでない場合には前記ステップS70に移行する。
【0042】
前記ステップS64では、前記図5の演算処理で算出された前右輪の増圧カウンタnEFR が前記所定増圧回数値nE0以上であるか否かを判定し、当該前右輪の増圧カウンタnEFR が所定増圧回数値nE0以上である場合にはステップS65に移行し、そうでない場合には前記ステップS70に移行する。
前記ステップS65では、前記図4の演算処理で算出された前左輪の減圧カウンタnDFL が、例えば0.1秒程度に設定された所定減圧時間値nD0以下であるか否かを判定し、当該前左輪の減圧カウンタnDFL が所定減圧時間値nD0以下である場合にはステップS66に移行し、そうでない場合には前記ステップS70に移行する。
【0043】
前記ステップS66では、前記図4の演算処理で算出された前右輪の減圧カウンタnDFR が前記所定減圧時間値nD0以下であるか否かを判定し、当該前右輪の減圧カウンタnDFR が所定減圧時間値nD0以下である場合にはステップS67に移行し、そうでない場合には前記ステップS70に移行する。
前記ステップS67では、前記図6の演算処理で更新記憶された低μ路面低制動力を意味する前左輪の最大車輪加速度V'wFLMAX が、例えば5G程度に設定された所定最大車輪加速度値V'wHi以下であるか否かを判定し、当該前左輪の最大車輪加速度V'wFLMAX が所定最大車輪加速度値V'wHi以下である場合には前記ステップS70に移行し、そうでない場合にはステップS68に移行する。
【0044】
前記ステップS68では、前記図6の演算処理で更新記憶された低μ路面低制動力を意味する前右輪の最大車輪加速度V'wFRMAX が前記所定最大車輪加速度値V'wHi以下であるか否かを判定し、当該前右輪の最大車輪加速度V'wFRMAX が所定最大車輪加速度値V'wHi以下である場合には前記ステップS70に移行し、そうでない場合にはステップS69に移行する。
【0045】
前記ステップS69では、低μ路面判定フラグFLOを“0”にリセットしてからメインプログラムに復帰する。
また、前記ステップ70では、低μ路面判定フラグFLOを“1”にセットしてからメインプログラムに復帰する。
次に、前述した各種の演算処理の作用について、図8のタイミングチャートに従って説明する。なお、この図8のタイミングチャートは、低μ路面を走行中に極めて弱い力でブレーキペダルを踏込み、結果的に車輪がロックするかしないかのぎりぎりの制動力でアンチスキッド制御が開始された場合のシミュレートである。また、ここでは前記アンチスキッド制御によるホイールシリンダ増減圧制御の対象として非駆動輪である前左輪1FLの前左ホイールシリンダ圧PFLのみを示し、同時に前記セレクトハイ車輪速度VwMAX には、その前左輪速度VwFLが常に選出され続けたものとする。そこで、図8aには真の車体速度(以下、車体速度とのみ記す)VCR、目標車輪速度Vw* (=Si0・VC )の各経時変化を、同図bには前左輪車輪加速度V'wFL(=セレクトハイ車輪加速度V'wMAX )の経時変化を、同図cには前左アクチュエータ6FLの各バルブ駆動状態の経時変化を、同図dには前左ホイールシリンダ圧PFLの経時変化を、同図eには前左増圧カウンタnEFL の経時変化を、同図fには前左最大車輪加減速度V'wFLMAX の経時変化を、同図gには前左減圧カウンタnDFL の経時変化を、同図iには低μ路面判定フラグFLOの経時変化を夫々示す。また、前右輪1FRは、前左輪1FLと同様に変化し、それに対して同様のアンチスキッド制御が行われ、その制御内容に対して、前述したその他の演算処理が同様に行われたものとする。
【0046】
このシミュレーションでは、定速度直進走行状態から時刻t21でブレーキペダルが踏込まれ、これに伴ってマスタシリンダ圧PMCが次第に増圧し、前左アクチュエータ6FLは増圧状態に維持されていたために、前左ホイールシリンダ圧PFLも前記マスタシリンダ圧PMCと同様に増圧し、この前左ホイールシリンダ圧PFLの増圧に伴って、図8aに太い一点鎖線で示す前左輪速度VwFLは、次第に加速度が負の方向に小さくなりながら減速していった。そして、前左輪車輪加速度V'wFLが前記負値の所定車輪加速度値V'w0 より小さくなる時刻t22まで、前記セレクトハイ車輪速度VwMAX が推定車体速度VC に設定され続けた。
【0047】
また、この間、前記図4の減圧カウンタの演算処理は、常時、増圧状態であるため、同ステップS31からステップS33を経てステップS35に移行し、ここで前左減圧カウンタnDFL をクリアしてからメインプログラムに復帰するフローが繰り返される。また、前記図5の増圧カウンタの演算処理は、常時、増圧状態が維持されたままであるため、同ステップS41からステップS43を経てメインプログラムに復帰するフローが繰り返される。また、前記図6の最大車輪加速度更新の演算処理は、非アンチスキッド制御状態であるため、同ステップS51からステップS53を経てメインプログラムに復帰するフローが繰り返される。また、この間、前記初回分岐フラグFINT はリセットされたままであるため、図7の路面状態判定の演算処理では、同ステップS58からステップS60に移行し、ここで、車体減速度V'cは、例えば1.1G程度に設定された前記所定車体減速度値V'c0 に設定され続けるため、次のステップS62からステップS70に移行し、ここで低μ路面判定フラグFLOはセットされ、メインプログラムに復帰するフローが繰り返される。
【0048】
その後、前記時刻t22で、図3の演算処理により、セレクトハイ車輪速度VwMAX に選出されている前左輪速度VwFLが分岐速度VC0に設定され、車体減速度算出カウンタqがクリアされ、前記分岐速度VC0が初回分岐速度VC00 に設定され、例えば1.1G程度に設定された前記負値の所定減速度値V'c0 が車体減速度V'cに設定される。
【0049】
従って、この時刻t22以後,図3の演算処理では、前記分岐速度VC0(=VC00 )に、前記所定車体減速度値V'c0 (=1.1G)に設定された車体減速度V'cの時間積分値を減じた推定車体速度VC が算出され、この推定車体速度VC が最終出力値としての推定車体速度VC に設定されるフローが繰り返されるから、これ以後、推定車体速度VC は図8aに太い実線で示すように、また目標車輪速度Vw* は同図8aに太い二点鎖線で示すように、傾き一様で減速されながら設定され続けた。また、前左輪速度VwFLは、更に車輪加速度V'wFLが負の方向に小さくなって減速し続けた。また、車体減速度算出カウンタqは、この時刻t22から新たにインクリメントされる。
【0050】
なお、この間も、前記図4の減圧カウンタの演算処理、図5の増圧カウンタの演算処理、図6の最大車輪加速度更新の演算処理は、それまでと同じフローを繰り返すため、変化がない。また、図7の路面状態判定の演算処理では、前記初回分岐フラグFINT がセットされたため、同ステップS58からステップS59に移行するが、前記分岐カウンタmが“1”であるためにステップS60に移行し、ここで、今までと同様に、車体減速度V'cは前記所定車体減速度値V'c0 に設定され続けるため、次のステップS62からステップS70に移行し、ここで低μ路面判定フラグFLOはセットされ、メインプログラムに復帰するフローが繰り返される。
【0051】
そして、前左輪車輪加速度V'wFLが、時刻t23で負の加速度閾値α以下となったため、アクチュエータ6FL内のバルブは前記保持状態となり、その後もブレーキペダルの踏み増しに応じて増加するマスタシリンダ圧PMCに対して、前左ホイールシリンダ圧PFLは、当該時刻t23の値に保持された。但し、車輪がロックする化しないかのぎりぎりの制動力であるため、マスタシリンダ圧PMC自体は小さな値である。更に、時刻t24で当該前左輪速度VwFLは前記目標車輪速度Vw* を下回ったため、減圧モードが設定され、これに伴ってバルブ駆動状態も減圧状態となったため、前左ホイールシリンダ圧PFLは減圧され、これにより当該前左輪車輪加速度V'wFLは正の領域まで増加し、当該前左輪速度VwFLは加速されていった。更に、正の領域で増加する前左輪車輪加速度V'wFLは、時刻t25で正の加速度閾値βを上回ると保持モードが設定され、これに伴ってバルブ駆動状態も保持圧状態となったため、当該前左ホイールシリンダ圧PFLは、当該時刻t25の流体圧状態に維持され、これにより当該前左輪車輪加速度V'wFLは正の領域で小さくなり始めたが、当該前左輪速度VwFLは未だ加速し続けた。
【0052】
そして、この間、前記図4の減圧カウンタの演算処理は、前記減圧が開始される時刻t24以後、同ステップS32で前左減圧カウンタnDFL のインクリメントを行い、同ステップS34でその更新記憶を行うが、制動力が小さい、即ち元々前左ホイールシリンダ圧PFLが小さいため、制動力は、すぐに解放状態になってしまい、その結果、前左輪車輪加速度V'wFLは、比較的短時間後の前記時刻t25で前記正の加速度閾値βを上回ってしまい、その後は、同ステップS33からメインプログラムに復帰してしまうフローが繰り返された。これにより、更新記憶された前左減圧カウンタnDFL の値は小さなものであり、所定減圧時間値nD0を越えることはなかった。また、前記図5の増圧カウンタの演算処理は、前記減圧制御が継続された時刻t24から時刻t25まで、同ステップS41からステップS43を経てステップS45に移行し、ここで前左増圧カウンタnEFL をクリアするフローが繰り返されるが、その後は、やはりステップS41からステップS43を経てそのままメインプログラムに復帰するフローが繰り返される。
【0053】
また、前記図6の最大車輪加速度更新の演算処理は、前記減圧制御が開始される時刻t24以後、前左輪車輪加速度V'wFLは正値に転ずるが、時刻t25までは減圧制御であるためにステップS51からステップS53に移行して、最大車輪加速度V'wFLMAX をクリアし続け、時刻t25以後、最大車輪加速度V'wFLMAX の更新記憶を行う。その結果、更新記憶された前左輪最大車輪加速度V'wFLMAX は、例えば5G程度に設定された前記所定最大車輪加速度値V'wHiを上回ることはなかった。前述したように、この所定最大車輪加速度値V'wHiの5G程度という値は、路面μが高いときのアンチスキッド制御による減圧制御時にしか発生しないものである。そのため、路面μが低い、このシミュレーションでは、前左輪最大車輪加速度V'wFLMAX が前記所定最大車輪加速度値V'wHi以上となることはない。
【0054】
また、この間、図7の路面状態判定の演算処理では、前記時刻t23までと同様に、前記ステップS58からステップS59に移行するが、前記分岐カウンタmが“1”であるためにステップS60に移行し、ここで、今までと同様に、車体減速度V'cは前記所定車体減速度値V'c0 に設定され続けるため、次のステップS62からステップS70に移行し、ここで低μ路面判定フラグFLOはセットされ、メインプログラムに復帰するフローが繰り返される。
【0055】
その後、時刻t26で前左輪速度VwFLが推定車体速度VC 以上となったため、セレクトハイ車輪速度VwMAX に選出されている前左輪速度VwFLが最終的な出力値である推定車体速度VC に設定され、その後のサンプリング時間毎に、再び、セレクトハイ車輪加速度V'wMAX である前左輪車輪加速度V'wFLが前記所定車輪加速度値V'w0 未満となる時刻t29まで、セレクトハイ車輪速度VwMAX に選出されている前左輪速度VwFLを推定車体速度VC とするフローが繰り返され、目標車輪速度Vw* も、この推定車体速度VC (=VwFL)に応じた値が設定される。
【0056】
一方、前記時刻t25からの保持モードによって正の領域で小さくなり続ける前左輪速車輪加速度V'wFLは、前記時刻t26より遅い時刻t27で前記正値の所定加速度閾値βを下回ったため、緩増圧モードが設定され、これに伴って前左ホイールシリンダ圧PFLがステップ状に増圧された。これにより、前左輪速VwFLは、次第に減速度を大きくしながら減速し続け、その車輪加速度V'wFLは負の領域で傾きを大きくしながら減少し続けることとなった。
【0057】
また、前記時刻t27で増圧制御が開始されたため、これ以後、前記図4の減圧カウンタの演算処理は、同ステップS31からステップS33を経てステップS35に移行し、ここで前左減圧カウンタnDFL をクリアしてからメインプログラムに復帰するフローが繰り返される。但し、前左減圧カウンタnDFL の値はマイクロコンピュータ20に更新記憶されたままである。これに対して、前記図5の増圧カウンタの演算処理は、前記時刻t27以後、緩増圧制御に伴う微小ステップ増圧毎に、同ステップS41からステップS42に移行して前左増圧カウンタnEFL をインクリメントし、同ステップS44でマイクロコンピュータ20に更新記憶する。この前左増圧カウンタnEFL は、前記時刻t29よりも僅かに早い時刻t28で、前記所定増圧回数値nE0となり、その後もインクリメントされ続けた。これは、緩増圧制御における一回の微小ステップ増圧量が、マスタシリンダ圧PMCとそのときの前左ホイールシリンダ圧PFLとの差圧に比例しているためであり、このシミュレーションのようにマスタシリンダ圧PMCが低いと、緩増圧(微小ステップ増圧)を繰り返しても、前左ホイールシリンダ圧PFLが十分に昇圧せず、増圧回数だけが増加するのである。
【0058】
そして、前記時刻t29で前記図3の演算処理が実行されると、そのときの前左輪速度VwFLが分岐速度VC0に設定され、前記図7の演算処理で算出される車体減速度V'cをそのまま車体減速度V'cに設定し、その車体減速度V'cを用いて、同ステップS20で推定車体速度VC の算出がなされた。このときの図7で算出される車体減速度V'cは、前記初回分岐速度VCO0 が設定された前記時刻t22からインクリメントされ続けた車体減速度算出カウンタq(2) を用い、前記初回分岐速度VCO0 と今回の分岐速度VC0(2) との差分値を、この車体減速度算出カウンタq(2) とサンプリング時間ΔTとの積値(q(2) ・ΔT)、即ち前記初回分岐速度VCO0 が設定されてからの経過時間t22-29 で除して、その間の平均車体減速度(の絶対値)V'c(2) を車体減速度V'cに設定したものである。この場合も、算出される車体減速度V'cは車体速度VCRのそれに近く、結果的に前記例えば0.4G程度に設定された所定車体減速度値V'cLO以上となった。
【0059】
この算出される車体減速度V'cは正確な推定車体速度VC の算出には最適であり、特に車両が現在走行している低μ路面では、実際の車体減速度が様々であるため、正確なアンチスキッド制御のためには、この算出される車体減速度V'cを用いるのが望ましい。
ここで、前記図7の演算処理では、前記算出される車体減速度V'cが例えばー0.4G程度の所定車体減速度値V'cLO以下となった時刻t29で、ステップS62からステップS63に移行し、前記前左増圧カウンタnEFL が前記所定増圧回数値nE0以上であることからステップS64に移行し、同様に前記前右増圧カウンタnEFR が前記所定増圧回数値nE0以上であることからステップS65に移行し、前記前左減圧カウンタnDFL が前記所定減圧時間値nD0以下であることからステップS66に移行し、同様に前記前右減圧カウンタnDFR が前記所定減圧時間値nD0以下であることからステップS67に移行するが、前記前左輪最大車輪加速度V'wFLMAX が所定最大車輪加速度値V'wHi以下であること、及び前記前右輪最大車輪加速度V'wFRMAX が所定最大車輪加速度値V'wHi以下であることからステップS70に移行し、ここで前記低μ路面判定フラグFLOを“1”にセットしたままとする。
【0060】
そのため、この後も、前記図3の演算処理では、車体速度VCRのそれに近い当該車体減速度V'cを用いて、車体速度VCRに近似した推定車体速度VC が算出され、当該推定車体速度VC がそのまま最終的な推定車体速度VC に設定されるフローが繰り返される。そのため、この推定車体速度VC に基づく目標車輪速度Vw* は、実際の車体速度VCRに合わせて適切に設定され、前記アンチスキッド制御では、適切な時刻に減圧制御が開始されて、車輪のロックを確実に抑制することができる。
【0061】
その後、時刻t30で前左車輪加速度V'wFLが前記負値の加速度閾値αを下回って保持モードとなり、やがて時刻t31で前左輪速VwFLが目標車輪速度Vw* を下回って減圧モードになった。もし、前記図7のステップS67、ステップS68の最大車輪加速度V'wiMAXの判定がないと、低μ路面判定フラグFLOがリセットされてしまうので、推定車体速度VC は、例えば1.1G程度に設定された前記所定車体減速度値V'c0 を用いて算出されてしまう。図8aに、細い破線で、当該所定車体減速度値V'c0 を用いて算出された推定車体速度VC を示し、同じく細い二点鎖線で、その推定車体速度VC に基づく目標車輪速度Vw* を示した。これらから明らかなように、高μ路面に適した所定車体減速度値V'c0 を誤って用いた場合、前左輪速度VFLが目標車輪速度Vw* をなかなか下回らず、ロック傾向を回避できないばかりか、緩増圧回数が所定値以上になるとアンチスキッド制御が終了されてしまうため、場合によっては車輪がロックしたまま、アンチスキッド制御が終了してしまう恐れもある。これに対し、本実施形態では、こうした低μ路面低制動力時に、前記算出された車体減速度V'cを用いて推定車体速度VC が設定されるため、前左輪速VwFLが目標車輪速度Vw* を下回る時刻t31を適切に設定することができ、これにより車輪のロックを回避することができる。また、前記時刻t31以後も前左輪最大車輪加速度V'wFLMAX が所定最大車輪加速度値V'wHi以上となることはないので、前記低μ路面判定フラグFLOはリセットされたままとなり、その後も、前記図3の演算処理では、前記算出された車体減速度V'cを用いて推定車体速度VC が設定される。
【0062】
やがて、時刻t32で前左輪車輪加速度V'wFLは前記正値の加速度閾値βを上回って保持モードとなり、加速に転じた前左輪速度VwFLが時刻t13で前記推定車体速度VC 以上となったため、図3ではセレクトハイ車輪速度VwMAX に選出されている前左輪速度VwFLが最終的な出力値である推定車体速度VC に設定され、その後のサンプリング時間毎に、再び、最小車輪加速度V'wMAX である前左輪車輪加速度V'wFLが前記所定車輪加速度値V'w0 未満となる時刻t16まで、当該セレクトハイ車輪速度VwMAX に選出されている前左輪速度VwFLを推定車体速度VC とするフローが繰り返され、目標車輪速度Vw* も、この推定車体速度VC (=VwFL)に応じた値が設定される。
【0063】
その後、時刻t34で前左輪車輪加速度V'wFLが前記正値の加速度閾値βを下回ったため、緩増圧モードが開始され、それに伴って前記図5の演算処理では前左増圧カウンタnEFL のインクリメントとその更新記憶が行われる。そして、時刻t35で、前記インクリメントされる前左増圧カウンタnEFL は前記所定増圧回数値nE0以上となるが、前左輪最大車輪加速度V'wFLMAX が所定最大車輪加速度値V'wHi以上となることはないので、前記低μ路面判定フラグFLOはセットされたままとなる。
【0064】
従って、セレクトハイ車輪加速度V'wMAX である前左輪車輪加速度V'wFLが前記所定車輪加速度値V'w0 未満となる時刻t36でも、前記時刻t29と同様に、前記初回分岐速度VCO0 が設定された前記時刻t22からインクリメントされ続けた車体減速度算出カウンタq(3) を用い、前記初回分岐速度VCO0 と今回の分岐速度VC0(3) との差分値を、この車体減速度算出カウンタq(3) とサンプリング時間ΔTとの積値(q(3) ・ΔT)、即ち前記初回分岐速度VCO0 が設定されてからの経過時間t22-36 で除して、その間の平均車体減速度(の絶対値)V'c(3) を車体減速度V'cに設定し、この車体減速度V'cを用いて推定車体速度VC を算出すると共に、その後も、前記図3の演算処理では、前記算出された車体減速度V'cを用いて推定車体速度VC が設定される。そのため、前左輪速VwFLが目標車輪速度Vw* を下回って減圧制御に入るタイミングを適切に設定することができ、これにより車輪のロックを回避することができる。
【0065】
また、図8のタイミングチャートのように、低μ路面を走行中の、車輪がロックするかしないかのぎりぎりの制動力でアンチスキッド制御が開始され、途中から高μ路面に移行する、所謂μジャンプが発生した場合には、制動力自体が小さいため、各車輪のスリップ率Si (i=FL〜R)が基準スリップ率Si0を越えることがないので、減圧モードに入らず、その後、アンチスキッド制御が終了する。
【0066】
このように、本実施形態では、最大車輪加速度V'wiMAXが所定最大車輪加速度値V'wHi以下であることを用いて低μ路面低制動力を検出し、それにより低μ路面であることを判定するため、低μ路面低制動力時に、誤って高μ路面であると判定するのを回避することができ、例えば路面μに応じて、制御パラメータである車体減速度V'cを調整する場合に、それを低μ路面のそれに適切に設定することが可能となる。
【0067】
以上より、図7の演算処理のステップS61が本発明の車体減速度検出手段を構成し、以下同様に、図5の演算処理全体が増圧量又は増圧回数検出手段を構成し、図4の演算処理が減圧量又は減圧時間検出手段を構成し、図6の演算処理全体が車輪加速度検出手段を構成し、図7の演算処理のステップS62〜ステップ69が路面摩擦係数状態判定手段を構成している。
【0068】
なお、前記実施形態では、高μ路面である(低μ路面でない)と判定したときに、推定車体速度VC を算出するための車体減速度V'cを制御パラメータとして調整するものについて詳述したが、例えば特開平1−63452号公報に記載されるように、基準車輪速度を制御パラメータとし、高μ路であるときに、その基準車輪速度が直前のスキッドサイクル開始時の車輪速値に変更するようなものにも同様に適用可能である。
【0069】
また、前記増圧回数に代えて増圧量そのものを検出してもよいし、或いは減圧時間に代えて減圧量そのものを検出してもよい。また、低μ路面の判定を、前記車体減速度及び車輪加速度に加えて、増圧量又は増圧回数、減圧量又は減圧時間の何れか一方だけで行うようにすることも可能である。
また、前記実施例においては推定車体速度算出のための車輪速代表値としてセレクトハイ車輪速を選択する場合について説明したが、アンチスキッド制御中はセレクトハイ車輪速を選択し、非アンチスキッド制御中は最も低いセレクトロー車輪速を選択するようにしてもよい。
【0070】
また、前記実施形態においては、車体の減速度を推定車体速度から演算して検出しているが、前後加減速度センサや前後加減速度スイッチを設け、その検出値を用いてもよい。
また、前記実施例はコントロールユニットCRとしてマイクロコンピュータを適用した場合について説明したが、これに代えてカウンタ,比較器等の電子回路を組み合わせて構成することもできる。
【0071】
また、前記実施例においては後輪側の車輪速を共通の車輪速センサで検出する3センサ3チャンネルアンチスキッド制御装置の場合についてのみ詳述したが、これに限らず後輪側の左右輪についても個別に車輪速センサを設け、これに応じて左右のホイルシリンダに対して個別のアクチュエータを設ける,所謂4センサ4チャンネルのアンチスキッド制御装置にも展開可能である。
【0072】
また、本発明のアンチスキッド制御装置は,後輪駆動車,前輪駆動車,四輪駆動車等のあらゆる車両に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアンチスキッド制御装置の一例を示す車両概略構成図である。
【図2】図1のアクチュエータの一例を示す概略構成図である。
【図3】図1のコントロールユニットで実行される推定車体速度算出設定のための演算処理を示すフローチャートである。
【図4】図1のコントロールユニットで実行される減圧カウンタの演算処理を示すフローチャートである。
【図5】図1のコントロールユニットで実行される増圧カウンタの演算処理を示すフローチャートである。
【図6】図1のコントロールユニットで実行される最大車輪加速度更新記憶の演算処理を示すフローチャートである。
【図7】図1のコントロールユニットで実行される路面状態判定の演算処理を示すフローチャートである。
【図8】図7の演算処理の低μ路面における作用を説明するタイミングチャートである。
【符号の説明】
1FL〜1RRは車輪
2FL〜2RRはホイールシリンダ
3FL〜3Rは車輪速センサ
4はブレーキペダル
5はマスタシリンダ
6FL〜6Rはアクチュエータ
8は流入弁
9は流出弁
10はポンプ
15FL〜15Rは車輪速演算回路
20はマイクロコンピュータ
EGはエンジン
Tは変速機
DGはディファレンシャルギヤ
CRはコントロールユニット

Claims (1)

  1. 制動流体圧を増圧又は減圧又は保持して制動力を制御すると共に、路面の摩擦係数状態に応じて制御パラメータを調整するアンチスキッド制御装置において、車体の減速度を検出する車体減速度検出手段と、制動流体圧制御中の増圧量又は増圧回数を検出する増圧量又は増圧回数検出手段と、制動流体圧制御中の減圧量又は減圧時間を検出する減圧量又は減圧時間検出手段と、車輪の加速度を検出する車輪加速度検出手段と、前記車体減速度検出手段で検出された車体減速度が所定値以下であり、且つ前記増圧量又は増圧回数検出手段で検出された増圧量又は増圧回数が所定値以上であり、且つ前記減圧量又は減圧時間検出手段で検出された減圧量又は減圧時間が所定値以下であり、且つ非制動流体圧制御中に前記車輪加速度検出手段で検出された車輪加速度が所定値以下のとき、当該路面の摩擦係数状態が小さいと判定する路面摩擦係数状態判定手段とを備えたことを特徴とするアンチスキッド制御装置。
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