JP3885010B2 - インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクを吐出可能な記録ヘッドを用いて、被記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリンター、FAX、複写装置に装着されて、画像情報に基づいて紙やプラスチック薄板(OHP等)の被記録媒体に画像(文字や記号を含む)の記録を行う手段として、インクジェット記録装置は広く利用されている。
【0003】
図6は、インクジェット記録装置の要部の斜視図である。図6において、被記録媒体201は、記録領域に配置された被記録媒体送りローラ202により支持され、その送りローラ202がシート送りモーター203によって駆動されることにより、矢印αの副走査方向に搬送される。シート送りモーター203としては、ステッピングモーターやDCモーターが使用される。近年では、静粛性等の理由によりDCモーターが多く利用されている。その場合には、送りローラ202に図示しないローターリーエンコーダを設置し、そこから得られるエンコーダ信号に基づいてシート送りモーター203を制御する。送りローラ202の前方には、これと平行にシャフト204が設けられている。キャリッジ205は、このシャフト204に移動自在にガイドされ、キャリッジモーター206の出力によりベルト207を介して矢印βの主走査方向に往復移動される。シャフト204とキャリッジ205との間には、摩擦等による機械的負荷を減らすために、グリース等の潤滑油が塗られている。
【0004】
キャリッジモーター206としては、シート送りモーター203と同様に、ステッピングモーターやDCモーターが使用される。近年では、静粛性等の理由によりDCモーターが多く利用されている。その場合には、キャリッジ205上に図示しないリニアエンコーダを配置し、かつシャフト204と平行に図示しないリニアエンコーダスケールを配置する。そして、このリニアエンコーダから得られる信号に基づいて、キャリッジモーター206を制御する。また、このリニアエンコーダから得られる信号に基づいて、記録ヘッド208からインクを吐出するためのタイミングも生成する。
【0005】
記録ヘッド移動手段としてのキャリッジ205には、記録ヘッド208、および記録インクを収容するタンク209が搭載される。本例の記録ヘッドはカラー画像用であり、キャリッジ205の走査方向に沿って並ぶように、黒インク吐出用のヘッド208−BK、シアンインク吐出用のヘッド208−C、マゼンタインク吐出用のヘッド208−M、イエローインク吐出用のヘッド208−Yが配置される。また、タンク209として、ブラックインク(BK)用のタンク209−BK、シアンインク(C)用のタンク209−C、マゼンタインク(M)用のタンク209−M、イエローインク(Y)用のタンク209−Yが搭載されて、それぞれの色に対応したヘッドにインクを供給する。記録ヘッド209の前面、すなわち被記録媒体201の記録面と所定間隔(例えば0.8mm)を隔て対向する面には、インク吐出部が設けられている。インク吐出部には、キャリッジ205の走査方向と交差する方向に沿って、複数(例えば48個または64個)のインク吐出口が縦一列に配置されている。
【0006】
また、図示しない記録装置の制御回路(CPU、ASIC)やこれに併設されたROM,RAM等を含む制御部は、例えば、インターフェースを介して外部のホスト装置のコントローラーから記録モードの情報や記録データを受信する。そして、記録装置の制御部は、これらの情報や記録データに基づいて、記録装置における各種モーター等の駆動源などと共に、ヘッド駆動回路を介して記録ヘッド208を制御することにより、記録ヘッド208のインク吐出部からインクを吐出させて、被記録媒体201上に画像を記録する。すなわち、記録ヘッド208を主走査方向に移動させつつ、インク吐出部からインクを吐出させる動作と、被記録媒体201を副走査方向に所定量搬送させる動作と、を交互に繰り返すことにより、被記録媒体201上に画像を記録する。
【0007】
図7は、記録ヘッド208の移動速度と、被記録媒体201上におけるインク滴の着弾位置との関係の説明図である。
【0008】
記録ヘッド208がキャリッジ205に搭載されて、図中βの主走査方向に理想ヘッド速度Vで移動していると想定する。その場合、インク滴303が記録ヘッド208からインク吐出速度Vdで被記録媒体201に向かって吐出されたときに、そのインク滴303は、理想ヘッド速度Vとインク吐出速度Vdのベクトル合成の速度及び方向で飛んでいく。そして、そのインク滴303は、記録ヘッド208と被記録媒体201との間の距離dを移動して、被記録媒体201上の理想着弾位置306に着弾する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、記録スループットの向上のために、キャリッジ205の加速域、定速域、減速域の全ての移動領域にて記録動作を行いたい場合がある。また、キャリッジ205の定速域であっても、モーター206のコックリングやサーボ精度の影響によりキャリッジ205の移動速度に変動が生じ、結果的に、記録ヘッド208の移動速度(走査速度)が変動する状況下において、インク滴303を吐出する場合がある。
【0010】
このように、記録ヘッド208の移動速度が変化した場合には、インク滴303の飛ぶ方向と速度が変化し、結果として、被記録媒体201上における着弾位置が理想着弾位置306からずれてしまう。図7において、理想ヘッド速度Vよりも遅い速度Vsで記録ヘッド208が移動した場合には、その速度Vsとインク吐出速度Vdのベクトル合成の速度及び方向でインク滴303が飛翔する。その結果、記録ヘッド208が移動する図中β方向に関して、理想着弾位置306より手前の位置307に、インク滴303が着弾してしまう。一方、図7において、理想ヘッド速度Vよりも速い速度Vfで記録ヘッド208が移動した場合には、その速度Vfとインク吐出速度Vdのベクトル合成の速度及び方向でインク滴303が飛翔する。その結果、記録ヘッド208が移動する図中β方向に関して、理想着弾位置306を通り越した位置308に、インク滴303が着弾してしまう。
【0011】
このように、記録ヘッド208の移動速度が変動する状況下において、インク滴303を吐出した場合には、そのインク滴303の着弾位置がずれて、記録画像に乱れが生じてしまう。
【0012】
本発明の目的は、記録ヘッドの移動速度の変化に影響されることなく、高品位の画像を記録することができるインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェット記録装置は、インクを吐出可能な記録ヘッドを用い、前記記録ヘッドと被記録媒体とを相対移動させつつ、前記記録ヘッドからインクを吐出することによって、前記被記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドと前記被記録媒体とが一定量相対移動する毎にパルスを出力するエンコーダと、前記パルスの間隔時間を検出する検出手段と、前記記録ヘッドからインクを吐出させる駆動タイミングを調整可能な調整手段と、所定速度により前記記録ヘッドと前記被記録媒体とが相対移動した場合の前記パルスの間隔時間を基準間隔時間とし、前記検出手段によって検出される前記パルスの間隔時間と前記基準間隔時間との差の大きさに応じて、前記記録ヘッドの駆動タイミングの遅延時間を演算する演算手段と、前記演算手段によって演算された遅延時間に応じて、前記調整手段を制御する制御手段と、を備え前記所定速度は、前記所定速度は、前記記録ヘッドを搭載するキャリッジを走査させたときに達成される速度より速い速度であり、かつ前記遅延時間が前記検出手段によって検出される前記パルスの1周期の間隔を超えない速度であることを特徴とする。
【0014】
本発明のインクジェット記録方法は、インクを吐出可能な記録ヘッドを用い、前記記録ヘッドと被記録媒体とを相対移動させつつ、前記記録ヘッドからインクを吐出することによって、前記被記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法において、前記記録ヘッドと前記被記録媒体とが一定量相対移動する毎にパルスを出力するエンコーダを用い、所定速度により前記記録ヘッドと前記被記録媒体とが相対移動した場合の前記パルスの間隔時間を基準間隔時間とし、前記検出手段によって検出される前記パルスの間隔時間と前記基準間隔時間との差の大きさに応じて、前記記録ヘッドの駆動タイミングの遅延時間を演算し、前記遅延時間に応じて、前記記録ヘッドからインクを吐出させる駆動タイミングを調整するもので、前記所定速度は、前記記録ヘッドを搭載するキャリッジを走査させたときに達成される速度より速い速度であり、かつ前記遅延時間が前記検出手段によって検出される前記パルスの1周期の間隔を超えない速度であることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本例の記録装置の機械的な構成は、前述した図6の従来例と同様である。
【0016】
図1は、本例の記録装置のブロック構成図である。
【0017】
ホスト装置101から転送された記録データは、本例の記録装置における記録制御部102内のI/F部103にて受信されてから、記録データ生成部104に送られる。記録データ生成部104は、圧縮されたデータの伸張やデータ配列の変換等を行い、受信データを記録ヘッド208により記録可能な形式に変換する。記録ヘッド208としては、例えば、熱エネルギーを利用してインクを吐出する形式のインクジェット記録ヘッドを用いることができる。そのインクジェット記録ヘッドは、インク流路内に備えた電気熱変換体が発生する熱エネルギーにより、インク流路内のインクに膜沸騰を生じさせ、その発泡エネルギーによってインク吐出口からインク滴を吐出する。
【0018】
一方、キャリッジモーター206により駆動されるキャリッジ205には、記録ヘッド208と共に、エンコーダ109が実装される。そのエンコーダ109は、キャリッジ205が一定距離移動する毎にパルス信号を出力する。エンコーダ109により発生されたパルス信号は、記録制御部102内のLPF部110を通過してノイズが除去されてから、エッジトリガ生成部111に送られる。エッジトリガ生成部111は、受信したパルス信号における所定のエッジ(エンコーダエッジ)を検出してトリガパルスを発生する。エッジトリガ生成部111で生成されたトリガパルスは、速度検出部112、エッジトリガディレイ部113に送られる。速度検出部112は、エッジトリガ生成部111で生成されたトリガパルスの間隔を測定し、その値を現時点の速度情報としてディレイ値演算部114に転送する。また、速度検出部112にて検出された速度情報は、必要に応じて、キャリッジモーター206をサーボ制御する図示しないサーボコントローラーにも送られる。
【0019】
ディレイ値演算部114では、速度検出部112から送られてきた現在の速度情報等を使用して、後述するように、インク滴の着弾位置を補正するための着弾補正ディレイ値を演算する。エッジトリガディレイ部113は、ディレイ値演算部114にて演算された着弾補正ディレイ値にしたがって、エッジトリガ生成部111にて生成されたトリガパルスをディレイさせてから記録タイミング発生部115に出力する。記録タイミング発生部115は、エッジトリガディレイ部113から送られてきたトリガパルスから、それを記録解像度に変換した記録タイミング信号を生成して、記録データ転送部106と位置検出部116に送る。位置検出部116は、エッジトリガディレイ部113と記録タイミング発生部115から送られてきた信号をUP/DOWNカウンターでカウントすることにより、キャリッジ205の移動位置を検出する。位置検出部116にて検出された位置情報は記録位置検出部117に送られる。記録位置検出部117は、その位置情報から記録開始位置を検出したときに記録開始信号を発生し、また記録終了位置を検出したときに記録終了信号を発生して、これらの情報を記録データ転送部106に送る。記録データ転送部106は、記録データ生成部104にて生成された記録データを、記録タイミング発生部115及び記録位置検出部117からの情報にしたがって記録ヘッド208に転送する。記録ヘッド208は、記録データ転送部106から送られてきた情報に基づいて、インク滴303を被記録媒体201に向かって吐出する。
【0020】
図2は、エンコーダ109の発生信号(エンコーダ信号)の波形を示す。
【0021】
エンコーダ109の発生信号は、一般的なディジタルエンコーダ信号と同様に、A相401とB相402の2つの波形が位相で約90度ずれて出力され、キャリッジ205の移動方向に応じて、図2中左側の進み位相(正転)403、または同図中右側の遅れ位相(逆転)404となる。したがって、例えば、A相の片側エッジを検出点として、B相の固定レベル(図中ではLowレベル)時におけるA相の立上りエッジと立下りエッジの検出時点に、位置検出用のカウンターのUP/Down動作を切り換えることにより、キャリッジ205の移動位置を検出することができる。より具体的には、例えば、B相のLowレベル時において、A相の立ち上がりエッジを検出する毎に位置検出用のカウンターをカウントアップ動作させ、A相の立下りエッジを検出する毎に位置検出カウンターをカウントダウン動作させるべく、位置検出カウンターのUP/Down動作を切り換えることにより、その位置検出用のカウンターのカウント値からキャリッジ205の移動位置(記録ヘッド208の移動速度)を検出することができる。
【0022】
エッジトリガ生成部111は、図2のようなエンコーダパルスのエッジを検出してトリガパルスを生成し、速度検出部112は、そのトリガパルスの間隔(時間)(「エンコーダエッジ間隔(時間)」ともいう)を測定することにより、キャリッジ205の移動速度を検出する。
【0023】
図3は、ディレイ値演算部114の基本的な演算動作を説明するためのフローチャートである。
【0024】
図3において、t1は、現在のエンコーダエッジ間隔(時間)であり、キャリッジ205の現在速度(記録ヘッド208の現在速度)に対応する。t2は、想定される最高速度時のエンコーダエッジ間隔(時間)であり、キャリッジ205の最高速度(記録ヘッド208の最高速度)に対応する。Yは、(t1−t2)の演算結果であり、Aは(t3/t2)の値の定数である。そのt3は、記録ヘッド208から吐出されたインク滴303が被記録媒体201に着弾するまでに要する時間である。tは、ディレイ値演算部114の演算結果としての着弾補正ディレイ値である。
【0025】
ここで想定される最高速度とは、キャリッジを走査させたときに達成される速度よりも速い仮想の速度のことである。その最高速度は、キャリッジを走査させたときに達成される速度よりも速ければよいが、設定するこの最高速度が高くなるにつれて、ディレイ値が大きくなる。そのため、その最高速度があまり高すぎるとディレイ値がエンコーダ信号の1周期を超えるようになってしまい、次の周期までディレイ値を保持する回路等が必要となる。そのため、この最高速度は、キャリッジを走査させたときに達成される速度よりも速い速度であって、ディレイ値がエンコーダ信号の1周期を超えない範囲に設定することが望ましい。
【0026】
まず、演算開始後、ディレイ演算モードのON,OFFを確認し(S1)、そのモードがOFFならば演算を行わずに終了し、そのモードがONならば演算を開始する。ディレイ演算モードがONの場合、(t1−t2)を演算してYを求めてから(S2)、(Y×A)を演算して着弾補正ディレイ値tを求める(S3)。したがって、この図3における着弾補正ディレイ値tの演算式は、下式(1)となる。
t=(t1−t2)×A …(1)
【0027】
その値tは、キャリッジ205の現在速度が増大して、エンコーダエッジ間隔t1が小さくなるほど小さい値となり、逆に、キャリッジ205の現在速度が減少して、エンコーダエッジ間隔t1が大きくなるほど大きい値となる。
【0028】
図4は、ディレイ値演算部114のより具体的な演算動作を説明するためのフローチャートである。
【0029】
図4においては、図3における定数A(=t3/t2)の代わりに、2のべき乗の数Bを含む定数Cを用いる。すなわち、定数Cは、(A×B)の演算により予め固定値として設定しておく。したがって、C=A×B=(t3/t2)×Bであり、着弾補正ディレイ値tの演算式は下式(2)となる。
t={(t1−t2)×C}/B …(2)
【0030】
また、図4におけるY(n)は、Yを2進数表示したときのnビット目の値である。
【0031】
まず、演算開始(S501)後、ディレイ演算モードのON,OFFを確認し(S502)、そのモードがOFFならば演算を行わずに終了し、そのモードがONならば演算を開始する。ディレイ演算モードがONの場合、(t1−t2)を演算してYを求める(S503)。そのYのnビット目(初回はn=0)をbxとして認識し(S504)、また2進数表示のCの下位にn個(初回はn=0)の0を追加し、つまり2進数表示のCをnビットだけシフトして、その数値をC′とする(S505)。初回はn=0であるため、C=C′となる。その後、bxが1であるか否かを判定し(s506)、bx=1のときはYを(Y + C’)と補正し(S507)、bx=0のときはYの値をそのまま維持する。初回はbx=0であるため、Yの値がそのまま維持される。
【0032】
次に、nが{(Yのビット数)−1}を越えたか否かを判定し(S508)、否定判定のときは、nを(n+1)としてから(S509)、ステップS504に戻る。したがって、nが{(Yのビット数)−1}に達するまでステップS504〜S507の処理を繰り返すことになり、その繰り返し回数はYのビット数分となる。
【0033】
ステップS504〜S507の2回目の繰り返し時は、nが0から1となり、Yの1ビット目をbxとして認識し(S504)、また2進数表示のCの下位に1個の0を追加し、つまりCを1ビットだけシフトして、その数値をC′とする(S505)。しがたって、C′はCを2倍(×2)した値となる。その後、bxが1であるか否かを判定し(S506)、bx=1のときはYを(Y + C’)と補正し(S507)、bx=0のときはYの値をそのまま維持する。
【0034】
以下、同様に、ステップS504〜S507をYのビット数分だけ繰り返した後、nを0にリセット(S510)すると共に、(Y/B)を演算して着弾補正ディレイ値tを求める(S511)。Bは2のべき乗であるため、実際には、2進数表示におけるYをビットシフトによって下位ビットを切り捨てればよい。結果的に、着弾補正ディレイ値tは上式(2)によって求められることになる。
【0035】
以上のようにして、ディレイ値演算部114にて演算された着弾補正ディレイ値tは、エッジトリガディレイ部113(図1参照)に送られ、その着弾補正ディレイ値tに応じて記録タイミングが調整される。
【0036】
図5は、記録タイミングとインク滴の着弾位置との関係の説明図である。
【0037】
エッジトリガ生成部111(図1参照)は、エンコーダ信号601により、記録ヘッド208の位置管理用信号としてのエンコーダポジショントリガ602を発生する。高解像度の記録を行う場合には、エンコーダ信号の周期の1/2や1/4等の周期のトリガを発生させて記録を行う。例えば、エンコーダ信号の周期が300dpiの解像度に相当する場合、そのエンコーダ信号の1/2周期のトリガを用いた記録解像度は600dpiとなり、また、そのエンコーダ信号の1/4周期のトリガを用いた記録解像度は1200dpiとなる。図5においては、説明を簡素化する意味合いから、エンコーダ信号601の周期に相当する解像度の記録を実施するものとする。つまり、エンコーダポジショントリガ602の数と、エッジトリガディレイ部113が生成する記録タイミングトリガ603の数とが一致するものとする。
【0038】
ここで、インク滴303は、記録ヘッド208の移動速度(キャリッジ205の移動速度)の移動速度ベクトルとインク滴303の吐出速度ベクトルの合成ベクトル方向に飛んでいく。インク滴303の吐出速度がVdの記録ヘッド208の移動速度が理想速度Vのときに、エッジトリガディレイ部113は、ディレイ値Tdだけ遅らせて記録タイミングトリガAを発生させるものとする。この場合において、記録ヘッド208の現在速度が理想速度Vよりも速い速度Vfのときには、ディレイ値演算部114において演算される着弾補正ディレイ値tが小さくなるため、それに応じてディレイ値Tdが小さくなる。したがって、このときには、理想速度V時の記録タイミングトリガAよりも早いタイミングで記録タイミングトリガBが発生されることになる。一方、記録ヘッド208の現在速度が理想速度Vよりも遅い速度Vsのときには、ディレイ値演算部114において演算される着弾補正ディレイ値tが大きくなるため、それに応じてディレイ値Tdが大きくなる。したがって、このときには、理想速度V時の記録タイミングトリガAよりも遅いタイミングで記録タイミングトリガCが発生されることになる。
【0039】
このように、記録タイミングトリガ603の発生タイミングを制御することにより、記録ヘッド208の移動速度の変化に起因するインク滴303の着弾位置ずれが補正され、記録ヘッド208が理想速度で移動しているときのインク滴303の着弾位置613に対して、常にインク滴303を着弾させることが可能になる。ここで、記録ヘッド208の現在の移動速度(キャリッジ205の現在の移動速度)は、現在位置の1つ前の時点におけるエンコーダ信号601の周期T(図5参照)の逆数として演算する。
【0040】
(他の実施形態)
本発明においては、記録ヘッドが一方向に移動するときにのみ記録動作する片方向記録のみならず、記録ヘッドが双方向に移動するときに記録動作する双方向記録を実施することができる。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、記録ヘッドの移動速度に応じてインクの吐出タイミングを調整することにより、被記録媒体上における理想的な位置に、常にインクを着弾させることができ、この結果、記録ヘッドの移動速度の変化に影響されることなく高品位の画像を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録装置における制御系の要部のブロック構成図である。
【図2】図1におけるエンコーダの出力信号の説明図である。
【図3】図1におけるディレイ値演算部の基本的な演算動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】図1におけるディレイ値演算部のより具体的な演算動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】図1のインクジェット記録装置における記録タイミングとインク滴の着弾位置との関係の説明図である。
【図6】本発明を適用可能なインクジェット記録装置における機械的な構成部分の要部の斜視図である。
【図7】図6のインクジェット記録装置における記録ヘッドの移動速度とインク滴の着弾位置との関係の説明図である。
【符号の説明】
101 ホスト装置
109 エンコーダ
111 エッジトリガ生成部(エッジ検出部)
112 速度検出部
113 エッジトリガディレイ部
114 ディレイ値演算部
115 記録タイミング発生部
205 キャリッジ
206 キャリッジモーター
208 記録ヘッド
Claims (8)
- インクを吐出可能な記録ヘッドを用い、前記記録ヘッドと被記録媒体とを相対移動させつつ、前記記録ヘッドからインクを吐出することによって、前記被記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドと前記被記録媒体とが一定量相対移動する毎にパルスを出力するエンコーダと、
前記パルスの間隔時間を検出する検出手段と、
前記記録ヘッドからインクを吐出させる駆動タイミングを調整可能な調整手段と、
所定速度により前記記録ヘッドと前記被記録媒体とが相対移動した場合の前記パルスの間隔時間を基準間隔時間とし、前記検出手段によって検出される前記パルスの間隔時間と前記基準間隔時間との差の大きさに応じて、前記記録ヘッドの駆動タイミングの遅延時間を演算する演算手段と、
前記演算手段によって演算された遅延時間に応じて、前記調整手段を制御する制御手段と、を備え
前記所定速度は、前記記録ヘッドを搭載するキャリッジを走査させたときに達成される速度より速い速度であり、かつ前記遅延時間が前記検出手段によって検出される前記パルスの1周期の間隔を超えない速度であることを特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記検出手段は、前記パルスのエッジ間の時間を検出することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- 前記演算手段は、前記検出手段によって検出される前記パルスの間隔時間をt1、前記基準間隔時間をt2、前記記録ヘッドから吐出されたインクが前記被記録媒体に到達するまでの時間をt3としたときに、前記記録ヘッドの駆動タイミングの遅延時間tを下式により演算することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
A = t3 / t2
t = (t1 − t2) * A - 前記演算手段は、Bを2のべき乗として定数C(=A * B )を設定し、前記記録ヘッドの駆動タイミングの遅延時間tを下式により演算することを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
t = ((t1 − t2) * C )/B - 前記記録ヘッドを前記被記録媒体に対して相対的に往復移動させつつ、前記記録ヘッドからインクを吐出させて往復記録を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
- 前記記録ヘッドと前記被記録媒体とを主走査方向に相対的移動させる第1の移動手段と、
前記記録ヘッドと前記被記録媒体とを前記主走査方向と交差する副走査方向に相対移動させる第2の移動手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。 - 前記記録ヘッドは、インクの吐出に利用される熱エネルギーを発生する電気熱変換体を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
- インクを吐出可能な記録ヘッドを用い、前記記録ヘッドと被記録媒体とを相対移動させつつ、前記記録ヘッドからインクを吐出することによって、前記被記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法において、
前記記録ヘッドと前記被記録媒体とが一定量相対移動する毎にパルスを出力するエンコーダを用い、
所定速度により前記記録ヘッドと前記被記録媒体とが相対移動した場合の前記パルスの間隔時間を基準間隔時間とし、前記検出手段によって検出される前記パルスの間隔時間と前記基準間隔時間との差の大きさに応じて、前記記録ヘッドの駆動タイミングの遅延時間を演算し、
前記遅延時間に応じて、前記記録ヘッドからインクを吐出させる駆動タイミングを調整するもので、
前記所定速度は、前記記録ヘッドを搭載するキャリッジを走査させたときに達成される速度より速い速度であり、かつ前記遅延時間が前記検出手段によって検出される前記パルスの1周期の間隔を超えない速度であることを特徴とするインクジェット記録方法。
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