JP3884543B2 - ビニル樹脂系エマルジョン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はビニル樹脂系エマルジョンに関し、更に詳しくは長期の保存安定性及びエマルジョンの長期保存前後での生成塗膜の耐水接着強度の安定性に優れたビニル樹脂系エマルジョンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、(酢酸)ビニル樹脂系エマルジョンは、接着剤、塗料、繊維・織物の加工剤、紙・皮革の加工剤、各種材料のバインダー、セメント・モルタルの混和剤等の広範な用途に利用されている。
中でも、アセトアセチル化ポリビニルアルコール系樹脂を含有した(酢酸)ビニル樹脂系エマルジョンは、木工用接着剤として用いた場合に各種架橋剤の併用で、耐水性のさらなる向上が可能で、また、接着剤の切断時に刃物を傷めない等の利点があるため、上記の用途等に利用されている。
しかしながら、アセトアセチル化ポリビニルアルコール系樹脂を添加した場合には、エマルジョンの安定性が低下する(粘度の上昇、ゲルの発生等)ため、各種の添加剤の併用が試みられている。
例えば、特開平8−113687号公報には、水溶性有機アミンと水溶性のジヒドラジド化合物との併用が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明者が上記の水溶性のジヒドラジド化合物について詳細に検討を行ったところ、粘度上昇の制御が十分でなく、エマルジョンを長期保存後に接着剤として使用した場合、基材との接着力の低下の恐れがあることが判明し、長期の保存安定性及び生成塗膜の耐水接着力の保持に優れたビニル樹脂系エマルジョンが望まれるところである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記の事情に鑑みて、本発明者が鋭意研究した結果、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂及びヒドラジノ基を1個有するヒドラジド化合物を含有するビニル樹脂系エマルジョンが、夏季や冬季の高温時や低温時においても十分な安定性を発揮し、また長期保存後の皮膜強度や接着剤として用いたときの接着力等の維持が可能なエマルジョンであることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いるアセトアセチル化ポリビニルアルコール系樹脂(以下、AA化PVAと略記することがある)は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVAと略記することがある)とジケテンとを公知の方法で反応して得ることができ、例えばPVAを酢酸溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加する方法、PVAをジメチルホルムアミド、またはジオキサンなどの溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法である。またPVAにジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させてAA化PVAを得る方法やPVAのDMF、DMSO、酢酸エステル等の有機溶媒中に硫酸などの酸触媒を加えてアセト酢酸エステルをエステル交換させて、AA化PVAを得る方法等も採り得る。
【0006】
かかるAA化PVAの平均重合度は特に制限はないが、200〜3000が好ましく、更には400〜2600が好ましく、かかる平均重合度が200未満では後述する乳化剤としての保護コロイド力が得難く、乳化重合時の安定性に欠け、逆に3000を越えると乳化剤として使用した場合に得られるエマルジョン粘度が上昇して好ましくない。又、AA化PVAの原料PVAの平均ケン化度は68〜100モル%が好ましく、更には75〜100モル%、特に80〜100モル%の範囲が好ましく、かかる平均ケン化度が68モル%未満では得られるAA化PVAが水不溶性となって好ましくない。
更に、AA化PVAのアセトアセチル基の含有量(AA化度)は0.05〜15モル%が好ましく、更には1〜10モル%の範囲が好ましく、かかるAA化度が0.05モル%未満ではエマルジョンを塗膜にしたときの耐水性が低下する傾向にあり、逆に15モル%を越えると、エマルジョン粘度が高すぎたり、保存安定性が低下する傾向にあり好ましくない。
【0007】
また、本発明においては、かかるAA化PVAを単独で用いるのみならず、他のPVAを併用することも可能で、更にはケン化度等が異なる2種以上のAA化PVAを用いることも可能である。
かかるAA化PVAの含有量は、本発明のビニル樹脂系エマルジョンの全体に対し、0.1〜30重量%(更には1〜15重量%)の範囲から選択することが好ましく、かかる含有量が0.1重量%未満ではエマルジョンを塗膜にしたときの耐水性が低下し、逆に30重量%を越えるとエマルジョン粘度が高すぎたり、保存安定性が低下して好ましくない。
【0008】
上記の如きAA化PVAが含有される本発明の酢酸ビニル樹脂系エマルジョンは、通常ビニル化合物を乳化重合して得られるもので、かかるビニル化合物としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、エチレン、プロピレン、アセトアセチル基含有アクリルモノマーなどが挙げられ、これらの単独重合あるいは共重合あるいはブタジエン系等のジエン系モノマーとの共重合である。なかんずく酢酸ビニル単独あるいは酢酸ビニルを主体とした共重合が好適である。
【0009】
乳化重合触媒としてはラジカル発生剤、なかんずく水溶性触媒が好適なものとして用いられ、例えば過酸化水素等の過酸化物、酒石酸、ギ酸、シュウ酸等の還元剤、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二酸塩等の水溶性アゾビス、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の1種またはこれらの2種以上が用いられ、好適には過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸系の触媒が用いられる。
【0010】
またノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤等の各種界面活性剤もAA化PVAと併用しうる。さらに他の乳化剤、例えばセルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなど)、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸誘導体、(無水)マレイン酸−ビニルエーテル共重合体、(無水)マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アリルスルホン酸(塩)共重合体ケン化物なども適宜併用できる。
【0011】
本発明においては、上記の如きAA化PVAが含有されるビニル樹脂系エマルジョンに、更にヒドラジノ基を1個有するヒドラジド化合物を含有させることを最大の特徴とするもので、かかるヒドラジノ基を1個有するヒドラジド化合物としてはプロピオン酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ベンゾフェノンヒドラゾン等を挙げることができ、プロピオン酸ヒドラジドが好適に用いられる。
本発明においては、上記の如きAA化PVAが含有されるビニル樹脂系エマルジョンに、更にヒドラジノ基を1個有するヒドラジン化合物を含有させることを最大の特徴とするもので、かかるヒドラジノ基を1個有するヒドラジン化合物としてはヒドラジド化合物(プロピオン酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ベンゾフェノンヒドラゾン等)を挙げることができ、プロピオン酸ヒドラジドが好適に用いられる。
【0012】
かかるヒドラジノ基を1個有するヒドラジド化合物の含有量は、ビニル系エマルジョン中に0.05〜4重量%であることが好ましく、更には0.05〜2重量%で、かかる含有量が0.05重量%未満では、エマルジョンの保存安定性が低下し、逆に4重量%を越えるとエマルジョンの耐水性が若干低下して好ましくない。
また、かかるヒドラジノ基を1個有するヒドラジド化合物の添加方法については特に限定されず、重合中、重合後等いつでもよいが、より良好な皮膜の耐水性を得るためには重合後が好ましく、添加に際しては、固形状、水溶液状、水分散液状、アルコール溶液状等、特に限定されない。
【0013】
本発明では、更に、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、L−アスコルビン酸等の還元剤を含有させることも好ましく、かかる還元剤として具体的には亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸アンモニウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、L−アスコルビン酸等を挙げることができ、好適には重亜硫酸ナトリウムが用いられ、その含有量は0.05〜2重量%(更には0.1〜1重量%)であることが好ましく、かかる含有量が0.05重量%未満ではエマルジョンの保存安定性の向上があまり期待できず、逆に2重量%を越えると皮膜の耐水性や接着力が低下して好ましくない。
これらの還元剤の添加も、重合中または重合後のいずれでもよいが、重合後が好ましく、添加にあたっては固体状のままでもよいが、水溶液として添加することが好ましい。
【0014】
かくして、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂及びヒドラジノ基を1個有するヒドラジン化合物を含有した本発明の(酢酸)ビニル樹脂系エマルジョンが得られるわけであるが、本発明においては、かかるエマルジョン中のビニルモノマーの残存量を0.4重量%以下、更には0.3重量%以下、特に0.2重量%以下にしたり、かかるエマルジョンのpHを3〜8、更には4〜7にすることも好ましい。
【0015】
かかるエマルジョン中のビニルモノマーの残存量を0.4重量%以下にコントロールする方法としては、特に限定されないが、例えば、▲1▼上記の如き(酢酸)ビニル化合物の乳化重合時に、イソプロピルアルコールを共存させておき、更に重合触媒の滴下終了後にブチルアルコールを添加する方法、▲2▼AA化PVAを含有した(酢酸)ビニル樹脂系エマルジョン中の残留(酢酸)ビニルモノマーをケイ酸のアルカリ金属塩を添加する方法、▲3▼乳化重合時、特に重合終了直前に重合温度を(例えば80℃以上に)上げる方法等が挙げられるが、▲1▼や▲2▼が、工業的に有用で、かかる方法について、更に詳しく説明する。
【0016】
▲1▼の方法におけるイソプロピルアルコールの共存量は該ビニル化合物100重量部に対して、0.2〜2重量部(更には0.5〜1.5重量部)が好ましく、かかる添加量が0.2重量部未満では、該モノマー量の低減効果が十分でなく、逆に添加量が2重量部を越えるとエマルジョンの粘度安定性が低下して好ましくない。また、重合触媒の滴下終了後に添加するブチルアルコールの添加量は該ビニル化合物100重量部に対して、0.05〜0.3重量部(更には0.1〜0.2重量部)が好ましく、かかる添加量が0.05重量部未満では、該モノマー量の低減効果が十分でなく、逆に添加量が0.3重量部を越えても残存モノマーの低減に寄与しない。
【0017】
▲2▼の方法においては、ケイ酸ナトリウム(メタケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、二ケイ酸ナトリウム、四ケイ酸ナトリウム等)、ケイ酸カリウム(メタケイ酸カリウム、二ケイ酸水素カリウム等)、ケイ酸リチウム(メタケイ酸リチウム、オルトケイ酸リチウム等)、及びこれらの水化物を挙げることができ、好適にはケイ酸ナトリウムやケイ酸カリウム等のケイ酸のアルカリ金属塩を用いて、その含有(添加)量を0.01〜4重量%(更には0.02〜2重量%)にすればよく、かかる含有量が0.01重量%未満では残存モノマーの低減効果に乏しく、逆に4重量%を越えるとエマルジョンの安定性や皮膜強度が低下して好ましくない。
【0018】
また、かかるエマルジョンのpHのコントロール方法についても特に限定されず、例えば各種の有機・無機酸の金属塩やアミン類等を添加して調整すればよく、より具体的には、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸アルミニウム、酢酸マグネシウム、第2リン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等を該エマルジョン中に0.01〜5重量%(対エマルジョン)程度添加する(添加時期は重合中または重合後のいずれでもよく、特に限定されないが、重合率が90%以上の時点で添加することが好ましい)ことでコントロールすることができる。
【0019】
また、上記の重合においては、その他通常の乳化重合で用いられる種々の添加剤が使用でき、本発明においては、特にポリエチレングリコール、メルカプタン類(アルキルメルカプタン、芳香族メルカプタン)、スルフィド類(ジブチルジスルフィド、ジアセチルジスルフィド、ジエチルジチオグリコート)、窒素含有化合物(メチルシアノアセテート、ニトロメタン、ベンジルシアナイド)等の連鎖移動剤を用いることで、エマルジョンの安定性に対して有用で、その添加量はビニルモノマーに対して0.01〜5重量%が好ましく、更には0.02〜2重量%が好ましく、かかる添加量が0.01重量%未満ではエマルジョンの保存安定性が得られにくく、逆に5重量%を越えるとエマルジョンの皮膜の耐水性が低下して好ましくない。
【0020】
また、最低造膜温度等の調整のため、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルカルビトール等の可塑剤を添加してもよく、更にはエマルジョンの皮膜のさらなる耐水性向上のために、エマルジョンの基材への塗布直前にアジポイルジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド等の水溶性脂肪族ジヒドラジド類を添加したり、また、フェノール樹脂初期縮合物やレゾルシノール系初期縮合物を混合することにより変性酢酸ビニルエマルジョンとして取り扱うことも可能である。
上記の如くAA化PVAを乳化剤として、(酢酸)ビニル系化合物の重合時に共存させてAA化PVA含有の(酢酸)ビニル樹脂系エマルジョンを得ることは勿論、(酢酸)ビニル樹脂系エマルジョンにAA化PVAを後添加して本発明の(酢酸)ビニル樹脂系エマルジョンとすることも勿論可能である。
【0021】
かくして、得られた本発明の(酢酸)ビニル樹脂系エマルジョンは紙、木材、プラスチックス、繊維、壁紙などの接着剤、バインダー、コーティング剤、塗料として用いられ、特に木工接着や紙の接着の高速機械化、更に耐水性に優れているので、合板や耐水段ボール等の接着用途等に有用であり、また、木材等に塗工或いは含浸させて木材中のホルムアルデヒド類を補足する用途(接着剤、塗料、コーティング剤等)に用いることも有用である。
【0022】
【実施例】
次に実施例によって本発明をより具体的に説明する。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、特に断りのない限り重量基準を表す。
実施例1
酢酸ビニルモノマー10.8部と平均重合度1400,平均ケン化度99モル%,AA化度5.5モル%のAA化PVAの10%水溶液120部、0.6%酢酸ナトリウム水溶液10部、水37部、0.96%過硫酸アンモニウム水溶液5部を撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計を備えたセパラブルフラスコに仕込んで、撹拌しながらフラスコ内の温度を70℃にして1時間初期重合を行った。
次いで、更に酢酸ビニルモノマー97.2部を3時間かけて滴下すると共に、0.96%過硫酸アンモニウム水溶液5部添加し、更に1時間おきに同量の0.96%過硫酸アンモニウム水溶液を3回添加した。酢酸ビニルモノマー滴下終了1時間後に1%ハイドロキノン水溶液1部を添加して重合を終了させた。
最後に40%プロピオン酸ヒドラジド水分散液2部を添加して本発明の酢酸ビニル樹脂エマルジョンを得た。
得られた酢酸ビニル樹脂エマルジョンの残存酢酸ビニルモノマー量は0.4%で、重合率98.9%、pH2.5、粘度27000mPa・s(BH型回転粘度計、ローター回転数10rpm、25℃)であった。
上記の酢酸ビニル樹脂エマルジョンを用いて、下記の如く放置安定性及生成塗膜の耐水性の評価を行った。
【0023】
(放置安定性)
得られた酢酸ビニル樹脂エマルジョンを450mlのマヨネーズビンに密封して、70℃で7日放置後と室温で6ケ月放置後の粘度を測定し、放置前の粘度(上記と同方法)の何倍(放置後の粘度/放置前の粘度)になったかを調べた。
尚、粘度の測定はすべて25℃で行った。
(耐水接着力の安定性)
ラワン材(25mm×50mm、厚み10mm)の表面に得られた酢酸ビニルエマルジョンを100g/m2になるように塗布して、もう1枚のラワン材(同上)をそれぞれの半分の面積(25mm×25mm)が接着するように張り合わせ、10kg/cm2の力で20℃にて1時間圧着し、その後20℃、65%RHで48時間養生して試験体を作製した。
次いで、得られた試験体を4時間煮沸後、60℃で3時間乾燥して、20℃にて圧縮せん断接着強度を圧縮速度10mm/minで測定して、以下のとおり評価した。
尚、測定値は、n=10の平均値とし、また室温で6ケ月放置後の酢酸ビニルエマルジョンについても同様に評価を行った。
○ −−− 30kg/cm2以上
△ −−− 1〜30kg/cm2未満
× −−− 1kg/cm2未満または測定前に試験体に剥離が見られた
(低温安定性)
得られた酢酸ビニル樹脂エマルジョンを450mlのマヨネーズビンに密封して、0℃の恒温器に3時間放置して、取り出し直後の粘度を測定し、このエマルジョンを更に0℃の恒温器に1ケ月放置して、同様に粘度を測定して、1ケ月放置前の粘度の何倍(1ケ月放置後の粘度/3時間放置後の粘度)になったかを調べた。
【0024】
実施例2
実施例1において、更に40%亜硫酸水素ナトリウム水溶液2部を添加した以外は同様に行って、残存酢酸ビニルモノマー量0.4%、重合率98.9%、pH2.5、粘度26000mPa・s(同上)の酢酸ビニル樹脂エマルジョンを得て、同様に評価を行った。
【0025】
実施例3
実施例1において、更にプロピオン酸ヒドラジド水分散液と同時に10%ケイ酸ナトリウム水溶液を5部添加した以外は同様に行って、残存酢酸ビニルモノマー量0.3%、重合率99.1%、pH5.1、粘度25000mPa・s(同上)の酢酸ビニル樹脂エマルジョンを得て、同様に評価を行った。
【0026】
実施例4
実施例1において、40%プロピオン酸ヒドラジド水分散液の配合量を10部とした以外は同様に行って、残存酢酸ビニルモノマー量0.4%、重合率98.8%、pH3.4、粘度25000mPa・s(同上)の酢酸ビニル樹脂エマルジョンを得て、同様に評価を行った。
【0027】
実施例5
実施例1において、更にプロピオン酸ヒドラジド水分散液と同時に15%酢酸ナトリウム水溶液1部添加した以外は同様に行って、残存酢酸ビニルモノマー量0.4%、重合率98.9%、pH4.4、粘度26000mPa・s(同上)の酢酸ビニル樹脂エマルジョンを得て、同様に評価を行った。
【0028】
実施例6
予め酢酸ビニルモノマー108部とイソプロピルアルコール2部からなる混合液を用意しておき、かかる混合液11部、平均重合度1400,平均ケン化度99モル%,AA化度5.5モル%のAA化PVAの10%水溶液120部、0.6%酢酸ナトリウム水溶液10部、水37部、0.96%過硫酸アンモニウム水溶液5部を撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計を備えたセパラブルフラスコに仕込み、撹拌しながらフラスコ内の温度を70℃にして1時間初期重合を行った。
次いで、残りの混合液99部を3時間かけて滴下すると共に、0.96%過硫酸アンモニウム水溶液5部を添加し、更に1時間おきに同量の0.96%過硫酸アンモニウム水溶液を3回添加した。酢酸ビニルモノマー滴下終了と同時に、ブチルアルコール0.3部を添加し、1時間後に1%ハイドロキノン水溶液1部を添加して重合を終了させた。
最後に40%プロピオン酸ヒドラジド水分散液2部、15%酢酸ナトリウム水溶液1部を添加して酢酸ビニル樹脂エマルジョンを得た。
得られた酢酸ビニル樹脂エマルジョンの残存酢酸ビニルモノマー量は0.2%で、重合率99.4%、pH4.2、粘度25000mPa・s(同上)であった。
【0029】
実施例7
実施例6と同様に重合を始め、ブチルアルコール0.3部添加時に、15%酢酸ナトリウム水溶液1部を添加し(このときの重合率は96%、pHは4.7であった)、更に1時間後に重合を終了させ、次いで、40%プロピオン酸ヒドラジド水分散液2部を添加して、残存酢酸ビニルモノマー量は0.2%で、重合率99.4%、pH4.5、粘度23000mPa・s(同上)を得て、同様に評価を行った。
【0030】
実施例8
実施例6において、酢酸ナトリウム水溶液の代わりに30%炭酸ナトリウム水溶液を10部とした以外は同様に重合を行って、残存酢酸ビニルモノマー量0.2%、重合率99.4%、pH6.8、粘度24000mPa・s(同上)の酢酸ビニル樹脂エマルジョンを得て、同様に評価を行った。
【0031】
実施例9
実施例6において、最後に40%プロピオン酸ヒドラジド水分散液1部と40%亜硫酸水素ナトリウム水溶液1部を添加した以外は同様に行って、残存酢酸ビニルモノマー量0.2%、重合率99.4%、pH4.8、粘度23000mPa・s(同上)の酢酸ビニル樹脂エマルジョンを得て、同様に評価を行った。
【0032】
比較例1
実施例1において、40%プロピオン酸ヒドラジド水分散液を無添加とした以外は同様に行って、残存酢酸ビニルモノマー量0.4%、重合率98.9%、pH2.5、粘度27000mPa・s(同上)の酢酸ビニル樹脂エマルジョンを得て、同様に評価を行った。
【0033】
比較例2
実施例1において、40%プロピオン酸ヒドラジド水分散液に変えて40%アジピン酸ジヒドラジド水分散液2部を添加した以外は同様に行って、残存酢酸ビニルモノマー量0.4%、重合率98.9%、pH2.6、粘度27000mPa・s(同上)の酢酸ビニル樹脂エマルジョンを得て、同様に評価を行った。
実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明の(酢酸)ビニル樹脂系エマルジョンは、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂及びヒドラジノ基を1個有するヒドラジン化合物を含有しているため、放置(保存)安定性やエマルジョンの長期保存前後での生成塗膜の耐水性接着強度の安定性等に優れ、特に耐水/耐熱水性を必要とされる木工用接着剤や紙管用接着剤等の用途に有用である。
Claims (5)
- アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂及びヒドラジノ基を1個有するヒドラジド化合物を含有することを特徴とするビニル樹脂系エマルジョン。
- ヒドラジノ基を1個有するヒドラジド化合物の含有量が0.05〜4重量%であることを特徴とする請求項1記載のビニル樹脂系エマルジョン。
- 更に、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、L−アスコルビン酸から選ばれる少なくとも1種の還元剤を含有することを特徴とする請求項1または2記載のビニル樹脂系エマルジョン。
- 還元剤の含有量が0.05〜2重量%であることを特徴とする請求項3記載のビニル樹脂系エマルジョン。
- pHが3〜8であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のビニル樹脂系エマルジョン。
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