JP3882256B2 - 記録液、インクジェット記録方法、及び記録液用色素 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は記録液に関するものである。詳しくはインクジェット記録に適した記録液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
直接染料や酸性染料等の水溶性染料を含む記録液の液滴を微小な吐出オリフィスから飛翔させて記録を行う、いわゆるインクジェット記録方法が実用化されている。
この記録液に関しては、電子写真用紙のPPC(プレイン ペーパー コピア)用紙、ファンホールド紙(コンピューター等の連続用紙)等の一般事務用に汎用される記録紙に対する定着が速く、しかも印字物の印字品位が良好であること、即ち印字ににじみがなく輪郭がはっきりしていることが要求されると共に、記録液としての保存時の安定性も優れていることが必要であり、従って使用できる溶剤が著しく制限される。
【0003】
一方、記録液用の染料に関しては、上記のような限られた溶剤に対して充分な溶解性を有すると共に、記録液として長期間保存した場合にも安定であり、また印字された画像の濃度が高く、しかも耐水性、耐光性に優れていること等が要求されるが、これ等の多くの要求を同時に満足させることは困難であった。
このため種々の方法(例えば特開昭59−8775、特開昭59−226072、特開昭60−94477、特開昭61−2771、特開昭61−101572、特開平4−233975、特開平7−126560、特開平7−316446)が提案されているが市場の要求を充分に満足するには至っていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、インクジェット記録用、筆記用具用等として、普通紙に記録した場合にも印字品位が良好であると共に、記録画像の濃度が高く、耐光性や耐水性及び記録画像の色調に優れており、長期間保存した場合の安定性が良好であるイエロー色の記録液を提供することを目的とするものである。
【0005】
特に、従来より記録液に使用するイエロー色素においては、耐水性が良好であり、かつ被記録材が主にパルプ抄造紙であるので、セルロースに対する親和力が高い、すなわち直接性の高い市販の染料(例えば硫化染料、アゾイック染料等)は色調が不鮮明であり、逆に色調の鮮明な酸性染料は、耐水性が劣ることから、色調と耐水性の両者を満足するイエロー色素の開発が望まれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、記録液成分として特定の色素を使用した場合に、総合的にバランスした性能を有すること、特に色調と耐水性の両者をバランスして備えた記録液がえられ、上記の目的が達成されることを確認し、本発明を達成したものである。即ち本発明の要旨は、遊離酸の形が下記一般式(I)で表される色素及び下記一般式(II)で示される色素から選ばれる少なくとも1種の色素と水性媒体を含有することを特徴とする記録液に存する。
【0007】
【化8】
【0008】
[式中、A1 、A2 は−SO3 H基で置換されていても良いフェニル基、又はナフチル基を表わし、R1 、R2 、R3 及びR4 は各々独立に、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜4のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1〜4のアルコキシ基、−NHCOR5 基(但し、R5 は−NH2 又は炭素数1〜4のアルキル基を表わす。)、ハロゲン原子、および−CN基から選ばれる基を表わし、X1 及びX2 は夫々独立に−NR6 R7 基又は−OR8 基(但し、R6 、R7 及びR8 は、各々独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜3のアルケニル基、アリール基、アラルキル基、シクロヘキシル基、または含窒素複素環基を表わし、これらのうち水素原子以外は置換基を有していてもよく、また、R6 及びR7 は結合される窒素原子と共に5〜6員環を形成していてもよい。)を表わし、
Y1 は下記一般式(III)〜(VII)のいずれか1つで示される二価の結合基を示す。]
【0009】
【化9】
【0010】
(式中、B1 及びB2 は各々独立に下記の一般式(II−a)又は(II−b)
【0011】
【化10】
【0012】
(式(II−a)中、R16は炭素数1〜4のアルキル基を表わし、R17は水素原子、−CN基、−CONH2 基、又は−COOH基を表わし、R18は水素原子、あるいは、置換又は未置換の炭素数1〜4のアルキル基を表わす。)
【0013】
【化11】
【0014】
(式(II−b)中、R19は水素原子、メチル基又は−COOH基を表わし、R20、R21及びR22は各々独立に水素原子、−SO3 H基、塩素原子又はメチル基を表わす。)
で示される基を表わし、R9 、R10、R11及びR12は各々独立に水素原子、−SO3 H基又は−COOH基を表わし、X3 及びX4 は各々独立に−NR13R14基又は−OR15基、
(但し、R13、R14及びR15は、それぞれ水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜3のアルケニル基、アリール基、アラルキル基、シクロヘキシル基、または含窒素複素環基を表わし、これらのうち水素原子以外は置換基を有していてもよく、また、R13及びR14は結合される窒素原子と共に5〜6員環を形成していてもよい。)を表わし、
Y2 は下記一般式(III)〜(VII)のいずれか1つで示される二価の結合基を示し、nは0または1を表わす。]
【0015】
【化12】
【0016】
(式(III)中、a及びbはそれぞれ0〜6の数を表わし、cは0又は1を表わす。)
【0017】
【化13】
【0018】
(式(IV)中、V,Wはそれぞれ水素原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基を表わす。)
【0019】
【化14】
【0020】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明で使用される色素は、遊離酸の形が前記一般式(I)で示される色素及び一般式(II)で表される色素から選ばれるものである。
前記一般式(I)において、A1 及びA2 で表わされる基としては、フェニル基又は2−ナフチル基が好ましく、それぞれ少なくとも1つの−SO3 H基で置換されていることがより好ましい。
【0021】
R1 、R2 、R3 及びR4 で表わされる置換基としては、各々独立に、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、トリフロロメチル基等)、置換もしくは非置換の炭素数1〜4のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基等)、−NHCOR5 基(例えば、−NHCONH2 基、−NHCOCH3 基、−NHCOC3 H7 (i)等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)及び−CN基から選ばれる基を表わす。
【0022】
X1 及びX2 は夫々独立に−NR6 R7 基又は−OR8 基を表わし、R6 、R7 及びR8 としては、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜8のアルキル基(例えば、メチル基、カルボキシメチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基、ヒドロキシエチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等)、置換もしくは非置換の炭素数1〜3のアルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基(例えば、フェニル基、4−ニトロフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−カルボキシフェニル基等)、置換もしくは非置換の炭素数7〜20のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基等)、置換もしくは非置換のシクロヘキシル基、又は置換もしくは非置換の5〜6員の含窒素複素環基(例えば、ピリジル基等)等が挙げられる。また、R6 及びR7 は結合される窒素原子と共に5員環または6員環を形成していてもよく、具体的には−NR6 R7 として、ピロリジノ基、ピペリジノ基、3,5−ジメチルピペリジノ基、モルホリノ基、4−メチルピペラジニル基等が挙げられる。
【0023】
前記式(I)で示される色素は、分子全体として−SO3 H基を2個〜8個有していることが好ましく、2個〜6個有していることがより好ましい。
また、前記式(I)で示される色素の中でも、遊離酸の形が下記の式(VIII)で示されるような、連結基Y1 を介して左右対称の構造の色素が好ましく使用される。この色素は、色調、耐水性、実用性の面で好ましい。
【0024】
【化15】
【0025】
(式中、A1 、R1 、R2 、X1 及びY1 は前記式(I)と同義である)
前記式(II)において、B1 及びB2 は各々独立に式(II−a)又は(II−b)を表わし、式(II−a)において、R16は炭素数1〜4のアルキル基(例えばメチル基等)を表わし、R17は水素原子、−CN基、−CONH2 基、−COOH基を表わし、R18は水素原子、置換あるいは未置換の炭素数1〜4のアルキル基(例えばメチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ヒドロキシエチル基等)を表わす。
【0026】
R13、R14及びR15としては、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜8のアルキル基(例えば、メチル基、カルボキシメチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基、ヒドロキシエチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等のアルキル基)、置換もしくは非置換の炭素数1〜3のアルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基(例えば、フェニル基、4−ニトロフェニル基、3−スルホフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−カルボキシフェニル基等)、置換もしくは非置換の炭素数7〜20のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基等)、置換もしくは非置換のシクロヘキシル基又は置換もしくは非置換の5〜6員の含窒素複素環基(例えば、ピリジル基等)等が挙げられる。
【0027】
R13及びR14は結合される窒素原子と共に5員環または6員環を形成していてもよく、具体的には−NR13R14としてピロリジノ基、ピペリジノ基、3,5−ジメチルピペリジノ基、モルホリノ基、4−メチル−ピペラジニル基等が挙げられる。
前記一般式(II)で示される色素は、分子全体として−SO3 H基を2〜8個有していることが好ましく、2〜6個がより好ましい。
【0028】
本発明で使用される色素は、前記一般式(I)又は(II)で示される遊離酸型のまま使用してもよいが、製造時塩型で得られた場合はそのまま使用してもよいし、所望の塩型に変換してもよい。また酸基の一部が塩型のものであってもよく、塩型の色素と遊離酸型の色素が混在していてもよい。このような塩型の例としてはNa,Li,K等のアルカリ金属の塩、アルキル基、ヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、有機アミンの塩があげられる。有機アミンの例としては、低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換低級アルキルアミン、カルボキシ置換低級アルキルアミン及び炭素数2〜4のアルキレンイミン単位を2〜10個有するポリアミン等があげられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していてもよい。
【0029】
また、本発明で使用する色素の構造において、その1分子中に酸基が複数個含まれる場合は、その複数の酸基は塩型あるいは酸型であり、互いに異なるものであってもよい。
これ等の色素の具体例としては、例えば以下のI−(1)〜I−(10)及びII−(1)〜II−(20)に示す構造の色素が挙げられる。
【0030】
【化16】
【0031】
【化17】
【0032】
【化18】
【0033】
【化19】
【0034】
【化20】
【0035】
【化21】
【0036】
【化22】
【0037】
【化23】
【0038】
【化24】
【0039】
【化25】
【0040】
一般式(I)又は(II)で示される色素は、それ自体周知の方法に従って製造することができる。
例えば前記I−(1)で示される色素は(A)〜(B)の工程で製造できる。(A)3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸(C酸)とm−トルイジンとから常法[例えば細田豊著「新染料化学」(昭和48年12月21日技報堂発行)第396〜409頁参照]に従って、ジアゾ化カップリング工程を経てモノアゾ化合物を製造する。
【0041】
(B)得られたモノアゾ化合物を塩化シアヌル懸濁液にpH4〜6、温度0〜5℃を保持しながら加えて数時間反応を行う。次いで室温にて弱アルカリ性で1,4−ビスアミノプロピルピペラジンをモノアゾ化合物に対して0.5モル比加えて数時間縮合反応を行う。
【0042】
次いで25%水酸化ナトリウム水溶液を50〜60℃に加え、加水分解反応を行った後、冷却して、塩化ナトリウムで塩析することにより、目的の染料を得る。
記録液中における前記一般式(I)の色素あるいは前記一般式(II)の色素の含有量としては、合計で記録液全量に対して0.5〜5重量%、特に2〜4重量%程度が好ましい。
【0043】
本発明の記録液に用いられる水性媒体としては、水及び水溶性有機溶剤が用いられ、水溶性有機溶剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量190〜400)、グリセリン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、チオジエタノール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、2−ピロリドン、スルホラン、エチルアルコール、イソプロパノール等を含有しているのが好ましい。これ等の水溶性有機溶剤は、通常記録液の全量中の1〜50重量%の量で使用される。一方、水は記録液の全量中の45〜95重量%の量使用される。
【0044】
本発明の記録液に、その全量中、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%の尿素、チオ尿素、ビウレット、セミカルバジドから選ばれる化合物を含有させたり、又0.001〜5.0重量%の界面活性剤を含有させたりすることによって、印字後の速乾性及び印字品位をより一層改良することができる。
【0045】
【実施例】
以下、本発明を実施例について更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれ等の実施例に限定されるものではない。
【0046】
[実施例1]
ジエチレングリコール10重量部、イソプロピルアルコール3重量部、前記I−(1)の色素3重量部に水を加え、アンモニア水でpHを9に調整して全量を100重量部とした。
この組成物を充分に混合して溶解し、孔径1μmのテフロンフィルターで加圧濾過した後、真空ポンプ及び超音波洗浄機で脱気処理して記録液を調製した。
【0047】
得られた記録液を使用し、インクジェットプリンター(商品名HG−3000、エプソン社製品)を用いて電子写真用紙にインクジェット記録を行い、鮮明な色調のイエロー色印字物を得た。また下記に(a),(b)及び(c)の方法による諸評価を行った結果を示す。
【0048】
(a)記録画像の耐光性:
キセノンフェードメーター(スガ試験機社製品)を用い、記録紙に100時間照射したが、照射後の変退色は小さかった。
(b)記録画像の耐水性:
(1)試験方法
水道水中に記録画像を5分間浸漬したのち、
▲1▼目視にて画像の滲みを調べた。
▲2▼浸漬前後のベタ印字部分のOD値をマクベス濃度計(TR927)にて測定した。
【0049】
(2)試験結果
上記▲1▼の結果画像のにじみはわずかであった。
また上記▲2▼の浸漬前後のベタ印字部分の濃度変化を下記式によるOD残存率で示すと、94.2%であった。
(c)記録液の保存安定性:
記録液をテフロン容器に密閉し、5℃及び60℃で1ケ月間保存した後の変化を調べたところ、不溶物の析出は認められなかった。
【0050】
【数1】
【0051】
[実施例2]
グリセリン5重量部、エチレングリコール10重量部、前記II−(1)の色素2.5重量部に水を加え、水酸化リチウム水溶液でpHを9に調整して全量を100重量部とし、この組成物を実施例1に記載の方法により処理して記録液を調製した。この記録液を用いて、実施例1と同様に印字を行った結果、鮮明な色調のイエロー色記録物を得た。またこの記録物に対し、実施例1の(a)〜(c)による諸評価を行った。その結果、実施例1と同様に何れも良好な結果が得られた。
またOD残存率は84.5%であった。
【0052】
[実施例3]
ジエチレングリコール10重量部、N−メチルピロリドン5重量部、イソプロピルアルコール3重量部、前記II−(16)の色素3重量部に水を加え、アンモニア水でpHを9に調整して全量を100重量部とし、この組成物を実施例1に記載の方法により処理して記録液を調製した。この記録液を用いて、実施例1と同様に印字を行った結果、鮮明な色調のイエロー色記録物を得た。またこの記録物に対し、実施例1の(a)〜(c)による諸評価を行った。その結果、実施例1と同様に何れも良好な結果が得られた。
またOD残存率は86.3%であった。
【0053】
[実施例4〜27]
実施例1において用いた前記I−(1)の色素の代わりに、前記I−(2)〜I−(10),II−(2)〜II−(15),II−(17)〜II−(20)の色素をそれぞれ使用した以外は、実施例1の方法により記録液を調製し、印字を行い、この記録物に対して実施例1の(a)〜(c)による諸評価を行った。その結果、実施例1と同様に何れも良好な結果を得た。
またI−(2)の色素を用いた場合のOD残存率は86.1%であり、I−(3)の色素を用いた場合は80.2%であった。
【0054】
【発明の効果】
本発明の記録液は、インクジェット記録用、筆記用具用として用いられ、普通紙に記録した場合、鮮明なイエロー色系の記録物を得ることができ、その印字濃度、耐光性及び耐水性が優れている他、記録液としての保存安定性も良好である。
Claims (4)
- 遊離酸の形が下記一般式(I)で示される色素及び下記一般式(II)で示される色素から選ばれる少なくとも1種の色素と水性媒体を含有する記録液。
Y 1 は下記一般式(III)〜(VII)のいずれか1つで示される二価の結合基を示す。]
Y2 は下記一般式(III)〜(VII)のいずれか1つで示される二価の結合基を示し、nは0または1を表わす。]
- インクジェット記録用である請求項1に記載の記録液。
- 請求項2に記載の記録液を用いるインクジェット記録方法。
- 遊離酸の形が下記一般式(I)又は下記一般式(II)で示される記録液用色素。
Y1 は下記一般式(III)〜(VII)のいずれか1つで示される二価の結合基を示す。]
Y2 は下記一般式(III)〜(VII)のいずれか1つで示される二価の結合基を示し、nは0または1を表わす。]
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