JP3881100B2 - 一方向クラッチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、一方向クラッチの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、一方向クラッチとして、図7に記載の構成のものが知られている。図7における一方向クラッチは、内輪70と、この内輪70側に延びるように固定されたスナップリング80を有する外輪71と、内輪70と外輪71間に周方向に所定間隔をあけて配置されるスプラグ72と、円筒状を成すとともに周方向に形成されたポケット73a,74aによって上記スプラグ72を上記所定間隔に保持する内側保持器74および外側保持器73と、上記内外保持器74,73間に配置され上記スプラグ72を上記内輪70と外輪71とに対して噛み合い方向に付勢するスプリング75とを有している。
【0003】
また、上記外側保持器73の上記スナップリング80側端部には、半径方向外側に向かって所定量だけ折り曲げて成る鍔部77を有している。
そして、図8に示すように、上記外側保持器73における任意の隣接するポケット73aの鍔部77を切除し、上記一対のポケット77aを開放してTバー78を形成している。さらに、このTバー78の箇所を外側に押し広げて鍔部79とし、外側保持器73の中心からTバー78の鍔部79の端面までの距離をこの外側保持器73が装着される外輪71の内周面の半径より大きくすることにより、固定用鍔部79が形成されている。こうして、Tバー78の固定用鍔部79の外周面を外輪71に押し付けて外側保持器73を外輪71に対して固定するのである。
【0004】
さらに、上記スナップリング80と外側保持器73の鍔部77間には、スペーサ82が介装されている。このスペーサ82は、内輪70あるいは外輪71の軸方向の取付スペースに対して、一方向クラッチの組幅が短い場合に、スプラグ72の軸方向の位置決めとして使用される。
なお、外側保持器73の固定用鍔部77とは反対側の端部側の外輪には別のスナップリング81が固定されて外側保持器の軸方向移動を規制している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来構造において、別部材のスペーサ82が必要であるため、部品点数が多くなり、組立工数ならびに取扱いが繁雑となる。また、コストが高くなる。
【0006】
この発明は、別部材のスペーサを不要とし、組立工数を低減して取扱いを容易とするとともに、コスト低減ができる一方向クラッチを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段として、請求項1においては、内輪と、この内輪側に延びる環状部を有する外輪と、内輪と外輪間に周方向に所定間隔をあけて配置されるスプラグと、円筒状を成すとともに周方向に形成されたポケットによって上記スプラグを上記所定間隔に保持する保持器と、上記スプラグを上記内輪と外輪とに対して噛み合い方向に付勢するスプリングとを有し、上記保持器の上記環状部側端部の円周上に半径方向外側に向かう固定用鍔部が形成され、この固定用鍔部外周面を上記外輪に押し付けて保持器を外輪に固定してなる一方向クラッチにおいて、上記保持器の固定用鍔部側の端部に、この固定用鍔部外側面より軸方向に所定距離突出するとともに、上記円筒状をなす保持器のポケットを備える円筒形状部分を軸方向に延長した突部を形成し、この突部と上記環状部の内側面との当接により上記保持器が軸方向に位置決めされるようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2においては、上記環状部を、外輪とは別体のスナップリングの固定により形成したことを特徴とする。
【0009】
さらにまた、請求項3においては、上記環状部を、外輪と一体に形成された半径方向フランジにより形成したことを特徴とする。
【0010】
さらにまた、請求項4においては、上記外輪の内周面と上記フランジ内側面との連結部に内底面が軸方向に所定寸法平坦とされた周溝を形成し、この周溝の内底面に上記保持器の鍔部外周面を押し付けて保持器を外輪に固定し、上記保持器の突部と上記フランジ内側面との当接により上記鍔部外周面が上記周溝の内底面に接触する位置に維持されるようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5においては、上記突部が上記保持器端部の延長部にて形成されたことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の具体的実施例について説明する。
図1は、本実施例の一方向クラッチである。この一方向クラッチは、内輪1と両端部に固定され、内輪1側に延びるスナップリング12,13を有する外輪2と、内輪1と外輪2間に介装され周方向に所定間隔をあけて配置されるスプラグ3と、円筒状を成すとともに周方向に形成された略矩形のポケット4a,5aによって、上記スプラグ3を上記所定間隔に保持する内側保持器5および外側保持器4と、この内,外側保持器5,4に配置された上記スプラグ3を上記内輪1と外輪2とに対して噛み合い方向に付勢するスプリング6とを有している。
【0013】
さらに、上記一方の環状部としてのスナップリング12に対向する上記外側保持器4の側端部には、半径方向外側に向かって所定量だけ折り曲げてなる鍔部8を有している。そして、上記外側保持器4における任意の隣接するポケット4aの鍔部8を切除し、上記一対のポケット4aを開放して図2のようにTバー9を形成している。この実施例ではこのTバー9は180度対向位置に二ケ所形成されている。また、このTバー9の箇所を外側に押し広げて鍔部10とし、外側保持器4の中心からTバー9の鍔部10の端面までの距離をこの外側保持器4が装着される外輪2の内周面2aの半径より大きくすることにより、固定用鍔部が形成されている。そして、このTバー9の固定用鍔部10の外周面10aを外輪2の内周面2aに押し付けて外側保持器4を外輪2に対して固定する。このTバー9の構成は従来のものと同様で詳細には図8にて理解される。
【0014】
また、図2に示すように、外側保持器4には、90度位相がずれた180度対向位置の鍔部8側端部に、鍔部8外側面よりも軸方向に所定寸法だけ突出する突部11が外側保持器4の一部の延長により一体形成されている。すなわち、Tバー9部の軸方向寸法HCと突部11位置の軸方向寸法HA、他の部位の保持器寸法HBとは、HA>HB=HCの関係にある。そして、この突部11は、スナップリング12の内側面12aに当接して、外側保持器4すなわちスプラグ3の軸方向の位置決め用突部として作用する。また、突部11は外側保持器4と一体であるため、部品点数が少なくコストが低減できる。
【0015】
また、図2の外側保持器4は、Tバー9が形成された構成であったが、図3のように外側保持器4にTバー9を形成しないで、180度対向位置の鍔部8側端部に、鍔部8よりも軸方向に所定寸法だけ突出する上記突部11を外側保持器4の一部の延長により一体形成してもよい。すなわち、突部11位置の保持器軸方向寸法HAと他の保持器部位の軸方向寸法HBとは、HA>HBの関係にある。なお、図3の場合には、図示しないが、外側保持器4に外輪2の内周面2aに接触する部材が取り付けられる。
【0016】
次に図4は、別の実施例である。基本的には図1の実施例と同様のため、同一部品には同一符号をつけて重複説明を省略し相違点と特徴のみを以下に説明する。
外輪2の一端部には内輪1側に向けて環状部としての半径方向フランジ15が一体に形成されている。これは、図1のスナップリング12の取り付けが省略できる効果がある。この外輪2の内周面2aと上記フランジ15の内側面15aとの連結部に、内底面14aが所定寸法だけ外輪2の軸線と平行な平坦面とされた周溝14が形成されている。外側保持器4には図1と同様に図2のTバー9付きのものが使用されている。このTバー9の鍔部10の外周面10aは、周溝14の内底面14aに押し付けられる寸法に形成されており、これにより外側保持器4は外輪2に固定されている。そして、上記突部11はフランジ15の内側面15aに当接して、外側保持器4の位置決めを行っている。なお、外側保持器4の鍔部8とは反対の端部側は、内輪1と一体形成した半径方向フランジ16により、軸方向に支持されている。また、この周溝14は、外輪2の内周面2aの研磨を行う際の砥石の逃げ溝としても利用される。
【0017】
さらに、上記鍔部10の外周面10aは、上記突部11とフランジ15の当接により、上記周溝14の平坦な内底面14aとの接触位置に維持されている。これにより、外側保持器4の固定用鍔部10の外周面10aが外輪2の周溝14の平坦な内底面14aに図5のように面接触させた状態が維持されるため、常に安定した外側保持器4の固定力が得られる。すなわち、もし、外側保持器4の固定用鍔部10が図4のように突部11にて位置決めされていない場合、図6のように固定用鍔部10が周溝14内に傾斜して組み込まれ、固定用鍔部10の両角部A,Bの二点支持の線接触状態となり、安定した固定力が得られず、さらに固定用鍔部10の摩耗も発生しやすいという問題が発生するが、本実施例では上記構成により、このような問題が生じない。
【0018】
【発明の効果】
以上詳述したように、保持器に一体形成した軸方向に突出する突部にて外輪に対する位置決めを行うようにしたため、位置決め用のスペーサ等の別部材が不用となり、組立工数を低減して取扱いを容易とするとともに、コスト低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例である一方向クラッチの断面図である。
【図2】この発明の外側保持器であって、図2Aは鍔部側からみた正面図、図2Bは図2AのA−A断面図、図2Cは図2AのB−B断面図、図2Dは図2AのC−C断面図である。
【図3】この発明の別の外側保持器であって、図3Aは鍔部側からみた正面図、図3Bは図3AのA−A断面図、図3Cは図3AのB−B断面図である。
【図4】この発明の別の実施例である一方向クラッチの断面図である。
【図5】一方向クラッチの外側保持器と外輪の正常な当接状態説明図である。
【図6】一方向クラッチの外側保持器と外輪の異常な当接状態説明図である。
【図7】従来の一方向クラッチの断面図である。
【図8】従来の一方向クラッチの外側保持器であって、図8Aは正面図、図8Bは側面図である。
【符号の説明】
1 内輪
2 外輪
3 スプラグ
4 外側保持器
4a ポケット
5 内側保持器
5a ポケット
6 スプリング
8 鍔部
9 Tバー
10 固定用鍔部
11 突部
12 スナップリング
14 周溝
14a 内底面
15 フランジ
15a 内側面
Claims (4)
- 内輪と、
この内輪側に延びる環状部を有する外輪と、
内輪と外輪間に周方向に所定間隔をあけて配置されるスプラグと、
円筒状を成すとともに周方向に形成されたポケットによって上記スプラグを上記所定間隔に保持する保持器と、
上記スプラグを上記内輪と外輪とに対して噛み合い方向に付勢するスプリングとを有し、
上記保持器の上記環状部側端部の円周上に半径方向外側に向かう固定用鍔部が形成され、
この固定用鍔部外周面を上記外輪に押し付けて保持器を外輪に固定してなる一方向クラッチにおいて、
上記保持器の固定用鍔部側の端部に、この固定用鍔部外側面より軸方向に所定距離突出するとともに、上記円筒状をなす保持器のポケットを備える円筒形状部分を軸方向に延長した突部を形成し、
この突部と上記環状部の内側面との当接により上記保持器が軸方向に位置決めされるようにしたことを特徴とする一方向クラッチ。 - 上記環状部を、外輪とは別体のスナップリングの固定により形成したことを特徴とする請求項1に記載の一方向クラッチ。
- 上記環状部を、外輪と一体に形成された半径方向フランジにより形成したことを特徴とする請求項1に記載の一方向クラッチ。
- 上記外輪の内周面と上記フランジ内側面との連結部に内底面が軸方向に所定寸法平坦とされた周溝を形成し、この周溝の内底面に上記保持器の鍔部外周面を押し付けて保持器を外輪に固定し、上記保持器の突部と上記フランジ内側面との当接により上記鍔部外周面が上記周溝の内底面に接触する位置に維持されるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の一方向クラッチ。
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1997
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