JP3880444B2 - 側鎖にフェニルスルフィニル構造及び/或いはフェニルスルホニル構造を有する新規ポリヒドロキシアルカノエートおよびその製造方法、該ポリヒドロキシアルカノエートを含有する荷電制御剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な構成ユニットを含むポリヒドロキシアルカノエート(PHA)と、その製造方法に関する。より具体的には、側鎖末端に、置換フェニルスルフィニル基、または、置換フェニルスルホニル基を置換基として有する3-ヒドロキシアルカン酸ユニットを含む新規なPHAを、PHA生産能を有する微生物を培養して、対応する置換フェニルスルファニル基を置換基として有する3-ヒドロキシアルカン酸ユニットを含むPHAを生産し体内に蓄積させ、このPHA中のスルフィド型イオウを選択的に酸化処理して、スルフィニル基またはスルホニル基に変換して、生分解性の当該PHAを製造する方法に関する。
【0002】
また本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法等を利用した記録方法に用いられる荷電制御剤、トナーバインダー、静電荷像現像トナー、該トナーを使用する画像形成方法及び画像形成装置に関する。特には、予め静電潜像担持体(以下、単に像担持体と呼ぶ)上にトナー像を形成後、被転写材上に転写させて画像を形成する、複写機、プリンター、ファックス等の電子写真、静電記録、静電印刷に用いられる荷電制御剤、トナーバインダー、静電荷像現像トナー及び画像形成方法に関する。更に詳しくは、人体/環境に対してより安全性の高い負帯電性の電荷制御剤、それを用いたトナーバインダー、静電荷像現像トナー、該トナーを使用する画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【0003】
【従来の技術】
これまで、多くの微生物がポリ-3-ヒドロキシ酪酸(PHB)あるいはその他のPHAを生産し、菌体内に蓄積することが報告されてきた(「生分解性プラスチックハンドブック」,生分解性プラスチック研究会編,(株)エヌ・ティー・エス,P178-197(1995))。これらのポリマーは従来のプラスチックと同様に、溶融加工等により各種製品の生産に利用することができる。さらに、生分解性であるがゆえに、自然界で微生物により完全分解されるという利を有しており、従来の多くの合成高分子化合物のように自然環境に残留して汚染を引き起こすことがない。また、生体適合性にも優れており、医療用軟質部材等としての応用も期待されている。
【0004】
このような微生物産生PHAは、その生産に用いる微生物の種類や培地組成、培養条件等により、様々な組成や構造のものとなり得ることが知られており、これまで主に、PHAの物性の改良という観点から、このような組成や構造の制御に関する研究がなされてきた。
【0005】
[1]まず、3-ヒドロキシ酪酸(以下、3HBと略す)をはじめとする比較的簡単な構造のモノマーユニットを重合させたPHAの生合成としては、次のものが挙げられる。
【0006】
(a)3HBと3-ヒドロキシ吉草酸(以下3HV)を含むもの
特公平6-15604号公報、特公平7-14352号公報、特公平8-19227号公報等、
特開平5-7492号公報
(b)3HBと3-ヒドロキシヘキサン酸(以下3HHx)を含むもの
特開平5-93049号公報、及び特開平7-265065号公報
(c)3HBと4-ヒドロキシ酪酸(以下4HB)を含むもの
特開平9-191893号公報
(d)炭素数6から 12 までの3-ヒドロキシアルカノエートを含むもの
特許第2642937号公報
(e)単一の脂肪酸を炭素源とした生合成。生産物は(d)とほぼ同様
Appl.Environ.Microbiol,58(2),746(1992)
等が挙げられる。これらはいずれも微生物による炭化水素等のβ酸化や糖からの脂肪酸合成により合成された、いずれも側鎖にアルキル基を有するモノマーユニットからなるPHA、即ち、「usual PHA」である。
【0007】
[2]しかし、このような微生物産生PHAのより広範囲な応用、例えば機能性ポリマーとしての応用を考慮した場合、アルキル基以外の置換基を側鎖に導入したPHA「unusual PHA」が極めて有用であることが期待される。置換基の例としては、芳香環を含むもの(フェニル基、フェノキシ基、など)や、不飽和炭化水素、エステル基、アリル基、シアノ基、ハロゲン化炭化水素、エポキシドなどが挙げられる。これらの中でも、特に、芳香環を有するPHAの研究が盛んになされている。
【0008】
(a)フェニル基もしくはその部分置換体を含むもの
Makromol.Chem.,191,1957-1965(1990)及びMacromolecules,24,5256-5260(1991)には、5-フェニル吉草酸を基質として、シュードモナス オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)が3-ヒドロキシ-5-フェニル吉草酸をユニットとして含むPHAを生産することが報告されている。
【0009】
Macromolecules,29,1762-1766(1996)には、5-(4'-トリル)吉草酸を基質として、シュードモナス オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)が3-ヒドロキシ-5-(4'-トリル)吉草酸をユニットとして含むPHAを生産することが報告されている。
【0010】
Macromolecules,32,2889-2895(1999)には、5-(2',4'-ジニトロフェニル)吉草酸を基質として、シュードモナス オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)が3-ヒドロキシ-5-(2',4'-ジニトロフェニル)吉草酸及び3-ヒドロキシ-5-(4'-ニトロフェニル)吉草酸をユニットとして含むPHAを生産することが報告されている。
【0011】
(b)フェノキシ基もしくはその部分置換体を含むもの
Macromol.Chem.Phys.,195,1665-1672(1994)には、11-フェノキシウンデカン酸を基質として、シュードモナス オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)が3-ヒドロキシ-5-フェノキシ吉草酸と3-ヒドロキシ-9-フェノキシノナン酸のPHAコポリマーを生産することが報告されている。
【0012】
特許公報第2989175号には、3-ヒドロキシ、5-(モノフルオロフェノキシ)ペンタノエート(3H5(MFP)P)ユニットあるいは3-ヒドロキシ、5-(ジフルオロフェノキシ)ペンタノエート(3H5(DFP)P)ユニットからなるホモポリマー、少なくとも3H5(MFP)Pユニットあるいは3H5(DFP)Pユニットを含有するコポリマー;これらのポリマーを合成するシュードモナス・プチダ;シュードモナス属を用いた前記のポリマーの製造法に関する発明が開示されており、その効果として、置換基をもつ長鎖脂肪酸を資化して、側鎖末端が1から2個のフッ素原子が置換したフェノキシ基をもつポリマーを合成することができ、融点が高く良い加工性を保持しながら、立体規則性、撥水性を与えることができるとしている。
【0013】
この様なフッ素基置換体以外に、シアノ基やニトロ基の置換体の研究もなされている。
【0014】
Can.J.Microbiol.,41,32-43(1995)及び Polymer International,39,205-213(1996)には、シュードモナス オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)ATCC 29347株及びシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)KT 2442株を用いて、オクタン酸とp-シアノフェノキシヘキサン酸或いはp-ニトロフェノキシヘキサン酸を基質として、3-ヒドロキシ-p-シアノフェノキシヘキサン酸或いは3-ヒドロキシ-p-ニトロフェノキシヘキサン酸をモノマーユニットとして含むPHAの生産が報告されている。
【0015】
これらの報告は側鎖がアルキル基である一般的なPHAとは異なり、いずれもPHAの側鎖に芳香環を有しており、それに由来する物性を有するポリマーを得る上で有益である。
【0016】
[3]また新たなカテゴリーとして、単に物性の変化に留まらず、側鎖に適当な官能基を有するPHAを生産し、その官能基を利用して新たな機能を生み出そうとする研究も行なわれている。
【0017】
例えばMacromolecules,31,1480-1486(1996)及び、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,36,2381-2387(1998)などでは、側鎖の末端にビニル基を持つユニットを含むPHAを合成した後、酸化剤によりエポキシ化し、側鎖末端に反応性の高いエポキシ基を含むPHAを合成出来たと報告されている。
【0018】
またビニル基以外にも、高い反応性が期待されるチオエーテル(-S-;スルファニル結合)を持つユニットを含むPHAの合成例として、Macromolecules,32,8315-8318(1999)においては、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)27N01 株が 11-チオフェノキシウンデカン酸(11-(フェニルスルファニル)ウンデカン酸)を基質とし、3-ヒドロキシ-5-チオフェノキシ吉草酸(3-ヒドロキシ-5-(フェニルスルファニル)吉草酸)及び3-ヒドロキシ-7-チオフェノキシヘプタン酸(3-ヒドロキシ-7-(フェニルスルファニル)ヘプタン酸)のPHAコポリマーを生産することが報告されている。
【0019】
また、本発明における電子写真法としては従来より多数の方法が提案されているが、一般的には、光導電性物質を利用し、種々の手段によって像担持体(感光体)上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーで現像して可視像とし、必要に応じて紙等の被転写材にトナー像を転写した後、熱及び/または圧力等により被転写材上にトナー画像を定着して複写物を得るものである。電気的潜像を可視化する方法としては、カスケード現像法、磁気ブラシ現像法、加圧現像方法等が知られている。更には、磁性トナーと中心に磁極を配した回転現像スリーブを用いて、現像スリーブ上から感光体上へと磁性トナーを磁界にて飛翔させる方法も用いられている。
【0020】
静電潜像を現像する際に用いられる現像方式には、トナーとキャリアとからなる二成分系現像剤を使用する二成分現像方式と、キャリアを使用しないトナーのみからなる一成分系現像剤を用いる一成分現像方式とがある。
【0021】
ここで、一般にトナーと称される着色微粒子は、バインダー樹脂と着色材とを必須成分とし、その他必要に応じ磁性粉等から構成されている。トナーに電荷を付与する方法としては、荷電制御剤を用いることなくバインダー樹脂そのものの帯電特性を利用することもできるが、それでは帯電の経時安定性、耐湿性が劣り良好な画質を得ることが出来ない。従って通常トナーの電荷保持、荷電制御の目的で荷電制御剤が加えられる。
【0022】
今日、当該技術分野で知られている公知の荷電制御剤としては、例えば、負摩擦帯電性としては、アゾ染料金属錯体、芳香族ジカルボン酸の金属錯体、サリチル酸誘導体の金属錯体等がある。また、正荷電制御剤としてはニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、各種4級アンモニウム塩ジブチル錫オキサイド等の有機スズ化合物等が知られているが、これらを荷電制御剤として含有したトナーは、その組成によっては帯電性、経時安定性等トナーに要求される品質特性を必ずしも充分に満足させるものではない場合がある。
【0023】
例えば負荷電制御剤として知られるアゾ染料金属錯体を含有したトナーは、帯電量の高さについては一応の水準を有するものの、アゾ染料金属錯体は低分子の結晶であるため、組み合わせるバインダー樹脂の種類によっては分散性が劣る場合がある。その場合はバインダー樹脂中に負荷電制御剤が均一に分布せず、得られたトナーの帯電量分布も極めてシャープさに欠けるものであり、得られる画像は階調が低く画像形成能に劣るものである。更に、アゾ染料金属錯体は固有の色調をもつため、黒を中心とした限定された色相のトナーにのみ使用されているのが現状であり、カラートナーとして使用する場合には、色調に対する要求性の高い画像を得るために必要とされる着色剤の鮮明さを有しないという点が大きな課題である。
【0024】
また、無色に近い負荷電制御剤の例として芳香族ジカルボン酸の金属錯体が挙げられるが、やはり完全な無色ではないという点、及び低分子の結晶であるゆえの低分散性が問題となる場合がある。
【0025】
一方、正帯電制御剤として知られるニグロシン系染料や、トリフェニルメタン系染料は、それ自体着色しているため、黒を中心とした限定された色相のトナーにのみ使用されているのが現状であり、また、トナーの連続複写に対する経時安定性が良好でない場合がある。また、従来の4級アンモニウム塩は、トナー化した場合耐湿性が不十分である場合があり、その場合は経時安定性が劣り、繰り返し使用で良質な画像を与えない場合がある。
【0026】
また近年、環境保護の観点からも、廃棄物の削減と廃棄物の安全性の向上が世界的に問題視されている。このような問題は、電子写真の分野においても同様である。すなわち、イメージング装置の広い普及にともない、印刷された用紙、使用済みの廃トナー、複写紙の廃棄量が年ごとに増大しており、地球環境の保全の見地から、そのような廃棄物の安全性も重要な課題である。
【0027】
このような点を考慮して高分子系の荷電制御剤が検討されている。例えば、USP 4480021、USP 4442189、USP 4925765、特開昭60-108861号公報、特開昭61-3149号公報、特開昭63-38958号公報、特開昭63-88564号公報などの化合物が挙げられる。
【0028】
その中でも、一般にトナーに正帯電性を発揮させる場合の高分子荷電制御剤としては、スチレン及び/またはα-メチルスチレンとアルキル(メタ)アクリレートの4級アンモニウム塩との共重合体(特開平8-220809号公報、特公平8-3658号公報、特許2552133号公報、特許2807796号公報)や、ジカルボン酸単位とグリコール単位から構成されるポリエステル樹脂の構成成分の一部として2価以上の多価アミンを用いた、ポリサミド変性ポリエステル重合体(特公平4-46424号公報)といった、アンモニウム塩系の官能基を有する高分子化合物が用いられる例が多い。このような材料は、無色である点では有利であるが、目的とする帯電量を得るためには大量の添加が必要となり、また、窒素原子が熱的に不安定であり、加熱混練時に酸化を受けたり熱分解したりすることにより悪臭、着色の原因となる場合がある。
【0029】
このような問題を解決するために、特公平7-120080号公報には、スチレンおよびビニルベンジルハライドのホスホニウム塩共重合体からなる正帯電高分子荷電制御剤が開示されている。
【0030】
しかし、これらは何れも正電荷を有するカチオン性官能基であり、吸湿性を有していることは明らかであり、耐湿性という意味で問題があると考えられる。更に、基本的には非イオン性である結着樹脂(バインダー)との相溶性にも問題が生じることが考えられる。
【0031】
この様に、これらの化合物は荷電制御剤としての十分な性能を有しておらず、帯電量、帯電の立ち上がり特性、経時安定性、環境安定性等に課題がある。また機能面のみならず、人体および環境に与える影響を考えた場合、合成に用いる化合物や有機溶媒についても、より安全な化合物、より安全かつ温和な合成プロセス、有機溶媒の使用量の低減等を実現可能な荷電制御剤が強く望まれる。
【0032】
環境保護の観点から、微生物等の作用により経時的に分解可能な樹脂、すなわち、生分解性の樹脂の開発が進められており、例えば、多くの微生物がポリエステル構造を有する生分解性樹脂(PHA)を生産し、菌体内に蓄積することが報告されているのは上述の通りである。このようなPHAは、その生産に用いる微生物の種類や培地組成、培養条件等により、様々な組成や構造のものとなり得ることが知られており、これまで主に、物性の改良という観点から、産生されるPHAの組成や構造の制御に関する研究がなされ、その応用についても、特に医用材料の分野ではすでにかなりの実績がある。農業の分野でも、マルチファイル、園芸資材等に、そして徐放性の農薬、肥料等に生分解性樹脂が用いられている。レジャー産業の分野でも、釣り糸、釣り用品、ゴルフ用品等に生分解性樹脂が用いられている。
【0033】
しかしながら、プラスチックとしての幅広い応用を考えた場合、物性的に未だ十分であるとは言えないのが現状である。PHAの利用範囲をさらに拡大していくためには、物性の改良をより幅広く検討していくことが重要であり、そのためにはさらに多様な構造のモノマーユニットを含むPHAの開発、探索が必須である。一方、置換基を側鎖に導入したタイプのPHAは、導入した置換基を所望とする特性等に応じて選択することで、導入した置換基の特性等に起因する、極めて有用な機能や特性を具備した「機能性ポリマー」としての展開も期待できる。すなわち、そのような機能性と生分解性とを両立可能であるような優れたPHAの開発、探索もまた重要な課題である。
【0034】
電子写真の分野においても、特にトナーの製造においてバインダー樹脂への生分解性樹脂の応用が提案されている。例えば、USP 5004664 には生分解性樹脂、特にはポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、これらの共重合体あるいはブレンド体をその組成物としてなるトナーが開示されている。また、特開平6-289644号公報には、少なくともバインダー樹脂が、植物系ワックスと、生分解性樹脂(例えば、微生物生産のポリエステル、植物-または動物-由来の天然高分子材料等)とを含有し、前記植物系ワックスが、前記バインダー樹脂中に5〜50 質量%の量で添加されていることを特徴とする、特に熱ロール定着用の電子写真用トナーが開示されている。
【0035】
また、特開平7-120975号公報には、乳酸系樹脂をバインダー樹脂として含有することを特徴とする電子写真用トナーが開示されている。さらに、特開平9-274335号公報には、乳酸及び3官能以上のオキシカルボン酸を含有する組成物を脱水重縮合して得られたポリエステル樹脂及び着色剤を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーが開示されている。
【0036】
また、特開平8-262796号公報には、バインダー樹脂及び着色剤を含む電子写真用トナーであって、前記バインダー樹脂が生分解性樹脂(例えば、脂肪族ポリエステル樹脂等)よりなり、そして前記着色剤が非水溶性色素よりなることを特徴とする電子写真用トナーが開示されている。さらに、特開平9-281746号公報には、ポリ乳酸を3官能以上の多価イソシアナートにより架橋して得られるウレタン化ポリエステル樹脂及び着色剤を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーが開示されている。
【0037】
以上説明した電子写真用トナーのいずれについても、そのバインダー樹脂として生分解性樹脂を使用しており、環境の保全等に寄与する効果があると理解される。
【0038】
しかしながら、荷電制御剤に生分解性樹脂を使用している例の報告は未だ知られておらず、環境の保全等への寄与についてはさらなる向上の余地がある。
【0039】
【発明が解決しようとする課題】
これら側鎖上に官能基を有するPHAのうち、3-ヒドロキシ-ω-(フェニルスルファニル)アルカン酸ユニットを含むPHAに注目すると、そのスルフィド型イオウ(-S-)は反応性が高く、機能性PHAを開発していく際、スルフィド型イオウ(-S-)を有するPHAの種々の誘導体等に関して、今後益々研究がなされていくものと予想される。しかし、この様な、芳香環とスルフィド型イオウ(-S-)とを有するPHAの生合成に関しては、上に挙げた1例の報告があるに過ぎない。更に、上記の3-ヒドロキシ-ω-(フェニルスルファニル)アルカン酸ユニットを含むPHAの生産方法は、目的とするモノマーユニットと比較して、炭素鎖長が長いω-(フェニルスルファニル)アルカン酸を原料とし、微生物中でその炭素鎖を二炭素づつ短縮していくβ酸化系を利用し、原料よりも炭素鎖の短い3-ヒドロキシアルカン酸をポリマーのユニットとして取り込ませているため、ポリマー構造の制御が困難であるという課題を有している。
【0040】
この課題を解決するために、本発明者らは、原料とするω-(フェニルスルファニル)アルカン酸の炭素鎖長を保持する3-ヒドロキシ-ω-(フェニルスルファニル)アルカン酸ユニットを主に含むPHAの生産方法を既に開発しており、側鎖にスルフィド(-S-)構造を有するユニットを含む新規なポリヒドロキシアルカノエートと、その効率的な製造方法についての特許出願を行なった。具体的には、微生物を利用して、原料と対応する炭素鎖を有し、その側鎖末端に、フェニルスルファニル基、あるいは、置換フェニルスルファニル基を有するユニット構造主な成分とするPHA分子が得られ、いずれも、分子中に反応性の高いスルフィド型イオウ(-S-)がそのまま存在している。これら反応性の高いスルフィド型イオウ(-S-)を含む構造から、その反応性を利用して、物理化学的性状の異なる、有用なPHAへと変換する手段の提案、ならびに、かかる手段を用いて作製される新規なPHAの提案が待たれるものである。
【0041】
本発明は前記の課題を解決するもので、本発明の目的は、側鎖中にスルフィド型イオウ(-S-)を有するユニットを含むPHAに代えて、かかるPHAを更なる広範囲な用途に対応可能なものできる、具体的には、PHAの物理化学的性状を更に改善しうる新たな構造のPHA、およびその製造方法を提供することにある。より具体的には、本発明の目的は、微生物により産生される3-ヒドロキシ-ω-(フェニルスルファニル)アルカン酸ユニットを主に含むPHA、ならびに3-ヒドロキシ-ω-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸ユニットを主に含むPHAを中間原料として、そのスルフィド型イオウ(-S-)部分を、他のイオウを含む基へと変換することで得られる新規な構造のPHA、ならびに、その製造方法を提供することにある。
【0042】
また本発明は前記の課題を解決すべく、機能面においては環境の保全等への寄与がより高く、かつ高性能(高帯電量、帯電の立ち上がりが早い、経時安定性に優れる、環境安定性が高い)で分散性の改良された負帯電性の荷電制御剤、該荷電制御剤を含有してなるトナーバインダー、該荷電制御剤を含有してなる静電荷像現像トナー、さらには該静電荷像現像トナーを用いた画像形成方法ならびに画像形成装置を提供するものである。
【0043】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を進めたところ、微生物により産生される3-ヒドロキシ-ω-(フェニルスルファニル)アルカン酸ユニットを主に含むPHA、ならびに3-ヒドロキシ-ω-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸ユニットを主に含むPHAを中間原料として、そのスルフィド型イオウ(-S-)部分を選択的に過酸化化合物を利用して酸化すると、スルホニル基(-SO2-)ならびにスルフィニル基(-SO-)へと変換でき、得られるPHAは、新規な構造のPHAであり、PHAの物理化学的性状を更に改善し得るものとなることを見出した。加えて、本発明者らは、中間原料とする3-ヒドロキシ-ω-(フェニルスルファニル)アルカン酸ユニットを主に含むPHA、ならびに3-ヒドロキシ-ω-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸ユニットを主に含むPHAを、原料とするω-(フェニルスルファニル)アルカン酸から、微生物に産生させた後、一旦、溶媒抽出により分離・精製する工程を経て、回収した後、前記酸化処理を行う代わりに、微生物の細胞内に蓄積されるPHAを細胞を破砕して分離を図った後、過酸化化合物を利用して酸化することによっても、目的とするスルホニル基(-SO2-)ならびにスルフィニル基(-SO-)を有するユニットを含むPHAの製造が可能であることも見出した。本発明者らは、以上の知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0044】
すなわち、本発明のポリヒドロキシアルカノエートは、
下記一般式(1):
【0045】
【化38】
【0046】
(式中、Rは、H、ハロゲン原子、CN、NO2、COOR'、SO2R”(なお、R'は、H、Na、K、CH3、C2H5のいずれかを表し、R”は、OH、ONa、OK、ハロゲン原子、OCH3、OC2H5のいずれかを表す)から任意に選択される基であり、また、xは、1〜7から選ばれた整数であり、ユニット毎に違う値をとり得る。)
で示される3-ヒドロキシ-(置換フェニルスルフィニル)アルカン酸ユニット、あるいは、下記一般式(2):
【0047】
【化39】
【0048】
(式中、Rは、H、ハロゲン原子、CN、NO2、COOR'、SO2R”(なお、R'は、H、Na、K、CH3、C2H5のいずれかを表し、R”は、OH、ONa、OK、ハロゲン原子、OCH3、OC2H5のいずれかを表す)から任意に選択される基であり、また、xは、1〜7から選ばれた整数であり、ユニット毎に違う値をとり得る。)
で示される3-ヒドロキシ-(置換フェニルスルホニル)アルカン酸ユニットのうち、少なくとも1種類のユニットをポリマー分子中に含むことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートである。
【0049】
本発明のPHAにおいては、ポリマー分子中に含まれるユニットとして、前記一般式(1)または一般式(2)で示されるユニットに加えて、下記一般式(3):
【0050】
【化40】
【0051】
(式中、Rは、H、ハロゲン原子、CN、NO2、COOR'、SO2R”(なお、R'は、H、Na、K、CH3、C2H5のいずれかを表し、R”は、OH、ONa、OK、ハロゲン原子、OCH3、OC2H5のいずれかを表す)から任意に選択される基であり、また、xは、1〜7から選ばれた整数であり、ユニット毎に違う値をとり得る。)
で示される3-ヒドロキシ-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸ユニットの少なくとも1種類をポリマー分子中に含んでもよい。
【0052】
さらには、ポリマー分子中に含まれるユニットとして、前記一般式(1)、一般式(2)あるいは一般式(3)で示されるユニットに加えて、
下記一般式(4):
【0053】
【化41】
【0054】
(式中、yは、0〜8から選ばれた整数であり、ユニット毎に違う値をとり得る。)
で示される3-ヒドロキシ-アルカン酸ユニット、あるいは、下記一般式(5):
【0055】
【化42】
【0056】
(式中、zは、3および5から選ばれた整数であり、ユニット毎に違う値をとり得る。)
で示される3-ヒドロキシ-アルカ-5-エン酸ユニットのうち、少なくとも1種類をポリマー分子中に含んでもよい。
【0057】
上記する構成の本発明のPHAでは、ポリマー分子の数平均分子量は、1000〜500000 の範囲であることを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートとすることができる。なお、本発明のPHAは、それを構成する3-ヒドロキシアルカン酸ユニットは、その3位の炭素は不斉炭素であり、それに伴い光学異性体が存在する。すなわち、3位の炭素の絶対配置により、R体、S体、あるいは、ラセミ体をとることもできるものの、後に述べる本発明の製造方法を用いると、全てのユニットについて、同一の絶対配置、具体的には、生分解性を示すR体となり、より好ましいものとなる。
【0058】
本発明のPHAは、その一つの形態は、下記化学式(6):
【0059】
【化43】
【0060】
で示される3-ヒドロキシ-5-(フェニルスルフィニル)吉草酸ユニットまたは、下記化学式(7):
【0061】
【化44】
【0062】
で表される3-ヒドロキシ-5-(フェニルスルホニル)吉草酸ユニットのうち、少なくとも1種類をポリマー分子中に含むことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートである。
【0063】
その際、前記化学式(6)または(7)化学式で表されるユニットに加えて、下記化学式(8):
【0064】
【化45】
【0065】
で表される3-ヒドロキシ-5-(フェニルスルファニル)吉草酸ユニットをポリマー分子中に含んでいてもよい。
【0066】
本発明のPHAは、さらに、その一つの形態は、下記化学式(9):
【0067】
【化46】
【0068】
で表される3-ヒドロキシ-4-(フェニルフィニル)酪酸ユニットまたは、下記化学式(10):
【0069】
【化47】
【0070】
で表される3-ヒドロキシ-4-(フェニルスルホニル)酪酸ユニットのうち、少なくとも1種類をポリマー分子中に含むことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートである。
【0071】
その際、前記化学式(9)または化学式(10)で表されるユニットに加えて、下記化学式(11):
【0072】
【化48】
【0073】
で表される3-ヒドロキシ-4-(フェニルスルファニル)酪酸ユニットを含んでいてもよい。
【0074】
本発明のPHAは、さらなる、その一つの形態は、下記化学式(12):
【0075】
【化49】
【0076】
で表される3-ヒドロキシ-5-[(4-フルオロフェニル)スルフィニル]吉草酸ユニットまたは、下記化学式(13):
【0077】
【化50】
【0078】
で表される3-ヒドロキシ-5-[(4-フルオロフェニル)スルホニル]吉草酸ユニットのうち、少なくとも1種類をポリマー分子中に含むことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートである。
【0079】
その際、前記化学式(12)または化学式(13)で表されるユニットに加えて、下記化学式(14):
【0080】
【化51】
【0081】
で表される3-ヒドロキシ-5-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]吉草酸ユニットを含んでいてもよい。
【0082】
本発明のPHAは、さらなる、その一つの形態は、下記化学式(15):
【0083】
【化52】
【0084】
で表される3-ヒドロキシ-5-[(3-フルオロフェニル)スルフィニル]吉草酸ユニットまたは、下記化学式(16):
【0085】
【化53】
【0086】
で表される3-ヒドロキシ-5-[(3-フルオロフェニル)スルホニル]吉草酸ユニットのうち、少なくとも1種類をポリマー分子中に含むことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートである。
【0087】
その際、前記化学式(15)または化学式(16)で表されるユニットに加えて、下記化学式(17):
【0088】
【化54】
【0089】
で表される3-ヒドロキシ-5-[(3-フルオロフェニル)スルファニル]吉草酸ユニットを含んでいてもよい。
【0090】
加えて、本発明は、上記する本発明のPHAを製造する方法の発明をも提供しており、すなわち、本発明のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法は、上記するいずれかの構成を有するポリヒドロキシアルカノエートの製造方法であって、
(工程1) 下記一般式(18):
【0091】
【化55】
【0092】
(式中、Rは、H、ハロゲン原子、CN、NO2、COOR'、SO2R”(なお、R'は、H、Na、K、CH3、C2H5のいずれかを表し、R”は、OH、ONa、OK、ハロゲン原子、OCH3、OC2H5のいずれかを表す)から任意に選択される基であり、また、xは、1〜7から選択される整数である)
で示されるω-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸の少なくとも一種類以上を含む培地中で微生物を培養する工程と、
(工程2) 工程1において培養した微生物により生産されるポリヒドロキシアルカノエートを、過酸化化合物で処理する工程とを含むことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートの製造方法である。
【0093】
かかる方法においては、一般式(18)で示される原料化合物から、製造されるPHA中に含まれる一般式(1)、(2)、ならびに(3)で示される各ユニットは、以下のような対応関係を有するものである。第1に、一般式(18)の原料化合物におけるベンゼン環上の置換基Rは、実質的に保持され、一般式(1)、(2)、ならびに(3)で示される各ユニットにおいて、そのベンゼン環上の置換基Rとなる。第2に、一般式(1)と(2)のユニットは、工程1で作製されるPHA中に含まれる一般式(3)のユニットから変換されるもので、その三種のユニットにおける側鎖炭素数xは、互いに等しいものとなっている。第3は、工程1で作製されるPHA中に含まれる一般式(3)のユニットは、一般式(18)で示される原料化合物からβ-酸化過程により生成されるもので、一般式(18)中のxと比較し、生成される一般式(3)のユニット中のxは、等しいか、あるいは、β-酸化過程に伴い、2の倍数ずつ減少した整数値となる場合もある。また、一般式(3)のユニット中のxに依存する、一般式(1)と(2)のユニット中のxも、一般式(18)中のxと等しいか、あるいは、2の倍数ずつ減少した整数値となる場合もある。
【0094】
本発明のPHAの製造方法においては、前記工程2に用いる過酸化化合物は、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、メタクロロ過安息香酸、過蟻酸、過酢酸からなる群から選ばれる一種類以上の過酸化化合物であることを特徴とする製造方法とすることが好ましい。
【0095】
また、本発明のPHAの製造方法では、前記工程1と工程2の間に、工程1において培養された微生物細胞から、微生物が産生したポリヒドロキシアルカノエートを分離する工程を設けることができる。
【0096】
加えて、前記微生物細胞からポリヒドロキシアルカノエートを分離する工程中に、微生物細胞を破砕する工程を含むことを特徴とする製造方法とすることができる。なお、前記微生物細胞を破砕する工程において、細胞の破砕手段として、超音波破砕法、ホモジナイザー法、圧力破砕法、ビーズ衝撃法、摩砕法、擂潰法、凍結融解法のいずれかの方法を選択することができる。
【0097】
あるいは、前記微生物細胞からポリヒドロキシアルカノエートを分離する工程中に、ポリヒドロキシアルカノエートが可溶な溶媒を用いて、微生物細胞からポリヒドロキシアルカノエートを抽出する工程を含むことを特徴とする製造方法とすることもできる。その際、ポリヒドロキシアルカノエートが可溶な溶媒として、クロロホルム、ジクロロメタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトンからなる群から選択される1種類以上の溶媒を用いることができる。
【0098】
一方、本発明のPHAの製造方法においては、前記工程1で用いる培地は、ポリペプトンを含有している培地とすることが好ましい。また、前記工程1で用いる培地は、酵母エキスを含有している培地とすることも好ましい。
【0099】
あるいは、前記工程1で用いる培地は、糖類を含有している培地とすることも好ましい。その場合、培地中に含有される糖類は、グリセロアルデヒド、エリトロース、アラビノース、キシロース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、グリセロール、エリトリトール、キシリトール、グルコン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マルトース、スクロース、ラクトースからなる群から選択される1種類以上の化合物であることがより好ましい。
【0100】
その他、前記工程1で用いる培地は、有機酸またはその塩を含有している培地とすることも好ましい。その場合、培地中に含有される有機酸またはその塩は、ピルビン酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、あるいはこれらの塩からなる群から選択される1つ以上の化合物であることがより好ましい。
【0101】
また、前記工程1で用いる培地は、アミノ酸またはその塩を含有している培地とすることも好ましい。その場合、培地中に含有されるアミノ酸またはその塩は、グルタミン酸、アスパラギン酸あるいはこれらの塩からなる群から選択される1つ以上の化合物であることが望ましい。
【0102】
加えて、前記工程1で用いる培地は、炭素数4〜12 の直鎖アルカン酸あるいはその塩を含有している培地とすることもできる。
【0103】
本発明のPHAの製造方法では、前記工程1において、微生物の培養は、
(工程1-1) 前記一般式(18)で示されるω-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸の少なくとも一種類以上ならびにポリペプトンを含有する培地中で微生物を培養する工程と、これに続く、
(工程1-2) 前記一般式(18)で示されるω-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸の少なくとも一種類以上ならびに有機酸またはその塩を含有する培地中で、前記工程1-1で培養された微生物を更に培養する工程とを有する、少なくとも二段階以上の培養で行うことを特徴とする製造方法とすることができる。その際にも、前記工程1-2で用いる培地中に含有される有機酸またはその塩は、ピルビン酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、コハク酸あるいはこれらの塩からなる群から選択される1つ以上の化合物であることが好ましい。
【0104】
また、本発明のPHAの製造方法では、前記工程1において、微生物の培養は、
(工程1-3) 前記一般式(18)で示されるω-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸の少なくとも一種類以上ならびに糖類を含有する培地中で微生物を培養する工程と、これに続く、
(工程1-4) 前記一般式(18)で示されるω-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸の少なくとも一種類以上ならびに糖類を含有する培地中で、前記工程1-3で培養された微生物を更に培養する工程とを有する、少なくとも二段階以上の培養で行うことを特徴とする製造方法とすることもできる。その際にも、前記工程1-3ならびに工程1-4で用いる培地中に含有される糖類は、グリセロアルデヒド、エリトロース、アラビノース、キシロース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、グリセロール、エリトリトール、キシリトール、グルコン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マルトース、スクロース、ラクトースからなる群から選択される1つ以上の化合物であることが好ましい。
【0105】
なお、先に述べた二段階の培養工程を採用する際には、その二段目の培養工程、具体的には、前記工程1-2、ならびに、工程1-4において利用する培地は、窒素源を含まないことが好ましい。つまり、工程1において、二段階以上の培養工程を設ける製造方法とする際には、後段の培養工程、例えば、第二段目の培養工程で用いる培地について、窒素源を制限することによって、微生物によるPHAの生産性の向上が図ることが可能である。
【0106】
本発明のPHAの製造方法は、その一つの形態として、下記化学式(19):
【0107】
【化56】
【0108】
で表される5-(フェニルスルファニル)吉草酸を含む培地中で微生物を培養する工程と、培養された微生物により生産されたポリヒドロキシアルカノエートを、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、メタクロロ過安息香酸、過蟻酸、過酢酸からなる群から選ばれる一種類以上の過酸化化合物で処理する工程とを有し、下記化学式(6):
【0109】
【化57】
【0110】
で表される3-ヒドロキシ-5-(フェニルスルフィニル)吉草酸ユニットまたは、下記化学式(7):
【0111】
【化58】
【0112】
で表される3-ヒドロキシ-5-(フェニルスルホニル)吉草酸ユニットのうち、少なくとも1種類以上をポリマー分子中に含み、
さらに、下記化学式(8):
【0113】
【化59】
【0114】
で表される3-ヒドロキシ-5-(フェニルスルファニル)吉草酸ユニットをポリマー分子中に含むこともあるポリヒドロキシアルカノエートの製造方法とすることができる。
【0115】
また、本発明のPHAの製造方法は、その一つの形態として、下記化学式(20):
【0116】
【化60】
【0117】
で表される4-(フェニルスルファニル)酪酸を含む培地中で微生物を培養する工程と、培養された微生物により生産されたポリヒドロキシアルカノエートを、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、メタクロロ過安息香酸、過蟻酸、過酢酸からなる群から選ばれる一種類以上の過酸化化合物で処理する工程とを有し、下記化学式(9):
【0118】
【化61】
【0119】
で表される3-ヒドロキシ-4-(フェニルフィニル)酪酸ユニットまたは、下記化学式(10):
【0120】
【化62】
【0121】
で表される3-ヒドロキシ-4-(フェニルスルホニル)酪酸ユニットのうち、少なくとも1種類以上をポリマー分子中に含み、
さらに、下記化学式(11):
【0122】
【化63】
【0123】
で表される3-ヒドロキシ-4-(フェニルスルファニル)酪酸ユニットを含むこともあるポリヒドロキシアルカノエートの製造方法とすることもできる。
【0124】
さらには、本発明のPHAの製造方法は、その一つの形態として、下記化学式(21):
【0125】
【化64】
【0126】
で表される5-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]吉草酸を含む培地中で微生物を培養する工程と、培養された微生物により生産されたポリヒドロキシアルカノエートを、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、メタクロロ過安息香酸、過蟻酸、過酢酸からなる群から選ばれる一種類以上の過酸化化合物で処理する工程とを有し、下記化学式(12):
【0127】
【化65】
【0128】
で表される3-ヒドロキシ-5-[(4-フルオロフェニル)スルフィニル]吉草酸ユニットまたは、下記化学式(13):
【0129】
【化66】
【0130】
で表される3-ヒドロキシ-5-[(4-フルオロフェニル)スルホニル]吉草酸ユニットのうち、少なくとも1種類以上をポリマー分子中に含み、
さらに、下記化学式(14):
【0131】
【化67】
【0132】
で表される3-ヒドロキシ-5-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]吉草酸ユニットを含むこともあるポリヒドロキシアルカノエートの製造方法とすることもできる。
【0133】
さらには、本発明のPHAの製造方法は、その一つの形態として、下記化学式(22):
【0134】
【化68】
【0135】
で表される5-[(3-フルオロフェニル)スルファニル]吉草酸を含む培地中で微生物を培養する工程と、培養された微生物により生産されたポリヒドロキシアルカノエートを、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、メタクロロ過安息香酸、過蟻酸、過酢酸からなる群から選ばれる一種類以上の過酸化化合物で処理する工程とを有し、下記化学式(15):
【0136】
【化69】
【0137】
で表される3-ヒドロキシ-5-[(3-フルオロフェニル)スルフィニル]吉草酸ユニットまたは、下記化学式(16):
【0138】
【化70】
【0139】
で表される3-ヒドロキシ-5-[(3-フルオロフェニル)スルホニル]吉草酸ユニットのうち、少なくとも1種類以上をポリマー分子中に含み、
さらに、下記化学式(17):
【0140】
【化71】
【0141】
で表される3-ヒドロキシ-5-[(3-フルオロフェニル)スルファニル]吉草酸ユニットを含むこともあるポリヒドロキシアルカノエートの製造方法とすることもできる。
【0142】
本発明のPHAの製造方法においては、工程1においてポリヒドロキシアルカノエートを生産する微生物が、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物であることを特徴とする製造方法とすると好ましい。その際、例えば、前記シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物が、シュードモナス・チコリアイ YN2株(Pseudomonas cichorii YN2; FERM BP-7375)、シュードモナス・チコリアイ H45株(Pseudomonas cichorii H45; FERM BP-7374)、シュードモナス・ジェッセニイ P161株(Pseudomonas jessenii P161; FERM BP-7376)のうちから選択される微生物であるとより好ましい。
【0143】
また本発明者らは、高性能でかつ、実質的に無色である荷電制御剤を開発すべく鋭意検討したところ本発明に到達した。
【0144】
すなわち本発明は、(1)、(2)で表されるモノマーユニットのうち少なくとも1種類のユニットを有するポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を含有してなる荷電制御剤である。
【0145】
【化72】
【0146】
但し、Rは「H、ハロゲン原子、CN、NO2、COOR'、SO2R"(R':H、Na、K、CH3、C2H5;R":OH、ONa、OK、ハロゲン原子、OCH3、OC2H5)」から任意に選択される。
【0147】
また、xは化学式中に示した範囲内から選ばれた整数であり、ユニット毎に違う値をとり得る。
【0148】
本発明の荷電制御剤中に含有されるPHAは、上記化学式(1),(2)に示されるユニット以外に化学式(3)に示されるユニットを含んでいてもよい。
【0149】
【化73】
【0150】
但し、Rは「H、ハロゲン原子、CN、NO2、COOR'、SO2R"(R':H、Na、K、CH3、C2H5;R":OH、ONa、OK、ハロゲン原子、OCH3、OC2H5)」から任意に選択される。
【0151】
また、xは化学式中に示した範囲内から選ばれた整数であり、ユニット毎に違う値をとり得る。
【0152】
本発明の荷電制御剤中に含有されるPHAは、上記化学式(1),(2),及び(3)に示されるユニット以外に化学式(4)及び(5)に示されるユニットの少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0153】
【化74】
【0154】
y及びzは化学式中に示した範囲内から選ばれた整数であり、(1),(2),(3)で示すユニットと独立してユニット毎に違う値をとり得る。
【0155】
本発明の荷電制御剤中に含有されるポリヒドロキシアルカノエートの数平均分子量は、1000 から 500000 の範囲である。
【0156】
さらに本発明は、本発明の該荷電制御剤を含有してなるトナーバインダーに関連する。
【0157】
さらに本発明は、少なくとも、バインダー樹脂と着色剤と、該荷電制御剤を含有してなる静電荷像現像トナーに関連する。
【0158】
また本発明は、外部より帯電部材に電圧を印加して静電潜像担持体に帯電を行う工程と、帯電された静電潜像担持体に静電荷像を形成する工程と、該静電荷像を静電荷像現像トナーにより現像してトナー像を静電潜像担持体上に形成する現像工程と、静電潜像担持体上のトナー像を被記録材へ転写する転写工程と、被記録材上のトナー像を加熱定着する定着工程とを少なくとも有する画像形成方法において、
少なくとも、バインダー樹脂と、着色剤と、該荷電制御剤を含有してなる静電荷像現像トナーを使用することを特徴とする画像形成方法に関連する。
【0159】
さらに本発明は、外部より帯電部材に電圧を印加して静電潜像担持体に帯電を行う工程と、帯電された静電潜像担持体に静電荷像を形成する工程と、該静電荷像を静電荷像現像トナーにより現像してトナー像を静電潜像担持体上に形成する現像工程と、静電潜像担持体上のトナー像を中間の転写体に転写する第1の転写工程と、該中間の転写体上のトナー像を被記録材に転写する第2の転写工程と、被記録材上のトナー像を加熱定着する定着工程とを少なくとも有する画像形成方法において、
少なくとも、バインダー樹脂と着色剤と、該荷電制御剤を含有してなる静電荷像現像トナーを使用することを特徴とする画像形成方法に関連する。
【0160】
また本発明は、外部より帯電部材に電圧を印加して静電潜像担持体に帯電を行う手段と、帯電された静電潜像担持体に静電荷像を形成する手段と、該静電荷像を静電荷像現像トナーにより現像してトナー像を静電潜像担持体上に形成する現像手段と、静電潜像担持体上のトナー像を被記録材へ転写する転写手段と、被記録材上のトナー像を加熱定着する定着手段とを少なくとも有する画像形成装置において、
少なくとも、バインダー樹脂と、着色剤と、該荷電制御剤を含有してなる静電荷像現像トナーを使用することを特徴とする画像形成装置に関連する。
【0161】
さらに本発明は、外部より帯電部材に電圧を印加して静電潜像担持体に帯電を行う手段と、帯電された静電潜像担持体に静電荷像を形成する手段と、該静電荷像を静電荷像現像トナーにより現像してトナー像を静電潜像担持体上に形成する現像手段と、静電潜像担持体上のトナー像を中間の転写体に転写する第1の転写手段と、該中間の転写体上のトナー像を被記録材に転写する第2の転写手段と、被記録材上のトナー像を加熱定着する定着手段とを少なくとも有する画像形成装置において、
少なくとも、バインダー樹脂と着色剤と、該荷電制御剤を含有してなる静電荷像現像トナーを使用することを特徴とする画像形成装置に関連する。
【0162】
【発明の実施の形態】
本発明の新規なポリヒドロキシアルカノエートは、含まれるヒドロキシアルカン酸のモノマーユニット中に、スルホキシド構造(-SO-)及びスルホン構造(-SO2-)のうち少なくとも一種類を有し、この構造によりこれまでに知られている微生物生産ポリヒドロキシアルカノエートとは著しく異なった物理化学的性質を有している。本発明のポリヒドロキシアルカノエートは、PHA生産能力を有する微生物を、原料となるカルボン酸誘導体であるω-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸に加えて、増殖用炭素源を含んだ培地中で培養する工程、この培養工程において微生物により生産され、その細胞内に蓄積される、側鎖末端に置換フェニルスルファニル基を有するユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを過酸化化合物により処理する工程、この二段階の工程を経て製造されるものである。すなわち、本発明のPHAの製造方法では、中間原料として、側鎖末端に置換フェニルスルファニル基を有するユニットを含むPHAを微生物を用いて生産させ、そのスルファニル基(-S-)を過酸化化合物を利用して、選択的に酸化処理して、目的とするスルホキシド構造(-SO-)及びスルホン構造(-SO2-)のうち少なくとも一種類を有するPHAに変換している。
【0163】
以下に、本発明について、より詳細に説明する。
【0164】
(カルボン酸誘導体)
本発明で用いるω-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸は、一般式(18)で示される化合物である。
【0165】
【化75】
【0166】
(式中、Rは、H、ハロゲン原子、CN、NO2、COOR'、SO2R”(なお、R'は、H、Na、K、CH3、C2H5のいずれかを表し、R”は、OH、ONa、OK、ハロゲン原子、OCH3、OC2H5のいずれかを表す)から任意に選択される基であり、また、xは、1〜7から選択される整数である)。
【0167】
この化合物は、例えば一般式(23)で示される化合物
【0168】
【化76】
【0169】
(式中、Rは、H、ハロゲン原子、CN、NO2、COOR'、SO2R”(なお、R'は、H、Na、K、CH3、C2H5のいずれかを表し、R”は、OH、ONa、OK、ハロゲン原子、OCH3、OC2H5のいずれかを表す)から任意に選択される基であり、また、xは、1〜7から選択される整数である)。
と、ω-ブロモアルカン酸エステルを反応させて、ω-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸エステルを合成した後、エステルを加水分解することにより得ることができる。
【0170】
本発明のPHAの製造方法では、中間原料とする前駆体PHAの生産に用いる微生物は、原料とする一般式(18)で示される化合物を含む培地中で培養した際、対応する側鎖末端に置換フェニルスルファニル基を有する3-ヒドロキシアルカン酸ユニットを含むPHAを生産し、その細胞内に蓄積する微生物であれば、いかなる微生物であってもよい。例えば、PHA産生能を有するシュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物が挙げられる。好適なシュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物の一例を挙げると、シュードモナス・チコリアイYN2株(Pseudomonas cichorii YN2;FERM BP-7375)、シュードモナス・チコリアイ H45株(Pseudomonas cichorii H45、FERM BP-7374)、シュードモナス・ジェッセニイ P161株(Pseudomonas jessenii P161、FERM BP-7376)の三種の菌株が挙げられる。これら三種の微生物は、寄託者として本願出願人を名義として、先に国内寄託され、その後、その原寄託よりブタペスト条約に基づく寄託へと移管され、国際寄託機関としての、経済産業省 産業技術総合研究所 生命工学工業技術研究所(NIBH)に、それぞれ前記の受託番号を付与され寄託されている。また、新規なPHA産生能を有する菌株として、既に、特願平11-371863号(特開2001-178484号公報)に記載されている微生物である。
【0171】
以下に、YN2株、H45株及びP161株について、その菌学的性質を示す。
【0172】
<YN2株の菌学的性質>
(1)形態学的性質
細胞の形と大きさ :桿菌、0.8μm×1.5〜2.0μm
細胞の多形性 :なし
運動性 :あり
胞子形成 :なし
グラム染色性 :陰性
コロニー形状 :円形、全縁なめらか、低凸状、
表層なめらか、光沢、半透明
(2)生理学的性質
カタラーゼ :陽性
オキシダーゼ :陽性
O/F試験 :酸化型(非発酵性)
硝酸塩の還元 :陰性
インドールの生成 :陽性
ブドウ糖酸性化 :陰性
アルギニンジヒドロラーゼ :陰性
ウレアーゼ :陰性
エスクリン加水分解 :陰性
ゼラチン加水分解 :陰性
β-ガラクトシダーゼ :陰性
King's B寒天での蛍光色素産生:陽性
4%NaClでの生育 :陽性(弱い生育)
ポリ-β-ヒドロキシ酪酸の蓄積 :陰性(*)
Tween 80 の加水分解 :陽性
* nutrient agar培養コロニーをズダンブラックで染色することで判定。
(3)基質資化能
ブドウ糖 :陽性
L-アラビノース :陽性
D-マンノース :陰性
D-マンニトール :陰性
N-アセチル-D-グルコサミン :陰性
マルトース :陰性
グルコン酸カリウム :陽性
n-カプリン酸 :陽性
アジピン酸 :陰性
dl-リンゴ酸 :陽性
クエン酸ナトリウム :陽性
酢酸フェニル :陽性
<H45株の菌学的性質>
(1)形態学的性質
細胞の形と大きさ :桿菌、0.8μm×1.0〜1.2μm
細胞の多形性 :なし
運動性 :あり
胞子形成 :なし
グラム染色性 :陰性
コロニー形状 :円形、全縁なめらか、低凸状、
表層なめらか、光沢、クリーム色
(2)生理学的性質
カタラーゼ :陽性
オキシダーゼ :陽性
O/F試験 :酸化型
硝酸塩の還元 :陰性
インドールの生成 :陰性
ブドウ糖酸性化 :陰性
アルギニンジヒドロラーゼ :陰性
ウレアーゼ :陰性
エスクリン加水分解 :陰性
ゼラチン加水分解 :陰性
β-ガラクトシダーゼ :陰性
King's B寒天での蛍光色素産生 :陽性
4%NaClでの生育 :陰性
ポリ-β-ヒドロキシ酪酸の蓄積 :陰性
(3)基質資化能
ブドウ糖 :陽性
L-アラビノース :陰性
D-マンノース :陽性
D-マンニトール :陽性
N-アセチル-D-グルコサミン :陽性
マルトース :陰性
グルコン酸カリウム :陽性
n-カプリン酸 :陽性
アジピン酸 :陰性
dl-リンゴ酸 :陽性
クエン酸ナトリウム :陽性
酢酸フェニル :陽性
<P161株の菌学的性質>
(2)生理学的性質
カタラーゼ :陽性
オキシダーゼ :陽性
O/F試験 :酸化型
硝酸塩の還元 :陽性
インドールの生成 :陰性
ブドウ糖酸性化 :陰性
アルギニンジヒドロラーゼ :陽性
ウレアーゼ :陰性
エスクリン加水分解 :陰性
ゼラチン加水分解 :陰性
β-ガラクトシダーゼ :陰性
King's B寒天での蛍光色素産生 :陽性
(3)基質資化能
ブドウ糖 :陽性
L-アラビノース :陽性
D-マンノース :陽性
D-マンニトール :陽性
N-アセチル-D-グルコサミン :陽性
マルトース :陰性
グルコン酸カリウム :陽性
n-カプリン酸 :陽性
アジピン酸 :陰性
dl-リンゴ酸 :陽性
クエン酸ナトリウム :陽性
酢酸フェニル :陽性
また、シュードモナス属に属する微生物に加えて、アエロモナス属(Aeromonas sp.)、コマモナス属(Comamonas sp.)、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)などに属し、前記一般式(18)で表される置換アルカン酸を原料(基質)として用いて、前記一般式(3)で表される3-ヒドロキシアルカン酸ユニットを含むPHAを生産する微生物を用いることも可能である。
【0173】
(培養工程)
本発明にかかるPHAの製造方法の工程1においては、上記するPHA産生能を有する微生物を利用して、原料の上記一般式(18)に記載されるω-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸から、対応する前記一般式(3)で表される、側鎖末端に置換フェニルスルファニル基を有する3-ヒドロキシアルカン酸ユニットを含むPHAを生産させる。
【0174】
この工程1に利用する微生物の通常の培養、例えば、保存菌株の作製、PHAの生産に必要とされる菌数や活性状態を確保するための増殖などには、用いる微生物の増殖に必要な成分を含有する培地を適宜選択して用いる。例えば、微生物の生育や生存に悪影響を及ぼすものでない限り、一般的な天然培地(肉汁培地、酵母エキスなど)や、栄養源を添加した合成培地など、いかなる種類の培地をも用いることができる。温度、通気、攪拌などの培養条件は、用いる微生物に応じて適宜選択する。
【0175】
一方、工程1において、前記したようなPHA生産微生物を用いて、目的とする一般式(3)で表される、側鎖末端に置換フェニルスルファニル基を有する3-ヒドロキシアルカン酸ユニットを含むPHAを製造する際には、培地として、PHA生産用の原料として、このモノマーユニットに対応する、上記一般式(18)で示されるω-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸類化合物に加えて、微生物の増殖用炭素源とを少なくとも含んだ無機培地などを用いることができる。原料の一般式(18)で示される化合物は、培地あたり0.01%〜1%(w/v)の範囲、より好ましくは、0.02%〜0.2%(w/v)の範囲に初期の含有率を選択することが望ましい。原料の一般式(18)で示されるω-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸は、末端に芳香環を有するなどの構造のため、その水溶性は必ずしも良好ではないが、上記する微生物は、この化合物を基質として利用できる特性を有するので、培養当初、その溶解度を超える部分は、部分的に懸濁された状態であっても、培養を継続する間に微生物が徐々にその細胞内に取り込む結果、部分的に懸濁されていたものが代わって、培地に溶解するので何ら問題とはならない。
【0176】
なお、原料の一般式(18)で示される化合物は、分散性を高めるため、場合によっては、1-ヘキサデセンやn-ヘキサデカンのような溶媒に溶解、あるいは、微細な懸濁物とした形状で培地中に添加することも可能である。その際には、利用する1-ヘキサデセンやn-ヘキサデカンのような溶媒の添加濃度は、培地に対して、その濃度は3%(v/v)以下にすることが必要である。
【0177】
培地には、微生物が増殖の際、炭素源などとして利用する増殖用基質を別途添加する。この増殖用基質は、酵母エキスやポリペプトン、肉エキスといった栄養素を用いることが可能である。更に、糖類、TCA回路中の中間体として生じる有機酸ならびにTCA回路から一段階ないしは二段階の生化学反応を経て生じる有機酸またはその塩、アミノ酸またはその塩、炭素数4〜12 の直鎖アルカン酸またはその塩などから、用いる菌株に応じて、炭素源としての有用性を考慮して、適宜選択することができる。
【0178】
これら種々の増殖用基質のうち、糖類としては、グリセロアルデヒド、エリトロース、アラビノース、キシロース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースといったアルドース、グリセロール、エリトリトール、キシリトール等のアルジトール、グルコン酸等のアルドン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸等のウロン酸、マルトース、スクロース、ラクトースといった二糖等から選ばれる1つ以上の化合物が好適に利用できる。
【0179】
また、有機酸あるいはその塩としては、ピルビン酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、コハク酸またはそれらの塩からなる群から選ばれる1つ以上の化合物が好適に利用できる。一方、アミノ酸またはその塩としては、グルタミン酸、アスパラギン酸あるいはそれらの塩からなる群から選ばれる1つ以上の化合物が好適に利用できる。
【0180】
一般に、これら種々の増殖用基質の中でも、ポリペプトンや糖類を用いるのがより好ましく、また、糖類の中では、グルコース、フルクトース、マンノースからなる群から選択される少なくとも一つを用いることがさらに好ましい。これらの増殖用基質は、通常、培地あたり 0.1%〜5%(w/v)の範囲、より好ましくは、0.2%〜2%(w/v)の範囲にその含有率を選択することが望ましい。
【0181】
微生物にPHAを生産・蓄積させる工程1における、培養方法としては、一旦十分に増殖させた後に、塩化アンモニウムのような窒素源を制限した培地へ菌体を移し、目的ユニットの基質となる化合物を加えた状態でさらに培養すると生産性が向上する場合がある。例えば、前記の異なる培養条件からなる工程を複数段接続した多段方式の採用が挙げられる。
【0182】
より具体的には、(工程1-1)として、一般式(18)で示される化合物、ならびに炭素源となるポリペプトンを含む培地中で微生物を培養する工程を対数増殖後期から定常期の時点まで続け、一旦菌体を遠心分離等で回収した後、これに続き、(工程1-2)として、一般式(18)で示される化合物、ならびに炭素源となる有機酸またはその塩とを含み、窒素源を含まない培地中で、前段の工程1-1で培養・増殖した微生物の菌体をされに培養する工程を行なう二段階培養方法、あるいは、(工程1-3)として、一般式(18)で示される化合物、ならびに炭素源となるグルコースを含む培地中で微生物を培養する工程を対数増殖後期から定常期の時点まで続け、一旦菌体を遠心分離等で回収した後、これに続き、(工程1-4)として、一般式(18)で示される化合物、ならびに炭素源となるグルコースを含み、窒素源を含まない培地中で、前段の工程1-3で培養・増殖した微生物の菌体をされに培養する工程を行なう二段階培養方法等を利用することが一層好ましい。この二段階培養方法では、前段において、原料の上記一般式(18)に記載されるω-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸から、対応する前記一般式(3)で表される、側鎖末端に置換フェニルスルファニル基を有する3-ヒドロキシアルカン酸ユニットを含むPHAを生産させつつ、菌体の増殖を予め行い、後段では、窒素源を含まない培地中で、既に培養された菌体に、主にPHAの生産を行わせる培養形態とすることで、細胞内に蓄積されるPHA量をさらに高くすることができる。
【0183】
工程1における培養温度は、上記の菌株が良好に増殖可能な温度であればよく、例えば、15〜40℃、好ましくは 20〜35℃の範囲、より好ましくは 20℃〜30℃の範囲に選択するこのが適当である。
【0184】
培養は、液体培養、固体培養など、利用する微生物が増殖し、培地中に含有される原料の一般式(18)に記載される化合物から、前記一般式(3)で表されるユニットを含むPHAを生産する培養方法ならば、いかなる培養方法をも用いることができる。さらには、原料、炭素源、さらには酸素の供給が適正に行われるならば、バッチ培養、フェドバッチ培養、半連続培養、連続培養などの種類も問わない。例えば、液体バッチ培養の形態としては、振とうフラスコによって振とうさせて酸素を供給する方法、ジャーファーメンターによる攪拌通気方式の酸素供給方法がある。
【0185】
上記の培養方法に用いる無機培地としては、リン源(例えば、リン酸塩など)、窒素源(例えば、アンモニウム塩、硝酸塩など)等、微生物の増殖に必要な成分を含んでいる培地であればいかなるものでも良く、例えば、MSB培地、M9培地等を挙げることができる。
【0186】
例えば、後の述べる実施例において用いた無機塩培地:M9培地の組成を以下に示す。
[M9培地]
Na2HPO4 6.2g
KH2PO4 3.0g
NaCl 0.5g
NH4Cl 1.0g
(培地1リットル中、pH7.0)
更に、良好な増殖と、それに伴うPHAの生産のためには、上記の無機塩培地に、例えば、以下に示す微量成分溶液を 0.3%(v/v)程度添加して、必須微量元素を補う必要がある。
【0187】
[微量成分溶液]
ニトリロ三酢酸 :1.5g;
MgSO4 :3.0g;
MnSO4 :0.5g;
NaCl :1.0g;
FeSO4 :0.1g;
CaCl2 :0.1g;
CoCl2 :0.1g;
ZnSO4 :0.1g;
CuSO4 :0.1g;
AlK(SO4)2 :0.1g;
H3BO3 :0.1g;
Na2MoO4 :0.1g;
NiCl2 :0.1g
(溶液1リットル中、pH7.0)
(過酸化化合物処理工程)
例えば、本出願人により先に出願された、特願 2001-057145 号及び特願 2001-057142 号に開示されているように、本発明に用いる微生物はこのような培養方法により、一般式(3)で示される、側鎖末端にフェニルスルファニル基または置換フェニルスルファニル基として、スルファニル基(-S-)を有するユニットを含むPHAを生産する。本発明のPHAはこのようにして生産されたPHAの硫黄部分、スルファニル基(-S-)を選択的に酸化することで製造することができる。その具体的な例としては、一般式(3)で示されるユニットを含むPHAに、過酸化化合物による酸化処理を施すことで製造することができる。
【0188】
この本発明のPHAの製造方法で用いることができる過酸化化合物は、本発明の目的、すなわち、フェニルスルファニル基または置換フェニルスルファニル基として存在するスルファニル基(-S-)の酸化に寄与し得るものであれば、いかなる種類の過酸化化合物をも用いることが可能である。その際、酸化効率、PHA主鎖骨格への影響、処理の簡便さ等を考慮した場合、特に、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、メタクロロ過安息香酸、過蟻酸、過酢酸からなる群から選択される過酸化化合物を用いることが好ましい。
【0189】
まず、その中でも処理方法が容易な過酸化水素を利用する処理について述べる。最も簡便な過酸化水素による処理方法は、前記の培養条件で微生物を培養し、本発明のPHAの前駆体である、一般式(3)で示されるユニットを含むPHAを蓄積した微生物細胞をそのまま過酸化水素水に懸濁し、場合によっては一定時間加熱、攪拌して菌体の処理を行った後、不溶成分として、目的とするPHAを回収する方法である。過酸化水素の濃度が比較的高い場合、または、反応温度が比較的高い場合には、菌体細胞由来の不溶成分、例えば、細胞膜などは、酸化を受けて、分解・可溶化され、本発明のPHAのみが、不溶成分としてほぼ純粋な形で回収される。一方、温和な条件の場合には、分解・可溶化が十分に果たされず、一部菌体細胞由来の生体細胞を破砕する工程が残留する場合がある。
【0190】
このような温和な条件を利用する際には、予め培養微生物細胞を破砕し、菌体細胞由来の不溶成分を除去して、本発明のPHAの前駆体である、一般式(3)で示されるユニットを含むPHAを粗製で回収した後に、過酸化水素水で処理する方法を採用することも可能である。この予め培養微生物細胞を破砕し、中間原料(前駆体)のPHAを分離・回収する工程を設ける方法をとると、比較的温和な条件で、過酸化水素水による処理を行う際にも、十分に純度の高いPHAが回収される。
【0191】
本発明のPHAの製造方法において、前記の生体細胞を破砕する工程では、超音波破砕法、ホモジナイザー法、圧力破砕法、ビーズ衝撃法、摩砕法、擂潰法(ガラス粉末やアルミナ粉末等の助剤を加えて乳鉢中ですり潰す方法)、凍結融解法など、細胞膜の破砕に薬剤を使用しない手段を用いることが好ましい。生体細胞を破砕する工程後、更に、分離した不溶成分の再懸濁液を遠心分離等の方法により固体成分と可溶成分とを分離し、中間原料となるPHA成分が含まれている固体成分のみを過酸化水素で処理する。
【0192】
更に、もう一つのPHAの分離方法としては、培養工程の後、PHA蓄積微生物細胞から、クロロホルム、ジクロロメタンやアセトンといった蓄積PHAの可溶溶媒によりPHAのみを抽出・単離する手段を利用することもできる。抽出・単離した後、得られたPHAのみを過酸化水素により処理する方法である。この溶媒抽出を利用する方法においては、微生物細胞から抽出・回収される前駆体PHAは、過酸化水素処理を行う水系媒体中で塊状になりやすい。前駆体PHAが塊状となった場合、過酸化水素などの過酸化化合物との接触の妨げとなり、場合によっては、この酸化反応の効率を著しく低下させることもあるなど、操作上の困難さ・煩雑さを伴う場合が多い。その観点からは、先に述べた2つの方法は、前駆体PHAは、本来、微生物細胞中に微粒子状で存在しており、その状態のまま、微粒子状の前駆体PHAを水懸濁状態で過酸化水素処理を施すことが可能であることから、操作上もより簡便な方法である。
【0193】
本発明のPHAの製造方法で、酸化剤として利用する過酸化水素は、本発明の目的、すなわち、フェニルスルファニル基または置換フェニルスルファニル基として存在するスルファニル基(-S-)の酸化を行える限り、いかなる形態のものをも用いることが可能である。なお、製造工程の制御という観点からは、その濃度などが、安定した性状の過酸化水素の溶液、例えば、過酸化水素水など、水系溶媒中に溶解したものを用いることが望ましい。一例として、工業的に多量に安定生産可能な、JIS K-8230 に則った過酸化水素水は推奨されるべきものであり、例えば、三菱瓦斯化学(株)製 過酸化水素水(31%過酸化水素含有)は、本発明の方法において、好適な過酸化水素の溶液である。
【0194】
本発明のPHAの製造方法において、この過酸化水素を用いる酸化処理の条件は、処理されるPHAの状態(菌体成分の有無、塊状か微粒子状か等)により異なるが、概ね以下の範囲に選択することが好ましい。一般に、菌体成分の残存量が少ない場合、また、前駆体PHA形状が微粒子状である場合には、不要な菌体成分の酸化・可溶化が容易に行え、あるいは、微粒子状のPHA自体では、より速やかな処理がなされるので、温和な条件を用いることができる。前記、JIS K-8230 規格品の過酸化水素水(31%過酸化水素含有)を利用する際、その希釈条件(濃度)、使用量、処理温度、時間などは、下記する範囲に選択することができる。
処理液中の酸化水素濃度:反応温度にもよるが、8%(約4倍希釈)〜31%(原液)、より好ましい濃度範囲としては、16%(約2倍希釈)〜31%(原液)
反応量:前駆体PHA中に含まれる一般式(3)のユニットの比率にも依存するものの、処理前PHA1gに対して、原液過酸化水素水(31%過酸化水素含有)換算で 30mL〜500mL、より好ましい反応量は、100mL〜300mLの範囲である。
反応温度:処理液中の濃度にもよるが、30℃〜100℃、より好ましい温度としては、80℃〜100℃の範囲に選択する。
反応時間:反応温度にもよるが、10分〜180分、より好ましい時間としては、30分〜120分の範囲である。
【0195】
前記する条件の範囲で、過酸化水素処理を施すことにより、微生物菌体に蓄積されていた、一般式(3)で示されるユニットを含む前駆体PHAから、以下に示す一般式(1)ならびに一般式(2)で示されるユニットのうち、少なくとも1種類をポリマー分子中に含むPHA、あるいは、一般式(1)ならびに一般式(2)で示されるユニットに加えて、中間原料のPHAに由来する一般式(3)で表されるユニットをなお残すPHAへと変換できる。その場合、過酸化水素処理の反応条件を選択して、酸化の進行速度、反応量を制御することにより、前記三種の各ユニットの存在比を制御することが可能となる。
【0196】
【化77】
【0197】
(式中、Rは、H、ハロゲン原子、CN、NO2、COOR'、SO2R”(なお、R'は、H、Na、K、CH3、C2H5のいずれかを表し、R”は、OH、ONa、OK、ハロゲン原子、OCH3、OC2H5のいずれかを表す)から任意に選択される基であり、また、xは、1〜7から選ばれた整数であり、ユニット毎に違う値をとり得る。)
【0198】
【化78】
【0199】
(式中、Rは、H、ハロゲン原子、CN、NO2、COOR'、SO2R”(なお、R'は、H、Na、K、CH3、C2H5のいずれかを表し、R”は、OH、ONa、OK、ハロゲン原子、OCH3、OC2H5のいずれかを表す)から任意に選択される基であり、また、xは、1〜7から選ばれた整数であり、ユニット毎に違う値をとり得る。)
【0200】
【化79】
【0201】
(式中、Rは、H、ハロゲン原子、CN、NO2、COOR'、SO2R”(なお、R'は、H、Na、K、CH3、C2H5のいずれかを表し、R”は、OH、ONa、OK、ハロゲン原子、OCH3、OC2H5のいずれかを表す)から任意に選択される基であり、また、xは、1〜7から選ばれた整数であり、ユニット毎に違う値をとり得る。)
次に、過酸化化合物として、メタクロロ過安息香酸(MCPBA)を用いる方法について述べる。
【0202】
MCPBAを用いると、フェニルスルファニル基または置換フェニルスルファニル基として存在するスルファニル基(-S-)の酸化は、化学量論的に進行するため、一般式(1)ならびに一般式(2)で示されるユニットの含有比率の制御がし易い。また、その反応条件が温和であるため、PHA主鎖骨格の切断や活性部位の架橋反応等、不要な副次反応が起こり難い。従って、本発明のPHAの製造方法において、高い選択性で目的とするPHAを製造する上では、メタクロロ過安息香酸(MCPBA)は、非常に好適な過酸化化合物の一つである。
【0203】
一般的な反応条件として、スルファニル基(-S-)をスルフィニル基(-SO-)まで選択的に酸化するためには、中間原料のPHA(前駆体)中のスルファニル基(-S-)を含むユニットモル量、1モルに対して、MCPBAを若干過剰量、具体的には、1.1〜1.4 モル量の範囲に選択し、クロロホルム中、温度を0℃〜30℃の範囲に選択して、反応せしめる。前記の反応条件範囲においては、反応時間を 10時間程度とすると、理論値のほぼ 90%、20時間程度とすると、理論値のほぼ 100%まで、酸化を進行させることができる。
【0204】
また、スルファニル基(-S-)を全てスルホニル基(-SO2-)まで酸化するためには、中間原料のPHA(前駆体)中のスルファニル基(-S-)を含むユニットモル量、1モルに対して、MCPBAを2モルより若干過剰量、具体的には、2.1〜2.4 モル量の範囲に選択し、前記と同様の溶媒、温度、時間条件を選択して、反応を行えばよい。
【0205】
本発明の方法により製造される、微生物産生のPHAを中間原料とする、PHAポリマーには、スルフィニル構造(-SO-)及びスルホニル構造(-SO2-)のうち、少なくとも一方を有するユニットが、そのポリマー分子中に含まれている。これらの構造は、かかるユニット末端における、分子中の電子の局在化を強力に促し、その電気的な性質は、従来のPHAと比べ著しく異なっている可能性がある。また、このような電子の局在化により、溶媒に対する挙動も、従来のPHAと異なるものとなる。一例を挙げると、実施例中にも記載されているように、ジメチルホルムアミド(DMF)のような極性溶媒にも溶解可能となる。加えて、スルフィニル構造(-SO-)あるいはスルホニル構造(-SO2-)に起因する、このような性質により、イオン交換樹脂相当の機能を発揮する可能性がある。また、このような極性を示すので、生体に対する親和性も高まることが考えられ、生体適合性材料としての用途も期待される。なお、生分解性に関しては、含有される3-ヒドロキシアルカン酸ユニットは、元来微生物が産生するPHAを中間原料とするもので、同一の光学異性体であり、その生分解性を保持することは勿論のことである。
【0206】
また、本発明PHAが荷電制御剤としてきわめて優れた特性を有し、かつ、人体や環境に対する安全性が高いことを見出し、さらには、該荷電制御剤を含有する静電荷像現像用トナー及び該静電荷像現像用トナーを一定の現像システムを有する画像形成装置に使用した場合に著しい効果があることを見出し本発明が完成した。
【0207】
即ち、本発明は化学式(1)、(2)で表されるモノマーユニットのうち少なくとも1種類のユニットを有するポリヒドロキシアルカノエートを含有してなり、化学式(3)に示されるユニットを含むこともある荷電制御剤であり、更には該荷電制御剤を含有してなる静電荷像現像用トナーである。更には上記の静電荷像現像用トナーを、外部より帯電部材に電圧を印加し、静電潜像担持体を均一に帯電させる帯電工程と、静電潜像担持体上にトナー像を形成する現像工程と、静電潜像担持体上のトナー像を中間の転写体を介して、または、介さずに被転写材へ転写する転写工程と、被転写材上のトナー像を熱によって定着する加熱定着工程とを有する画像形成方法であり、また該方法の各工程に対応する各手段、すなわち帯電手段、現像手段、転写手段、加熱定着手段を有する画像形成装置である。
【0208】
ここで、上に示す化合物は生分解性樹脂としての基本骨格を有しており、それゆえ、従来のプラスチックと同様、溶融加工等により各種製品の生産に利用することができるとともに、石油由来の合成高分子とは異なり、生物により分解され、自然界の物質循環に取り込まれるという際立った特性を有している。そのため、燃焼処理を行う必要もなく、大気汚染や地球温暖化を防止するという観点でも有効な材料であり、環境保全を可能とするプラスチックとして利用することができる。
【0209】
本発明の静電荷像現像用トナーに使用する帯電制御剤として好適な、上に示す化合物について具体的に説明する。本発明において使用する化合物は、3-ヒドロキシアルカノエートをモノマー単位とするポリエステル樹脂であって、側鎖にフェニルスルフィニル構造を有するユニット、及び側鎖にフェニルスルホニル構造を有するユニットを少なくとも1種類以上含むものである。また、本発明の化合物は、これら2種類のユニット以外に、側鎖にフェニルスルファニル構造を有するユニットを含んでいても良い。また、これら側鎖の芳香環部分には、H、ハロゲン原子,CN,NO2,COOR',SO2R"(R':H,Na,K,CH3,C2H5;R":OH,ONa、OK、ハロゲン原子,OCH3,OC2H5)」から任意に選択される官能基が置換されていても良い。更に本発明の化合物は、これら3種類のユニット以外に、直鎖の3-ヒドロキシアルカノエート及び側鎖に不飽和結合を含んだ3-ヒドロキシアルケノエートを同時に或いは独立して含んでいても良い。
【0210】
ここで、このような化合物を微生物により生産する工程を含んだ方法で製造した場合、本発明の上に示す化合物はR体のみからなるアイソタクチックなポリマーであるが、物性/機能の両面において本発明の目的を達成しうるならば、特にアイソタクチックなポリマーである必要はなく、アタクチックなポリマーについても利用することが可能である。また、ラクトン化合物の開環重合などを利用した化学合成法に本発明に示した化合物を得ることも可能である。
【0211】
また、本発明の荷電制御剤に用いるポリヒドロキシアルカノエートの製造方法は、上に詳述したとおりである。
【0212】
本発明において重要なことは、化学式(1)で示される、側鎖にフェニルスルフィニル構造を有するユニット、及び化学式(2)で示される、側鎖にフェニルスルホニル構造を有するユニットである。これらの構造により分子内で電子の局在化が起こり、本発明の荷電制御剤は優れた正帯電性を有するものとなる。これらの構造を有するユニットを含む本発明の荷電制御剤は、これまで開示されてきた正帯電性高分子電荷制御剤とは異なり、イオン性官能基を含有せず、耐湿性を含めた耐候性に優れたものである。
【0213】
また、側鎖にフェニルスルフィニル構造を有するユニット、及び側鎖にフェニルスルホニル構造を有するユニットの比率、或いはそれ以外のユニットとの比率を変化させることにより、帯電の立ち上がりをコントロールすることが可能である。更に、これらのユニット比の制御により、環境依存性を少なくすることも可能である。
【0214】
これら側鎖にフェニルスルフィニル構造を有するユニット、及び側鎖にフェニルスルホニル構造を有するユニットはいずれか一方がポリマー中に1mol%以上含まれていれば良く、その割合は、その他のユニットとの比率、望む帯電性を考慮して選択すれば良いが、十分な帯電性を発揮するためには、いずれか一方が5mol%以上含まれていることがより好ましい。また、側鎖にフェニルスルフィニル構造を有するユニット、及び側鎖にフェニルスルホニル構造を有するユニットの上限については、選択するバインダー樹脂の種類およびその他のユニットとの相対比率を考慮すれば良く、バインダー樹脂に対する相溶性を損なわない範囲であれば良い。
【0215】
本発明の化合物はバインダー樹脂に対する相溶性が良好であり、特にはポリエステル系のバインダー樹脂に対する相溶性がきわめて良好である。この本発明の化合物を含有せしめたトナーは比帯電量が高く、その経時安定性も良好であることから、トナーを長時間保存しても静電記録の画像形成において安定して鮮明な画像を与え、また、無色の正の帯電性能をもつため、黒色の正帯電トナーおよびカラートナー何れについても製出することが出来る。
【0216】
さらに、本発明の化合物を構成するモノマーユニットの種類/組成比を適宜選択することにより、幅広い相溶性の制御が可能である。ここで、荷電制御剤がトナーバインダー中でミクロ相分離構造をとるよう樹脂組成を選択すると、トナーの電気的連続性が生じないため安定に電価を保持することが可能となる。また、本発明の化合物は重金属を含まないため、懸濁重合法や乳化重合法でトナーを作成する際には、含金属の荷電制御剤で見られるような重金属による重合禁止作用がないので、安定してトナーを製出することが出来る。
【0217】
<PHAのトナーへの添加>
本発明において、上記した化合物をトナーに含有させる方法としては、トナーに内添する方法とトナーに外添する方法がある。内添する場合の添加量は、トナーバインダーと該荷電制御剤の質量割合として、通常 0.1〜50 質量%、好ましくは 0.3〜30 質量%、さらに好ましくは 0.5〜20 質量%の範囲で使用するのがより好ましい。0.1 質量%よりも少ないと、トナーの帯電性における改良の度合いが顕著にみられず好ましくない。一方、50 質量%を超えると、経済的な観点から好ましくない。また、外添する場合には、トナーバインダーと該荷電制御剤の質量割合は 0.01〜5質量%とすることが好ましく、特に、メカノケミカル的にトナー表面に固着させるのが好ましい。更に、本発明の化合物は、公知の荷電制御剤と組み合わせて使用することもできる。
【0218】
本発明の化合物の数平均分子量は、通常 1,000〜500,000 であり、好ましくは 1,000〜300,000 である。1,000 未満ではトナーバインダーに完全相溶し不連続なドメインを形成しにくくなるために帯電量不足となるとともに、トナーの流動性に悪影響を与える。また、500,000 を超えるとトナー中に分散させるのが困難となる。
【0219】
本発明の化合物の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。具体的なGPCの測定方法としては、予め本発明の化合物を 0.1 質量%LiBr含有ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し多サンプルを同様の移動相で測定し、標準ポリスチレン樹脂の検量線から分子量分布を求めた。
【0220】
また、本発明においては、上記のようにして測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比率(Mw/Mn)が、1〜10 の範囲内にある本発明の化合物を使用することが好ましい。
【0221】
本発明において、本発明の化合物は 20〜150℃、特に 40〜150℃の融点を持つか、または融点は持たないが 20〜150℃、特に 40〜150℃のガラス転移点を持つことが好ましい。上記融点が 20℃未満または融点を持たずガラス転移点が 20℃未満の場合は、トナーの流動性や、保存性に悪影響を与えやすい。また、融点が 150℃を超えるかまたは融点を持たずガラス転移点が 150℃を超える場合は、荷電制御剤をトナー中に混練することが困難になり、帯電量分布が広くなりやすい。
【0222】
この場合における融点Tmおよびガラス転移点Tgの測定には、例えば、パーキンエルマー社製のDSC-7のような高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計を用いて測定を行えばよい。
【0223】
本発明のトナーバインダーおよび静電荷像現像トナーにおいて、トナーバインダーと該荷電制御剤の質量割合は、通常 0.1〜50 質量%、好ましくは 0.3〜30 質量%、さらに好ましくは 0.5〜20 質量%である。本発明の静電荷像現像トナーの組成比は、トナー質量に基づき、通常、前記荷電制御剤が 0.1〜50 質量%、トナーバインダーが 20〜95 質量%、着色材料が0〜15 質量%であり、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属の粉末もしくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライトなどの化合物)を着色材料としての機能を兼ねて 60 質量%以下含有していてもよい。さらに種々の添加剤(滑剤(ポリテトラフルオロエチレン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸、もしくはその金属塩またはアミドなど)および他の荷電制御剤(ニグロシン誘導体、ナフテン酸金属、アルコキシル化アミン、四級アンモニウム塩など)を含有させることができる。また、トナーの流動性改良のために疎水性コロイダルシリカ微粉末等を用いることもできる。これら添加剤の量はトナー質量に基づき通常 10 質量%以下である。
【0224】
本発明のトナーにおいては、トナーバインダーの少なくとも一部が連続相を形成しており、荷電制御剤の少なくとも一部が不連続なドメインを形成していることが好ましい。不連続なドメインを形成せずにトナーバインダー中に荷電制御剤が完全相溶する場合と比較して、添加した荷電制御剤がトナー表面に露出しやすくなり、少量の添加で効果を発現する。
【0225】
また、該ドメインの分散粒径は、好ましくは 0.01〜4μmであり、さらに好ましくは 0.05〜2μmである。4μmを超えると分散性が不充分であり、帯電量分布が広くなるとともに、トナーの透明性が悪くなる問題が生じる。また、分散粒径が 0.01μm未満では、不連続なドメインを形成せずにトナーバインダー中に完全相溶する場合と同様であり、多量の荷電制御剤の添加が必要となる。
【0226】
前記荷電制御剤の少なくとも一部が不連続なドメインを形成していること、およびその分散粒径は、透過型電子顕微鏡などでトナーの切片を観察することで確認できる。界面を明瞭に観察するために、四酸化ルテニウム、四酸化オスミウムなどでトナー切片を染色した後に電子顕微鏡観察をすることも有効である。
【0227】
また、本発明の化合物が形成する不連続なドメインの粒径を小さくする目的で、本発明の化合物に対して相溶性を有しかつトナーバインダーに対しても相溶性を有する重合体を相溶化剤として含有させることもできる。相溶化剤としては、本発明の化合物の構成単量体と実質的に同じ構造を有する単量体を 50 モル%以上含有する重合体鎖と、トナーバインダーの構成単量体と実質的に同じ構造を有する単量体を 50 モル%以上含有する重合体鎖がグラフト状またはブロック状に結合した重合体などが挙げられる。相溶化剤の使用量は本発明の化合物に対して、通常 30 質量%以下であり、好ましくは1〜10 質量%である。
【0228】
<他の構成材料>
以下、本発明の静電荷像現像用トナーを構成するその他の構成材料について説明する。
【0229】
(バインダー樹脂)
先ず、バインダー樹脂としては、通常、トナーを製造する際に用いられているものであればいずれも使用することができ、特に限定されない。また、本発明の荷電制御剤は、トナーとする前にバインダー樹脂とあらかじめ混合し、荷電制御能をもつ本発明のトナーバインダー組成物として用いることができる。例えば、バインダー樹脂としては、スチレン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、エポキシ系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマーおよびポリウレタン系ポリマーなどが挙げられ、単独または混合して使用することができる。
【0230】
スチレン系ポリマーとしては、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体およびこれらと共重合可能な他の単量体の共重合体、スチレンとジエン系単量体(ブタジエン、イソプレンなど)との共重合体およびこれらと共重合可能な他の単量体の共重合体などが挙げられる。ポリエステル系ポリマーとしては芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールのアルキレンオキサイド付加物との重縮合物などが挙げられる。エポキシ系ポリマーとしては芳香族ジオールとエピクロルヒドリンとの反応物およびこれの変性物などが挙げられる。ポリオレフィン系ポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレンおよびこれらと他の共重合可能な単量体との共重合体鎖などが挙げられる。ポリウレタン系ポリマーとしては芳香族ジイソシアネートと芳香族ジオールのアルキレンオキサイド付加物との重付加物などが挙げられる。
【0231】
本発明において用いられるバインダー樹脂の具体例としては、以下に挙げる重合性単量体の重合体、または、これらの混合物、或いは、以下に挙げる重合性単量体を2種類以上使用して得られる共重合生成物が挙げられる。このようなものとしては、具体的には、例えば、スチレン-アクリル酸共重合体、或いはスチレン-メタクリル酸系共重合体などのスチレン系ポリマー、さらにはポリエステル系ポリマー、エポキシ系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマーおよびポリウレタン系ポリマー等が挙げられ、好ましく使用できる。
【0232】
重合性単量体の具体例としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン、p-クロルスチレン、3,4-ジクロルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレンの如きスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、弗化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα-メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2-クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N-ビニルピロール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドンの如きN-ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体;前述のα,β-不飽和酸のエステル、二塩基酸のジエステル類;マレイン酸、マレイン酸メチル、マレイン酸ブチル、マレイン酸ジメチル、フタル酸、コハク酸、テレフタル酸などのジカルボン酸類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2-プロピレングリコール、1、3-プロピレングリコール、1、4-ブタンジオール、1、6-ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA等のポリオール化合物;p-フェニレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、1、4-テトラメチレンジイソシアネート等のイソシアネート類;エチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、1、4-ジアミノベンゼン、1、4-ジアミノブタン、モノエタノールアミン等のアミン類;ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物等が挙げられる。
【0233】
(架橋剤)
本発明において使用するバインダー樹脂を形成する場合、必要に応じて下記に挙げるような架橋剤を用いることもできる。例えば、2官能の架橋剤として、ジビニルベンゼン、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール #200、#400、#600 の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタクリレートに変えたもの等が挙げられる。
【0234】
2官能以上の多官能の架橋剤としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロキシ、ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルアソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリールクロレンデート等が挙げられる。
【0235】
(重合開始剤)
また、本発明において使用するバインダー樹脂を形成する場合には、下記に挙げるような重合開始剤を必要に応じて用いることができる。例えば、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、クミンパーピバレート、t-ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル、2,2′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2′-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2′-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,4-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、n-ブチル4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バリレート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシ-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルジパーオキシイソフタレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ジ-t-ブチルパーオキシα-メチルサクシネート、ジ-t-ブチルパーオキシジメチルグルタレート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ-t-ブチルパーオキシアゼラート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコール-ビス(t-ブチルパーオキシカーボネート)、ジ-t-ブチルパーオキシトリメチルアジペート、トリス(t-ブチルパーオキシ)トリアジン、ビニルトリス(t-ブチルパーオキシ)シラン等が挙げられる。これらが単独或いは併用して使用できる。その使用量はモノマー 100 質量部に対し、0.05 質量部以上(好ましくは 0.1〜15 質量部)の濃度で用いられる。
【0236】
(他の生分解性プラスチック)
さらに本発明においては、生分解性プラスチックについても好ましく使用できる。生分解性プラスチックとしては、「エコスター」「エコスタープラス」(萩原工業)「バイオポール」(アイ・シー・アイ・ジャパン)「アジコート」(味の素)「プラクセル」「ポリカプロラクトン」(ダイセル化学)「ショーレックス」「ビオノーレ」(昭和電工)「ラクティ」(島津製作所)「レイシア」(三井化学)「ユーペック」(三菱瓦斯化学)等が挙げられる。
【0237】
これらのバインダー樹脂と本発明の荷電制御剤の組合せは、バインダー樹脂の高分子の構造と荷電制御剤のポリマー鎖の高分子構造とができるだけ類似していることが好ましい。バインダー樹脂の高分子構造と荷電制御剤のポリマー鎖の高分子構造が大きく異なるとバインダー樹脂中への荷電制御剤の分散が不十分になりやすい。
【0238】
本発明の荷電制御剤をバインダー樹脂に内添する質量割合は、通常 0.1〜50 質量%、好ましくは 0.3〜30 質量%、さらに好ましくは、0.5〜20 質量%である。ここで、内添する荷電制御剤の質量割合が 0.1 質量%未満であると、帯電量が低く、50 質量%を超えるとトナーの帯電安定性が悪くなる。
【0239】
<着色剤>
本発明の静電荷像現像用トナーを構成する着色剤としては、通常、トナーを製造する際に用いられているものであればいずれも使用でき、特に限定されるものではない。例えば、カーボンブラック、チタンホワイト、その他あらゆる顔料及び/または染料を用いることができる。
【0240】
例えば、本発明の静電荷像現像用トナーを磁性カラートナーとして使用する場合には、着色剤としては、例えば、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド 30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー 15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6等がある。
【0241】
顔料としては、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等を使用することができる。
【0242】
また、本発明の静電荷像現像用トナーを二成分フルカラー用トナーとして使用する場合には、着色剤として次の様なものを使用することができる。例えば、マゼンタ色トナー用の着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209、C.I.ピグメントバイオレット 19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35 等が挙げられる。
【0243】
本発明においては、上記に挙げた顔料を単独で使用しても構わないが、染料と顔料とを併用して、その鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。その場合に使用し得るマゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27、C.I.ディスパースバイオレット1等の油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28 等の塩基性染料が挙げられる。
【0244】
その他の着色顔料としては、シアン用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15、16、17、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー 45、または、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
【0245】
イエロー用着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、83、C.I.バットイエロー1、3、20 等が挙げられる。
【0246】
上記したような染料及び顔料は、単独で使用してもよく、さもなければ、所望とするトナーの色調を得るために任意に混合して使用してもよい。なお、環境保全や人体に対する安全性などを考慮した場合には、各種の食用色素を好適に使用できる。上記したような着色剤のトナー中の含有量は、所望とする着色効果などに応じて広く変更することが可能である。通常、最も良好なトナー特性を得るため、すなわち、印字の着色力、トナーの形状安定性、トナーの飛散などを考慮した場合、これらの着色剤は、通常、バインダー樹脂 100 質量部に対して、0.1〜60 質量部好ましくは 0.5〜20 質量部程度の割合で使用される。
【0247】
<トナーの他の成分>
本発明の静電荷像現像用トナー中には、上記したバインダー樹脂及び着色剤成分の他に、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で(バインダー樹脂成分の含有量より少ない割合で)以下の化合物を含有させてもよい。例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、低分子量ポリエチレンまたは低分子量ポリプロピレンの如き脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、及び、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等である。これらの中でも好ましく用いられるワックス類としては、具体的には、低分子量ポリプロピレン及びこの副生成物、低分子量ポリエステル及びエステル系ワックス、脂肪族の誘導体が挙げられる。これらのワックスから、種々の方法によりワックスを分子量により分別したワックスも本発明に好ましく用いられる。また、分別後に酸価やブロック共重合、グラフト変性を行ってもよい。
【0248】
特に、本発明の静電荷像現像用トナーにおいては、上記したようなワックス成分を含み、しかも透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてトナーの断層観察を行なった場合に、これらのワックス成分が、バインダー樹脂中に実質的に球状及び/または紡錘形の島状に分散されている場合に優れた特性のトナーとなる。
【0249】
<トナーの作成方法>
上記のような構成を有する本発明の静電荷像現像用トナーを作製する具体的な方法としては、従来公知の方法をいずれも用いることができる。本発明の静電荷像現像用トナーは、例えば、下記の工程によってトナーを得る、所謂粉砕法によって作製できる。
【0250】
即ち、具体的には、先に説明した本発明の化合物と、バインダー樹脂等の樹脂類、その他、必要に応じて添加されるワックスを、ヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合器により充分混合してから、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練して樹脂類をお互いに相溶せしめた中に、着色剤としての顔料、染料、または磁性体、必要に応じて添加される金属化合物等の添加剤を分散または溶解せしめ、冷却固化後、ジェットミル、ボールミル等の粉砕機により固化物を粉砕した後、分級を行って所望の粒径を有する本発明の静電荷像現像用トナーを得ることができる。尚、上記分級工程においては、生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
【0251】
また、バインダー樹脂と本発明の化合物を溶剤(トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、クロロホルム、エチレンジクロライドなどのハロゲン化物、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンおよびジメチルホルムアミドなどのアミドなど)を用い、溶液混合し、攪拌処理後、水中に投じて再沈澱せしめ、濾過、乾燥後、ジェットミル、ボールミル等の粉砕機により固化物を粉砕した後、分級を行って所望の粒径を有する本発明の静電荷像現像用トナーを得ることもできる。尚、上記分級工程においては、生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
【0252】
また、本発明の静電荷像現像用トナーは、下記のような所謂重合法によって作製することもできる。即ち、この場合には、本発明の化合物と、重合性単量体、着色剤としての顔料、染料、または磁性体、必要に応じて、架橋剤、重合開始剤、ワックス、その他の添加剤等の材料を混合分散し、界面活性剤等の存在下、水系分散媒体中で懸濁重合することにより重合性着色樹脂粒子を合成し、得られた粒子を固液分離した後、乾燥し、必要に応じて分級を行って本発明の静電荷像現像用トナーを得ることができる。
【0253】
さらには、荷電制御剤を含まない着色微粒子を上記方法により調製し、次いで本発明の化合物を単独もしくはコロイダルシリカ等の外添剤と供にメカノケミカル的な方法等により粒子表面に固着添加することも出来る。
【0254】
(シリカ外添剤)
本発明においては、上記のような方法によって作製されたトナーに、帯電安定性、現像性、流動性、耐久性向上のため、シリカ微粉末を外添することが好ましい。この際に用いられるシリカ微粉末としては、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が 20m2/g以上(特に 30〜400m2/g)の範囲内のものが良好な結果を与える。この場合のシリカ微粉末の量としては、トナー粒子 100 質量部に対して、シリカ微粉体を 0.01〜8質量部、好ましくは 0.1〜5質量部程度使用することが好ましい。この際に使用するシリカ微粉末としては、必要に応じて、疎水化及び帯電性コントロールの目的で、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物の如き処理剤で処理されたものを使用することが好ましい。これらの処理剤は混合して使用してもよい。
【0255】
(無機粉体)
また、トナーの現像性及び耐久性を向上させるために、次に挙げるような無機粉体を添加することも好ましい。例えば、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、鉄、ジルコニウム、クロム、マンガン、ストロンチウム、錫、アンチモンの如き金属の酸化物;チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウムの如き複合金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウムの如き金属塩;カオリンの如き粘土鉱物;アパタイトの如きリン酸化合物;炭化ケイ素、窒化ケイ素の如きケイ素化合物;カーボンブラックやグラファイトの如き炭素粉末が挙げられる。これらの中でも、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化コバルト、二酸化マンガン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウムの微粉体を使用することが好ましい。
【0256】
(滑剤)
更に、下記に挙げるような滑剤粉末をトナーに添加してもよい。例えば、テフロン、ポリフッ化ビニリデンの如きフッ素樹脂;フッ化カーボンの如きフッ素化合物;ステアリン酸亜鉛の如き脂肪酸金属塩;脂肪酸、脂肪酸エステルの如き脂肪酸誘導体;硫化モリブデン等が挙げられる。
【0257】
<キャリアについて>
上記のような構成を有する本発明の静電荷像現像用トナーは、単独で非磁性一成分現像剤として使用されたり、磁性キャリアとともに磁性二成分現像剤を構成したりする非磁性トナーや、単独で磁性一成分トナーとして使用される磁性トナー等の、従来公知の種々のトナーに適用することができる。ここで二成分現像方法に用いる場合のキャリアとしては、従来知られているものをいずれも使用することができる。具体的には、表面酸化または未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属及びそれらの合金または酸化物で形成される平均粒径 20〜300μmの粒子を、キャリア粒子として使用できる。また、本発明において用いるキャリアは、上記したキャリア粒子の表面が、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂の如き物質によって付着または被覆されているものであることが好ましい。
【0258】
<磁性トナー>
本発明の静電荷像現像用トナーは、磁性材料をトナー粒子中ら含有させ磁性トナーとしてもよい。この場合には、磁性材料に、着色剤の役割を兼ねさせることもできる。この際に使用される磁性材料としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトの如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金及びその混合物が挙げられる。本発明において用いることのできるこれらの磁性材料としては、平均粒子径が2μm以下、好ましくは 0.1〜0.5μm程度のものが好ましい。トナー中に含有させる量としては、バインダー樹脂 100 質量部に対し 20〜200 質量部、特に好ましくは、バインダー樹脂 100 質量部に対して 40〜150 質量部とすることが好ましい。
【0259】
更に、高画質化を達成するためには、より微小な潜像ドットを忠実に現像することを可能にする必要があり、そのためには、例えば、本発明の静電荷像現像用トナー粒子の重量平均径が4μm〜9μmの範囲内となるように調整することが好ましい。即ち、重量平均径が4μm未満のトナー粒子では、転写効率の低下が生じ、感光体上に転写残トナーが多く残り易く、カブリ・転写不良に基づく画像の不均一ムラの原因となり易く、好ましくない。また、トナー粒子の重量平均径が9μmを超える場合には、文字やライン画像の飛び散りが生じ易い。
【0260】
本発明において、トナーの平均粒径及び粒度分布は、コールターカウンターTA-II型或いはコールターマルチサイザー(コールター社製)等を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びPC-9801 パーソナルコンピューター(NEC製)を接続して測定した。その際に使用する電解液として、1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。電解液としては、例えば、市販の ISOTON R-II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)を使用することもできる。具体的な測定法としては、上記電解水溶液 100〜150mL中に、分散剤として界面活性剤(好ましくは、アルキルベンゼンスルフォン酸塩を使用する)を 0.1〜5mL加え、更に、測定試料を2〜20mg加えて測定用試料とする。測定の際には、この測定試料が懸濁された電解液を超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行った後、前記コールターカウンターTA-II型によりアパーチャーとして 100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナーの体積、個数を測定し、体積分布と個数分布とを算出した。それから、本発明に係わる体積分布から求めた体積基準の重量平均粒径(D4)、個数分布から求めた個数基準の長さ平均粒径(D1)を求めた。
【0261】
<帯電量>
また、本発明の静電荷像現像用トナーは、単位質量あたりの帯電量(二成分法)が+10〜+80μC/g、より好ましくは+15〜+70μC/gであることが、電圧を印加した転写部材を用いる転写方法において転写効率を向上させる上で好ましい。
【0262】
本発明において使用した二成分法による帯電量(二成分トリボ)の測定法を以下に示す。測定には、図13 に示した帯電量測定装置を使用した。先ず、一定環境下、キャリアとしてEFV 200 / 300(パウダーテック社製)を用い、該キャリア 9.5g に対して、測定対象のトナー 0.5g を加えた混合物を、50〜100mL容量のポリエチレン製の瓶に入れ、振幅を一定にした振とう機に設置して、振とう条件を、振幅 100mm、振とう速度1分間 100回往復に設定し、一定時間振とうする。次いで、図13 に示した帯電量測定装置の、底に 500 メッシュのスクリーン 43 のある金属製の測定容器 42 に、前記混合物 1.0〜1.2g を入れて、金属製のフタ 44 をする。この時の測定容器 42 全体の質量をはかりW1(g)とする。次に、不図示の吸引機(測定容器 22 と接する部分は少なくとも絶縁体)で吸引口 47 から吸引し、風量調節弁 46 を調節して真空計 45 の圧力が 2450 Pa(250mmAq)になるようにする。この状態で一分間吸引を行って、トナーを吸引除去する。この時の電位計 49 の電位をV(ボルト)とする。ここで 48 はコンデンサーであり容量をC(μF)とする。また、吸引後の測定機全体の質量を秤かりW2(g)とする。トナーの摩擦帯電量(μC/g)は、これらの測定値から、下式によって計算される。
摩擦帯電量(μC/g)=C×V/(W1-W2)
<バインダー樹脂の分子量分布>
また、本発明の静電荷像現像用トナーの構成材料に用いられるバインダー樹脂としては、特に、粉砕法で作製した場合に、GPCによる分子量分布において、低分子量領域におけるピークが 3,000〜15,000 の範囲にあるようにすることが好ましい。即ち、低分子量領域におけるGPCピークが 15,000 を超えると、転写効率の向上が充分なものが得られ難くなる場合がある。また、低分子量領域におけるGPCピークが 3000 未満のバインダー樹脂を用いると、表面処理時に融着を生じ易くなるので、好ましくない。
【0263】
本発明において、バインダー樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。具体的なGPCの測定方法としては、予めトナーをTHF(テトラヒドロフラン)溶剤でソックスレー抽出器を用いて 20時間抽出を行ったサンプルを測定用に用い、カラム構成は、昭和電工製A-801、802、803、804、805、806、807 を連結し標準ポリスチレン樹脂の検量線を用い分子量分布を測定した。また、本発明においては、上記のようにして測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比率(Mw/Mn)が、2〜100 の範囲内にあるバインダー樹脂を使用することが好ましい。
【0264】
<トナーのガラス転移点>
更に、本発明のトナーは、適宜な材料を用いることによって、定着性、保存性の観点から、そのガラス転移点Tgが、40℃〜75℃、更に好ましくは、52℃〜70℃となるように調製されることが好ましい。この場合におけるガラス転移点Tgの測定には、例えば、パーキンエルマー社製のDSC-7のような高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計を用いて測定を行えばよい。測定方法としては、ASTM D 3418-82 に準じて行う。本発明においては、ガラス転移点Tgを測定する場合に、測定試料を1回昇温して全履歴をとった後、急冷し、再度、温度速度 10℃/min、温度0〜200℃の範囲で昇温させたときに測定されるDSC曲線を用いるとよい。
【0265】
<画像形成方法>
上記で説明した構成を有する本発明の静電荷現像用トナーは、少なくとも、外部より帯電部材に電圧を印加して、静電潜像担持体に帯電を行う帯電工程と、帯電された静電潜像担持体に静電荷像を形成する工程と、該静電荷像をトナーにより現像してトナー像を静電潜像担持体上に形成する現像工程と、静電潜像担持体上のトナー像を被記録材へ転写する転写工程と、被記録材上のトナー像を加熱定着する加熱定着工程とを有する画像形成方法、或いは、転写工程が、静電潜像担持体上のトナー像を中間の転写体に転写する第1の転写工程と、該中間の転写体上のトナー像を被記録材に転写する第2の転写工程とからなる画像形成方法に適用することが特に好ましい。
【0266】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。これら実施例は、本発明の最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は、これら実施例により限定されうるものではない。
【0267】
まず、以下の実施例1〜9には、原料の5-(フェニルスルファニル)吉草酸を含む培地中でPHA生産菌を培養し、その後、PHA生産菌が生産したPHAに対して、過酸化化合物による酸化処理を施すことによって、3-ヒドロキシ-5-(フェニルスルフィニル)吉草酸ユニットならびに3-ヒドロキシ-5-(フェニルスルホニル)吉草酸ユニットのうち、少なくとも1種類をポリマー分子中に含むPHA、あるいは、前記の二種のユニットに加えて、3-ヒドロキシ-5-(フェニルスルファニル)吉草酸ユニットをも含むPHAを製造した例を示す。
【0268】
(実施例1)
500mL容振とうフラスコに、市販のポリペプトン(販売元:和光純薬工業)0.5%及び5-(フェニルスルファニル)吉草酸 0.1%を含むM9培地 200mLを入れ、寒天プレート上に種菌を播種し、培養して得られたYN2株のコロニーを植菌し、30℃、24時間培養した。培養後、遠心分離により菌体を収穫した。残留する培地成分を除去するため、収穫した菌体を 40mLの脱イオン水に懸濁して、再度遠心分離により、洗浄された菌体を回収した。
【0269】
回収した菌体を、市販の過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製、31%過酸化水素含有、JIS K-8230 規格品)50mLに再懸濁し、200mLのなす形フラスコに移して、オイルバス上、100℃、1時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、固形成分のPHAを遠心分離した。分離した後、PHAを蒸留水に再懸濁し、再度遠心分離を行って、残留している過酸化水素水を洗浄した。更に、この洗浄操作を2回繰り返した。その後、洗浄済みのPHAポリマーを減圧乾燥し、乾燥重量(回収量)を秤量した。
【0270】
得られたPHAサンプルの平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した。GPCの条件は、
装置:東ソーHLC-8020 ;
カラム:ポリマーラボラトリー PLgel MIXED-C(5μm)×2本;
移動層溶媒: 0.1質量%LiBr含有DMF; ポリスチレン換算分子量
である。
【0271】
また、サンプル中に含まれるPHAの構造は、プロトン-核磁気共鳴装置(1H-NMR)により行った。この1H-NMRの測定条件は、
装置:Bruker DPX 400 FT-NMR;
1H共鳴周波数: 400MHz;
測定核種:1H; 使用溶媒:CDCl3;
reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3;
測定温度:室温
である。
【0272】
(実施例2)
実施例1と同様の培養方法で得られたYN2株の培養菌体に、同様の水洗浄処理を施し、菌体を回収した。この水洗浄菌体を、25mLの脱イオン水に懸濁し、更に、実施例1で用いたと同規格の過酸化水素水を 25mL加えて、200mLのなす形フラスコに移し、オイルバス上、100℃、1時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、固形成分のPHAを遠心分離した。分離した後、PHAを蒸留水に再懸濁し、再度遠心分離を行って、残余する過酸化水素水を洗浄した。更に、この洗浄操作を2回繰り返した。その後、得られたPHAポリマーを減圧乾燥し、乾燥重量(回収量)を秤量した。この過酸化水素水処理条件で得られたPHAサンプルの平均分子量、ならびにその構造は、実施例1に記載される条件で、それぞれGPCと1H-NMRにより解析した。
【0273】
(実施例3)
実施例1と同様の培養方法で得られたYN2株の培養菌体に、同様の水洗浄処理を施し、菌体を回収した。この水洗浄菌体を、30mLの脱イオン水に懸濁し、更に、実施例1で用いたと同規格の過酸化水素水を 10mL加えて、200mLのなす形フラスコに移し、オイルバス上、100℃、1時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、固形成分のPHAを遠心分離した。分離した後、PHAを蒸留水に再懸濁し、再度遠心分離を行って、残余する過酸化水素水を洗浄した。更に、この洗浄操作を2回繰り返した。その後、得られたPHAポリマーを減圧乾燥し、乾燥重量(回収量)を秤量した。この過酸化水素水処理条件で得られたPHAサンプルの平均分子量、ならびにその構造は、実施例1に記載される条件で、それぞれGPCと1H-NMRにより解析した。
【0274】
(実施例4)
実施例1と同様の培養方法で得られたYN2株の培養菌体に、同様の水洗浄処理を施し、菌体を回収した。この水洗浄菌体を、45mLの脱イオン水に懸濁し、更に、実施例1で用いたと同規格の過酸化水素水を5mL加えて、200mLのなす形フラスコに移し、オイルバス上、100℃、1時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、固形成分のPHAを遠心分離した。分離した後、PHAを蒸留水に再懸濁し、再度遠心分離を行って、残余する過酸化水素水を洗浄した。更に、この洗浄操作を2回繰り返した。その後、得られたPHAポリマーを減圧乾燥し、乾燥重量(回収量)を秤量した。この過酸化水素水処理条件で得られたPHAサンプルの平均分子量、ならびにその構造は、実施例1に記載される条件で、それぞれGPCと1H-NMRにより解析した。
【0275】
(実施例5)
実施例1と同様の培養方法で得られたYN2株の培養菌体に、同様の水洗浄処理を施し、菌体を回収した。この水洗浄菌体を、実施例1で用いたと同規格の過酸化水素水 50mLに懸濁して、200mLのなす形フラスコに移し、オイルバス上、100℃、1時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、固形成分のPHAを遠心分離した。分離した後、PHAを蒸留水に再懸濁し、再度遠心分離を行って、残余する過酸化水素水を洗浄した。更に、この洗浄操作を2回繰り返した。その後、得られたPHAポリマーを減圧乾燥し、乾燥重量(回収量)を秤量した。この過酸化水素水処理条件で得られたPHAサンプルの平均分子量、ならびにその構造は、実施例1に記載される条件で、それぞれGPCと1H-NMRにより解析した。
【0276】
(実施例6)
実施例1と同様の培養方法で得られたYN2株の培養菌体に、同様の水洗浄処理を施し、菌体を回収した。残留する水分を除くため、この水洗浄菌体を、40mLのメタノールに再懸濁し、遠心分離によって菌体を回収した。その後、室温で減圧乾燥した。
【0277】
菌体中に蓄積されているPHAを抽出分離するため、得られた乾燥菌体を 30mLのクロロホルムに懸濁し、50℃で 20時間攪拌した。攪拌終了後、クロロホルム不溶成分をろ過により除去し、抽出されたPHAを溶解する濾液を回収した。このPHAのクロロホルム溶液をロータリーエバポレーターにて濃縮した。クロロホルム濃縮溶液を、氷冷したメタノールに滴下し、PHAを沈澱物として析出させ、回収した。同様の操作で、更に培地 400mL分の培養菌体から回収されたPHAと合わせて、以下のメタクロロ過安息香酸(MCPBA)を用いる酸化処理を施した。
【0278】
抽出分離したPHA 205mgを、クロロホルム 10mLに溶解し、氷冷した。氷冷下、この溶液にクロロホルム 20mLに溶解した 242mgのMCPBA(キシダ化学)を滴下し、引き続き氷浴上で 75分攪拌した。反応終了後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて中和した後、さらに 50mLクロロホルムを加えて、有機相を分液した。分液した有機相を、無水硫酸マグネシウムにより脱水して、溶媒留去後、真空乾燥した。回収されたPHAの乾燥重量(回収量)を秤量した。このMCPBA処理条件で得られたPHAサンプルの平均分子量、ならびにその構造は、実施例1に記載される条件で、それぞれGPCと1H-NMRにより解析した。
【0279】
(実施例7)
500mL容振とうフラスコに、市販の酵母エキス(DIFCO)0.5%及び5-(フェニルスルファニル)吉草酸 0.1%を含むM9培地 200mLを入れ、寒天プレート上に種菌を播種し、培養して得られたH45株のコロニーを植菌し、30℃、30時間培養した。培養後、遠心分離により菌体を収穫した。残留する培地成分を除去するため、収穫した菌体を 40mLの脱イオン水に懸濁して、再度遠心分離により、洗浄された菌体を回収した。
【0280】
回収した菌体を、市販の過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製、31%過酸化水素含有、JIS K-8230 規格品)50mLに再懸濁し、200mLのなす形フラスコに移して、オイルバス上、100℃、1時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、固形成分のPHAを遠心分離した。分離した後、PHAを蒸留水に再懸濁し、再度遠心分離を行って、残留している過酸化水素水を洗浄した。更に、この洗浄操作を2回繰り返した。その後、洗浄済みのPHAポリマーを減圧乾燥し、乾燥重量(回収量)を秤量した。この過酸化水素水処理条件で得られたPHAサンプルの平均分子量、ならびにその構造は、実施例1に記載される条件で、それぞれGPCと1H-NMRにより解析した。
【0281】
(実施例8)
500mL容振とうフラスコに、市販のD-グルコース(キシダ化学)0.5%及び5-(フェニルスルファニル)吉草酸 0.1%を含むM9培地 200mLを入れ、寒天プレート上に種菌を播種し、培養して得られたH45株のコロニーを植菌し、30℃、30時間培養した。培養後、遠心分離により菌体を収穫した。次いで、500mL容振とうフラスコに、市販のD-グルコース(キシダ化学)0.5%及び5-(フェニルスルファニル)吉草酸 0.1%を含み、無機窒素源のNH4Clを全く含まないM9培地 200mLを入れ、この培地に収穫した菌体を再懸濁し、30℃、30時間培養した。培養後、再度、遠心分離により菌体を収穫した。残留する培地成分を除去するため、収穫した菌体を 40mLの脱イオン水に懸濁して、遠心分離により、洗浄された菌体を回収した。
【0282】
回収した菌体を、市販の過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製、31%過酸化水素含有、JIS K-8230 規格品)50mLに再懸濁し、200mLのなす形フラスコに移して、オイルバス上、100℃、1時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、固形成分のPHAを遠心分離した。分離した後、PHAを蒸留水に再懸濁し、再度遠心分離を行って、残留している過酸化水素水を洗浄した。更に、この洗浄操作を2回繰り返した。その後、洗浄済みのPHAポリマーを減圧乾燥し、乾燥重量(回収量)を秤量した。この過酸化水素水処理条件で得られたPHAサンプルの平均分子量、ならびにその構造は、実施例1に記載される条件で、それぞれGPCと1H-NMRにより解析した。
【0283】
(実施例9)
500mL容振とうフラスコに、市販のグリセロール(キシダ化学)0.5%及び5-(フェニルスルファニル)吉草酸 0.1%を含むM9培地 200mLを入れ、寒天プレート上に種菌を播種し、培養して得られたH45株のコロニーを植菌し、30℃、30時間培養した。培養後、遠心分離により菌体を収穫した。次いで、500mL容振とうフラスコに、市販のグリセロール(キシダ化学)0.5%及び5-(フェニルスルファニル)吉草酸 0.1%を含み、無機窒素源のNH4Clを全く含まないM9培地 200mLを入れ、この培地に収穫した菌体を再懸濁し、30℃、30時間培養した。培養後、再度、遠心分離により菌体を収穫した。残留する培地成分を除去するため、収穫した菌体を 40mLの脱イオン水に懸濁して、遠心分離により、洗浄された菌体を回収した。
【0284】
回収した菌体を、市販の過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製、31%過酸化水素含有、JIS K-8230 規格品)50mLに再懸濁し、200mLのなす形フラスコに移して、オイルバス上、100℃、1時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、固形成分のPHAを遠心分離した。分離した後、PHAを蒸留水に再懸濁し、再度遠心分離を行って、残留している過酸化水素水を洗浄した。更に、この洗浄操作を2回繰り返した。その後、洗浄済みのPHAポリマーを減圧乾燥し、乾燥重量(回収量)を秤量した。この過酸化水素水処理条件で得られたPHAサンプルの平均分子量、ならびにその構造は、実施例1に記載される条件で、それぞれGPCと1H-NMRにより解析した。
【0285】
表1に、上記実施例1〜9において、作製されたPHAサンプルの回収量(乾燥重量)及び分子量を併せて示す。
【0286】
【表1】
【0287】
表2に、実施例1〜9において作製されたPHAサンプルの、1H-NMRによる解析結果から算出される、以下に示す化学式(6)、(7)、(8)の各ユニットの含有比を示す。
【0288】
【化80】
【0289】
【化81】
【0290】
【化82】
【0291】
【表2】
【0292】
各ユニットの含有比は、側鎖に芳香環を有するユニットの全体(モル数)を 100モル%とした際の、各ユニットの含有量(モル数)をパーセント表示したものである。
【0293】
また、過酸化水素による酸化条件が異なる、実施例1〜6まで作製される各PHAサンプルの1H-NMRスペクトルを、それぞれ図1〜図6に示す(実施例1:図1;実施例2:図2;実施例3:図3;実施例4:図4;実施例5:図5;実施例6:図6)。特に、上記化学式(6)、(7)、(8)の3ユニットが、ともに含まれている実施例3で得られたPHAサンプルの1H-NMRスペクトルについて、各スペクトル線に関して、下記する式(24)上に付記して示す、炭素位置と対応した帰属を併せて記す。
【0294】
【化83】
【0295】
加えて、上記実施例1〜9において得られたPHAポリマーは、上記化学式(6)、(7)、(8)で示されるユニット以外に、下記一般式(4)で示される直鎖の3-ヒドロキシアルカノエートユニットならびに一般式(5)で示される直鎖の3-ヒドロキシアルケノエートユニットをも含んでおり、この一般式(4)ならびに一般式(5)のユニットの総和が、全ユニット中に占める割合(モル%)は、それぞれ、実施例1:7モル%,実施例2: 10 モル%,実施例3: 12 モル%,実施例4: 13モル%,実施例5:7モル%,実施例6:9モル%,実施例7:6モル%,実施例8:8モル%,実施例9:7モル%であった。
【0296】
【化84】
【0297】
(式中、yは、0〜8から選ばれた整数であり、ユニット毎に違う値をとり得る。)
【0298】
【化85】
【0299】
(式中、3および5から選ばれた整数であり、ユニット毎に違う値をとり得る。)次に、以下の実施例10〜14 には、原料の4-(フェニルスルファニル)酪酸を含む培地中でPHA生産菌を培養し、その後、PHA生産菌が生産したPHAに対して、過酸化化合物による酸化処理を施すことによって、3-ヒドロキシ-4-(フェニルスルフィニル)酪酸ユニットならびに3-ヒドロキシ-4-(フェニルスルホニル)酪酸ユニットのうち、少なくとも1種類をポリマー分子中に含むPHA、あるいは、前記の二種のユニットに加えて、3-ヒドロキシ-4-(フェニルスルファニル)酪酸ユニットをも含むPHAを製造した例を示す。
【0300】
(実施例10)
500mL容振とうフラスコに、市販のD-グルコース(キシダ化学)0.5%及び4-(フェニルスルファニル)酪酸 0.1%を含むM9培地 200mLを入れ、寒天プレート上に種菌を播種し、培養して得られたYN2株のコロニーを植菌し、30℃、48時間培養した。培養後、遠心分離により菌体を収穫した。次いで、500mL容振とうフラスコに、市販のD-グルコース(キシダ化学)0.5%及び4-(フェニルスルファニル)酪酸 0.1%を含み、無機窒素源のNH4Clを全く含まないM9培地 200mLを入れ、この培地に収穫した菌体を再懸濁し、30℃、48時間培養した。培養後、再度、遠心分離により菌体を収穫した。残留する培地成分を除去するため、収穫した菌体を 40mLの脱イオン水に懸濁して、遠心分離により、洗浄された菌体を回収した。
【0301】
回収した菌体を、市販の過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製、31%過酸化水素含有、JIS K-8230 規格品)50mLに再懸濁し、200mLのなす形フラスコに移して、オイルバス上、100℃、1時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、固形成分のPHAを遠心分離した。分離した後、PHAを蒸留水に再懸濁し、再度遠心分離を行って、残留している過酸化水素水を洗浄した。更に、この洗浄操作を2回繰り返した。その後、洗浄済みのPHAポリマーを減圧乾燥し、乾燥重量(回収量)を秤量した。この過酸化水素水処理条件で得られたPHAサンプルの平均分子量、ならびにその構造は、実施例1に記載される条件で、それぞれGPCと1H-NMRにより解析した。
【0302】
(実施例11)
500mL容振とうフラスコに、市販のポリペプトン(和光純薬工業)0.5%及び4-(フェニルスルファニル)酪酸 0.1%を含むM9培地 200mLを入れ、寒天プレート上に種菌を播種し、培養して得られたYN2株のコロニーを植菌し、30℃、48時間培養した。培養後、遠心分離により菌体を収穫した。次いで、500mL容振とうフラスコに、市販のピルビン酸ナトリウム(キシダ化学)0.5%及び4-(フェニルスルファニル)酪酸 0.1%を含み、無機窒素源のNH4Clを全く含まないM9培地 200mLを入れ、この培地に収穫した菌体を再懸濁し、30℃、48時間培養した。培養後、再度、遠心分離により菌体を収穫した。残留する培地成分を除去するため、収穫した菌体を 40mLの脱イオン水に懸濁して、遠心分離により、洗浄された菌体を回収した。
【0303】
回収した菌体を、市販の過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製、31%過酸化水素含有、JIS K-8230 規格品)50mLに再懸濁し、200mLのなす形フラスコに移して、オイルバス上、100℃、1時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、固形成分のPHAを遠心分離した。分離した後、PHAを蒸留水に再懸濁し、再度遠心分離を行って、残留している過酸化水素水を洗浄した。更に、この洗浄操作を2回繰り返した。その後、洗浄済みのPHAポリマーを減圧乾燥し、乾燥重量(回収量)を秤量した。この過酸化水素水処理条件で得られたPHAサンプルの平均分子量、ならびにその構造は、実施例1に記載される条件で、それぞれGPCと1H-NMRにより解析した。
【0304】
(実施例12)
実施例10 と同様の培養方法で得られたYN2株の培養菌体に、同様の水洗浄処理を施し、菌体を回収した。この水洗浄菌体の細胞を、40mLの脱イオン水に懸濁し、フレンチプレス(大岳製作所社製:フレンチプレス 5501)により菌体の破砕を行った。この細胞破砕物を、4℃、29400m/s2(=3000G)で 30分間遠心分離し、不溶画分の分離を行った。その後、残余する可溶性成分の洗浄除去のため、不溶画分に蒸留水 40mLを加え、4℃、29400m/s2(=3000G)で 30分間再度遠心分離を行って、洗浄済みPHAを回収した。
【0305】
得られたPHA粗製サンプルを脱イオン水 45mLに懸濁し、実施例1に記載する過酸化水素水5mLを加えて、100℃で1時間処理を行った。反応終了後、室温まで冷却し、固形成分のPHAを遠心分離した。分離した後、PHAを蒸留水に再懸濁し、再度遠心分離を行って、残留している過酸化水素水を洗浄した。更に、この洗浄操作を2回繰り返した。その後、洗浄済みのPHAポリマーを減圧乾燥し、乾燥重量(回収量)を秤量した。この過酸化水素水処理条件で得られたPHAサンプルの平均分子量、ならびにその構造は、実施例1に記載される条件で、それぞれGPCと1H-NMRにより解析した。
【0306】
(実施例13)
500mL容振とうフラスコに、市販のn-ノナン酸(キシダ化学) 0.1%及び4-(フェニルスルファニル)酪酸 0.1%を含むM9培地 200mLを入れ、寒天プレート上に種菌を播種し、培養して得られたYN2株のコロニーを植菌し、30℃、48時間培養した。培養後、遠心分離により菌体を収穫した。残留する培地成分を除去するため、収穫した菌体を 40mLの脱イオン水に懸濁して、再度遠心分離により、洗浄された菌体を回収した。
【0307】
回収した菌体を、市販の過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製、31%過酸化水素含有、JIS K-8230 規格品)50mLに再懸濁し、200mLのなす形フラスコに移して、オイルバス上、100℃、1時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、固形成分のPHAを遠心分離した。分離した後、PHAを蒸留水に再懸濁し、再度遠心分離を行って、残留している過酸化水素水を洗浄した。更に、この洗浄操作を2回繰り返した。その後、洗浄済みのPHAポリマーを減圧乾燥し、乾燥重量(回収量)を秤量した。この過酸化水素水処理条件で得られたPHAサンプルの平均分子量、ならびにその構造は、実施例1に記載される条件で、それぞれGPCと1H-NMRにより解析した。
【0308】
(実施例14)
500mL容振とうフラスコに、市販のグルタミン酸ナトリウム0.5%及び4-(フェニルスルファニル)酪酸 0.1%を含むM9培地 200mLを入れ、寒天プレート上に種菌を播種し、培養して得られたYN2株のコロニーを植菌し、30℃、48時間培養した。培養後、遠心分離により菌体を収穫した。残留する培地成分を除去するため、収穫した菌体を 40mLの脱イオン水に懸濁して、再度遠心分離により、洗浄された菌体を回収した。
【0309】
回収した菌体を、市販の過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製、31%過酸化水素含有、JIS K-8230 規格品)50mLに再懸濁し、200mLのなす形フラスコに移して、オイルバス上、100℃、1時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、固形成分のPHAを遠心分離した。分離した後、PHAを蒸留水に再懸濁し、再度遠心分離を行って、残留している過酸化水素水を洗浄した。更に、この洗浄操作を2回繰り返した。その後、洗浄済みのPHAポリマーを減圧乾燥し、乾燥重量(回収量)を秤量した。この過酸化水素水処理条件で得られたPHAサンプルの平均分子量、ならびにその構造は、実施例1に記載される条件で、それぞれGPCと1H-NMRにより解析した。
【0310】
表3に、上記実施例10〜14 において、作製されたPHAサンプルの回収量(乾燥重量)及び分子量を併せて示す。
【0311】
【表3】
【0312】
表4に、実施例10〜14 において作製されたPHAサンプルの、1H-NMRによる解析結果から算出される、以下に示す化学式(9)、(10)、(11)の各ユニットの含有比を示す。
【0313】
【化86】
【0314】
【化87】
【0315】
【化88】
【0316】
【表4】
【0317】
各ユニットの含有比は、側鎖に芳香環を有するユニットの全体(モル数)を 100モル%とした際の、各ユニットの含有量(モル数)をパーセント表示したものである。
【0318】
加えて、上記実施例 10〜13 において得られたPHAポリマーは、上記化学式(9)、(10)、(11)で示されるユニット以外に、下記一般式(4)で示される直鎖の3-ヒドロキシアルカノエートユニットならびに一般式(5)で示される直鎖の3-ヒドロキシアルケノエートユニットをも含んでおり、この一般式(4)ならびに一般式(5)のユニットの総和が、全ユニット中に占める割合(モル%)は、それぞれ、実施例10:14 モル%,実施例11 :7モル%,実施例12 :8モル%,実施例13:92モル%,実施例14 :5モル%であった。
【0319】
【化89】
【0320】
(式中、yは、0〜8から選ばれた整数であり、ユニット毎に違う値をとり得る。)
【0321】
【化90】
【0322】
(式中、zは、3および5からから選ばれた整数であり、ユニット毎に違う値をとり得る。)
更に、以下の実施例15〜18 には、原料の5-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]吉草酸を含む培地中でPHA生産菌を培養し、その後、PHA生産菌が生産したPHAに対して、過酸化化合物による酸化処理を施すことによって、3-ヒドロキシ-5-[(4-フルオロフェニル)スルフィニル]吉草酸ユニットならびに3-ヒドロキシ-5-[(4-フルオロフェニル)スルホニル]吉草酸ユニットのうち、少なくとも1種類をポリマー分子中に含むPHA、あるいは、前記の二種のユニットに加えて、3-ヒドロキシ-5-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]吉草酸ユニットをも含むPHAを製造した例を示す。
【0323】
(実施例15)
500mL容振とうフラスコに、市販のポリペプトン(販売元:和光純薬工業)0.5%及び5-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]吉草酸 0.1%を含むM9培地 200mLを入れ、寒天プレート上に種菌を播種し、培養して得られたYN2株のコロニーを植菌し、30℃、24時間培養した。培養後、遠心分離により菌体を収穫した。残留する培地成分を除去するため、収穫した菌体を 40mLの脱イオン水に懸濁して、再度遠心分離により、洗浄された菌体を回収した。
【0324】
回収した菌体を、市販の過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製、31%過酸化水素含有、JIS K-8230 規格品)50mLに再懸濁し、200mLのなす形フラスコに移して、オイルバス上、100℃、1時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、固形成分のPHAを遠心分離した。分離した後、PHAを蒸留水に再懸濁し、再度遠心分離を行って、残留している過酸化水素水を洗浄した。更に、この洗浄操作を2回繰り返した。その後、洗浄済みのPHAポリマーを減圧乾燥し、乾燥重量(回収量)を秤量した。この過酸化水素水処理条件で得られたPHAサンプルの平均分子量、ならびにその構造は、実施例1に記載される条件で、それぞれGPCと1H-NMRにより解析した。
【0325】
(実施例16)
500mL容振とうフラスコに、市販のポリペプトン(販売元:和光純薬工業)0.5%及び5-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]吉草酸 0.1%を含むM9培地 200mLを入れ、寒天プレート上に種菌を播種し、培養して得られたH45株のコロニーを植菌し、30℃、24時間培養した。培養後、遠心分離により菌体を収穫した。残留する培地成分を除去するため、収穫した菌体を 40mLの脱イオン水に懸濁して、再度遠心分離により、洗浄された菌体を回収した。
【0326】
回収した菌体を、市販の過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製、31%過酸化水素含有、JIS K-8230 規格品)50mLに再懸濁し、200mLのなす形フラスコに移して、オイルバス上、100℃、1時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、固形成分のPHAを遠心分離した。分離した後、PHAを蒸留水に再懸濁し、再度遠心分離を行って、残留している過酸化水素水を洗浄した。更に、この洗浄操作を2回繰り返した。その後、洗浄済みのPHAポリマーを減圧乾燥し、乾燥重量(回収量)を秤量した。この過酸化水素水処理条件で得られたPHAサンプルの平均分子量、ならびにその構造は、実施例1に記載される条件で、それぞれGPCと1H-NMRにより解析した。
【0327】
(実施例17)
500mL容振とうフラスコに、市販のポリペプトン(販売元:和光純薬工業)0.5%及び5-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]吉草酸 0.1%を含むM9培地 200mLを入れ、寒天プレート上に種菌を播種し、培養して得られたP161株のコロニーを植菌し、30℃、24時間培養した。培養後、遠心分離により菌体を収穫した。残留する培地成分を除去するため、収穫した菌体を 40mLの脱イオン水に懸濁して、再度遠心分離により、洗浄された菌体を回収した。
【0328】
回収した菌体を、市販の過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製、31%過酸化水素含有、JIS K-8230 規格品)50mLに再懸濁し、200mLのなす形フラスコに移して、オイルバス上、100℃、1時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、固形成分のPHAを遠心分離した。分離した後、PHAを蒸留水に再懸濁し、再度遠心分離を行って、残留している過酸化水素水を洗浄した。更に、この洗浄操作を2回繰り返した。その後、洗浄済みのPHAポリマーを減圧乾燥し、乾燥重量(回収量)を秤量した。この過酸化水素水処理条件で得られたPHAサンプルの平均分子量、ならびにその構造は、実施例1に記載される条件で、それぞれGPCと1H-NMRにより解析した。
【0329】
(実施例18)
実施例15 と同様の培養方法で得られたYN2株の培養菌体に、同様の水洗浄処理を施し、菌体を回収した。この水洗浄菌体の細胞を、40mLの脱イオン水に懸濁し、フレンチプレス(大岳製作所社製:フレンチプレス 5501)により菌体の破砕を行った。この細胞破砕物を、4℃、29400m/s2(=3000G)で 30分間遠心分離し、不溶画分の分離を行った。その後、残余する可溶性成分の洗浄除去のため、不溶画分に蒸留水 40mLを加え、4℃、29400m/s2(=3000G)で 30分間再度遠心分離を行って、洗浄済みPHAを回収した。
【0330】
得られたPHA粗製サンプルを脱イオン水 30mLに懸濁し、実施例1に記載する過酸化水素水 10mLを加えて、100℃で1時間処理を行った。反応終了後、室温まで冷却し、固形成分のPHAを遠心分離した。分離した後、PHAを蒸留水に再懸濁し、再度遠心分離を行って、残留している過酸化水素水を洗浄した。更に、この洗浄操作を2回繰り返した。その後、洗浄済みのPHAポリマーを減圧乾燥し、乾燥重量(回収量)を秤量した。この過酸化水素水処理条件で得られたPHAサンプルの平均分子量、ならびにその構造は、実施例1に記載される条件で、それぞれGPCと1H-NMRにより解析した。
【0331】
表5に、上記実施例15〜18 において、作製されたPHAサンプルの回収量(乾燥重量)及び分子量を併せて示す。
【0332】
【表5】
【0333】
表6に、実施例 15〜18 において作製されたPHAサンプルの、1H-NMRによる解析結果から算出される、以下に示す化学式(12)、(13)、(14)の各ユニットの含有比を示す。
【0334】
【化91】
【0335】
【化92】
【0336】
【化93】
【0337】
【表6】
【0338】
各ユニットの含有比は、側鎖に芳香環を有するユニットの全体(モル数)を 100モル%とした際の、各ユニットの含有量(モル数)をパーセント表示したものである。
【0339】
加えて、上記実施例15〜18 において得られたPHAポリマーは、上記化学式(12)、(13)、(14)で示されるユニット以外に、下記一般式(4)で示される直鎖の3-ヒドロキシアルカノエートユニットならびに一般式(5)で示される直鎖の3-ヒドロキシアルケノエートユニットをも含んでおり、この一般式(4)ならびに一般式(5)のユニットの総和が、全ユニット中に占める割合(モル%)は、それぞれ、実施例15:10 モル%,実施例16 :6モル%,実施例17 :9モル%,実施例18 :9モル%であった。
【0340】
【化94】
【0341】
(式中、yは、0〜8から選ばれた整数であり、ユニット毎に違う値をとり得る。)
【0342】
【化95】
【0343】
(式中、zは、3および5から選ばれた整数であり、ユニット毎に違う値をとり得る。)
(実施例19)
500mL容振とうフラスコに、市販のポリペプトン(販売元:和光純薬工業)0.5%及び5-[(3-フルオロフェニル)スルファニル]吉草酸 0.1%を含むM9培地 200mLを入れ、寒天プレート上に種菌を播種し、培養して得られたYN2株のコロニーを植菌し、30℃、24時間培養した。培養後、遠心分離により菌体を収穫した。残留する培地成分を除去するため、収穫した菌体を 40mLの脱イオン水に懸濁して、再度遠心分離により、洗浄された菌体を回収した。
【0344】
回収した菌体を、市販の過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製、31%過酸化水素含有、JIS K-8230 規格品)50mLに再懸濁し、200mLのなす形フラスコに移して、オイルバス上、100℃、1時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、固形成分のPHAを遠心分離した。分離した後、PHAを蒸留水に再懸濁し、再度遠心分離を行って、残留している過酸化水素水を洗浄し
た。更に、この洗浄操作を2回繰り返した。その後、洗浄済みのPHAポリマーを減圧乾燥し、乾燥重量(回収量)を秤量した。この過酸化水素水処理条件で得られたPHAサンプルの平均分子量、ならびにその構造は、実施例1に記載される条件で、それぞれGPCと1H-NMRにより解析した。
【0345】
表7に、上記実施例19 において作製されたPHAサンプルの回収量(乾燥重量)及び分子量を併せて示す。
【0346】
【表7】
【0347】
表8に、実施例19 において作製されたPHAサンプルの、1H-NMRによる解析結果から算出される、以下に示す化学式(15)、(16)、(17)の各ユニットの含有比を示す。
【0348】
【化96】
【0349】
【化97】
【0350】
【化98】
【0351】
【表8】
【0352】
各ユニットの含有比は、側鎖に芳香環を有するユニットの全体(モル数)を 100モル%とした際の、各ユニットの含有量(モル数)をパーセント表示したものである。
【0353】
加えて、上記実施例19 において得られたPHAポリマーは、上記化学式(15)、(16)、(17)で示されるユニット以外に、下記一般式(4)で示される直鎖の3-ヒドロキシアルカノエートユニットならびに一般式(5)で示される直鎖の3-ヒドロキシアルケノエートユニットをも含んでおり、この一般式(4)ならびに一般式(5)のユニットの総和が、全ユニット中に占める割合(モル%)は、25 モル%であった。
【0354】
【化99】
【0355】
(式中、yは、0〜8から選ばれた整数であり、ユニット毎に違う値をとり得る。)
【0356】
【化100】
【0357】
(式中、zは、3および5から選ばれた整数であり、ユニット毎に違う値をとり得る。)
(実施例20)
酵母エキス(DIFCO)0.5%を含むM9培地 200mLを 500mL容振とうフラスコに加え、シュードモナス・チコリアイ・YN2株(Pseudomonas cichorii YN2、FERM BP-7375)を植菌し、30℃、8時間培養した。50L 容ジャーファーメンターに、ポリペプトン(和光純薬工業)0.5%及び5-チオフェノキシ吉草酸(5-(フェニルスルファニル)吉草酸) 0.1%とを含むM9培地 25L を仕込み、先に培養したYN2株の培養液を全量加え、70 回転/分、通気量 9.4L/分の条件で通気攪拌培養した。48時間後、菌体を遠心分離によって回収した。回収した湿菌体を1Lの脱イオン水に再懸濁し、200mLずつ、5等分し、更に遠心分離を行った。得られた5検体の菌体につき、以下の処理を行った。
[1]過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)粕製、31%過酸化水素含有、JIS K-8230)300mLに再懸濁し、オイルバスで 100℃、1時間反応させた。
【0358】
[2]菌体を 150mLの脱イオン水に懸濁し、過酸化水素水 150mLを加えてオイルバスで 100℃、1時間反応させた。
【0359】
[3]菌体を 225mLの脱イオン水に懸濁し、過酸化水素水 75mLを加えてオイルバスで 100℃、1時間反応させた。
【0360】
[4]菌体を 270mLの脱イオン水に懸濁し、過酸化水素水 30mLを加えてオイルバスで 100℃、1時間反応させた。
【0361】
[5]菌体を 300mLの脱イオン水に懸濁し、フレンチプレス(大岳製作所社製:フレンチプレス 5501)により菌体の破砕を行った後、4℃、29400m/s2(=3000G)で 30分間遠心分離を行った。その後更に蒸留水 300mLを加え、4℃、29400m/s2(=3000G)で 30分間遠心分離を行って洗浄した。得られた沈殿物を 300mLの過酸化水素水に懸濁し、オイルバスで 50℃、1時間反応させた。
【0362】
いずれのサンプルも、反応終了後氷冷し、4℃、29400m/s2(=3000G)で 30分間遠心分離を行った。その後更に蒸留水 300mLを加え、4℃、29400m/s2(=3000G)で 30分間遠心分離を行って洗浄した。更にこの洗浄操作を2回繰り返した。これらのサンプルをそれぞれ 50mLの脱イオン水に再懸濁し、凍結乾燥した。以上のようにして得られたサンプルの分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。GPCの条件は、装置:東ソーHLC-8020 ;カラム:ポリマーラボラトリー PLgel MIXED-C(5μm)×2本;移動層溶媒: 0.1 重量%LiBr含有DMF;ポリスチレン換算、である。また、サンプルの構造はプロトン-核磁気共鳴装置(1H-NMR)により行った。1H-NMR条件は、装置:Bruker DPX 400 FT-NMR;1H共鳴周波数: 400MHz;測定核種:1H;使用溶媒:CDCl3;reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3;測定温度:室温である。
【0363】
(実施例21)
酵母エキス 0.5%を含むM9培地 200mLを 500mL容振とうフラスコに加えたものを2本用意し、それぞれ1本ずつにYN2株を植菌し、30℃、8時間培養した。2L容振とうフラスコに、ポリペプトン 0.5%及び5-チオフェノキシ吉草酸(5-(フェニルスルファニル)吉草酸) 0.1%とを含むM9培地1Lを仕込んだものを5本用意し、先に培養したYN2株の培養液2mLずつをそれぞれに加え、125 ストローク/分、30℃で培養した。48時間後、5L分の菌体を遠心分離によって回収した。得られたYN2株の水洗浄菌体を1Lのメタノールに再懸濁し、遠心分離によって菌体を回収した後、室温で減圧乾燥した。得られた菌体を 750mLのクロロホルムに懸濁し、50℃で 20時間攪拌した。攪拌終了後、クロロホルム不溶成分をろ過により除去し、クロロホルム溶液をロータリーエバポレーターにて濃縮した。クロロホルム濃縮溶液を氷冷したメタノールに滴下し、沈殿物としてPHA試料を得た。
【0364】
得られた試料(1.7g)をクロロホルム 80mLに溶解し、氷冷した。そこへクロロホルム 160mLに溶解した 2.0gのMCPBA(キシダ化学)を滴下し、氷浴上で 75分攪拌した。
【0365】
反応終了後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて中和した後、400mLクロロホルムを加えて分液し、有機相を抽出し、無水硫酸マグネシウムにより脱水して、溶媒留去後、真空乾燥した。得られたサンプルはサンプル[6]とした。
【0366】
(実施例22)
酵母エキス 0.5%を含むM9培地 200mLを 500mL容振とうフラスコに加えたものを2本用意し、それぞれ1本ずつにシュードモナス・チコリアイ・H45株(Pseudomonas cichorii H45、FERM BP-7374)及びシュードモナス・ジェッセニイ P161株(Pseudomonas jessenii P161、FERM BP-7376)を植菌し、30℃、8時間培養した。2L容振とうフラスコに、ポリペプトン 0.5%及び5-チオフェノキシ吉草酸(5-(フェニルスルファニル)吉草酸) 0.1%とを含むM9培地1Lを仕込んだものを 10本用意し、先に培養したH45株及びP161株の培養液2mLずつをそれぞれ5本分に加え、125 ストローク/分、30℃で培養した。48時間後、それぞれ5L分のH45株及びP161株の菌体を遠心分離によって回収した。それぞれの菌体を実施例20 に示す[1]の条件で処理し、サンプルを得た。H45株由来のサンプルを[7]、P161株由来のサンプルを[8]とした。サンプル[7]及び[8]は実施例1と同様にGPC及び1H-NMRの測定を行った。
【0367】
実施例20から 22 で示した各サンプルの収量及び分子量を表9に示す。
【0368】
【表9】
【0369】
また、各サンプルの1H-NMRから算出した以下に示す化学式(6)、(7)、(8)の各ユニット比を表10 に示す。
【0370】
【化101】
【0371】
【表10】
【0372】
各ユニット比は側鎖に芳香環を有するユニットの全体を 100%とした場合のパーセンテージである。
【0373】
サンプル[1]から[8]の、上記化学式(6)、(7)、(8)で示したユニット以外の直鎖3-ヒドロキシアルカノエート及び3-ヒドロキシアルケノエートユニットの割合は、[1]:7%,[2]: 10%,[3]: 12%,[4]: 13%,[5]:7%,[6]:9%,[7]:6%,[8]:8%であった。
【0374】
また、上記サンプルのうち、[1]から[6]までのサンプルの、1H-NMRスペクトルを図7から 12 に示す([1]:図7;[2]:図8;[3]:図9;[4]:図10;[5]:図11;[6]:図12)。そのうち、上記(6)、(7)、(8)の3ユニットとも含まれる実施例20から得られたサンプル[3]のスペクトルに関しては、下図と対応した帰属についても併せて記す。
【0375】
【化102】
【0376】
このようにして得られた化合物([1]から[8])を例示化合物(1)から(8)とし、実施例25 以降で各種トナーを製造し、評価を行った。
【0377】
(実施例23)
酵母エキス 0.5%を含むM9培地 200mLを 500mL容振とうフラスコに加えたものを3本用意し、それぞれ1本ずつにYN2株、H45株、P161株を植菌し、30℃、8時間培養した。2L容振とうフラスコに、D-グルコース(キシダ化学)0.5%及び4-チオフェノキシ酪酸(4-(フェニルスルファニル)酪酸) 0.1%を含むM9培地1Lを仕込んだものを 15本用意し、先に培養した3種類の株の培養液2mLずつをそれぞれ5本分に加え、125 ストローク/分、30℃で培養した。48時間の培養後、遠心分離により菌体を収穫し、D-グルコース 0.5%及び4-チオフェノキシ酪酸(4-(フェニルスルファニル)酪酸) 0.1%を含み、NH4Clを全く含まないM9培地1L5本分にそれぞれの菌株を再懸濁した後、30℃、48時間培養した。培養終了後、それぞれ5L分3株の菌体を遠心分離によって回収した。それぞれの菌体を実施例20 に示す[1]の条件で処理し、サンプルを得た。YN2株由来のサンプルを[9]、H45株由来のサンプルを[10]、P161株由来のサンプルを[11]とした。これら3つのサンプルを実施例20 と同様にGPC及び1H-NMRの測定を行った。各サンプルの収量及び分子量を表11 に示す。
【0378】
【表11】
【0379】
また、各サンプルの1H-NMRから算出した以下に示す化学式(9)、(10)、(11)の各ユニット比を表12 に示す。
【0380】
【化103】
【0381】
【表12】
【0382】
各ユニット比は側鎖に芳香環を有するユニットの全体を 100%とした場合のパーセンテージである。
【0383】
サンプル[9]から[11]の、上記化学式(9)、(10)、(11)で示したユニット以外の直鎖3-ヒドロキシアルカノエート及び3-ヒドロキシアルケノエートユニットの割合は、[9]: 14%,[10]:9%,[11]: 11%であった。
【0384】
このようにして得られた化合物([9]から[11])を例示化合物(9)から(11)とし、実施例25 以降で各種トナーを製造し、評価を行った。
【0385】
(実施例24)
酵母エキス 0.5%を含むM9培地 200mLを 500mL容振とうフラスコに加えたものを3本用意し、それぞれ1本ずつにYN2株、H45株、P161株を植菌し、30℃、8時間培養した。2L容振とうフラスコに、ポリペプトン 0.5%及び5-(4-フルオロチオフェノキシ)吉草酸(5-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]吉草酸) 0.1%を含むM9培地1Lを仕込んだものを 15本用意し、先に培養した3種類の株の培養液2mLずつをそれぞれ5本分に加え、125 ストローク/分、30℃で培養した。48時間の培養後、それぞれ5L分3株の菌体を遠心分離によって回収した。それぞれの菌体を実施例20 に示す[1]の条件で処理し、サンプルを得た。YN2株由来のサンプルを[12]、H45株由来のサンプルを[13]、P161株由来のサンプルを[14]とした。これら3つのサンプルを実施例20 と同様にGPC及び1H-NMRの測定を行った。
各サンプルの収量及び分子量を表13 に示す。
【0386】
【表13】
【0387】
また、各サンプルの1H-NMRから算出した以下に示す化学式(12)、(13)、(14)の各ユニット比を表14 に示す。
【0388】
【化104】
【0389】
【表14】
【0390】
各ユニット比は側鎖に芳香環を有するユニットの全体を 100%とした場合のパーセンテージである。
【0391】
サンプル[12]から[14]の、上記化学式(12)、(13)、(14)で示したユニット以外の直鎖3-ヒドロキシアルカノエート及び3-ヒドロキシアルケノエートユニットの割合は、[12]: 10%,[13]:8%,[14]:9%であった。
【0392】
このようにして得られた化合物([12]から[14])を例示化合物(12)から(14)とし、実施例25 以降で各種トナーを製造し、評価を行った。
【0393】
次に、本発明の方法から選択される方法で実施例20から24 のようにして製造された荷電制御剤を用いて各種トナーを製造し、評価を行った(実施例25〜99)。
【0394】
(実施例25)
まず 0.1MのNa3PO4水溶液と1MのCaCl2水溶液を用意する。TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)の 20 リットル反応釜中に 0.1MのNa3PO4を 451 部とイオン交換水 709 部を投入し 10000 rpmで撹拌した。1MのCaCl2水溶液 68 部を、60℃に加温した上記フラスコ中にホモミキサー撹拌下に徐々に加え、Ca3(PO4)2を含む分散媒を得た。
【0395】
スチレン 180部
2-エチルヘキシルアクリレート 20部
パラフィンワックス(m.p.75℃) 60部
C.I.ピグメントブルー 15 :3 10部
スチレン-ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体 10部
(Mw=4万、Mw/Mn= 3.2、アミン価= 55)
例示化合物(1) 4部
上記処方のうち、C.I.ピグメントブルー 15:3とスチレンだけを予備混合を行った。次ぎに上記処方すべてを 60℃に加温し溶解、分散して単量体混合物にした。さらに、60℃に保持しながら、開始剤2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)10部を加えて溶解し、単量体組成物を調製した。
【0396】
前記ホモミキサーの 20 リットル反応釜中で調製した分散媒に、上記単量体組成物を投入した。60℃で窒素雰囲気としたホモミキサーを用いて 10000rpmで 20分間撹拌し、単量体組成物を造粒した。その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ 60℃で 10時間重合させた。
【0397】
重合反応終了後、反応生成物を冷却し、塩酸を加えてCa3(PO4)2を溶解して、ろ過、水洗、乾燥することにより青色重合粒子(1)を得た。
【0398】
得られた青色重合粒子(1)の粒径をコールターカウンターマルチサイザー(コールター社製)で測定したところ、重量平均径 8.5μmでシャープな粒度分布を有していた。また、微粉量(個数分布における 3.17μm以下の粒子の存在割合)は 4.9個数%であった。
【0399】
得られた青色重合粒子(1)100部に対して、BET表面積が 170m2/gであるアミノ基を有するシランカップリング剤処理シリカ 0.6部を外添し、本実施例の青色トナー(1)とした。
【0400】
このトナー7部に対し、平均粒径が 50μmであるフッ素-アクリルコートフェライトキャリア 93部を混合し磁気ブラシ現像用の2成分系青色現像剤(1)とした。
【0401】
(実施例26〜38)
例示化合物(1)の代わりに、例示化合物(2)〜(14)をそれぞれ 2.0重量部使用する以外は実施例25 と同様の方法で、実施例26〜38 の青色トナー(2)〜(14)を得た。これらのトナーの特性を実施例25と同様に測定し、その結果を表15に示した。また、これを用いて実施例25と同様にして、2成分系青色現像剤(2)〜(14)をそれぞれ得た。
【0402】
(比較例1)
例示化合物を使用しない点以外は実施例25 と同様の方法により、比較例1の青色トナー 15 を得た。このトナーの特性を実施例25 と同様に測定し、その結果を表15 に示した。また、これを用いて実施例25 と同様にして、比較例1の2成分系青色現像剤 15 を得た。
【0403】
<評価>
上記実施例25〜38 で得られた2成分系青色現像剤(1)〜(14)、および比較例1で得られた2成分系青色現像剤 15 について、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び 300秒攪拌後のトナーの帯電量を測定した。そして、2成分ブローオフ帯電量の測定値から少数以下第2位を四捨五入し、下記の基準で評価した。その結果を表15 にまとめて示した。
[帯電性]
◎:非常に良好(+ 30.0〜+ 40.0μC/g)
○:良好(+ 20.0〜+29.9μC/g)
△:実用可(+10.0〜+19.9μC/g)
×:実用不可(+9.9μC/g以下)
【0404】
【表15】
【0405】
(実施例39〜52)
例示化合物(1)〜(14)を4重量部を用い、シアン着色剤の代わりにイエロー着色剤(C.I.ピグメントイエロー 17)を7重量部使用する以外は、実施例25 と同様の方法により、実施例39〜52 のイエロートナー(1)〜(14)をそれぞれ得た。
【0406】
これらのトナーの特性を実施例25 と同様に測定し、その結果を表16 に示した。また、これを用いて実施例25 と同様にして、2成分系イエロー現像剤(1)〜(14)を得た。
【0407】
(比較例2)
例示化合物を使用しない点およびシアン着色剤の代わりにイエロー着色剤(C.I.ピグメントイエロー 17)を7重量部使用する点以外は実施例25 と同様の方法により、比較例2のイエロートナー 15 を得た。このトナーの特性を実施例25 と同様に測定し、その結果を表16 に示した。また、これを用いて実施例25 と同様にして、比較例2の2成分系イエロー現像剤 15 を得た。
【0408】
<評価>
上記実施例 20 〜 33 → 39〜52 で得られた2成分系イエロー現像剤(1)〜(14)、および比較例2で得られた2成分系イエロー現像剤 15 について、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び 300秒攪拌後のトナーの帯電量を測定した。そして、2成分ブローオフ帯電量の測定値から少数以下第2位を四捨五入し、下記の基準で評価した。その結果を表16 にまとめて示した。
[帯電性]
◎:非常に良好(+30.0〜+40.0μC/g)
○:良好(+20.0〜+29.9μC/g)
△:実用可(+10.0〜+19.9μC/g)
×:実用不可(+9.9μC/g以下)
【0409】
【表16】
【0410】
(実施例53〜66)
例示化合物(1)〜(14)を4重量部使用し、シアン着色剤の代わりにカーボンブラックを 10重量部使用する以外は、実施例25 と同様の方法により、実施例53〜66 の黒色トナー(1)〜(14)をそれぞれ得た。これらのトナーの特性を実施例25 と同様に測定し、その結果を表17 に示した。また、これを用いて実施例25 と同様にして、2成分系黒色現像剤(1)〜(14)を得た。
【0411】
(比較例3)
例示化合物を使用しない点およびシアン着色剤の代わりにカーボンブラックを 10重量部使用する点以外は実施例25 と同様の方法により、比較例3の黒色トナー 15 を得た。このトナーの特性を実施例25 と同様に測定し、その結果を表17 に示した。また、これを用いて実施例25 と同様にして、比較例3の2成分系黒色現像剤 15 を得た。
【0412】
<評価>
上記実施例53〜66 で得られた2成分系黒色現像剤(1)〜(14)、および比較例3で得られた2成分系黒色現像剤 15 について、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び 300秒攪拌後のトナーの帯電量を測定した。そして、2成分ブローオフ帯電量の測定値から少数以下第2位を四捨五入し、下記の基準で評価した。その結果を表17 にまとめて示した。
【0413】
[帯電性]
◎:非常に良好(+30.0〜+40.0μC/g)
○:良好(+20.0〜+29.9μC/g)
△:実用可(+10.0〜+19.9μC/g)
×:実用不可(+9.9μC/g以下)
【0414】
【表17】
【0415】
(実施例67〜80)
例示化合物(1)〜(14)を4重量部使用し、シアン着色剤の代わりにマゼンダ着色剤(C.I.ピグメントレッド 122)を 12 重量部使用する以外は、実施例25 と同様の方法により、実施例67〜80 のマゼンダトナー(1)〜(14)をそれぞれ得た。これらのトナーの特性を実施例25 と同様に測定し、その結果を表18 に示した。また、これを用いて実施例25 と同様にして、2成分系マゼンダ現像剤(1)〜(14)を得た。
【0416】
(比較例4)
例示化合物を使用しない点およびシアン着色剤の代わりにマゼンダ着色剤(C.I.ピグメントレッド 122)を 12 重量部使用する点以外は実施例25 と同様の方法により、比較例4のマゼンダトナー 15 を得た。このトナーの特性を実施例25 と同様に測定し、その結果を表18 に示した。また、これを用いて実施例25 と同様にして、比較例4の2成分系マゼンダ現像剤 15 を得た。
【0417】
<評価>
上記実施例67〜80 で得られた2成分系マゼンダ現像剤(1)〜(14)、および比較例4で得られた2成分系マゼンダ現像剤 15 について、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び 300秒攪拌後のトナーの帯電量を測定した。そして、2成分ブローオフ帯電量の測定値から少数以下第2位を四捨五入し、下記の基準で評価した。その結果を表18 にまとめて示した。
【0418】
[帯電性]
◎:非常に良好(+30.0〜+40.0μC/g)
○:良好(+20.0〜+29.9μC/g)
△:実用可(+10.0〜+19.9μC/g)
×:実用不可(+9.9μC/g以下)
【0419】
【表18】
【0420】
(実施例81〜92 および比較例5〜比較例8)
実施例81〜92 および比較例5〜比較例8として、実施例25、33、36、39、47、50、53、61、64、67、75、78 及び比較例1から4で調製した現像剤を市販のカラー電子写真複写機CLC-500(キヤノン(株)製)のOPC感光ドラムを非晶質シリコンドラムに変えた改造機で複写試験した。試験は 23℃/ 60%の環境下で行い、300 枚及び 5000 枚複写後の画像濃度、画像カブリ、転写性を以下のようにして評価した。結果を表19 に示す。
【0421】
[プリントアウト画像評価]
1.画像濃度
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に、所定枚数のプリントアウトをして、初期の画像に対するプリント終了時における画像の画像濃度維持の程度により評価した。尚、画像濃度はマクベス反射濃度計(マクベス社製)を用い、原稿濃度が 0.00 の白地部分のプリントアト画像に対する相対濃度を測定し、評価に用いた。
◎:優(終了時の画像濃度が 1.40 以上)
○:良(終了時の画像濃度が 1.35 以上 1.40 未満)
△:可(終了時の画像濃度が 1.00 以上 1.35 未満)
×:不可(終了時の画像濃度が 1.00 未満)
2.画像カブリ
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に所定枚数のプリントアウトをし、プリント終了時のベタ白画像により評価した。具体的には、下記のような方法で評価した。反射式濃度計(TOKYO DENSHOKU CO.,LTD社製 REFLECTOMETER ODEL TC-6DS)を用いて測定したプリント後の白地部反射濃度の最悪値をDs、プリント前の用紙の反射濃度平均値をDrとし、これらの値から(Ds-Dr)を求め、これをカブリ量とし、下記の基準で評価した。
◎:非常に良好(カブリ量が0%以上 1.5%未満)
○:良好(カブリ量が 1.5%以上 3.0%未満)
△:実用可(カブリ量が 3.0%以上 5.0%未満)
×:実用不可(カブリ量が 5.0%以上)
3.転写性
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に、黒ベタ画像を所定枚数プリントアウトをし、プリント終了時の画像の画像抜け量を目視により観察し、下記の基準で評価した。
◎ : 非常に良好(殆ど発生せず)
○ : 良好(軽微)
△ : 実用可
× : 実用不可
【0422】
【表19】
【0423】
(実施例93)
単量体混合物の処方を以下のようにした以外は、例示化合物(1)を用いて実施例25 と同様にして重量平均径 8.6μmの重合トナーを得た。また、微粉量は 5.1個数%であった。
【0424】
スチレン 180部
2-エチルヘキシルアクリレート 20部
パラフィンワックス(m.p.75℃) 20部
磁性体(チタンカップリング処理品) 160部
スチレン-ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体 10部
(Mw=3万、Mw/Mn=3.0、アミン価=50)
例示化合物(1) 6部
このトナーについて、実施例6と同じシリカを同比率で混合し、市販の複写機(商品名NP-4835,キヤノン(株)製)に適用して 23℃/ 60%の環境条件下、複写試験をしたところ、画像濃度 1.44、カブリやがさつきがなく、解像性が 6.2本/mmの鮮明な画像が得られた。さらに、2万枚連続複写して耐久性能を調べたところ、画像濃度 1.39、解像性 6.2本/mmと初期の画像と比較して遜色のない良好な画像が得られた。
【0425】
また、現像スリーブ上のトナーの摩擦帯電量を測定したところ、初期においては+8.0μC/g、2万枚複写後は+7.6μC/gで、ほとんどスリーブ汚染は認められなかった。次いで、15℃/ 10%の環境条件下、複写試験をしたところ、同様に高濃度で良好な画質の画像が得られた。2万枚の連続複写試験においても同様に良好な結果であった。35℃/ 85%の環境条件下、同じ複写試験、連続複写試験を行なったところ、良好な結果であった。更にこの環境条件下、このトナーを1か月間放置した後に同じ複写試験、連続複写試験を行なったが、問題のない十分な結果であった。
【0426】
(比較例9)
実施例93 における例示化合物(1)を処方に加えないこと以外は、実施例93 と同様な方法により重量平均粒径 8.5μmの微粉体を得、さらに同じシリカを同比率で混合し、トナーを得た。また、トナー表面を観察したところ乳化微粒子の付着が実施例93 よりも多かった。
【0427】
このトナーを実施例93 と同様に市販の電子写真複写機NP-4835(キヤノン(株)製)に適用して 15℃/ 10%の環境条件下、複写試験をしたところ、画像濃度 1.29 の画像が得られた。しかし、連続複写試験を行なって耐久性能を調べたところ、2000枚で画像濃度 1.16 と低下した。
【0428】
(実施例94)
・スチレン-ブチルアクリレート樹脂 100重量部
・磁性酸化鉄 80重量部
・低分子量ポリプロピレンワックス 4重量部
・C.I.ピグメントブルー 15 :3 2重量部
・例示化合物(1) 4重量部
上記材料をヘンシェルミキサーでよく前混合した後、140℃に設定した2軸混練押出機にて溶融混練した。得られた混練物を冷却し、カッターミルにて粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて微粉砕し、更に得られた微粉砕粉を風力分級機で分級して、重量平均粒径 8.4μmの青色着色粒子(16)を得た。
【0429】
得られた青色着色粒子(16)100 重量部にアミノ変性シリコンオイルにより疎水化処理したシリカ微粉末(BET比表面積 130m2/g)0.6重量部を加え、ヘンシェルミキサーで混合してトナー粒子表面にシリカ微粉末を有する青色着色トナー(16)を調製した。
【0430】
得られた青色着色トナー(16)を鉄粉キャリア(日本鉄粉製、EFV 200-300)と 0.5 / 9.5 の比率でターブラーミキサーにより混合し、2成分系青色現像剤(16)とした。
【0431】
(実施例95〜96)
例示化合物(1)の代わりに、例示化合物(9)および(12)をそれぞれ4重量部使用する以外は実施例94 と同様の方法で、実施例95〜96 の青色トナー(17)〜(18)を得た。重量平均粒径はそれぞれ 8.3μm、8.4μmであった。これらの青色トナー(17)〜(18)を用いて実施例94 と同様にして、2成分系青色現像剤(17)〜(18)をそれぞれ得た。
【0432】
(比較例10)
例示化合物を使用しない点以外は実施例94 と同様の方法により、比較例 10 の青色トナー 19 を得た。重量平均粒径は 8.6μmであった。また、この青色トナー 19 を用いて実施例94 と同様にして、比較例 10 の2成分系青色現像剤 19を得た。
【0433】
<評価>
上記実施例94〜96 で得られた2成分系青色現像剤(16)〜(18)、および比較例10 で得られた2成分系青色現像剤 19 について、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び 300秒攪拌後のトナーの帯電量を測定した。そして、2成分ブローオフ帯電量の測定値から少数以下第2位を四捨五入し、下記の基準で評価した。その結果を表20 にまとめて示した。
【0434】
[帯電性]
◎:非常に良好(+30.0〜+40.0μC/g)
○:良好(+20.0〜+29.9μC/g)
△:実用可(+10.0〜+19.9μC/g)
×:実用不可(+9.9μC/g以下)
【0435】
【表20】
【0436】
(実施例97〜99、比較例11)
実施例97〜99、比較例11 として、実施例94〜96 及び比較例10 で得られた青色着色トナー(16)〜(19)を、複写機(商品名NP-4835、キヤノン(株)製)のカラートナー像形成用現像器に適用して複写試験を行った。試験は 23℃/ 60%の環境下で行い、300枚及び 5000枚複写後の画像濃度、画像カブリ、転写性を以下のようにして評価した。結果を表21 に示す。
【0437】
[プリントアウト画像評価]
1.画像濃度
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に、所定枚数のプリントアウトをして、初期の画像に対するプリント終了時における画像の画像濃度維持の程度により評価した。尚、画像濃度はマクベス反射濃度計(マクベス社製)を用い、原稿濃度が 0.00 の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定し、評価に用いた。◎:優(終了時の画像濃度が 1.40 以上)
○:良(終了時の画像濃度が 1.35 以上 1.40 未満)
△:可(終了時の画像濃度が 1.00 以上 1.35 未満)
×:不可(終了時の画像濃度が 1.00 未満)
2.画像カブリ
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に所定枚数のプリントアウトをし、プリント終了時のベタ白画像により評価した。具体的には、下記のような方法で評価した。反射式濃度計(TOKYO DENSHOKU CO.,LTD 社製 REFLECTOMETER ODEL TC-6DS)を用いて測定したプリント後の白地部反射濃度の最悪値をDs、プリント前の用紙の反射濃度平均値をDrとし、これらの値から(Ds-Dr)を求め、これをカブリ量とし、下記の基準で評価した。
◎:非常に良好(カブリ量が0%以上 1.5%未満)
○:良好(カブリ量が 1.5%以上 3.0%未満)
△:実用可(カブリ量が 3.0%以上 5.0%未満)
×:実用不可(カブリ量が 5.0%以上)
3.転写性
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に、黒ベタ画像を所定枚数プリントアウトをし、プリント終了時の画像の画像抜け量を目視により観察し、下記の基準で評価した。
◎ : 非常に良好(殆ど発生せず)
○ : 良好(軽微)
△ : 実用可
× : 実用不可
【0438】
【表21】
【0439】
【発明の効果】
本発明のPHAの製造方法は、原料として、ω-(フェニルスルファニル)アルカン酸またはω-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸を含む培地中で微生物を培養し、培養した微生物により生産される3-ヒドロキシ-(フェニルスルファニル)アルカン酸ユニットまたは3-ヒドロキシ-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸ユニットを含むPHAを過酸化化合物で処理して、そのスルファニル基(-S-)をスルフィニル基(-SO-)またはスルホニル基(-SO2-)へと変換することにより、目的の側鎖上にフェニルスルフィニル基、またはフェニルスルホニル基が存在するユニットを少なくとも一種含む新規な生分解性ポリヒドロキシアルカノエートの生産を可能とする。得られるPHAは、過酸化化合物による処理条件を調整することで、中間原料、すなわち、培養した微生物により生産される3-ヒドロキシ-(フェニルスルファニル)アルカン酸ユニットまたは3-ヒドロキシ-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸ユニットを含むPHAに由来する、3-ヒドロキシ-(フェニルスルファニル)アルカン酸ユニットまたは3-ヒドロキシ-(置換フェニルスルファニル)アルカン酸ユニットを部分的に残すPHAとすることも可能である。加えて、本発明のPHAの製造方法により作製されるPHAは、前記フェニルスルフィニル基、フェニルスルホニル基、フェニルスルファニル基をその側鎖上に有する三種のユニットに関して、その含有比率を過酸化化合物による処理条件を調整することで、高い再現性で制御でき、新たな特性を有する有用なポリヒドロキシアルカノエートとして利用できる。
【0440】
また本発明によれば、静電荷像現像用トナー組成中へ荷電制御剤として上に示した化合物を一種類以上添加することにより、帯電特性に優れ、かつトナー樹脂中への該化合物の分散性、スペント性を向上し、また、画像形成装置での出力時においても、画像カブリを発生せず、転写性に優れ、かつ、電子写真プロセスに高度に適用した静電荷像現像用トナーを提供することが可能となる。また、本発明で使用する荷電制御剤は無色あるいは着色が弱いため、カラートナーに要求される色相に合わせて任意の着色剤を選定することが可能であり、かつ染料、顔料が有する本来の色相を何ら阻害することが無い点も特徴である。加えて本発明の静電荷像現像用トナーは、生分解性であるために燃焼処理を行う必要もなく、大気汚染や地球温暖化の防止といった環境保全の点でも、産業上多大な効果をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において作製された化学式(6)で表されるユニットならびに化学式(7)で表されるユニットを含むPHAの1H-NMRスペクトルを示す。
【図2】実施例2において作製された化学式(6)で表されるユニットならびに化学式(7)で表されるユニットを含むPHAの1H-NMRスペクトルを示す。
【図3】実施例3において作製された化学式(6)で表されるユニット、化学式(7)で表されるユニットならびに化学式(8)で表されるユニットを含むPHAの1H-NMRスペクトルを示す。
【図4】実施例4において作製された化学式(6)で表されるユニットならびに化学式(8)で表されるユニットを含むPHAの1H-NMRスペクトルを示す。
【図5】実施例5において作製された化学式(6)で表されるユニットならびに化学式(8)で表されるユニットを含むPHAの1H-NMRスペクトルを示す。
【図6】実施例6において作製された化学式(6)で表されるユニットを含むPHAの1H-NMRスペクトルを示す。
【図7】実施例20 および 22 のサンプル[1]のPHAにおける1H-NMRスペクトルチャートを示す。
【図8】実施例20 および 22 のサンプル[2]のPHAにおける1H-NMRスペクトルチャートを示す。
【図9】実施例20 および 22 のサンプル[3]のPHAにおける1H-NMRスペクトルチャートを示す。
【図10】実施例20 および 22 のサンプル[4]のPHAにおける1H-NMRスペクトルチャートを示す。
【図11】実施例20 および 22 のサンプル[5]のPHAにおける1H-NMRスペクトルチャートを示す。
【図12】実施例21 および 22 のサンプル[6]のPHAにおける1H-NMRスペクトルチャートを示す。
【図13】トナーの帯電量を測定するブローオフ帯電量測定装置を示す模式図である。
【符号の説明】
43 :スクリーン
45 :真空計
47 :吸引口
49 :電位計
Claims (9)
- 下記一般式(1):
で示される3−ヒドロキシ−(置換フェニルスルフィニル)アルカン酸ユニット、あるいは、下記一般式(2):
で示される3−ヒドロキシ−(置換フェニルスルホニル)アルカン酸ユニットのうち、少なくとも1種類のユニットをポリマー分子中に含むことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート。 - ポリマー分子の数平均分子量は、1000〜500000の範囲であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポリヒドロキシアルカノエート。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載されるポリヒドロキシアルカノエートの製造方法であって、
(工程1) 下記一般式(18):
で示されるω−(置換フェニルスルファニル)アルカン酸の少なくとも一種類以上を含む培地中で微生物を培養する工程と、
(工程2) 工程1において培養した微生物により生産されるポリヒドロキシアルカノエートを、過酸化化合物で処理する工程とを含むことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。 - 前記工程2に用いる過酸化化合物は、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、メタクロロ過安息香酸、過蟻酸、過酢酸からなる群から選ばれる一種類以上の過酸化化合物であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
- 工程1においてポリヒドロキシアルカノエートを生産する微生物が、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物であることを特徴とする請求項5あるいは6に記載の製造方法。
- 前記シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物が、シュードモナス・チコリアイ YN2株(Pseudomonascichorii YN2;FERM BP−7375)、シュードモナス・チコリアイ H45株(Pseudomonas cichorii H45;FERM BP−7374)、シュードモナス・ジェッセニイ P161株(Pseudomonas jessenii P161;FERM BP−7376)のうちから選択される微生物であることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
- 粉粒体の荷電状態を制御する荷電制御剤が請求項1あるいは2におけるポリヒドロアキシアルカノエートを含有してなることを特徴とする荷電制御剤。
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