JP3848204B2 - 新規なポリヒドロキシアルカノエート及びその製造方法、並びに該ポリヒドロキシアルカノエートを含有する荷電制御剤、その画像形成における使用方法 - Google Patents

新規なポリヒドロキシアルカノエート及びその製造方法、並びに該ポリヒドロキシアルカノエートを含有する荷電制御剤、その画像形成における使用方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な構成ユニットを含むポリヒドロキシアルカノエート(PHA)と、その製造方法に関する。より具体的には、側鎖末端に、2−チエニルスルフィニル基並びに2−チエニルスルホニル基を置換基として有する3−ヒドロキシアルカン酸ユニットを含む新規なPHAを、PHA生産能を有する微生物を培養して、対応する2−チエニルスルファニル基を置換基として有する3−ヒドロキシアルカン酸ユニットを含むPHAを生産し体内に蓄積させ、このPHA中のスルフィド型イオウを選択的に酸化処理して、スルホニル基ならびにスルフィニル基に変換して、生分解性の当該PHAを製造する方法に関する。
【0002】
更には、本発明は、前記PHAの用途の発明にも関し、より具体的には、前記PHAの荷電制御剤への利用用途の発明として、電子写真法、静電記録法、磁気記録法等を利用した記録方法に用いられる荷電制御剤、トナーバインダー、静電荷像現像トナー、該トナーを使用する画像形成方法及び画像形成装置に関する。特には、予め静電潜像担持体(以下、単に像担持体と呼ぶ)上にトナー像を形成後、被転写材上に転写させて画像を形成する、複写機、プリンター、ファックス等の電子写真、静電記録、静電印刷に用いられる荷電制御剤、トナーバインダー、静電荷像現像トナー、画像形成方法及び画像形成装置に関する。更に詳しくは、負帯電性の電荷制御剤、それを利用するトナーバインダー、静電荷像現像トナー、該トナーを使用する画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【0003】
【従来の技術】
これまで、多くの微生物がポリ−3−ヒドロキシ酪酸(PHB)、あるいはその他のPHAを生産し、菌体内に蓄積することが報告されてきた(「生分解性プラスチックハンドブック」、生分解性プラスチック研究会編、(株)エヌ・ティー・エス、P178−197(1995))。微生物が産生するこれらPHAは、従来のプラスチックと同様に、溶融加工等により各種製品の生産に利用することができる。さらに、微生物が産生するPHAは、生分解性であるがゆえに、自然界で微生物により完全分解されるという利点を有しており、従来の多くの合成高分子化合物のように自然環境に残留して汚染を引き起こすことがない。また、生体適合性にも優れており、医療用軟質部材等としての応用も期待されている。
【0004】
このような微生物産生PHAは、その生産に用いる微生物の種類や培地組成、培養条件等により、様々な組成や構造のものとなり得ることが知られており、これまで主に、PHAの物性の改良という観点から、このような組成や構造の制御に関する研究がなされてきた。
【0005】
[1]まず、3−ヒドロキシ酪酸(以下、3HBと略す)をはじめとする比較的簡単な構造のモノマーユニットを重合させたPHAの生合成の報告例として、次の文献が挙げられる。
【0006】
(a)3HBと3−ヒドロキシ吉草酸(以下、3HVと略す)を、モノマーユニットとして含むPHA
特公平6−15604号公報、特公平7−14352号公報、特公平8−19227号公報、ならびに特開平5−7492号公報
(b)3HBと3−ヒドロキシヘキサン酸(以下、3HHxと略す)を、モノマーユニットとして含むPHA
特開平5−93049号公報、及び特開平7−265065号公報
(c)3HBと4−ヒドロキシ酪酸(以下、4HBと略す)を、モノマーユニットとして含むPHA
特開平9−191893号公報
(d)炭素数6〜12の3−ヒドロキシアルカノエートを、モノマーユニットとして含むPHA
特許公報第2642937号
(e)単一の脂肪酸を炭素源としたPHA生合成;生産物は、前記(d)とほぼ同様のPHA
Appl. Environ. Microbiol, 58(2), 746 (1992)
等が挙げられる。これらの報告例は、いずれも微生物による炭化水素等のβ酸化、あるいは、糖からの脂肪酸合成により合成された、いずれも側鎖にアルキル基を有するモノマーユニットからなるPHA、即ち、「usual PHA」の生産例である。
【0007】
[2]しかし、微生物産生PHAのより広範囲な応用、例えば、機能性ポリマーとしての応用を図る上では、アルキル基以外の置換基が側鎖に導入されたPHA、即ち、「unusual PHA」が極めて有用であることが期待される。この目的から、有望な置換基の例として、芳香環を含む基(フェニル基、フェノキシ基、ベンゾイル基など)、不飽和炭化水素基、エステル基、アリル基、シアノ基、ハロゲン化炭化水素基、エポキシドなどが、側鎖上に存在するものが挙げられる。これらの中でも、特に、側鎖上に芳香環を有するPHAの研究が盛んになされている。側鎖上に芳香環を有するPHAの生合成の報告例として、下記するものなどを挙げることができる。
【0008】
(a)フェニル基、もしくはその部分置換体(置換フェニル基など)を含むPHA
Makromol. Chem., 191, 1957-1965 (1990)及びMacromolecules, 24, 5256-5260 (1991)には、シュードモナス オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)は、5−フェニル吉草酸を基質として、3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸をユニットとして含むPHAを生産することが報告されている。
【0009】
Macromolecules, 29, 1762-1766 (1996)には、シュードモナス オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)は、5−(p−トリル)吉草酸を基質として、3−ヒドロキシ−5−(p−トリル)吉草酸をユニットとして含むPHAを生産することが報告されている。
【0010】
Macromolecules, 32, 2889-2895 (1999)には、シュードモナス オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)は、5−(2,4−ジニトロフェニル)吉草酸を基質として、3−ヒドロキシ−5−(2,4−ジニトロフェニル)吉草酸ならびに3−ヒドロキシ−5−(p−ニトロフェニル)吉草酸をユニットとして含むPHAを生産することが報告されている。
【0011】
(b)フェノキシ基もしくはその部分置換体(置換フェノキシ基等)を含むPHA Macromol. Chem. Phys., 195, 1665-1672 (1994)には、シュードモナス オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)には、11−フェノキシウンデカン酸を基質として、3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸と3−ヒドロキシ−9−フェノキシノナン酸ユニットを含むPHAコポリマーを生産することが報告されている。
【0012】
特許公報第2989175号には、3−ヒドロキシ−5−(モノフルオロフェノキシ)ペンタノエート(3H5(MFP)P)ユニット、あるいは3−ヒドロキシ、5−(ジフルオロフェノキシ)ペンタノエート(3H5(DFP)P)ユニットからなるホモポリマー、少なくとも3H5(MFP)Pユニットあるいは3H5(DFP)Pユニットを含有するコポリマー、加えて、これらのポリマーを生合成するシュードモナス・プチダの新規菌株、ならびに、シュードモナス属を用いた前記のポリマーの製造法に関する発明が開示されている。かかる特許公報は、その発明がもたらす効果として、置換基をもつ長鎖脂肪酸を資化して、側鎖末端に、1又は2個のフッ素原子が置換したフェノキシ基を持つPHAポリマーを生合成することができ、さらには、生産物のPHAは、融点が高く、良い加工性を保持しながら、立体規則性、撥水性を与えることができるとしている。
【0013】
この環上にフッ素置換がなされたフェノキシ基の部分置換体以外にも、環上にシアノ基やニトロ基が置換する部分置換体の研究もなされている。
【0014】
Can. J. Microbiol., 41, 32-43 (1995)及びPolymer International, 39 ,205-213 (1996)には、シュードモナス オレオボランス(Pseudomonas oleovorans) ATCC 29347 株及びシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida) KT 2442株を用いて、オクタン酸と6−(p−シアノフェノキシ)ヘキサン酸または6−(p−ニトロフェノキシ)ヘキサン酸を基質として、3−ヒドロキシ−6−(p−シアノフェノキシ)ヘキサン酸あるいは3−ヒドロキシ−6−(p−ニトロフェノキシ)ヘキサン酸をモノマーユニットとして含むPHAの生産が報告されている。
【0015】
これらの報告例は、側鎖がアルキル基である一般的なPHAとは異なり、いずれもPHAの側鎖上に芳香環を有しており、それに由来する物性を有するポリマーを得る上で有益である。
【0016】
[3]また、新たなカテゴリーとして、単に物性の変化に留まらず、側鎖に適当な官能基を有するPHAを生産し、その官能基を利用して新たな機能を付加したPHAの創製を目的とする研究も行われている。
【0017】
例えば、Macromolecules, 31, 1480-1486 (1996)及び、Journal of Polymer Science: Part A:Polymer Chemistry, 36 ,2381-2387 (1998)などでは、側鎖の末端にビニル基を持つユニットを含むPHAを生合成した後、酸化剤によりエポキシ化し、側鎖末端に反応性の高いエポキシ基を有するPHAを合成できることが報告されている。
【0018】
またビニル基以外にも、高い反応性が期待されるスルフィド型イオウ(−S−)を有するユニットを含むPHAの生合成例として、Macromolecules, 32, 8315-8318 (1999) には、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)27N01株は、11−(フェニルスルファニル)吉草酸を基質とし、3−ヒドロキシ−5−(フェニルスルファニル)吉草酸と3−ヒドロキシ−7−(フェニルスルファニル)ヘプタン酸ユニットを含むPHAコポリマーを生産することが報告されている。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
これら側鎖上に官能基を有するPHAのうち、例えば、3−ヒドロキシ−ω−(フェニルスルファニル)アルカン酸ユニットを含むPHAに注目すると、そのスルフィド型イオウ(−S−)は反応性が高く、機能性PHAを開発していく際、スルフィド型イオウ(−S−)を有するPHAの種々の誘導体等に関して、今後益々研究がなされていくものと予想される。なお、この様な、芳香環とスルフィド型イオウ(−S−)とを有するPHAの生合成に関しては、上に挙げた1例の報告があるに過ぎない。すなわち、機能性PHAを開発していく上では、スルフィド型イオウ(−S−)を有するPHAから誘導される、種々の新規な誘導体PHAの創製が望まれている。
【0020】
本発明は前記の課題を解決するもので、本発明の目的は、側鎖中にスルフィド型イオウ(−S−)を有するユニットを含むPHAに代えて、かかるPHAを更なる広範囲な用途に対応可能なものとできる、具体的には、PHAの物理化学的性状を更に改善しうる新たな構造のPHA、およびその製造方法を提供することにある。より具体的には、本発明の目的は、微生物により産生される3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸ユニットを主に含むPHAを中間原料として、そのスルフィド型イオウ(−S−)部分を、他のイオウを含む基へと変換し、さらに、側鎖のメチレン部分に化学修飾を加え、その化学構造をも変化せしめることで得られる新規な構造のPHA、ならびに、その製造方法を提供することにある。
【0021】
加えて、本発明の更なる目的は、前記の新規な構造のPHAの示す特性を利用する新規な用途、ならびに、かかる新規な用途に付随した、前記の新規な構造のPHAを使用する方法を提供することにある。より具体的には、本発明の目的は、下記する電子写真方式の画像形成方法において、トナー粒子中に含有させて、負帯電性の荷電制御剤としての機能を発揮するに適する新規な構造のPHAを提供することにある。
【0022】
電子写真方式の画像形成方法は、現在までに多数の方法が提案されているが、一般的には、光導電性物質を利用し、種々の手段によって像担持体(感光体)上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーで現像して可視像とし、必要に応じて紙等の被転写材にトナー像を転写した後、熱及び/または圧力等により被転写材上にトナー画像を定着して複写物を得るものである。電気的潜像を可視化する方法としては、カスケード現像法、磁気ブラシ現像法、加圧現像方法等が知られている。更には、磁性トナーと中心に磁極を配した回転現像スリーブを用いて、現像スリーブ上から感光体上へと磁性トナーを磁界にて飛翔させる方法も用いられている。
【0023】
静電潜像を現像する際に用いられる現像方式には、トナーとキャリアとからなる二成分系現像剤を使用する二成分現像方式と、キャリアを使用しないトナーのみからなる一成分系現像剤を用いる一成分現像方式とがある。
【0024】
ここで、一般にトナーと称される着色微粒子は、バインダー樹脂と着色材とを必須成分とし、その他必要に応じ磁性粉等から構成されている。トナーに電荷を付与する方法としては、荷電制御剤を用いることなくバインダー樹脂そのものの帯電特性を利用することもできるが、それでは帯電の経時安定性、耐湿性が劣り良好な画質を得ることが出来ない。従って通常トナーの電荷保持、荷電制御の目的で荷電制御剤が加えられる。
【0025】
今日、当該技術分野で知られている公知の荷電制御剤としては、例えば、負摩擦帯電性としては、アゾ染料金属錯体、芳香族ジカルボン酸の金属錯体、サリチル酸誘導体の金属錯体等がある。また、正荷電制御剤としてはニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、各種4級アンモニウム塩、ジブチル錫オキサイド等の有機スズ化合物等が知られている。
【0026】
近年、環境保護の観点からも、より一層の廃棄物の削減と環境汚染の防止が世界的に望まれている。このような課題は、電子写真の分野においても同様であり、イメージング装置の広い普及にともない、印刷された用紙、使用済みの廃トナー、複写紙の廃棄量が年ごとに増大しており、地球環境の保全の見地から、より一層の廃棄物の削減と環境に配慮した物質の使用が望まれている。
【0027】
上記の課題を解決する手段として、無色で重金属を含まない化合物や高分子系の荷電制御剤が検討されている。このような例として、USP4480021、USP4442189、USP4925765、特開昭60−108861号公報、特開昭61−314960−108861号公報、特開昭63−3895860−108861号公報、特開昭63−8856460−108861号公報などに提案されている化合物が挙げられるが、これらの化合物は荷電制御剤としての十分な性能を有しておらず、帯電量、帯電の立ち上がり特性、経時安定性、環境安定性等に課題がある。従来、トナー粒子に負帯電性を発揮させる場合に利用される高分子荷電制御剤として、スチレン及び/またはα−メチルスチレンと、スルホン酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートエステルあるいはN−アルキル(メタ)アクリレートアミドとの共重合体(特開平7−72658号公報、特開平8−179564号公報、特許2114410号公報、特許2623684号公報、特許2807795号公報)が用いられる事例が多い。この(メタ)アクリレート型ユニットを含む共重合体材料は、無色である点では有利であるが、目的とする帯電量を得るためには大量の添加が必要である。但し、スルホン酸基自体はアニオン性官能基であり、前記共重合体材料は、(メタ)アクリレート型ユニットに起因する吸湿性を有しているため、トナー粒子の耐湿性という観点では、問題を有する。更に、(メタ)アクリレート型ユニットの存在は、基本的には非イオン性である結着樹脂(バインダー)との相溶性にも影響を与えることも考えられる。
【0028】
環境保護の観点から、微生物等の作用により経時的に分解可能な樹脂、すなわち、生分解性の樹脂の開発が進められており、例えば、多くの微生物がポリエステル構造を有する生分解性樹脂(PHA)を生産し、菌体内に蓄積することが報告されているのは上記に示した通りである。このようなPHAは、その生産に用いる微生物の種類や培地組成、培養条件等により、様々な組成や構造のものとなり得ることが知られており、これまで主に、物性の改良という観点から、産生されるPHAの組成や構造の制御に関する研究がなされている。
【0029】
電子写真の分野においても、特にトナーの製造においてバインダー樹脂への生分解性樹脂の応用が提案されている。例えば、USP5004664には生分解性樹脂、特にはポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、これらの共重合体あるいはブレンド体をその組成物としてなるトナーが開示されている。また、特開平6−289644号公報には、少なくともバインダー樹脂が、植物系ワックスと、生分解性樹脂(例えば、微生物生産のポリエステル、植物−または動物−由来の天然高分子材料等)とを含有し、前記植物系ワックスが、前記バインダー樹脂中に5〜50質量%の比率で添加されていることを特徴とする、特に熱ロール定着用の電子写真用トナーが開示されている。また、特開平7−120975号公報には、乳酸系樹脂をバインダー樹脂として含有することを特徴とする電子写真用トナーが開示されている。さらに、特開平9−274335号公報には、乳酸及び3官能以上のオキシカルボン酸を含有する組成物を脱水重縮合して得られたポリエステル樹脂及び着色剤を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーが開示されている。また、特開平8−262796号公報には、バインダー樹脂及び着色剤を含む電子写真用トナーであって、前記バインダー樹脂が生分解性樹脂(例えば、脂肪族ポリエステル樹脂等)よりなり、そして前記着色剤が非水溶性色素よりなることを特徴とする電子写真用トナーが開示されている。さらに、特開平9−281746号公報には、ポリ乳酸を3官能以上の多価イソシアナートにより架橋して得られるウレタン化ポリエステル樹脂及び着色剤を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーが開示されている。そのバインダー樹脂として生分解性樹脂を使用している、これら電子写真用トナーでは、いずれも、生分解性樹脂の使用は、環境の保全等に寄与する効果があると理解される。
【0030】
上記の生分解性樹脂をバインダー樹脂として使用している電子写真用トナーのいずれも、負帯電性の荷電制御剤を利用しており、かかる荷電制御剤に由来する、クロム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、鉄などの重金属が含まれている。一方、荷電制御剤に生分解性樹脂を使用している例の報告は未だ知られておらず、更なる環境への配慮した材料の提供が望まれている。
【0031】
本発明は前記の電子写真分野における課題をも解決するもので、本発明の目的一つは、側鎖中にスルフィド型イオウ(−S−)を有するユニットを含むPHAに代えて、かかるPHAを荷電制御剤としての用途にも対応可能なものとできる、具体的には、生分解性樹脂の特徴を保持しつつ、負帯電性の荷電制御剤に適合するように、PHAの物理化学的性状を更に改善しうる新たな構造のPHA、およびその製造方法を提供することにある。より具体的には、本発明の目的は、微生物により産生される3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸ユニットを主に含むPHAを中間原料として、そのスルフィド型イオウ(−S−)部分を、他のイオウを含む基へと変換し、さらに、側鎖のメチレン部分に化学修飾を加え、その化学構造をも変化せしめることで、負帯電性の荷電制御機能を付与された新規な構造のPHA、ならびに、その製造方法を提供することにある。加えて、本発明の更なる目的は、前記の新規な構造のPHAの示す荷電制御機能を利用する新規な用途、すなわち、静電荷像現像用トナーに利用される新規な荷電制御剤、ならびに、かかる新規な荷電制御剤を含有するトナー粒子を提供することにある。換言するならば、本発明の更なる目的は、負帯電性の荷電制御機能を付与された新規な構造のPHAを利用して、機能面においては無着色で金属類を含まず、かつ高性能(高帯電量、帯電の立ち上がりが早い、経時安定性に優れる、環境安定性が高い、の少なくともいずれか一つ)で、トナーを構成するバインダー樹脂に対する分散性の改良された負帯電性の荷電制御剤、該荷電制御剤を含有してなるトナーバインダー、該荷電制御剤を含有してなる静電荷像現像トナー、さらには該静電荷像現像トナーを用いた画像形成方法を提供することにある。
【0032】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を進めたところ、微生物により産生される3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸ユニットを主に含むPHAを中間原料として、そのスルフィド型イオウ(−S−)部分を酸化するため、次亜塩素酸ナトリウムを利用して酸化処理を施すと、スルフィニル基(−SO−)並びにスルホニル基(−SO2−)へと変換でき、得られるPHAは、新規な構造のPHAであり、PHAの物理化学的性状を更に改善し得るものとなることを見出した。また、かかるPHAにおいては、前記スルフィニル基(−SO−)並びにスルホニル基(−SO2−)へと変換のみならず、このスルホニル基(−SO2−)に隣接する炭素上へのクロロ置換が生じたクロロ置換体ユニット、あるいは、部分的に酸化が進んだスルフィニル基(−SO−)を有し、その隣接する炭素上へのクロロ置換が生じたクロロ置換体ユニットも、副次的な構成ユニットとして含有することを見出した。加えて、本発明者らは、中間原料とする3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸ユニットを主に含むPHAを、原料とするω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸から、微生物に産生させた後、一旦、溶媒抽出により分離・精製する工程を経て、回収した後、前記次亜塩素酸ナトリウムを利用する酸化処理を行う代わりに、微生物細胞に対して、直接次亜塩素酸ナトリウムを利用する処理を施す、あるいは、微生物細胞内に蓄積されるPHAを細胞を破砕して分離を図った後、次亜塩素酸ナトリウムを利用して処理することによっても、目的とするスルフィニル基(−SO−)並びにスルホニル基(−SO2−)を有するユニットを主に含むPHAの製造が可能であることも見出した。本発明者らは、以上の知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0033】
すなわち、本発明のポリヒドロキシアルカノエートは、下記一般式(1):
【0034】
【化20】
Figure 0003848204
【0035】
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット及び、下記一般式(2):
【0036】
【化21】
Figure 0003848204
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニットを含み、
下記一般式(3):
【0037】
【化22】
Figure 0003848204
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット、
下記一般式(4):
【0038】
【化23】
Figure 0003848204
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット、
下記一般式(5):
【0039】
【化24】
Figure 0003848204
【0040】
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット、
下記一般式(6):
【0041】
【化25】
Figure 0003848204
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット、
この一般式(3)〜(6)で示されるユニット4種類のうち、少なくとも1種類のユニットをさらにポリマー分子中に含むことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートである。かかる本発明のPHAにおいては、前記一般式(1)示されるユニット及び一般式(2)、ならびに、前記一般式(3)〜(6)で示されるユニット4種類のうち、少なくとも1種類のユニットに加えて、
下記一般式(7):
【0042】
【化26】
Figure 0003848204
(式中、yは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット、または、下記一般式(8):
【0043】
【化27】
Figure 0003848204
(式中、zは、3または5から選択される整数を表す)で示されるユニットのうち、少なくとも1種類のユニットをさらに含んでもよい。また、本発明のPHAは、その数平均分子量が1000〜500000の範囲であることが好ましい。
【0044】
上記の構成をとる本発明のPHAにおける、一形態として、下記化学式(9):
【0045】
【化28】
Figure 0003848204
【0046】
で示される3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルフィニル)吉草酸ユニット及び、下記化学式(10):
【0047】
【化29】
Figure 0003848204
【0048】
で示される3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルホニル)吉草酸ユニットとを含み、
下記化学式(11):
【0049】
【化30】
Figure 0003848204
【0050】
で示される5−クロロ−3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルフィニル)吉草酸ユニット、
下記化学式(12):
【0051】
【化31】
Figure 0003848204
【0052】
で示される5−クロロ−3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルホニル)吉草酸ユニット、
下記化学式(13):
【0053】
【化32】
Figure 0003848204
【0054】
で示される5,5−ジクロロ−3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルフィニル)吉草酸ユニット、
下記化学式(14):
【0055】
【化33】
Figure 0003848204
【0056】
で示される5,5−ジクロロ−3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルホニル)吉草酸ユニットの、前記化学式(11)〜(14)に示される4種類のユニットのうちの少なくとも1種類のクロロ置換体ユニットとをポリマー分子中に含むことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートとすることができる。さらには、本発明のPHAにおける、一形態として、下記化学式(15):
【0057】
【化34】
Figure 0003848204
【0058】
で示される3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルフィニル)酪酸ユニット及び、下記化学式(16):
【0059】
【化35】
Figure 0003848204
【0060】
で示される3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルホニル)酪酸ユニットとを含み、
下記化学式(17):
【0061】
【化36】
Figure 0003848204
【0062】
で示される4−クロロ−3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルフィニル)酪酸ユニット、
下記化学式(18):
【0063】
【化37】
Figure 0003848204
【0064】
で示される4−クロロ−3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルホニル)酪酸ユニット、
下記化学式(19):
【0065】
【化38】
Figure 0003848204
【0066】
で示される4,4−ジクロロ−3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルフィニル)酪酸ユニット、
下記化学式(20):
【0067】
【化39】
Figure 0003848204
【0068】
で示される4,4−ジクロロ−3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルホニル)酪酸ユニットの、前記化学式(17)〜(20)に示される4種類のユニットのうちの少なくとも1種類のクロロ置換体ユニットと、
さらに、
下記化学式(21):
【0069】
【化40】
Figure 0003848204
【0070】
で示される3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルフィニル)ヘキサン酸ユニット及び、下記化学式(22):
【0071】
【化41】
Figure 0003848204
【0072】
で示される3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルホニル)ヘキサン酸ユニットとを含み、
下記化学式(23):
【0073】
【化42】
Figure 0003848204
【0074】
で示される6−クロロ−3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルフィニル)ヘキサン酸ユニット、
下記化学式(24):
【0075】
【化43】
Figure 0003848204
【0076】
で示される6−クロロ−3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルホニル)ヘキサン酸ユニット、
下記化学式(25):
【0077】
【化44】
Figure 0003848204
【0078】
で示される6,6−ジクロロ−3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルフィニル)ヘキサン酸ユニット、
下記化学式(26):
【0079】
【化45】
Figure 0003848204
【0080】
で示される6,6−ジクロロ−3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルホニル)ヘキサン酸ユニットの、前記化学式(23)〜(26)に示される4種類のユニットのうちの少なくとも1種類のクロロ置換体ユニットとを、ポリマー分子中に含むことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートとすることもできる。
【0081】
加えて、本発明は、上記する本発明のPHAを製造する方法の発明をも提供しており、すなわち、本発明のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法は、上記するいずれかの構成を有するポリヒドロキシアルカノエートの製造方法であって、
(工程1) 下記一般式(27):
【0082】
【化46】
Figure 0003848204
【0083】
(式中、xは、0〜8の範囲から選択される整数を表す)で示されるω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸化合物を少なくとも一種類以上含む培地中で微生物を培養する工程と、
(工程2) 工程1において培養した微生物により生産されたポリヒドロキシアルカノエートを次亜塩素酸ナトリウムで処理する工程とを含むことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートの製造方法である。
【0084】
本発明のPHAの製造方法においては、前記工程1と工程2の間に、
前記工程1において培養された微生物細胞から、かかる微生物が産生したポリヒドロキシアルカノエートを分離する工程を設けることもできる。
【0085】
その際、前記微生物細胞から、かかる微生物が産生したポリヒドロキシアルカノエートを分離する工程は、微生物細胞を破砕する工程を含むことを特徴とする製造方法とすることができる。この微生物細胞を破砕する工程は、超音波破砕法、ホモジナイザー法、圧力破砕法、ビーズ衝撃法、摩砕法、擂潰法、凍結融解法のいずれかの方法で行われることが好ましい。
【0086】
あるいは、前記微生物細胞から、かかる微生物が産生したポリヒドロキシアルカノエートを分離する工程は、微生物が産生したポリヒドロキシアルカノエートを可溶な溶媒を用いて、微生物細胞から前記ポリヒドロキシアルカノエートを抽出する工程を含むことを特徴とする製造方法とすることもできる。この微生物が産生したポリヒドロキシアルカノエートを可溶な前記溶媒は、クロロホルム、ジクロロメタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトンから選択される1種類以上の溶媒であることが好ましい。
【0087】
加えて、本発明のPHAの製造方法では、工程1に利用する培地中に、ポリペプトンが含まれていることを特徴とする製造方法とすることができる。また、工程1に利用する培地中に、酵母エキスが含まれていることを特徴とする製造方法とすることもできる。あるいは、工程1に利用する培地中に、糖類が含まれていることを特徴とする製造方法とすることも可能である。その際には、前記糖類は、グリセロアルデヒド、エリトロース、アラビノース、キシロース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、グリセロール、エリトリトール、キシリトール、グルコン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マルトース、スクロース、ラクトースからなる群から選ばれる1つ以上の化合物であることが好ましい。
【0088】
さらには、本発明のPHAの製造方法では、工程1に利用する培地中に、有機酸またはその塩が含まれていることを特徴とする製造方法とすることができる。この場合には、前記有機酸またはその塩は、ピルビン酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、コハク酸またはそれらの塩からなる群から選ばれる1つ以上の化合物であることが好ましい。また、工程1に利用する培地中に、アミノ酸またはその塩が含まれていることを特徴とする製造方法とすることができる。その時、前記アミノ酸またはその塩は、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはそれらの塩からなる群から選ばれる1つ以上の化合物であることが好ましい。場合によっては、工程1に利用する培地中に、炭素数4〜12の直鎖アルカン酸またはその塩が含まれていることを特徴とする製造方法とすることもできる。
【0089】
また、本発明のPHAの製造方法では、前記工程1における微生物の培養は、(工程1−1) 下記一般式(27):
【0090】
【化47】
Figure 0003848204
(式中、xは、0〜8の範囲から選択される整数を表す)で示されるω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸化合物を少なくとも1種類以上含み、かつポリペプトンを含む培地中で微生物を培養する工程と、これに続く、
(工程1−2) 前記一般式(23)で示されるω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸化合物を少なくとも一種類以上含み、かつ有機酸またはその塩を含む培地中で、前記工程1−1において培養された微生物を更に培養する工程とを含むことを特徴とする製造方法としてもよい。この形態では、工程1−2で利用する培地中に含有される前記有機酸またはその塩が、ピルビン酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、コハク酸またはそれらの塩からなる群から選ばれる1つ以上の化合物であることが好ましい。その際、工程1−2で利用する培地は、窒素源を含んでいないことがより好ましい。
【0091】
あるいは、本発明のPHAの製造方法では、前記工程1における微生物の培養は、
(工程1−3) 下記一般式(27):
【0092】
【化48】
Figure 0003848204
(式中、xは、0〜8の範囲から選択される整数を表す)で示されるω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸化合物を少なくとも1種類以上含み、かつ糖類を含む培地中で微生物を培養する工程と、これに続く、
(工程1−4) 前記一般式(27)で示されるω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸化合物を少なくとも一種類以上含み、かつ糖類を含み、窒素源を含まない培地中で、前記工程1−3において培養された微生物を更に培養する工程とを含むことを特徴とする製造方法としてもよい。この形態において、前記糖類が、グリセロアルデヒド、エリトロース、アラビノース、キシロース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、グリセロール、エリトリトール、キシリトール、グルコン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マルトース、スクロース、ラクトースからなる群から選ばれる1つ以上の化合物であることが好ましい。その際、工程1−4で利用する培地は、窒素源を含んでいないことがより好ましい。
【0093】
加えて、本発明のPHAの製造方法において、その一形態として、工程1において、培地中に含有させる前記ω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸化合物として、下記化学式(29):
【0094】
【化49】
Figure 0003848204
【0095】
で示される5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸を用いて、その培地中で微生物を培養し、工程2において、前記工程1において培養された微生物が、前記化学式(29)で示される5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸より生産したポリヒドロキシアルカノエートを次亜塩素酸ナトリウムで処理することにより、
下記化学式(9):
【0096】
【化50】
Figure 0003848204
【0097】
で示される3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルフィニル)吉草酸ユニット及び、下記化学式(10):
【0098】
【化51】
Figure 0003848204
【0099】
で示される3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルホニル)吉草酸ユニットと、下記化学式(11):
【0100】
【化52】
Figure 0003848204
【0101】
で示される5−クロロ−3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルフィニル)吉草酸ユニット、
下記化学式(12):
【0102】
【化53】
Figure 0003848204
【0103】
で示される5−クロロ−3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルホニル)吉草酸ユニット、
下記化学式(13):
【0104】
【化54】
Figure 0003848204
【0105】
で示される5,5−ジクロロ−3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルフィニル)吉草酸ユニット、
下記化学式(14):
【0106】
【化55】
Figure 0003848204
【0107】
で示される5,5−ジクロロ−3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルホニル)吉草酸ユニットの、前記化学式(11)〜(14)に示される4種類のユニットのうちの少なくとも1種類のクロロ置換体ユニットとを、
ポリマー分子中に含むポリヒドロキシアルカノエートを製造することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートの製造方法を挙げることができる。
【0108】
また、本発明のPHAの製造方法において、その一形態として、工程1において、培地中に含有させる前記ω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸化合物として、下記化学式(30):
【0109】
【化56】
Figure 0003848204
【0110】
で示される6−(2−チエニルスルファニル)ヘキサン酸を用いて、その培地中で微生物を培養し、工程2において、前記工程1において培養された微生物が、前記化学式(30)で示される6−(2−チエニルスルファニル)ヘキサン酸より生産したポリヒドロキシアルカノエートを次亜塩素酸ナトリウムで処理することにより、
下記化学式(15):
【0111】
【化57】
Figure 0003848204
【0112】
で示される3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルフィニル)酪酸ユニット及び、
下記化学式(16):
【0113】
【化58】
Figure 0003848204
【0114】
で示される3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルホニル)酪酸ユニットとを含み、
下記化学式(17):
【0115】
【化59】
Figure 0003848204
【0116】
で示される4−クロロ−3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルフィニル)酪酸ユニット、
下記化学式(18):
【0117】
【化60】
Figure 0003848204
【0118】
で示される4−クロロ−3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルホニル)酪酸ユニット、
下記化学式(19):
【0119】
【化61】
Figure 0003848204
【0120】
で示される4,4−ジクロロ−3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルフィニル)酪酸ユニット、
下記化学式(20):
【0121】
【化62】
Figure 0003848204
【0122】
で示される4,4−ジクロロ−3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルホニル)酪酸ユニットの、前記化学式(17)〜(20)に示される4種類のユニットのうちの少なくとも1種類のクロロ置換体ユニットと、
加えて、
下記化学式(21):
【0123】
【化63】
Figure 0003848204
【0124】
で示される3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルフィニル)ヘキサン酸ユニット及び
下記化学式(22):
【0125】
【化64】
Figure 0003848204
【0126】
で示される3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルホニル)ヘキサン酸ユニットとを含み、
下記化学式(23):
【0127】
【化65】
Figure 0003848204
【0128】
で示される6−クロロ−3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルフィニル)ヘキサン酸ユニット、
下記化学式(24):
【0129】
【化66】
Figure 0003848204
【0130】
で示される6−クロロ−3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルホニル)ヘキサン酸ユニット、
下記化学式(25):
【0131】
【化67】
Figure 0003848204
【0132】
で示される6,6−ジクロロ−3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルフィニル)ヘキサン酸ユニット、
下記化学式(26):
【0133】
【化68】
Figure 0003848204
【0134】
で示される6,6−ジクロロ−3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルホニル)ヘキサン酸ユニットの、前記化学式(23)〜(26)に示される4種類のユニットのうちの少なくとも1種類のクロロ置換体ユニットとを、ポリマー分子中に含むポリヒドロキシアルカノエートを製造することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートの製造方法を挙げることもできる。
【0135】
以上の構成を有する本発明のPHAの製造方法では、工程1に利用する前記微生物は、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物であることが好ましい。例えば、工程1に利用する前記微生物は、シュードモナス・チコリアイ YN2株(Pseudomonas cichorii YN2;FERMBP−7375)、シュードモナス・チコリアイ H45株(Pseudomonas cichorii H45、FERM BP−7374)、シュードモナス・ジェッセニイ P161株(Pseudomonas jessenii P161、FERM BP−7376)のいずれが1つ以上の株であることがより好ましい。
【0136】
また、本発明者らは、さらに上記する本発明にかかるPHA化合物は、実質的に無色なポリマーであり、その側鎖に導入される電子吸引性を示す構造に起因して、高性能でかつ、金属を使用する必要のない荷電制御剤としての機能を有することを確認し、本発明にかかるPHAの電子写真分野における用途の発明を完成するに到った。
【0137】
すなわち、本発明の荷電制御剤は、下記一般式(1):
【0138】
【化69】
Figure 0003848204
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット及び、下記一般式(2):
【0139】
【化70】
Figure 0003848204
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニットとを含み、
下記一般式(3):
【0140】
【化71】
Figure 0003848204
【0141】
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット、
下記一般式(4):
【0142】
【化72】
Figure 0003848204
【0143】
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット、
下記一般式(5):
【0144】
【化73】
Figure 0003848204
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット、
下記一般式(6):
【0145】
【化74】
Figure 0003848204
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット、この一般式(3)〜(6)で示されるユニット4種類のユニットのうち、少なくとも1種類のユニットとをさらに、ポリマー分子中に有するポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を含有してなる荷電制御剤である。
【0146】
本発明の荷電制御剤では、更に、該PHAは、下記一般式(7):
【0147】
【化75】
Figure 0003848204
(式中、yは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット、または、下記一般式(8):
【0148】
【化76】
Figure 0003848204
【0149】
に示されるユニット(y及びzは、(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)で示すユニットと独立して化学式中に示した範囲内で任意の一つ以上の整数値をとり得る。)の少なくともいずれか一つを更に有していてもよい。
【0150】
また、本発明の荷電制御剤中に含有されるPHAの数平均分子量は、1,000〜500,000の範囲であることが好ましい。
【0151】
加えて、本発明にかかるトナーバインダーは、上記する本発明の荷電制御剤を含有してなるトナーバインダーである。さらには、本発明にかかるトナーは、少なくとも、バインダー樹脂、着色剤、および荷電制御剤を含有してなるトナー粒子であって、前記荷電制御剤は、上述する構成のいずれかを有する本発明の荷電制御剤であることを特徴とするトナーである。
【0152】
加えて、本発明は、上述する本発明にかかるPHAの荷電制御剤としての用途の発明に付随して、本発明にかかるPHAを使用する方法の一形態として、本発明にかかる画像形成方法をも提供し、
すなわち、本発明にかかる画像形成方法は、被記録材上に定着されたトナー像を形成するための画像形成方法であって、
少なくとも、
外部より帯電部材に電圧を印加して静電潜像担持体に帯電を行う工程と、
帯電された静電潜像担持体に静電荷像を形成する工程と、
該静電荷像を静電荷像現像トナーにより現像してトナー像を静電潜像担持体上に形成する現像工程と、
静電潜像担持体上のトナー像を被記録材へ転写する転写工程と、
被記録材上のトナー像を加熱定着する定着工程とを有し、
前記静電荷像現像トナーとして、少なくとも、バインダー樹脂、着色剤、および上述する構成のいずれかを有する本発明の荷電制御剤を含有してなるトナー粒子を使用することを特徴とする画像形成方法である。
【0153】
本発明にかかる画像形成方法においては、
前記静電潜像担持体上のトナー像を被記録材へ転写する転写工程は、
少なくとも、
前記静電潜像担持体上のトナー像を中間の転写体に転写する第1の転写工程と、該中間の転写体上のトナー像を被記録材に転写する第2の転写工程とを含んでなり、
前記静電荷像現像トナーとして、少なくとも、バインダー樹脂、着色剤、および上述する構成のいずれかを有する本発明の荷電制御剤を含有してなるトナー粒子を使用することを特徴とする画像形成方法とすることができる。
【0154】
さらには、本発明は、前記の本発明にかかる画像形成方法の実施に専ら利用される画像形成装置の発明をも提供しており、
すなわち、本発明の画像形成装置は、
被記録材上に定着されたトナー像を形成するための画像形成装置であって、
前記トナー像の形成に供するトナーとして、上記本発明のトナーを具えてなることを特徴とする画像形成装置である。より具体的には、本発明の画像形成装置は、被記録材上に定着されたトナー像を形成するための画像形成装置であって、少なくとも、
外部より帯電部材に電圧を印加して静電潜像担持体に帯電を行う手段と、
帯電された静電潜像担持体に静電荷像を形成する手段と、
該静電荷像を静電荷像現像トナーにより現像してトナー像を静電潜像担持体上に形成する現像手段と、
静電潜像担持体上のトナー像を被記録材へ転写する転写手段と、
被記録材上のトナー像を加熱定着する定着手段とを有し、
前記静電荷像現像トナーを、トナー像の形成に供するトナーとして具えており、前記静電荷像現像トナーは、少なくとも、バインダー樹脂、着色剤、および上述する構成のいずれかを有する本発明の荷電制御剤を含有してなるトナー粒子であることを特徴とする画像形成装置である。かかる形態の本発明の画像形成装置においては、前記静電潜像担持体上のトナー像を被記録材へ転写する転写手段として、
前記静電潜像担持体上のトナー像を中間の転写体に転写する第1の転写手段と、該中間の転写体上のトナー像を被記録材に転写する第2の転写手段とを有し、
前記静電荷像現像トナーを、トナー像の形成に供するトナーとして具えており、前記静電荷像現像トナーは、少なくとも、バインダー樹脂、着色剤、および上述する構成のいずれかを有する本発明の荷電制御剤を含有してなるトナー粒子であることを特徴とする画像形成装置とすることができる。
【0155】
【発明の実施の形態】
本発明の新規なポリヒドロキシアルカノエートは、それを構成するモノマーユニットとして、3−ヒドロキシアルカン酸ユニットの側鎖末端に、2−チエニルスルフィニル基の形状でチオフェン環とスルホキシド構造(−SO−)を有するユニット並びに2−チエニルスルホニル基の形状でチオフェン環とスルホン構造(−SO2−)を有するユニット、さらには、前記側鎖の炭素鎖末端、すなわち、前記スルホン構造(−SO2−)またはスルホキシド構造(−SO−)の硫黄原子が置換する、ω−位の炭素上にクロロ基がさらに置換した構造のクロロ置換体ユニットをも有している。この構造により、これまでに知られている微生物生産ポリヒドロキシアルカノエートとは著しく異なった物理化学的性質を示す。なお、この本発明のポリヒドロキシアルカノエートは、例えば、ポリヒドロキシアルカノエート生産能力を有する微生物を、原料とする一般式(27)で示されるω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸を含む培地中で培養する工程と、培養された微生物細胞により生産される3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸ユニットを含むPHAを次亜塩素酸ナトリウムにより処理する工程とにより製造されるものである。従って、前記微生物が産生する中間原料PHAから誘導される本発明のPHAは、生分解性を有する光学異性体の特質を保持しており、その新規な物理化学的性質とともに、従来に見られない新たなPHAの用途開発を可能とする。より具体的には、新たなPHAの用途として、例えば、電子写真方式の画像形成方法において、トナー粒子中に含有させる負帯電性の荷電制御剤としての用途開発を可能とする。
以下に、本発明について、より詳細に説明する。
【0156】
(カルボン酸誘導体)
本発明で原料に用いる一般式(27)で示されるω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸は、直鎖のカルボン酸の末端に2−チエニルスルファニル基が置換したカルボン酸である。なお、かかるω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸のうち、下記一般式(28):
【0157】
【化77】
Figure 0003848204
(式中、xは、化学式中に示す1〜8の範囲から選択される整数を表す。)で示されるω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸は、新規な物質である。
【0158】
また、一般式(28)で示されるω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸は、下記する製造方法により調製することができる。
1−1. チオフェン−2−チオールとω−ブロモアルカン酸を反応させて、一般式(28)に示すω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸を得る製造方法。
【0159】
1−2. チオフェン−2−チオールとω−ブロモアルカン酸エステルを反応させ、ω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸エステルを合成した後、エステルを加水分解することにより一般式(28)に示すω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸を得る製造方法。
【0160】
1−3. チオフェン−2−チオールとω−ブロモ−1−アルカノールを反応させ、ω−(2−チエニルスルファニル)−1−アルカノールを合成した後、アルキル鎖末端のヒドロキシ基が置換している炭素をカルボキシ基まで酸化することにより、一般式(28)に示すω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸を得る製造方法。
【0161】
1−4. チオフェン−2−チオールと1,ω−ジブロモアルカンを反応させ、2−[(ω−ブロモアルキル)スルファニル]チオフェン(ω−ブロモアルキル2−チエニルスルフィド)を合成した後、金属マグネシウムを用いグリニヤール試薬に調製し、更に炭酸ガスを加え、末端にカルボキシ基を導入することにより、炭素数が1増した一般式(28)に示すω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸を得る製造方法。
【0162】
1−5. チオフェン−2−チオールとラクトン類(アルカノ−ω−ラクトン)を反応させ、ラクトン環の開環を行うことにより、一般式(28)に示すω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸を得る製造方法。
【0163】
なお、一般式(28)に示す置換カルボン酸の製造は、上記の方法に限定されるものではない。
【0164】
上記ω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸の製造方法をさらに具体的に示す。
【0165】
まず、下記化学式(29):
【0166】
【化78】
Figure 0003848204
【0167】
に示す5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸(5−(2−チエニルスルファニル)ペンタン酸)の製造方法を以下に示す。
【0168】
2−1. チオフェン−2−チオールと5−ブロモ吉草酸(5−ブロモペンタン酸)を反応させ、化学式(29)に示す5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸を得る製造方法。
【0169】
2−2. チオフェン−2−チオールと5−ブロモ吉草酸エステルを反応させ、5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸エステルを合成した後、エステルを加水分解することにより化学式(29)に示す5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸を得る製造方法。
【0170】
2−3. チオフェン−2−チオールと5−ブロモ−1−ペンタノールを反応させ、5−(2−チエニルスルファニル)−1−ペンタノールを合成した後、酸化することにより、化学式(29)に示す5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸を得る製造方法。
【0171】
2−4. チオフェン−2−チオールと1,4−ジブロモブタンを反応させ、2−[(4−ブロモブチル)スルファニル]チオフェンを合成した後、金属マグネシウムを用いグリニヤール試薬を調製し、更に炭酸ガスを加えることにより、化学式(29)に示す5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸を得る製造方法。
【0172】
2−5. チオフェン−2−チオールとδ−バレロラクトン(ペンタノ−5−ラクトン)を反応させ、化学式(29)に示す5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸を得る製造方法。
【0173】
次に、下記化学式(30):
【0174】
【化79】
Figure 0003848204
【0175】
に示す6−(2−チエニルスルファニル)ヘキサン酸の製造方法を以下に示す。
3−1. チオフェン−2−チオールと6−ブロモヘキサン酸を反応させ、化学式(30)に示す6−(2−チエニルスルファニル)ヘキサン酸を得る製造方法。
【0176】
3−2. チオフェン−2−チオールと6−ブロモヘキサン酸エステルを反応させ、6−(2−チエニルスルファニル)ヘキサン酸エステルを合成した後、エステルを加水分解することにより化学式(30)に示す6−(2−チエニルスルファニル)ヘキサン酸を得る製造方法。
【0177】
3−3. チオフェン−2−チオールと6−ブロモ−1−ヘキサノールを反応させ、6−(2−チエニルスルファニル)−1−ヘキサノールを合成した後、酸化することにより、化学式(30)に示す6−(2−チエニルスルファニル)ヘキサン酸を得る製造方法。
【0178】
3−4. チオフェン−2−チオールと1,5−ジブロモペンタンを反応させ、2−[(5−ブロモペンチル)スルファニル]チオフェンを合成した後、金属マグネシウムを用いグリニヤール試薬を調製し、更に炭酸ガスを加えることにより、化学式(30)に示す6−(2−チエニルスルファニル)ヘキサン酸を得る製造方法。
【0179】
3−5. チオフェン−2−チオールとε−カプロラクトン(ヘキンサノ−6−ラクトン)を反応させ、化学式(30)に示す6−(2−チエニルスルファニル)ヘキサン酸を得る製造方法。
本発明のPHAの製造方法では、中間原料とする前駆体PHAの生産に用いる微生物は、原料とする一般式(27)で示されるω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸化合物を含む培地中で培養した際、対応する側鎖末端に2−チエニルスルファニル基を有する3−ヒドロキシアルカン酸ユニットを含むPHAを生産し、その細胞内に蓄積する微生物であれば、いかなる微生物であってもよい。例えば、PHA産生能を有するシュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物が挙げられる。好適なシュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物の一例を挙げると、シュードモナス・チコリアイ YN2株(Pseudomonas cichorii YN2;FERM BP−7375)、シュードモナス・チコリアイ H45株(Pseudomonas cichorii H45、FERM BP−7374)、シュードモナス・ジェッセニイ P161株(Pseudomonas jessenii P161、FERM BP−7376)の三種の菌株が挙げられる。これら三種の微生物は、寄託者として本願出願人を名義として、先に国内寄託され、その後、その原寄託よりブタペスト条約に基づく寄託へと移管され、国際寄託機関としての、独立行政法人 産業技術総合研究所(旧 経済産業省 産業技術総合研究所) 生命工学工業技術研究所(NIBH)に、それぞれ前記の受託番号を付与され寄託されている。また、新規なPHA産生能を有する菌株として、既に、特願平11−371863号(特開2001−288256号公報)に記載されている微生物である。
【0180】
また、これら三種の微生物は、側鎖に、芳香環部分に置換基を有する3−ヒドロキシフェニルアルカン酸、3−ヒドロキシ−フェノキシアルカン酸、3−ヒドロキシフェニルスルファニルアルカン酸等のユニットを含むポリヒドロキシアルカノエート型のポリエステルを生産する能力を有する微生物である。
以下に、YN2株、H45株及びP161株について、その菌学的性質を示す。
【0181】
<YN2株の菌学的性質>
(1)形態学的性質
細胞の形と大きさ :桿菌、0.8μm×1.5〜2.0μm
細胞の多形性 :なし
運動性 :あり
胞子形成 :なし
グラム染色性 :陰性
コロニー形状 :円形、全縁なめらか、低凸状、表層なめらか、光沢、半透明
(2)生理学的性質
カタラーゼ :陽性
オキシダーゼ :陽性
O/F試験 :酸化型(非発酵性)
硝酸塩の還元 :陰性
インドールの生成 :陽性
ブドウ糖酸性化 :陰性
アルギニンジヒドロラーゼ :陰性
ウレアーゼ :陰性
エスクリン加水分解 :陰性
ゼラチン加水分解 :陰性
β−ガラクトシダーゼ :陰性
King's B寒天での蛍光色素産生 :陽性
4%NaClでの生育 :陽性(弱い生育)
ポリ−β−ヒドロキシ酪酸の蓄積:陰性(*)
Tween80の加水分解 :陽性
* nutrient agar培養コロニーをズダンブラックで染色することで判定。
(3)基質資化能
ブドウ糖 :陽性
L−アラビノース :陽性
D−マンノース :陰性
D−マンニトール :陰性
N−アセチル−D−グルコサミン :陰性
マルトース :陰性
グルコン酸カリウム :陽性
n−カプリン酸 :陽性
アジピン酸 :陰性
dl−リンゴ酸 :陽性
クエン酸ナトリウム :陽性
酢酸フェニル :陽性
<H45株の菌学的性質>
(1)形態学的性質
細胞の形と大きさ :桿菌、0.8μm×1.0〜1.2μm
細胞の多形性 :なし
運動性 :あり
胞子形成 :なし
グラム染色性 :陰性
コロニー形状 :円形、全縁なめらか、低凸状、表層なめらか、光沢、クリーム色
(2)生理学的性質
カタラーゼ :陽性
オキシダーゼ :陽性
O/F試験 :酸化型
硝酸塩の還元 :陰性
インドールの生成 :陰性
ブドウ糖酸性化 :陰性
アルギニンジヒドロラーゼ :陰性
ウレアーゼ :陰性
エスクリン加水分解 :陰性
ゼラチン加水分解 :陰性
β−ガラクトシダーゼ :陰性
King's B寒天での蛍光色素産生 :陽性
4%NaClでの生育 :陰性
ポリ−β−ヒドロキシ酪酸の蓄積:陰性
(3)基質資化能
ブドウ糖 :陽性
L−アラビノース :陰性
D−マンノース :陽性
D−マンニトール :陽性
N−アセチル−D−グルコサミン :陽性
マルトース :陰性
グルコン酸カリウム :陽性
n−カプリン酸 :陽性
アジピン酸 :陰性
dl−リンゴ酸 :陽性
クエン酸ナトリウム :陽性
酢酸フェニル :陽性
<P161株の菌学的性質>
(1)形態学的性質
細胞の形と大きさ :球状、φ0.6μm
桿状、0.6μm×1.5〜2.0μm
細胞の多形性 :あり(伸長型)
運動性 :あり
胞子形成 :なし
グラム染色性 :陰性
コロニー形状 :円形、全縁なめらか、低凸状、表層なめらか、淡黄色
(2)生理学的性質
カタラーゼ :陽性
オキシダーゼ :陽性
O/F試験 :酸化型
硝酸塩の還元 :陽性
インドールの生成 :陰性
ブドウ糖酸性化 :陰性
アルギニンジヒドロラーゼ :陽性
ウレアーゼ :陰性
エスクリン加水分解 :陰性
ゼラチン加水分解 :陰性
β−ガラクトシダーゼ :陰性
King's B寒天での蛍光色素産生 :陽性
(3)基質資化能
ブドウ糖 :陽性
L−アラビノース :陽性
D−マンノース :陽性
D−マンニトール :陽性
N−アセチル−D−グルコサミン :陽性
マルトース :陰性
グルコン酸カリウム :陽性
n−カプリン酸 :陽性
アジピン酸 :陰性
dl−リンゴ酸 :陽性
クエン酸ナトリウム :陽性
酢酸フェニル :陽性
また、シュードモナス属に属する微生物に加えて、アエロモナス属(Aeromonas sp.)、コマモナス属(Comamonas sp.)、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)などに属し、前記一般式(27)で表されるアルカン酸化合物を原料(基質)として用いて、対応する側鎖末端に2−チエニルスルファニル基を保持する3−ヒドロキシアルカン酸ユニットを含むPHAを生産する微生物を用いることも可能である。
【0182】
(培養工程)
本発明にかかるPHAの製造方法の工程1においては、上記するPHA産生能を有する微生物を利用して、原料の上記一般式(27)で記載されるω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸から、対応する側鎖末端に2−チエニルスルファニル基を保持する、3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸ユニットを含むPHAを生産させる。
【0183】
この工程1に利用する微生物の通常の培養、例えば、保存菌株の作製、PHAの生産に必要とされる菌数や活性状態を確保するための増殖などには、用いる微生物の増殖に必要な成分を含有する培地を適宜選択して用いる。例えば、微生物の生育や生存に悪影響を及ぼすものでない限り、一般的な天然培地(肉汁培地、酵母エキスなど)や、栄養源を添加した合成培地など、いかなる種類の培地をも用いることができる。温度、通気、攪拌などの培養条件は、用いる微生物に応じて適宜選択する。
【0184】
一方、工程1において、前記したようなPHA生産微生物を用いて、目的とする中間原料の、側鎖末端に2−チエニルスルファニル基を保持する、3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸ユニットを含むPHAを製造する際には、培地として、PHA生産用の原料として、このモノマーユニットに対応する、上記一般式(27)で示されるω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸化合物に加えて、微生物の増殖用炭素源とを少なくとも含んだ無機培地などを用いることができる。原料の一般式(27)で示される化合物は、培地あたり0.01%〜1%(w/v)の範囲、より好ましくは、0.02%〜0.2%(w/v)の範囲に初期の含有率を選択することが望ましい。原料の一般式(27)で示されるω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸は、末端にチオフェン環を有するなどの構造のため、その水溶性は必ずしも良好ではないが、上記する微生物は、この化合物を基質として利用できる特性を有するので、培養当初、その溶解度を超える部分は、部分的に懸濁された状態であっても、培養を継続する間に微生物が徐々にその細胞内に取り込む結果、部分的に懸濁されていたものが代わって、培地に溶解するので何ら問題とはならない。
【0185】
なお、原料の一般式(27)で示される化合物は、分散性を高めるため、場合によっては、1−ヘキサデセンやn−ヘキサデカンのような溶媒に溶解、あるいは、微細な懸濁物とした形状で培地中に添加することも可能である。その際には、利用する1−ヘキサデセンやn−ヘキサデカンのような溶媒の添加濃度は、培地に対して、その濃度は3%(v/v)以下にすることが必要である。
【0186】
培地には、微生物が増殖に利用する増殖用炭素源を別途添加する。この増殖用炭素源は、酵母エキスやポリペプトン、肉エキスといった栄養素を用いることが可能である。更に、糖類、TCA回路中の中間体として生じる有機酸ならびにTCA回路から一段階ないしは二段階の生化学反応を経て生じる有機酸またはその塩、アミノ酸またはその塩、炭素数4〜12の直鎖アルカン酸またはその塩などから、用いる菌株に応じて、炭素源としての有用性を考慮して、適宜選択することができる。
【0187】
これら種々の炭素源のうち、糖類としては、グリセロアルデヒド、エリトロース、アラビノース、キシロース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースといったアルドース、グリセロール、エリトリトール、キシリトール等のアルジトール、グルコン酸等のアルドン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸等のウロン酸、マルトース、スクロース、ラクトースといった二糖等から選ばれる1つ以上の化合物が好適に利用できる。
【0188】
また、有機酸あるいはその塩としては、ピルビン酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、コハク酸またはそれらの塩からなる群から選ばれる1つ以上の化合物が好適に利用できる。一方、アミノ酸またはその塩としては、グルタミン酸、アスパラギン酸あるいはそれらの塩からなる群から選ばれる1つ以上の化合物が好適に利用できる。
【0189】
一般に、これら種々の炭素源の中でも、ポリペプトンや糖類を用いるのがより好ましく、また、糖類の中では、グルコース、フルクトース、マンノースからなる群から選択される少なくとも一つを用いることがさらに好ましい。これらの炭素源基質は、通常、培地あたり0.1%〜5%(w/v)の範囲、より好ましくは、0.2%〜2%(w/v)の範囲にその含有率を選択することが望ましい。
【0190】
微生物にPHAを生産・蓄積させる工程1における、培養方法としては、一旦十分に増殖させた後に、塩化アンモニウムのような窒素源を制限した培地へ菌体を移し、目的ユニットの基質となる化合物を加えた状態でさらに培養すると生産性が向上する場合がある。例えば、前記の異なる培養条件からなる工程を複数段接続した多段方式の採用が挙げられる。
【0191】
より具体的には、(工程1−1)として、一般式(27)で示される化合物、ならびに炭素源となるポリペプトンを含む培地中で微生物を培養する工程を対数増殖後期から定常期の時点まで続け、一旦菌体を遠心分離等で回収した後、これに続き、(工程1−2)として、一般式(27)で示される化合物、ならびに炭素源となる有機酸またはその塩とを含み、窒素源を含まない培地中で、前段の工程1−1で培養・増殖した微生物の菌体をされに培養する工程を行う二段階培養方法、あるいは、(工程1−3)として、一般式(27)で示される化合物、ならびに炭素源となる糖類を含む培地中で微生物を培養する工程を対数増殖後期から定常期の時点まで続け、一旦菌体を遠心分離等で回収した後、これに続き、(工程1−4)として、一般式(27)で示される化合物、ならびに炭素源となる糖類を含み、窒素源を含まない培地中で、前段の工程1−3で培養・増殖した微生物の菌体をされに培養する工程を行う二段階培養方法等を利用することが一層好ましい。この二段階培養方法では、前段において、原料の上記一般式(27)で示されるω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸から、目的とする中間原料の、側鎖末端に2−チエニルスルファニル基を保持する3−ヒドロキシアルカン酸ユニットを含むPHAを生産させつつ、菌体の増殖を予め行い、後段では、窒素源を含まない培地中で、既に培養された菌体に、主にPHAの生産を行わせる培養形態とすることで、細胞内に蓄積されるPHA量をさらに高くすることができる。
【0192】
工程1における培養温度は、上記の菌株が良好に増殖可能な温度であればよく、例えば、15〜40℃、好ましくは20〜35℃の範囲、より好ましくは20℃〜30℃の範囲に選択するこのが適当である。
【0193】
培養は、液体培養、固体培養など、利用する微生物が増殖し、培地中に含有される原料の一般式(27)に示される化合物から、前記側鎖末端に2−チエニルスルファニル基を保持する3−ヒドロキシアルカン酸ユニットを含むPHAを生産する培養方法ならば、いかなる培養方法をも用いることができる。さらには、原料、炭素源、さらには酸素の供給が適正に行われるならば、バッチ培養、フェドバッチ培養、半連続培養、連続培養などの種類も問わない。例えば、液体バッチ培養の形態としては、振とうフラスコによって振とうさせて酸素を供給する方法、ジャーファーメンターによる攪拌通気方式の酸素供給方法がある。
【0194】
上記の培養方法に用いる無機培地としては、リン源(例えば、リン酸塩など)、窒素源(例えば、アンモニウム塩、硝酸塩など)等、微生物の増殖に必要な成分を含んでいる培地であればいかなるものでも良く、例えば、MSB培地、M9培地等を挙げることができる。
【0195】
例えば、後の述べる実施例において用いた無機塩培地:M9培地の組成を以下に示す。
【0196】
[M9培地]
Na2HPO4 6.2g
KH2PO4 3.0g
NaCl 0.5g
NH4Cl 1.0g
(培地1リットル中、pH7.0)
更に、良好な増殖と、それに伴うPHAの生産のためには、上記の無機塩培地に、例えば、以下に示す微量成分溶液を0.3%(v/v)程度添加して、必須微量元素を補う必要がある。
【0197】
[微量成分溶液]
ニトリロ三酢酸 :1.5g;
MgSO4 :3.0g;
MnSO4 :0.5g;
NaCl :1.0g;
FeSO4 :0.1g;
CaCl2 :0.1g;
CoCl2 :0.1g;
ZnSO4 :0.1g;
CuSO4 :0.1g;
AlK(SO42:0.1g;
3BO3 :0.1g;
Na2MoO4 :0.1g;
NiCl2 :0.1g
(溶液1リットル中、pH7.0)
(次亜塩素酸ナトリウム処理工程)
例えば、本出願人により先に出願された、特願2001−057085号に開示されているように、本発明に用いる微生物はこのような培養方法により、側鎖末端に置換する2−チエニルスルファニル基として、チオフェン環とスルファニル基(−S−)を有するユニットを含むPHAを生産する。本発明のPHAはこのようにして生産されたPHA中の硫黄部分のうち、スルファニル基(−S−)を選択的に酸化することで製造することができる。その具体的な例としては、前記中間原料の、3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸ユニットを含むPHAに、酸化試薬として、次亜塩素酸ナトリウムを利用する処理を施すことで製造することができる。
【0198】
かかる工程2における、次亜塩素酸ナトリウムを利用する処理方法のうち、最も簡便な手段は、工程1における培養により、本発明のPHAの前駆体(中間原料)である3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸ユニットを含むPHAをその細胞内に生産・蓄積している微生物細胞をそのまま次亜塩素酸ナトリウム水溶液に懸濁し、攪拌して、細胞由来の不溶成分の除去と、PHAに対する処理を同時に行う方法である。この細胞に対して直接次亜塩素酸ナトリウムを作用させる方法では、次亜塩素酸ナトリウムによる処理を終えたPHAは、最終段階で不溶成分として回収する。この手段を採用する際、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度が比較的高い場合、あるいは、反応温度が比較的高い場合は、処理終了後、不溶成分として、本発明のPHAはほぼ純粋な形で回収されるものの、反応条件が厳し過ぎる際には、部分的に主鎖のエステル結合の分断に起因する分子量低下などが起こる場合もある。一方、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度が低い場合には、同時に進行する菌体細胞由来成分の酸化・可溶化処理が不十分となり、不溶成分中に、例えば、細胞膜などの菌体細胞由来成分の一部が残留する場合がある。
【0199】
この菌体細胞由来成分の残留を回避する一つの手段としては、予め培養微生物細胞を破砕し、本発明のPHAの前駆体である、微生物が産生した3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸ユニットを含むPHAを粗製で回収する工程を設け、その後、回収した前駆体PHA(中間原料)に次亜塩素酸ナトリウムによる処理を施す方法がある。この細胞破砕し、前駆体PHA(中間原料)を分離・回収する工程を設ける方法を利用すると、工程2における次亜塩素酸ナトリウムによる処理を、比較的温和な条件で行っても、純度の高いPHAを回収することができる。
【0200】
更に、菌体細胞由来成分の残留を回避する、もう一つの方法としては、工程1後、培地から分離した、産生したPHAを細胞内に蓄積している微生物細胞から、クロロホルムやアセトンといったかかるPHAの可溶溶媒により、PHAのみを抽出・単離する工程を設け、その後、抽出・単離される前駆体PHA(中間原料)に次亜塩素酸ナトリウムによる処理を施す方法がある。この溶媒抽出による前駆体PHA(中間原料)を分離・回収する工程を設ける方法では、抽出・回収されたPHAが、水性媒体中で塊状になる場合があり、その結果、次亜塩素酸ナトリウムによる処理効率が著しく低下するという操作上の困難を伴う場合も多い。その観点からは、先に述べた2つの方法は、前駆体PHAは、本来、微生物細胞中に微粒子状で存在しており、その状態のまま、微粒子状の前駆体PHAを水懸濁状態で次亜塩素酸ナトリウムによる処理を施すことが可能であることから、操作上もより簡便な方法である。
【0201】
本発明のPHAの製造方法で用いる次亜塩素酸ナトリウムは、本発明の目的、すなわち、2−チエニルスルファニル基として存在するスルファニル基(−S−)の選択的な酸化を行え、併せて、かかる2−チエニルスルファニル基が置換している側鎖炭素鎖の末端メチレン基の塩素化に寄与しうる限り、いかなる形態のものをも用いることが可能である。一般に、次亜塩素酸ナトリウムの水溶液の形態で利用する。
【0202】
本発明のPHAの製造方法の工程2における、次亜塩素酸ナトリウムの処理条件としては、処理される前駆体PHAの状態(菌体成分の有無、塊状か微粒子状か等)に依って適宜選択されるものであるが、概ね以下の範囲に選択することが好ましい。
【0203】
次亜塩素酸ナトリウムの濃度は、処理液中の有効塩素濃度として、0.5質量%〜12.0質量%の範囲、好ましくは、1.5質量%〜5.0質量%の範囲に選択することが望ましい。また、細胞ごと、処理を施す際には、処理される微生物細胞の乾燥重量1g当たり、50ml〜300mlの範囲にその液量を選択して、処理することが望ましい。その際、処理温度は、室温(20℃程度)より高く選択すると、上述するPHAの分子量低下をまねく恐れがあるため、0℃〜20℃の範囲、好ましくは、0℃〜10℃の範囲に選択し、反応活性を制御しつつ実施することが好ましい。また、反応時間は、次亜塩素酸ナトリウムの濃度、処理温度に依るが、例えば、前記の好適な濃度、温度範囲を選択する際には、通常、1時間〜5時間の範囲、望ましくは、2時間前後に選択することで、不要な副次的反応の蓄積を回避することが可能となる。
【0204】
前記次亜塩素酸ナトリウムによる処理条件で、工程1において培養された微生物菌体に蓄積された3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸ユニットを含むPHAは、その3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸ユニット部分が、下記一般式(1):
【0205】
【化80】
Figure 0003848204
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示される3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルフィニル)アルカン酸ユニット及び、下記一般式(2):
【0206】
【化81】
Figure 0003848204
【0207】
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示される3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルホニル)アルカン酸ユニットとを含み、
下記一般式(3):
【0208】
【化82】
Figure 0003848204
【0209】
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるω−クロロ−3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルフィニル)アルカン酸ユニット、
下記一般式(4):
【0210】
【化83】
Figure 0003848204
【0211】
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるω−クロロ−3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルホニル)アルカン酸ユニット、
下記一般式(5):
【0212】
【化84】
Figure 0003848204
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるω,ω−ジクロロ−3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルフィニル)アルカン酸ユニット、
下記一般式(6):
【0213】
【化85】
Figure 0003848204
【0214】
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるω,ω−ジクロロ−3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルホニル)アルカン酸ユニットの、前記一般式(3)〜(6)で示される4種類のクロロ置換体ユニットのうち、少なくとも1種類をさらに、ホリマー分子中に含むPHAへと変換される。なお、前記一般式(1)〜(6)で示される6種類のユニットは、元となる3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸ユニットと同様に、3位の炭素原子は不斉炭素原子であり、本発明の微生物を利用する製造方法では、その絶対配置は、R体となっている。従って、本発明の製造方法により作製されるPHAは、3位の不斉炭素原子の絶対配置はいずれもR体をとる光学異性体として製造され、生分解性を有するものである。加えて、前記一般式(3)、(4)で示される2種類のモノクロロ置換体ユニットは、その末端(ω位)の炭素原子も不斉炭素原子であるが、工程2の次亜塩素酸ナトリウム処理によるクロロ置換では、絶対配置に対する選択性は一般に見出されない。また、かかる一般式(3)、(4)で示される2種類のモノクロロ置換体ユニットを含むPHAの生分解性に対して、3位の不斉炭素原子の絶対配置はいずれもR体をとる光学異性体である限り、その末端(ω位)炭素原子の絶対配置は実質的な影響を及ぼさない。
【0215】
工程2の次亜塩素酸ナトリウム処理終了後、処理液中のPHAを回収する手段としては、PHAを共存する可溶化成分から効果的に分離精製し得る方法であれば、いかなる方法をも用いることができる。例えば、遠心分離法を用いることができる。また、次亜塩素酸ナトリウム由来の塩素が、回収したPHAに残存する可能性がある際には、回収したPHAを精製水などで洗浄する工程を付加することが好ましい。更に、このPHAの物理化学的性質が変わらない範囲で、残留塩素を除去し得る薬剤を用いて、洗浄する工程を付加することがより好ましい。
【0216】
本発明の新規なポリヒドロキシアルカノエートは、それを構成するモノマーユニットとして、上記する一般式(1)及び(2)で示されるユニット、ならびに、一般式(3)〜(6)で示される4種類のクロロ置換体ユニットのうち、少なくとも一種のユニットを含んでおり、これらユニット中にチオフェン環及びスルホン構造(−SO2−)、あるいは、スルホキシド構造(−SO−)を有しており、加えて、そのスルホン構造(−SO2−)、あるいは、スルホキシド構造(−SO−)の硫黄原子に隣接するメチレン基上にクロロ基が置換された部分構造を有している。このような特異な構造を有していることで、分子内において電子の局在化が起こり、例えば、光機能性材料やデバイス材料といった、通常のポリヒドロキシアルカノエートとは大きく異なった領域での材料展開を可能とする。
【0217】
従って、上記の製造法で作製される、分子内において電子の局在化が容易に起こる本発明のPHAは、荷電制御剤として利用する上で、きわめて優れた特性を有し、かつ、該荷電制御剤を含有する静電荷像現像用トナーとして、該静電荷像現像用トナーを一定の現像システムを有する画像形成装置に使用した場合に著しい効果がある。
【0218】
すなわち、本発明にかかるPHAの用途発明の第一は、本発明の荷電制御剤であり、この荷電制御剤は、下記一般式(1):
【0219】
【化86】
Figure 0003848204
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット及び、下記一般式(2):
【0220】
【化87】
Figure 0003848204
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニットとを含み、
下記一般式(3):
【0221】
【化88】
Figure 0003848204
【0222】
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット、
下記一般式(4):
【0223】
【化89】
Figure 0003848204
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット、
下記一般式(5):
【0224】
【化90】
Figure 0003848204
【0225】
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット、
下記一般式(6):
【0226】
【化91】
Figure 0003848204
【0227】
(式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット、この一般式(3)〜(6)で示されるユニット4種類のユニットのうち、少なくとも1種類のユニットとを、ポリマー分子中に有するポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を含有してなる荷電制御剤であり、
更に、該PHAは、下記一般式(7):
【0228】
【化92】
Figure 0003848204
(式中、yは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット、または、下記一般式(8):
【0229】
【化93】
Figure 0003848204
【0230】
(式中、zは、化学式中に示す3または5から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット(y及びzは、一般式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)で示すユニットと独立して化学式中に示した範囲内で任意の一つ以上の整数値をとり得る。)の少なくともいずれか一つを更に有するPHAを含有してなる荷電制御剤であり、更には、該荷電制御剤を含有してなる静電荷像現像用トナーである。また、本発明のPHAを使用する方法として、本発明の画像形成方法は、上記の静電荷像現像用トナーを、外部より帯電部材に電圧を印加し、静電潜像担持体を均一に帯電させる帯電工程と、静電潜像担持体上にトナー像を形成する現像工程と、静電潜像担持体上のトナー像を中間の転写体を介して、または、介さずに被転写材へ転写する転写工程と、被転写材上のトナー像を熱によって定着する加熱定着工程とを有する画像形成方法であり、更には、上記の静電荷像現像トナーを用いて被記録材へ画像を形成することを特徴とする画像形成装置である。
【0231】
ここで、本発明の荷電制御剤に利用されるPHA化合物は、生分解性樹脂としての基本骨格を有しており、環境等に悪影響を及ぼさない効果が期待できる。本発明の荷電制御剤に利用されるPHA化合物は、従来のプラスチックと同様、溶融加工等により各種製品の生産に利用することができるとともに、石油由来の合成高分子とは異なり、生物により分解されうるという際立った特性を有している。従って、廃棄した際、本発明の荷電制御剤に利用されるPHA化合物は、微生物等によって分解され、最終的に自然界の物質循環に取り込まれるので、従来利用されていた、多くの合成高分子化合物のように自然環境に残留して汚染を引き起こすことがない。また、クロム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、鉄などの重金属を使用する必要がないため、従来の荷電制御剤に比較して環境への負担がさらに少ない。さらに、生分解処理を行うことで、燃焼処理を行う必要もないため、大気汚染や地球温暖化を防止するという観点でも有効な材料であり、環境保全を可能とするプラスチックとして利用することができる。
【0232】
本発明の静電荷像現像用トナーに使用する帯電制御剤として好適な、本発明のPHA化合物について具体的に説明する。
【0233】
本発明の帯電制御剤で使用するPHA化合物は、3−ヒドロキシアルカノエートをモノマー単位とするポリエステル樹脂であって、側鎖にチエニル環及びスルホニル構造を有するユニットを含み、それ以外のユニットとしてチエニル環及びスルフィニル構造或いはスルホニル構造を有し、更にそのα位のメチレンがクロロ置換されている構造を有するユニットを含んでいる。さらに本発明の帯電制御剤で使用するPHA化合物は、先に示したユニット以外に直鎖の3−ヒドロキシアルカノエート及び側鎖に不飽和結合を含んだ3−ヒドロキシアルケノエートを同時に或いは独立して含んでいても良い。
【0234】
ここで、このPHA化合物を、微生物により生産せしめる工程を含んだ方法で製造した場合、本発明にかかるPHA化合物は、それ構成するユニットは、R体のみからなるアイソタクチックなポリマーとなる。なお、物性/機能の両面において、本発明の帯電制御剤に求められる目的・機能を達成しうるならば、利用するPHA化合物は、特にアイソタクチックなポリマーである必要はなく、アタクチックなポリマーについても利用することが可能である。また、ラクトン化合物の開環重合などを利用した化学合成法により、本発明にかかるPHA化合物を得ることも可能である。
【0235】
本発明の荷電制御剤において、重要なことは、本発明の荷電制御剤に含有されているポリヒドロキシアルカノエートが、側鎖にチエニル環及びスルフィニル構造若しくはスルホニル構造を有するユニットを含み、それ以外のユニットとしてチエニル環及びスルフィニル構造或いはスルホニル構造を有し、更にそのα位のメチレンがクロロ置換されているユニットを含んでいることである。これらの構造により分子内で電子の局在化が起こり、本発明の荷電制御剤は優れた負帯電性を有するものとなる。これらの構造を有するユニットを含む本発明の荷電制御剤は、これまで開示されてきた負帯電性高分子電荷制御剤とは異なり、イオン性官能基を含有せず、耐湿性を含めた耐候性に優れたものである。
【0236】
また、これらの構造を有するユニットの比率を変化させることにより、帯電の立ち上がりをコントロールすることが可能である。更に、これらのユニット比の制御により、さらに環境依存性を少なくすることも可能である。
【0237】
本発明の荷電制御剤に含有されているポリヒドロキシアルカノエートは、製造上、側鎖にチエニル環を含み且つ、スルフィニル構造(−SO−)あるいはスルホニル構造(−SO2−)を有するユニット、すなわち、上記一般式(1)及び(2)に示されるユニットを必須なユニットとして含有するが、加えて、チエニル環及びスルフィニル構造あるいはスルホニル構造を有し、更にそのスルフィニル基あるいはスルホニル基に隣接するメチレンがクロロ置換されている構造を有しているユニット、すなわち、上記一般式(3)、(4)、(5)、(6)に示されるユニットのうち、少なくとも1種類のユニットを更に含んでおり、本発明の荷電制御剤の帯電性能に対する寄与面から考えると、一般式(1)及び(2)に示されるユニットに加えて、これらクロロ置換されているユニットを含むことが、本発明の荷電制御剤の帯電性能に多大に寄与しているものと考えられる。
【0238】
これら一般式(3)、(4)、(5)、(6)に示される構造を有するユニットの含有率は、ポリマー中に少なくとも、1mol%以上含まれていれば良く、その他の一般式(1)及び(2)に示されるユニットなどとの含有比率、また、所望とする帯電性をも考慮して、適宜選択すれば良い。なお、荷電制御剤として、トナー粒子に十分な帯電性を付与する上では、一般式(3)、(4)、(5)、(6)に示される構造を有するユニットの含有率は、ポリマー中において、5mol%以上に選択することがより好ましい。また、一般式(3)、(4)、(5)、(6)に示される構造を有するユニットの含有率の上限については、荷電制御剤を添加するトナーにおいて選択されるバインダー樹脂の種類、ならびに、ポリマー中に含まれる、その他のユニットを考慮すれば良く、トナーに添加する際、バインダー樹脂に対する相溶性を損なわない範囲であれば、含有率の上限に制限はない。
【0239】
本発明の荷電制御剤に利用されるPHA化合物は、バインダー樹脂に対する相溶性が良好であり、特にはポリエステル系のバインダー樹脂に対する相溶性がきわめて良好である。荷電制御剤として、この本発明のPHA化合物を含有せしめたトナーは、比帯電量が高く、その経時安定性も良好であることから、トナーを長時間保存しても静電記録の画像形成において安定して鮮明な画像を与え、また、無色の負の帯電性能をもつため、黒色の負帯電トナーおよびカラートナー何れについても製出することが出来る。
【0240】
さらに、本発明にかかるPHA化合物を構成するモノマーユニットの種類/組成比を適宜選択することにより、幅広い相溶性の制御が可能である。ここで、荷電制御剤がトナーバインダー中でミクロ相分離構造をとるよう樹脂組成を選択すると、トナーの電気的連続性が生じないため安定に電荷を保持することが可能となる。また、本発明のPHA化合物は、荷電制御剤として利用する際、重金属を含まない形状で使用できるため、環境に対する安全性がきわめて高い。また、懸濁重合法や乳化重合法でトナーを作製する際には、含金属の荷電制御剤で見られるような重金属による重合禁止作用がないので、安定してトナーを製出することが出来る。
【0241】
(PHAのトナーへの添加)
本発明において、上記した本発明にかかるPHA化合物を含む荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナーに内添する方法とトナーに外添する方法がある。内添する場合の添加量は、トナーバインダーと該荷電制御剤の質量割合として、通常0.1〜50質量%、好ましくは0.3〜30質量%、さらに好ましくは0.5〜20質量%の範囲で使用するのがより好ましい。0.1質量%よりも少ないと、トナーの帯電性における改良の度合いが顕著にみられず好ましくない。一方、50質量%を超えると、経済的な観点から好ましくない。また、外添する場合には、トナーバインダーと該荷電制御剤の質量割合は0.01〜5質量%とすることが好ましく、特に、メカノケミカル的にトナー表面に固着させるのが好ましい。更に、本発明の荷電制御剤は、本発明の目的、効果を損なわない範囲で、公知の荷電制御剤と組み合わせて使用することもできる。
【0242】
本発明の荷電制御剤に利用する際、PHA化合物の数平均分子量は、通常1,000〜500,000の範囲、好ましくは1,000〜100,000の範囲であることがこのましい。数平均分子量が1,000未満であると、トナーバインダーに完全相溶し、不連続なドメインを形成しにくくなるため、トナーの帯電量不足となるとともに、トナーの流動性に悪影響を与える。また、数平均分子量が500,000を超えると、トナー中に分散させるのが困難となる。
【0243】
本発明の荷電制御剤に利用するPHA化合物の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定する。具体的なGPCの測定方法としては、予め本発明のPHA化合物を、0.1質量%LiBr含有ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、多サンプルを同様の移動相で測定し、標準ポリスチレン樹脂の検量線から、ポリスチレン換算の分子量分布を求める。
【0244】
また、本発明の荷電制御剤においては、上記GPC法で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比率(Mw/Mn)が、1〜10の範囲内にある本発明のPHA化合物を使用することが好ましい。
【0245】
本発明の荷電制御剤において、利用する本発明のPHA化合物は、20〜150℃、特に40〜150℃の融点を持つか、または融点は持たないが20〜150℃、特に40〜150℃のガラス転移点を持つことが好ましい。上記融点が20℃未満、または融点を持たずガラス転移点が20℃未満の場合は、本発明の荷電制御剤を添加するトナーの流動性や、保存性に悪影響を与えやすい。また、融点が150℃を超えるか、または融点を持たずガラス転移点が150℃を超える場合は、本発明の荷電制御剤をトナー中に混練することが困難になり、帯電量分布が広くなりやすい。
【0246】
本発明のPHA化合物について、その融点Tmあるいはガラス転移点Tgの測定には、例えば、パーキンエルマー社製のDSC−7のような高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計を用いて測定を行えばよい。
【0247】
本発明のトナーバインダーおよび静電荷像現像用トナーにおいて、トナーバインダー樹脂と該荷電制御剤の含有割合は、バインダー樹脂と該荷電制御剤の合計に対する荷電制御剤の比率を、通常0.1〜50質量%、好ましくは0.3〜30質量%、さらに好ましくは0.5〜20質量%である。本発明の静電荷像現像用トナーの組成比は、トナー粒子の質量に基づき、通常、前記荷電制御剤が0.1〜50質量%、トナーバインダーが20〜95質量%、着色材料が0〜15質量%である。かかるトナー粒子を磁性トナー粒子とする際には、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属の粉末もしくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライトなどの化合物)を、前記着色材料としての機能を兼ねて60質量%以下含有する組成としていてもよい。さらに、種々の添加剤、例えば、滑剤(ポリテトラフルオロエチレン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸、もしくはその金属塩またはアミドなど)および他の荷電制御剤(ニグロシン誘導体、ナフテン酸金属、アルコキシル化アミン、四級アンモニウム塩など)を含有させることもできる。また、トナー粒子の流動性改良のために、疎水性コロイダルシリカ微粉末等を用いることもできる。これら添加剤の添加量は、トナー粒子の質量に基づき、通常10質量%以下の範囲に選択する。
【0248】
本発明のトナーにおいては、トナーバインダーの少なくとも一部が連続相を形成しており、荷電制御剤の少なくとも一部が不連続なドメインを形成していることが好ましい。不連続なドメインを形成せずに、トナーバインダー中に荷電制御剤が完全相溶する場合と比較して、不連続なドメインを形成することで、添加した荷電制御剤がトナー表面に露出しやすくなると、少量の添加で、荷電制御剤として十分な効果を発現する。また、荷電制御剤の特性をより効果的に発揮する上では、該不連続なドメインの分散粒径は、好ましくは0.01〜4μmであり、さらに好ましくは0.05〜2μmである。4μmを超えると分散性が不充分であり、帯電量分布が広くなるとともに、トナーの透明性が悪くなる問題が生じる。また、分散粒径が0.01μm未満では、不連続なドメインを形成せずにトナーバインダー中に完全相溶する場合と同様であり、多量の荷電制御剤の添加が必要となる。前記荷電制御剤の少なくとも一部が不連続なドメインを形成していること、およびその分散粒径は、透過型電子顕微鏡などでトナーの切片を観察することで確認できる。不連続なドメインの界面を明瞭に観察するために、四酸化ルテニウム、四酸化オスニウムなどでトナー切片を染色した後に電子顕微鏡観察をすることも有効である。
【0249】
また、本発明のPHA化合物が、トナー粒子に添加した際に形成する不連続なドメインの粒径を小さくする目的で、本発明のPHA化合物に対して相溶性を有し、かつトナーバインダー樹脂に対しても相溶性を有する重合体を相溶化剤として含有させることもできる。相溶化剤としては、本発明のPHA化合物を構成するユニットと実質的に同じ構造を有するユニットを50モル%以上含有する重合体鎖と、トナーバインダー樹脂の構成単量体ユニットと実質的に同じ構造を有する単量体ユニットを50モル%以上含有する重合体鎖とを、グラフト状またはブロック状に結合した共重合体などが挙げられる。相溶化剤の使用量は、トナー粒子中に添加される本発明のPHA化合物に対して、通常30質量%以下であり、好ましくは1〜10質量%の範囲に選択する。
【0250】
<他の構成材料>
以下、本発明の静電荷像現像用トナーを構成するその他の構成材料について説明する。
【0251】
(バインダー樹脂)
先ず、バインダー樹脂としては、通常、トナーを製造する際に用いられているものであればいずれも使用することができ、特に限定されない。また、本発明の荷電制御剤は、トナーとする前にバインダー樹脂とあらかじめ混合し、荷電制御能をもつ本発明のトナーバインダー組成物として用いることができる。例えば、バインダー樹脂としては、スチレン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、エポキシ系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマーおよびポリウレタン系ポリマーなどが挙げられ、単独または混合して使用することができる。
【0252】
スチレン系ポリマーとしては、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体およびこれらと共重合可能な他の単量体の共重合体、スチレンとジエン系単量体(ブタジエン、イソプレンなど)との共重合体およびこれらと共重合可能な他の単量体の共重合体などが挙げられる。ポリエステル系ポリマーとしては芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールのアルキレンオキサイド付加物との重縮合物などが挙げられる。エポキシ系ポリマーとしては芳香族ジオールとエピクロルヒドリンとの反応物およびこれの変性物などが挙げられる。ポリオレフィン系ポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレンおよびこれらと他の共重合可能な単量体との共重合体鎖などが挙げられる。ポリウレタン系ポリマーとしては芳香族ジイソシアネートと芳香族ジオールのアルキレンオキサイド付加物との重付加物などが挙げられる。
【0253】
本発明のトナーにおいて用いられるバインダー樹脂の具体例としては、以下に挙げる重合性単量体の重合体、または、これらの混合物、或いは、以下に挙げる重合性単量体を2種類以上使用して得られる共重合生成物が挙げられる。このようなものとしては、具体的には、例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、あるいはスチレン−メタクリル酸系共重合体などのスチレン系ポリマー、さらには、ポリエステル系ポリマー、エポキシ系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマーならびにポリウレタン系ポリマー等が挙げられ、好ましく使用できる。
【0254】
重合性単量体の具体例としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンなどのスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのエチレンや不飽和モノオレフィン類;ブタジエンのなどの不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、弗化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなどのビニルエステル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのα,β−不飽和脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸またはメタクリル酸誘導体;前述のα,β−不飽和酸のエステル、二塩基酸のジエステル類;マレイン酸、マレイン酸メチル、マレイン酸ブチル、マレイン酸ジメチル、フタル酸、コハク酸、テレフタル酸などのジカルボン酸類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA等のポリオール化合物;p−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート等のイソシアネート類;エチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、1,4−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノブタン、モノエタノールアミン等のアミン類;ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物等が挙げられる。
【0255】
(架橋剤)
本発明において使用するバインダー樹脂を形成する場合、必要に応じて下記に挙げるような架橋剤を用いることもできる。例えば、2官能の架橋剤として、ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート、ならびに前記のアクリレートをメタクリレートに変えたもの等が挙げられる。
【0256】
2官能以上の多官能の架橋剤としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレートあるいは前記のアクリレートをメタクリレートに変えたもの、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルアソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリールクロレンデート等が挙げられる。
【0257】
(重合開始剤)
また、本発明のトナーにおいて使用するバインダー樹脂を形成する際には、必要に応じて、重合性単量体の種類に従って、適宜選択する重合開始剤を用いることができる。利用される重合開始剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クミンパーピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バリレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ジ−t−ブチルパーオキシα−メチルサクシネート、ジ−t−ブチルパーオキシジメチルグルタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼラート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、ビニルトリス(t−ブチルパーオキシ)シラン等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で、あるいは二種以上を併用して、使用できる。その使用量は、モノマー100質量部に対し、少なくとも、0.05質量部以上、好ましくは0.1〜15質量部の範囲に選択することが望ましい。
【0258】
(他の生分解性プラスチック)
さらに、本発明のトナーにおいては、バインダー樹脂として、生分解性プラスチックを好適に使用できる。バインダー樹脂に利用可能な生分解性プラスチックとしては、「エコスター」「エコスタープラス」(萩原工業)、「バイオポール」(アイ・シー・アイ・ジャパン)、「アジコート」(味の素)、「プラクセル」「ポリカプロラクトン」(ダイセル化学)、「ショーレックス」「ビオノーレ」(昭和電工)、「ラクティ」(島津製作所)、「レイシア」(三井化学)、「ユーペック」(三菱瓦斯化学)等の商品名で供給されている市販品が挙げられる。
【0259】
これらのバインダー樹脂と本発明の荷電制御剤の組合せは、バインダー樹脂の高分子の構造と荷電制御剤のポリマー鎖の高分子構造とができるだけ類似していることが好ましい。バインダー樹脂の高分子構造と荷電制御剤のポリマー鎖の高分子構造が大きく異なるとバインダー樹脂中への荷電制御剤の分散が不十分になりやすい。
【0260】
本発明の荷電制御剤をバインダー樹脂に内添する質量割合は、通常0.1〜50質量%、好ましくは0.3〜30質量%、さらに好ましくは、0.5〜20質量%である。ここで、内添する荷電制御剤の質量割合が0.1質量%未満であると、帯電量が低く、50質量%を超えるとトナーの帯電安定性が悪くなる。
【0261】
(着色剤)
本発明の静電荷像現像用トナーを構成する着色剤としては、通常、トナーを製造する際に用いられているものであればいずれも使用でき、特に限定されるものではない。例えば、カーボンブラック、チタンホワイト、その他あらゆる顔料及び/または染料を用いることができる。例えば、本発明の静電荷像現像用トナーを磁性カラートナーとして使用する場合には、着色剤としては、例えば、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6等がある。顔料としては、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等を使用することができる。
【0262】
また、本発明の静電荷像現像用トナーを二成分フルカラー用トナーとして使用する場合には、着色剤として次の様なものを使用することができる。例えば、マゼンタ色トナー用の着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35等が挙げられる。
【0263】
本発明のトナーにおいては、上に挙げた顔料を単独で使用することでも、目的とする着色が可能であるものの、顔料に加えて染料を併用すると、その鮮明度の向上が達成でき、フルカラー画像における画質をより高める上でより好ましい。顔料と併用できるマゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27、C.I.ディスパースバイオレット1等の油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28等の塩基性染料が挙げられる。
【0264】
その他の着色顔料としては、シアン用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15、16、17、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45、さらには、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
【0265】
イエロー用着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、83、C.I.バットイエロー1、3、20等が挙げられる。
【0266】
上述するように、これら染料及び顔料は、単独で使用してもよく、あるいは、所望とするトナーの色調を得るために、複数種を適宜に混合して使用することもできる。なお、環境保全や人体に対する安全性などを考慮して、各種の食用色素を使用することもできる。上記の着色剤のトナー中の含有量は、所望とする着色効果などを考慮して、着色剤の種類に応じて適宜選択すべきものである。通常、最も良好なトナー特性を得るため、すなわち、印字の着色力、トナーの形状安定性、トナーの飛散などを考慮した場合、これらの着色剤は、通常、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1〜60質量部好ましくは0.5〜20質量部程度の割合で使用される。
【0267】
(トナーの他の成分)
本発明の静電荷像現像用トナー中には、上記したバインダー樹脂及び着色剤成分の他に、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で(バインダー樹脂成分の含有量より少ない割合で)以下の化合物を含有させてもよい。例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、低分子量ポリエチレンまたは低分子量ポリプロピレンなどの脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、及び、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等である。これらの中でも好ましく用いられるワックス類としては、具体的には、低分子量ポリプロピレン及びこの副生成物、低分子量ポリエステル及びエステル系ワックス、脂肪族の誘導体が挙げられる。これらのワックスから、種々の方法によりワックスを分子量により分別したワックスも本発明に好ましく用いられる。また、分別後に酸価やブロック共重合、グラフト変性を行ってもよい。
【0268】
特に、本発明の静電荷像現像用トナーにおいては、上記したようなワックス成分を含み、しかも透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてトナーの断層観察を行なった場合に、これらのワックス成分が、バインダー樹脂中に実質的に球状及び/または紡錘形の島状に分散されている場合に優れた特性のトナーとなる。
【0269】
(トナーの作製方法)
上記のような構成を有する本発明の静電荷像現像用トナーを作製する具体的な方法としては、従来公知の方法をいずれも用いることができる。本発明の静電荷像現像用トナーは、例えば、下記の工程によってトナーを得る、所謂粉砕法によって作製できる。即ち、具体的には、先に説明した本発明で示される化合物と、バインダー樹脂等の樹脂類、その他、必要に応じて添加されるワックスを、ヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合器により充分混合してから、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練して樹脂類をお互いに相溶せしめた中に、着色剤としての顔料、染料、または磁性体、必要に応じて添加される金属化合物等の添加剤を分散または溶解せしめ、冷却固化後、ジェットミル、ボールミル等の粉砕機により固化物を粉砕した後、分級を行って所望の粒径を有する本発明の静電荷像現像用トナーを得ることができる。また、上記分級工程においては、生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
【0270】
あるいは、バインダー樹脂と本発明で示される化合物を溶剤(トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、クロロホルム、エチレンジクロライドなどのハロゲン化物、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンおよびジメチルホルムアミドなどのアミドなど)を用い、溶液混合し、攪拌処理後、水中に投じて再沈澱せしめ、濾過、乾燥後、ジェットミル、ボールミル等の粉砕機により固化物を粉砕した後、分級を行って所望の粒径を有する本発明の静電荷像現像用トナーを得ることもできる。その際にも、上記分級工程においては、生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
【0271】
また、本発明の静電荷像現像用トナーは、下記のような所謂重合法によって作製することもできる。即ち、この場合には、本発明で示される化合物と、重合性単量体、着色剤としての顔料、染料、または磁性体、必要に応じて、架橋剤、重合開始剤、ワックス、その他の添加剤等の材料を混合分散し、界面活性剤等の存在下、水系分散媒体中で懸濁重合することにより重合性着色樹脂粒子を合成し、得られた粒子を固液分離した後、乾燥し、必要に応じて分級を行って本発明の静電荷像現像用トナーを得ることができる。
【0272】
さらには、荷電制御剤を含まない着色微粒子を上記方法により調製し、次いで本発明で示される化合物を単独もしくはコロイダルシリカ等の外添剤と供にメカノケミカル的な方法等により粒子表面に固着添加することも出来る。
【0273】
(シリカ外添剤)
本発明のトナーにおいては、上記の方法によって作製されたトナー粒子に、帯電安定性、現像性、流動性、耐久性向上のため、シリカ微粉末を外添することが好ましい。この目的で利用されるシリカ微粉末として、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が20m2/g以上、特には、30〜400m2/gの範囲内のものを選択すると、良好な結果を与える。外添するシリカ微粉末の量は、トナー粒子100質量部に対して、シリカ微粉体を0.01〜8質量部、好ましくは0.1〜5質量部の範囲となる程度に添加量を選用することが望ましい。外添する際、シリカ微粉末に対して、疎水化及び帯電性を制御する目的で、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物などの処理剤で、必要に応じて表面処理を施した上で使用することが好ましい。これらの処理剤は混合して使用してもよい。
【0274】
(無機紛体)
また、トナー粒子の現像性及び耐久性を向上させるために、以下に例示する無機粉体を添加することも好ましい。前記用途で利用可能な無機粉体として、例えば、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、鉄、ジルコニウム、クロム、マンガン、ストロンチウム、錫、アンチモンなどの金属の金属酸化物;チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウムなどの複合金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウムなどの金属塩;カオリンなどの粘土鉱物;アパタイトなどのリン酸化合物;炭化ケイ素、窒化ケイ素などのケイ素化合物;カーボンブラックやグラファイトなどの炭素粉末が挙げられる。中でも、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化コバルト、二酸化マンガン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグルシウムから選択される微粉体を使用することが好ましい。
【0275】
(滑剤)
更に、下記に挙げるような滑剤粉末をトナーに添加してもよい。例えば、テフロン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂;フッ化カーボンなどのフッ素化合物;ステアリン酸亜鉛などの脂肪酸金属塩;脂肪酸、脂肪酸エステルなどの脂肪酸誘導体;硫化モリブデン等が挙げられる。
【0276】
(磁性キャリアについて)
上記のように種々の構成を有する本発明の静電荷像現像用トナーは、単独で非磁性一成分現像剤として使用することもでき、あるいは、磁性キャリアとともに磁性二成分現像剤を構成する非磁性トナーとすることができる。さらには、磁性材料を予めトナー粒子に加えて、単独で磁性一成分トナーとして使用される磁性トナーとすることもでき、従来公知の種々のトナーに適用することができる。磁性二成分現像剤として使用する際の磁性キャリアとしては、従来知られているものをいずれも使用することができる。具体的には、表面酸化または未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類などの金属及びそれらの合金または酸化物で形成される平均粒径20〜300μmの磁性粒子を、磁性キヤリア粒子として使用できる。また、本発明において用いる磁性キャリアは、上記の磁性キャリア粒子の表面に、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂などの物質を付着させた、あるいは被覆層を設けているものであることが好ましい。
【0277】
(磁性トナー)
本発明の静電荷像現像用トナーは、予め磁性材料をトナー粒子中ら含有させ磁性トナーとしてもよい。その場合には、磁性材料として、着色剤の機能を有するものを利用し、二つの機能を兼ねさせることもできる。この磁性トナーに使用される磁性材料としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトなどの酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属、あるいはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金ならびにその混合物が挙げられる。本発明のトナーを磁性トナーとする際に使用される、これらの磁性材料は、平均粒子径が2μm以下、好ましくは0.1〜0.5μmの範囲程度であるものが好適に利用できる。トナー中に含有させる磁性材料の量は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜200質量部、特に好ましくは、バインダー樹脂100質量部に対して40〜150質量部の範囲に選択することが好ましい。
【0278】
更に、高画質化を達成するためには、より微小な潜像ドットを忠実に現像することが可能なトナー粒子径とにする必要がある。すなわち、本発明の静電荷像現像用トナー粒子のトナー粒子径を所定の解像度に適するものとすることが望ましく、例えば、トナー粒子の重量平均径を4μm〜9μmの範囲内となるように調整することが好ましい。すなわち、トナー粒子の重量平均径が4μm未満であると、転写効率の低下が生じ、従って、感光体上に転写残トナーが多く残り易く、場合によっては、カブリ・転写不良に基づく画像の不均一ムラの原因となり易い。一方、トナー粒子の重量平均径が9μmを超える場合には、文字やライン画像の飛び散りが生じ易い。
【0279】
本発明のトナーにおいて、トナーの平均粒径及び粒度分布の評価は、例えば、コールターカウンターTA−II型あるいはコールターマルチサイザー(コールター社製)等を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びPC9801パーソナルコンピューター(NEC製)を接続して、それぞれ測定することができる。
【0280】
前記の測定装置では、トナー粒子を電解液中に均一に分散した上で、その光散乱により、平均粒径及び粒度分布を測定する。分散液の調製に使用する電解液として、1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。この電解液として、例えば、市販のISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)を使用することもできる。具体的な測定法としては、上記電解液100〜150ml中に、分散剤として界面活性剤、好ましくは、アルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5ml加え、更に、測定試料のトナー粒子を2〜20mg加えて、均一分散して測定用試料とする。測定の際には、この測定試料のトナー粒子が懸濁された電解液を超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行った後、前記コールターカウンターTA−II型において、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、粒子系2μm以上のトナーの体積、個数を測定し、体積分布と個数分布とを算出した。それらの値、分布から、各トナー粒子に対する、体積分布から求めた体積基準の重量平均粒径(D4)、個数分布から求めた個数基準の長さ平均粒径(D1)を求めた。
【0281】
(帯電量)
また、平均粒径を前記の範囲に選択した上、本発明の静電荷像現像用トナーにおける、摩擦帯電特性は、単位質量あたりの帯電量(二成分法)が−10〜−80μC/g、より好ましくは−15〜−70μC/gの範囲とすることが、電圧を印加した転写部材を用いる転写方法において、転写効率を向上させる上で好ましい。
【0282】
本発明の静電荷像現像用トナーにおける摩擦帯電特性、具体的には、二成分法による帯電量(二成分トリボ)を測定する方法を以下に示す。例えば、測定には、図7に示した帯電量測定装置を使用する。先ず、一定環境下、キャリアとしてEFV200/300(パウダーテック社製)を用い、該キャリア9.5gに対して、測定対象のトナー0.5gを加えた混合物を、50〜100ml容量のポリエチレン製の瓶に入れる。ついで、振幅を一定にした振とう機に設置して、振とう条件を、振幅100mm、振とう速度1分間100回往復に設定し、一定時間振とうする。その後、図7に示す帯電量測定装置の、底に500メッシュのスクリーン43のある金属製の測定容器42に、前記混合物1.0〜1.2gを入れて、金属製のフタ44をする。この時点で秤量される、測定容器42全体の質量をW1(g)とする。次いで、測定容器42と接する部分は少なくとも絶縁体とした、不図示の吸引機を吸引口47に接続し、風量調節弁46を調節して、吸引時に、真空計45で測定される圧力(差圧)が2450Pa(250mmAq)となるようにする。この状態で一分間吸引を行って、トナーを吸引除去する。
【0283】
その後、吸引除去されるトナー粒子が帯びていた摩擦帯電による電荷に起因する、電位計49で測定される電位をV(ボルト)とする。ここで、前記電荷は、コンデンサー48に蓄積される電気量に相当し、コンデンサー48の容量をC(μF)とすると、C×Vである。また、吸引後に秤量される。測定機全体の質量をW2(g)とする。前記の二成分摩擦帯電条件における、トナーの摩擦帯電量(μC/g)は、これらの測定値から、下式によって計算される。
【0284】
摩擦帯電量(μC/g)=C×V/(W1−W2)
(バインダー樹脂の分子量分布)
また、本発明の静電荷像現像用トナーの構成に用いられるバインダー樹脂としては、特に、粉砕法でトナーを作製する際には、GPCによる分子量分布において、低分子量領域におけるピークが3,000〜15,000の範囲にあるものを選択することが好ましい。すなわち、バインダー樹脂の低分子量領域におけるGPCピークが15,000を超えると、得られるトナーの転写効率の向上が十分達成できない場合もある。一方、低分子量領域におけるGPCピークが3000未満のバインダー樹脂を用いると、感光体表面に残る転写残トナーの除去処理時に、トナーの融着を生じ易くなる。従って、前記の分子量分布範囲を選択することが好ましい。
【0285】
本発明のトナーに利用されるバインダー樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定できる。具体的なGPCの測定方法としては、予めトナー粒子に含まれるバインダー樹脂等の樹脂成分をTHF(テトラヒドロフラン)溶剤でソックスレー抽出器を用いて20時間抽出を行い、この抽出されたサンプルを測定に用いる。測定用のカラム構成は、昭和電工製A−801、802、803、804、805、806、807を連結し、標準ポリスチレン樹脂の検量線を用いて、ポリスチレン換算の分子量分布を測定する。また、本発明のトナーにおいては、上記のGPC法により測定される分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比率(Mw/Mn)が、2〜100の範囲内にあるバインダー樹脂を使用することが好ましい。
【0286】
(トナーのガラス転移点)
更に、本発明のトナーにおいては、定着性、保存性の観点から、該トナー粒子を構成する樹脂成分は、適宜な材料を用いることによって、そのガラス転移点Tgが、40℃〜75℃、更に好ましくは、52℃〜70℃の範囲となるように調製されることが好ましい。このトナーの樹脂成分のガラス転移点Tgは、例えば、パーキンエルマー社製のDSC−7のような高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計を用いて測定を行えばよい。ガラス転移点Tgの測定条件、手順は、ASTM D3418−82に準じて行う。本発明のトナーにおいて、樹脂成分のガラス転移点Tgを測定する場合には、測定試料を1回昇温して全履歴をとった後、急冷し、再度、昇温速度10℃/min、温度0〜200℃の範囲で昇温させた際、測定されるDSC曲線を用いて、ガラス転移点Tgを決定するとよい。
【0287】
(画像形成方法)
上記で説明した構成を有する本発明の静電荷現像用トナーは、少なくとも、外部より帯電部材に電圧を印加して、静電潜像担持体に帯電を行う帯電工程と、帯電された静電潜像担持体に静電荷像を形成する工程と、該静電荷像をトナーにより現像してトナー像を静電潜像担持体上に形成する現像工程と、静電潜像担持体上のトナー像を被記録材へ転写する転写工程と、被記録材上のトナー像を加熱定着する加熱定着工程とを有する画像形成方法、あるいは、転写工程が、静電潜像担持体上のトナー像を中間の転写体に転写する第1の転写工程と、該中間の転写体上のトナー像を被記録材に転写する第2の転写工程とからなる画像形成方法に適用することが特に好ましい。
【0288】
なお、本発明のPHAは、それを構成する上記一般式(1)〜(6)で示される各ユニットにおいて、その側鎖に存在するアルキレン鎖;−(CH2)x−の炭素鎖数Xの範囲は、X=0〜8の範囲であれば、上記の荷電制御剤の用途へ利用できるものの、上述する製造方法における培地へ原料の添加の容易さ等を考慮すると、その側鎖に存在するアルキレン鎖;−(CH2)x−の炭素鎖数Xの範囲を、X=0〜6の範囲に選択することも好ましい。
【0289】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。これら実施例は、発明にかかる最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。
【0290】
まず、以下の実施例1〜10には、原料の5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸を含む培地中でPHA生産菌を培養し、その後、PHA生産菌が生産したPHAに対して、次亜塩素酸ナトリウムによる処理を施すことによって、上記化学式(9)の3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルフィニル)吉草酸ユニッ及び(10)の3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルホニル)吉草酸ユニットに加えて、化学式(11)の5−クロロ−3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルフィニル)吉草酸ユニット、化学式(12)の5−クロロ−3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルホニル)吉草酸ユニット、化学式(13)の5,5−ジクロロ−3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルフィニル)吉草酸ユニット、化学式(14)の5,5−ジクロロ−3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルフィニル)吉草酸ユニットの4種類のうち、少なくとも1種類のクロロ置換体ユニットとをポリマー分子中に含むPHAを製造した例を示す。
【0291】
(実施例1)
2000ml容振とうフラスコに、市販のポリペプトン(販売元:和光純薬工業)0.5%と5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸0.1%とを含むM9培地1000mlを入れ、YN2株を植菌し、30℃、125ストローク/分の条件下で62時間振とう培養した。得られた培養液から、遠心分離(8000G(=78000m/s2)、4℃、10分間)により微生物細胞を回収した。
【0292】
回収した細胞は、精製水40mlに懸濁し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(キシダ化学(株)製、有効塩素濃度5%以上)20mlを添加した。これを、4℃、2時間振とうし、目的のPHA以外の細胞構成成分を可溶化すると共に、PHAの酸化ならびに塩素化を行った。反応終了後、処理液から、遠心分離(3000G(=29400m/s2)、4℃、30分間)によりPHAを不溶成分として分離・回収した。分離したPHAは、再び精製水70mlに懸濁し、遠心分離(3000G(=29400m/s2)、4℃、30分間)によりPHAを分離・回収した。この再懸濁と遠心分離の操作を合計3回繰り返して、PHAの水洗浄を行った。最後に、水洗浄済みのPHAは、精製水10mlに懸濁して凍結乾燥し、PHA粒子445mg(乾燥重量)を得た。
【0293】
得られたPHAの平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した。GPCの測定条件は、
装置:東ソーHLC−8020;
カラム:ポリマーラボラトリー PLgel MIXED−C(5μm)×2本;
移動層溶媒:0.1質量%LiBr含有DMF; ポリスチレン換算分子量である。また、PHAの構造同定は、プロトン−核磁気共鳴(1H−NMR)分析により行った。この1H−NMRの測定条件は、
測定装置:Bruker DPX400 FT−NMR;
1H共鳴周波数:400MHz;
測定核種:1H;
使用溶媒:CDCl3
reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3
測定温度:室温 である。
【0294】
図8に、測定された1H−NMRスペクトルチャートを示し、表1に、前記1H−NMRスペクトルの同定結果に基づき、含有されるモノマーユニットの含有比率(モル%)を算定した結果を示す。また、測定されたこのPHAの平均分子量は、数平均分子量(Mn):11000、重量平均分子量(Mw):17900、Mw/Mn:1.6であった。
【0295】
1H−NMR分析の結果、得られたPHAにおいては、原料の5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸からYN2株が生産する前駆体PHA中に含まれる3−ヒドロキシ−(2−チエニルスルファニル)吉草酸ユニットは、次亜塩素酸ナトリウム処理によって、化学式(9)の3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸ユニット及び化学式(10)の3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルホニル)吉草酸ユニットとを含み、化学式(11)の5−クロロ−3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルフィニル)吉草酸ユニット、化学式(12)の5−クロロ−3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルホニル)吉草酸ユニット、化学式(13)の5,5−ジクロロ−3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルフィニル)吉草酸ユニット、化学式(14)の5,5−ジクロロ−3−ヒドロキシ−5−(2−チエニルスルホニル)吉草酸ユニットをも含むものへと変換されていることが判明した。加えて、それ以外のユニットとして、一般式(7)で示される炭素数4〜12まで直鎖3−ヒドロキシアルカン酸ユニットまたは一般式(8)に示される直鎖3−ヒドロキシアルカ−5−エン酸ユニットを含むPHAであることも確認された。なお、表1中において、一般式(7)に示される炭素数4〜12までの直鎖3−ヒドロキシアルカン酸または一般式(8)に示される直鎖3−ヒドロキシアルケン酸は、3HAとして併せて示す。
【0296】
【表1】
Figure 0003848204
【0297】
なお、化学式(9)および化学式(10)に示すユニット、化学式(11)および化学式(12)に示すユニット、化学式(13)及び化学式(14)に示すユニット、これらについては、個別の量比をNMRの結果から算出することが困難であり、表1には、その合計を記載している。なお、NMR分析に加えて、赤外吸収スペクトル、熱分解GC−MC分析結果をも総合して判断した結果、ポリマー中には、上記のクロロ置換体ユニット四種がいずれも含有されているとの結論を得た。
【0298】
(実施例2)
2000ml容振とうフラスコに、市販のポリペプトン(販売元:和光純薬工業)0.5%と5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸0.1%とを含むM9培地1000mlを入れ、H45株を植菌し、30℃、125ストローク/分の条件下で62時間振とう培養した。得られた培養液から、遠心分離(8000G(=78000m/s2)、4℃、10分間)により微生物細胞を回収した。
【0299】
得られた細胞は、実施例1と同様の条件で次亜塩素酸ナトリウム処理を行い、ポリヒドロキシアルカノエート255mg(乾燥重量)を得た。
【0300】
(実施例3)
2000ml容振とうフラスコに、市販のポリペプトン(販売元:和光純薬工業)0.5%と5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸0.1%とを含むM9培地1000mlを入れ、P161株を植菌し、30℃、125ストローク/分の条件下で62時間振とう培養した。得られた培養液から、遠心分離(8000G(=78000m/s2)、4℃、10分間)により微生物細胞を回収した。
【0301】
得られた細胞は、実施例1と同様の条件で次亜塩素酸ナトリウム処理を行い、ポリヒドロキシアルカノエート220mg(乾燥重量)を得た。
【0302】
(実施例4)
2000ml容振とうフラスコに、グルコース0.5%と5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸0.1%とを含むM9培地1000mlを入れ、YN2株を植菌し、30℃、125ストローク/分の条件下で45時間振とう培養した。得られた培養液から、遠心分離により培養菌体を回収した。回収された培養菌体を、グルコース0.5%と5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸0.1%とを含み、窒素源(NH4Cl)を含まないM9培地1000mlに再懸濁し、2000ml振とうフラスコ中で、30℃、125ストローク/分の条件下で48時間振とう培養した。その培養液から、遠心分離(8000G(=78000m/s2)、4℃、10分間)により微生物細胞を回収した。
【0303】
得られた細胞は、実施例1と同様の条件で次亜塩素酸ナトリウム処理を行い、ポリヒドロキシアルカノエート960mg(乾燥重量)を得た。
【0304】
(実施例5)
2000ml容振とうフラスコに、グリセロール0.5%と5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸0.1%とを含むM9培地1000mlを入れ、YN2株を植菌し、30℃、125ストローク/分の条件下で45時間振とう培養した。得られた培養液から、遠心分離により培養菌体を回収した。回収された培養菌体を、グリセロール0.5%と5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸0.1%とを含み、窒素源(NH4Cl)を含まないM9培地1000mlに再懸濁し、2000ml振とうフラスコ中で、30℃、125ストローク/分の条件下で48時間振とう培養した。その培養液から、遠心分離(8000G(=78000m/s2)、4℃、10分間)により微生物細胞を回収した。
【0305】
得られた細胞は、実施例1と同様の条件で次亜塩素酸ナトリウム処理を行い、ポリヒドロキシアルカノエート830mg(乾燥重量)を得た。
【0306】
(実施例6)
2000ml容振とうフラスコに、ポリペプトン0.5%と5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸0.1%とを含むM9培地1000mlを入れ、YN2株を植菌し、30℃、125ストローク/分の条件下で45時間振とう培養した。得られた培養液から、遠心分離により培養菌体を回収した。回収された培養菌体を、ピルビン酸ナトリウム0.5%と5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸0.1%とを含み、窒素源(NH4Cl)を含まないM9培地1000mlに再懸濁し、2000ml振とうフラスコ中で、30℃、125ストローク/分の条件下で48時間振とう培養した。その培養液から、遠心分離(8000G(=78000m/s2)、4℃、10分間)により微生物細胞を回収した。
【0307】
得られた細胞は、実施例1と同様の条件で次亜塩素酸ナトリウム処理を行い、ポリヒドロキシアルカノエート1410mg(乾燥重量)を得た。
【0308】
(実施例7)
2000ml容振とうフラスコに、市販の酵母エキス(DIFCO)0.5%と5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸0.1%とを含むM9培地1000mlを入れ、YN2株を植菌し、30℃、125ストローク/分の条件下で62時間振とう培養した。得られた培養液から、遠心分離(8000G(=78000m/s2)、4℃、10分間)により微生物細胞を回収した。
【0309】
得られた細胞は、実施例1と同様の条件で次亜塩素酸ナトリウム処理を行い、ポリヒドロキシアルカノエート120mg(乾燥重量)を得た。
【0310】
(実施例8)
2000ml容振とうフラスコに、ピルビン酸ナトリウム0.5%と5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸0.1%とを含むM9培地1000mlを入れ、YN2株を植菌し、30℃、125ストローク/分の条件下で62時間振とう培養した。得られた培養液から、遠心分離(8000G(=78000m/s2)、4℃、10分間)により微生物細胞を回収した。
【0311】
得られた細胞は、実施例1と同様の条件で次亜塩素酸ナトリウム処理を行い、ポリヒドロキシアルカノエート425mg(乾燥重量)を得た。
【0312】
(実施例9)
2000ml容振とうフラスコに、グルタミン酸ナトリウム0.5%と5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸0.1%とを含むM9培地1000mlを入れ、YN2株を植菌し、30℃、125ストローク/分の条件下で62時間振とう培養した。得られた培養液から、遠心分離(8000G(=78000m/s2)、4℃、10分間)により微生物細胞を回収した。
【0313】
得られた細胞は、実施例1と同様の条件で次亜塩素酸ナトリウム処理を行い、ポリヒドロキシアルカノエート410mg(乾燥重量)を得た。
【0314】
(実施例10)
2000ml容振とうフラスコに、ノナン酸0.1%と5−(2−チエニルスルファニル)吉草酸0.1%とを含むM9培地1000mlを入れ、YN2株を植菌し、30℃、125ストローク/分の条件下で62時間振とう培養した。得られた培養液から、遠心分離(8000G(=78000m/s2)、4℃、10分間)により微生物細胞を回収した。
【0315】
得られた細胞は、実施例1と同様の条件で次亜塩素酸ナトリウム処理を行い、ポリヒドロキシアルカノエート430mg(乾燥重量)を得た。
【0316】
上記実施例2〜10において得られたポリヒドロキシアルカノエートについても、実施例1と同様の条件でNMR分析及び分子量測定を行った。表2に、NMR分析の結果から、算定される各ユニットの含有比率を示す。表3に、平均分子量を示す。なお、表2中において、一般式(6)に示される炭素数4〜12までの直鎖3−ヒドロキシアルカン酸または一般式(7)に示される直鎖3−ヒドロキシアルケン酸は、3HAとして併せて示す。
【0317】
【表2】
Figure 0003848204
【0318】
【表3】
Figure 0003848204
【0319】
さらに、以下の実施例11〜14には、原料の6−(2−チエニルスルファニル)ヘキサン酸を含む培地中でPHA生産菌を培養し、その後、PHA生産菌が生産したPHAに対して、次亜塩素酸ナトリウムによる処理を施すことによって、上記化学式(21)の3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルフィニル)へキサン酸ユニット及び(22)の3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルホニル)ヘキサン酸ユニットとを含み、化学式(23)の6−クロロ−3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルフィニル)ヘキサン酸ユニット、化学式(24)の6−クロロ−3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルホニル)ヘキサン酸ユニット、化学式(25)の6,6−ジクロロ−3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルフィニル)ヘキサン酸ユニット、化学式(26)の6,6−ジクロロ−3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルホニル)ヘキサン酸ユニットの4種類のうち、少なくとも1種類のクロロ置換体ユニットと、さらに、化学式(15)の3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルフィニル)酪酸ユニット及び化学式(16)の3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルホニル)酪酸ユニットとを含み、化学式(17)の4−クロロ−3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルフィニル)酪酸ユニット、化学式(18)の4−クロロ−3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルホニル)酪酸ユニット、化学式(19)の4,4−ジクロロ−3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルフィニル)酪酸ユニット、化学式(20)の4,4−ジクロロ−3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルホニル)酪酸ユニットの4種類のうち、少なくとも1種類のクロロ置換体ユニットとをポリマー分子中に含むPHAを製造した例を示す。
【0320】
(実施例11)
2000ml容振とうフラスコに、市販のポリペプトン(販売元:和光純薬工業)0.5%と6−(2−チエニルスルファニル)ヘキサン酸0.1%とを含むM9培地1000mlを入れ、YN2株を植菌し、30℃、125ストローク/分の条件下で30時間振とう培養した。得られた培養液から、遠心分離(8000G(=78000m/s2)、4℃、10分間)により微生物細胞を回収した。
【0321】
回収した細胞は、精製水40mlに懸濁し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(キシダ化学(株)製、有効塩素濃度5%以上)20mlを添加した。これを、4℃2時間振とうし、目的のPHA以外の細胞構成成分を可溶化すると共に、PHAの酸化ならびに塩素化を行った。反応終了後、処理液から、遠心分離(3000G(=294000m/s2)、4℃、30分間)によりPHAを不溶成分として分離・回収した。分離したPHAは、再び精製水70mlに懸濁し、遠心分離(3000G(=29400m/s2)、4℃、30分間)によりPHAを分離・回収した。この再懸濁と遠心分離の操作を合計3回繰り返して、PHAの水洗浄を行った。最後に、水洗浄済みのPHAは、精製水10mlに懸濁して凍結乾燥し、PHA粒子440mg(乾燥重量)を得た。
【0322】
この実施例11において得られたポリヒドロキシアルカノエートについても、実施例1と同様の条件でNMR分析及び分子量測定を行った。表4に、前記1H−NMRスペクトルの同定結果に基づき、含有されるモノマーユニットの含有比率(モル%)を算定した結果を示す。なお、表4中において、一般式(7)に示される炭素数4〜12までの直鎖3−ヒドロキシアルカン酸または一般式(8)に示される直鎖3−ヒドロキシアルケン酸ユニットは、3HAとして併せて示す。また、測定されたこのPHAの平均分子量は、数平均分子量(Mn):3800、重量平均分子量(Mw):6500、Mw/Mn:1.7であった。
【0323】
得られたポリヒドロキシアルカノエートは、化学式(15)の3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルフィニル)酪酸ユニット、化学式(16)の3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルホニル)酪酸ユニット、化学式(17)の4−クロロ−3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルフィニル)酪酸ユニット、化学式(18)の4−クロロ−3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルホニル)酪酸ユニット、化学式(19)の4,4−ジクロロ−3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルフィニル)酪酸ユニット、化学式(20)の4,4−ジクロロ−3−ヒドロキシ−4−(2−チエニルスルホニル)酪酸ユニット、ならびに化学式(21)の3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルフィニル)ヘキサン酸ユニット、化学式(22)の3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルホニル)ヘキサン酸ユニット、化学式(23)の6−クロロ−3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルフィニル)ヘキサン酸ユニット、化学式(24)の6−クロロ−3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルホニル)ヘキサン酸ユニット、化学式(25)の6,6−ジクロロ−3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルフィニル)ヘキサン酸ユニット、化学式(26)の6,6−ジクロロ−3−ヒドロキシ−6−(2−チエニルスルホニル)ヘキサン酸ユニットを含み、それ以外のユニットとして、一般式(7)に示される炭素数4〜12までの直鎖3−ヒドロキシアルカン酸あるいは一般式(8)に示される炭素数4〜12までの直鎖3−ヒドロキシアルケン酸ユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートであることが確認された。
【0324】
【表4】
Figure 0003848204
【0325】
なお、化学式(15)および化学式(16)に示すユニット、化学式(17)および化学式(18)に示すユニット、化学式(19)および化学式(20)に示すユニット、化学式(21)および化学式(22)に示すユニット、化学式(23)及び化学式(24)に示すユニット、化学式(25)及び化学式(26)に示すユニット、これらについては、個別の量比をNMRの結果から算出することが困難であり、表4には、その合計を記載している。なお、NMR分析に加えて、赤外吸収スペクトル、熱分解GC−MC分析結果をも総合して判断した結果、ポリマー中には、上記のクロロ置換体ユニットがいずれも含有されているとの結論を得た。
【0326】
(実施例12)
2000ml容振とうフラスコに、市販のポリペプトン(販売元:和光純薬工業)0.5%と6−(2−チエニルスルファニル)ヘキサン酸0.1%とを含むM9培地1000mlを入れ、H45株を植菌し、30℃、125ストローク/分の条件下で30時間振とう培養した。得られた培養液から、遠心分離(8000G(=78000m/s2)、4℃、10分間)により微生物細胞を回収した。
【0327】
得られた細胞は、実施例11と同様の条件で次亜塩素酸ナトリウム処理を行い、ポリヒドロキシアルカノエート155mg(乾燥重量)を得た。
【0328】
(実施例13)
2000ml容振とうフラスコに、市販のポリペプトン(販売元:和光純薬工業)0.5%と6−(2−チエニルスルファニル)ヘキサン酸0.1%とを含むM9培地1000mlを入れ、P161株を植菌し、30℃、125ストローク/分の条件下で30時間振とう培養した。得られた培養液から、遠心分離(8000G(=78000m/s2)、4℃、10分間)により微生物細胞を回収した。
【0329】
得られた細胞は、実施例11と同様の条件で次亜塩素酸ナトリウム処理を行い、ポリヒドロキシアルカノエート100mg(乾燥重量)を得た。
【0330】
(実施例14)
2000ml容振とうフラスコに、グルコース0.5%と6−(2−チエニルスルファニル)ヘキサン酸0.1%とを含むM9培地1000mlを入れ、YN2株を植菌し、30℃、125ストローク/分の条件下で45時間振とう培養した。得られた培養液から、遠心分離により培養菌体を回収した。回収された培養菌体を、グルコース0.5%と6−(2−チエニルスルファニル)ヘキサン酸0.1%とを含み、窒素源(NH4Cl)を含まないM9培地1000mlに再懸濁し、2000ml振とうフラスコ中で、30℃、125ストローク/分の条件下で48時間振とう培養した。その培養液から、遠心分離(8000G(=78000m/s2)、4℃、10分間)により微生物細胞を回収した。
【0331】
得られた細胞は、実施例11と同様の条件で次亜塩素酸ナトリウム処理を行い、ポリヒドロキシアルカノエート195mg(乾燥重量)を得た。
【0332】
上記実施例12〜14において得られたポリヒドロキシアルカノエートについても、実施例1と同様の条件でNMR分析及び分子量測定を行った。表5に、NMR分析の結果から、算定される各ユニットの含有比率を示す。表6に、平均分子量を示す。なお、表5中において、一般式(7)に示される炭素数4〜12までの直鎖3−ヒドロキシアルカン酸または一般式(8)に示される直鎖3−ヒドロキシアルケン酸は、3HAとして併せて示す。
【0333】
【表5】
Figure 0003848204
【0334】
【表6】
Figure 0003848204
【0335】
以上の実施例1〜3、11〜13で得られたPHAを、表7に示すように例示化合物(1)〜(6)として、荷電制御剤として用いて各種トナーを製造し、評価を行った(実施例15〜70)。
【0336】
【表7】
Figure 0003848204
【0337】
(実施例15)
先ず、高速撹拌装置TK−ホモミキサーを備えた2リットル用の四つ口フラスコ中に、Na3PO4水溶液を添加し、回転数を10,000rpmに調整し、60℃に加温した。ここにCaCl2水溶液を徐々に添加していき、微小な難水溶性分散剤Ca3(PO42を含む水系分散媒体を調製した。
【0338】
一方、下記組成の原料混合物を、ボールミルを用いて3時間分散・混合した後、離型剤(エステルワックス)10質量部と、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10質量部を添加して重合性単量体組成物を調製した。
【0339】
・スチレン単量体 82質量部
・エチルヘキシルアクリレート単量体 18質量部
・ジビニルベンゼン単量体 0.1質量部
・シアン着色剤(C.I.ピグメントブルー15) 6質量部
・酸化ポリエチレン樹脂(分子量3200、酸価8) 5質量部
・例示化合物(1) 2質量部
次に、上記で得られた重合性単量体組成物を、先に調製した水系分散媒体中に投入し、回転数10,000rpmを維持しつつ造粒した。その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ、65℃で3時間反応させた後、80℃で6時間重合させて重合反応を終了した。反応終了後、懸濁液を冷却し、酸を加えて難水溶性分散剤Ca3(PO42を溶解した後、濾過、水洗、乾燥して青色重合粒子(1)を得た。得られた青色重合粒子(1)の粒度を、コールターカウンターマルチサイザー(コールター社製)を用いて測定したところ、重量平均粒径7.2μmで、微粉量(個数分布における3.17μm以下の粒子の存在割合)は5.1個数%であった。
【0340】
調製した青色重合粒子(1)100質量部に対して、流動向上剤としてヘキサメチルジシラザンで処理した疎水性シリカ微粉体(BET:270m2/g)1.3質量部をヘンシェルミキサーで乾式混合して外添し、本実施例の青色トナー(1)とした。更に、この青色トナー(1)7質量部と樹脂コート磁性フェライトキャリア(平均粒子径:45μm)93質量部とを混合して、磁気ブラシ現像用の2成分系青色現像剤(1)を調製した。
【0341】
調製された2成分系青色現像剤(1)について、そのトナー粒子の摩擦帯電特性を先に述べた測定手順にしたがって、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)の二つの環境下で、10秒、及び300秒攪拌時間について、それぞれ帯電量を測定し、摩擦帯電量を評価した。
【0342】
(実施例16〜20)
例示化合物(1)に代えて、それぞれ例示化合物(2)〜(6)を2.0質量部使用する以外は、実施例15と同様の手順で、実施例16〜20の青色トナー(2)〜(6)を得た。また、各青色トナー(2)〜(6)と前記樹脂コート磁性フェライトキャリアとを用いて実施例15と同様にして、2成分系青色現像剤(2)〜(6)をそれぞれ得た。これらの青色トナー(2)〜(6)、ならびに2成分系青色現像剤(2)〜(6)についても、各トナーの特性を実施例15と同様に測定し、その結果を表8に併せて示す。
【0343】
(比較例1)
例示化合物を使用しない点以外は実施例15と同様の手順により、比較例1の青色トナー7を得た。この青色トナー7の特性を実施例15と同様に測定し、その結果を表8に併せて示した。また、この青色トナー7と前記樹脂コート磁性フェライトキャリアとを用いて実施例15と同様にして、比較例1の2成分系青色現像剤7を得た。
【0344】
<評価>
上記実施例15〜20で得られた2成分系青色現像剤(1)〜(6)、および比較例1で得られた2成分系青色現像剤7について、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び300秒攪拌後のトナーの摩擦帯電量を測定した。そして、かかる2成分ブローオフ帯電量の測定値から、少数以下第2位を四捨五入し、下記の基準に従って、帯電性の評価を行った。表8には、個々の摩擦帯電量の測定値に代えて、その帯電性の評価結果を示す。
【0345】
[帯電性]
◎:非常に良好(−20μC/g以下)
○:良好(−19.9〜−10.0μC/g)
△:実用可(−9.9〜−5.0μC/g)
×:実用不可(−4.9μC/g以上)
【0346】
【表8】
Figure 0003848204
【0347】
(実施例21〜実施例26)
実施例21〜26では、シアン着色剤の代わりにイエロー着色剤(ハンザイエローG)を使用し、また、それぞれ例示化合物(1)〜(6)各2.0質量部を用いる以外は、実施例15と同様の手順により、イエロートナー(1)〜(6)をそれぞれ作製した。これらイエロートナー(1)〜(6)についても、各トナーの粒度分布を実施例15と同様に測定し、その結果を表9に示す。また、イエロートナー(1)〜(6)と前記樹脂コート磁性フェライトキャリアとを用いて、実施例15と同様にして、それぞれ2成分系イエロー現像剤(1)〜(6)を得た。実施例15と同様に、2成分ブローオフ帯電量の測定値から、各2成分系イエロー現像剤(1)〜(6)について、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び300秒攪拌後のトナーの摩擦帯電量を測定した。
【0348】
(比較例2)
シアン着色剤の代わりにイエロー着色剤(ハンザイエローG)を使用する点以外は、比較例1の青色トナー7と同様の方法により、荷電制御剤の例示化合物を添加していない、比較例2のイエロートナー7を作製した。このイエロートナー7についても、トナーの粒度分布を実施例15と同様に測定し、その結果を表9に示す。また、イエロートナー7と前記樹脂コート磁性フェライトキャリアとを用いて、実施例15と同様にして、比較例2の2成分系イエロー現像剤7を得た。実施例15と同様に、2成分ブローオフ帯電量の測定値から、2成分系イエロー現像剤7についても、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び300秒攪拌後のトナーの摩擦帯電量を測定した。
【0349】
<評価>
上記実施例21〜26で得られた2成分系イエロー現像剤(1)〜(6)、および比較例2で得られた2成分系イエロー現像剤7について、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び300秒攪拌後のトナーの摩擦帯電量を測定した。そして、かかる2成分ブローオフ帯電量の測定値から、少数以下第2位を四捨五入し、下記の基準に従って、帯電性の評価を行った。表9には、個々の摩擦帯電量の測定値に代えて、その帯電性の評価結果を示す。
【0350】
[帯電性]
◎:非常に良好(−20μC/g以下)
○:良好(−19.9〜−10.0μC/g)
△:実用可(−9.9〜−5.0μC/g)
×:実用不可(−4.9μC/g以上)
【0351】
【表9】
Figure 0003848204
【0352】
(実施例27〜実施例32)
実施例27〜32では、シアン着色剤の代わりにカーボンブラック(DBP吸油量110ml/100g)を使用し、また、それぞれ例示化合物(1)〜(6)各2.0質量部を用いる以外は、実施例15と同様の手順により、黒色トナー(1)〜(6)をそれぞれ作製した。これら黒色トナー(1)〜(6)についても、各トナーの粒度分布を実施例15と同様に測定し、その結果を表10に示す。また、黒色トナー(1)〜(6)と前記樹脂コート磁性フェライトキャリアとを用いて、実施例15と同様にして、それぞれ2成分系黒色現像剤(1)〜(6)を得た。実施例15と同様に、2成分ブローオフ帯電量の測定値から、各2成分系黒色現像剤(1)〜(6)について、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び300秒攪拌後のトナーの摩擦帯電量を測定した。
【0353】
(比較例3)
シアン着色剤の代わりにカーボンブラック(DBP吸油量110ml/100g)を使用する点以外は、比較例1の青色トナー7と同様の方法により、荷電制御剤の例示化合物を添加していない、比較例3の黒色トナー7を作製した。この黒色トナー7についても、トナーの粒度分布を実施例15と同様に測定し、その結果を表10に示す。また、黒色トナー7と前記樹脂コート磁性フェライトキャリアとを用いて、実施例15と同様にして、比較例3の2成分系黒色現像剤7を得た。実施例15と同様に、2成分ブローオフ帯電量の測定値から、2成分系黒色現像剤7についても、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び300秒攪拌後のトナーの摩擦帯電量を測定した。
【0354】
<評価>
上記実施例27〜32で得られた2成分系黒色現像剤(1)〜(6)、および比較例3で得られた2成分系黒色現像剤7について、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び300秒攪拌後のトナーの摩擦帯電量を測定した。そして、かかる2成分ブローオフ帯電量の測定値から、少数以下第2位を四捨五入し、下記の基準に従って、帯電性の評価を行った。表10には、個々の摩擦帯電量の測定値に代えて、その帯電性の評価結果を示す。
【0355】
[帯電性]
◎:非常に良好(−20μC/g以下)
○:良好(−19.9〜−10.0μC/g)
△:実用可(−9.9〜−5.0μC/g)
×:実用不可(−4.9μC/g以上)
【0356】
【表10】
Figure 0003848204
【0357】
Figure 0003848204
上記組成の混合物を、二軸エクストルーダー(L/D=30)で溶融混練した。この混練物を冷却後、ハンマーミルで粗粉砕し、ジェットミルで微粉砕した後、分級して、粉砕法によって調製したマゼンタ着色粒子(1)を得た。粒度分布を実施例15と同様に測定したところ、このマゼンタ着色粒子(1)の粒度は、重量平均粒径7.3μm、微粉量は5.0個数%であった。
【0358】
このマゼンタ着色粒子(1)100質量部に対して、流動向上剤として、ヘキサメチルジシラザンで処理した疎水性シリカ微粉体(BET:250m2/g)1.5質量部をヘンシェルミキサーで乾式混合して、本実施例のマゼンタトナー(1)を得た。更に、得られたマゼンタトナー(1)7質量部と樹脂コート磁性フェライトキャリア(平均粒子径:45μm)93質量部とを混合して、磁気ブラシ現像用の2成分系マゼンタ現像剤(1)を調製した。実施例15と同様に、2成分ブローオフ帯電量の測定値から、2成分系マゼンタ現像剤(1)についても、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び300秒攪拌後のトナーの摩擦帯電量を測定した。
【0359】
(実施例34〜38)
例示化合物(1)の代わりに、例示化合物(2)〜(6)をそれぞれ2.0質量部使用する以外は、実施例33と同様の手順で、実施例26〜30のマゼンタ着色粒子(2)〜(6)を調製した。実施例26〜30のマゼンタ着色粒子(2)〜(6)についても、その粒度分布を実施例15と同様に測定した。次いで、実施例33と同様の手順で、流動向上剤を乾式混合して、実施例26〜30のマゼンタトナー(2)〜(6)を得た。また、これらマゼンタトナー(2)〜(6)を用いて、実施例33と同様にして、2成分系マゼンタ現像剤(2)〜(6)をそれぞれ調製した。さらに、実施例15と同様に、2成分ブローオフ帯電量の測定値から、各2成分系マゼンタ現像剤(2)〜(6)について、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び300秒攪拌後のトナーの摩擦帯電量を測定した。
【0360】
(比較例4)
例示化合物を使用しない点以外は実施例33と同様の方法により、比較例4のマゼンタ着色粒子7を調製した。このマゼンタ着色粒子7についても、その粒度分布を実施例15と同様に測定した。次いで、実施例33と同様の手順で、流動向上剤を乾式混合して、比較例4のマゼンタトナー7を得た。また、このマゼンタトナー7を用いて実施例33と同様にして、比較例4の2成分系マゼンタ現像剤7を調製した。実施例15と同様に、2成分ブローオフ帯電量の測定値から、2成分系マゼンタ現像剤7についても、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び300秒攪拌後のトナーの摩擦帯電量を測定した。
【0361】
<評価>
上記実施例33〜38で得られた2成分系マゼンタ現像剤(1)〜(6)、および比較例4で得られた2成分系マゼンタ現像剤7について、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び300秒攪拌後のトナーの摩擦帯電量を測定した。そして、かかる2成分ブローオフ帯電量の測定値から、少数以下第2位を四捨五入し、下記の基準に従って、帯電性の評価を行った。表11には、個々の摩擦帯電量の測定値に代えて、その帯電性の評価結果を示す。併せて、表11に、各マゼンタ着色粒子の重量平均粒径と微粉量を示す。
【0362】
[帯電性]
◎:非常に良好(−20μC/g以下)
○:良好(−19.9〜−10.0μC/g)
△:実用可(−9.9〜−5.0μC/g)
×:実用不可(−4.9μC/g以上)
【0363】
【表11】
Figure 0003848204
【0364】
(実施例39〜44)
実施例39〜44では、マゼンタ顔料の代わりにカーボンブラック(DBP吸油量110ml/100g)を使用し、また、それぞれ例示化合物(1)〜(6)各2.0質量部を用いる以外は、実施例33と同様の手順により、黒色着色粒子(8)〜(13)をそれぞれ作製した。これら黒色着色粒子(8)〜(13)についても、粒度分布を実施例15と同様に測定し、その結果を表12に示す。次いで、実施例33と同様の手順で、各黒色着色粒子(8)〜(13)に流動向上剤を乾式混合して、実施例39〜44の黒色トナー(8)〜(13)を得た。また、これら黒色トナー(8)〜(13)を用いて、実施例33と同様にして、2成分系黒色現像剤(8)〜(13)をそれぞれ調製した。さらに、実施例15と同様に、2成分ブローオフ帯電量の測定値から、各2成分系黒色現像剤(8)〜(13)について、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び300秒攪拌後のトナーの摩擦帯電量を測定した。
【0365】
(比較例5)
マゼンタ顔料の代わりにカーボンブラック(DBP吸油量110ml/100g)を使用する点以外は、比較例4のマゼンタ着色粒子7と同様の方法により、荷電制御剤の例示化合物を添加していない、比較例5の黒色着色粒子14を作製した。この黒色着色粒子14についても、粒度分布を実施例15と同様に測定し、その結果を表12に示す。次いで、実施例33と同様の手順で、比較例5の黒色着色粒子14に流動向上剤を乾式混合して、比較例5の黒色トナー14を得た。また、黒色トナー14と前記樹脂コート磁性フェライトキャリアとを用いて、実施例33と同様にして、比較例5の2成分系黒色現像剤14を得た。実施例15と同様に、2成分ブローオフ帯電量の測定値から、2成分系黒色現像剤14についても、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び300秒攪拌後のトナーの摩擦帯電量を測定した。
【0366】
<評価>
上記実施例39〜44で得られた2成分系黒色現像剤(8)〜(13)、および比較例5で得られた2成分系黒色現像剤14について、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び300秒攪拌後のトナーの摩擦帯電量を測定した。そして、かかる2成分ブローオフ帯電量の測定値から、少数以下第2位を四捨五入し、下記の基準に従って、帯電性の評価を行った。表12には、個々の摩擦帯電量の測定値に代えて、その帯電性の評価結果を示す。併せて、表12に、各黒色着色粒子の重量平均粒径と微粉量を示す。
【0367】
[帯電性]
◎:非常に良好(−20μC/g以下)
○:良好(−19.9〜−10.0μC/g)
△:実用可(−9.9〜−5.0μC/g)
×:実用不可(−4.9μC/g以上)
【0368】
【表12】
Figure 0003848204
【0369】
(実施例45)
・ポリエステル樹脂 100質量部
・カーボンブラック(DBP吸油量110ml/100g) 5質量部
・例示化合物(1) 2質量部
バインダー樹脂とするポリエステル樹脂は、次のようにして合成した。ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物751部、テレフタル酸104部および無水トリメリット酸167部を、ジブチルチンオキサイド2部を触媒として重縮合し、軟化点125℃のポリエステル樹脂を得た。
【0370】
上記組成の混合物を、二軸エクストルーダー(L/D=30)で溶融混練した。この混練物を冷却後、ハンマーミルで粗粉砕し、ジェットミルで微粉砕した後、分級して、粉砕法によって調製した黒色着色粒子15を得た。粒度分布を実施例15と同様に測定したところ、この黒色着色粒子(15)の粒度は、重量平均粒径7.4μm、微粉量は5.1個数%であった。
【0371】
この黒色着色粒子(15)100質量部に対して、流動向上剤として、ヘキメチルジシラザンで処理した疎水性シリカ微粉体(BET:250m2/g)1.5質量部をヘンシェルミキサーで乾式混合して、本実施例の黒色トナー(15)を得た。更に、得られた黒色トナー(15)7質量部と樹脂コート磁性フェライトキャリア(平均粒子径:45μm)93質量部とを混合して、磁気ブラシ現像用の2成分系黒色現像剤(15)を調製した。実施例15と同様に、2成分ブローオフ帯電量の測定値から、2成分系黒色現像剤15についても、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び300秒攪拌後のトナーの摩擦帯電量を測定した。
【0372】
(実施例46〜50)
例示化合物(1)の代わりに、例示化合物(2)〜(6)をそれぞれ2.0質量部使用する以外は、実施例45と同様の手順で、実施例46〜50の黒色着色粒子(16)〜(20)を調製した。実施例46〜50の黒色着色粒子(16)〜(20)についても、その粒度分布を実施例15と同様に測定した。次いで、実施例45と同様の手順で、流動向上剤を乾式混合して、実施例46〜50の黒色トナー(16)〜(20)を得た。また、これら黒色トナー(16)〜(20)を用いて、実施例45と同様にして、2成分系黒色現像剤(16)〜(20)をそれぞれ調製した。さらに、実施例15と同様に、2成分ブローオフ帯電量の測定値から、各2成分系黒色現像剤(16)〜(20)について、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び300秒攪拌後のトナーの摩擦帯電量を測定した。
【0373】
(比較例6)
例示化合物を使用しない点以外は実施例45と同様の手順により、荷電制御剤の例示化合物を添加していない、比較例6の黒色着色粒子21を作製した。この黒色着色粒子21についても、粒度分布を実施例15と同様に測定し、その結果を表13に示す。次いで、実施例45と同様の手順で、比較例6の黒色着色粒子21に流動向上剤を乾式混合して、比較例6の黒色トナー21を得た。また、黒色トナー21と前記樹脂コート磁性フェライトキャリアとを用いて、実施例45と同様にして、比較例6の2成分系黒色現像剤21を得た。実施例15と同様に、2成分ブローオフ帯電量の測定値から、2成分系黒色現像剤21についても、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び300秒攪拌後のトナーの摩擦帯電量を測定した。
【0374】
<評価>
上記実施例45〜50で得られた2成分系黒色現像剤(15)〜(20)、および比較例6で得られた2成分系黒色現像剤21について、常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び300秒攪拌後のトナーの摩擦帯電量を測定した。そして、かかる2成分ブローオフ帯電量の測定値から、少数以下第2位を四捨五入し、下記の基準に従って、帯電性の評価を行った。表13には、個々の摩擦帯電量の測定値に代えて、その帯電性の評価結果を示す。併せて、表13に、各黒色着色粒子の重量平均粒径と微粉量を示す。
【0375】
[帯電性]
◎:非常に良好(−20μC/g以下)
○:良好(−19.9〜−10.0μC/g)
△:実用可(−9.9〜−5.0μC/g)
×:実用不可(−4.9μC/g以上)
【0376】
【表13】
Figure 0003848204
【0377】
(実施例51〜実施例66および比較例7〜比較例12)
先ず、下記する実施例51〜実施例66および比較例7〜比較例12の画像形成方法に使用される画像形成装置の基本構成について説明する。図1は、本発明にかかる実施例の画像形成方法ならびに従来法による比較例の画像形成方法を実施する際に利用される画像形成装置の装置構成を概略的に説明する断面図である。図1に示す装置構成では、感光体ドラム1は、基材1b上に有機光半導体を有する感光層1aを有し、矢印方向に回転するように構成されている。また、感光体ドラム1に対向し、且つ該ドラムと接触回転している帯電部材である帯電ローラー2によって、感光体ドラム1の表面が約−600Vの表面電位に帯電される。図1に示すように、帯電ローラー2は、芯金2bの上に導電性弾性層2aを被覆する構成とされる。
【0378】
次に、表面が負帯電された感光体ドラム1に向けて、形成すべき画像情報に従って露光光3が照射される。その際、ポリゴンミラーにより、露光光3を感光体上で軸方向に走査しつつ、デジタル画像情報に応じて、露光光3の光量のオン−オフを行うことで、露光部電位が−100V、暗部電位が−600Vの静電荷像が形成される。続いて、この感光体ドラム1上に形成される静電荷像は、フルカラー画像形成に利用される、4色に対応する現像装置4−1、4−2、4−3、4−4を用いて、各色毎に反転現像されてに顕像化され、感光体ドラム1上に各色のトナー像が形成される。その際、現像剤として、実施例15〜20、21、24、27、30、33、36、39、42、45、48、あるいは比較例1〜6で得た2成分系現像剤をそれぞれ用い、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーならびにブラックトナーの4色のトナー画像がそれぞれ形成される。図2は、前記二成分系現像剤用の各現像装置4の要部構造を示す拡大断面図である。次に、現像により顕像化された感光体ドラム1上の各色トナー像は、感光体ドラム1と接触回転している中間の転写体5上に、順次転写される。この結果、中間の転写体5上には、四色の色重ね顕色像が形成される。一方、感光体ドラム1上に転写されずに残った転写残トナーは、クリーナー部材8によって除去し、残トナー容器9内に回収される。
【0379】
図1に示すように、中間の転写体5は、支持体としての芯金5bと、その上に積層された弾性層5aとで構成されている。本実施例においては、パイプ状の芯金5b上に、導電付与材料としてカーボンブラックを利用し、ニトリル−ブタジエンラバー(NBR)中にカーボンブラックを十分に分散させた弾性層5bをコーティングされた中間の転写体5を使用した。「JIS K−6301」に準拠して測定した弾性層5bの硬度は30度であり、体積抵抗値は、109Ω・cmであった。なお、本実施例においては、感光体ドラム1から中間の転写体5への転写に必要な転写電流は約5μAであり、前記転写電流は、中間の転写体5に対して、電源より+500Vを芯金5bに印加することで付与した。
【0380】
中間の転写体5上に一旦転写された四色のトナーの色重ね顕色像は、転写ローラー7によって、紙等の被転写材に更に転写される。その後、被転写材上の顕色像は、加熱定着装置Hによって定着・固定される。転写ローラー7は、その外径の直径が10mmの芯金7b上に、導電性付与材料としてカーボンを利用し、エチレン−プロピレン−ジエン系三次元共重合体(EPDM)の発砲体中に該カーボンを十分な状態で分散した弾性層7aをコーティング形成している。この弾性層7aの体積固有抵抗値は、106Ω・cmであり、「JIS K−6301」に準拠して測定した硬度が35度の値を示すのもを用いた。また、紙等の被転写材への転写に際して、この転写ローラー7には電圧を印加して、15μAの転写電流を流す。
【0381】
図1に示す装置では、加熱定着装置Hに、図5及び図6に構造を示す熱ロール方式の定着装置を用いた。なお、本例で利用する熱ロール方式の定着装置は、ロール表面へのオイル塗布機構を設けていない。それに代えて、上部ローラー、下部ローラー共にフッ素系樹脂の表面層を有するものを使用した。また、ローラーの直径は60mmであった。定着の際の定着温度を160℃とし、ニップ幅を7mmに設定した。一方、クリーナー部材8によって除去し、残トナー容器9内に回収される感光体ドラム1上の転写残トナーは、リユース機構により現像器に搬送し再使用した。
【0382】
<評価>
以上の条件で、常温常湿(25℃、60%RH)及び、高温高湿(30℃、80%RH)環境下、8枚(A4サイズ)/分のプリントアウト速度で、実施例15〜20、21、24、27、30、33、36、39、42、45、48のトナーを使用して作製した2成分系現像剤(実施例51〜66)と、比較例1〜6のトナーを使用して作製した2成分系現像剤(比較例7〜12)をそれぞれ使用し、逐次補給しながら、単色での間歇モード、すなわち、一枚プリントアウトする毎に10秒間現像器を休止させ、再起動時の予備動作でトナーの劣化を促進させるモードでプリントアウト試験を行い、得られたプリントアウト画像を下記の項目について評価した。評価結果を表14にまとめて示した。
【0383】
[プリントアウト画像評価]
1.画像濃度
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に、所定枚数のプリントアウトをして、初期の画像に対するプリント終了時における画像の画像濃度維持の程度により評価した。なお、画像濃度はマクベス反射濃度計(マクベス社製)を用い、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定し、下記の基準に従って、評価を行った。
◎:優(終了時の画像濃度が1.40以上)
○:良(終了時の画像濃度が1.35以上1.40未満)
△:可(終了時の画像濃度が1.00以上1.35未満)
×:不可(終了時の画像濃度が1.00未満)
2.画像カブリ
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に所定枚数のプリントアウトをし、プリント終了時のベタ白画像により評価した。具体的には、下記のような方法で評価した。反射式濃度計(TOKYO DENSHOKU CO.,LTD社製REFLECTOMETER ODEL TC−6DS)を用いて、プリント前の用紙の反射濃度と、プリント後の白地部反射濃度とを測定する。測定されたプリント終了時の白地部反射濃度の最悪値をDs、プリント前の用紙の反射濃度平均値をDrとし、これから(Ds−Dr)を算出し、Drを100%とするときの(Ds−Dr)をカブリ量とし、下記の基準に従って評価を行った。
◎:非常に良好(カブリ量が0%以上1.5%未満)
○:良好(カブリ量が1.5%以上3.0%未満)
△:実用可(カブリ量が3.0%以上5.0%未満)
×:実用不可(カブリ量が5.0%以上)
3.転写性
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に、黒ベタ画像を所定枚数プリントアウトし、プリント終了時の画像の画像抜け量を目視により観察し、下記の基準で評価した。
◎:非常に良好(殆ど発生せず)
○:良好(軽微)
△:実用可
×:実用不可
また、実施例51〜実施例66および比較例7〜比較例12の2成分系現像剤を使用した系において、5000枚画像出力を行ったときの感光ドラム及び中間転写体表面の傷や残留トナーの固着の発生状況とプリントアウト画像への影響(画像形成装置とのマッチング)を目視で評価した。実施例51〜実施例66の2成分系現像剤を使用した系では、感光ドラム1及び中間転写体5表面の傷や、残留トナーの固着が全く確認できず、画像形成装置とのマッチングが非常に良好であった。一方、比較例7〜12の2成分系現像剤を使用した系では、いずれも感光ドラム1表面にトナーの固着が認められた。更に、比較例7〜12の2成分系現像剤を使用した系では、中間転写体5表面上にトナーの固着と表面傷が確認でき、画像上にも縦スジ状の画像欠陥を生じるといった、画像形成装置とのマッチングにおいて問題を生じた。
【0384】
【表14】
Figure 0003848204
【0385】
(実施例67〜実施例69、比較例13〜比較例15)
実施例67〜実施例69、比較例13〜比較例15に示す、画像形成方法の実施にあたっては、現像剤として、実施例15、21、27および比較例1〜3で得たトナーをそれぞれ用いた。また、画像形成装置の構成は、市販のレーザービームプリンターLBP−EX(キヤノン社製)に対して、図3に示すようにリユース機構を取り付ける改造を施し、再設定した画像形成装置を使用した。すなわち、図3に示す画像形成装置では、転写後に感光体ドラム20上に残った未転写トナーは、該感光体ドラム20に当接しているクリーナー21の弾性ブレード22により掻き落とされら後、クリーナーローラーによってクリーナー21内部へと一旦回収される。次いで、回収されたトナーは、クリーナーリユース23を経て、搬送スクリューを設けた供給用パイプ24によってホッパー25を介して、現像器26に戻され、再度、利用するシステムが取り付けられている。
【0386】
図3に示す画像形成装置では、一次帯電ローラー27により、感光体ドラム20の表面の帯電がなされる。一次帯電ローラー27には、ナイロン樹脂で被覆された、導電性カーボンが分散されたゴムローラー(直径12mm、当接圧50g/cm)を使用している。帯電された静電潜像担持体(感光体ドラム20)上に、レーザー露光(600dpi、不図示)により、暗部電位VD=−700V、明部電位VL=−200Vの静電潜像を形成する。トナー担持体として、その表面に、カーボンブラックが分散された樹脂がコートされている表面粗度Raが1.1を呈する現像スリーブ28を用いた。
【0387】
図4に、実施例59〜実施例61、比較例13〜比較例15で使用する一成分現像剤用の現像装置の要部拡大断面図を示す。静電潜像の現像条件として、該現像スリーブ28の速度を、対向する感光ドラム20面の移動速度に対して1.1倍の速さになるように設定し、更に、感光ドラム20と現像スリーブ28との間隔α(S−D間)を270μmとした。現像スリーブ28に供給されるトナーの層厚規制部材としては、ウレタンゴム製ブレード29を当接させて用いた。一方、転写後、トナー画像を定着させる加熱定着装置の設定温度は160℃とした。なお、定着装置には、図5及び図6に示す熱ロール方式の定着装置を用いている。
【0388】
以上の画像形成装置、条件において、常温常湿(25℃、60%RH)環境下、8枚(A4サイズ)/分のプリントアウト速度で、トナーを逐次補給しながら連続モード、すなわち、現像器を休止させることなくトナーの消費を促進させるモードで、3万枚までプリントアウトを行い、得られたプリントアウト画像について画像濃度を測定し、その耐久について下記に示す基準で評価した。加えて、10,000枚目の画像を観察し、画像カブリについて下記の基準で評価した。また、同時に、耐久試験後における画像形成装置を構成している各装置の様子を観察し、画像形成装置の構成と上記の各トナーとのマッチングについても評価した。以上の評価結果を、表15にまとめて示す。
【0389】
[耐久時の画像濃度推移]
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に、所定枚数のプリントアウトをして、初期の画像に対するプリント終了時における画像の画像濃度維持の程度により評価した。なお、画像濃度はマクベス反射濃度計(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定し、下記の基準に従って、評価を行った。
◎:優(終了時の画像濃度が1.40以上)
○:良(終了時の画像濃度が1.35以上1.40未満)
△:可(終了時の画像濃度が1.00以上1.35未満)
×:不可(終了時の画像濃度が1.00未満)
[画像カブリ]
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に所定枚数のプリントアウトをし、プリント終了時のベタ白画像により評価した。具体的には、下記のような方法で評価した。反射式濃度計(TOKYO DENSHOKU CO.,LTD社製REFLECTOMETER ODEL TC−6DS)を用いて、プリント前の用紙の反射濃度と、プリント後の白地部反射濃度とを測定する。測定されたプリント終了時の白地部反射濃度の最悪値をDs、プリント前の用紙の反射濃度平均値をDrとし、これから(Ds−Dr)を算出し、Drを100%とするときの(Ds−Dr)をカブリ量とし、下記の基準に従って評価を行った。
◎:非常に良好(カブリ量が0%以上1.5%未満)
○:良好(カブリ量が1.5%以上3.0%未満)
△:実用可(カブリ量が3.0%以上5.0%未満)
×:実用不可(カブリ量が5.0%以上)
[画像形成装置マッチング評価]
1.現像スリーブとのマッチング
プリントアウト試験終了後、現像スリーブ表面への残留トナーの固着の様子と、プリントアウト画像への影響を目視で評価した。
◎:非常に良好(未発生)
○:良好(殆ど発生せず)
△:実用可(固着があるが、画像への影響が少ない)
×:実用不可(固着が多く、画像ムラを生じる)
2.感光ドラムとのマッチング
感光体ドラム表面の傷や残留トナーの固着の発生状況と、プリントアウト画像への影響を目視で評価した。
◎:非常に良好(未発生)
○:良好(僅かに傷の発生が見られるが、画像への影響はない)
△:実用可(固着や傷があるが、画像への影響が少ない)
×:実用不可(固着が多く、縦スジ状の画像欠陥を生じる)
3.定着装置とのマッチング
定着フィルム表面の様子を観察し、表面性及び残留トナーの固着状況の結果を総合平均化して、その耐久性を評価した。
(1)表面性
プリントアウト試験終了後、定着フィルム表面の傷や削れの発生の様子を目視で観察し、評価した。
◎:非常に良好(未発生)
○:良好(殆ど発生せず)
△:実用可
×:実用不可
(2)残留トナーの固着状況
プリントアウト試験終了後、定着フィルム表面の残留トナーの固着状況を目視で観察し、評価した。
◎:非常に良好(未発生)
○:良好(殆ど発生せず)
△:実用可
×:実用不可
【0390】
【表15】
Figure 0003848204
【0391】
(実施例70)
図3に示す画像形成装置から、トナーリユース機構を取り外し、プリントアウト速度を16枚(A4サイズ)/分とした以外は実施例67と同様にし、実施例15の青色トナー(1)を逐次補給しながら連続モード、すなわち、現像器を休止させることなくトナーの消費を促進させるモードでプリントアウト試験を行った。得られたプリントアウト画像評価ならびに用いた画像評価装置とのマッチングを実施例67〜実施例69、比較例13〜比較例15と同様の項目について評価した。その結果、回収トナーを再利用せず、プリントアウト速度を実施例67の倍とする条件でも、実施例67と同じく、いずれの評価項目についても良好な結果が得られた。
【0392】
【発明の効果】
本発明のPHAの製造方法は、原料として、ω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸を含む培地中で微生物を培養し、培養した微生物により生産される3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸ユニットを含むPHAを次亜塩素酸ナトリウムで処理して、そのスルファニル基(−S−)をスルホニル基(−SO2−)へと変換した、上記一般式(1)で示される3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルフィニル)アルカン酸ユニット及び一般式(2)で示される3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルホニル)アルカン酸ユニットとを含み、加えて、一般式(3)のω−クロロ−3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルフィニル)アルカン酸ユニット、一般式(4)のω−クロロ−3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルホニル)アルカン酸ユニット、一般式(5)のω,ω−ジクロロ−3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルフィニル)アルカン酸ユニット、一般式(6)のω,ω−ジクロロ−3−ヒドロキシ−ω−(2−チエニルスルホニル)アルカン酸ユニット、この一般式(3)〜(6)で示されるユニット4種類のうち、少なくとも1種類のユニットとを、ポリマー分子中に含む新規な生分解性ポリヒドロキシアルカノエートの生産を可能とする。加えて、本発明のPHAの製造方法により作製されるPHAは、これらユニット中にチオフェン環及びスルホン構造(−SO2−)、あるいは、スルホキシド構造(−SO−)を有しており、加えて、そのスルホン構造(−SO2−)、あるいは、スルホキシド構造(−SO−)の硫黄原子に隣接するメチレン基上にクロロ基が置換された、特異な構造を有しているので、分子内において電子の局在化が起こり、例えば、光機能性材料やデバイス材料といった、通常のポリヒドロキシアルカノエートとは大きく異なった領域での材料展開を可能とする。
【0393】
また、本発明によれば、前記本発明にかかるPHAの特異な構造を有するユニットに由来する特性を利用することで、帯電特性に優れ、かつトナー樹脂中への該PHA化合物の分散性、スペント性を向上した生分解性の荷電制御剤を提供することができる。
【0394】
また、該荷電制御剤を含有するトナーは、画像形成装置での出力時においても、画像カブリを発生せず、転写性に優れ、かつ、電子写真プロセスに高度に適合する静電荷像現像用トナーであり、かかる現像剤を採用する画像形成方法は、良好な画像を長期安定して提供することが可能となる。
【0395】
また、本発明の荷電制御剤に使用する本発明にかかるPHAは、無色あるいは着色が弱いため、本発明の荷電制御剤を利用する際、カラートナーに要求される色相に合わせて任意の着色剤を選定することが可能であり、かつ染料、顔料が有する本来の色相を何ら阻害することが無い点も特徴である。
【0396】
加えて、本発明の荷電制御剤を利用している、本発明にかかる静電荷像現像用トナーは、荷電制御剤用に重金属を使用する必要がなく、また、荷電制御剤に使用する本発明にかかるPHA自体は生分解性であるために、環境等に影響を及ぼさないといった産業上多大な効果をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる画像形成方法に利用される画像形成装置の一例を示し、中間転写体を利用するフルカラー画像形成用装置構成を模式的に示すの断面図である。
【図2】図1に例示する本発明にかかる画像形成方法に利用される画像形成装置中、二成分系現像剤用の各現像装置4の要部構造を示す拡大断面図である。
【図3】本発明にかかる画像形成方法に利用される画像形成装置の一例を示し、転写残トナーの回収と再利用のため、トナーのリユース機構を設ける装置構成を模式的に示すの断面図である。
【図4】図3に例示する本発明にかかる画像形成方法に利用される画像形成装置中、一成分現像材用の現像装置26の要部構造を示す拡大断面図である。
【図5】本発明にかかる画像形成方法に利用される画像形成装置中で利用される、熱ロール型の定着装置の要部構成を示す分解斜面図である。
【図6】図5に例示する定着装置の非駆動時の定着フィルム状態を示す要部の拡大断面図である。
【図7】トナーの帯電量を測定するブローオフ帯電量測定装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【図8】実施例1で得られたPHA試料の1H−NMRスペクトルチャートを示す図ある。
【符号の説明】
1、20 感光体(静電潜像担持体)
2、27 帯電ローラー
3 露光光
4、26 現像装置(4−1、4−2、4−3、4−4)
5 中間の転写体
6 被転写材
7 転写ローラー
13 感光体ドラム
11、28 現像剤担持体
30 ステー
31 加熱体
31a ヒーター基板
31b 発熱体
31c 表面保護層
31d 検温素子
32 定着フィルム
33 加熱ローラー
34 コイルばね
35 フィルム端部規制フランジ
36 給電コネクター
37 絶縁部材
38 入口ガイド
39 出口ガイド(分離ガイド)
43 スクリーン
45 真空計
47 吸引口
49 電位計

Claims (8)

  1. 下記一般式(1):
    Figure 0003848204
    (式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット及び、下記一般式(2):
    Figure 0003848204
    (式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニットとを含み、
    下記一般式(3):
    Figure 0003848204
    (式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット、
    下記一般式(4):
    Figure 0003848204
    (式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット、
    下記一般式(5):
    Figure 0003848204
    (式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット、
    下記一般式(6):
    Figure 0003848204
    (式中、xは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニットのうち、少なくとも1種類のユニットをさらにポリマー分子中に含むことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート。
  2. 前記一般式(1)及び(2)で示されるユニット、ならびに、前記一般式(3)〜(6)で示されるユニット4種類のうち、少なくとも1種類のユニットに加えて、
    下記一般式(7):
    Figure 0003848204
    (式中、yは、化学式中に示す0〜8の範囲から選択される整数を表し、ポリマー中において一つ以上を含むことができる)で示されるユニット、または、下記一般式(8):
    Figure 0003848204
    (式中、zは、3または5から選択される整数を表す)で示されるユニットのうち、少なくとも1種類のユニットをさらに含んでもよいことを特徴とする請求項1に記載のポリヒドロキシアルカノエート。
  3. 請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法であって、
    (工程1) 下記一般式(27):
    Figure 0003848204
    (式中、xは、0〜8の範囲から選択される整数を表す)で示されるω−(2−チエニルスルファニル)アルカン酸化合物を少なくとも一種類以上含む培地中で微生物を培養する工程と、
    (工程2) 工程1において培養した微生物により生産されたポリヒドロキシアルカノエートを次亜塩素酸ナトリウムで処理する工程とを含むことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
  4. 前記工程1と工程2の間に、
    前記工程1において培養された微生物細胞から、前記微生物が産生したポリヒドロキシアルカノエートを分離する工程を更に有することを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
  5. 工程1に利用する前記微生物は、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物であることを特徴とする請求項3または4に記載の製造方法。
  6. 前記微生物は、シュードモナス・チコリアイ YN2株(Pseudomonas cichorii YN2;FERM BP−7375)、シュードモナス・チコリアイ H45株(Pseudomonas cichorii H45、FERM BP−7374)、シュードモナス・ジェッセニイ P161株(Pseudomonas jessenii P161、FERM BP−7376)のいずれが1つ以上の株であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
  7. 荷電制御能を有する成分として、請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカノエートを含有してなる荷電制御剤。
  8. 被記録材上に定着されたトナー像を形成するために、請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカノエートを使用する方法であって、
    被記録材上に定着されたトナー像を形成する際に利用される画像形成装置として、
    外部より帯電部材に電圧を印加して静電潜像担持体に帯電を行う手段と、
    帯電された静電潜像担持体に静電荷像を形成する手段と、
    該静電荷像を静電荷像現像トナーにより現像してトナー像を静電潜像担持体上に形成する現像手段と、
    静電潜像担持体上のトナー像を被記録材へ転写する転写手段と、
    被記録材上のトナー像を加熱定着する定着手段とを有し、
    前記静電荷像現像トナーを、トナー像の形成に供するトナーとして具えてなる装置を用い、
    前記画像形成装置が具える静電荷像現像トナーとして、少なくとも、請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカノエートを含有してなる荷電制御剤、バインダー樹脂、および着色剤を含有してなるトナーを用いて、被記録材上に定着されたトナー像を形成し、
    前記静電荷像現像トナーにおいて、負帯電性を発揮させる荷電制御能を有する成分として、請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカノエートを使用する
    ことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートの使用方法。
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