JP3879140B2 - リチウム・ポリマ二次電池 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はゲル状ポリマ電解質を用いるリチウム二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリマ材料は軽量で形状の自由性や薄膜形成が可能であるなどの特徴を有するため、これを電池材料として導入した次世代新型電池の開発が推進されている。通常のリチウム二次電池に使用されている電解液の代わりに、ポリマ電解質を用いたリチウム・ポリマ二次電池もその1つである。
【0003】
電解液を用いたリチウム二次電池では、セパレータ中の限定されたイオン伝導路に電流が集中するため、充電時にデンドライト状リチウムが析出しやすく、内部ショートによる電池の安全性に関する問題を抱えている。しかし、ポリマ電解質を用いたリチウム電池では、ポリマの固体としての性質に加え、ポリマ鎖の密な絡み合い構造によって3次元的に均質化されて電解質全体に均一な電流が流れるため、デンドライト状リチウムの生成が抑制できる傾向にある。よって、内部ショートが起こらない高信頼性の電池が期待される。
【0004】
しかしながら、ポリマ電解質のイオン伝導度は10-4S/cm程度であり、電解液と比較すると1桁以上低い。そこで電解液と同程度の伝導度を得るために、近年ポリマ中に電解液を含浸させたゲル状ポリマ電解質の開発研究が盛んに行われてきた。ゲル状ポリマ電解質は、例えば特開平5−109310号公報に記載されている方法で製造される。光架橋性ポリマであるポリエチレングリコールジアクリレート、光架橋性モノマであるトリメチロールプロパンエトキシル化トリアクリレート、電解液の溶媒であるプロピレンカーボネート、ポリエチレンオキシドおよび電解質塩であるLiCF3SO3からなる混合溶液を平板上に塗布し、これに電子線を照射することによってポリマおよびモノマが重合硬化し、透明で柔軟なフィルム状のゲル状ポリマ電解質が得られる。
【0005】
ゲル状ポリマ電解質では、イオン伝導の大半は電解液相を介して行われるため室温で3×10-3S/cmと電解液に匹敵する高いイオン伝導度を得ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記に示すゲル状ポリマ電解質は電解液を含有することを特徴とし、高いイオン伝導性を示すポリマ電解質であるが、その一方、純粋なポリマ電解質に比べると、電解質中の構造基盤となるポリマが、電解液によって可塑化されているためポリマ鎖の密な絡み合い構造は得られにくく、電解液相が偏在すればその部分に電流の集中が起こる。また機械強度も弱くなるため、デンドライトの発生を抑制する十分な圧迫効果も期待できない。そのため、電解液系電池と同様、充放電に伴いリチウムデンドライトの形成を誘発し、充電時に内部ショートを起こす問題があった。
【0007】
リチウムデンドライトによる内部ショートは、ゲル状ポリマ電解質中の電解液量を低減し純粋な固体ポリマ電解質に近づけることで解決できると考えられるが、イオン伝導の役目を担う電解液相が減少することは、電解質自体のイオン伝導度の低下を招く。
【0008】
以上のことより、安全性と信頼性の確保という観点から、リチウムデンドライトの析出・成長を抑制する機械強度を持ち、かつ高イオン伝導度も兼ね備えたゲル状ポリマ電解質の開発が待たれている。
【0009】
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、新規のリチウム・ポリマ二次電池を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために本発明は、ゲル状ポリマ電解質中にゲル状ポリマ電解質中のイオン伝導性を向上する働きをする粒子径が0.05μm以下のアルミナからなるセラミック粒子を分散させたものである。上記セラミック粒子を分散させることによって、高いイオン伝導度を示すゲル状ポリマ電解質となり、非水電解液を含浸したゲル状ポリマ電解質でもデンドライト状リチウムの析出が押さえられる。このため、本発明の電解質を用いたリチウム・ポリマ二次電池は内部ショートが起こらない安全性、信頼性の高い電池となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、負極と正極との間に少なくともゲル状ポリマ電解質層を配した構造のリチウム電池において、ゲル状ポリマ電解質中のイオン伝導性を向上する働きをする粒子径が0.05μm以下のアルミナからなるセラミック粒子を分散させたゲル状ポリマ電解質を用いたリチウム・ポリマ二次電池である。上記セラミック粒子を混合分散したゲル状ポリマ電解質は、セラミック粒子の表面をイオンが高速移動することにより高いイオン伝導度を示す。
【0012】
このため電池としては次の2つの効果が得られる。1つは電解質中のリチウムイオンの拡散速度が速くなるため、充電時の負極近傍でのリチウムイオン濃度の急激な減少が抑えれることから、リチウム析出の不均一化を免れ、デンドライト状リチウムの生成が抑制される。もう1つは、高いイオン伝導度が得られることにより電解液量を低減することができ、電解質自体の機械強度を強化できることから、結果的に機械強度が強く、イオン伝導度の高いゲル状ポリマ電解質が得られる。さらに、上記効果より電池構成において電解質の厚みを低減することができ、より高容量かつ高率充放電が可能な高信頼性のリチウム・ポリマ二次電池が得られる。
【0014】
また、セラミック粒子の粒子径は0.1μm以下とする。これは、イオンはセラミック粒子表面を通るため、セラミック粒子の表面積を多くすることによって、より高いイオン伝導度を得ることができる。
【0015】
また、このゲル状ポリマ電解質は高イオン伝導性を示すだけではなく、金属リチウム負極との界面抵抗も小さく、保存特性に優れたリチウム・ポリマ二次電池の作製が可能となる。
【0016】
さらに、ゲル状ポリマ電解質中の非水電解液量が80wt%以下とする。このことにより、ゲル状ポリマ電解質の機械的強度が保たれサイクル特性が向上する。
【0017】
また、ゲル状ポリマ電解質は3次元架橋型ポリマ電解質とする。
【0018】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面とともに説明する。
【0019】
(実施例1)
本発明のAl2O3混合分散したゲル状ポリマ電解質は以下の方法で作製した。まず紫外線硬化性モノマであるポリエチレンオキシドジアクリレート20重量部と光重合開始剤であるベンジルジメチルケタール0.1重量部と非水電解液80重量部からなる硬化液を調整した。続いて、これに粒径0.05μmのAl2O3微粒子を2.5体積%混合し、ボールミルで2日間攪拌することでAl2O3粒子が均一に分散した硬化液が得られた。この硬化液を平滑な2枚のガラス板間に1mmの厚さに注入し、これに最大出力波長365nmの紫外線を3分間照射した。このとき、モノマが重合硬化して、非水電解液を含有しかつAl2O3微粒子が分散したゲル状ポリマ電解質ができた。この電解質は三次元架橋型ポリマ電解質である。ここで、電解液としてはプロピレンカーボネートとエチレンカーボネートの50:50の等体積混合溶液に溶質としてLiPF6を1モル/リットル溶解した非水電解液を使用した。
【0020】
(実施例2)
紫外線硬化性モノマと非水電解液の重量比を40:60とした以外は、(実施例1)と同様の方法でAl2O3を2.5体積%混合したゲル状ポリマ電解質を作製した。
【0021】
(参考例1)Al2O3粒子として粒径0.3μmのものを用いた以外は(実施例1)と同様の方法で、ゲル状ポリマ電解質を作製した。
【0022】
(実施例3)1次元直鎖ポリエチレンオキサイト(以下PEOと記載する)を用い、ゲル状ポリマ電解質を以下の方法で作製した。まず、(実施例1)と同様の非水電解液中に、粒径0.05μmのAl2O3粒子を2.5体積%混合し、ボールミルで2日間攪拌することでAl2O3粒子を電解質中に分散させた。次に、分子量400万のPEOを10重量%溶解し、1次元直鎖PEOのゲル状ポリマ電解質を作製した。
【0023】
(比較例1)
Al2O3は混合せず(実施例1)と同様の方法で、紫外線硬化性モノマと非水電解液の重量比が20:80のゲル状ポリマ電解質を作製した。
【0024】
(比較例2)Al2O3は混合せず(実施例3)と同様の方法で、非水電解液中に分子量400万のPEOを10重量%溶解し、1次元直鎖PEOのゲル状ポリマ電解質を作製した。
【0025】
(実施例4)
(実施例1)により得られたゲル状ポリマ電解質を用いて、リチウム・ポリマ二次電池を作製した。図1に本発明のリチウム・ポリマ二次電池の発電要素の縦断面を示す。図において1は金属リチウム負極であり、4はポリマ電解質複合正極、5は正極のアルミ集電体である。2は3のAl2O3粒子を分散したゲル状ポリマ電解質である。
【0026】
ポリマ電解質複合正極4は以下の方法で作製した。まず、活物質となるV6O13+α(0≦α≦0.16)粒子100重量部とアセチレンブラック1重量部を用意し、メカノフュージョンシステムを用いてV6O13+α粒子表面にアセチレンブラック粒子を機械的エネルギーによって固定した。
【0027】
この表面修飾した活物質100重量部と活物質に対して3重量部の導電性結着剤を混合した後、熱硬化性モノマー6重量部と熱重合開始剤1重量部と非水電解液24重量部からなる液体を注入し混練した。このペースト状正極合剤をアルミニウム箔上に塗布し、80℃で1時間加熱処理することにより前記モノマが重合硬化して、ポリマ電解質を複合した正極シートが得られた。
【0028】
ここでは、熱重合性モノマにポリエチレングリコールジアクリレート、熱重合性開始剤にアゾイソブチロニトリル、非水電解液にはプロピレンカーボネートとエチレンカーボネートが50:50の等体積混合溶媒に溶質としてLiPF6を1モル/リットル溶解した非水電解液を使用した。また、導電性結着剤にはポリテトラフルオロエチレンとアセチレンブラックが重量比で30:70のものを使用した。
【0029】
ゲル状ポリマ電解質2は(実施例1)で作製したゲル状ポリマ電解質を用いた。ゲル状ポリマ電解質2と金属リチウム負極1との接合方法は以下の通りである。まず、(実施例1)のAl2O3を混合分散させた硬化液を金属リチウム負極上に50μmの厚さに塗布し、紫外線を照射しゲル状ポリマ電解質2を金属リチウム負極1上に形成する。
【0030】
このゲル状ポリマ電解質2をのせた金属リチウム負極1と上記のポリマ電解質複合正極4を接合積層し、リチウム・ポリマ二次電池を構成した。
【0031】
(実施例5)
(実施例4)と同様の方法で、リチウム・ポリマ二次電池を構成した。ここで、ゲル状ポリマ電解質は(実施例2)の作製方法で得られた電解質を用いた。
【0032】
(実施例6)
(実施例4)と同様の方法で、リチウム・ポリマ二次電池を構成した。ここで、ゲル状ポリマ電解質は(実施例1)の作製方法で得られた電解質を厚み25μmとして用いた。
【0033】
(比較例3)
(実施例4)と同様の方法で、リチウム・ポリマ二次電池を構成した。ここで、ゲル状ポリマ電解質は(比較例1)の作製方法で得られた電解質を用いた。
【0034】
図2に(実施例1)および(実施例3)で得られたゲル状ポリマ電解質のイオン伝導度、およびリチウム金属負極との界面抵抗値を電解質中に含有するAl2O3の体積分率の関数で表わした。(実施例1)で得られた電解質のイオン伝導度はAl2O3の体積率の増加とともに向上し、2.5体積%で最大値6.8×10-3S/cmを示した。これは(比較例1)で作製したAl2O3を含有しない電解質の約2.3倍にあたる高イオン伝導性を示している。また、(参考例1)の電解質は、(実施例1)の電解質と同様に、Al2O3の体積率の増加に伴うイオン伝導度の増加がみられたが、2.5体積%で最大値4.1×10-3S/cmと(実施例1)の電解質ほど高いイオン伝導度は得られなかった。またゲル状ポリマ電解質とリチウムとの界面抵抗はAl2O3の体積率の増加とともに減少した。
【0035】
図3に(実施例4)、(実施例5)および(実施例6)および(比較例3)の電池のサイクル特性を示す。電池試験は0.25mA/cm2の定電流方式で行い、3.3V〜1.8Vの電圧領域で室温にて測定した。(比較例3)のAl2O3を含有しないゲル状ポリマ電解質は100サイクル程度で容量が激減した。本電池を分解観察した結果、負極のリチウムデンドライトが正極側に到達していた。一方(実施例4)の電池は150サイクル程度まで寿命が延び、さらに(実施例5)および(実施例6)の電池は(実施例4)の電池に比べて若干容量が劣るものの、どちらも200サイクルを超えてもリチウムデンドライトによる内部ショートは見られなかった。このことから、セラミック粒子を分散させることによりサイクル寿命が延びるが、ゲル状ポリマ電解質の電解液量を80wt%以下とすることによりサイクル特性がより向上することがわかった。
【0036】
図4に(実施例4)および(比較例3)で得られた電池のレート特性を示す。(比較例3)の電池では1.0C(1.0mAh/cm2)での放電でほとんど容量が得られなかったのに対し、(実施例4)の電池では2.5C(2.5mAh/cm2)の放電でも1mAh/cm2程度の容量が得られた。
【0037】
図5に60℃保存において、(実施例1)および(比較例1)で得られたゲル状ポリマ電解質とリチウム金属との界面抵抗値を示す。(比較例1)の電解質は保存日数とともに急激な抵抗の増加を示すのに対し、(実施例1)のゲル状ポリマ電解質は緩やかな上昇しかみられず、30日保存後でも界面抵抗は50Ω・cm2以下であった。
【0038】
なお、本実施例としてはAl2O3の最適配合率2.5体積%を用いたが、これは用いる電解液およびポリマ種、また電解液とポリマとの混合比によって異なる。
【0040】
また、本実施例では、有機電解液の溶質としてLiPF6を用いたが、LiCF3SO3、LiClO4、LiN(CF3SO2)、LiAsF6あるいはLiBF4などの他のリチウム塩であっても同様の効果が得られる。
【0041】
また、本実施例では、負極に金属リチウムを用いたが、黒鉛やリチウム合金であっても同様の効果が得られる。
【0042】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ゲル状ポリマ電解質中にゲル状ポリマ電解質中のイオン伝導性を向上する働きをする粒子径が0.05μm以下のアルミナからなるセラミック粒子を混合分散することで高イオン伝導性を示す電解質が得られた。このことによりゲル状ポリマ電解質中の電解液成分を削減でき、機械強度およびイオン伝導度をともに兼ね備えたポリマ電解質が得られた。また、このゲル状ポリマ電解質をリチウム電池用正・負極と組み合わせることで、より高容量かつ高信頼性をもつリチウム・ポリマ二次電池が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のリチウム・ポリマ二次電池の発電素子部の縦断面図
【図2】本発明のゲル状ポリマ電解質のAl2O3体積率に対するイオン伝導度と界面抵抗値を示す図
【図3】本発明のゲル状ポリマ電解質および比較のゲル状ポリマ電解質を用いたリチウム・ポリマ二次電池のサイクル特性を示す図
【図4】本発明のゲル状ポリマ電解質および比較のゲル状ポリマ電解質を用いたリチウム・ポリマ二次電池のレート特性を示す図
【図5】本発明のゲル状ポリマ電解質および比較のゲル状ポリマ電解質の60℃保存での界面抵抗値を示す図
【符号の説明】
1 金属リチウム負極
2 ゲル状ポリマ電解質
3 Al2O3粒子
4 ポリマ電解質複合正極
5 アルミ集電体
Claims (3)
- 負極と正極との間に少なくともゲル状ポリマ電解質層を配した構造のリチウム電池において、ゲル状ポリマ電解質中のイオン伝導性を向上する働きをする粒子径が0.05μm以下のアルミナからなるセラミック粒子を分散させたゲル状ポリマ電解質を用いることを特徴とするリチウム・ポリマ二次電池。
- ゲル状ポリマ電解質中の非水電解液量が80wt%以下である請求項1記載のリチウム・ポリマ二次電池。
- ゲル状ポリマ電解質は3次元架橋型ポリマ電解質であることを特徴とする請求項2記載のリチウム・ポリマ二次電池。
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