JP5135649B2 - 固体高分子電解質型電池および固体高分子電解質の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は固体高分子電解質型電池に関し、さらに詳しくは、電解液を用いない所謂全固体型のリチウムイオン二次電池およびそれに用いられる固体高分子電解質の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高エネルギー密度、高出力密度が達成できるリチウムイオン二次電池が開発されてきた。このリチウムイオン二次電池の基本構成は、正極と、負極と、これら両極の間に介在されたオレフィン系の多孔質膜でなるセパレータと、このセパレータに含浸させた非水電解液とからなる。そして、最近では、上記したリチウムイオン二次電池の非水電解液の代わりにゲル型の高分子電解質を用いたものが開発されている。ゲル型の高分子電解質については、たとえば、J. Y. Songらが総説を発表している[J. Power Sources, 77 (1999) 183.]。ゲル型電解質電池については、特開平9−274933号公報や特開平11−307082号公報に開示されている。これらの公報には、電極を電極活物質と高分子電解質を含む複合電極とすることにより電池の充放電特性を向上させる技術が開示されている。
【0003】
このようなゲル型のリチウムイオン二次電池において、電解質は上記したように液状ではないため、電装缶を使用しなくてよいという利点がある。このため、ゲル型のリチウムイオン二次電池では、形状を自由に設計できるという利点がある。また、この電池の包装は、単にアルミラミネートパックで包装するだけで済むため薄膜軽量化が可能となるなどの利点がある。ゲル型のリチウムイオン二次電池では、上記の利点を生かして電子機器などに用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したゲル型のリチウムイオン二次電池を電気自動車などの電源として使用する場合は、50℃を越えるような厳しい環境に晒されるため、ゲル型高分子電解質中に含まれる非水溶媒の蒸発による膨らみなどが発生し、電池性能を大きく低下させることが懸念される。また、ゲル型高分子電解質が可燃性である場合には、厳重な包装技術を要するという課題がある。このため、電解質相にゲル電解質を用いずに事実上溶媒を含まない固体型高分子電解質相を用いた固体高分子電解質型電池、所謂全固体型二次電池の実現が望まれている。
【0005】
ところで、従来の非水溶媒系のリチウムイオン二次電池の電解質支持塩として、LiPF6やLiBF4などが用いられてきたが、これら電解質支持塩を全固体二次電池に用いても、負極活物質にリチウム金属を用いた場合以外は、ほとんど放電特性が得られないものであった。この原因を解明するため、負極活物質にカーボンを用いた場合の表面分析をX線表面解析システム(XPS)で行なってみると、例えば最高被占分子軌道法(HOMO)によるイオン化ポテンシャルIp/eVが9.5であるLiBF4を電解質支持塩に用いた場合、B:F=1:4の比率が大きく変化しており、カーボン表面にLiFが生成されていることが判った。このことからLiBF4は分解反応を起こしていると考えられ、この反応および分解生成物が充放電反応の阻害要因の一つとなっていることが考えられる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。そこで、本発明の目的は、放電特性を向上した固体高分子電解質型電池を実現することにある。 また、本発明の他の目的は、自動車内などの厳しい温度環境に耐えることができ、安全性が高く、コンパクト化が図れる固体高分子電解質型電池および固体高分子電解質の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、正極と負極との間に固体高分子電解質が介在された固体高分子電解質型電池であって、固体高分子電解質に、フッ素化合物でなる電解質支持塩が含まれ、電解質支持塩の最高被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルIp/eVが6以上9以下であり、電解質支持塩は、Li(C 2 F 5 SO 2 ) 2 NまたはLiC 4 F 9 SO 3 であり、負極は、リチウム金属酸化物からなる負極活物質を備え、負極活物質は、Li x Ti y O z 系材料であり、固体高分子電解質は、分子構造中にエーテル結合またはエステル結合を有し、且つ末端に重合性官能基を有するコポリマーとフッ素化合物が重合又は混合されてなる、あるいは、固体高分子電解質は、主鎖部が複数の官能基からなり、且つそれぞれの官能基に連結する側鎖がエーテル結合またはエステル結合を含むランダム共重合体であり、ランダム共重合体のそれぞれの末端に二重結合を有するコポリマーが重合されていることを特徴とする。
【0008】
本発明では、電解質支持塩の最高被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルIp/eVを上記範囲に限定することにより、放電特性の向上を図ることができる。すなわち、このようなイオン化ポテンシャルIp/eVの範囲を限定することで、電解質支持塩の元素組成は変化せず、電解質支持塩の分解反応や分解生成物が生じにくいため、充放電反応を阻害するのを抑制することができる。
【0009】
【発明の効果】
本発明によれば、フッ素化合物の最高被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルIp/eVを特定範囲に設定したことにより、大幅に放電能力を高めることができる。このため、電解質が固体高分子でなる全固体高分子電解質型電池の充放電効率を向上させるという効果がある。このように、固体高分子を電解質層として用いることが可能となるため、液漏れがなく、機械的強度の高いコンパクトなリチウムイオン二次電池を実現することができる。
【0010】
本発明によれば、充放電効率のよい固体高分子を製造できるという効果がある。また、最大被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルが特定の電解質支持塩を予めポリマーに混ぜておけばよいため、材料調製が容易となる効果がある。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る固体高分子電解質型電池および固体高分子電解質の製造方法について説明する。なお、本発明に係る固体高分子電解質型電池および固体固体電解質型電池の実施の形態の説明に先駆けて、本発明に係る固体高分子電解質型電池の概略について説明する。
【0012】
本発明に係る固体高分子電解質型電池は、電解質支持塩として、リチウム(Li)のフッ素化合物を用いる。この電解質支持塩としては、最高被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルIp/eVが6以上9以下のものを用いる。そして、固体ポリマーとして特定の導電性ポリマーあるいは特定の負極活物質を用いることにより、室温環境で充放電可能な固体高分子電解質型電池が得られることが見いだされた。
【0013】
ここで、最高被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルIp/eVが8〜8.3であるLi(CF3SO2)2Nを電解質支持塩として用いて導電性ポリマーに固溶させ、負極活物質としてカーボンを用いて固体高分子電解質型電池を構成すると、電解質支持塩中のS:F=1:3には変化がなく、LiFの生成もみられないことが判った。実際には、最高被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルIp/eVが9.5であるLiBF4を電解質支持塩として用いた場合の放電効率0.5%以下であったものが、イオン化ポテンシャルIp/eVが8〜8.3であるLi(CF3SO2)2Nを電解質支持塩として用いることで放電効率が10%を越えるようになり、大幅に放電効率が向上した。
【0014】
このため、後述するように、最大被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルIp/eVが6以上9以下の特定範囲にあるフッ素化合物が、電解質支持塩として用いることができる。上記したLi(CF3SO2)2N以外には、例えばLi(C2F5SO2)2N、LiC4F9SO3、LiCF3SO3、Li(C2F5PF3)などから選ぶことができる。
【0015】
(固体高分子電解質型電池の構成)
次に、本実施の形態に係る固体高分子電解質型電池の構成について図1を用いて説明する。図1に示すように、本実施の形態の固体高分子電解質型電池1は、互いに平行をなす正極集電体2と負極集電体3とを備える。正極集電体2の対向内側面には、表面に沿って正極電極4が形成されている。負極集電体3の対向内側面には、表面に沿って負極電極5が形成されている。そして、対向する正極電極4と負極電極5との間隙に固体高分子電解質6が密接するように介在されている。
【0016】
上記した正極集電体2は、アルミニウム(Al)で形成されている。この正極集電体2に形成された正極電極4は、正極活物質と電解質支持塩とポリマーとを含んで構成されている。正極活物質として、例えばLiMn2O4、LiCoO2、Li2Cr2O7、Li2CrO4あるいはこれらの複合酸化物などから選ばれる材料を含んでなるが、正極活物質材料はこれらに限定されるものではない。また、電解質支持塩としては、後述する固体高分子電解質に含まれる電解質支持塩と同様のものを用いる。
【0017】
上記した負極集電体3は、銅(Cu)で形成されている。この負極集電体3に形成された負極電極5は、負極活物質と電解質支持塩とポリマーとを含んでいる。負極活物質としては、ハードカーボン、グラファイトカーボン、金属化合物、Li金属化合物、Li金属酸化物から選択される。この負極集電体3の形状は、平板状、棒状、粉末状などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、負極集電体3の材料のミクロ構造は、積層状、球状、繊維状、螺旋状、フィブリル状などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
なお、金属化合物としては、LiAl、LiZn、Li3Bi、Li3Cd、Li3Sd、Li4Si、Li4.4Pb、Li4.4Sn、Li0.17(LiC6)などから選ぶことができる。
【0019】
金属酸化物としては、InO2、SiO、SnO、SnO2、SnSO4、ZnO、CoO、NiO、FeOなどから選ぶことができる。
【0020】
また、Li金属化合物としては、Li3FeN2、Li2.6Co0.4N、Li2.6Cu0.4Nなどから選ぶことができる。
【0021】
さらに、Li金属酸化物としては、LixTiyOzで表される酸化物などから選ぶことができる。
【0022】
次に、固体高分子電解質6を構成するポリマーは、分子構造中に少なくともエーテル結合またはエステル結合を有し、且つ末端に重合性官能基を有しているコポリマーを重合することによって形成される。重合性官能基としては、一般的な二重結合でよい。そして、固体高分子電解質6は、このコポリマーに重合開始剤および電解質支持塩を添加した後、例えば熱重合、紫外線重合、電子線重合、放射線重合を行なうことで固体高分子電解質6が形成されたものである。また、この固体高分子電解質6は、ポリマーの基本骨格となる主鎖部を3〜6の官能基でなり且つ各官能基に連結する側鎖がエーテル結合またはエステル結合を含むランダム共重合体であり、しかもそれぞれの末端に重合性官能基として二重結合を有するコポリマーであってもよい。このような構造とすることにより、重合反応を行なった場合に、網目状の高分子化が可能となる。さらに、それぞれの側鎖のランダム共重合体を、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、立体構造のオキシドなどのポリエーテルから得ることもできる。なお、立体構造のオキシドは、イオン伝導性化合物、結晶抑制化合物、配向性イオン伝導化合物、イオン性化合物からなるものがある。
【0023】
上記した構成の実施の形態に係る固体高分子電解質型電池1は、外装材で包装することができる。この外装材としては、アルミ箔、アルミ蒸着した有機フィルムなどを使用することができる。有機フィルムの材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレンテトラフルオレートなどを用いることができる。
【0024】
また、本実施の形態に係る固体高分子電解質型電池1は、単体セル(単体電池)として用いる他に、セルを積層したスタックセルまたは組み電池として用いることができる。このとき、単体セルと単体セルとの間には、樹脂フィルムや金属箔を挟むことが可能である。この金属箔の種類としては、銅、アルミ、鉄、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、珪素、酸化鉄、酸化銅などであり、これらのうち単独の材料を用いてもよく、蒸着や張り合わせによる複合化してもよい。
【0025】
また、固体高分子電解質型電池1の形状、構造は、平板状、円筒状、螺旋状、リボン状、テープ状、直方体形状、立方体形状、円錐形状、球状、棒状などの各種の形状、構造を採用することができる。
【0026】
(本実施の形態に係る固体高分子電解質の製造方法)
次に、固体高分子電解質の製造方法について説明する。
【0027】
本実施の形態の固体高分子電解質6を製造するには、分子構造中にエーテル結合またはエステル結合を有し且つ末端に重合性官能基を有するコポリマーと、最高被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルIp/eVが6以上9以下である、リチウム(Li)のフッ素化合物でなる電解質支持塩とを混合して重合させることで製造することができる。
【0028】
また、この他の製造方法として、分子構造中にエーテル結合またはエステル結合を有し且つ末端に重合性官能基を有するコポリマーと、最高被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルIp/eVが6以上9以上である、リチウム(Li)のフッ素化合物でなる電解質支持塩とを非水系溶媒に溶解させた後、混合して乾燥させることで固体高分子電解質6を製造することができる。
【0029】
なお、電解質支持塩としては、最高被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルIp/eVが7.1以上9以下、好ましくは8以上9以下のものを用いる。
【0030】
さらに、固体高分子電解質の製造方法としては、主鎖部が3〜6の官能基からなり且つそれぞれの官能基に連結する側鎖が、エーテル結合またはエステル結合を含むランダム共重合体のそれぞれの末端に二重結合を有するコポリマーを重合させ方法としてもよい。
【0031】
次に、本発明に係る固体高分子電解質型電池の各実施例および比較例を以下に示す。
【0032】
(実施例1)
上記した正極電極4および負極電極5に用いるポリマーとしては、下記の化学式に示す、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレン共重合体100重量部に対し、0.1重量部のアゾビスイソブチルニトリル(AIBN)と電解質支持塩としてのLi(CF3SO2)2Nをn−ピロリドン溶媒20重量部に予め溶解し、これを添加して作製した。
【0033】
【化1】
なお、正極電極4の作製は、正極活物質としてLiMn2O4を26重量部、導電助剤としてアセチレンブラックを8重量部、上記したアゾビスイソブチルニトリル(AIBN)を0.1重量部と、電解質支持塩としてのLi(CF3SO2)2Nをn−ピロリドン溶媒と溶解したポリマーを66重量部計量し、ホモミキサーで混合分散した。次に、これをAlでなる正極集電体2上にコーターを用いて塗布し、オーブンにて120℃の温度で熱重合させた。さらに、その後正極集電体2を90℃で真空乾燥させて正極電極4を作製した。
【0034】
また、負極電極5の作製は、負極活物質としてLiTi2O4を26重量部、導電助剤としてアセチレンブラックを8重量部、アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)と電解質支持塩であるLi(CF3SO2)2Nをn−ピロリドン溶媒と溶解したポリマーを66重量部計量し、ホモミキサーで混合分散した。次に、これをCuでなる負極集電体3上にコーターを用いて塗布し、オーブンにて120℃の温度で熱重合させた。さらに、その後負極集電体5を90℃で真空乾燥させて正極電極5を作製した。
【0035】
さらに、固体高分子電解質の作製は、上述のポリエチレンオキシド−ポリプロピレン共重合体100重量部に対し、n−ピロリドン溶媒20重量部に0.1重量部のベンジルジメチルケタール(BDK)と電解質支持塩としてのLi(CF3SO2)2Nとを溶解したものを添加混合した。そして、これをガラス板上に約60〜80μmの膜厚となるように塗布し、紫外線を20分間照射して硬化させる。その後、硬化した膜をガラス板から剥離し、この膜を90℃で真空乾燥させて固体高分子電解質膜とした。
【0036】
そして、上記した正極電極4が形成された正極集電体2、負極電極5が形成された負極集電体3、および上記の固体高分子電解質膜を、直径15mm円形に打ち抜き、正極、固体高分子電解質、負極の順に重ね合わせ、フッ素樹脂性のボルト、ナットを用いて保持して固体高分子電解質型電池を作製した。
【0037】
(実施例2)
上記した実施例1に対して、電解質支持塩のみをLi(CF3CF2SO2)2Nに代えて固体高分子電解質型電池を作製した。
【0038】
(実施例3)
上記した実施例1に対して、電解質支持塩のみをLiCF3SO3に代えて固体高分子電解質型電池を作製した。
【0039】
(実施例4)
上記した実施例1に対して、電解質支持塩のみをLiC4F9SO3に代えて固体高分子電解質型電池を作製した。
【0040】
(比較例1)
上記した実施例1に対して、電解質支持塩のみをLiAsF6に代えて固体高分子電解質型電池を作製した。
【0041】
(比較例2)
上記した実施例1に対して、電解質支持塩のみをLiPF6に代えて固体高分子電解質型電池を作製した。
【0042】
(比較例3)
上記した実施例1に対して、電解質支持塩のみをLiBF4に代えて固体高分子電解質型電池を作製した。
【0043】
(比較例4)
上記した実施例1に対して、電解質支持塩のみをフッ素化合物ではないLiB(C2H5)4に代えて固体高分子電解質型電池を作製した。
【0044】
(比較例5)
上記した実施例1に対して、電解質支持塩のみをフッ素化合物ではないLiClO4に代えて固体高分子電解質型電池を作製した。
【0045】
上記した実施例1〜実施例4および比較例1〜比較例5で作製した固体高分子電解質型電池を用いて、充電時には0.2mA、4.2Vの定電圧定電流で30時間行ない、放電時には0.2mA、1.5Vの定電圧定電流で20時間行なって、充電容量に対する放電容量の比率、すなわち放電容量/充電容量×100(%)を測定、算出した。また、各電解質支持塩のイオン化ポテンシャルIp/eVについて、最高被占分子軌道法による計算を行なった。なお、このイオン化ポテンシャルの計算は、市販の計算ソフト(Gaussian98,RevisionA.7,Gaussian,Inc.,Pittsuburgh,PA(1998))を用いて行なった。下表1にこれらの評価結果を示す。図2はこの結果を示すグラフである。
【0046】
【表1】
上記表1および図2から判るように、最高被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルIp/eVの値が、6〜9の間の範囲で充電容量に対する放電容量の比率が25%以上の高い比率、すなわち放電特性が高くなっている。これに比較して比較例では、フッ素化合物を電解質支持塩として用いていても、最高被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルIp/eVの値が、6〜9の間の範囲にないものや、フッ素化合物を電解質支持塩として用いていないものであり、充電容量に対する放電容量の比率がいずれの比較例も0.2以下と低いものであることが判る。
【0047】
この結果から、電解質支持塩がフッ素化合物からなり、この電解質支持塩の最高被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルIp/eVが6〜9であれば、固体高分子電解質型電池において良好な充放電を可能にできることが判る。特に、最高被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルIp/eVが7.1〜9、さらに8〜9とすることが好ましいことが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る固体高分子電解質型電池の断面図である。
【図2】実施例と比較例との評価結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 固体高分子電解質型電池
2 正極集電体
3 負極集電体
4 正極電極
5 負極電極
6 固体高分子電解質
Claims (8)
- 正極と負極との間に固体高分子電解質が介在された固体高分子電解質型電池であって、
前記固体高分子電解質に、フッ素化合物でなる電解質支持塩が含まれ、
前記電解質支持塩の最高被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルIp/eVが6以上9以下であり、
前記電解質支持塩は、Li(C 2 F 5 SO 2 ) 2 NまたはLiC 4 F 9 SO 3 であり、
前記負極は、リチウム金属酸化物からなる負極活物質を備え、
前記負極活物質は、Li x Ti y O z 系材料であり、
前記固体高分子電解質は、分子構造中にエーテル結合またはエステル結合を有し、且つ末端に重合性官能基を有するコポリマーと前記フッ素化合物が重合又は混合されてなる、
あるいは、
前記固体高分子電解質は、主鎖部が複数の官能基からなり、且つそれぞれの前記官能基に連結する側鎖がエーテル結合またはエステル結合を含むランダム共重合体であり、前記ランダム共重合体のそれぞれの末端に二重結合を有するコポリマーが重合されていることを特徴とする固体高分子電解質型電池。 - 前記電解質支持塩の最高被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルIp/eVが6.7以上7.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子電解質型電池。
- 前記電解質支持塩は、リチウム(Li)およびフッ素(F)の他に、炭素(C)、リン(P)、硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)から選ばれる元素を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の固体高分子電解質型電池。
- 前記側鎖は、ポリエーテルからなることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子電解質型電池。
- 前記ポリエーテルは、ポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシドであることを特徴とする請求項4に記載の固体高分子電解質型電池。
- 固体高分子電解質型電池に用いられる固体高分子電解質の製造方法であって、
分子構造中にエーテル結合またはエステル結合を有し且つ末端に重合性官能基を有するコポリマーと、最高被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルIp/eVが6以上9以下である、リチウム(Li)のフッ素化合物でなる電解質支持塩であるLi(C2F5SO2)2NまたはLiC4F9SO3と、を重合又は混合し、
主鎖部が複数の官能基からなり、且つそれぞれの前記官能基に連結する側鎖がエーテル結合またはエステル結合を含むランダム共重合体であり、最高被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルIp/eVが6以上9以下である、リチウム(Li)のフッ素化合物でなる電解質支持塩であるLi(C 2 F 5 SO 2 ) 2 NまたはLiC 4 F 9 SO 3 と、前記ランダム共重合体のそれぞれの末端に二重結合を有するコポリマーと、を重合することを特徴とする固体高分子電解質の製造方法。 - 前記電解質支持塩の最高被占分子軌道法によるイオン化ポテンシャルIp/eVが6.7以上7.5以下であることを特徴とする請求項6に記載の固体高分子電解質の製造方法。
- 前記コポリマーと前記電解質支持塩とが非水系溶媒に溶解して混合し、その後乾燥させることを特徴とする請求項6又は7に記載の固体高分子電解質の製造方法。
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