JP3878857B2 - ワイヤーロープのソケッティング用治具装置およびソケッティング方法 - Google Patents

ワイヤーロープのソケッティング用治具装置およびソケッティング方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワイヤーロープの端末をソケットに引き込んでソケッティングの端末処理するときに使用するソケッティング用治具装置およびソケッティング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エレベーターの乗りかごを吊る主索や、釣り合い重りを吊るロープ等に用いられるワイヤーロープには、事前に端末処理(ソケッティング)を行って、ロープ端末にソケットを取り付けておく必要がある。このワイヤーロープの端末処理作業は、ソケッティングと呼ばれている。
【0003】
図7は、この種のソケッティングが施されたワイヤーロープを示す図である。この図7において、参照符号1がワイヤーロープであり、2がソケット3が一体に形成されたシンプルロッドである。ワイヤーロープ1は、通常、6本のストランドを撚り撚り合わせてなるものである。シンプルロッド2の端部は、雄ねじ4が形成されており、例えば、ワイヤーロープ1がエレベーターの乗りかごを吊るためのロープであれば、シンプルロッド2の雄ねじ4を乗りかごの天井部にねじ込み、ロックナット5により固定することができる。
【0004】
次に、図8は、ワイヤーロープ1の端末をソケット3に引き込みソケッティングを行う手順を示す図である。
【0005】
まず、ワイヤーロープ1の端末をソケット2に挿入し、図8(a)に示すように、端末を窓6から引き出してからストランド7をばらばらに解しておく。次いで、図8(b)に示すように、ワイヤーロープ1の各ストランド7を折り曲った状態にしておき、この各ストランド7の折り曲がった部分をソケット3内に引き込んでから、さらにソケット3中に溶けた亜鉛を流し込んで固定する。
【0006】
図8(c)は、ソケット3の横断面を示す。通常、ソケット3の内径は、ワイヤーロープ1の直径よりもわずかに大きい程度である。ワイヤーロープ1をばらして折り曲げたストランド7をソケット3に引き込むことで、ロープ断面の倍の12本のストランド7が圧入されることになるので、ワイヤーロープ1が抜けることはないようにソケット3を取り付けることができる。
【0007】
このようなワイヤーロープのソケッティング作業において、図8(b)に示すような、折り曲げたストランド7をソケット3に引き込む作業は、従来、人がまったくの手作業で行い、ソケット3とワイヤーロープ1とに相反する方向に力を加えて引き込んでいる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ワイヤーロープのソケッティング作業は、小径のワイヤーロープの場合は、引き込むときにさほど大きな力が要らないため、ある程度熟練すれば比較的容易な作業である。しかし、ワイヤーロープの径が大きくなるにしたがって、作業に余程熟練しないと大変難しくなる。また、そのばらばらにしたストランドの素線の先で手指が傷付くという問題もある。
【0009】
さらに近年の超高層ビルのエレベーター用のワイヤーロープともなると、ロープ径は20mmを越える場合がある。このような大径のワイヤーロープの端末を手作業でソケットティングすることはほとんど不可能であるが、これまでのところ、大径のワイヤーロープの端末を容易にソケッティングできるような器具等が考案されていないのが現状である。
【0010】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、ワイヤーロープのソケッティングを熟練を要せずに簡便にしかも安全に確実に行うことができるようにしたワイヤーロープのソケッティング用治具装置およびソケッティング方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、従来、手作業では不可能であった大径のワイヤーロープのソケッティングを手工具を用いて簡単にできるようにしたワイヤーロープのソケッティング用治具装置およびソケッティング方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、ワイヤーロープの各ストランドを折り曲げたロープ末端をソケットに引き込み、ロープ端末に前記ソケットを取り付けるためのソケッティング用治具装置であって、長手方向に直線案内を有する機台と、前記ソケットを前記機台上の一端側で固定するためのソケット固定用治具と、前記直線案内に沿って前記機台上を移動可能であり、前記ソケット固定用治具に固定したソケットにロープ端末を引き込む牽引力を発生する牽引機構を前記機台の他端側に備えた牽引操作装置と、
前記ワイヤーロープを着脱可能に把持し、牽引力によってワイヤーロープを把持しつつ該牽引力を該ワイヤーロープに伝達するロープ把持手段と、を具備することを特徴とするものである。
【0013】
この請求項1の発明によれば、ワイヤロープを通したソケットをソケット固定用治具で固定しておき、ロープ把持手段をワイヤーロープに掴ませてた状態で牽引操作装置で引くことにより、ワイヤーロープのソケッティング作業を簡便にかつ確実にしかも安全に行うことができる。
【0014】
また、請求項2に係る発明は、請求項1の発明において、前記牽引機構は、前記機台上で前記直線案内と平行に延びるラック歯車と前記ラック歯車に噛み合うピニオン歯車とを含む歯車装置と、前記ピニオン歯車を駆動する歯車駆動手段と、を備えることを特徴としている。
【0015】
この請求項2の発明によれば、ラック歯車とピニオン歯車によって、歯車駆動手段から加よるトルクが大きな牽引力に変換されるのでワイヤーロープを大きな力で引くことができる。
【0016】
さらに、請求項3に係る発明は、請求項2の発明において、前記牽引機構は、前記歯車装置と係合して当該牽引装置の後退を阻止する方向にのみ前記歯車装置の回転を止める戻り止手段を有することを特徴としている。
【0017】
この請求項3の発明によれば、ワイヤーロープからの反力により牽引装置が引き戻されないため、安全に確実にソケッティング作業を行うことができる。
【0018】
また、請求項4に係る発明は、前記歯車駆動機構は、前記ピニオン歯車の軸に取り付け回転トルクを手動で加える工具からなることを特徴としている。
この請求項4の発明によれば、ラチェットレンチを利用してピニオン歯車を駆動し、ラチェットレンチで加えるトルクを牽引力として作業員単独でソケッティング作業を行うことができる。
【0019】
請求項5に係る発明は、ワイヤーロープの各ストランドを折り曲げたロープ末端をソケットに引き込み、ロープ端末に前記ソケットを取り付けるためのソケッティング方法であって、長手方向に直線案内を有する機台上の一端側に治具を用いて前記ソケットを固定し、前記加えられるトルクをロープ端末をソケットに引き込む牽引力に転換する牽引機構を有する牽引操作装置を用い、この牽引操作装置に前記ワイヤーロープを把持する掴み治具を連結し、前記牽引機構にトルクを加えながら、トルクから転換された牽引力によって前記掴み治具でワイヤーローブを把持しつつ該ワイヤーロープに該牽引力を伝えロープ端末を前記ソケットに引き込むことを特徴とするものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるワイヤーロープのソケッティング用治具装置およびソケッティング方法の一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本実施形態によるソケッティング用治具装置を示す平面図で、図2は、ソケッティング用治具装置を示す側面図である。この図1、図2では、ワイヤーロープ1の端末と、ソケット3を有するシンプルロッド2とがソケッティング用治具装置にセットされており、ソケッティング作業の段取りが完了した状態を示している。
【0022】
本実施形態によるソケッティング用治具装置は、長尺な機台7を含む。この機台7の一端部には、ソケット3を固定するためのソケット固定用治具8が取り付けられている。このソケット固定用治具8は、ソケット3のテーパを有する先端部が嵌合するテーパ面8aが形成されている。このテーパ面8aは、矢印Aで示すワイヤーロープ1を引き込む方向に向かって徐々に縮径する傾斜を有している。
【0023】
図2に示されるように、機台7の左右の両側面には、長手方向に延びる直線案内として、案内部材9、9が取り付けられている。この案内部材9、9はその間に案内溝9aが形成されるように取り付けられている。
【0024】
参照符号10は、ワイヤーロープ1の端末をソケット3に引き込む牽引力を発生する機構を内蔵した牽引操作装置の全体を示している。図4に示すように、牽引操作装置10のカバー11の下端部は内側に屈曲し、機台7側面の案内溝9aに摺動可能に係合するようになっている。
【0025】
機台7の上面中央には、長手方向に平行の延びるラック歯車12が固定されている。牽引操作装置10の内部には、カップリング13a、13bを介して歯車軸14が回転可能に軸支されており、この歯車軸14には、ラック歯車12と噛み合っているピニオン歯車16が軸着されている。このラック歯車12とピニオン歯車16からなるピニオン・ラック歯車機構が牽引力を発生する牽引機構を構成するようになっている。この実施形態の場合、ラチェットレンチ50(図2参照)を用いて手動で大きなトルクを歯車軸14にかけられるようにするために、歯車軸14には、ラチェットレンチ50のソケットが嵌合する6角頭部17がカバー11から外側に突き出るように同軸に連結されている。
【0026】
この実施形態では、上記のピニオン・ラック歯車機構に牽引力が発生したときに、ワイヤーロープ1から受ける反力による歯車軸16の逆転を防止し、ラチェットレンチ50により歯車軸14を回して牽引を継続できるように、次のようなピニオンラック機構の戻り止め手段が付加されている。
【0027】
図4、図5に示すように、歯車軸14には、ピニオン歯車16と同軸に爪車18が軸着されている。この爪車18には、揺動可能に支持された爪部材19の先端が係合し、この爪車18と爪部材19とによって戻り止手段が構成されている。すなわち、爪部材19の一端部は揺動軸20に取り付けられ、爪部材19の先端部が爪車18に係合している。爪部材19が爪車18の歯に係合した状態では、爪車18はワイヤーロープ1を引き込む方向のみの回転が許容され、その逆方向の逆転は阻止されるようになっている。なお、爪部材19は、引張ばね22によって下方すなわち爪車18の爪に押し付けられるように付勢されている。なお、図2において、参照符号23は、牽引操作装置10がラック歯車12からの脱落を防止するストッパを示している。
【0028】
次に、図6は、本実施形態によるソケッティング用治具装置の備えるロープ掴み治具24を示す。
【0029】
このロープ掴み治具24は、バックアップリンク25と、押圧リンク27と、連結リンク28とを含み、バックアップリンク25に設けた掴み部29と、押圧リンク27に設けられた掴み部30とでワイヤーロープ1を挟持することができる。押圧リンク27の腕部27aは、連結リンク28に一端にピン結合され、他端はシャックル31を用いて牽引操作装置10の連結金具32と連結されている。
【0030】
ロープ掴み治具24では、牽引操作装置10によって押圧リンク27が引かれて矢印方向に回動すると、その掴み部とバックアップリンク27の掴み部との間隔が狭まるようになっているので、ワイヤーロープ1をバックアップリンク25と押圧リンク28とで挟持することができるようになっている。
【0031】
本実施形態によるソケッティング用治具装置は、以上のように構成されるものであり、次に、これを用いて行うワイヤーロープ1のソケッティング作業について説明する。なお、このソケッティング作業の手順そものは、図8に示したものと同様であるが、ソケッティング用治具装置の作用効果との関連において説明する。
【0032】
図1に示すように、ワイヤロープ1を通したソケット3をソケット固定用治具8で固定しておく。また、ソケット3を通した先のワイヤーロープ1の端末は、ストランド7を解いてから折り返した状態にしておく。そして、ワイヤーロープ1には、ロープ掴み具24をワイヤーロープ1に掴ませて、このロープ掴み治具24をシャックル31で牽引操作装置10に連結しておく。
【0033】
次に、図2に示すように、ラチェットレンチ50のソケットを歯車軸14の六角頭部17に嵌めておく。
【0034】
この状態にしておいて、ラチェットレンチ50のレバーを操作して、歯車軸14を回していくと、ラチェットレンチ50で加えられるトルクによりピニオン歯車17が回ることになる。ピニオン歯車17は、ラック歯車12に噛み合っているので、ラチェットレンチ50で加えたトルクは大きな牽引力に転換され、この牽引力はロープ掴み治具24を介してワイヤーロープ1に伝わりこれをソケット3に引き込むことができる。
【0035】
ラケットレンチ50では、レバーを矢印B方向に回すと牽引操作装置10がワイヤーロープを牽引していく。レバーを矢印C方向に戻すときには、図5において爪部材19が爪車18が戻る方向の矢印D方向に逆転するのを阻止するので、ラチェットレンチ50のレバーを続けて動かして、牽引操作装置10を徐々に移動させて、確実にかつ安全にワイヤーロープ1の端末をソケット3に引き込むことができる。
【0036】
最終的に、図3に示すところまで、牽引操作装置10を移動するとワイヤーロープ1の端末はソケット3に完全に引き込まれる。以上のようにして、作業員はラチェットレンチを使って簡単にしかも安全にワイヤーロープ1の折り曲げ加工された端末をソケット3に引き込むことができる。
【0037】
なお、ソケッティングを施すワイヤーロープ1が大径のワイヤーロープであっても、腕の長さの大きいソケットレンチ50の使用すれば、非常に大きなトルクを加えることができるので、たとえ、ワイヤーロープ1のロープ径が20mmを越えるロープで、従来は手作業でソケッティングが不可能であったものでも、作業員単独でソケットに引き込むことができる。
【0038】
ところで、ロープ掴み治具24は、掴むことの可能なワイヤーロープ1のロープ径に制限がなく、ソケット固定用治具8についてもテーパ面8aにソケット2が着座する形式なのでソケット2の外径を問わないため、小径から大径まで汎用的にロープ径を問わず1台の治具装置を用いて簡単にソケッティングを作業員一人で行うことができる。
【0039】
以上、本発明について、好適な実施形態を挙げて説明したが、ラチェットレンチを使用して歯車軸を回する代わりに、パイプレンチなどで歯車軸を回すようにしてもよい。また、モータ等と歯車軸との間に減速機などを介して歯車軸を電動駆動するように構成してもよい。
【0040】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ワイヤロープを通したソケットをソケット固定用治具で固定しておき、ロープ把持手段をワイヤーロープに掴ませてた状態で牽引操作装置を引くことにより、ワイヤーロープのソケッティング作業を簡便にかつ確実にしかも安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態によるソケッティング用治具装置にワイヤーロープの端末とソケットをセットした状態を示す平面図。
【図2】本発明の一実施形態によるソケッティング用治具装置の側面図。
【図3】本発明の一実施形態によるソケッティング用治具装置でワイヤーロープの端末をソケットに引き込んだ状態を示す平面図。
【図4】牽引操作装置の内部構造を示す図。
【図5】牽引操作装置の内蔵する戻り止め手段を示す図。
【図6】ソケッティング用治具装置にワイヤーロープ、ソケットが節とされていない状態での平面図。
【図7】ソケッティングの端末処理が施されたワイヤーロープとソケットを示す側面図。
【図8】ソケッティング作業の手順を示す説明図。
【符号の説明】
1 ワイヤーロープ
2 シンプルロッド
3 ソケット
7 ストランド
4 機台
8 ソケット固定用治具
9 案内部材
10 牽引操作装置
11 カバー
12 ラック歯車
14 歯車軸
17 ピニオン歯車
18 爪車
19 爪部材
24 ロープ掴み治具
31 シャックル

Claims (7)

  1. ワイヤーロープの各ストランドを折り曲げたロープ末端をソケットに引き込み、ロープ端末に前記ソケットを取り付けるためのソケッティング用治具装置であって、
    長手方向に直線案内を有する機台と、
    前記ソケットを前記機台上の一端側で固定するためのソケット固定用治具と、
    前記直線案内に沿って前記機台上を移動可能であり、前記ソケット固定用治具に固定したソケットにロープ端末を引き込む牽引力を発生する牽引機構を前記機台の他端側に備えた牽引操作装置と、
    前記ワイヤーロープを着脱可能に把持し、牽引力によってワイヤーロープを把持しつつ該牽引力を該ワイヤーロープに伝達するロープ把持手段と、
    を具備することを特徴とするワイヤーロープのソケッティング用治具装置。
  2. 前記牽引機構は、前記機台上で前記直線案内と平行に延びるラック歯車と前記ラック歯車に噛み合うピニオン歯車とを含む歯車装置と、前記ピニオン歯車を駆動する歯車駆動手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のワイヤーロープのソケッティング用治具装置。
  3. 前記牽引機構は、前記歯車装置と係合して当該牽引装置の後退を阻止する方向にのみ前記歯車装置の回転を止める戻り止手段を有することを特徴とする請求項2に記載のワイヤーロープのソケッティング用治具装置。
  4. 前記歯車駆動手段は、前記ピニオン歯車の軸に取り付け回転トルクを手動で加える工具からなることを特徴とする請求項3に記載のワイヤーロープのソケッティング用治具装置。
  5. ワイヤーロープの各ストランドを折り曲げたロープ末端をソケットに引き込み、ロープ端末に前記ソケットを取り付けるためのソケッティング方法であって、
    長手方向に直線案内を有する機台上の一端側に治具を用いて前記ソケットを固定し、
    前記加えられるトルクをロープ端末をソケットに引き込む牽引力に転換する牽引機構を有する牽引操作装置を用い、この牽引操作装置に前記ワイヤーロープを把持する掴み治具を連結し、
    前記牽引機構にトルクを加えながら、トルクから転換された牽引力によって前記掴み治具でワイヤーローブを把持しつつ該ワイヤーロープに該牽引力を伝えロープ端末を前記ソケットに引き込むことを特徴とするワイヤーロープのソケッティング方法。
  6. 前記牽引機構は、前記機台上で前記直線案内と平行に延びるラック歯車と前記ラック歯車に噛み合うピニオン歯車とを有し、前記ピニオン歯車の軸にトルクを加え、前記ラックラック歯車との噛み合いによりトルクを牽引力に転換することを特徴とする請求項5に記載のワイヤーロープのソケッティング方法。
  7. 前記ピニオン歯車の軸に手動工具でトルクを加えることを特徴とする請求項6に記載のワイヤーロープのソケッティング方法
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