JP3878287B2 - 可逆性感熱記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、温度による感熱媒体の可逆的な透明度の変化を利用して、画像の記録と消去を繰り返し行なう可逆性感熱記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、任意に画像を形成し、任意にその画像を消去することが可能な可逆性感熱記録媒体が注目されている。その代表的な例として、特開昭54−154198号公報、特開昭55−154198号公報等に記載されているポリエステル、ポリ塩化ビニル、又は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等のマトリックス材に有機低分子物質を分散した、温度に依存して透明度が可逆的に変化する記録材料が知られている。しかし、この記録材料からなる可逆性感熱記録媒体は、サーマルヘッド等の発熱体による画像の記録と消去の繰り返しにより、加熱した画像部分の濃度が初期の濃度より低下し、画像全体のコントラストが低下するという欠点を有している。
【0003】
上記欠点を解決するため、特開昭62−154547号公報において、可逆性感熱記録層に用いる樹脂母材の平均重度及び塩化ビニルの繰り返し単位を規定する(特に平均重合度を上げる)ことにより、樹脂母材の耐熱性を向上させ、耐久性を向上させた可逆性感熱記録媒体が提案されている。
また、特開平5−85045号公報においては、可逆性感熱記録層の樹脂母材として、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体にイソシアネートを添加し、熱硬化させた熱硬化性樹脂を用いることにより、樹脂母材の耐熱性を向上させ、耐久性を向上させた可逆性感熱記録媒体が提案されている。
【0004】
しかし、これらの可逆性感熱記録媒体において、白濁画像の消去が可能な消去エネルギーの範囲幅が狭いため、サーマルヘッドによる短時間の熱エネルギーでは画像の完全な消去が困難になる。また、白濁した画像を長時間保存すると、消去特性が変動して初期の消去特性に対応した消去条件では画像を完全に消去できなくなる。更に、その保存の環境温度が高温であるほど、画像の消去特性は低下するという欠点がある。
【0005】
また、従来の可逆性記録媒体においては、サーマルヘッドなどの加熱体により加熱して画像形成する際に、加熱体と記録層との摩擦力が大きいためにスティッキングしたり、加熱体の熱及び圧力により表面が変形しやすいために表面にサーマルヘッドのドット密度に相当した周期的な凹凸ができ、画像形成と消去を繰り返すうちにその変形量が増大して、鮮明な画像を形成することは困難であった。
【0006】
この問題を解決するために、特開昭62−55650号公報にはシリコン樹脂やシリコンゴムなどからなるオーバーコート層を設けることが、また特開昭63−221087号公報にはポリシロキサングラフトポリマーからなるオーバーコート層を設けることが、更に特開平2−86491号公報にはシリコン系グラフトポリマーを主成分とする耐熱性潤滑被覆層を設けることが、更に特開平8−11439号公報にはポリシロキサン−ポリウレア−ポリアミドマルチブロック共重合体からなるオーバーコート層を設けることが、更に特開平8−11440号公報にはシリコンを含有したイミノヒダントイン系重合体からなるオーバーコート層を設けて表面の摩擦係数を小さくすることが、それぞれ開示されている。
【0007】
しかし、これらのオーバーコート層上に、オフセット印刷やグラビア印刷により印刷インクを良好に転移させ、耐スクラッチ性や耐セロテープ剥離性に優れた印刷適性を実現することは困難であった。また、特開昭62−55650号公報に記載の技術は、オーバーコート層が感熱記録層との接着性が不十分なため、繰り返しの機械的作用により剥がれ、画像が劣化する問題が発生した。さらに、この接着性を改善するために、特開平1−133781号公報において可逆性感熱記録層上に樹脂を主成分とする中間層と耐熱性樹脂を主成分とするオーバーコート層を順次設けた可逆性感熱記録媒体が提案されている。中間層によって接着性は改善され、耐熱性樹脂からなるオーバーコート層によって記録媒体表面の変形は小さくなる。しかし、印字と消去を何回も繰り返すとスティッキングにより傷が発生したり、オーバーコート層の一部が剥離してサーマルヘッドに付着し、その剥離物が蓄積するとサーマルヘッドからの熱伝導が低下して画像形成ができなくなる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記従来技術における問題点を改善し、サーマルヘッドによる消去が可能で、白濁した画像を長時間及び/又は高温下で保存しても初期の消去特性に対応した消去条件で画像の消去が可能な、画像の形成と消去の繰り返し耐久性とコントラストに優れた可逆性感熱記録媒体、また、サーマルヘッド等の加熱体により画像形成と消去を繰り返し行なってもサーマルヘッドのドット密度に相当した周期的な表面の凹凸の発生を防止できると共に、スティッキング、傷の発生、サーマルヘッドの汚れ、それらの現象によって起こる画像の劣化及び熱感度の低下のない可逆性感熱記録媒体、更に印刷適性に優れた可逆性感熱記録媒体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は本発明の(1)「支持体及び主成分として有機低分子化合物を樹脂マトリックス中に分散し、透明度が温度変化に依存して可逆的に変化する該支持体上に設けた感熱記録層とからなる可逆性感熱記録媒体において、該有機低分子化合物の融点が70〜135℃であり、かつ該樹脂マトリックスが、光重合性モノマーからなる架橋剤と、該架橋剤と共有結合形成可能な官能基を有するポリマーを含有する硬化性樹脂組成物を、少なくとも紫外線又は電子線のいずれかで硬化した樹脂からなり、また、該記録層のエンタルピーの時間変化率が2〜20℃/minの昇温過程において69℃以下及び135〜200℃の温度範囲で0であり、更に該記録層の動的弾性率が1〜10℃/minの昇温過程において135〜200℃の温度範囲で10Pa以上であることを特徴とする可逆性感熱記録媒体」、(2)「前記記録層上に125μm×125μmの表面積あたり3個以上の高さ0.05μm以上1.5μm以下の凸部及びH以上8H以下の鉛筆硬度を有したオーバーコート層を設けることを特徴とする前記(1)項に記載の可逆性感熱記録媒体」、(3)「前記有機低分子化合物が融点の異なる少なくとも2種類以上の化合物からなることを特徴とする前記(1)乃至(2)項の何れか1に記載の可逆性感熱記録媒体」、(4)「前記融点の異なる少なくとも2種類以上の有機低分子化合物において、最大融点と最低融点との差が45℃以上であることを特徴とする前記(1)乃至(3)項のいずれか1に記載の可逆性感熱記録媒体」、(5)「前記有機低分子化合物と前記樹脂マトリックスとの重量比が、3:1〜1:3であることを特徴とする前記(1)乃至(4)項の何れか1に記載の可逆性感熱記録媒体」、(6)「前記オーバーコートが20dyn/cm以上の臨界表面張力を有することを特徴とする前記(2)乃至(5)項のいずれか1に記載の可逆性感熱記録媒体」、(7)「前記オーバーコート層上の印刷層上に印刷保護層を有し、該印刷保護層が125μm×125μmの表面積あたり3個以上の高さ0.05μm以上1.5μm以下の凸部及びH以上8H以下の鉛筆硬度を有することを特徴とする前記(2)乃至(6)項のいずれか1に記載の可逆性感熱記録媒体」によって達成される。
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、代表的な熱の作用によって透明度が変化する可逆性感熱記録媒体の、温度と透明度の関係を示したものである。樹脂マトリックスとこれに分散した有機低分子化合物とを主成分とする可逆性感熱記録層は、例えばT0以下の温度では白濁不透明状態にある感熱層を加熱すると、温度T1から徐々に透明になりはじめ、温度T2〜T3で最大透明状態になり、この状態からT0以下の温度に戻しても透明状態を維持する。また、温度T4まで加熱すると最大透明状態と最大不透明状態の中間状態になる。次に、温度T4以上からT0以下の温度まで冷却すると透明状態にならずに再び最初の白濁不透明状態に戻る。
このように、本発明の支持体と該支持体上に設けた、主成分として有機低分子化合物を樹脂マトリックス中に分散し透明度が温度変化に依存して可逆的に変化する感熱記録層とからなる可逆性感熱記録媒体において、不透明状態温度T0、透明状態開始温度T1、最大透明状態下限温度T2、最大透明状態上限温度T3、及び半透明化温度T4は、その熱可逆的な特性を決定する。
【0011】
本発明の目的である白濁した画像の長時間及び/又は高温下での保存後の消去性と、画像の形成と消去の繰り返し耐久性は、それぞれの特性温度T0、T1、T2、T3、T4と透明度との関係が画像の形成と消去の繰り返しにより変化しない、又はその変化量がより少ないことを意味する。
【0012】
すなわち、支持体と該支持体上に設けた、主成分として有機低分子化合物を樹脂マトリックス中に分散し透明度が温度変化に依存して可逆的に変化する感熱記録層とからなる可逆性感熱記録媒体において、該樹脂マトリックスとして少なくとも熱、紫外線又は電子線で硬化した樹脂を用い、また、該記録層のエンタルピーの時間変化率を一定の昇温過程において69℃以下及び135〜200℃の温度範囲で0とし、更に該記録層の動的弾性率を135〜200℃の温度範囲で106Pa以上とすることにより、それぞれの特性温度T0、T1、T2、T3、T4と透明度との関係が画像の形成と消去の繰り返しにより変化しない、又はその変化量がより少ない可逆性感熱記録媒体が提供される。なお、本発明のエンタルピーの時間変化率が0とは特定温度の範囲内で実質的にエンタルピー変化がないことを示す。
【0013】
ここで、エンタルピーの時間変化率は、一定の昇温速度下の示差走査熱量測定により決定される。本発明において該一定の昇温速度は2〜20℃/minであり、好ましくは5〜15℃/min、より好ましくは10℃/minである。動的弾性率は動的熱機械測定により一定の昇温速度下で試験片に種々の形の振動を与えて決定される。本発明において該一定の昇温速度は1〜10℃/minであり、好ましくは2〜5℃/min、より好ましくは2〜3℃/minである。振動の様式は圧縮や引っ張りによる縦振動、ねじれ振動、及びたわみ振動等の自由減衰振動、又は圧縮、引っ張り、ねじれ又は曲げ等の外力が作用した強制振動等である。強制振動の周波数は0.1〜20Hz、好ましくは0.5〜10Hz、より好ましくは1〜2Hzである。
この発明に関する記録層のエンタルピーの時間変化率と動的弾性率は、その記録層を構成する有機低分子物質と樹脂マトリックス材料、記録層形成時の塗工溶液の溶媒、それらの組合せ、及び記録層形成時の乾燥温度、時間及び紫外線照射量等により依存する。よって、望ましいエンタルピーの時間変化率と動的弾性率を得るためには、それらの依存因子を適宜変化させる。
【0014】
低分子有機化合物としては、70〜135℃の融点を有する低分子有機化合物を使用する。このような低分子有機化合物としてはアルカノール、アルカンジオール;ハロゲン化アルカノール、ハロゲン化アルカンジオール;アルキルアミン;アルカン、アルケン、アルキン;ハロゲン化アルカン、ハロゲン化アルケン、ハロゲン化アルキン;シクロアルカン、シクロアルケン、シクロアルキン;飽和又は不飽和モノ又はジカルボン酸又はこれらのエステル、アミド又は塩;飽和又は不飽和ハロゲン化脂肪酸又はこれらのエステル、アミド又は塩;アリルカルボン酸又はこれらのエステル、アミド又は塩;ハロゲン化アリルカルボン酸又はこれらのエステル、アミド又は塩;チオアルコール;チオカルボン酸又はこれらのエステル、アミド又は塩;チオアルコールのカルボン酸エステルなどが挙げられる。これらの化合物の炭素数は10〜60、好ましくは10〜38、特に10〜30が好ましい。エステル中のアルコール基部分は飽和していてもよく、飽和していなくてもよく、またハロゲン置換されていてもよい。いずれにしても低分子有機化合物は分子中に少なくとも1個の酸素、窒素、硫黄又はハロゲンを含有する基、例えば−OH−、−COOH、−CONH、−COOR、−NH−、−S−、−S−S−又は−O−などを有する化合物であることが好ましい。
【0015】
さらに具体的には、これらの化合物としてはラウリン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、エイコサン酸、トリコサン酸、リグノセリン酸、ペンタコサン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸及びオレイン酸などの高級脂肪酸、ステアリン酸メチル、ステアリン酸テトラデシル、ステアリン酸オクタデシル、ラウリン酸オクタデシル、パルミチン酸テトラデシル及びベヘン酸ドデシルなどの高級脂肪酸のエステルが挙げられ、また、次のようなエーテル、チオエーテルなどが挙げられる。
【0016】
【化1】
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【0017】
【化2】
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【0018】
【化3】
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【0019】
【化4】
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【0020】
【化5】
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【0021】
【化6】
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【0022】
【化7】
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【0023】
【化8】
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【0024】
【化9】
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【0025】
【化10】
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【0026】
【化11】
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【0027】
【化12】
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【0028】
【化13】
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【0029】
記録層の樹脂マトリックスとして、硬化した樹脂は、架橋剤と反応して共有結合を形成することが可能な官能基を有したポリマー及び/又はポリマー性化合物、架橋剤及び任意の架橋促進剤と触媒からなる硬化性樹脂組成物から形成する。架橋剤と反応して共有結合を形成することが可能な官能基を有したポリマー及び/又はポリマー性化合物としては、ポリビニルアルキルカルバメート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリウレア、ポリウレタン、ウレタンプレポリマー、カルボキシ変性ポリウレタン、アミノ変性ポリウレタン、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエーテルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、メラミン、メチロール化メラミン、アルキド樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、フラン樹脂、レゾシノール樹脂又はエポキシ樹脂などが挙げられるが、本発明においては、後記する二官能性や三官能性以上の光重合性モノマーと、共有結合形成可能な官能基を有するものを用いる。
架橋促進剤と触媒は、架橋剤と反応して共有結合を形成することが可能な官能基を有したポリマー及び/又はポリマー性化合物と架橋剤の組合せに応じて適宜選択して使用する。
【0030】
また、記録層の樹脂マトリックスとして、紫外線で硬化した樹脂は、光重合性モノマー(反応性希釈剤)、光重合性オリゴマー及び光開始剤からなる紫外線硬化性樹脂組成物から形成する。光重合性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの単官能モノマー、1、3−ブタンジオールジアクリレート、1、4−ブタンジオールジアクリレート、1、6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート又はヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレートなどの二官能性モノマー、又はジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールトリアクリレート又はトリメチロールプロパントリアクリレートなどの三官能以上のモノマーが挙げられる。
【0031】
光重合性オリゴマーとしては、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコンアクリレート、アルキッドアクリレート又はメラミンアクリレートなどが挙げられる。
【0032】
光開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル−2−)モルホリノプロパン−1、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−クロロチオキサントン又は2,4−ジエチルチオキサントンなどが挙げられる。
【0033】
さらに、記録層の樹脂マトリックスとして、紫外線で硬化した樹脂は、不飽和プレポリマー、オリゴマー及び反応性希釈剤(モノマー)からなる電子線硬化性樹脂組成物から形成する。不飽和プレポリマー及びオリゴマーとしては、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、不飽和アクリル樹脂、不飽和シリコーン、又は不飽和フッ素樹脂などが挙げられる。
【0034】
反応性希釈剤としては、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレート、又はペンタエリスリトールアクリレートなどが挙げられる。
【0035】
感熱層の厚みは1〜30μmが好ましく、2〜20μmが更に好ましい。感熱層が厚すぎると熱感度が低下して均一に透明化することが困難となる。また、感熱層が薄すぎると白濁度が低下してコントラストが低くなる。更に、感熱層中の低分子有機化合物の量を増加させて白濁度を増すことができる。
感熱層には以上の成分の他に、透明画像の形成を容易にするために高融点溶媒及び界面活性剤等の添加剤を添加することができる。
【0036】
高融点溶剤として、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、オレイン酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジオクチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ジエチレンジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラート、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルなどが挙げられる。
【0037】
界面活性剤及びその他の添加剤として、多価アルコール高級脂肪酸エステル;多価アルコール高級アルキルエーテル;多価アルコール高級脂肪酸エステル、高級アルコール、高級アルキルフェノール、高級脂肪酸高級アルキルアミン、高級脂肪酸アミド、油脂又はポリプロピレングリコールの低級オレフィンオキサイド付加物;アセチレングリコール;高級アルキルベンゼンスルホン酸のNa、Ba、Ca又はMg塩;高級脂肪酸、芳香族カルボン酸、高級脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸、硫酸モノエステル又はリン酸モノ又はジエステルのBa、Ca又はMg塩;低度硫酸化油;ポリ長鎖アルキルアクリレート;アクリル系オリゴマー;ポリ長鎖アルキルメタクリレート;長鎖アルキルメタクリレート−アミン含有モノマー共重合体;スチレン−無水マレイン酸共重合体及びオレフィン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
【0038】
本発明において、可逆性感熱記録媒体の支持体としては前記したようにプラスチックフィルム、ガラス板及び金属板などが用いられる。
【0039】
また、本発明の可逆性感熱記録媒体は、前記記録層上に125μm×125μmの表面積あたり3個以上の高さ0.05μm以上の凸部及び2H以上の鉛筆硬度を有したオーバーコート層を設けることを特徴とする。
現在、主に市販されているサーマルヘッドのドット密度は8dot/mm2であり、1ドット当たりの大きさに換算すると125μm×125μmである。したがって、1ドット当たり3個以上の高さ0.05μm以上の凸部及び2H以上の鉛筆硬度を有したオーバーコート層を感熱記録層上に設けることにより、画像形成と消去を繰り返し行なってもサーマルヘッドのドット密度に相当した周期的な表面の凹凸のない可逆性感熱記録媒体が提供されると共に、スティッキング、傷の発生、剥がれ、剥がれによるサーマルヘッドの汚れ、それらの現象によって起こる画像の劣化、及び熱感度の低下のない可逆性感熱記録媒体が提供される。
【0040】
すなわち、オーバーコート層は125μm×125μmの表面積あたり3個以上の高さ0.05μm以上の凸部及び2H以上の鉛筆硬度を有することにより、サーマルヘッドのドット密度に相当した周期的な表面の凹凸の発生を防止する効果を発揮する。それらの凸部の個数、凸部の高さ及び鉛筆硬度に関する限定された条件は、サーマルヘッドのドット密度に相当した周期的な表面の凹凸の発生を防止するために全て満たされていなくてはならない。
【0041】
このオーバーコート層の表面に設けた凸部は、スティッキング及び傷の発生を防止する効果をも発揮する。すなわちオーバーコート層の表面に凸部を設けることによって、その表面とサーマルヘッド表面との接触面積が、平坦なオーバーコート層の場合より小さくなり、それによって界面に発生する摩擦力が小さくなり、スティッキング及び傷の発生を防止することができる。その効果は凸部の単位表面積当たりの個数と高さに依存する。よって、好ましい凸部の個数は125μm×125μmの表面積あたり3〜900個である。2個以下であるとサーマルヘッド表面との接触面積が平坦なオーバーコート層の場合に近似した大きさになり、サーマルヘッドのドット密度に相当した周期的な表面の凹凸、スティッキング及び傷の発生の防止効果が発揮されず、また、901個以上であると透明であるべき部分の透明度が低下して画像が不鮮明になる。また、好ましい凸部の高さは0.05〜1.5μmであり、0.05μmより小さいとサーマルヘッド表面との接触面積が平坦なオーバーコート層の場合に近似した大きさになり、スティッキング及び傷の発生の防止効果が発揮されず、また、1.5μmより大きくなるとサーマルヘッド表面との接触面積が小さくなり過ぎ、熱の伝導が低下して画像形成と消去を通常の印加エネルギー又は温度で行なうことが不可能となる。凸部の個数と高さの組合せは、上記の観点から高さが高い場合は個数を少なくし、高さが低い場合は個数を多くすることが好ましい。
【0042】
また、オーバーコート層は1H以上の鉛筆硬度を有することにより、傷の発生、剥がれ及び剥がれによるサーマルヘッドの汚れを防止する効果をも発揮する。すなわち2H以上の鉛筆硬度を有したオーバーコート層を設けた可逆性感熱記録媒体は、サーマルヘッドの熱、サーマルヘッドとの摩擦力及びサーマルヘッドによる圧力によって変形及び破壊されることなく500回以上の画像形成と消去を繰り返して使用できる。オーバーコート層の鉛筆硬度が1H以下であると、数回から数十回の印字消去によりサーマルヘッドのドット密度に相当した周期的な表面の凹凸や傷が発生したり、オーバーコート層の一部が剥離して剥離物が蓄積し、更にサーマルヘッドからの熱伝導が低下し、画像形成ができなくなる。また、9H以上であると50〜300回の印字消去によりオーバーコート層が割れ、記録層に形成された画像が不明瞭となる。それらの傾向は、より硬度が低いほど少ない印字消去の繰り返しにより周期的な表面の凹凸や傷が発生したり、剥離し易くなり、より硬度が高い程少ない印字消去の繰り返しにより割れが発生し易くなる。よって好ましいオーバーコート層の鉛筆硬度は2H〜8Hである。また、オーバーコート層の厚さは、凸部の高さを含めて0.1〜10.0μmである。好ましくは1.0〜6.0μmである。
【0043】
また、本発明の可逆性感熱記録媒体は、前記オーバーコート層上に印刷層及び印刷保護層を設けたことを特徴とする。記録媒体の使用目的に応じて、印刷層はオーバーコート層上の少なくとも一部分に設け、印刷保護層は少なくとも印刷層上の一部分に設ける。また、印刷保護層は印刷層のないオーバーコート層上に設けることも可能である。印刷層は公知のオフセット印刷、グラビア印刷及びスクリーン印刷等によって形成する。また、印刷保護層は、印刷層と同様に公知の方法により形成する。
【0044】
また、本発明の可逆性感熱記録媒体は、前記有機低分子化合物が融点の異なる少なくとも2種類の化合物からなることを特徴とする。すなわち、有機低分子化合物として融点の異なる少なくとも2種類の化合物を用いることにより、図1に示した最大透明状態下限温度Tから最大透明状態上限温度Tまでの温度幅が広がり、本発明の目的の一つであるサーマルヘッドによる消去が可能となる。
有機低分子化合物としては、前記した有機低分子化合物以外に、70℃未満の融点を有した有機低分子化合物、及び135℃以上の融点を有した有機低分子化合物を用いることができる。ただし、前記の樹脂マトリックス中にそれらの有機低分子化合物を分散し、紫外線又は電子線で硬化して、135〜200℃の温度範囲で10Pa以上の動的粘弾性を有した記録層を形成したとき、一定昇温過程における該記録層のエンタルピーの時間変化率が70℃未満及び135〜200℃の温度範囲で0となるように、少なくとも2種類の有機低分子化合物は適宜組み合わせて使用する。
【0045】
また、本発明の可逆性感熱記録媒体は、前記融点の異なる少なくとも2種類の有機低分子化合物が、最大融点と最低融点との差が45℃以上であることを特徴とする。すなわち、最大融点と最低融点との差が45℃以上である少なくとも2種類以上の有機低分子化合物を用いることにより、図1に示した最大透明状態下限温度T2から最大透明状態上限温度T3までの温度幅が更に広がり、本発明の目的の一つであるサーマルヘッドによる消去が可能となる。
【0046】
また、本発明の可逆性感熱記録媒体は、前記有機低分子化合物と前記樹脂マトリックスとの重量比が3:1〜1:3であることを特徴とする。すなわち、有機低分子化合物と樹脂マトリックスとの重量比を3:1〜1:3にすることによりコントラストに優れた可逆性感熱記録媒体が提供される。樹脂マトリックスの比率が3:1以下になると、有機低分子化合物を樹脂母材中に保持した膜を形成することが困難となり、135〜200℃の温度範囲で1×106Pa以上の動的弾性率が得られない。また、樹脂マトリックスの比率が1:3以上になると、低分子有機化合物の量が少ないために白濁化が困難になる。
【0047】
また、本発明の可逆性感熱記録媒体は、前記オーバーコートが20dyn/cm以上の臨界表面張力を有することを特徴とする。すなわち、20dyn/cm以上の臨界表面張力を有した保護層を中間層上に設けることにより、オフセット印刷インキやグラビア印刷インキ等のインキ転移性、及び転移した印刷インキの耐スクラッチ性と耐セロテープ剥離性に優れた可逆性記録媒体が提供される。臨界表面張力は3水準以上のぬれ指数標準液(和光純薬工業社製)を用いて、記録層上に形成した保護層の接触角を一定環境下で測定し、ぬれ指数標準液の表面張力と接触角の関係をZismanプロットし、接触角=0°に補外したときの表面張力の値である。この臨界表面張力が20dyn/cmより小さいと、インキが保護層に転移したとしても、引っ掻きやセロテープの粘着力により保護層からインキが部分的に剥がれる。また、臨界表面張力が約15dyn/cmより小さくなると、インキの転移性が低下し、引っ掻きやセロテープの粘着力により保護層からインキが容易に剥がれる。更に約12dyn/cm以下になるとインキはほとんど保護層に転移しなくなる。
【0048】
また、本発明の可逆性感熱記録媒体は、前記印刷保護層が125μm×125μmの表面積あたり3個以上の高さ0.05μm以上の凸部及び1H以上の鉛筆硬度を有することを特徴とする。すなわち、125μm×125μmの表面積あたり3個以上の高さ0.05μm以上の凸部及び1H以上の鉛筆硬度を有する印刷保護層を前記印刷層及び/又はオーバーコート層上に設けることにより、画像形成と消去を繰り返し行なってもサーマルヘッドのドット密度に相当した周期的な表面の凹凸のない可逆性感熱記録媒体が提供されると共に、スティッキング、傷の発生、剥がれ、剥がれによるサーマルヘッドの汚れ、それらの現象によって起こる画像の劣化、及び熱感度の低下のない可逆性感熱記録媒体が提供される。
【0049】
印刷保護層は125μm×125μmの表面積あたり3個以上の高さ0.05μm以上の凸部及び2H以上の鉛筆硬度を有することにより、サーマルヘッドのドット密度に相当した周期的な表面の凹凸の発生を防止する効果を発揮する。それらの凸部の個数、凸部の高さ及び鉛筆硬度に関する限定された条件は、サーマルヘッドのドット密度に相当した周期的な表面の凹凸の発生を防止するために全て満たされていなくてはならない。
【0050】
この印刷保護層の表面に設けた凸部は、スティッキング及び傷の発生を防止する効果をも発揮する。すなわち、オーバーコート層の表面に凸部を設けることによって、その表面とサーマルヘッド表面との接触面積が平坦なオーバーコート層の場合よりも小さくなり、それによって界面に発生する摩擦力が小さくなり、スティッキング及び傷の発生を防止することができる。その効果は凸部の単位表面積当たりの個数と高さに依存する。よって好ましい凸部の個数は125μm×125μmの表面積あたり3〜900個である。2個以下であるとサーマルヘッド表面との接触面積が平坦な印刷保護層の場合に近似した大きさになり、サーマルヘッドのドット密度に相当した周期的な表面の凹凸、スティッキング及び傷の発生の防止効果が発揮されず、また、901個以上であると透明であるべき部分の透明度が低下して画像が不鮮明になる。また、好ましい凸部の高さは0.05〜1.5μmであり、0.05μmより小さいとサーマルヘッド表面との接触面積が平坦な印刷保護層の場合に近似した大きさになり、スティッキング及び傷の発生の防止効果が発揮されず、また、1.5μmより大きくなるとサーマルヘッドとの接触面積が小さくなり過ぎ、熱の伝導が低下して画像形成と消去を通常の印加エネルギー又は温度で行なうことが不可能となる。凸部の個数と高さの組合せは、上記の観点から高さが高い場合は個数を少なくし、高さが低い場合は個数を多くすることが好ましい。また、印刷保護層は1H以上の鉛筆硬度を有することにより、傷の発生、剥がれ及び剥がれによるサーマルヘッドの汚れを防止する効果をも発揮する。すなわち2H以上の鉛筆硬度を有した印刷保護層を設けた可逆性感熱記録媒体は、サーマルヘッドの熱、サーマルヘッドとの摩擦力及びサーマルヘッドによる圧力によって変形及び破壊されることなく500回以上の画像形成と消去を繰り返して使用できる。印刷保護層の鉛筆硬度が1H以下であると、数回から数十回の印字消去によりサーマルヘッドのドット密度に相当した周期的な表面の凹凸や傷が発生したり、印刷保護層の一部が剥離して剥離物が蓄積し、更にサーマルヘッドからの熱伝導が低下し、画像形成ができなくなる。また、9H以上であると50〜300回の印字消去により印刷保護層が割れ、記録層に形成された画像が不明瞭となる。それらの傾向は、より硬度が低いほど少ない印字消去の繰り返しにより周期的な表面の凹凸や傷が発生したり、剥離し易くなり、より硬度が高いほど少ない印字消去の繰り返しにより割れが発生し易くなる。よって好ましい印刷保護層の鉛筆硬度は2H〜8Hである。また、印刷保護層の厚さは、凸部の高さを含めて0.1〜10.0μmである。好ましくは0.5〜3.0μmである。
【0051】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、ここでの部及び%はいずれも重量基準である。
実施例1
100μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、
γ−Fe23 10部
塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 10部
(UCC社製:VAGH)
ポリイソシアネート 1.3部
(日本ポリウレタン社製:コロネートL)
メチルエチルケトン 40部
トルエン 40.7部
からなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥して10μm厚の磁気層を設けた。この磁気層上に、
アクリル系紫外線硬化性樹脂 10部
(大日本インキ化学工業社製:ユニディックC−164)
トルエン 4部
からなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥した後、100mJ/cm2の紫外線を照射して、約1.5μm厚の平滑層を設けた。この平滑層上にAlを真空蒸着して、約400Å厚の光反射層を設けた。この光反射層上に、
塩化ビニル−酢酸ビニル−リン酸エステル共重合体 10部
(電気化学工業社製:デンカビニール#100P)
テトラヒドロフラン 90部
からなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥して10μm厚の接着層を設けた。この接着層上に、
リグノセリン酸 9部
塩化ビニル−酢酸ビニル− 30部
メタクリル変性ビニルアルコール共重合体
ネオペンチルグリコールジアクリレート 6部
テトラヒドロフラン 180部
トルエン 60部
からなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥した後、200mJ/cm2の紫外線を照射して、約10μm厚の記録層を設けた。この記録層上に、
紫外線硬化性ウレタンアクリレート 100部
(荒川化学社製:Bs575CS−B)
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 2部
イソプロパノール 200部
からなる溶液をワイヤーバーで塗布し、90℃で2分間乾燥した後、450mJ/cm2の紫外線を照射して、約5μm厚のオーバーコート層を設けて、可逆性感熱記録媒体を得た。
【0052】
実施例2
記録層の塗工溶液として、
ベヘン酸 4.5部
リグノセリン酸 4.5部
塩化ビニル−酢酸ビニル− 30部
メタクリル変性ビニルアルコール共重合体
ネオペンチルグリコールジアクリレート 6部
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 0.8部
テトラヒドロフラン 200部
トルエン 40部
からなる溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を得た。
【0053】
実施例3
記録層の塗工溶液として、
エイコサン二酸 6部
リグノセリン酸 3部
塩化ビニル−酢酸ビニル− 30部
メタクリル変性ビニルアルコール共重合体
ネオペンチルグリコールジアクリレート 6部
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 0.8部
テトラヒドロフラン 180部
トルエン 60部
からなる溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を得た。
【0054】
実施例4
記録層の塗工溶液として、
エイコサン二酸 6部
ベヘン酸 3部
塩化ビニル−酢酸ビニル− 30部
メタクリル変性ビニルアルコール共重合体
ネオペンチルグリコールジアクリレート 6部
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 0.8部
テトラヒドロフラン 180部
トルエン 60部
からなる溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を得た。
【0055】
実施例5
記録層の塗工溶液として、
エイコサン二酸 7.5部
ベヘン酸 4.5部
塩化ビニル−酢酸ビニル− 30部
メタクリル変性ビニルアルコール共重合体
ネオペンチルグリコールジアクリレート 6部
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 0.8部
テトラヒドロフラン 180部
トルエン 60部
からなる溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を得た。
【0056】
実施例6
実施例5と同様にして記録層までの各層を設けた後、得られた記録層上に、
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 20部
(日本化薬社製:AYARAD DPHA)
ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチル 80部
グリコールジアクリレート
(日本化薬社製:AYARAD MANDA)
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 5部
酢酸ブチル 105部
からなる溶液をワイヤーバーで塗布し、90℃で2分間乾燥した後、450mJ/cm2の紫外線を照射して、約5μm厚の保護層を設け、本発明の可逆性感熱記録媒体を作成した。46dyn/cm、50dyn/cm及び54dyn/cmのぬれ指数標準液(和光純薬工業社製)を用いて、記録層上に形成した保護層の接触角を25℃で測定し、ぬれ指数標準液の表面張力と接触角の関係をZismanプロットした。得られた保護層の臨界表面張力は22dyn/cmであった。
【0057】
実施例7
オーバーコート層の塗工液として
紫外線硬化性ウレタンアクリレート 100部
(荒川化学社製:Bs575CS−B)
炭酸カルシウム(荒川化学社製:Brilliant−15) 0.8部
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 2部
イソプロパノール 200部
からなる溶液を用いる以外は、実施例5と同様にして可逆性感熱記録媒体を得た。オーバーコート層の厚さは凸部の高さを含めて約5μmであった。オーバーコート層の鉛筆硬度は4Hであり、125μm×125μmの表面積当たりの凸部の個数とその高さは、それぞれ11〜50個と0.51〜1.50μmであった。
【0058】
実施例8
実施例5で得られた可逆性感熱記録媒体の一部分のオーバーコート層上にYMCのカラーオフセット印刷により、ポリエステル樹脂10部、アクリルエステルオリゴマーとモノマーの混合物35部、光開始剤8部、着色顔料45部及びワックス2部からなる、約3〜8μm厚の印刷層を設けた。この印刷層上に、
紫外線硬化性ウレタンアクリレート 100部
(荒川化学社製:Bs575CS−B)
二酸化ケイ素(水澤化学社製:P−526U) 1.3部
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 2部
イソプロパノール 200部
からなる分散液をワイヤーバーで塗工し、90℃で2分間乾燥した後、450mJ/cm2の紫外線を照射して、約3μm厚の印刷保護層を設けて、可逆性感熱記録媒体を得た。保護層の鉛筆硬度は4Hであり、125μm×125μmの表面積当たりの凸部の個数とその高さは、それぞれ51〜100個と0.11〜0.50μmであった。
【0059】
比較例1
記録層の塗工溶液として、
エイコサン二酸 7.5部
ベヘン酸 4.5部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 30部
ネオペンチルグリコールジアクリレート 6部
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 0.8部
テトラヒドロフラン 180部
トルエン 60部
からなる溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を得た。
【0060】
比較用実施例2
実施例1と同様にして、記録層までの各層を設けた後、得られた記録層上にオーバーコート層の塗工溶液として、
トリメチロールプロパントリアクリレート 20部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 20部
エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート 40部
シロキサン−1,2−ジカルボン酸−2−ヒドロキシプロパノールジエステル
15部
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 5部
からなる溶液をワイヤーバーで塗工し、90℃で1分間乾燥した後、約800mJ/cmの紫外線を照射して、約5μm厚の保護層を設け、本発明の可逆性感熱記録媒体を作成した。46dyn/cm、50dyn/cm及び54dyn/cmのぬれ指数標準液(和光純薬工業社製)を用いて、記録層上に形成した保護層の接触角を25℃で測定し、ぬれ指数標準液の表面張力と接触角の関係をZismanプロットした。得られた保護層の臨界表面張力は11dyn/cmであった。
【0061】
比較用実施例3
実施例1と同様にして、記録層までの各層を設けた後、得られた記録層上にオーバーコート層の塗工溶液として、
紫外線硬化性ポリエステル系樹脂 Bs550B(荒川化学社製) 100部
炭酸カルシウム Brilliant−15(白石工業社製) 0.8部
イソプロパノール 100部
からなる分散溶液をワイヤーバーで塗布し、90℃で2分間乾燥した後、約450mJ/cmの紫外線を照射して、凸部の高さを含めて約4μm厚のオーバーコート層を設け、本発明の可逆性感熱記録媒体を作成した。オーバーコート層の鉛筆硬度はFであり、125μm×125μmの表面積当たりの凸部の個数とその高さは、それぞれ11〜50個と0.51〜1.50μmであった。
【0062】
比較用実施例4
実施例5で得られた可逆性感熱記録媒体の一部分のオーバーコート層上にYMCのカラーオフセット印刷により、ポリエステル樹脂10部、アクリルエステルオリゴマーとモノマーの混合物35部、光開始剤8部、着色顔料45部及びワックス2部からなる、約3〜8μm厚の印刷層を設けた。この印刷層上に、ポリエステル樹脂10部、アクリルエステルオリゴマーとモノマーの混合物35部、光開始剤8部、及びワックス2部からなる、約2μm厚の印刷保護層を設けて、可逆性感熱記録媒体を得た。
【0063】
実施例9
実施例1〜8と比較例1で作製した可逆性感熱記録媒体について、沖電気社製の印字消去装置を用いて、0.30mJ/dotの印字エネルギーで格子パターンの画像を形成した後、約105℃で消去し、この印字と消去を500回繰り返した。また、記録層のみを単離し、マックサイエンス社製のDSCを用いて、空気中、10℃/minの昇温速度でエンタルピーの時間変化変化率を測定した。更にセイコウ電子社製のDMSを用いて、空気中、2℃/minの昇温速度、1Hzの周波数で、単離した記録層の動的弾性率を測定した。
【0064】
画像の形成と消去の繰り返し耐久性は、同じ格子部分の最初と500回後の画像濃度(白濁濃度)と消去濃度(透明濃度)とを測定し、その変化量により評価した。また、長時間及び/又は高温下での保存後の消去性は、沖電気社製の印字消去装置を用いて、0.30mJ/dotの印字エネルギーで格子パターンの画像を形成した後、50℃で1週間又は70℃で24時間保存し、約105℃で消去して、最初と保存後の同じ格子部分の消去濃度を測定し評価した。結果を表1にまとめた。また、実施例5のDSCとDMSの測定結果をそれぞれ図2、図3に示し、比較例1のDSCの測定結果を図4に示した。DMSの測定では、約80℃まで昇温した時点で動的弾性率が測定装置の測定下限である約105Paになり、その温度以上での測定は不能となった。
【0065】
【表1】
Figure 0003878287
【0066】
実施例10
また、実施例7、実施例8と比較用実施例3で作製した可逆性感熱記録媒体について、100回毎にオーバーコート層又は印刷保護層表面のサーマルヘッドの大きさに相当した周期的な凹凸、及びスティッキング、割れ、剥がれ及びヘッド汚れの発生を黙視にて観察し、以下の基準で判定した。
【0067】
表面の周期的な凹凸
A:全く発生しない
B:わずかに発生する
C:はっきりと確認できる
スティッキング
G:発生しない
NG:発生する
割れと剥がれ
G:発生しない
NG:発生する
ヘッドの汚れ
G:なし
NG:あり
【0068】
【表2】
Figure 0003878287
【0069】
実施例11
また、実施例6と比較用実施例2で作製した可逆性感熱記録媒体について、保護層表面に白色インキをスクリーン印刷し、インキ転移性、耐スクラッチ性及び耐セロテープ剥離性を評価した。インキ転移性は、インキの保護層への転移の度合いを黙視により以下のように判断した。耐スクラッチ性はシャープペンの先端で転写したインキを引っ掻いて、インキが剥がれるかどうかを以下のように判断した。耐セロテープ剥離性は、セロハンテープを転移したインキ面に貼り付けて、剥がしたときに、インキが保護層から剥がれるかどうかを以下のように判断した。
【0070】
インキ転移性
○:転移する
△:一部転移する
×:転移しない
耐スクラッチ性と耐セロテープ剥離性
○:剥がれない
△:剥がれる
×:容易に剥がれる
【0071】
【表3】
Figure 0003878287
【0072】
【発明の効果】
以上、詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明の可逆性感熱記録媒体は、サーマルヘッドによる消去が可能であり、また、白濁した画像を長時間及び/又は高温下で保存しても、初期の消去特性に対応した消去条件で画像の消去が可能であり、画像の形成と消去の繰り返し耐久性とコントラストに優れる。また、サーマルヘッド等の加熱体により画像形成と消去を繰り返し行なってもサーマルヘッドのドット密度に相当した周期的な表面の凹凸の発生を防止できると共に、スティッキング、傷の発生、サーマルヘッドの汚れ、それらの現象によって起こる画像の劣化及び熱感度の低下がなく、また、印刷適性に優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る可逆性感熱記録媒体の熱による透明度の変化を表わした図である。
【図2】本発明の実施例5のDSCの測定結果を表わした図である。
【図3】本発明の実施例5のDMSの測定結果を表わした図である。
【図4】本発明の比較例1のDSCの測定結果を表わした図である。

Claims (6)

  1. 支持体及び主成分として有機低分子化合物を樹脂マトリックス中に分散し、透明度が温度変化に依存して可逆的に変化する該支持体上に設けた感熱記録層とからなる可逆性感熱記録媒体において、該有機低分子化合物の融点が70〜135℃であり、かつ該樹脂マトリックスが、光重合性モノマーからなる架橋剤と、該架橋剤と共有結合形成可能な官能基を有するポリマーを含有する硬化性樹脂組成物を、少なくとも紫外線又は電子線のいずれかで硬化した樹脂からなり、また、該記録層のエンタルピーの時間変化率が2〜20℃/minの昇温過程において69℃以下及び135〜200℃の温度範囲で0であり、更に該記録層の動的弾性率が1〜10℃/minの昇温過程において135〜200℃の温度範囲で10Pa以上であることを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
  2. 前記記録層上に125μm×125μmの表面積あたり3個以上の高さ0.05μm以上1.5μm以下の凸部及びH以上8H以下の鉛筆硬度を有したオーバーコート層を設けることを特徴とする請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体。
  3. 前記有機低分子化合物が融点の異なる少なくとも2種類以上の化合物からなり、該融点の異なる少なくとも2種類以上の有機低分子化合物において、最大融点と最低融点との差が45℃以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の可逆性感熱記録媒体。
  4. 前記有機低分子化合物と前記樹脂マトリックスとの重量比が、3:1〜1:3であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1に記載の可逆性感熱記録媒体。
  5. 前記オーバーコート層が20dyn/cm以上の臨界表面張力を有することを特徴とする請求項2乃至4の何れか1に記載の可逆性感熱記録媒体。
  6. 前記オーバーコート層上の印刷層上に印刷保護層を有し、該印刷保護層が125μm×125μmの表面積あたり3個以上の高さ0.05μm以上1.5μm以下の凸部及びH以上8H以下の鉛筆硬度を有することを特徴とする請求項2乃至5の何れか1に記載の可逆性感熱記録媒体。
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