JP3875873B2 - 樹脂組成物およびその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリスチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂を含有する樹脂組成物、フィルム、該フィルムを用いた合成紙およびラベルに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレン樹脂にポリスチレン樹脂、無機フィラー類などを混合して得られるフィルムは合成紙として知られている(特公昭54−17789号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、スチレン系樹脂とプロピレン系樹脂の組成物を、フィルム成形する場合、膜割れや厚みムラなどの問題を抱えている。また、無機フィラー類を添加することにより湿度の影響を受け、印刷性などが不安定であるなどの制約があり、さらに、スタンプ印を押しても擦れて消えてしまうという欠点があった。
【0004】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解消するために創案されたものであり、膜割れや厚みムラのない、しかも高速化、広巾化可能な組成物およびフィルムを得ること、ならびに印刷性に優れたフィルム、合成紙、ラベルを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記の目的は、(イ)スチレン系樹脂60〜80重量%および(ロ)プロピレン系樹脂20〜40重量%からなり、前記(イ)および(ロ)の合計100重量部に対し、(ハ)分子中にビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックAを2個以上有し、かつ、共役ジエン化合物からなる重合体ブロックBを1個以上有するブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体5〜30重量部を含有し、かつ(ニ)分子中にビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックCを1個有し、かつ、共役ジエン化合物からなる重合体ブロックDを1個有するブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体を前記(ハ)に対して5〜60重量%含有する樹脂組成物を提供することによって達成される。
また、上記目的は、(ハ)水添ブロック共重合体のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックAの含有量が50〜90重量%である前記樹脂組成物を提供することによってより好適に達成される。
【0006】
また、上記目的は、上記組成物から得られる厚みが15〜200μmのフィルムを提供することによって達成される。
また、上記目的は、上記フィルムからなる合成紙を提供することによって達成される。
さらにまた、上記フィルムの少なくとも片面に粘着層を有し、その上に剥離フィルムを積層したラベルを提供することによって達成される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の熱可塑性樹脂成形体、とくにフイルムに用いるスチレン系樹脂(イ)は、通常GPPSといわれるポリスチレンホモポリマー、あるいは通常HIPSといわれるゴム補強ポリスチレンなど公知のものを特に制限無く用いることができる。スチレン系樹脂(イ)の含有量はスチレン系樹脂(イ)とプロピレン系樹脂(ロ)の合計重量に対し60〜80重量%である。
【0008】
次に、本発明に用いるプロピレン系樹脂(ロ)は、プロピレンのホモポリマー、αオレフィンとのランダムポリマー、ゴム成分とのブロックポリマーなど公知のものを特に制限無く用いることができる。プロピレン系樹脂(ロ)の含有量はスチレン系樹脂(イ)とプロピレン系樹脂(ロ)の合計重量に対し20〜40重量%である。
【0009】
本発明に用いる水添ブロック共重合体(ハ)は、分子中にビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックAを2個以上有し、かつ、共役ジエン化合物からなる重合体ブロックBを1個以上有するブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体であり、例えば(A−B)n−A(nは1〜10の整数を表す)、(A−B)m−X(Xはカップリング剤残基を表し、mは2〜15の整数を表す)等の構造を有するビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体などが挙げられる。
【0010】
水添ブロック共重合体(ハ)においては、得られる熱可塑性樹脂成形体、とくにフィルムの膜割れや厚みムラの発生防止、力学強度の観点から、ビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックAの含有率は50〜90重量%の範囲が好ましい。この割合が50重量%より小さいとフィルム成形性が不十分となる場合があり、逆に90重量%を超えると粘度が著しく高くなる場合がある。また、水添ブロック共重合体(ハ)の数平均分子量は特に制限されないが、一般には50000〜1000000の範囲である。さらには、50000〜500000の範囲が好ましい。
【0011】
水添ブロック共重合体(ハ)の添加量は、スチレン系樹脂(イ)とプロピレン系樹脂(ロ)の合計100重量部に対して5〜30重量部であり、好ましくは8〜20重量部である。水添ブロック共重合体(ハ)の添加量が5重量部より少ない場合には、フィルム成形時に膜割れなどの不良現象を生じる。一方、水添ブロック共重合体(ハ)の添加量が30重量部を超えると、膜割れ、厚みムラ等の発生はみられないが、合成紙として使用する場合は、フィルムが柔軟になりすぎるため腰が悪くなり合成紙としての特性が低下する。
【0012】
水添ブロック共重合体(ハ)を構成するビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o-,m-またはp-メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。これらの中でも、スチレンおよびα−メチルスチレンが好ましい。ビニル芳香族化合物は、単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。また、水添ブロック共重合体(ハ)を構成する共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、もしくはイソプレンとブタジエンの混合物が好ましく、イソプレンとブタジエンの混合物を用いる場合の形態としてはランダム、ブロック、テーパードのいずれでも良い。さらに、2種以上の水添ブロック共重合体を混合して用いても良い。
【0013】
ブロック共重合体(ハ)の製造方法としては、例えば、次のような公知のアニオン重合法を採用することができる。すなわち、アルキルリチウム化合物等を開始剤として不活性有機溶媒中で、ビニル芳香族化合物、共役ジエン化合物を逐次重合させてブロック共重合体を形成する。次いで、得られたブロック共重合体を、公知の方法にしたがって不活性有機溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加して、水添ブロック共重合体(ハ)を合成することが出来る。この際、耐熱性、耐候性の観点から、水添前のブロック共重合体における共役ジエン化合物に由来する不飽和二重結合の70%以上を水素添加することが好ましい。水添ブロック共重合体(ハ)における重合体ブロックB中の不飽和二重結合量は、ヨウ素価測定、赤外分光光度計、核磁気共鳴装置等により求められる。また、数平均分子量は液体クロマトグラフィー測定などにより求めることができる。
【0014】
さらに、水添ブロック共重合体(ハ)は、本発明の趣旨を損なわない限り、分子鎖中に、または分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基などの官能基を含有してもよい。官能基を含有させる方法としては例えば無水マレイン酸を押出機中でラジカル付加反応させる方法や、重合後、活性末端のリチウムにエチレンオキサイドを付加させる方法が代表的である。
【0015】
次に、本発明に使用する水添ブロック共重合体(ニ)について説明する。水添ブロック共重合体(ニ)は分子中にビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックCを1個有し、かつ、共役ジエン化合物からなる重合体ブロックDを1個有するブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体である。本発明において、水添ブロック共重合体(ニ)を前記(ハ)と併用することにより、膜割れ、厚みムラ等の発生を高度に抑えることができ、さらにまたフィルム成形時の高速化、広幅化を可能にする。
水添ブロック共重合体(ニ)は水添ブロック共重合体(ハ)に対し5〜60重量%の範囲で用いることが重要で、好適には10〜50重量%である。
【0016】
水添ブロック共重合体(ニ)におけるビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックCの含有率に特に制限はないが、10〜90重量%の範囲が好適である。また、水添ブロック共重合体(ニ)の数平均分子量も特に制限されないが、一般には10000〜500000の範囲である。水添ブロック共重合体(ニ)を構成するビニル芳香族化合物、共役ジエン化合物としては水添ブロック共重合体(ハ)に使用できるものと同じものを使用することができる。また、水添ブロック共重合体(ニ)は、(ハ)と同様、本発明の趣旨を損なわない限り、分子鎖中に、または分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基などの官能基を含有してもよい。官能基を含有させる方法としては例えば無水マレイン酸を押出機中でラジカル付加反応させる方法や、重合後、活性末端のリチウムにエチレンオキサイドを付加させる方法が代表的である。
さらにまた、水添ブロック共重合体(ニ)は、前記した水添ブロック共重合体(ハ)の製造方法と同一様式のアニオン重合法を使用し、さらにその後水素添加する方法により得られる。分子中にビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックCを1個有し、かつ、共役ジエン化合物からなる重合体ブロックDを1個有するブロック重合体は、アニオン重合において、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物を遂次添加した後、重合停止することにより得られる。
【0017】
本発明には、スチレン系樹脂(イ)、プロピレン系樹脂(ロ)、水添ブロック共重合体(ハ)、水添ブロック共重合体(ニ)の他に必要に応じポリエチレンなどのオレフィン樹脂、非芳香族系の鉱物油または非芳香族系の液状もしくは低分子量の合成軟化剤であるゴム用軟化剤のパラフィン系、ナフテン系プロセスオイルを添加することができる。
【0018】
また、本発明には、本発明の主旨を損なわない範囲内であれば、必要に応じて充填剤を添加することができる。かかる充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、ガラス繊維、カーボン繊維等が挙げられる。
【0019】
さらに、本発明には、本発明の趣旨を損なわない範囲内で、必要に応じ、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12等のポリアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、粘着付与剤、帯電防止剤、発泡剤等の添加も可能である。
【0020】
本発明の樹脂組成物から、フィルム、シート、その他各種の成形体を得ることができる。各種成形体を製造する方法としては、従来公知の方法が特に制限なく用いられる。均質な組成物を得るためには、スチレン系樹脂(イ)、プロピレン系樹脂(ロ)、水添ブロック共重合体(ハ)、水添ブロック共重合体(ニ)、必要に応じ、オレフィン樹脂、ゴム用軟化剤などを一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、オープンロール、ニーダー等の混練機を用いて各構成成分を加熱溶融状態で混練することが好ましい。混練温度は180〜220℃が好適である。得られた混合物を従来公知の方法、例えば、押出成形機、または射出成形機を用いて通常の樹脂と同様にして成形体に加工することができる。
【0021】
本発明の樹脂組成物は、とくに15〜200μm厚みのフィルムとして好適に使用される。フィルムの製造方法としては、本発明の樹脂組成物を従来公知の方法、例えば、押出成形機(Tダイ法、インフレーシヨン法等)を用いて製膜し、つぎに無延伸または延伸し、さらに必要に応じ熱処理してフィルムを製造することができる。押出温度は、180〜220℃が好適である。
本発明の樹脂組成物を使用することにより、フィルムの製造を高速化または 広幅化した場合でも、膜割れ、厚みムラのないフィルムを得ることができる。
【0022】
このようにして得られたフィルムは、厚み15〜200μmであり、好適には30〜150μmである。厚みが15μm未満ではフィルムの強度が十分でなく、厚みが200μmを越えると剛性が増すために紙としての質感が失われる。
【0023】
本発明により得られるフィルムは、外観に優れ、耐吸湿性に優れ、さらに印刷性に優れるという特長を有していることから、合成紙、例えば、看板、パンフレットなどの合成紙としてとくに有用である。また、本発明のフィルムの少なくとも片面に粘着層を有し、その上に剥離フィルムを積層することにより、外観、耐吸湿性に優れ、さらに印刷性に優れるという特性を十分活用したラベルを得ることができる。
また、本発明のフィルムは、他樹脂との複層成形体としても使用することができる。
【0024】
【実施例】
以下本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
実施例1〜2および比較例1〜3
(イ)スチレン系樹脂:ポリスチレン(GPPS)、MFR=6(230℃、荷重2160g)
(ロ)プロピレン系樹脂:ランダムポリプロピレン、MFR=9(230℃、荷重2160g)
(ハ)水添ブロック共重合体(SEBS):スチレンからなる重合体ブロックA2個、その含有量65重量%、ブタジエンからなる重合体ブロック1個、その含有量35重量%、水添率=98%以上、数平均分子量7万。
(ニ)水添ブロック共重合体(SEP):スチレンからなる重合体ブロック1個、その含有量15重量%、イソプレンからなる重合体ブロック1個、その含有量85重量%、水添率=98%以上、数平均分子量5万。
上記(イ)、(ロ)、(ハ)および(ニ)をそれぞれ表1に示す配合に従い、二軸押出機を用いて、200℃で溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットを200℃でTダイ法により押出し成形し、それぞれ1050mm巾、厚さ110μmのフィルムを得た。ただし実施例1では得られたペレットにPEベースの白色マスターバッチを3部添加して白いフィルムを作成した。
【0026】
【表1】
【0027】
上記実施例1〜2および比較例1〜3のフィルム成形の状況を評価した。結果を表1に示す。
◎:膜割れ、厚みムラ(5%以内)の問題なく、長時間運転で安定性が非常に良い事を確認
○:膜割れなく、厚みムラも10%以内で、長時間運転で安定性良いことを確認
△:時折、厚みムラにより膜割れが発生するも、作業可能
×:厚みムラ激しく、膜割れも頻繁に発生、連続作業は無理
【0028】
上記実施例1〜2および比較例1〜3で得たフィルムを紙の代替、つまり合成紙として評価した。評価は以下に示す外観、印刷性、吸湿性の3点で実施した。結果を表2に示す。ここでは対照としてコピー用紙(国産紙)、リサイクルコピー用紙、プロピレン系樹脂(PP)製合成紙を用いた。
【0029】
外観
フィルムの外観を目視評価した。
○:紙として使用に問題のない表面平滑性
×:紙として使うには問題となる欠点(穴)、厚みムラによる模様がある
【0030】
印刷性
フィルム表面に油性マジックで文字を書き、10秒後に乾いた布で擦ることにより評価した。およびスタンプ印(シャチハタネーム9:シャチハタ工業製)でも同様の評価を行なった。
○:文字または印がかすれずに残る
△:一部かすれるが、識別できる
×:拭き取られてしまい、認識できない
【0031】
吸湿性
フィルムを40℃、95%湿度条件下に24時間静置し、重量の増減を測定した。
○:±1%以内、吸湿による変化殆どなし。吸湿性が小さいこと、すなわち耐吸湿性に優れていることは、表面が湿度の影響を殆ど受けないため、印刷ムラが少なく、印刷が安定していることを示している。
×:±1%以上、吸湿による変化を受ける。
【0032】
【表2】
【0033】
実施例3
実施例1のフィルムの片面に粘着剤を塗布し、その上に剥離紙を積層した。この剥離紙を剥がした後、荷送り用ダンボール箱に貼り付けた。ラベルを剥離紙から剥がす際に、フィルムの腰が要求されるが、非常に簡単に剥がすことができた。フィルム表面に油性ボールペンで送付先を書き込み発送したところ、問題なく送付先に着荷した。また、文字のかすれ等もないことを確認した。
【0034】
以上の結果より本発明の実施例1〜2では紙と従来市販の合成紙の長所を兼ね備えたフィルムを得られることが明らかである。さらに、実施例3より本発明のフィルムをラベルとして用いることが可能であることがわかる。それに対し、比較例1〜3では外観、印刷性、耐吸湿性のいずれかに問題があることがわかる。
【0035】
【発明の効果】
膜割れや厚みムラのないフィルムが得られ、とくにフィルム製造の高速化、広幅化を行った場合でも膜割れや厚みムラのないフィルムが得られ、さらに外観、印刷性、耐吸湿性に優れた合成紙、ラベルが得られる。
Claims (5)
- (イ)スチレン系樹脂60〜80重量%および(ロ)プロピレン系樹脂20〜40重量%からなり、前記(イ)および(ロ)の合計100重量部に対し、(ハ)分子中にビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックAを2個以上有し、かつ、共役ジエン化合物からなる重合体ブロックBを1個以上有するブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体5〜30重量部を含有し、かつ(ニ)分子中にビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックCを1個有し、かつ、共役ジエン化合物からなる重合体ブロックDを1個有するブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体を前記(ハ)に対して5〜60重量%含有する樹脂組成物。
- (ハ)水添ブロック共重合体のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックAの含有量が50〜90重量%である請求項1記載の樹脂組成物。
- 請求項1または2記載の樹脂組成物から得られる厚みが15〜200μmの熱可塑性樹脂フィルム。
- 請求項3記載のフィルムからなる合成紙。
- 請求項3または4記載のフィルムの少なくとも片面に粘着層を有し、その上に剥離フィルムを積層したラベル。
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