JP3874783B2 - 発熱シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、空気中の酸素と被酸化性金属との酸化反応に伴う発熱を利用した発熱シート、特に水蒸気発生シートとしても用いられる発熱シートの製造方法に関する。
空気中の酸素と被酸化性金属粉体との酸化反応に伴う発熱を利用した発熱成形体の製造方法に関する従来技術としては、例えば、下記特許文献1に記載の技術が知られている。
この技術は、水に繊維状物質を懸濁させ、これに鉄粉等の被酸化性金属、保水剤として活性炭、反応助剤として電解質等を加えて原料スラリーとし、該原料スラリーから抄紙して吸引脱水後、プレス加工によって含水率が5〜65wt%のシート状に脱水成形して発熱成形体を製造するようにしたものである。
ところで、この技術で製造された発熱成形体は、厚みが0.2〜10mmと厚く、酸化反応が進むにつれて硬く、脆くなって可撓性が失われるため、肘、膝等の身体部位の屈伸する部分に温熱シート等として貼着した場合、装着性が悪くなり、違和感が生じるものであった。また、加温容器や保温容器に用いる場合に、容器の形状によっては、当該容器形状に対応するように貼着させたりして密着させることが困難であった。さらに、トリミング等の加工性に劣るほか、原料スラリーの状態からスラリー中及び空気中の酸素と反応しやすく、性能の低下及び機械に錆を生じ易くなる問題があり、また、成形後にロール状に巻き取ることもできないために生産性にも課題を有していた。
特許第2572621号公報
従って、本発明の目的は、身体への装着性、容器への密着性に優れるとともに、加工性、生産性にも優れる発熱シートの製造方法を提供することにある。
上述のように、従来の発熱シートは、被酸化性金属粉体、保水剤、反応助剤としての電解質を含有する原料スラリーから発熱シートを作製している。このため原料スラリーからシートを抄紙した後に加熱乾燥させると、被酸化性金属の酸化が促進されてしまい、得られる発熱シートの発熱特性や機械強度が損なわれる。
そこで、本発明者らは、電解質を含まず、被酸化性金属、繊維状物、及び水を含む原料組成物を抄紙して積極的に加熱乾燥し、得られた成形シートに電解質を含ませることで、発熱シートの製造途中における被酸化性金属の酸化反応を抑制して、強度、加工性、生産性、保存安定性を向上させ得ることを知見した。
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、少なくとも叩解処理によりCSFを600ml以下にした繊維状物、被酸化性金属、凝集剤、保水剤及び水を含み、酸化助剤としての電解質を含まない原料組成物を空気雰囲気下で抄紙ネットを用いて抄紙し、脱水した後、60〜300℃で加熱乾燥し、前記繊維状物以外の成分を50重量%以上含み、含水率が20%以下、厚みが0.08〜1.2mm、JIS−P8113に規定される裂断長が100〜4000mの成形シートとし、該成形シートに前記電解質の電解液を含浸させる発熱シートの製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記本発明の成形シートの製造方法により製造された成形シートに、電解質の電解液を含ませる発熱シートの製造方法を提供するものである。
本発明によれば、身体への装着性、容器への密着性に優れるとともに、加工性、生産性にも優れる発熱シートの製造方法が提供される。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の発熱シート製造方法に使用される成形シート(以下、単に成形シートともいう。)は、少なくとも被酸化性金属、保水剤、及び繊維状物を含んでいる。
本発明の成形シートは、前記繊維状物以外の成分を50重量%以上含み、70重量%以上含むことが好ましく、80重量%以上含むことがさらに好ましい。繊維状物以外の成分が50重量%未満であると、得られる発熱シートの温度が人の指先等で触って熱く感じる程度以上に上昇しない場合がある。繊維状物以外の成分は多い程好ましいが、得られる成形シートの加工性を維持するのに必要な強度を得る点から、その上限は、98重量%である。
前記被酸化性金属には、従来からこの種の発熱成形体に通常用いられている被酸化性金属を特に制限無く用いることができる。該被酸化性金属の形態は、取り扱い性、成形性等の観点から粉体、繊維状の形態を有するものを用いることが好ましい。
粉体の形態を有する被酸化性金属としては、例えば、鉄粉、アルミニウム粉、亜鉛粉、マンガン粉、マグネシウム粉、カルシウム粉等が挙げられ、これらの中でも取り扱い性、安全性、製造コストの点から鉄粉が好ましく用いられる。該被酸化性金属には、後述の繊維状物への定着性、反応のコントロールが良好なことから粒径(以下、粒径というときには、粉体の形態における最大長さ、又は動的光散乱法、レーザー回折法等により測定される平均粒径をいう。)が0.1〜300μmのものを用いることが好ましく、粒径が0.1〜150μmものを50重量%以上含有するものを用いることがより好ましい。
また、繊維状の形態を有する被酸化性金属としては、スチール繊維、アルミ繊維、マグネシウム繊維等が挙げられる。これらのなかでも取り扱い性、安全性、製造コストの点からスチール繊維、アルミ繊維等が好ましく用いられる。繊維状の形態を有する被酸化性金属は、成形性や得られるシートの機械的強度、表面の平滑性、発熱性能の点から繊維長0.1〜50mm、太さ1〜1000μmのものを用いることが好ましい。
前記成形シート中の前記被酸化性金属の配合量は、10〜95重量%であることが好ましく、30〜80重量%であることがより好ましい。10重量%未満であると、得られる成形シートを発熱シートとしたときの発熱温度が、人が指先等で触って熱く感じる程度以上に上昇しなくなるほか、成形シートを成形する後述の繊維状物、接着成分(凝集剤等)が増加するため、硬くなって使用感に劣る場合があり、95重量%を超えると、得られる成形シートを発熱シートとしたときに、その表面に被酸化性金属等の酸化皮膜が形成されて通気性が損なわれ、その結果発熱シートの内部まで反応が起こりにくくなって発熱温度が上がらなくなったり、酸化反応により被酸化性金属が膨張・凝結するために硬くなったり、発熱時間が短くなるほか、保水剤による水分供給が不十分であったり、被酸化性金属の脱落が発生する場合がある。また、成形シートを形成する後述の繊維状物、接着成分が減少するため、曲げ強度や引張強度等の機械的強度が低下する場合がある。ここで、成形シート中の被酸化性金属の配合量は、JIS P8128に準じる灰分試験で求めたり、例えば、鉄の場合は外部磁場を印加すると磁化が生じる性質を利用して振動試料型磁化測定試験等により定量することができる。
前記保水剤には、従来から発熱シートに通常用いられている保水剤を特に制限無く用いることができる。該保水剤は、水分保持剤として働く他に、被酸化性金属への酸素保持/供給剤としての機能も有している。該保水剤としては、例えば、活性炭(椰子殻炭、木炭粉、暦青炭、泥炭、亜炭)、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、ゼオライト、パーライト、バーミキュライト、シリカ、カンクリナイト、フローライト等が挙げられ、これらの中でも保水能、酸素供給能、触媒能を有する点から活性炭が好ましく用いられる。該保水剤には、被酸化性金属との有効な接触状態を形成できる点から粒径が0.1〜500μmの粉体状のものを用いることが好ましく、0.1〜200μmのものを50重量%以上含有するものを用いることがより好ましい。保水剤には、上述のような粉体状以外の形態のものを用いることもでき、例えば、活性炭繊維等の繊維状の形態のものを用いることもできる。
前記成形シート中の前記保水剤の配合量は、0.5〜60重量%であることが好ましく、1〜50重量%であることがより好ましい。0.5重量%未満であると、被酸化性金属が酸化反応により人体温度以上に温度上昇する程度に反応を持続させるために必要な水分を成形シート中に蓄積できなくなるほか、シートの通気性が損なわれるため、酸素供給が悪くなって発熱効率に劣る場合があり、60重量%を超えると、成形シートを発熱シートとしたときに得られる発熱量に対する熱容量が大きくなるため、発熱温度上昇が小さくなり、人が温かいと体感できなくなるほか、保水剤の脱落の発生や成形シートを成形する後述の繊維状物、接着成分が減少するため、曲げ強度や引張強度等の機械的強度が低下する場合がある。
前記繊維状物としては、例えば、天然繊維状物としては植物繊維(コットン、カボック、木材パルプ、非木材パルプ、落花生たんぱく繊維、とうもろこしたんぱく繊維、大豆たんぱく繊維、マンナン繊維、ゴム繊維、麻、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻、椰子、いぐさ、麦わら等)、動物繊維(羊毛、やぎ毛、モヘア、カシミア、アルカパ、アンゴラ、キャメル、ビキューナ、シルク、羽毛、ダウン、フェザー、アルギン繊維、キチン繊維、ガゼイン繊維等)、鉱物繊維(石綿等)が挙げられ、合成繊維状物としては、例えば、半合成繊維(アセテート、トリアセテート、酸化アセテート、プロミックス、塩化ゴム、塩酸ゴム等)、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。また、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、デンプン、ポリビニルアルコール若しくはポリ酢酸ビニル又はこれらの共重合体若しくは変性体等の単繊維、又はこれらの樹脂成分を鞘部に有する芯鞘構造の複合繊維を用いることができる。そしてこれらの中でも、繊維どうしの接着強度が高く、繊維どうしの融着による三次元の網目構造を作り易すく、パルプ繊維の発火点よりも融点が低い点からポリオレフィン、変性ポリエステルが好ましく用いられる。また、枝分かれを有するポリオレフィン等の合成繊維も被酸化性金属や保水剤との定着性が良好なことから好ましく用いられる。これらの繊維は、単独で又は二以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの繊維は、その回収再利用品を用いることもできる。そして、これらの中でも、前記被酸化性金属、前記保水剤の定着性、得られる成形シートの柔軟性、空隙の存在からくる酸素透過性、製造コスト等の点から、木材パルプ、コットンが好ましく用いられる。
前記繊維状物は、そのCSF(Canadian Standard Freeness)が、600ml以下であり、450ml以下であることが好ましい。600mlを超えると繊維状物と被酸化性金属や保水剤等の成分との定着性が悪くなり、所定の配合量を保持できなくなって発熱性能に劣るものとなったり、均一な厚みのシートが得られない等成形不良となる場合がある。また、繊維状物と該成分との定着が悪いことに起因する該成分の脱落、該成分と該繊維状物との絡み合い、水素結合に由来する結合強度が低下するため、曲げ強度や引張強度等の機械的強度が低下したり、加工性が悪くなる。
前記繊維状物のCSFは、低い程好ましいが、通常のパルプ繊維のみの抄紙では、繊維状物以外の成分比率が低い場合、CSFが100ml未満であると濾水性が非常に悪く、脱水が困難となって均一な厚みの成形シートが得られなかったり、乾燥時にブリスター破れが生じたりする等の成形不良となったりする。本発明においては、繊維状物以外の成分比率が高いことから、濾水性も良好で均一な厚みの成形シートを得ることができる。また、CSFが低い程、フィブリルが多くなるため、繊維状物と該繊維状物以外の成分との定着性が良好となり、高いシート強度を得ることができる。
繊維状物のCSFの調整は、叩解処理などによって行うことができる。CSFの低い繊維と高い繊維とを混ぜ合わせ、CSFの調整を行っても良い。
前記繊維状物は、そのゼータ電位がマイナス(負)であることが好ましい。ここで、ゼータ電位とは、荷電粒子界面と溶液間のずり面におけるみかけの電位をいい、流動電位法、電気泳動法等により測定される。そのゼータ電位がプラスになると、繊維状物への前記被酸化性金属や保水剤等の成分の定着が著しく悪化し、所定の配合量を保持できずに発熱性能が劣るものとなるほか、排水に多量の該成分が混じってロスが多くなり、生産性、環境保全にも悪影響を及ぼす場合がある。
該繊維状物には、平均繊維長が0.1〜50mmのものを用いることが好ましく、0.2〜20mmのものを用いることがより好ましい。繊維長が短すぎると得られる成形シートの曲げ強度や引張強度等の機械的強度が十分に確保できなくなるほか、紙層が密に形成されるため該成形シートの通気性が損なわれ、酸素供給が悪く発熱性に劣る場合があり、繊維長が長すぎると成形シート中に該繊維状物が均一に分散しづらくなり、一様な機械的強度が得られなくなるほか、均一な肉厚の成形シートが得られなかったり、繊維間隔が広くなり、繊維による前記被酸化性金属や保水剤等の成分の保持能力が低くなり該成分が脱落し易くなる場合がある。
前記成形シート中の前記繊維状物の配合量は、2〜50重量%であることが好ましく、5〜40重量%であることがより好ましい。2重量%未満であると、被酸化性金属、保水剤の脱落防止効果が低下するほか、成形シートが非常に脆いものになる場合があり、50重量%を超えると、発熱成形体の発熱量に対する熱容量が大きくなり、温度上昇が小さくなるほか、得られる成形シート中の前記被酸化性金属や保水剤等の成分の比率が低くなるため、所望の発熱性能が得られない場合がある。
前記成形シートには、後述するように凝集剤が添加されていてもよい。
また、前記成形シートには、必要に応じ、サイズ剤、着色剤、紙力増強剤、歩留向上剤、填料、増粘剤、pHコントロール剤、嵩高剤等の抄紙の際に通常用いられる添加物を特に制限無く添加することができる。該添加物の添加量は、添加する添加物に応じて適宜設定することができる。
前記成形シートは、その厚みが0.08〜1.2mmであり、0.1〜0.6mmであることがより好ましい。厚みが0.08mm未満であると発熱性能、機械的強度、前記被酸化性金属や保水剤等の成分の定着率の低下が起こったり、安定した均一の肉厚、組成分布が得られないほか、ピンホールの発生等によるシートの破壊等が発生しやすく、生産性及び加工性に支障を来す場合があり、1.2mmを超えると急激にシートの折曲強度が低下し、簡単に脆性破壊を起こしやすくなるほか、非常に硬くなり、特に肘、膝、顔等の身体部位の屈伸する部位に温熱シート等として貼付した場合、装着性が悪く違和感を生じる場合がある。また、生産性においても、紙層形成時間や乾燥時間の遅延が起こりやすく、操業性に劣る他、発熱性能の低下や、割れたり、折れたりする等加工性に劣る場合がある。
前記成形シートは、その坪量が10〜1000g/m2であることが好ましく、50〜600g/m2であることがより好ましい。坪量が10g/m2未満であると被酸化性金属等の中でも比重の大きなものを使用する場合等において、特に安定したシートを形成することが困難となる場合があり、1000g/m2を超えると非常に重量感が出て使用感が悪くなったり、生産性や操業性等が悪くなる場合がある。
前記成形シートは、その裂断長が100〜4000mであり、200〜3000mであることが好ましい。裂断長が100m未満であると、操業時にシートの破断や切断が生じる等して安定的にシートを形成できないほか、加工時にも同様の理由によって製品加工ができなくなったり、使用時においても、腰がなくぼろぼろと直ぐ破壊し、使用感に劣る場合があり、裂断長が4000mを超えると、成形シートを形成する繊維状物、接着成分が増加するため、硬くて剛直になったり、発熱性能に劣るものとなったりする場合がある。
次に、本発明の発熱シートの製造方法で製造される発熱シート(以下、単に本発明の発熱シートともいう。)の好ましい実施形態について説明する。
本発明の発熱シートは、前記成形シートに、電解質の電解液が含浸されて製造されたものである。
前記電解質には、従来からこの種の発熱シートに通常用いられている電解質を特に制限なく用いることができる。該電解質としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属若しくは重金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物又は水酸化物等が挙げられる。そしてこれらの中でも、導電性、化学的安定性、生産コストに優れる点から塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化鉄(第1、第2)等の各種塩化物が好ましく用いられる。これらの電解質は、単独で又は二以上を組み合わせて用いることもできる。
前記発熱シート中の前記電解質の配合量は、得られる発熱シート中の水重量比で0.5〜30重量%であることが好ましく、1〜25重量%であることがより好ましい。0.5重量%未満であると、得られる発熱シートの酸化反応が抑制されるほか、発熱機能に必要な電解質を確保するために、該発熱シート中の水分の比率が多くなり、その結果、該発熱シートの熱容量が大きくなり、発熱温度上昇が小さくなる場合があり、30重量%を超えると余分な電解質が析出し、得られる発熱シートの通気性が損なわれるほか、発熱機能に必要な電解質を確保するために、該発熱シート中の水分比率が低くなり、十分な水が被酸化性金属等に供給されず、発熱性能に劣ったり、該発熱シートに均一に電解質を配合することが困難となる場合がある。
本発明の発熱シートは、含水率(重量含水率、以下同じ。)が10〜80%であることが好ましく、20〜60%であることがより好ましい。含水率が10%未満であると酸化反応を持続するために必要な水分が確保できず、酸化反応が途中で終了してしまうほか、該発熱シートに均一に水分を供給することが困難となり、均一な発熱性能を得ることが困難となる場合があり、含水率が80%を超えると発熱シートの発熱量に対する熱容量が大きくなり、発熱温度上昇が小さくなるほか、該発熱シートの通気性が損なわれ、発熱性能に劣ったり、保形性や機械的強度が低下したり、発熱シートの熱容量が増加することにより、発熱温度が上がらない場合がある。
本発明の発熱シートの発熱到達温度は、商品用途によって急激な発熱が必要な場合や比較的低温で長時間の持続が必要な商品等、前述の配合組成の組み合わせにより任意に設計ができる。本発明の発熱シートの発熱到達温度は、例えば後述する実施例で測定される温度で、30〜100℃であることが好ましく、35〜90℃であることがより好ましい。
本発明の発熱シートの水蒸気発生量は、発熱到達時間と同様に商品用途によって急激な発熱が必要な場合や比較的低温で長時間の持続が必要な商品等、前述の配合組成の組み合わせにより任意に設計ができる。本発明の発熱シートの水蒸気発生量は、例えば、後述する実施例の方法で測定される水蒸気発生量で、50〜1000mgであることが好ましく、100〜600mgであることがより好ましい。
次に、本発明の発熱シートの製造方法をその好ましい実施形態に基づいて説明する。
先ず、少なくとも前記被酸化性金属、前記保水剤、前記繊維状物、及び水を含み、酸化助剤となる前記電解質を含まない原料組成物(スラリー)を調製する。
該原料組成物には、凝集剤を添加する。
該凝集剤としては、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、硫酸第一鉄等の金属塩からなる無機凝集剤;ポリアクリルアミド系、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物、ポリ(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル系、カルボキシメチルセルロースナトリウム系、キトサン系、デンプン系、ポリアミドエピクロヒドリン系等の高分子凝集剤;ジメチルジアリルアンモニウムクロライド系若しくはエチレンイミン系のアルキレンジクロライドとポリアルキレンポリアミンの縮合物、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物等の有機凝結剤;モンモリロナイト、ベントナイト等の粘土鉱物;コロイダルシリカ等の二酸化珪素若しくはその水和物;タルク等の含水ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。そして、これら凝集剤の中でもシートの表面性、地合い形成、成形性の向上、前記被酸化性金属や保水剤等の成分の定着率、紙力向上の点からアニオン性のコロイダルシリカやベントナイト等とカチオン性のデンプンやポリアクリルアミド等の併用やアニオン性のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩とカチオン性のポリアミドエピクロルヒドリン系のカチオン性とアニオン性の薬剤の併用が特に好ましい。上述の組み合わせ以外でも、これらの凝集剤は単独で又は二以上を併用することもできる。
前記凝集剤の添加量は、原料組成物の固形分に対して、0.01〜5重量%であることが好ましく、0.05〜1重量%であることがより好ましい。0.01重量%未満であると、凝集効果に劣り、抄紙時の前記被酸化性金属や保水剤等の成分の脱落が多くなったり原料組成物が不均一になり、肉厚及び組成の均一な成形シートを得ることが困難な場合がある。5重量%を超えると、乾燥時の乾燥ロールに貼りついたり、破れ、焼け、焦げを発生させる主原因となり、生産性に悪影響を及ぼしたり、原料組成物の電位バランスを崩し、抄紙時の白水への該成分の脱落量が多くなる場合がある。また、成形シートの酸化反応が進行し、発熱特性や強度等の保存安定性が低下する。
原料組成物の濃度は、0.05〜10重量%が好ましく、0.1〜2重量%がより好ましい。0.05重量%未満であると大量の水が必要となるほか、成形シートの成形に時間を要してしまって均一な厚みのシートを成形することが困難となる場合があり、10重量%を越えると原料組成物の分散不良が発生し易くなり、得られるシートの表面性が悪くなったり、均一な厚みのシートが得られない場合がある。
次に、前記原料組成物を抄紙ネットを用いて抄紙して前記成形シートを成形する。
前記成形シートの抄紙方法には、例えば、連続抄紙式である円網抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などを用いた抄紙方法、バッチ方式の抄紙方法である手漉法等が挙げられる。更に、前記原料組成物と、該原料組成物と異なる組成の組成物とを用いた多層抄き合わせによって成形シートを成形することもできる。また、前記原料組成物を抄紙して得られた成形シートどうしを多層に貼り合わせたり、該成形シートに該原料組成物と異なる組成を有する組成物から得られたシート状物を貼り合わせることによって、多層の成形シートを成形することもできる。
前記成形シートは、抄紙後における形態を保つ(保形性)点や、機械的強度を維持する点から、含水率(重量含水率、以下同じ。)が70%以下となるまで脱水させることが好ましく、60%以下となるまで脱水させることがより好ましい。抄紙後の成形シートの脱水方法は、例えば、吸引による脱水のほか、加圧空気を吹き付けて脱水する方法、加圧ロールや加圧板で加圧して脱水する方法等が挙げられる。
本発明においては、前記被酸化性金属(通常雰囲気下において加熱反応性を有する)を含有する成形シートを、積極的に乾燥させて水分を分離することにより、製造工程中における被酸化性金属の酸化抑制、長期の保存安定性に優れた成形シートを得ることが可能となる。さらに、乾燥後の前記繊維状物への被酸化性金属の担持力を高めてその脱落を抑える点に加え、熱溶融成分、熱架橋成分の添加による機械的強度の向上が期待できる点から、前記成形シートの抄紙後で前記電解質の電解液を含有させる前に該成形シートを乾燥させることが好ましい。
成形シートは加熱乾燥によって乾燥する。この場合、加熱乾燥温度は、60〜300℃であり、80〜250℃であることが好ましい。成形シートの加熱乾燥温度が低すぎると、乾燥時間が長くなるため、水分の乾燥とともに、被酸化性金属の酸化反応が促進されてしまい、発熱シートの発熱性の低下を引き起こす場合があるほか、成形シートの表裏層のみ被酸化性金属の酸化反応が促進され、うす茶色に変色する場合がある。加熱乾燥温度が高すぎると、保水剤等の性能劣化を招き、発熱シートの発熱効果が低下するほか、成形シート内部で急激に水分が気化して成形シートの構造が破壊されたりする場合がある。
乾燥後における成形シートの含水率は、20%以下であり、10%以下であることが好ましい。含水率が20%を超えると長期保存安定性に劣り、巻きロール状態で一時保存しておく場合等該ロールの厚み方向で水分の移動が起こり、発熱性能、機械的強度に変化を来す場合がある。
該成形シートの乾燥方法は、成形シートの厚さ、乾燥前の成形シートの処理方法、乾燥前の含水率、乾燥後の含水率等に応じて適宜選択することができる。該乾燥方法としては、例えば、加熱構造体(発熱体)との接触、加熱空気や蒸気(過熱蒸気)の吹き付け、真空乾燥、電磁波加熱、通電加熱等の乾燥方法が挙げられる。また、前述の脱水方法と組み合わせて同時に実施することもできる。
本発明においては、成形シートの成形(脱水、乾燥)は、上述のように成形シートに酸化助剤となる電解質を含有していないので、通常の空気雰囲気下で成形を行う。このため、製造設備を簡略化することができる。また、必要に応じて、クレープ処理、スリット加工、トリミングを施したり、加工処理により形態を変更する等の加工を施すこともできる。得られた成形シートは、薄くて破れにくいので、必要に応じ、ロール状に巻き取ることができる。また、成形シートを、単独若しくは重ねて又は紙、布(織布又は不織布)、フィルム等の他のシートと重ねて、加圧したり、さらには加圧しエンボス加工やニードルパンチ加工を行うことにより、複数のシートを積層一体化させたり、凹凸状の賦型や孔あけを行うこともできる。また、前記原料組成物に熱可塑性樹脂成分や熱水溶解成分を含有させることにより、ヒートシール加工を施して貼り合わせ等を行い易くすることもできる。
次に、前記成形シートに前記電解質を含有させる。この電解質を含有させる工程は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましいが、電解質をその電解液の含浸により添加する場合には、添加直後の酸化反応がゆるやかなため、通常の空気雰囲気下で該電解質を含有させることもできる。
前記成形シートに含有させる電解質には、前記本発明の発熱シートに用いられる前記電解質を用いることができる。
前記成形シートへ前記電解質を含有させる方法は、前記成形シートに、前記電解質の所定濃度の電解液を含浸させる方法が採用される。
上述のように前記電解質をその電解液で前記成形シートに含浸させる場合、その含浸方法は、成形シートの厚み等の形態、含水率に応じて適宜選択することができる。該含浸方法には、該電解液を該成形シートにスプレー塗工する方法、該電解液をシリンジ等で該成形シートの一部分に注入し、前記繊維状物の毛管現象を利用して該成形シート全体に浸透させる方法、刷毛等で塗工する方法、該電解液に浸漬する方法、グラビアコート法、リバースコート法、ドクターブレード法等が挙げられ、これらの中でも、電解質を均一に分布でき、簡便で、設備コストも比較的少なくて済む点からスプレー塗工する方法が好ましい。また、複雑な形状、層構成の商品においては生産性が向上する点や、最終仕上げを別工程とできることにより生産のフレキシブル性が向上する点、設備が簡便となる点からは、所定濃度の電解液をシリンジ等で注入する方法が好ましい。この電解液を注入する方法は、該成形シートを例えば酸素透過性の収容体等に収容した後に行うこともできる。
上述のように成形シートに電解質を含有させた後、必要に応じて含水率を調整し、安定化させて発熱シートとすることができる。そして必要に応じ、トリミング、二枚以上積層化等の処理を施し、所定の大きさに加工することができる。
次に、得られた発熱シートの表面を、酸素透過性を有する被覆層で被覆する。該被覆層は、その全面に酸素透過性を有していてもよく、部分的に酸素透過性を有していてもよい。該被覆層には酸素透過性を有するものであればその材質に特に制限はない。該被覆層は、例えば、紙、不織布、多微孔質膜、微細な孔を設けた樹脂フィルム等を発熱シートの表面に積層して設けることができる。また、合成樹脂塗料やエマルション塗料等を発熱シートに含浸あるいは塗布させて設けることもできる。
また、該被覆層の酸素透過性により、発熱・水蒸気発生特性を任意に制御することもできる。酸素透過性の一つの指標としては、透湿度等が用いられ、例えば、透湿度の高い被覆層を選定することで、短時間で高温で高い水蒸気発生特性を有する発熱シートを得ることができ、透湿度の低い被覆層を選定することで、長時間に亘って発熱、水蒸気発生特性の緩やかな発熱シートを得ることができる。
得られた発熱シートは、使用するまでに酸素と接触するのを避けるため、非酸素透過、非水分透過性の包装袋等に収容されて提供される。
以上説明したように、本発明の成形シート及びこれを用いた発熱シートは、薄くて破れにくく、柔軟性を備えているので、身体への装着性、容器への密着性に優れているとともに、加工性、生産性にも優れている。
また、上述のように、前記原料組成物中に酸化助剤となる電解質が含まれていないので、懸濁液中でのイオン濃度が低くなることによって、当該原料組成物中における被酸化性金属の分散性が良好となる。そして、原料組成物の調製中において被酸化性金属と繊維状物とを実質的に接触させることにより、繊維状物の表面に被酸化性金属が均一に定着され、得られる発熱成形体の発熱特性が向上する。
例えば、酸化助剤となる電解質が配合された懸濁液中では、該系内の塩濃度が高くなることにより、前記被酸化性金属や前記保水剤等の成分並びに繊維状物の界面の電気二重層が圧縮されるため、該成分と繊維状物との接触が著しく阻害され、繊維状物の表面に該成分が定着することが困難となり、肉厚が薄く且つ該成分が多く充填されたシートを成形することが困難となる。また、上記のような塩濃度が高い系では、凝集剤による定着も同様の理由により非常に困難となり、得られる発熱シートの発熱特性は著しく劣るものとなる。また、水中の酸素と反応して酸化を引き起こし、発熱性能の低下を引き起こす場合がある。さらに、該成形シートは、空気中の酸素と反応し易く、長期保存安定性に劣ったり、抄紙機等の成形機、加工機が錆び易くなる場合がある。
さらに、電解質を含まない成形シートを予め乾燥成形するために、成形シート強度を保つことができ、2次加工が容易になる他、裁断用の刃物の錆の発生や摩耗を抑制することができる。また、電解質の含浸においては、発熱シートに含有させる電解質量及び発熱シートの含水率を容易に制御することができるほか、ある任意の形状にパターン含浸を行うことにより、同一面上において発熱する部分としない部分とに分けることができたり、製造工程中における被酸化性金属の酸化を極力抑えることができ、良好な発熱特性を有する発熱成形体を得ることができる。
本発明は、前記実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
本発明の発熱シートは、超薄型カイロとしての用途のほか、その発熱機能や水蒸気発生機能と各種機能剤とを組み合わせることで、種々の用途に適用することができる。例えば、洗浄・除菌、ワックス徐放、芳香、消臭等の諸機能と組み合わせたホットシートとして、フローリング、畳み、レンジ周り、換気扇等のハウスケア用途、空間を快適にするエアケア用途、車等の洗浄、ワックスかけ等のカーケア用途、顔、身体、手、足の洗浄、除菌、保湿、皮脂落とし、くまとり、しわとり、くすみとり等のスキンケア用途、首、肩、腰、手、足等に巻いたり貼ったりして使用する痛みや生理痛の緩和等のヘルスケア用途に適用することができる。
また、パック剤と組み合わせた温熱パックとして、保湿、くまとり、しわとり、くすみとり等のスキンケア用途、視力改善用のアイケア用途、巴布剤と組み合わせたホットパップ(温熱巴布)として、首、肩、足、腰等の痛みや生理痛の緩和等のヘルスケア用途、ヘアキャップと組み合わせた温熱キャップとして、パーマー、カラーリング、育毛促進等の毛髪ケア用途、ミトン形状としたハンドケア用途、ソックス形状にしたフットケア用途等に適用することができる。更に、凹凸形状を賦型することにより、温熱ブラシ等の用途にも適用することができる。
その他、ホルマリン等の有害物質を除去(ベークアウト)する建材用途、熱による硬化促進に利用した接着剤用途、食品包装や物流資源等の保温・加温用途、瞬間発熱衣類や毛布その他の緊急用装着具等用途、温熱包帯等の医用材料の用途にも適用することができる。更に、本発明の発熱シートは、酸化反応を利用しているため、他の様々な用途に適用することができる。例えば、脱酸化剤としての食品の鮮度維持、金属の防錆、寝具、衣類、美術品等の防かび、防虫等の用途に適用することができる。
表1に示す配合組成の成形シートが得られるように、下記実施例1〜9及び比較例1〜5のように成形シートを作製した。そして、得られた成形シートの厚み、坪量、裂断長及び折曲強度を調べるとともに、該成形シートから下記のように発熱シートを作製し、その発熱特性(最大到達温度、発熱維持時間)及び水蒸気発生特性を調べた。それらの結果を表2及び表3に示す。
Figure 0003874783
〔実施例1〕
<原料組成物の配合>
被酸化性金属:鉄粉(45μメッシュ分級品)、同和鉄粉鉱業(株)製、商品名「RKH」、150g
繊維状物:パルプ繊維(NBKP、スキーナ(株)製、商品名「スキーナ」、平均繊維長さ=2.1mm)、20g、ポリビニルアルコール繊維(クラレ(株)製、商品名「VPB107−1」、2.0g
保水剤:活性炭(45μメッシュ分級品)、武田薬品(株)製、商品名「カルボラフィン」)、30g
凝集剤:カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業薬品(株)製、商品名「セロゲン」WS−C)0.5g、及びポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(日本PMC(株)製、商品名「WS547」)0.5g
水:工業用水、99800g
<抄紙条件>
上記原料組成物を用い、傾斜型短網小型抄紙機(高知県紙産業技術センター所有。)によって、ライン速度7m/分で抄紙して湿潤状態の成形シートを作製した。
<脱水・乾燥条件>
フェルトで挟持して加圧脱水し、そのまま120℃の加熱ロール間にライン速度7m/分で通し、含水率が5重量%以下になるまで乾燥した。
<固定化率の測定>
得られた成形シートの固定化率の算出は、成形シートを抄紙するのに用いた原料組成物の固形分重量と、得られた成形シートの重量とから以下の式で算出される。
固定化率(%)=(成形シート重量×100)/原料組成物の固形分重量
<繊維状物以外の成分の測定>
得られた成形シート中の繊維状物以外の成分は、原料組成物中の固形分重量、組成並びに成形シートの乾燥重量より以下の式で求めた。
原料組成物固形分の重量:Ms
原料組成物固形分中の繊維状物の含有率:a(%)
成形シートの乾燥重量:Mh
成形シート中の繊維状物以外の成分の含有率:b(%)
b=Mh/Ms×(100−a)
<成形シートの形態>
得られた成形シートは、表2に示すように、厚みが0.05〜1.6mm、坪量40〜1277g/m2であった。なお、厚みは、JIS P8118に準じ、成形シートの5
点以上を測定し、その平均値を厚みとして算出し、坪量は、少なくとも100cm2以上
の面積の成形シートの重量を測定し、その面積で除すことにより算出した。
〔裂断長の測定〕
裂断長は、得られた成形シートから長さ150mm×幅15mmの試験片を切り出した後、JIS P8113に準じ、引張試験機にチャック間隔100mmで装着し、引張速度20mm/minで引張試験を行い、下記計算式より算出した。
裂断長〔m〕=(1/9.8)×(引張強さ〔N/m〕)×106/(試験片坪量〔g/m2〕)
〔折り曲げ強度の測定〕
得られた成形シートから長さ150mm×幅15mmの試験片を切り出した後、該試験片をその長さ方向の略中央を支点として正逆反転させて繰り返し半折りに折り曲げ、当該成形シートに破断が生じるまでの折り曲げ回数を測定した。
<発熱シートの作製>
得られた成形シート(厚み0.14mm)を2枚重ね合わせてから、下記電解液をスプレー塗布して含浸させて含水率が36%の発熱シートを作製した。
<電解液>
電解質:精製塩(NaCl)
水:工業用水
電解液濃度:3wt%
〔発熱シートの温度特性〕
得られた発熱シートから50mm×50mmの試験片を切り出した後、該発熱シートにJIS Z208で測定される透湿度が5000g/(m2・24h)の透湿シートと、不透湿のシートとを両側に袋状に貼り合わせて包装する。
そして、容積4.2リットル、湿度1RH%以下とし、密封系内に2.1リットル/minの乾燥空気を供給可能な試験機を準備し、その内部に前記透湿シート側を上面として静置して発熱させる。
発熱シートの発熱温度は当該発熱シートの下側の温度を熱電対で測定した。
〔水蒸気発生量の測定〕
水蒸気発生量は、前記密閉系に排出される空気の湿度を湿度計で測定し、下記式(1)を用いて発熱開始後に発生する水蒸気量を求め、単位時間当たりの水蒸気量とした。そして、10分間の累積値を上記発生量として求めた。ここで、eは水蒸気圧(Pa)、esは飽和水蒸気圧(Pa:JIS Z8806より引用)、Tは温度(℃:乾球温度)、sはサンプリング周期(秒)である。
相対湿度U(%RH)=(e/es)×100
絶対湿度D(g/m3)=(0.794×10-2×e)/(1+0.00366T)
=(0.794×10-2×U×es)/〔100×(1+0.00366T)
単位空気容積P(リットル)=2.1×s/60
単位時間当たりの水蒸気量A(g)=P×D/1000 …(1)
〔実施例2〕
原料組成物の配合を下記のように変更し、パルプ繊維のCSFを20mlとし、前記抄紙機に換えてJIS P8209に準じたφ170mmの手抄き機を用い、抄紙ネットは熊谷理機工業(株)製の80meshを用いた。そして、300rpm、1分の撹拌条件で前記被酸化性金属や保水剤等の成分を繊維へ定着させ、圧力2MPaのプレス成形機によって3分間プレスして含水率が1重量%以下となるように脱水・乾燥し、表2に示す厚みの成形シートとした以外は、実施例1と同様にして作製した。
<原料組成物の配合>
被酸化性金属:鉄粉(45μメッシュ分級品、同和鉄粉鉱業(株)製、商品名「RKH」)、7.5g
繊維状物:パルプ繊維(NBKP、スキーナ(株)製、商品名「スキーナ」)、1.0g
保水剤:活性炭(45μメッシュ分級品、武田薬品(株)製、商品名「カルボラフィン」)、1.5g
凝集剤:カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業薬品(株)製、商品名「セロゲン」WS−C)0.025g、及びポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(日本PMC(株)製、商品名「WS547」)0.05g
水:工業用水、1490g
〔実施例3〕
パルプ繊維のCSFを150mlとした以外は、実施例2と同様にして作製した。
〔実施例4〕
原料組成物の使用量を2倍とした以外は実施例3と同様にして作製した。
〔実施例5〕
実施例1の成形シートを5枚重ね合わせてから電解液を含浸させた以外は、前記実施例1と同様にして作製した。
〔実施例6〕
パルプ繊維のCSFを460mlとした以外は、実施例2と同様にして作製した。
〔実施例7〕
鉄粉116g、パルプ繊維60g、活性炭24gとした以外は、実施例1の原料組成物の配合に準じ、実施例1と同様にして作製した。
〔実施例8〕
鉄粉5.8g、パルプ繊維3.0g、活性炭1.2gとした以外は、実施例2の原料組成物の配合に準じ、実施例2と同様にして作製した。
〔実施例9〕
繊維状物のPVA繊維の含有量を0.25gとした以外は実施例1と同様にして作製した。
〔比較例1、2〕
厚みを1.60mm(比較例1)、0.05mm(比較例2)とした以外は、実施例2と同様にして作製した。
〔比較例3〕
パルプ繊維のCSFを720mlとした以外は、実施例2と同様にして作製した。
〔比較例4〕
前記原料組成物にNaClを対原料組成物3重量%加えた以外は、実施例2と同様にして作製した。
〔比較例5〕
鉄粉3.3g、パルプ繊維6.0g、活性炭0.7gとした以外は、実施例2の原料組成物の配合に準じ、実施例2と同様にして作製した。
Figure 0003874783
Figure 0003874783
表2に示すように、実施例で得られた成形シートは、薄くて破れにくいものであり、表3及び図1に示すように、該成形シートを用いた発熱シートは、何れも高い発熱温度を示し、40℃以上の温度を1分以上維持し、発熱特性に優れるものであった。また、表3及び図2に示すように、水蒸気発生量が100mgを超えるものが殆どであった。さらに、発熱反応後においても柔軟性に優れるものであった。これに対し、比較例1、3〜5で得られた発熱シートは、表2及び表3並びに図3及び図4に示すように、比較例1は、発熱シートの発熱特性、水蒸気発生特性は実施例と同等の結果が得られているものの、成形シートは脆く容易に破断に至るほか、成形性にも劣っていた。比較例2は、成形性が悪く、シート状に成形することが困難であった。比較例3〜5は、発熱シートの発熱特性及び水蒸気発生量ともに悪く、特に、比較例3、4は成形性にも難があった。
本発明の発熱シートの一実施例による発熱特性を示す図である。 本発明の発熱シートの一実施例による水蒸気発生特性を示す図である。 比較例による発熱特性を示す図である。 比較例による水蒸気発生特性を示す図である。

Claims (1)

  1. 少なくとも叩解処理によりCSFを600ml以下にした繊維状物、被酸化性金属、凝集剤、保水剤及び水を含み、酸化助剤としての電解質を含まない原料組成物を空気雰囲気下で抄紙ネットを用いて抄紙し、脱水した後、60〜300℃で加熱乾燥し、前記繊維状物以外の成分を50重量%以上含み、含水率が20%以下、厚みが0.08〜1.2mm、JIS−P8113に規定される裂断長が100〜4000mの成形シートとし、該成形シートに前記電解質の電解液を含浸させる発熱シートの製造方法。
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