JP4233380B2 - 発熱成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気中の酸素と被酸化性金属との酸化反応に伴う発熱を利用した発熱成形体に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
空気中の酸素と被酸化性金属との酸化反応に伴う発熱を利用した発熱成形体の製造方法に関する従来技術としては、例えば、下記特許文献1に記載の技術が知られている。
【0003】
この技術は、水に繊維状物質を懸濁させ、これに鉄粉、保水剤としての活性炭、電解質等を加えて原料スラリーとし、該原料スラリーから抄紙して吸引脱水後、プレス加工によって含水率が5〜65wt%のシート状に脱水成形して発熱成形体を製造するものである。
【0004】
ところで、この技術で得られる成形体は、繊維状物質に鉄粉等が絡まり合った状態でプレス加工されているのみであるため、繊維状物質に対して鉄粉等の含有率が高くなると、引張強度や曲げ強度等の機械的強度や可撓性を有する成形体を得ることが困難であった。このため、身体部位の屈伸する部分に貼着する温熱シート等として用いるには難がある。また、成形後にロール状に巻き取ることもできないため、製造上にも課題を有していた。さらに、トリミング等の後処理を施すときにも、端部や表面から鉄粉等が脱落し易いため、その取り扱い性も悪く、得られる成形体の性能も低く成らざるを得なかった。
【0005】
一方、可撓性や鉄粉等の分散性を改善した発熱組成物として、下記特許文献2に記載の技術が知られている。この技術は、少なくとも鉄、活性炭、酸化促進剤及び水を含有してなる発熱組成物において、該鉄の少なくとも50wt%に、所定太さのスチールファイバーが束ねられてなる所定嵩密度のスチールウールを用い、該スチールウールの表面に前記鉄粉、活性炭等を含む所定の性状の混合物を付着せしめたものである。
【0006】
しかしながら、この発熱組成物は、スチールファイバーを束ねて所定嵩密度のスチールウールにして用いていることに加えて、前記混合物を、該スチールウールに振動を与えるか、なすりつけたりして該スチールファイバー表面に付着させているため、該混合物と該スチールファイバーとが均一に分散した状態を得ることが困難であった。このため、一部のスチールファイバーのみしか酸化反応に寄与することができず、その使用量に見合った十分な発熱特性を引き出すことできない。また、最終的に得られる成形体の形態も、スチールファイバーの形態に制約されるため、形態の自由度も低いものであった。
【0007】
また、発熱組成物の一部に繊維状金属材を用い、発熱組成物の偏りや塊の発生を抑えた技術として、下記特許文献3に記載の技術が知られているが、単に鉄粉の一部を繊維状金属材に換えて混合して得られた発熱構造体は、繊維状金属材が支持袋内で自由に移動が可能であるために、通気性を有する支持袋を傷つけてしまい、内容物がこぼれたり、発熱温度の制御ができなくなる場合がある。また、鉄粉の一部を繊維状金属材に変えて混合して得られた原料を、従来の粉体技術を用いて薄型に成形する際には、繊維状金属材の分散不良が生じ、均一な構造の成形体が得られない場合がある。
【0008】
【特許文献1】
特許第2572621号公報
【特許文献2】
特公平4−33832号公報
【特許文献3】
特開昭64−11543号公報
【0009】
従って、本発明の目的は、製造過程での成分の脱落を抑えることができるとともに、薄型で可撓性及び発熱特性に優れた発熱成形体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特定長さの繊維状の被酸化性金属を含む所定のスラリー状の組成物から製造された発熱成形体が、前記目的を達成し得ることを知見した。
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、繊維状の被酸化性金属、保水剤、及び繊維状物を含むスラリー状の組成物から製造された発熱成形体であって、前記被酸化性金属の長さが0.5〜50mmである発熱成形体を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
【0012】
本実施形態の発熱成形体は、繊維状の被酸化性金属、保水剤、及び繊維状物を含むスラリー状の組成物から成形シート(中間成形体)を抄造し、該成形シートに電解質を含ませて製造されたものである。
【0013】
前記被酸化性金属は、後述の繊維状物と絡み合いやすく、また得られた成形体の強度が高くなることから、屈曲していたり、カールしている形態のものが好ましいが、直線的に伸びた形態のものであってもよい。
【0014】
前記被酸化性金属の長さは0.5〜50mmであり、3〜10mmが好ましい。該被酸化性金属の長さが0.5mm未満であると、成形体の強度低下が起こる場合がある。該被酸化性金属の長さが50mmを超えると、前記組成物を調整した際の固形成分の均一な分散を得ることが困難となり、薄肉で均一な成形シートを得ることが困難となる。ここで、被酸化性金属の長さは、顕微鏡による実測により測定される値であり、当該酸化性金属が屈曲していたりカールしている場合には、伸長状態における長さをいう。
【0015】
前記被酸化性金属の太さは1〜1000μm、特に5〜500μmが好ましい。該被酸化性金属が細すぎると、該被酸化性金属の嵩が非常に高くなるため、前記組成物中での該被酸化性金属の均一な分散が困難となり、安定した成形シートが得られなくなる場合がある。また、組成の偏りが発生したり、構造体強度が低下したりする場合がある。該被酸化性金属が太すぎると被酸化性金属の表面積が小さくなり、必要とされる発熱性能が低下する場合がある。
【0016】
前記被酸化性金属のアスペクト比は10〜50000、特に20〜10000が好ましい。該被酸化性金属のアスペクト比をこのような範囲とすることで、低い密度で所望の強度を有する成形シートを得ることができる。
【0017】
前記被酸化性金属には、従来からこの種の発熱成形体に通常用いられている材質のものを特に制限無く用いることができる。例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、カルシウム等が挙げられ、これらの中でも取り扱い性、安全性、製造コストの点から鉄が好ましく用いられる。
【0018】
前記成形シート中の前記被酸化性金属の配合量は、10〜95質量%、特に30〜80質量%が好ましい。該配合量が10質量%未満であると所望の発熱温度が得られなくなる場合がある。また、成形シートを構成する後述の繊維状物や接着成分(凝集剤、増粘剤等)が増加するため、使用感が劣るものとなる場合がある。該配合量が95質量%を超えると保水剤による水分供給等が不十分となり、発熱反応が起きにくくなって発熱性能が低下するおそれがある。また、該繊維状物や該接着成分が少なくなるため、曲げ強度や引張強度等の機械的強度が低下する場合がある。ここで、成形シート中の被酸化性金属の配合量は、JIS P8003に準じた灰分の測定により、残存質量を酸化した鉄質量とみなして求めることができる。
【0019】
前記保水剤には、従来から発熱成形体に通常用いられている保水剤を特に制限無く用いることができる。該保水剤は、水分保持剤として機能するとともに、被酸化性金属への酸素保持/供給剤としても機能する。該保水剤としては、例えば、活性炭(椰子殻炭、木炭粉、暦青炭、泥炭、亜炭)、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、ゼオライト、パーライト、バーミキュライト、シリカ、カンクリナイト、フローライト等が挙げられ、これらの中でも保水能、酸素供給能、触媒能を有する点から活性炭が好ましく用いられる。これら保水剤は、単独で又は二種以上を併用することができる。該保水剤には、被酸化性金属との有効な接触状態を形成できる点から粒径が0.1〜500μm、特に0.1〜200μmのものを、50質量%以上含有するものを用いることが好ましい。保水剤には、上述のような粉体状の形態以外の形態のものを用いることもでき、例えば、活性炭繊維等の繊維状の形態のものを用いることもできる。
【0020】
前記成形シート中の前記保水剤の配合量は0.5〜60質量%、特に1〜50質量%であることが好ましい。0.5質量%未満であると、被酸化性金属が酸化反応により人体温度以上に温度上昇する程度に反応を持続させるために必要な水分を成形シート中に蓄積できなくなる場合がある。また、得られる発熱成形体の通気性が損なわれるため、酸素供給が悪くなって発熱効率に劣る場合がある。60質量%を超えると、得られる発熱成形体の発熱量に対する熱容量が大きくなるため、発熱温度上昇が小さくなり、人が温かいと体感できなくなる場合がある。また、後述の繊維状物や前記被酸化性金属、前記接着成分の配合量が少なくなるため、該保水剤が脱落したり、機械的強度が低下する場合がある。
【0021】
前記繊維状物としては、例えば、天然繊維状物としては植物繊維(コットン、カボック、木材パルプ、非木材パルプ、落花生たんぱく繊維、とうもろこしたんぱく繊維、大豆たんぱく繊維、マンナン繊維、ゴム繊維、麻、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻、椰子、いぐさ、麦わら等)、動物繊維(羊毛、やぎ毛、モヘア、カシミア、アルカパ、アンゴラ、キャメル、ビキューナ、シルク、羽毛、ダウン、フェザー、アルギン繊維、キチン繊維、ガゼイン繊維等)、鉱物繊維(石綿等)が挙げられ、合成繊維状物としては、例えば、半合成繊維(アセテート、トリアセテート、酸化アセテート、プロミックス、塩化ゴム、塩酸ゴム等)、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。また、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、デンプン、ポリビニルアルコール若しくはポリ酢酸ビニル又はこれらの共重合体若しくは変性体等の単繊維、又はこれらの樹脂成分を鞘部に有する芯鞘構造の複合繊維を用いることができる。そしてこれらの中でも、繊維どうしの接着強度が高く、繊維どうしの融着による三次元の網目構造を作り易すく、パルプ繊維の発火点よりも融点が低い点からポリオレフィン、変性ポリエステルが好ましく用いられる。また、枝分かれを有するポリオレフィン等の合成繊維も被酸化性金属や保水剤との定着性が良好なことから好ましく用いられる。これらの繊維は、単独で又は二種以上を併用することができる。また、これらの繊維は、その回収再利用品を用いることもできる。そして、これらの中でも、前記被酸化性金属、前記保水剤の定着性、得られる発熱成形体の柔軟性、空隙の存在からくる酸素透過性、製造コスト等の点から、木材パルプ、コットンが好ましく用いられる。
【0022】
前記繊維状物は、そのCSF(Canadian Standard Freeness)が、600ml以下、特に450ml以下であることが好ましい。600mlを超えると繊維状物への前記保水剤等の成分の定着率が悪くなり、所定の配合量を保持できなくなって発熱性能に劣るものとなったり、均一な厚みの成形シートが得られない等成形不良となる場合がある。また、繊維状物と該成分との定着が悪いことに起因する該成分の脱落、該成分と該繊維状物との絡み合い、水素結合に由来する結合強度が低下するため、曲げ強度や引張強度等の機械的強度が低下したり、加工性が悪くなる。
前記繊維状物のCSFは、低い程好ましいが、通常のパルプ繊維のみの抄紙では、繊維状物以外の成分比率が低い場合、CSFが100ml未満であると濾水性が非常に悪く、脱水が困難となって均一な厚みの成形シートが得られなかったり、乾燥時にブリスター破れが生じたりする等の成形不良となったりする。本発明においては、繊維状物以外の成分比率が高く、前記被酸化性金属が成形シートの見かけ比重を低くするため、濾水性も良好で均一な厚みの成形シートを得ることができる。また、CSFが低い程繊維状物と該繊維状物以外の成分との定着性が良好となる。
繊維状物のCSFの調整は、叩解処理などによって行うことができる。CSFの低い繊維と高い繊維とを混ぜ合わせ、CSFの調整を行っても良い。
【0023】
前記繊維状物は、そのゼータ電位がマイナス(負)であることが好ましい。ここで、ゼータ電位とは、荷電粒子界面と溶液間のずり面におけるみかけの電位をいい、流動電位法、電気泳動法等により測定される。そのゼータ電位がプラスになると、繊維状物への前記被酸化性金属や前記保水剤等の成分の定着が著しく悪化し、所定の配合量を保持できずに発熱性能が劣るものとなる場合がある。また、排水に多量の該成分が混じってロスが多くなり、生産性、環境保全にも悪影響を及ぼす場合がある。
【0024】
該繊維状物の平均繊維長は0.1〜50mm、特に0.2〜20mmが好ましい。該平均繊維長が短すぎると前記被酸化性金属との絡み合いが十分に得られなくなるため、得られる成形シートの曲げ強度や引張強度等の機械的強度が十分に得られなくなる場合がある。また、該繊維状物の層が偏って密に形成されやすくなるため、成形シートの通気性が損なわれて酸素供給が悪くなり、得られる発熱成形体の発熱性能が低下する場合がある。該平均繊維長が長すぎると成形シート中に該繊維状物が均一に分散しづらくなり、一様な機械的強度が得られなくなる場合がある。また、均一な肉厚の成形シートが得られなかったり、繊維間隔が広くなり、繊維状物による保水剤等の成分の保持能力が低くなり、該成分が脱落し易くなる場合がある。
【0025】
前記成形シート中の前記繊維状物の配合量は、2〜50質量%、特に5〜40質量%であることが好ましい。該配合量が2質量%未満であると、被酸化性金属、保水剤等の成分の脱落防止効果が十分に得られなかったり、得られる発熱成形体が非常に脆くなったりする場合がある。該配合量が50質量%を超えると、発熱成形体の発熱量に対する熱容量が大きくなり、温度上昇が小さくなる場合がある。また、得られる発熱成形体中の前記被酸化性金属や保水剤等の成分が少なくなるため、所望の発熱性能が得られない場合がある。
【0026】
前記成形シートには、後述する増粘剤、凝集剤が添加されていてもよい。
また、前記成形シートには、必要に応じ、サイズ剤、着色剤、紙力増強剤、歩留向上剤、填料、pHコントロール剤、嵩高剤等の抄紙の際に通常用いられる添加物を特に制限無く添加することができる。該添加物の添加量は、添加する添加物に応じて適宜設定することができる。
【0027】
前記成形シートは、その厚みが0.05〜10mm、特に0.1〜5mmであることが好ましい。該成形シートの厚みが薄すぎると発熱性能、機械的強度、前記被酸化性金属や前記保水剤等の成分の定着率の低下が起こったり、均一の肉厚や組成分布が安定して得られない場合がある。また、ピンホールの発生等によるシートの破壊等が発生しやすく、生産性及び加工性に支障を来す場合がある。該成形シートの厚みが厚すぎると急激に成形シートの機械的強度が低下し、簡単に脆性破壊を起こしやすくなる場合がある。また、該成形シートが非常に硬くなり、例えば、肘、膝、顔等の身体部位の屈伸する部位に温熱シート等として貼付した場合、装着性が悪く違和感を生じる場合がある。さらに、生産性においても、繊維層の形成時間や乾燥時間の遅延が起こりやすく、操業性に劣り、発熱性能の低下や、割れたり、折れたりする等加工性に劣る場合がある。
【0028】
前記成形シートは、坪量が10〜1000g/m2、特に50〜600g/m2であることが好ましい。該成形シートの坪量が10g/m2未満であると被酸化性金属等の中でも比重の大きなものを使用する場合等において、特に安定したシートを形成することが困難となる場合がある。該成形シートの坪量が1000g/m2を超えると非常に重量感が出て使用感が悪くなったり、生産性や操業性等が悪くなる場合がある。
【0029】
前記成形シートの裂断長は100m以上、特に150〜4000mが好ましい。該裂断長が短すぎると、操業時に成形体の破断や切断が生じる等して安定的に成形体を形成できない場合がある。また、加工時にも同様の理由によって製品加工ができなくなったり、使用時においても、腰がなくぼろぼろと直ぐ崩壊し、使用感に劣る場合がある。該裂断長が長すぎると、発熱成形体を構成する繊維状物、接着成分が増加するため、硬くて剛直になったり、発熱性能に劣るものとなったりする場合がある。
【0030】
前記成形シートの弾性率は150〜2000MPa、特に200〜1000MPaが好ましい。該弾性率が150MPa未満であると成形シートの強度が低いため、安定的に成形体を成形できなくなったり、腰がなくぼろぼろとすぐに崩れてしまい、使用感に劣る場合がある。該弾性率が高すぎると剛直で柔軟性のないものとなり、使用に適さなくなる場合がある。
【0031】
前記電解質には、従来からこの種の発熱成形体に通常用いられている電解質を特に制限なく用いることができる。該電解質としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属若しくは重金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物又は水酸化物等が挙げられる。これらの中でも、導電性、化学的安定性、生産コストに優れる点から塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化鉄(第1、第2)等の各種塩化物が好ましく用いられる。これらの電解質は、単独で又は二種以上を併用することもできる。
【0032】
前記発熱成形体中の前記電解質の配合量は、得られる発熱成形体中の水質量比で0.5〜30質量%、特に1〜25質量%であることが好ましい。該配合量が0.5質量%未満であると、得られる発熱成形体の酸化反応が抑制される場合がある。また、発熱機能に必要な電解質を確保するために、該発熱成形体中の水分の比率が多くなり、その結果、該発熱成形体の比率が大きくなり、発熱温度上昇が小さくなる場合がある。該配合量が30質量%を超えると余分な電解質が析出し、得られる発熱成形体の通気性が損なわれる場合がある。また、発熱機能に必要な電解質を確保するために、該発熱成形体中の水分比率が低くなり、十分な水が被酸化性金属等に供給されず、発熱性能が低下したり、該発熱成形体に均一に電解質を配合することが困難となる場合がある。
【0033】
前記発熱成形体は、含水率(重量含水率、以下同じ。)が10〜80%、特に20〜60%であることが好ましい。該含水率が10%未満であると酸化反応を持続するために必要な水分が確保できず、酸化反応が途中で終了してしまう場合がある。また、該発熱成形体に均一に水分を供給することが困難となり、均一な発熱性能を得ることが困難となる場合がある。該含水率が80%を超えると発熱成形体の発熱量に対する熱容量が大きくなり、発熱温度上昇が小さくなる場合がある。また、該発熱成形体の通気性が損なわれ、発熱性能が低下したり、保形性や機械的強度が低下したり、発熱成形体の熱容量が増加して発熱温度が上がらない場合がある。
【0034】
前記発熱成形体の密度は0.60〜1.50g/cm3、特に0.70〜1.0g/cm3が好ましい。該密度が0.60g/cm3未満であると被酸化性金属とそれ以外の成分との絡み合いが弱くなりすぎてしまい、発熱成形体の強度が低下する場合がある。また、発熱成形体表面に被酸化性金属の端部が露出してしまい、使用に適さなくなるおそれがある。該密度が1.50g/cm3を超えると成形体の通気性が阻害されて発熱性能が低下する場合がある。
【0035】
前記発熱成形体は、後述する実施例の方法で測定される発熱到達温度が30〜100℃、特に35〜90℃であることが好ましい。発熱成形体の発熱到達温度は、商品用途によって急激な発熱が必要な場合や比較的低温で長時間の持続が必要な商品等、前述の配合組成の組み合わせにより任意に設計ができる。
【0036】
前記発熱成形体は、後述する実施例の方法で測定される水蒸気発生量が50〜1000mg、特に100〜600mgであることが好ましい。水蒸気発生量は、発熱到達時間と同様に商品用途によって急激な発熱が必要な場合や比較的低温で長時間の持続が必要な商品等、前述の配合組成の組み合わせにより任意に設計ができる。
【0037】
次に、前記発熱成形体の製造方法をその好ましい実施形態に基づいて説明する。
【0038】
先ず、少なくとも前記被酸化性金属、前記保水剤、前記繊維状物、及び水を含む原料組成物(スラリー)を調製する。
【0039】
原料組成物の濃度(固形分の濃度)は、0.05〜10質量%、特に0.1〜2質量%であることが好ましい。0.05質量%未満であると大量の水が必要となる場合がある。また、成形シートの成形に時間を要してしまって均一な厚みのシートを成形することが困難となる場合がある。該濃度が10質量%を越えると原料組成物の固形分の分散不良が発生し易くなり、得られるシートの表面性が悪くなったり、均一な厚みのシートが得られない場合がある。
【0040】
前記原料組成物には、前記被酸化性金属繊維やその他の成分をより均一にスラリー化するために、増粘剤を添加することが好ましい。該増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアマイド、ポリアクリルアミド、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダなどが挙げられる。これらの中でも、低濃度で高い分散効果を有すること、水の硬度や薬剤の影響を受けず、凝集体への影響を与えない等の点から非イオン性の増粘剤、例えばポリエチレンオキサイドを用いることが好ましい。これらの増粘剤は、単独で又は二種以上を併用することができる。
【0041】
前記原料組成物には、前記繊維状物以外の成分を良好に定着させる点から凝集剤を添加することが好ましい。
該凝集剤としては、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、硫酸第一鉄等の金属塩からなる無機凝集剤;ポリアクリルアミド系、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物、ポリ(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル系、カルボキシメチルセルロースナトリウム系、キトサン系、デンプン系、ポリアミドエピクロヒドリン系等の高分子凝集剤;ジメチルジアリルアンモニウムクロライド系若しくはエチレンイミン系のアルキレンジクロライドとポリアルキレンポリアミンの縮合物、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物等の有機凝結剤;モンモリロナイト、ベントナイト等の粘土鉱物;コロイダルシリカ等の二酸化珪素若しくはその水和物;タルク等の含水ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。そして、これら凝集剤の中でも成形シートの表面性、地合い形成、成形性の向上、成分の定着率、紙力向上の点からアニオン性のコロイダルシリカやベントナイト等とカチオン性のデンプンやポリアクリルアミド等の併用やアニオン性のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩とカチオン性のポリアミドエピクロルヒドリン系のカチオン性とアニオン性の薬剤の併用が特に好ましい。上述の組み合わせ以外でも、これらの凝集剤は単独で又は二種以上を併用することもできる。
【0042】
前記凝集剤の添加量は、前記原料組成物の固形分に対して、0.01〜5質量%、特に0.05〜1質量%であることが好ましい。該添加量が0.01質量%未満であると凝集効果が十分に得られないため、抄紙時における保水剤等の成分の脱落が多くなったり、原料組成物が不均一になり、肉厚及び組成の均一な成形シートを得ることが困難な場合がある。該添加量が5質量%を超えると乾燥時の乾燥ロールに貼りついたり、破れ、焼け、焦げを発生させる主原因となり、生産性に悪影響を及ぼしたり、原料組成物の電位バランスを崩し、抄紙時の白水への保水剤等の成分の脱落量が多くなる場合がある。また、成形シートの酸化反応が進行し、発熱特性や強度等の保存安定性が低下する場合がある。
【0043】
次に、前記原料組成物を抄紙して前記成形シートを成形する。
前記成形シートの抄紙方法には、例えば、連続抄紙式である円網抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などを用いた抄紙方法、バッチ方式の抄紙方法である手漉法等が挙げられる。
【0044】
前記成形シートは、抄紙後における形態を保つ(保形性)点や、機械的強度を維持する点から、含水率(重量含水率、以下同じ。)が70%以下、特に60%以下となるまで脱水させることが好ましい。抄紙後の成形シートの脱水方法は、例えば、吸引による脱水方法、加圧空気を吹き付けて脱水する方法、加圧ロールや加圧板で加圧して脱水する方法等が挙げられる。
【0045】
前記被酸化性金属(通常雰囲気下において加熱反応性を有する)を含有する成形シートを、積極的に乾燥させて水分を分離することにより、製造工程中における被酸化性金属の酸化抑制、長期の保存安定性に優れた成形シートを得ることが可能となる。また、乾燥後の前記繊維状物への被酸化性金属の担持力を高めてその脱落を抑える点や、熱溶融成分、熱架橋成分の添加による機械的強度の向上が期待できる点から、前記成形シートの抄紙後で前記電解質の電解液を含有させる前に該成形シートを乾燥させることが好ましい。
【0046】
前記成形シートは加熱乾燥によって乾燥することが好ましい。この場合、加熱乾燥温度は、60〜300℃、特に80〜250℃であることが好ましい。成形シートの加熱乾燥温度が低すぎると、乾燥時間が長くなるため、水分の乾燥とともに、被酸化性金属の酸化反応が促進されてしまい、発熱成形体の発熱性の低下を引き起こす場合がある。また、成形シートの表裏層のみ被酸化性金属の酸化反応が促進され、うす茶色に変色する場合がある。加熱乾燥温度が高すぎると、保水剤等の性能劣化を招き、発熱成形体の発熱効果が低下する場合がある。また、成形体内部で急激に水分が気化して成形体の構造が破壊されたりする場合がある。
【0047】
乾燥後における成形シートの含水率は、20%以下、特に10%以下であることが好ましい。該含水率が20%を超えると長期保存安定性に劣り、例えば巻きロール状態で一時保存しておく場合等該ロールの厚み方向で水分の移動が起こり、発熱性能、機械的強度に変化を来す場合がある。
【0048】
該成形シートの乾燥方法は、成形シートの厚さ、乾燥前の成形シートの処理方法、乾燥前の含水率、乾燥後の含水率等に応じて適宜選択することができる。該乾燥方法としては、例えば、加熱構造体(発熱体)との接触、加熱空気や蒸気(過熱蒸気)の吹き付け、真空乾燥、電磁波加熱、通電加熱等の乾燥方法が挙げられる。また、前述の脱水方法と組み合わせて同時に実施することもできる。
【0049】
前記成形シートの成形(脱水、乾燥)は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましいが、上述のように成形シートに酸化助剤となる電解質を含有していないので、必要に応じて通常の空気雰囲気下で成形を行うこともできる。このため、製造設備を簡略化することができる。また、必要に応じ、トリミングを施したり、加工処理により形態を変更する等の加工を施すこともできる。得られた成形シートは、薄くて破れにくいので、必要に応じ、ロール状に巻き取ることができる。また、得られた成形シートを、単独若しくは重ねて又は紙、布(織布又は不織布)、フィルム等の他のシートと重ねて、加圧したり、さらには加圧しエンボス加工を行うことにより、複数のシートを積層一体化させたり、凹凸状の賦型を行うこともできる。
【0050】
次に、前記成形シートに前記電解質を含有させる。この電解質を含有させる工程は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましいが、電解質をその電解液の含浸により添加する場合には、添加直後の酸化反応がゆるやかなため、通常の空気雰囲気下で該電解質を含有させることもできる。
【0051】
前記成形シートに前記電解質を含有させる方法は、抄紙後における当該成形シートの処理方法、含水率、形態等に応じて適宜設定することができる。該電解質を含有させる方法としては、例えば、前記成形シートに、前記電解質の所定濃度の電解液を含浸させる方法、前記電解質の所定粒径のものを固体のまま添加して成形シートに含有させる方法等が挙げられ、これらの中でも、成形シートに電解質を均一に含有させることができる点、含水率の調整が同時に行える点から、所定濃度の電解液を含浸させる方法が好ましい。
【0052】
上述のように前記電解質をその電解液で前記成形シートに含浸させる方法は、成形シートの厚み等の形態、含水率に応じて適宜選択することができる。該含浸方法には、該電解液を該成形シートにスプレー塗工する方法、刷毛等で塗工する方法、該電解液に浸漬する方法、グラビアコート法、リバースコート法、ドクターブレード法等が挙げられ、これらの中でも、電解質を均一に分布でき、簡便で、設備コストも比較的少なくて済む点からスプレー塗工する方法が好ましい。
【0053】
上述のように成形シートに電解質を含有させた後、必要に応じて含水率を調整し、安定化させて発熱シート(発熱成形体)とする。そして必要に応じ、トリミング、二枚以上積層化等の処理を施し、所定の大きさに加工したり、折曲加工を施すことができる。
【0054】
得られた発熱シートは、その表面を、酸素透過性を有する被覆層で被覆する。該被覆層は、その全面に酸素透過性を有していてもよく、部分的に酸素透過性を有していてもよい。該被覆層には酸素透過性を有するものであればその材質に特に制限はない。該被覆層は、例えば、紙、不織布、多微孔質膜、微細な孔を設けた樹脂フィルム等を発熱シートの表面に積層して設けることができる。また、合成樹脂塗料やエマルション塗料等を発熱シートに含浸あるいは塗布させて設けることもできる。
【0055】
また、該被覆層の酸素透過性により、発熱・水蒸気発生特性を任意に制御することもできる。酸素透過性の一つの指標としては、透湿度等が挙げられる。例えば、透湿度の高い被覆層を選定することで、短時間で高温で高い水蒸気発生特性を有する発熱シートを得ることができ、透湿度の低い被覆層を選定することで、長時間に亘って発熱、水蒸気発生特性の緩やかな発熱シートを得ることができる。
【0056】
得られた発熱シートは、使用するまでに酸素と接触するのを避けるため、非酸素透過、非水分透過性の包装袋等に収容されて提供される。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の発熱成形体は、特定の長さを有する繊維状の前記被酸化性金属が用いられているので、従来に比べて製造工程における構成成分の脱落を抑えることができるとともに、薄型で可撓性及び発熱特性に優れている。また、本実施形態の発熱成形体は、前記被酸化性金属を含むスラリー状の原料組成物から湿式抄造によって製造されているので、原料組成物の固形分が均一に分散されており、発熱特性や強度特性に優れている。
【0058】
また、上述のように、前記原料組成物中に酸化助剤となる電解質が含まれていないので、懸濁液中でのイオン濃度が低くなることによって、当該原料組成物中における被酸化性金属の分散性が良好となる。そして、原料組成物の調製中において被酸化性金属と繊維状物とを実質的に接触させることにより、繊維状物の表面に被酸化性金属が均一に定着される。例えば、酸化助剤となる電解質が配合された懸濁液中では、該系内の塩濃度が高くなることにより、前記被酸化性金属と前記繊維状物との界面の電気二重層が圧縮されるため、該被酸化性金属と該繊維状物との接触が著しく阻害され、該繊維状物の表面に該被酸化性金属が定着することが困難となり、肉厚が薄く且つ被酸化性金属や他の成分が多く充填されたシートを成形することが困難となる。また、上記のような塩濃度が高い系では、凝集剤による定着も同様の理由により非常に困難となり、得られる発熱成形体の発熱特性は著しく劣るものとなる。さらに、水中の酸素と反応して酸化を引き起こし、発熱性能の低下を引き起こす場合がある。またさらに、該成形シートは、空気中の酸素と反応し易く、長期保存安定性に劣ったり、抄紙機等の成形機、加工機が錆び易くなる場合がある。従って、このため、得られた発熱成形体はその発熱特性が優れたものである。
【0059】
また、電解質を含まない成形シート(中間成形体)を予め乾燥成形した後に電解質を含ませているので、成形シート含有させる電解質量及び発熱シートの含水率を容易に制御することができる。また、ある特定の部分にのみ含浸させるたり、任意の部分にパターン形状させることで、発熱する部分としない部分とを区分したり(例えば、同一面状において区分したり)、製造工程中における被酸化性金属の酸化を極力抑えたりすることができ、部分的に発熱部分を有したり、良好な発熱特性を有する発熱成形体を得ることができる。
【0060】
また、シート状で機械的強度にも優れているため、折り曲げたりして形態を付与することができる。また、成形シートを重ねて厚みを容易に調整することができるため、形態の自由度の高いものである。
【0061】
本発明は、前記実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【0062】
本発明の発熱成形体は、前述のように、予め成形シートを成形し、該成形シートに電解質を後添加することにより製造することが好ましいが、前記原料組成物に予め前記電解質を添加したものから発熱シートを抄紙し、必要に応じ脱水した後、加熱乾燥させて製造することもできる。
【0063】
本発明の発熱成形体は、前記実施形態のように、湿式抄造によって製造することが好ましいが、原料組成物の粘度を調整することによって、押出成形、鋳込み成形(キャスティング)又は塗工によって製造することもできる。
【0064】
本発明の発熱成形体は、前記実施形態のように、シート状の形態であることが好ましいが、製造方法に応じて、立体形状を付与することもできる。特に、湿式抄造や鋳込み成形よる場合には、立体形状(例えば、中空品や容器形状)のものを得ることが出来るため、以下のような幅広い用途に対応した立体形状の発熱成形体を得ることができる。
【0065】
本発明の発熱成形体は、超薄型カイロとしての用途以外に、その発熱機能や水蒸気発生機能と各種機能剤とを組み合わせることで、種々の用途に適用することができる。例えば、洗浄・除菌、ワックス徐放、芳香、消臭等の諸機能と組み合わせたホットシートとして、フローリング、畳み、レンジ周り、換気扇等のハウスケア用途、空間を快適にするエアケア用途、車等の洗浄、ワックスかけ等のカーケア用途、顔、身体の洗浄、除菌、保湿、メイク落とし等のスキンケア用途に適用することができる。
また、パック剤と組み合わせた温熱パックとして、保湿、くまとり、しわとり、くすみとり等のスキンケア用途、視力改善用のアイケア用途、巴布剤と組み合わせたホットパップ(温熱巴布)として、首、肩、足、腰等の痛みや生理痛の緩和等のヘルスケア用途、ヘアキャップと組み合わせた温熱キャップとして、パーマー、カラーリング、育毛促進等の毛髪ケア用途等に適用することができる。更に、凹凸形状を賦型することにより、温熱ブラシ等の用途にも適用することができる。
その他、ホルマリン等の有害物質を除去(ベークアウト)する建材用途、熱による硬化促進に利用した接着剤用途、食品包装や物流資源等の保温・加温用途、瞬間発熱衣類や毛布その他の緊急用装着具等用途、温熱包帯等の医用材料の用途にも適用することができる。
更に、本発明の発熱成形体は、酸化反応を利用しているため、他の様々な用途に適用することができる。例えば、脱酸化剤として食品等の鮮度維持、金属の防錆等の用途に適用することができる。
【0066】
【実施例】
下記実施例1〜7及び比較例1〜5のように成形シート(中間成形体)を作製した。そして、得られた成形シートの厚み、坪量、密度、最大点応力及び裂断長を調べるとともに、該成形シートから下記のように発熱シート(発熱成形体)を作製し、発熱特性(最大到達温度、発熱維持時間)及びその製造時の成分の脱落性を調べた。それらの結果を表1に示す。
【0067】
〔実施例1〕
<原料組成物の配合>
被酸化性金属:鉄(日本スチールウール株式会社製「ボンスター#0000」を繊維長5mmにカットしたもの)7.5g
繊維状物:パルプ繊維(NBKP、製造者:フレッチャー チャレンジ カナダ、商品名「Mackenzi」、CSF200ml)1g
保水剤:活性炭(45μmメッシュ分級品、武田薬品(株)製、商品名「カルボラフィン」)1.5g
凝集剤:カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業薬品(株)製、商品名「セロゲン WS−C」)0.025g、及びポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(日本PMC(株)製、商品名「WS547」)0.05g
水:工業用水2000g
【0068】
<成形シートの作製>
上記原料組成物を300rpmで1分間の撹拌条件で撹拌した。そして、JIS P8209に準じてφ170mmの手抄き抄紙機及び熊谷理機工業(株)製80mesh抄紙ネットを用いて抄紙を行った。そして、乾燥温度200℃でプレス成形機によって3分間プレスし、含水率が1質量%以下、密度が0.8g/cm3以上となるように脱水及び乾燥を行って成形シートを得た。
【0069】
<発熱シートの作製>
得られた成形シート(厚み0.5〜0.7mm)を50×50mmにカットし、下記電解質溶液をスプレー塗布して含浸させて含水率が36%の発熱シートを作製した。
<電解質溶液>
電解質:精製塩(NaCl)
水:工業用水
電解液濃度:5質量%
【0070】
<成形シートの厚み、坪量及び密度測定>
得られた成形シートは、表1に示すように、厚みが0.05〜1.7mm、坪量40〜1200g/m2、密度が0.6〜1.0g/cm3であった。なお、厚みは、JIS P8118に準じ、成形シートの5点以上を測定し、その平均値を厚みとして算出した。また、坪量は、少なくとも100cm2以上の面積の成形シートについて重量を測定し、その面積で除すことにより算出した。さらに、密度は、得られた坪量をその厚みで除すことにより算出した。
【0071】
〔裂断長の測定〕
裂断長は、得られた成形シートから長さ150mm×幅15mmの試験片を切り出した後、JIS P8113に準じ、引張試験機にチャック間隔100mmで装着し、引張速度20mm/minで測定した。
【0072】
〔発熱シートの発熱特性〕
得られた発熱シートから50mm×50mmの試験片を切り出した後、該発熱シートにJIS Z208で測定される透湿度が5000g/(m2・24h)の透湿シートと、不透湿のシートとを両側に袋状に貼り合わせて包装する。
そして、容積4.2リットル、湿度1RH%以下とし、密封系内に2.1リットル/minの乾燥空気を供給可能な試験機を準備し、その内部に前記透湿シート側を上面として静置して発熱させる。
発熱シートの発熱温度は当該発熱シートの下側の温度を熱電対で測定した。
【0073】
〔発熱シート製造時の成分の脱落性評価〕
得られた成形シート上に市販のPPC用紙を重ね、上からφ45mm、1kgの分銅を載せて圧力をかけた後、成形シートを固定しつつPPC用紙を水平に一定速度で5cm移動させる。これによって生じた摩擦力で成形体の成分が転写された状態のPPC用紙のハンター白色度を分光色差計(日本電色工業(株)製、「NF777」)で測定し、発熱シート製造時の成分の脱落性を下記の3段階で評価した。なお、市販のPPC用紙の白色度は90であった。
○:白色度80超〜90、加圧面の一部のみ黒色に着色
△:白色度70超〜80、加圧面の全体がうすく黒色に着色
×:白色度0〜70、加圧面全体が黒色に着色
【0074】
〔実施例2〕
被酸化性金属の繊維長を1mmとした以外は、実施例1と同様にして発熱シートを作製した。
【0075】
〔実施例3〕
被酸化性金属の繊維長を10mmとした以外は、実施例1と同様にして発熱シートを作製した。
【0076】
〔実施例4〕
成形シートの密度を0.640g/cm3とした以外は、実施例1と同様にして発熱シートを作製した。
【0077】
〔実施例5〕
成形シートの密度を0.752g/cm3とした以外は、実施例1と同様にして発熱シートを作製した。
【0078】
〔実施例6〕
成形シートの密度を0.900g/cm3とした以外は、実施例1と同様にして発熱シートを作製した。
【0079】
〔実施例7〕
被酸化性金属の繊維長を45mmとした以外は、実施例1と同様にして発熱シートを作製した。
【0080】
〔比較例1〕
実施例1で用いた被酸化性金属をミキサーで乾式粉砕し、繊維長を0.3mmとした以外は、実施例1と同様にして発熱シートを作製した。
【0081】
〔比較例2〕
被酸化性金属の繊維長を70mmとした以外は、実施例1と同様にして発熱シートを作製した。
【0082】
〔比較例3〕
被酸化性金属として平均粒径45μmの鉄粉(同和工業(株)製、商品名「RKH」)を使用し、成形シートの密度を0.823g/cm3とした以外は、実施例1と同様にして発熱シートを作製した。
【0083】
〔比較例4〕
成形シートの密度を0.751g/cm3とした以外は、比較例3と同様にして発熱シートを作製した。
【0084】
〔比較例5〕
実施例1に用いた被酸化性金属を束ね、これに実施例1の被酸化性金属以外の原料組成物の固形分を下記のよう付着させて発熱シートを作製した。
被酸化性金属を150×150mmの面積にまんべんなく広げ、これに活性炭1.5g、パルプ繊維1.0g及び水3.6gの混合物を均一に付着させた
【0085】
【表1】
【0086】
表1に示すように、実施例により得られた成形シートは、成分の脱落が抑えられており、強度的にも優れているため、発熱シートの製造を良好に行うことができた。また、得られた発熱シートは薄型で可撓性を有し、発熱特性も優れたものであった。これに対し、比較例1の成形シートは、強度が弱く可撓性に劣るものであった。また、比較例2では成形シート自体の成形が困難であった。さらに、繊維状の被酸化性金属に変えて鉄粉を用いた比較例3、4の成形体は、成分が容易に脱落した。また、成形シートを被酸化性金属の束にそれ以外の成分を擦り付けて成形した比較例5では、成分が脱落し易く強度も低いため、発熱シートの製造も困難であった。
【0087】
【発明の効果】
本発明によれば、製造過程での成分の脱落を抑えることができるとともに、薄型で可撓性及び発熱特性に優れた発熱成形体が提供される。
Claims (4)
- 繊維状の被酸化性金属、保水剤、及び繊維状物を含むスラリー状の組成物から製造された発熱成形体であって、
前記発熱成形体は、前記組成物の抄造により成形されており、
前記被酸化性金属は、鉄であり、該被酸化性金属の長さが、0.5〜50mmであり、該被酸化性金属のアスペクト比が、10〜50000であり、
前記繊維状物のCSFが、100ml以上、600ml以下である発熱成形体。 - 前記組成物から成形シートを抄造により成形した後に、該成形シートに電解質を含ませた請求項1に記載の発熱成形体。
- 前記組成物に予め電解質を含ませた請求項1記載の発熱成形体。
- 酸素透過性の被覆層を有している請求項1〜3の何れかに記載の発熱成形体。
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