JP3873890B2 - 車両用自動変速機の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用自動変速機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数のギヤ段のうちの所望のギヤ段が選択される自動変速機と、予め設定された変速線図から実際の車両の走行状態に基づいてギヤ段を自動的に切り換える変速制御手段とを備えた車両用自動変速機の制御装置が知られている。そして、そのような自動変速機の制御装置の一種に、ステアリングホイールなどに設けたアップシフトスイッチ或いはダウンシフトスイッチなどの手動切換操作装置を手動変速モードにおいて操作することにより所望のギヤ段を選択できるようにしたものがある。たとえば、特開平3−258621号公報に記載された制御装置がそれである。このような制御装置によれば、一般に、自動変速機であっても運転者の好みに応じたギヤ段を選択でき、エンジンブレーキが効き、変速応答性が高められるので、車両のスポーツ性能を高めることができる。
【0003】
ところで、上記同一種類の手動切換操作装置が、運転者による操作性を高めるために運転席の近傍に2以上設けられる場合がある。たとえば、ステアリングホイールが左右反転したとしても同じ利き腕で操作可能できるように、ステアリングホイールに2以上のアップシフトスイッチ或いは2以上のダウンシフトスイッチを設ける場合がそれである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように、2以上の同一種類の手動切換操作装置が設けられる場合には、運転者は最も操作しやすい位置にある手動切換操作装置を操作することになると考えられるが、場合によっては、同一種類の手動切換操作装置を所定期間内において略同時期に操作することも考えられる。このとき、従来の制御装置では、運転者が念のために2以上の手動切換操作装置を操作し或いは複数回手動切換操作装置を操作したにも拘わらず、2段以上変速させたいために操作したものと判定して自動変速機の2段の変速を実行あるいは2つ以上のシフトレンジの切り換えを実行することになるため、車両の操作性が低下する可能性があった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、2以上の同一種類の手動切換操作装置が同時期に操作されても車両の操作性が低下しない車両用自動変速機の制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための第1発明の要旨とするところは、自動変速モードと手動変速モードとを選択可能な車両用自動変速機であり、前記手動変速モードが選択されているときには、複数個のアップシフトスイッチのいずれかの操作に応答して自動変速機のギヤ段またはシフトレンジを切り換える手動切換制御手段を備えた車両用自動変速機の制御装置であって、(a)前記複数個のアップシフトスイッチの少なくとも一が故障であるか否かを判定する手動切換操作装置故障判定手段と、(b)その手動切換操作装置故障判定手段により前記複数個のアップシフトスイッチの少なくとも一が故障であると判定された場合には、他のアップシフトスイッチが正常であるにも拘わらず、前記手動変速モードを禁止する手動変速モード禁止手段とを、含むことにある。
また、第2発明の要旨とするところは、自動変速モードと手動変速モードとを選択可能な車両用自動変速機であり、前記手動変速モードが選択されているときには、複数個のダウンシフトスイッチのいずれかの操作に応答して自動変速機のギヤ段またはシフトレンジを切り換える手動切換制御手段を備えた車両用自動変速機の制御装置であって、 (a) 前記複数個のダウンシフトスイッチの少なくとも一つが故障であるか否かを判定する手動切換操作装置故障判定手段と、 (b) その手動切換操作装置故障判定手段により前記複数個のダウンシフトスイッチの少なくとも一つが故障であると判定された場合には、他のダウンシフトスイッチが正常であるにも拘わらず、前記手動変速モードを禁止する手動変速モード禁止手段とを、含むことにある。
【0007】
【発明の効果】
このようにすれば、複数個のアップシフトスイッチまたはダウンシフトスイッチの少なくとも一の故障に起因して運転者の意図しない誤った変速が行われることが防止される。
【0008】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、自動変速モードと手動変速モードのいずれが選択されているかを判定する変速モード判定手段を含み、前記手動切換操作装置故障判定手段は、その変速モード判定手段において手動変速モードが判定されているとき、前記複数の手動切換操作装置の少なくとも一部が故障であるか否かを判定するものである。また、好適には、前記手動切換操作装置は、複数個のアップシフトスイッチまたはダウンシフトスイッチであり、前記手動切換操作装置故障判定手段は、変速モード判定手段において手動変速モードが判定されているとき、前記複数個のアップシフトスイッチまたはダウンシフトスイッチの少なくとも一部が故障であるか否かを判定するものであり、前記手動変速モード禁止手段は、該手動切換操作装置故障判定手段により前記複数個のアップシフトスイッチまたはダウンシフトスイッチの少なくとも一部が故障であると判定された場合には、他のアップシフトスイッチまたはダウンシフトスイッチが正常であるにも拘わらず、前記手動変速モードを禁止するものである。
【0009】
また、好適には、前記自動変速機を手動操作により変速またはシフトレンジの切り換えをさせるために前記手動切換操作装置が多重操作されたことを判定する多重操作判定手段と、その多重操作判定手段により多重操作が判定された手動切換操作装置が同一種類の手動切換操作装置である場合には、1回の手動切換操作として決定する切換操作回数決定手段とが、含まれる。このようにすれば、多重操作判定手段により多重操作されたことが判定された手動切換操作装置が同一種類の手動切換操作装置である場合には、切換操作回数決定手段により1回の手動切換操作として決定される。したがって、運転者が念のために2以上の手動切換操作装置を同時期に操作した場合でも、自動変速機の1段の変速が実行されること、あるいは1レンジの切り換えが実行されることになるため、車両の操作性が高められる。
【0010】
また、好適には、前記制御装置は、予め設定された変速線図から実際の車両の走行状態に基づいて自動変速機のギヤ段を自動的に切り換える自動変速制御手段と、変速モード判定手段により手動変速モードが判定された場合には、手動切換操作装置の操作に応答して前記自動変速機のギヤ段を切り換える手動切換制御手段とを、備えた車両用自動変速機の変速制御装置であり、前記多重操作判定手段は、手動変速モードにおいて前記自動変速機を手動操作により変速させるために手動切換操作装置が多重操作されたことを判定するものである。
【0011】
また、前記変速モード判定手段は、予め設定された変速線図から実際の車速およびエンジン負荷(スロットル弁開度、アクセルペダル操作量など)に基づいて自動変速機の変速判断および変速出力を行う自動変速モードと、前記手動切換操作装置の操作に応答して自動変速機を変速させる手動変速モードとのいずれが、モード切換操作に応答して選択されているかを判定するものであり、前記切換操作回数決定手段は、その変速モード判定手段によって手動変速モードが判定される場合に、手動切換操作装置の手動切換操作回数を決定する。
【0012】
また、好適には、前記切換操作回数決定手段は、前記多重操作判定手段により多重操作されたことが判定された手動切換操作装置が同一種類であるか否かを判定する同一種類操作判定手段と、この同一種類操作判定手段により同一種類であると判定された複数の手動切換操作装置の操作を1回の手動切換操作として処理する操作入力処理手段とを含む。このようにすれば、2以上の同一種類の手動切換操作装置が多重操作された場合には、1回の手動切換操作として処理される。
【0013】
また、好適には、前記同一種類操作判定手段によって同一種類ではないと判定された複数の手動切換操作装置の操作が誤操作であるとして処理し、前記自動変速機にそれまでの変速段を維持させる誤操作処理手段が、上記切換操作回数決定手段に設けられる。このようにすれば、異なる種類の手動切換操作装置が同時期に操作された場合、たとえばダウンシフトスイッチとアップシフトスイッチが同時期に操作された場合には、その操作内容が矛盾することから運転者の誤操作であると判断され、自動変速機が変速されない利点がある。
る。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施例の制御装置により変速制御される車両用自動変速機の一例を示す骨子図である。図において、エンジン10の出力は、トルクコンバータ12を介して自動変速機14に入力され、図示しない差動歯車装置および車軸を介して駆動輪へ伝達されるようになっている。
【0016】
上記トルクコンバータ12は、エンジン10のクランク軸16に連結されたポンプインペラ18と、自動変速機14の入力軸20に連結されたタービンランナー22と、それらポンプインペラ18およびタービンランナー22の間を直結するロックアップクラッチ24と、一方向クラッチ26によって一方向の回転が阻止されているステータ28とを備えている。
【0017】
上記自動変速機14は、ハイおよびローの2段の切り換えを行う第1変速機30と、後進ギヤ段および前進4段の切り換えが可能な第2変速機32を備えている。第1変速機30は、サンギヤS0、リングギヤR0、およびキャリヤK0に回転可能に支持されてそれらサンギヤS0およびリングギヤR0に噛み合わされている遊星ギヤP0から成るHL遊星歯車装置34と、サンギヤS0とキャリヤK0との間に設けられたクラッチC0および一方向クラッチF0と、サンギヤS0およびハウジング41間に設けられたブレーキB0とを備えている。
【0018】
第2変速機32は、サンギヤS1、リングギヤR1、およびキャリヤK1に回転可能に支持されてそれらサンギヤS1およびリングギヤR1に噛み合わされている遊星ギヤP1から成る第1遊星歯車装置36と、サンギヤS2、リングギヤR2、およびキャリヤK2に回転可能に支持されてそれらサンギヤS2およびリングギヤR2に噛み合わされている遊星ギヤP2から成る第2遊星歯車装置38と、サンギヤS3、リングギヤR3、およびキャリヤK3に回転可能に支持されてそれらサンギヤS3およびリングギヤR3に噛み合わされている遊星ギヤP3から成る第3遊星歯車装置40とを備えている。
【0019】
上記サンギヤS1とサンギヤS2は互いに一体的に連結され、リングギヤR1とキャリヤK2とキャリヤK3とが一体的に連結され、そのキャリヤK3は出力軸42に連結されている。また、リングギヤR2がサンギヤS3に一体的に連結されている。そして、リングギヤR2およびサンギヤS3と中間軸44との間にクラッチC1が設けられ、サンギヤS1およびサンギヤS2と中間軸44との間にクラッチC2が設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2の回転を止めるためのバンド形式のブレーキB1がハウジング41に設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2とハウジング41との間には、一方向クラッチF1およびブレーキB2が直列に設けられている。この一方向クラッチF1は、サンギヤS1およびサンギヤS2が入力軸20と反対の方向へ逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0020】
キャリヤK1とハウジング41との間にはブレーキB3が設けられており、リングギヤR3とハウジング41との間には、ブレーキB4と一方向クラッチF2とが並列に設けられている。この一方向クラッチF2は、リングギヤR3が逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0021】
以上のように構成された自動変速機14では、たとえば図2に示す作動表に従って後進1段および変速比が順次異なる前進5段のギヤ段のいずれかに切り換えられる。図2において○印は係合状態を示し、空欄は解放状態を示し、●はエンジンブレーキのときの係合状態を示している。
【0022】
図3に示すように、車両のエンジン10の吸気配管には、アクセルペダル50およびスロットルアクチュエータ54によって操作されるスロットル弁56が設けられている。また、エンジン10の回転速度NE を検出するエンジン回転速度センサ58、エンジン10の吸入空気量Qを検出する吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TA を検出する吸入空気温度センサ62、上記スロットル弁56の開度θTHを検出するスロットルセンサ64、出力軸42の回転速度NOUT すなわち車速Vを検出する車速センサ66、エンジン10の冷却水温度TW を検出する冷却水温センサ68、ブレーキの作動を検出するブレーキスイッチ70、シフトレバー72の操作位置PSHを検出する操作位置センサ74、入力軸20の回転速度NINすなわちクラッチC0の回転速度NC0(=タービン回転速度NT または入力軸回転速度NIN)を検出する入力軸回転センサ73、油圧制御回路84の作動油温度TOIL を検出する油温センサ75などが設けられており、それらのセンサから、エンジン回転速度NE 、吸入空気量Q、吸入空気温度TA 、スロットル弁56の開度θTH、車速V、エンジン冷却水温TW 、ブレーキの作動状態BK、シフトレバー72の操作位置PSH、入力軸回転速度NC0、作動油温度TOIL を表す信号がエンジン用電子制御装置76或いは変速用電子制御装置78に供給されるようになっている。
【0023】
上記シフトレバー72は、図4に示すように、車両の前後方向に位置するPレンジ位置、Rレンジ位置、Nレンジ位置、Dおよび4レンジ位置、3レンジ位置、2レンジ位置へ操作されるとともに、上記Dレンジ位置から左側へ4レンジ位置、右側へ手動変速モード位置すなわちDMモード位置へ車両の左右方向に操作されるようにその支持機構が構成されている。シフトレバー72が上記DMモード位置へ操作された場合には、それまでの自動変速モードから手動変速モードへ切り換えられる。このシフトレバー72はモード選択操作装置としても機能している。
【0024】
図5に示すように、上記車両のステアリングホイール77の右側位置には、1対のダウンシフトスイッチ79RDおよびアップシフトスイッチ79RUが設けられており、また、ステアリングホイール77の左側位置には、1対のダウンシフトスイッチ79LDおよびアップシフトスイッチ79LUが設けられている。それら2対のスイッチ79RDおよび79RU、79LDおよび79LUは、手動変速モードが選択された場合において、自動変速機14の変速を優先的に実行させるために手動操作される手動切換操作装置として機能するものであり、操作出力を変速用電子制御装置78へ供給する。また、その変速用電子制御装置78は、自動変速モードおよび手動変速モードのうち上記シフトレバー72の操作により選択された変速モードを表示器48に表示させるとともに、後述の手動変速モード禁止手段108によって手動変速モードが禁止された場合には、その旨を表示器48に表示させる。
【0025】
図3のエンジン用電子制御装置76は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェースを備えた所謂マイクロコンピュータであって、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、種々のエンジン制御を実行する。たとえば、燃料噴射量制御のために燃料噴射弁80を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ82を制御し、アイドルスピード制御のために図示しないバイパス弁を制御し、トラクション制御或いはクルーズコントロール制御のためにスロットルアクチュエータ54によりスロットル弁56を制御する。
【0026】
変速用電子制御装置78も、上記と同様のマイクロコンピュータであって、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、油圧制御回路84の各電磁弁或いはリニヤソレノイド弁を駆動する。たとえば、変速用電子制御装置78は、スロットル弁56の開度θTHに対応した大きさのスロットル圧PTHを発生させるため或いはアキュム背圧を制御するための指令値DSLTをリニヤソレノイド弁SLT に供給し、その指令値DSLTに対応した制御圧PSLT を出力させる。また、ロックアップクラッチ24の係合、解放、スリップ量、ブレーキB3の直接制御、およびクラッチツウクラッチ変速を制御するための指令値DSLUをリニヤソレノイド弁SLU に供給し、その指令値DSLUに対応した制御圧PSLU を出力させる。この変速用電子制御装置78は、エンジン用電子制御装置76と相互に通信可能に接続されており、一方に必要な信号が他方から適宜送信されるようになっている。また、変速用電子制御装置78は、予め記憶された変速線図から実際のスロットル弁開度θTHおよび車速Vに基づいて自動変速機14のギヤ段すなわち変速を判断し、この判断されたギヤ段すなわち変速が得られるようにする変速出力を行って電磁弁S1、S2、S3を駆動し、またエンジンブレーキを発生させる際には電磁弁S4を駆動する。
【0027】
図6は、変速用電子制御装置78による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図において、自動変速制御手段90は、たとえば図7に示す予め記憶された変速線図から車両の走行状態、たとえば実際のエンジン負荷(スロットル弁開度θTH、アクセル操作量、燃料噴射量、吸入空気量など)および車速Vに基づいて変速判断を行い、その判断された変速を自動的に達成するための変速出力を実行する。
【0028】
変速モード判定手段92は、上記自動変速制御手段90によってたとえば図7の変速線図から実際の車速およびエンジン負荷に基づいて自動変速機14の変速判断および変速出力を自動的に行うことを許容する自動変速モードと、手動切換操作装置として機能する各シフトスイッチ79RD、79RU、79LD、79LUの操作に応答して手動切換制御手段94に自動変速機14をその都度変速させる手動変速モードとのいずれが、シフトレバー72によるモード切換操作に応答して選択されているかを判定する。すなわち、変速モード判定手段92は、シフトレバー72がDMモード位置へ操作された場合には手動変速モードと判定し、シフトレバー72が走行レンジ(R、D、3、2)へ操作された場合には自動変速モードと判定する。
【0029】
手動切換制御手段94は、前記変速モード判定手段92により手動変速モードが判定されている場合において、手動切換操作装置すなわちシフトスイッチ79RD、79RU、79LD、79LUの操作に応答して、その操作回数だけ自動変速機14のギヤ段をアップ変速或いはダウン変速させる。
【0030】
切換操作回数決定手段96は、前記変速モード判定手段92により手動変速モードが判定されている場合に、多重操作判定手段98により多重操作が判定された手動切換操作装置が同一種類の手動切換操作装置である場合、すなわち各シフトスイッチ79RD、79RU、79LD、79LUのうちの同一種類すなわち同一変速方向のシフトスイッチが多重操作された場合には、1回の手動切換操作として決定処理し、手動切換制御手段94に1段だけその操作されたシフトスイッチの示す方向へ変速させる。
【0031】
多重操作判定手段98は、各シフトスイッチ79RD、79RU、79LD、79LUの時間重複的或いは非重複的にかかわらず、同時期に略同時に操作された多重操作を判定するものである。そのシフトスイッチの多重操作とは、所定時間内の複数操作或いは略同時期の複数操作であって、たとえば、図8に示すように、たとえば同一種類のダウンシフトスイッチ79RDおよび79LDの一方が続けて、或いは両方が交互に、時間的に重複(オーバラップ)して操作された場合、および、図9に示すように、たとえば同一種類のダウンシフトスイッチ79RDおよび79LDの一方が続けて、或いは両方が交互に、予め設定された時間間隔TD1以内の非重複(アンダラップ)時間TULを隔てて操作されるか、或いは、予め設定された時間範囲TA1以内の操作開始時間内に操作開始されることである。
【0032】
前記切換操作回数決定手段96は、好適には、多重操作判定手段98により多重操作されたことが判定されたシフトスイッチが同一種類であるか否か、すなわちダウンシフトスイッチ79RDおよび79LDのいずれか一方或いは両方であるか否か、およびアップシフトスイッチ79RUおよび79LUのいずれか一方或いは両方であるか否かを判定する同一種類操作判定手段100と、この同一種類操作判定手段100により同一種類であると判定された複数のシフトスイッチの操作を1回の手動切換操作として処理する操作入力処理手段102とを含み、2以上の同一種類の手動切換操作装置が所定時間内において略同時期に操作された場合には、1回の手動切換操作として処理する。
【0033】
上記切換操作回数決定手段96には、前記同一種類操作判定手段100によって同一種類ではないと判定された複数の手動切換操作装置の操作を、誤操作として処理し、自動変速機14にそれまでの変速段を維持させる誤操作処理手段104が、含まれる。たとえばダウンシフトスイッチ79RDまたは79LDとアップシフトスイッチ79RUまたは79LUとが同時期に操作された場合には、その操作内容が矛盾することから運転者の誤操作であると判断され、自動変速機14が変速されないのである。
【0034】
手動切換操作装置故障判定手段106は、前記変速モード判定手段92において手動変速モードが判定されているとき、前記複数の手動切換操作装置すなわちダウンシフトスイッチ79RD、79LD、アップシフトスイッチ79RU、79LUの少なくとも一部が故障であるか否かを判定する。手動変速モード禁止手段108は、上記手動切換操作装置故障判定手段106によって前記複数の手動切換操作装置の少なくとも一部が故障であると判定された場合には、他の手動切換操作装置が正常であるにも拘わらず、前記手動変速モードを禁止する。
【0035】
図10は、変速用電子制御装置78による制御作動の要部すなわち手動切換制御を説明するフローチャートである。図において、入力信号を読込むなどの入力信号処理がSA1において実行された後、前記変速モード判定手段92に対応するSA2において、DMモードすなわち手動変速モードであるか否かが判断される。このSA2の判断が否定された場合は、本ルーチンが何ら実質的に実行されることなく終了させられ、自動変速制御手段90に対応する図示しないルーチンが実行される。
【0036】
上記SA2の判断が肯定された場合は、SA3において、手動切換制御に関連する各センサが正常であるか否かが判断される。このSA3の判断が否定された場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合は、前記手動切換操作装置故障判定手段106に対応するSA4において、前記複数の手動切換操作装置すなわちダウンシフトスイッチ79RD、79LD、アップシフトスイッチ79RU、79LUの少なくとも一部が故障であるか否か判定される。このSA4の判断が肯定された場合は、前記手動変速モード禁止手段108に対応するSA5において手動変速モードが禁止された後、SA6において、その手動変速モードの禁止を表す表示が表示器48において行われる。
【0037】
しかし、上記SA4の判断が否定された場合は、前記多重操作判定手段98に対応するSA7において、ダウンシフトスイッチ79RD、79LD、アップシフトスイッチ79RU、79LUの多重操作が行われたか否かが、それらからの入力信号に基づいて判断される。このSA7の判断が否定された場合は、前記手動切換制御手段94に対応するSA8において、ダウンシフトスイッチ79RD、79LD、アップシフトスイッチ79RU、79LUのいずれかの操作に対応する変速が実行される。たとえば、ダウンシフトスイッチ79RDまたは79LDが操作された場合には、自動変速機14がそれまでのギヤ段より1段下のギヤ段へダウン変速され、アップシフトスイッチ79RUまたは79LUが操作された場合には、自動変速機14がそれまでのギヤ段より1段上のギヤ段へアップ変速される。
【0038】
上記SA7の判断が肯定された場合には、同一種類操作判定手段100に対応するSA9において、SA7により多重操作されたことが判定されたシフトスイッチが同一種類であるか否か、すなわちダウンシフトスイッチ79RDおよび79LDのいずれか一方或いは両方であるか否か、およびアップシフトスイッチ79RUおよび79LUのいずれか一方或いは両方であるか否かが判断される。このSA9の判断が肯定された場合は、前記操作入力処理手段102に対応するSA10において、複数回のシフトスイッチの多重操作が1回の手動切換操作として処理された後、前記手動切換制御手段94に対応するSA11において、変速操作に応じた変速が実行される。たとえば、ダウンシフトスイッチ79RDおよび79LDのいずれか一方或いは両方により多重操作された場合には、自動変速機14がそれまでのギヤ段より1段下のギヤ段へダウン変速され、アップシフトスイッチ79RUおよび79LUのいずれか一方或いは両方により多重操作された場合には、自動変速機14がそれまでのギヤ段より1段上のギヤ段へアップ変速される。
【0039】
しかし、上記SA9の判断が否定された場合、すなわちダウンシフトスイッチ79RDまたは79LDとアップシフトスイッチ79RUまたは79LUとによる多重操作が行われた場合は、前記誤操作処理手段104に対応するSA12において、その操作内容が矛盾することから運転者の誤操作であると判断され、SA13において自動変速機14がそれまでのギヤ段に維持され、変速が行われないのである。
【0040】
上述のように、本実施例によれば、多重操作判定手段98(SA7)により多重操作されたことが判定された手動切換操作装置が同一種類の手動切換操作装置である場合は、すなわちダウンシフトスイッチ79RDおよび79LD、或いはアップシフトスイッチ79RUおよび79LUが操作された場合は、切換操作回数決定手段96(SA9、SA10)により1回の手動切換操作として決定される。このため、運転者が念のために2以上の同一種類のシフトスイッチを同時期に操作した場合でも、自動変速機の1段の変速が実行されることになるため、車両の操作性が高められる。
【0041】
また、本実施例によれば、変速モード判定手段92(SA2)において手動変速モードが判定されているとき、複数のシフトスイッチ79RD、79LD、79RU、79LUの少なくとも一部が故障であるか否かを判定する手動切換操作装置故障判定手段106(SA4)と、この手動切換操作装置故障判定手段106により複数のシフトスイッチ79RD、79LD、79RU、79LUの少なくとも一部が故障であると判定された場合には、他のシフトスイッチが正常であるにも拘わらず、手動変速モードを禁止する手動変速モード禁止手段108(SA5)とが、設けられるので、シフトスイッチの故障に起因して運転者の意図しない誤った変速が行われることが防止される。
【0042】
また、本実施例によれば、切換操作回数決定手段96は、多重操作判定手段98により多重操作されたことが判定されたシフトスイッチが同一種類であるか否かを判定する同一種類操作判定手段100(SA9)と、この同一種類操作判定手段100により同一種類であると判定された複数のシフトスイッチの多重操作を1回の手動切換操作として処理する操作入力処理手段102(SA10)から構成される。このため、2以上の同一種類のシフトスイッチが所定時間内において略同時期に操作されるような多重操作が行われた場合には、1回の手動切換操作として処理される。
【0043】
また、本実施例によれば、同一種類操作判定手段100によって同一種類ではないと判定された複数の手動切換操作装置の操作が誤操作であるとして処理し、前記自動変速機14にそれまでの変速段を維持させる誤操作処理手段104(SA12)が、上記切換操作回数決定手段96に設けられるので、異なる種類の手動切換操作装置が同時期に操作された場合、たとえばダウンシフトスイッチ79RDまたは79LDとアップシフトスイッチ79RUまたは79LUとが同時期に操作された場合には、その操作内容が矛盾することから運転者の誤操作であると判断され、自動変速機が変速されない利点がある。
【0044】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明は他の態様で実施することもできる。
【0045】
前述の実施例では、いわゆるスポーツATでのギヤ段を変更するための手動切換操作装置としてシフトスイッチ79RD、79LD、79RU、79LUを記載したが、複数種類の変速範囲(シフトレンジ)、たとえば第1速ギヤ段から第5速ギヤ段までの第5レンジ、第1速ギヤ段から第4速ギヤ段までの第4レンジ、第1速ギヤ段から第3速ギヤ段までの第3レンジ、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段までの第2レンジ、第1速ギヤ段のみの第1レンジを手動操作により順次切り換えるための各2個のアップレンジスイッチおよびダウンレンジスイッチが、上記シフトスイッチ79RD、79LD、79RU、79LUに替わる手動切換操作装置として用いられてもよい。
【0046】
また、たとえば、前述の実施例のダウンシフトスイッチ79RD、79LD、アップシフトスイッチ79RU、79LUは、ステアリングホイール77に設けられていたが、ステアリングコラム、ダッシュボードなどのように運転席の近傍に設けられてもよい。
【0047】
また、前述の実施例においては、手動切換操作装置としてダウンシフトスイッチ79RD、79LD、アップシフトスイッチ79RU、79LUが用いられていたが、手動切換用の操作レバーなどの他の形式のものであってもよい。なお、既にステアリングコラムに設けられたクルーズコントロール用設定レバーを、手動変速モードであるときに手動切換用の操作レバーとして兼用するものであってもよい。
【0048】
また、前述の実施例では、シフトレバー72がDMモード位置へ操作されることにより自動変速モードから手動変速モードへ切り換えられるように構成されていたが、独立に設けられたモード選択用操作釦或いは操作レバーなどが操作されることによって手動変速モードが選択されるように構成されてもよい。
【0049】
また、前述の実施例において、自動変速機14のギヤトレーン構成や変速段数は、本発明とは直接的に関連はなく、種々の形式のものであっても差し支えない。
【0050】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の制御装置によってギヤ段が制御される車両用自動変速機の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1の自動変速機における、複数の摩擦係合装置の作動の組合わせとそれにより成立するギヤ段との関係を示す図表である。
【図3】図1の自動変速機を制御する油圧制御回路および電気制御回路を含むブロック線図である。
【図4】図3のシフトレバーの操作位置を説明する図である。
【図5】図3の各シフトスイッチのステアリングホイール上の配置例を示す図である。
【図6】図3の変速用電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図7】図6の変速制御手段において用いられる変速線図の一例を示す図である。
【図8】図6の操作入力処理手段による、シフトスイッチの重複的多重操作の処理内容を説明する図である。
【図9】図6の操作入力処理手段による、シフトスイッチの非重複的多重操作の処理内容を説明する図である。
【図10】図3の変速用電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
14:自動変速機
90:自動変速制御手段
92:変速モード判定手段
94:手動切換制御手段
96:切換操作回数決定手段
98:多重操作判定手段
100:同一種類操作判定手段
102:操作入力処理手段
104:誤操作処理手段
106:手動切換操作装置故障判定手段
108:手動変速モード禁止手段
79RU、79LU:アップシフトスイッチ(手動切換操作装置)
79RD、79LD:ダウンシフトスイッチ(手動切換操作装置)

Claims (4)

  1. 自動変速モードと手動変速モードとを選択可能な車両用自動変速機であり、前記手動変速モードが選択されているときには、複数個のアップシフトスイッチのいずれかの操作に応答して自動変速機のギヤ段またはシフトレンジを切り換える手動切換制御手段を備えた車両用自動変速機の制御装置であって、
    前記複数個のアップシフトスイッチの少なくとも一が故障であるか否かを判定する手動切換操作装置故障判定手段と、
    該手動切換操作装置故障判定手段により前記複数個のアップシフトスイッチの少なくとも一が故障であると判定された場合には、他のアップシフトスイッチが正常であるにも拘わらず、前記手動変速モードを禁止する手動変速モード禁止手段とを、含むことを特徴とする車両用自動変速機の制御装置。
  2. 自動変速モードと手動変速モードとを選択可能な車両用自動変速機であり、前記手動変速モードが選択されているときには、複数個のダウンシフトスイッチのいずれかの操作に応答して自動変速機のギヤ段またはシフトレンジを切り換える手動切換制御手段を備えた車両用自動変速機の制御装置であって、
    前記複数個のダウンシフトスイッチの少なくとも一つが故障であるか否かを判定する手動切換操作装置故障判定手段と、
    該手動切換操作装置故障判定手段により前記複数個のダウンシフトスイッチの少なくとも一つが故障であると判定された場合には、他のダウンシフトスイッチが正常であるにも拘わらず、前記手動変速モードを禁止する手動変速モード禁止手段とを、含むことを特徴とする車両用自動変速機の制御装置。
  3. 自動変速モードと手動変速モードのいずれが選択されているかを判定する変速モード判定手段を含み、
    前記手動切換操作装置故障判定手段は、該変速モード判定手段において手動変速モードが判定されているとき、前記複数個のアップシフトスイッチの少なくとも1が故障であるか否かを判定するものである請求項1の車両用自動変速機の制御装置。
  4. 自動変速モードと手動変速モードのいずれが選択されているかを判定する変速モード判定手段を含み、
    前記手動切換操作装置故障判定手段は、該変速モード判定手段において手動変速モードが判定されているとき、前記複数個のダウンシフトスイッチの少なくとも1つが故障であるか否かを判定するものである請求項2の車両用自動変速機の制御装置。
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