JP3870100B2 - ダイカスト成形用金型装置及びアンダーカットを有するダイカスト成形品の成形方法 - Google Patents

ダイカスト成形用金型装置及びアンダーカットを有するダイカスト成形品の成形方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アンダーカットを有するダイカスト成形品を成形するためのダイカスト成形用金型装置と、アンダーカットを有するダイカスト成形品の成形方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アンダーカット(内部切欠き形状)を有する製品をダイカスト成形で製造するためには、ダイカスト成形時に崩壊性の中子(例えば塩中子)を使用したり、通常のダイカスト成形で得た成形品から不要な肉部を削り取る等の後加工を必要とした。しかし、これら従来の手法には、コスト高や工程数の増大を招くという欠点がある。このため、例えば特開2000−24769号公報には、押出ピンと連動する押出駒(移動式の中子部材)を利用して、成形時にアンダーカットを同時成形するダイカスト成形法が提案されている。
【0003】
特開2000−24769号公報のダイカスト成形法では、金型装置で用いる可動中子(可動型に装着する中子の意味)の一部(内部)にアンダーカット形成用の押出駒を設け、この押出駒を押出ピンの押出し方向(水平方向)に移動可能に構成している。そして、可動中子及び押出駒を一体的に用いて、固定型と可動型との間に確保されたキャビティで、アンダーカット付きの成形品を成形している。この成形品を金型装置から取り出すときには、型開き後に押出駒及び押出ピンを固定型に向けて押し出して成形品及びそれに連なる方案部(ランナー)を可動型及び可動中子から一旦離脱させた後、その方案部をロボットキャッチで把持し、方案部ともども成形品を横方向(可動型の移動方向に対し直交する方向、即ち垂直方向)に移動させて、押出駒から成形品を最終的に離脱させている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開2000−24769号公報のダイカスト成形法にもいくつかの難点がある。第一に、押出ピンの押出し動作に同期して水平方向に移動可能な押出駒を可動中子の内部に設ける必要があることや、型開き後の固定型と可動型との間にロボットキャッチ機構を介挿する必要があることから、金型装置の構造が複雑且つ大がかりなものとなってしまう。
【0005】
第二に、上記のダイカスト成形法では、可動型側に設けられた押出ピンの押出し動作に同期させて、アンダーカット形成用の押出駒を可動中子内から固定型に向けて突出させる構造の金型装置を用いることが前提となる。この金型装置を用いても、成形品のアンダーカットが可動型側に開口するようなアンダーカット形状を作る場合には、さしたる支障は生じない。しかし、同じ方法及び装置を用いて、例えば、固定型側に開口するようなアンダーカット形状を作ろうとして、収縮の強い形状(即ち抜型抵抗が相対的に大きくなる形状)が固定型側にくるような場合には、型開き時に成形品が固定型に張り付く現象(いわゆる「張付き」)が起きやすくなる。かかる張付きが起きると、金型装置から成形品を離脱させることが困難になるばかりか、金型の寿命が短くなる等の不都合を招く。つまり、上記従来のダイカスト成形法では、成形品におけるアンダーカットの位置や形状等によっては金型装置での成形条件を大きく制約される場合があり、金型設計の自由度が少なかった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、比較的簡易な装置構成でもって、アンダーカットを有するダイカスト成形品を直接成形可能なダイカスト成形用金型装置を提供することにある。また、ダイカスト成形品におけるアンダーカットの位置や形状等によって金型装置での成形条件をあまり制約されること無く金型設計の自由度を確保することが可能なダイカスト成形用金型装置を提供することにある。また、アンダーカットを有するダイカスト成形品の成形方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、アンダーカットを有するダイカスト成形品のダイカスト成形用金型装置であって、相対接近離間可能に設けられると共に、型締め時に内部に成形空間を構築可能な第1及び第2の型と、アンダーカット成形用凸部を有する中子と、前記第1又は第2の型の上部に設けられた中子駆動機構とを備え、前記中子駆動機構は、前記第1及び第2の型の接近離間方向に対して略直交する上下方向に前記中子をスライドさせるべく前記中子と作動連結されたスライドシリンダを具備したスライド機構と、離間状態にある前記第1及び第2の型の間において前記中子及びスライド機構を揺動させるためのスイングシリンダ及びスイング駒を具備した揺動機構とから構成され、前記揺動機構のスイングシリンダは、出没可能なピストンを備えると共に、前記第1又は第2の型に対し第1の支軸(53)を中心として回動可能に取り付けられており、前記揺動機構のスイング駒は、前記第1又は第2の型に対し第2の支軸(55)を中心として回動可能に取り付けられており、前記第2の支軸(55)から所定距離を隔てたスイング駒の一部には連結軸(56)が設けられ、この連結軸(56)を介して前記スイング駒は前記スイングシリンダのピストンの先端部と回動可能に連結されており、前記スイング駒上には前記スライド機構のスライドシリンダが固定され、そのスライドシリンダは出没可能なピストンを備え、そのピストンの先端部には前記中子が支持されており、型締め時に、前記中子のアンダーカット成形用凸部を前記成形空間内に配置した状態とし、型締め完了後、前記成形空間内に金属溶湯を圧入して前記ダイカスト成形品を成形し、前記第1及び第2の型の型開き時に、前記スライド機構によって前記中子を下向きにスライドさせ、次いで前記揺動機構によって前記中子を上外に向けて回動させることにより、前記ダイカスト成形品から前記中子を離脱させることを特徴とするダイカスト成形用金型装置である。
【0008】
このダイカスト成形用金型装置によれば、中子を第1及び第2の型間に介在させた状態で両型を接合することで、少なくとも中子のアンダーカット成形用凸部を、第1及び第2の型の内部に構築される成形空間内に配置した状態で型締めが行われる。両型内の成形空間でダイカスト成形品を成形してから両型を型開きすると、相互に嵌合したダイカスト成形品及び中子が一方の型に付着した状態で出現する。ここで、中子駆動機構のスライド機構によって中子を両型の接近離間方向に対して略直交する上下方向にスライドさせることにより、少なくともアンダーカット成形用凸部がダイカスト成形品の一部(アンダーカットが形成される部位)から離脱し、ダイカスト成形品と中子との相互嵌合が解除される。更に中子駆動機構の揺動機構によって、離間状態にある第1及び第2の型の間から上外に向けて中子を回動させることにより、両型の間から外方向に中子が退避され、ダイカスト成形品が付着している型からダイカスト成形品を取り外すことが可能となる。本発明によれば、比較的簡易な構成のダイカスト成形用金型装置でもって、アンダーカットを有するダイカスト成形品を直接成形することができる。
【0009】
更にこのダイカスト成形用金型装置では、中子駆動機構は、上下方向に中子をスライドさせるためのスライドシリンダを具備したスライド機構と、中子及びスライド機構を揺動させるためのスイングシリンダ及びスイング駒を具備した揺動機構とから構成されている。そして、揺動機構のスイング駒上にはスライド機構のスライドシリンダが固定され、そのスライドシリンダは出没可能なピストンを備え、そのピストンの先端部には中子が支持されている。つまり、アンダーカット成形用凸部を有する中子は、スライド機構を介して揺動機構に作動連結されている。この中子駆動機構では、スライド機構及び揺動機構が作動連結関係を持って一体化されているため、移動式の中子を具備したダイカスト成形用金型装置の構成を、従来例(特開2000−24769号公報では、押出駒を水平スライドさせる押出し機構と、押出駒から成形品を垂直離脱させるロボットキャッチ機構とは、別個独立した関係にある)よりも簡素化することができる。
【0010】
請求項2の発明は、アンダーカットを有するダイカスト成形品のダイカスト成形用金型装置であって、接近離間可能に設けられると共に、型締め時に内部に成形空間を構築可能な固定型及び可動型と、前記可動型に設けられ、アンダーカット成形用凸部を有する中子と、前記可動型の上部に設けられた中子駆動機構とを備え、前記中子駆動機構は、前記固定型及び可動型の接近離間方向に対して略直交する上下方向に前記中子をスライドさせるべく前記中子と作動連結されたスライドシリンダを具備したスライド機構と、離間状態にある前記固定型及び可動型の間において前記中子及びスライド機構を揺動させるためのスイングシリンダ及びスイング駒を具備した揺動機構とから構成され、前記揺動機構のスイングシリンダは、出没可能なピストンを備えると共に、前記可動型に対し第1の支軸(53)を中心として回動可能に取り付けられており、前記揺動機構のスイング駒は、前記可動型に対し第2の支軸(55)を中心として回動可能に取り付けられており、前記第2の支軸(55)から所定距離を隔てたスイング駒の一部には連結軸(56)が設けられ、この連結軸(56)を介して前記スイング駒は前記スイングシリンダのピストンの先端部と回動可能に連結されており、前記スイング駒上には前記スライド機構のスライドシリンダが固定され、そのスライドシリンダは出没可能なピストンを備え、そのピストンの先端部には前記中子が支持されており、型締め時に、前記中子のアンダーカット成形用凸部を前記成形空間内に配置した状態とし、型締め完了後、前記成形空間内に金属溶湯を圧入して前記ダイカスト成形品を成形し、型開き時に、前記スライド機構によって前記中子を下向きにスライドさせ、次いで前記揺動機構によって前記中子を上外に向けて回動させることにより、前記可動型に付着している前記ダイカスト成形品から前記中子を離脱させることを特徴とするダイカスト成形用金型装置である。
【0011】
このダイカスト成形用金型装置によれば、アンダーカット成形用凸部を有する中子及び中子駆動機構が可動型に設けられているため、型締め完了後の成形時には、成形空間内に形作られたダイカスト成形品は、それと嵌合状態にある中子によって可動型の方に抱え込まれる格好となる。このため、成形後の型開きによって固定型から可動型を離間させたときも、中子と一緒にダイカスト成形品が可動型に追従してくる。つまり、ダイカスト成形品が固定型に張り付く虞れがない。従って、得たいダイカスト成形品におけるアンダーカットの位置や形状等によって金型装置での成形条件をあまり制約されること無く金型設計の自由度を確保することが可能となる。特に、固定型側に開口するようなアンダーカット形状を作ろうとする結果、収縮の強い形状が固定型側にくるような場合でも、型開き時にダイカスト成形品が固定型に張り付くといった不具合が生じない。本発明によれば、型開き時には必ずダイカスト成形品が可動型の方に付着した状態となるため、中子駆動機構の揺動機構によって中子を両型間の上外に退避させた後、ダイカスト成形品を可動型から円滑に離脱させることができる。また、固定型への張付きが生じないため、金型装置の寿命延長が図られる。
【0012】
なお、請求項1及び請求項2の構成によれば、揺動機構のスイングシリンダのピストンの出没動作に応じて連結軸(56)と第1の支軸(53)との間の距離が変化することにより、スイング駒が第2の支軸(55)を中心として揺動する。また、スライド機構のスライドシリンダのピストンの出没動作に応じて中子がスライドする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2に記載のダイカスト成形用金型装置において、前記可動型側には、型開き時に前記可動型に付着している前記ダイカスト成形品を前記可動型から離脱させるべく前記固定型に向けて押し出すための押出機構が配設され、前記固定型には、前記ダイカトス成形品のアンダーカットに連通する凹部を前記ダイカスト成形品に付与するための凹部形成用凸部が設けられており、型開き時に前記凹部により、前記中子のアンダーカット成形用凸部が前記ダイカスト成形品から離脱可能であることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、成形空間でのダイカスト成形品の成形後、固定型から可動型を離間させた際、可動型の移動に伴って、可動型に付着しているダイカスト成形品の一部から固定型の凹部形成用凸部が相対離脱し、その凸部の抜け跡ができる。この抜け跡は、ダイカスト成形品のアンダーカットと連通することになる凹部であることから、中子の少なくともアンダーカット成形用凸部が両型の接近離間方向に対して略直交する上下方向にスライドする余地を生み出すスライド許容空間を提供する。このスライド許容空間としての抜け跡の出現により、中子を前記上下方向にスライドさせることが可能となり、可動型上のダイカスト成形品の一部(アンダーカットが形成される部位)から中子のアンダーカット成形用凸部を円滑に離脱させることが可能となる。
【0015】
請求項4の発明は、固定型、可動型、アンダーカット成形用凸部を有する中子及び前記可動型の上部に設けられた中子駆動機構を備え、前記中子駆動機構が、前記固定型及び可動型の接近離間方向に対して略直交する上下方向に前記中子をスライドさせるべく前記中子と作動連結されたスライドシリンダを具備したスライド機構と、離間状態にある前記固定型及び可動型の間において前記中子及びスライド機構を揺動させるためのスイングシリンダ及びスイング駒を具備した揺動機構とから構成され、前記揺動機構のスイングシリンダは、出没可能なピストンを備えると共に、前記可動型に対し第1の支軸(53)を中心として回動可能に取り付けられており、前記揺動機構のスイング駒は、前記可動型に対し第2の支軸(55)を中心として回動可能に取り付けられており、前記第2の支軸(55)から所定距離を隔てたスイング駒の一部には連結軸(56)が設けられ、この連結軸(56)を介して前記スイング駒は前記スイングシリンダのピストンの先端部と回動可能に連結されており、前記スイング駒上には前記スライド機構のスライドシリンダが固定され、そのスライドシリンダは出没可能なピストンを備え、そのピストンの先端部には前記中子が支持されているダイカスト成形用金型装置を用いて、アンダーカットを有するダイカスト成形品を成形する方法であって、前記中子を前記可動型側に引き寄せて略鉛直方向に沿って縦に配置し、その状態で前記可動型を前記固定型に接合することにより、金型装置内に成形空間を構築すると共に前記両型間に前記中子を介在させた状態で型締めを完了し、型締め完了後、金属溶湯を前記成形空間内に圧入して前記ダイカスト成形品を成形し、次いで前記固定型から前記可動型を引き離して型開きし、型開き後、前記スライド機構によって前記中子を略鉛直方向下向きにスライドさせて、前記中子のアンダーカット成形用凸部を前記可動型に保持された前記ダイカスト成形品のアンダーカット部分から離脱させ、前記中子の離脱後、前記揺動機構によって前記中子を上外に向けて回動させることにより、離間状態にある前記両型間から前記中子を上外に向けて退避させ、前記中子の退避後、前記可動型から前記ダイカスト成形品を離脱させることを特徴とするアンダーカットを有するダイカスト成形品の成形方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、ダイカスト成形用金型装置の一実施形態を図面を参照して説明する。本実施形態では、図7(A)及び(B)に示すような形状の製品(ダイカスト成形品10)をダイカスト成形する事例を示す。このダイカスト成形品10は略円盤形状をなすと共に、その内部に、上面11側に開口した凹部11a、下面12側に開口した凹部12a及びアンダーカット13を有している。アンダーカット13は、凹部11aと凹部12aとをダイカスト成形品10の半径方向につなぐ内部連通路的な切り欠き部であり、従来の手法では崩壊性の中子を用いて形成していた部位である。
【0017】
図1〜図6に示すように、ダイカスト成形用金型装置は、固定プラテン20、可動プラテン30、固定プラテン20側に配設された第1の型としての固定型21及び可動プラテン30側に配設された第2の型としての可動型31を備えている。可動プラテン30及び可動型31は、図示しない駆動機構によって固定型21に対し接近離間可能となっている。
【0018】
固定型21の成形空間形成面には、ダイカスト成形品10の下面側凹部12aを付与する凹部形成用凸部22が設けられている。他方、可動型31には、ダイカスト成形品10の上面形状及び外周面形状を形成する成形用凹部32と、ダイカスト成形品10の上面側凹部11aを形成する凹部形成用凸部33とが設けられており、該両凹部32及び凸部33の表面によって可動型31の成形空間形成面が形成されている。そして、図1に示すように、固定型21と可動型31との間に移動式中子40を介在させた状態で両型21,31を接合することにより、目的とするダイカスト成形品10の形状に対応した内形状を有する単一の成形空間S(いわゆるキャビティ)が金型装置内に構築される。
【0019】
なお、移動式中子40の先端部(図1では下端部)は断面略L字形状をなしており、その先端部には、ダイカスト成形品10に付与するアンダーカット13の形状に対応したアンダーカット成形用凸部41が設けられている。
【0020】
固定プラテン20及び固定型21の下端部付近には、成形材料としての金属溶湯を成形空間Sに圧入するための圧入機構が設けられている。この圧入機構は、スリーブ24と、そのスリーブ24内を摺動可能なチップ体25と、射出ロッド26とから構成されている。可動型31の接合面には、スリーブ24と連通する導入溝34が形成されており、この導入溝34は、可動型31と固定型21との接合時(型締め時)にスリーブ24内の金属溶湯を成形空間Sに導くためのゲートとして機能する。
【0021】
図1〜図6に示すように、可動型31の上部領域には、移動式中子40を保持し且つ駆動するための中子駆動機構が設けられている。この中子駆動機構は、スイングシリンダ51、スイング駒54及びスライドシリンダ57によって構成されている。
【0022】
スイングシリンダ51は出没可能なピストン52(図5及び6参照)を備えており、可動型31に対し支軸53を中心として回動可能に取り付けられている。スイング駒54は、可動型31に対し支軸55を中心として回動可能に取り付けられている。支軸55から所定距離を隔てたスイング駒54の一部には連結軸56が設けられ、この連結軸56を介して、スイング駒54はスイングシリンダ51のピストン52の先端部と回動可能に連結されている。スイングシリンダのピストン52の出没動作に応じて連結軸56と支軸53との間の距離が変化することにより、スイング駒54が支軸55を中心として揺動(スイング)する。更にスイング駒54上にはスライドシリンダ57が固定されている。スライドシリンダ57は出没可能なピストン58(図3及び4参照)を備えており、そのピストン58の先端部には移動式中子40が支持されている。つまり、スライドシリンダ57のピストン58の出没動作に応じて、移動式中子40がスライド可能となっている。
【0023】
スライドシリンダ57のピストン58の出没動作は、スライドシリンダ57が鉛直方向に沿って縦に配置された状態で行われる。それ故、スライドシリンダ57は、「固定型21及び可動型31の接近離間方向に対して略直交する上下方向に中子40をスライドさせるべく中子40と作動連結されたスライド機構」に相当する。また、スイングシリンダ51及びスイング駒54は、「離間状態にある固定型21及び可動型31の間において中子40及びスライド機構を揺動させるべくスライド機構と作動連結された揺動機構」に相当する。
【0024】
更に、可動型31内及びその背後には、複数の押出ピン35(各図には1本のみ図示)を具備した押出機構が設けられている。押出ピン35は、図示しない駆動機構によって成形用凹部32内に出没可能となっている。この押出機構は、成形空間Sへの金属溶湯圧入後に固定型21から可動型31を離間させた後、成形用凹部32に保持されているダイカスト成形品10を当該凹部32から押し出して取り外すための機構である。
【0025】
次に、このダイカスト成形用金型装置の使用方法等について説明する。
ダイカスト成形を開始するにあたっては、図1に示すように、スイングシリンダ51のピストン52及びスライドシリンダ57のピストン58を共に後退させておくことにより、移動式中子40の本体部を可動型31側に引き寄せて鉛直方向に沿って縦に配置すると共に、中子40のアンダーカット成形用凸部41を可動型31の凹部形成用凸部33の一側面に接触させる。その状態で可動プラテン30及び可動型31を固定型21に向けて移動させ、図1に示すように可動型31を固定型21に接合する。この接合により金型装置内には成形用凹部32によって成形空間Sが構築され、両型21,31間に中子40を介在させた状態での型締めが完了する。
【0026】
型締め完了後、図2に示すように、スリーブ24内に導入された金属溶湯をチップ体25及び射出ロッド26により、導入溝34(ゲート)を経由して成形空間S内に圧入する。これにより、成形空間Sでのダイカスト成形品10のダイカスト成形が完了する。その後、図3に示すように、固定型21から可動型31を引き離すと、可動型31に保持されたダイカスト成形品10も一緒に固定型21から引き離される。
【0027】
図3の型開き時に、ダイカスト成形品10が可動型31に追従するのは、固定型21からの抜型抵抗よりも可動型31からの抜型抵抗が相対的に大きくなるように各型21,31が形状設定されていることもあるが、それ以上に、移動式中子40が、それと可動型31との間にダイカスト成形品10を挟み込む位置に配置され、中子40がダイカスト成形品10を可動型31側に抱え込む格好となっていることによる。別言すれば、仮に固定型21からの抜型抵抗よりも可動型31からの抜型抵抗が相対的に小さくなるように各型21,31を形状設定した場合でも、移動式中子40によるダイカスト成形品10の抱え込み作用によって、型開き時には必ずダイカスト成形品10は可動型31に追従することになり、ダイカスト成形品10が固定型21の方に張り付くことはない。
【0028】
なお、型開き直後のダイカスト成形品10には、導入溝34内及びスリーブ24の先端域を埋めていた金属溶湯が固まってできる方案部14が連なっている。また、型開きにより、移動式中子40の直下においてダイカスト成形品10の一部には、固定型21の凹部形成用凸部22の抜け跡(ダイカスト成形品10において凹部12aとなるべき空間)ができる。この抜け跡の出現により、移動式中子40の下向きスライド、即ちアンダーカット成形用凸部41のダイカスト成形品10からの離脱が許容される。
【0029】
型開き後、図4に示すように、スライドシリンダ57のピストン58を突出させて、移動式中子40を鉛直方向下向きにスライドさせる。この下向きスライドに伴って、中子40のアンダーカット成形用凸部41がダイカスト成形品10のアンダーカット部分から離脱する。
【0030】
移動式中子40の下向きスライド後、図5に示すように、スイングシリンダ51のピストン52を突出させて、スイング駒54及びスライドシリンダ57を支軸55を中心として反時計方向に回動させる。この回動に伴って移動式中子40も反時計方向に回動し、離間状態にある両型21,31間から上外に向けて退避される。移動式中子40が上方に退避することで、可動型31の成形用凹部32内からダイカスト成形品10を水平方向に離脱させる際の障害物が取り除かれる。
【0031】
移動式中子40を上方へ退避させた後、図6に示すように、押出機構を作動させ、押出ピン35でダイカスト成形品10を固定型21に向けて押し出す。これにより可動型31の成形用凹部32からダイカスト成形品10を離脱させることができる。この金型装置から取り出したダイカスト成形品10から方案部14を除去することで、図7(A)及び(B)に示すような形状のダイカスト成形品10を最終的に得ることができる。
【0032】
(効果)本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
本実施形態のダイカスト成形用金型装置を用いれば、従来例のように崩壊性の中子を用いることなく、又、アンダーカット形状を得るための肉部切削加工等の大がかりな後加工を成形品に施すことなく、所望のアンダーカット13を有するダイカスト成形品10をダイカスト成形で直接製造することができる。それ故、アンダーカット13を有するダイカスト成形品10を低コストで製造することが可能となる。
【0033】
本実施形態のダイカスト成形用金型装置では、移動式中子40をスライド及び揺動するための中子駆動機構は、可動型31の上部領域に設けたスイングシリンダ51、スイング駒54及びスライドシリンダ57だけで構成されるシンプルな構造となっている。それに加えて、移動式中子40及び中子駆動機構は、押出ピン35等の押出機構とは直接的な連動関係になく、押出機構から別個独立した機構として構成されている。従って、本実施形態のダイカスト成形用金型装置は、特開2000−24769号公報に開示されたダイカスト成形用金型装置に比べてかなり簡素な構造となっており、装置の小型化や装置の製作コストの低減を図ることができる。
【0034】
更に本実施形態によれば、図3に示す型開き時に移動式中子40でダイカスト成形品10を可動型31側に抱え込む格好となるため、ダイカスト成形品10が固定型21側に張り付く虞れがない。このため、移動式中子40の上方退避後に、可動型31側に配設された押出機構の押出しピン35で、可動型31からダイカスト成形品10を円滑に離脱させることができる。また、型開き時にダイカスト成形品10が固定型21に張り付く虞れがないため、固定型側に開口する凹部12a及びその凹部と連通するアンダーカット13をダイカスト成形品10に付与するための凹部形成用凸部22を固定型21に設け、その結果、固定型側の抜型抵抗が増大するような金型設計も可能となる。つまり本実施形態によれば、アンダーカット13と連通する凹部又は開口を固定型21と可動型31のいずれの側で成形するかということを自由に選択でき、金型設計の自由度が大きくなる。
【0035】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明のダイカスト成形用金型装置によれば、比較的簡易な装置構成でもって、アンダーカットを有するダイカスト成形品を直接成形することができる。また、ダイカスト成形品におけるアンダーカットの位置や形状等によって金型装置での成形条件をあまり制約されること無く金型設計の自由度を確保することが可能となる。
【0036】
本発明のアンダーカットを有するダイカスト成形品の成形方法によれば、アンダーカットを有するダイカスト成形品(例えば、図7(A)及び(B)に示すようなダイカスト成形品10)を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ダイカスト成形用金型装置(型締め時)の断面図。
【図2】ダイカスト成形用金型装置(溶湯圧入時)の断面図。
【図3】ダイカスト成形用金型装置(型開き時)の断面図。
【図4】ダイカスト成形用金型装置(中子のスライド時)の断面図。
【図5】ダイカスト成形用金型装置(中子の回動時)の断面図。
【図6】ダイカスト成形用金型装置(ダイカスト成形品の押出し時)の断面図。
【図7】ダイカスト成形用金型装置で成形するダイカスト成形品の一例を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のX−X線での断面図。
【符号の説明】
10…ダイカスト成形品、12a…凹部(固定型側に開口し且つアンダーカットに連通する凹部)、13…アンダーカット、21…固定型(第1の型)、22…凹部形成用凸部、31…可動型(第2の型)、35…押出しピン(押出機構)、40…移動式中子、41…アンダーカット成形用凸部、51…スイングシリンダ、52…スイングシリンダのピストン、53…支軸(第1の支軸)、54…スイング駒、55…支軸(第2の支軸)、56…連結軸、57…スライドシリンダ(51,54及び57は中子駆動機構を構成する)、58…スライドシリンダのピストン、S…成形空間。

Claims (4)

  1. アンダーカットを有するダイカスト成形品のダイカスト成形用金型装置であって、
    相対接近離間可能に設けられると共に、型締め時に内部に成形空間を構築可能な第1及び第2の型と、
    アンダーカット成形用凸部を有する中子と、
    前記第1又は第2の型の上部に設けられた中子駆動機構とを備え、
    前記中子駆動機構は、前記第1及び第2の型の接近離間方向に対して略直交する上下方向に前記中子をスライドさせるべく前記中子と作動連結されたスライドシリンダを具備したスライド機構と、離間状態にある前記第1及び第2の型の間において前記中子及びスライド機構を揺動させるためのスイングシリンダ及びスイング駒を具備した揺動機構とから構成され、
    前記揺動機構のスイングシリンダは、出没可能なピストンを備えると共に、前記第1又は第2の型に対し第1の支軸(53)を中心として回動可能に取り付けられており、
    前記揺動機構のスイング駒は、前記第1又は第2の型に対し第2の支軸(55)を中心として回動可能に取り付けられており、
    前記第2の支軸(55)から所定距離を隔てたスイング駒の一部には連結軸(56)が設けられ、この連結軸(56)を介して前記スイング駒は前記スイングシリンダのピストンの先端部と回動可能に連結されており、
    前記スイング駒上には前記スライド機構のスライドシリンダが固定され、そのスライドシリンダは出没可能なピストンを備え、そのピストンの先端部には前記中子が支持されており、
    型締め時に、前記中子のアンダーカット成形用凸部を前記成形空間内に配置した状態とし、型締め完了後、前記成形空間内に金属溶湯を圧入して前記ダイカスト成形品を成形し、前記第1及び第2の型の型開き時に、前記スライド機構によって前記中子を下向きにスライドさせ、次いで前記揺動機構によって前記中子を上外に向けて回動させることにより、前記ダイカスト成形品から前記中子を離脱させることを特徴とするダイカスト成形用金型装置。
  2. アンダーカットを有するダイカスト成形品のダイカスト成形用金型装置であって、
    接近離間可能に設けられると共に、型締め時に内部に成形空間を構築可能な固定型及び可動型と、
    前記可動型に設けられ、アンダーカット成形用凸部を有する中子と、
    前記可動型の上部に設けられた中子駆動機構とを備え、
    前記中子駆動機構は、前記固定型及び可動型の接近離間方向に対して略直交する上下方向に前記中子をスライドさせるべく前記中子と作動連結されたスライドシリンダを具備したスライド機構と、離間状態にある前記固定型及び可動型の間において前記中子及びスライド機構を揺動させるためのスイングシリンダ及びスイング駒を具備した揺動機構とから構成され、
    前記揺動機構のスイングシリンダは、出没可能なピストンを備えると共に、前記可動型に対し第1の支軸(53)を中心として回動可能に取り付けられており、
    前記揺動機構のスイング駒は、前記可動型に対し第2の支軸(55)を中心として回動可能に取り付けられており、
    前記第2の支軸(55)から所定距離を隔てたスイング駒の一部には連結軸(56)が設けられ、この連結軸(56)を介して前記スイング駒は前記スイングシリンダのピストンの先端部と回動可能に連結されており、
    前記スイング駒上には前記スライド機構のスライドシリンダが固定され、そのスライド シリンダは出没可能なピストンを備え、そのピストンの先端部には前記中子が支持されており、
    型締め時に、前記中子のアンダーカット成形用凸部を前記成形空間内に配置した状態とし、型締め完了後、前記成形空間内に金属溶湯を圧入して前記ダイカスト成形品を成形し、型開き時に、前記スライド機構によって前記中子を下向きにスライドさせ、次いで前記揺動機構によって前記中子を上外に向けて回動させることにより、前記可動型に付着している前記ダイカスト成形品から前記中子を離脱させることを特徴とするダイカスト成形用金型装置。
  3. 前記可動型側には、型開き時に前記可動型に付着している前記ダイカスト成形品を前記可動型から離脱させるべく前記固定型に向けて押し出すための押出機構が配設され、
    前記固定型には、前記ダイカトス成形品のアンダーカットに連通する凹部を前記ダイカスト成形品に付与するための凹部形成用凸部が設けられており、型開き時に、前記凹部により、前記中子のアンダーカット成形用凸部が前記ダイカスト成形品から離脱可能であることを特徴とする請求項2に記載のダイカスト成形用金型装置。
  4. 固定型、可動型、アンダーカット成形用凸部を有する中子及び前記可動型の上部に設けられた中子駆動機構を備え、前記中子駆動機構が、前記固定型及び可動型の接近離間方向に対して略直交する上下方向に前記中子をスライドさせるべく前記中子と作動連結されたスライドシリンダを具備したスライド機構と、離間状態にある前記固定型及び可動型の間において前記中子及びスライド機構を揺動させるためのスイングシリンダ及びスイング駒を具備した揺動機構とから構成され、
    前記揺動機構のスイングシリンダは、出没可能なピストンを備えると共に、前記可動型に対し第1の支軸(53)を中心として回動可能に取り付けられており、
    前記揺動機構のスイング駒は、前記可動型に対し第2の支軸(55)を中心として回動可能に取り付けられており、
    前記第2の支軸(55)から所定距離を隔てたスイング駒の一部には連結軸(56)が設けられ、この連結軸(56)を介して前記スイング駒は前記スイングシリンダのピストンの先端部と回動可能に連結されており、
    前記スイング駒上には前記スライド機構のスライドシリンダが固定され、そのスライドシリンダは出没可能なピストンを備え、そのピストンの先端部には前記中子が支持されているダイカスト成形用金型装置を用いて、アンダーカットを有するダイカスト成形品を成形する方法であって、
    前記中子を前記可動型側に引き寄せて略鉛直方向に沿って縦に配置し、その状態で前記可動型を前記固定型に接合することにより、金型装置内に成形空間を構築すると共に前記両型間に前記中子を介在させた状態で型締めを完了し、
    型締め完了後、金属溶湯を前記成形空間内に圧入して前記ダイカスト成形品を成形し、次いで前記固定型から前記可動型を引き離して型開きし、
    型開き後、前記スライド機構によって前記中子を略鉛直方向下向きにスライドさせて、前記中子のアンダーカット成形用凸部を前記可動型に保持された前記ダイカスト成形品のアンダーカット部分から離脱させ、
    前記中子の離脱後、前記揺動機構によって前記中子を上外に向けて回動させることにより、離間状態にある前記両型間から前記中子を上外に向けて退避させ、
    前記中子の退避後、前記可動型から前記ダイカスト成形品を離脱させることを特徴とするアンダーカットを有するダイカスト成形品の成形方法。
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