JP3869514B2 - ワイヤソー用水溶性切削液 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は水溶性のワイヤソー用切削液に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、シリコンやGaAs等の硬脆材料製の比較的大きなインゴット等の切断には、厚さの均一な切断が可能なだけでなく、切り屑の発生量が少なく、一回の切断で多数のウェハーを作成できるという利点を有するワイヤソーが利用されている。
ワイヤソーの使用に際しては、鉱物油を主成分とする切削油に炭化ケイ素等の砥粒を1:1〜1:1.5(重量比)の割合で分散させたスラリー状切削処理剤が切断加工面に供給され、切り出されたウェハーはトリクロロエタンやジクロロメタン等のハロゲン系溶剤を用いる洗浄処理に付されている。
【0003】
一方、この種のハロゲン系溶剤の使用は、作業衛生や環境保全等の見地から実質的に禁止されるようになっているために、水溶性の切削液の開発が要請され、既に種々の水溶性切削液が提案されている。
このような水溶性切削液としては、(i)アルカリ水溶または酸水溶液を含有する切削液(特開平2−262955号公報および特開平3−239507号公報参照)、(ii)グリコール、水溶液増粘剤(メチルセルロースおよびポリアクリル酸等)および水を含有する切削液(特開平4−216897号公報および特開平4−218594号公報参照)、(iii)脂肪酸イミダゾール水溶液を含有する切削液(特開平8−57848号公報参照)および(iv)有機または無機ベントナイトおよび水を含有する切削液(特開平8−57847号公報参照)が例示される。
【0004】
しかしながら、これらの水溶性切削液(i)〜(iv)には下記の問題点がある。
切削液(i):切削液の粘度が低いために砥粒をほとんど保持することができないだけでなく、水の蒸発に起因して砥粒スラリー濃度が使用中に変化するために、均一な切削加工ができない。
切削液(ii):水溶性増粘剤の十分な溶解性と水溶性溶剤に対する十分な安定性を確保するめに比較的多量の水(10〜99重量%)を必要とするために、水の蒸発に起因して砥粒スラリー濃度が使用中に変化して均一な切削加工が困難となる。
切削液(iii):保水性向上剤が配合されているが、多量の水(約35〜47重量%)を含有するために、水の蒸発に起因して砥粒スラリー濃度が使用中に変化して均一な切削加工ができない。
切削液(iv):ベントナイトの分散安定性が悪いだけでなく、使用中の多量の発泡と水の蒸発に起因して砥粒スラリー濃度が変化するために、均一な切削加工が困難となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、従来の水溶性切削液の上記のような問題点を解決し、砥粒を安定に分散させると共にワイヤソーへの砥粒の付着性を向上させることによって被加工物の均一な切削加工を可能にするワイヤソー用水溶性切削液を提供するためになされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
即ちこの発明は、粒径が10nm〜10μmの合成樹脂微粉末(但し、フッ素樹脂微粉末を除く。)を分散させた水溶性溶剤を含有するワイヤソー用水溶性切削液に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
合成樹脂微粉末としては、従来から周知の各種の合成樹脂の微粉末を適宜使用すればよく、特に限定的ではない。合成樹脂としてはポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエチレン、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステルおよびポリアミド樹脂およびこれらの任意の混合樹脂が例示される。
これらの合成樹脂微粉末の粒径は特に限定的ではないが、通常は10nm〜10μm、好ましくは0.1〜5μmであり、10μmよりも大きくなると、合成樹脂の粉末が溶液中で不安定になる。また、10nmよりも小さくなると、砥粒の沈降をおさえられなくなる。
【0008】
合成樹脂微粉末の配合量は通常0.5〜30重量%、好ましくは1〜5重量%であり、0.5重量%よりも少ないと、砥粒の沈降をおさえられなくなる。また、30重量%よりも多くなると、砥粒を多量(原液に対して1:1)入れる事が困難になる。
【0009】
上記の合成樹脂微粉末を分散させる水溶性溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体およびこれらの任意の混合物等が例示されるが、グリコール系溶剤が好ましい。
【0010】
本発明による水溶性切削液には、稠度を増大させるか、またはチキソトロープ性を付与するために水溶性増粘剤を添加してもよい。
水溶性増粘剤としてはポリビニルピロリドン(好ましくは、分子量が10000〜2000000、特に1000000〜2000000のポリビニルピロリドン)が特に好ましい。
水溶性増粘剤の配合量は通常0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜3重量%であり、5重量%よりも多くなると、粘度が上がりすぎ、作業性を低下させる。
【0011】
本発明による水溶性切削液には、所望により各種の添加剤を適宜添加してもよい。このような添加剤としては潤滑剤(例えば、脂肪酸、脂肪酸重縮合物)、消泡剤(例えば、シリコン系、アルコール類)、防錆剤(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン)および分散剤(例えば、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤)等が例示される。
また、該水溶性切削液の引火点を低下させるために、水を5〜30重量%添加してもよい。含水量が30重量%よりも多くなると、水の蒸発による砥粒スラリー濃度の変化に起因する不均一な切削加工の問題が顕在化する。
【0012】
本発明によるワイヤソー用水溶性切削液は上記配合成分を高速撹拌により均一な分散液とすることによって調製されるが、水溶性増粘剤を配合する場合には上記水溶性溶剤に合成樹脂微粉末を高速撹拌により均一に分散させた後、これに水溶性増粘剤を添加して溶解させるかまたは水溶性増粘剤の水溶性溶剤溶液を添加して調製してもよい。
【0013】
本発明によるワイヤソー用水溶性切削液の粘度は合成樹脂微粉末の種類、粒径および配合量並びに水溶性溶剤の種類および配合量並びに水溶性増粘剤の種類および配合量等によって左右され、特に限定的ではないが、一般的には10〜1000cp、好ましくは50〜500cpである。一般に、粘度が10cpよりも低くなると、砥粒の分散性が低下し、、また、粘度が1000cpよりも高くなると、作業性が低下する。
【0014】
被加工物、例えばシリコンやGaAs等の硬脆材料製のインゴットやフェライトヘッド等をワイヤソーを用いて切断するに際しては、上記の水溶性切削液に砥粒、例えばSiC製砥粒等を1:1〜1:1.5(重量比)で添加した切削加工液を調製し、該切削加工液を加工部に供給し、ワイヤソ切断をおこなう。砥粒の粒径は被加工物の種類や寸法等によって左右され、特に限定的ではないが、通常は5〜30μm、好ましくは10〜20μmである。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって説明する。
実施例1〜5
表1に示す配合処方により、ワイヤソー用水溶性切削液1〜5を調製した。
合成樹脂微粉末の均一分散化はホモミキサーを用いておこなった(回転数:5000rpm)。
【表1】
Figure 0003869514
得られた水溶性切削液1〜5に関する炭化ケイ素砥粒(GC#800)の分散性およびワイヤソーへの該砥粒の付着性を以下の方法によって調べた。
炭化ケイ素砥粒の分散性
被験液に等重量のGC#800を添加し、この分散液をメスシリンダーに入れ、24時間静置後、ケイ素砥粒の沈降状態を透明液部分の容量%で評価する。
ワイヤソーへの炭化ケイ素砥粒の付着性
上記分散液中にワイヤソーを浸漬した後、引き上げ、ワイヤソーへの砥粒の付着性を目視によって評価する。
上記の評価結果を以下の表2に示す。
【表2】
Figure 0003869514
【0016】
比較例1〜3
前記実施例の手順に準拠し、表1に示す配合処方により切削液1’〜3を調製し、これらに関する炭化ケイ素砥粒の分散性およびワイヤソーへの該砥粒の付着性を調べた。
結果を表2に示す。
【0017】
【発明の効果】
本発明によるワイヤソー用水溶性切削液を使用することにより、砥粒を安定に分散させると共にワイヤソーへの砥粒の付着性を向上させることができるので、ワイヤソーによる被加物(例えば、シリコンやGaAs等の硬脆材料製のインゴットやフェライトヘッド、水晶、セラミックス、光学ガラス、ネオジム磁石、サファイヤ、リチウムタンタレート等)の均一な切削加工が可能となる。

Claims (6)

  1. 粒径が10nm〜10μmの合成樹脂微粉末(但し、フッ素樹脂微粉末を除く。)を分散させた水溶性溶剤を含有するワイヤソー用水溶性切削液。
  2. 水溶性溶剤がエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコールおよびポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体から成る群から選択される1種または2種以上の溶剤である請求項1記載の切削液。
  3. 合成樹脂微粉末(但し、フッ素樹脂微粉末を除く。)0.5〜30重量%および水溶性溶剤70〜99.5重量%含有する請求項1または2記載の切削液。
  4. 水溶性増粘剤をさらに含有する請求項1記載の切削液。
  5. 合成樹脂微粉末(但し、フッ素樹脂微粉末を除く。)0.5〜30重量%、水溶性溶剤65〜99.4重量%および水溶性増粘剤0.1〜5重量%含有する請求項記載の切削液。
  6. 水溶性増粘剤がポリビニルピロリドンである請求項または記載の切削液。
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