JP3868593B2

JP3868593B2 - 押し花密封品

Info

Publication number: JP3868593B2
Application number: JP25254997A
Authority: JP
Inventors: 豪酒井
Original assignee: 株式会社ドペル
Priority date: 1997-09-17
Filing date: 1997-09-17
Publication date: 2007-01-17
Anticipated expiration: 2017-09-17
Also published as: DE69833666D1; AU737217B2; US6322862B1; CA2303904A1; JPH1178398A; EP1022159A1; CN1130291C; KR20010015591A; CN1278213A; WO1999014062A1; DE69833666T2; EP1022159A4; AU9095298A; EP1022159B1; KR100547419B1; CA2303904C

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、押し花密封品に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、ガラス、食器、家具、鏡、時計、家電製品、メッセージボードやシート、名札、メモリアルカード、文具、葉書、電報、写真等々の様々な対象に対しての自然の草花の美しさをそのまま長期にわたって装飾品として使用することのできる、乾燥押し花を用いた押し花密封品に関するものである。
【０００２】
【従来の技術とその課題】
従来より、各種の草花を乾燥させた押し花を厚紙やプラスチック等の基板に貼着させて装飾品としたものが知られており、メモリアルカードや、電報等にこれらの装飾品が用いられてきている。
これらの従来の押し花装飾品の場合には、たとえば図１のシート体状のものを例にとると、厚紙や樹脂シート等の基板（１）の上に、乾燥させた押し花品（２）を載置して、その上に和紙や透明樹脂フィルム（３）を被覆した構成を持つものが代表的なものとして示されるが、これらの従来の押し花装飾品では、図１の断面Ａ−Ａを示した図２のように、和紙や透明樹脂フィルム（３）を押し花品（２）の周囲に袋状に被覆して、その周囲においてのみ接着剤層（４）を介して貼着しているか、あるいは図３に示したように、接着剤層（４）に押し花品（２）を埋込むようにして透明樹脂フィルム（３）とともにラミネートしたものとして構成されている。
【０００３】
そして、これらの押し花装飾品については、押し花品（２）の周囲に、空気や湿気ができるだけ残存しないように減圧雰囲気において貼着やラミネートを行うとの工夫や、圧着のための方法等についての改善もなされてきている。
しかしながら、たとえば図２に示した袋状構造の装飾品の場合には、乾燥押し花品（２）の周囲には空気が残存し、湿気が残されたままで袋状とされているために、押し花品（２）は急速に劣化して変退色し、草花の自然の色合いや形状を保つことができないという欠点がある。しかも、この袋状構造では、押し花品（２）に近い表面位置（Ｂ）の表面フィルム（３）が損傷すると、直ちに外気と接触して、押し花品（２）は劣化してしまうという重大な問題がある。
【０００４】
また、透明樹脂フィルム（３）に変えて和紙を用いる場合には、通気が遮断できないために、劣化はさらに急速であった。
これらの欠点は、接着剤層（４）に押し花品（２）を埋め込むようにした図３の構造のものでは比較的改善されているものの、押し花品（２）の基板（１）側には、たとえば花弁や葉の裏側、そして茎の表面等には空気、気泡が残存し、減圧雰囲気でのラミネートにおいても接着剤層（４）からこれを取除くことは難しく、製造時の減圧雰囲気、圧力、温度等の条件の設定も大変に難しく、変退色という劣化を抑えて、長期にわたって自然な色合いを保つことのできる高品質の押し花装飾品を生産性良く提供することは困難であった。
【０００５】
そして、図３の従来例の場合にも、気泡が残存していることから、表面の透明樹脂フィルム（３）が損傷されると押し花品（２）が直接外気に触れやすいことになり、劣化は進行しやすいという問題が残されていた。
また、接着剤層（４）においては、基板（１）表面の凹凸も接着剤のまわり込みに大きく影響し、気泡を残存させる確率も大きくなることから、より平坦なものが要求されるという制約があった。このような問題は、従来の押し花装飾品においては、たとえばメモリアルカードや押し花電報について、押し花の周囲を切り取って、装飾品として再利用することも難しいという問題の原因となっていた。ハサミ等で切り取る時に、空気層や気泡部分が切断されて押し花品（２）が外気に対して露出し、劣化してしまうという問題が避けられなかったからである。
【０００６】
また、以上のような残存空気、気泡の存在は、押し花装飾品がより大きな面積になるに従ってその割合が多くなるため、結局のところ、従来品では、たとえば壁面装飾ボードのような大きな面積のものとすることができなかった。
さらに、従来の押し花装飾品の場合には、図２および図３にも例示したように、基板（１）として紙や樹脂シート等を用いると、接着剤層（４）の硬化にともなう収縮によって、局部的に基板（１）に反りが生じやすく、基板（１）そのものがフラットな平坦な状態にならないという問題もあった。そしてこの問題は、不均一な反りの発生によって、空気溜りも生じやすい原因の一つともなっていた。
【０００７】
このような基板（１）との関係では、従来の押し花装飾品では、基板（１）が、ガラスや木質材等の場合には、密着性の良好なものが得られていないのが実情でもあった。
このような状況において、この出願の発明者らは、接着剤層（４）としてホットメルト材を使用し、低圧度の高い真空減圧雰囲気下での圧着により、空気溜り、気泡の残存を抑え、長期にわたって劣化の少ない押し花装飾品を提供することを可能とし、また、前記のような基板（１）の反りの発生を抑え、ガラス、木質材等を基板（１）とする場合にも、より大きな平面積のものであっても、自然の色合いが保たれた装飾品を提供することを可能とすべく鋭意検討してきた。
【０００８】
この出願の発明は、以上のとおりの事情よりなされたものであって、従来技術の問題を解決し、高品質で、高い生産性で、極めて美的な、新しい押し花密封品を提供するものである。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、以上のとおりの課題を解決するものとして、基板の片面に、乾燥された押し花品が溶融樹脂により密封された中間層とその上部の透明フィルム表面層とが積層一体化されている押し花密封品であって、前記中間層は、溶融性樹脂のみからなる溶融性多孔質樹脂フィルムが真空減圧下に加熱加圧され、溶融した樹脂が押し花品に密着してこれを密封したものであるとともに溶融した樹脂により基板および透明フィルム表面に固着されていることを特徴とする押し花密封品（請求項１）を提供する。
【００１０】
また、この出願の発明は、前記の溶融性多孔質樹脂フィルムについて、このものは、３次元の多孔連通構造を有している押し花密封品（請求項２）をはじめ、溶融性多孔質樹脂フィルムは、平均孔径が１．０ｍｍ以下である押し花密封品（請求項３）、溶融性多孔質樹脂フィルムは、１１０℃以下で溶融する押し花密封品（請求項４）、溶融性多孔質樹脂フィルムの溶融により押し花品が密着密封されている中間層の厚みは、４０００μｍ以下である押し花密封品（請求項５）、中間層は、真空乾燥された押し花品を実質的にその周辺に気泡がないように密封している押し花密封品（請求項６）等の態様も提供する。
【００１１】
さらにまた、この出願の発明は、
透明フィルム表面層は、３００μｍ以下である押し花密封品（請求項７）、透明フィルム表面層は、多層積層フィルムである押し花密封品（請求項８）、透明フィルム表面層は、最外表面層としてハードコート層を有している押し花密封品（請求項９）、基板は、ガラス、セラミックス、樹脂、紙、木質材、金属、またはこれらの複合体、もしくはこれらの積層体である押し花密封品（請求項１０）、基板は、樹脂積層シートであって、カラー印刷層またはカラー練込み層が設けられている押し花密封品（請求項１１）、カラー印刷層またはカラー練込み層は、最外層、中間層、もしくはその両者として設けられている押し花密封品（請求項１２）、カラー印刷層は、白色フィルム層とともに設けられている押し花密封品（請求項１２）、樹脂積層シートは、反りの抑えられたシートである押し花密封品（請求項１３）、積層樹脂シートは、厚みが３０００μｍ以下である押し花密封品（請求項１５）等もその態様として提供する。
【００１２】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、以上のとおりの構成を特徴としているが、改めて、図面に沿って説明すると、図１のＡ−Ａ断面を示した図４のように、基板（１）の片面に、乾燥された押し花品（２）が溶融樹脂（５０）により密封された中間層（５）と、その上部の透明フィルム表面層（６）とが積層一体化されている押し花密封品であって、中間層（５）は、溶融性多孔質樹脂フィルムが真空減圧下に加熱加圧され、溶融した樹脂（５０）が押し花品に密着してこれを密封したものであるとともに、溶融した樹脂（５０）により基板（１）および透明フィルム表面層（６）に固着されていることを特徴とする押し花密封品を提供するものである。
【００１３】
ここで、重要なことは、溶融した樹脂（５０）は、押し花品（２）の花弁、葉、茎、実等の表裏面の微細な凹凸や、その繊維形状等に沿ってくまなく密着し、空気溜りや気泡を存在させずに押し花品（２）を中間層（５）に埋め込んでいることと、基板（１）と透明フィルム表面層（６）に密着してこれらに硬化状態として固着されていることである。
【００１４】
以上のことは、この発明において、溶融性多孔質樹脂フィルムを使用し、このものを真空減圧下に加熱加圧して溶融した樹脂（５０）を硬化させることによって実現される。
溶融性多孔質樹脂フィルムは、これを構成する微細孔によって、真空減圧下に溶融される際に、押し花品（２）の周囲とその表面の空気、湿気を、この微細孔を通じて外部へと排出し、しかも押し花品（２）に密着することを可能としている。このことは、従来のラミネート構造においては全く考慮されていなかったことである。より具体的には、溶融性多孔質樹脂フィルムの配設部位の全体を通じて効果的に空気、湿気を排出させるためには、３次元の多孔連通構造を持つものであることが好ましい。そして、その種類によって若干の差異はあるものの、乾燥した押し花の色合い、形状、組織を破壊することなしに埋め込むことを可能とするためには、適度な溶融性をも備えていることが必要である。
【００１５】
このような観点からは、溶融性多孔質樹脂フィルムは、３次元の微細孔連通構造を持ち、かつ、その平均孔径は、１．５ｍｍ以下、たとえば０．０５〜１．５ｍｍ、より好ましくは１．０ｍｍ以下、たとえば０．１〜１．０ｍｍ程度であって、ＡＳＴＭふる目規格としては１８〜１４０メッシュ、Tyler メッシュで１６〜１５０に相当し、空隙体積率としては８５％以下、たとえば３０〜８０％程度で、かつ、１２０℃以下、より好ましくは１１０℃以下、さらには６０〜８５℃程度の温度において溶融するものが適当である。中間層（５）の厚みは、４０００μ以下、より一般的には１００〜１０００μｍ程度が適当であることから、溶融性多孔質樹脂フィルムは、その厚みが１５０〜１５００μｍ程度のものを一枚もしくは複数枚用いるのが適当である。
【００１６】
平均孔径は、このフィルムの厚みとも関係するが、一般的には、平均孔径が０．０５ｍｍ未満の場合にはフィルムそのものの入手が容易でないばかりか、真空減圧による空気、湿気の除去効率は低くなる傾向にある。また、１．５ｍｍを超えて大きくなると、溶融した樹脂の押し花品への密着度、すなわち埋め込みのための充填度が不足する傾向が見られる。このことから、厚み１５０〜１５００μｍ程度の溶融性多孔質樹脂フィルムとしては、溶融温度が、好ましくは１１０℃、さらには６０〜８５℃程度であって、平均孔径が０．０５〜１．５ｍｍ、より好ましくは１．０ｍｍ以下、０．１〜１．０ｍｍを目安とするのが適当である。
【００１７】
以上のような溶融性多孔質樹脂フィルムは、素材となる樹脂の微粉末の部分溶融体やその厚粉体として製造されたもの、発泡体として製造されたもの、あるいは、フィルムの光や、プラズマ、放射線照射により処理されて製造されたもの等として入手することができる。そして素材としての樹脂については、押し花品（２）との密着親和性や、溶融温度、溶融時のフロー性、そして多孔質フィルムの製造性等を考慮して選択されるのであって、たとえば、ポリエチレン、エチレン・エチルアクリレートコポリマー、エチレン・酢酸ビニルコポリマー、エチレン・アクリル酸コポリマー、エチレン・メタクリル酸コポリマー等々が適当なものとして挙げられる。
【００１８】
エチレン・酢酸ビニルコポリマーは好適なものの一つであるが、その部分ケン化物、たとえば約１０当量％以下のケン化物は押し花品との親和性において良好でもある。
これらの溶融性多孔質樹脂フィルム（なお、フィルムの用語については、シートと呼んでも実質的な差異はない）によって、押し花品（２）を埋め込んで密封することで中間層（５）を形成するには、たとえば図４において、基板（１）上に押し花品（２）を載置し、その上に溶融性多孔質樹脂フィルムと、透明フィルム表面層（６）を形成する非溶融性の樹脂フィルムを順次置いて、高真空減圧下で加熱加圧するか、あるいは、基板（１）の上にまず溶融性多孔質樹脂フィルムを置き、その上に押し花品（２）を置き、さらに再度溶融性多孔質樹脂フィルムを置いて、上記と同様にして非溶融性の透明樹脂フィルムを置いた後に高真空減圧下に加熱加圧するのが適当である。より好ましくは、後者の手段を採用するのがよい。
【００１９】
なお、この際には、押し花品（２）の表面や近接周面には、溶融性多孔質樹脂フィルムと同種の樹脂の微粉末をあらかじめ散布して加熱加圧してもよい。より厚みのある押し花品（２）の場合には、この微粉末の散布は有効でもある。この場合の粒径としては０．５ｍｍ以下、０．０５ｍｍ以上のものであることが適当である。
【００２０】
また、溶融性多孔質樹脂フィルム、さらには上記の微粉末は、溶融硬化して中間層（５）を形成するものとしては透明性の高いものとするのが適当である。これは、密封した押し花品（２）がその美しい自然の色をより鮮明に見せるためである。もちろん、所望によっては、色素等の添加によって中間層（５）が特有の色合いを持つ、押し花品（２）とともに相乗的にその美しさを発現するようにしてもよい。この場合にも透明度が高いことが適当であることは言うまでもない。
【００２１】
たとえば以上の構成において、この出願の発明においては、前記のとおりの溶融性多孔質樹脂シートを用いることで、押し花品（２）の密封に際して、真空減圧下に、押し花品（２）の周囲、その表面近傍に空気溜りや気泡を残すことなしにこれらを効果的に外部に排出することができ、溶融した樹脂を押し花品（２）のすべての表面にくまなく密着させてこれを埋め込み密封することを可能としている。このため、残存する空気中の酸素や、湿気によって押し花品（２）が劣化して変退色することを長期にわたって防止し、自然の鮮明な色合いを保つことを可能とする。
【００２２】
そして、このような埋め込み密封により、たとえ外力によって透明フィルム表面層（６）からの損傷があっても、押し花品（２）にその傷が達しない限りは、密封性は破られることはなく、押し花品の劣化は生じない。また、前記の溶融性多孔質樹脂フィルムの使用によって、大きな平面積の押し花密封品を得ることも可能となる。真空減圧は、全平面域にわたってすみやかに空気を排出することになるからである。このことは、種類や厚みの異なる複数の押し花品（２）を同一平面上に配置した場合でも同様であって、壁面ボード、間仕切り等の大きな面積で、装飾性に優れた押し花物品の提供も可能となる。
【００２３】
さらに、この発明によって、切り取りによる再利用も可能となる。押し花品（２）に接しない限り、所望の範囲を切り取って、別途利用することもできるからである。たとえば、メッセージカードや電報台紙にこの発明の押し花密封品を構成する場合、これを切り出して再利用できることになる。これは、押し花品（２）が、くまなく溶融した樹脂に密着されて硬化中間層（５）を形成しているからである。
【００２４】
押し花品（２）については、真空乾燥した各種の草花であってよく、コスモス、パンジー、カスミ草、バラ、麦等の各種の花、葉、茎、実の適当な組合わせであってよい。
図４に示した透明フィルム表面層（６）については、中間層（５）を形成する加熱加圧時にも溶融することのないものであって、透明性が高くしかもその最外表面は、外力によっても損傷、摩耗しにくく、光や温度によって劣化しないものであることが好ましい。
【００２５】
その厚みについては特に限定はないが、製造コストや、透明度等を考慮して、通常は３００μ以下、４０〜３００μｍ程度とするのが適当である。そして、この透明フィルム表面層（６）については、多層構造としてもよく、中間層（５）に接する部分には、密着性が良いものとし、最外表面には、硬度があって傷が付きにくく、光、熱等に対して耐性の大きなハードコート層が配設されるようにしてもよい。たとえば透明フィルムの中間層（５）側に接着層、特に熱接着層（ヒートシール層）を設け、最外層にハードコート層を設けることもできる。透明フィルムとしては、透明性、耐熱性等の良好なものとしてポリエステル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ＰＥＴ（ポリエチレンテレフタレート）等のフィルムを用いることができる。熱接着層としては、一般的には、６０〜１００℃程度の、前記の加熱加圧下において接着性を示すフィルムを用いることが考慮される。たとえばこのようなフィルムとしては、ポリエチレン、エチレン・エチルアクリレートコポリマー、エチレン・酢酸ビニルコポリマー等が例示される。また、ハードコート層としては、酸化ケイ素膜等の無機膜、あるいは、アクリル系樹脂、有機ケイ素系樹脂、硬質ウレタン系樹脂等が例示される。そして、これらのハードコート層には、表面の耐摩耗性とともに、反射防止性を付与するために、シリカ微粒子や、ＴｉＯ₂，ＺｒＯ₂，ＳｎＯ₂等の微粒子を分散させておいてもよい。また、ＩＴＯ（インジウム・スズオキサイド）等の導電性微粒子を分散させておくことで表面に静電気によるほこりが付着しにくいようにしてもよい。
【００２６】
反射防止性や帯電防止性を付与することで、密封された押し花品（２）は、より鮮明にその色合いを発現することになる。
接着性のフィルムは、その厚みは、１０〜２００μｍ程度とし、ハードコート層は、１〜４μｍ程度とするのが適当である。
もちろん、接着性フィルムやハードコート層等は必ずしも必要としない。押し花密封品の用途に応じて透明フィルム表面層（６）の構成が定められることになる。
【００２７】
図４に示した基板（１）については、この発明では、ガラス、セラミックス、樹脂、紙、木質材、金属、これらの複合材、あるいはこれらの積層材の任意のものであってよい。ガラス、セラミックス、あるいはプラスチック成形品、木材、等に対してもこの発明の押し花密封品が構成できることはこの発明の大きな利点の一つでもある。
【００２８】
これらの基板（１）については中間層（５）との接着性をさらに良好とするために、前記のような接着層を設けてもよいし、あるいはプラズマや、エッチング液により粗面化し、アンカー効果を付与しておいてもよい。
シート材を用いる場合には、たとえソフトな柔軟性のある樹脂フィルム（シート）を用いても、剥離して押し花品（２）が脱落したり、露出することはない。
【００２９】
そして、フラットな基板（１）として樹脂を用いる場合には、この発明によって、反り（カール）やねじれが生じない構成も提供される。また、密封された押し花品（２）の色合いをより鮮明にするための背景として、基板（１）の色合いをコントロールすることもできる。
すなわち、この発明では、たとえば基板（１）として、比較的、形状保持性に優れたポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリプロピレン等のフィルム（シート）を複数枚積層一体化することで、前記の加熱加圧にともなう基板（１）の反りやねじれを効果的に抑止することができる。また、積層構造の中間層、最外層、あるいは両者にカラー印刷層やカラー練込み層を設けることで、基板（１）による背景効果をより大きなものとすることができる。
【００３０】
たとえば基板（１）には、前記のポリエステルとして白色フィルム（シート）を用い、接着層としての熱接着層等を介してカラー印刷層とともに積層する。カラー印刷層は、白色フィルムの地の背景色に対して押し花品（２）の色合いをそのまま浮き出たせる場合には必ずしも必要でないが、背景色を変更する場合や、背景をデザイン地とする場合に設けられることになる。
【００３１】
また、中間層（５）の色合いが若干くすんでいる場合に、クリーム色のカラー印刷層やカラー練込み層を設けることで、押し花品の色合いを鮮明にすることも可能となる。
なお、接着層としては、前記と同様のものが考慮される。そして、ポリエステル等の基板（１）を構成する複数枚のフィルム（シート）の場合には、その厚みは、一般的には２０〜２００μｍ程度とし、接着層については１０〜１００μｍ程度とするのが適当である。
【００３２】
シート状の基板（１）としては、特にその厚みに制限はないが、以上の構成で、反りやねじれを抑える場合には、１００〜１０００μｍ程度とすることが考慮される。
なお、カラー印刷層、カラー練込み層については、適当な着色インク、顔料、色素が用いられ、さらには金属による粉末や、その固着、あるいは蒸着したデザインとしてもよい。
【００３３】
また、基板（１）がフィルムや紙の場合、その裏面に接着層や両面接着シートを設けておいて、押し花密封品を適宜に貼着できるようにしておいてもよい。
以下、実施例を示し、さらに詳しくこの発明について説明する。
【００３４】
【実施例】
実施例１
図５に示した真空減圧圧着装置を用い、減圧吸引のための開孔（１１１）を持つ支持台（１１）上で、四周に配置したゴム（１２）に囲まれた平面域（３００×３００ｍｍ）に、綿布（１３）を置き、次いで基板（１）としての、厚み１５０μｍの積層ＰＥＴ（ポリエチレンテレフタレート）フィルムを置いた。
【００３５】
積層ＰＥＴフィルムは、図６に示したように、厚み４０μｍの白色顔料酸化チタン含有の白色ＰＥＴフィルム（１Ａ）３枚を、エチレン・エチルアクリレートコポリマーの厚み２０μｍの熱接着性フィルム（１Ｂ）２枚とを、温度７０〜８０℃で熱圧着したものとした。
この積層ＰＥＴフィルムの上には、溶融温度７５℃、平均孔径が約０．２ｍｍで、厚み０．６ｍｍ（ＡＳＴＭ７０メッシュ相当）エチレン・酢酸ビニルコポリマーからなる溶融性多孔質樹脂フィルム（５１）、パンジーの真空乾燥押し花品（２）、上記同様の溶融性多孔質樹脂フィルム（５１）、並びに厚み１５０μｍＰＥＴフィルムからなる透明フィルム（６１）、さらにカバーシート（１４）を順次重ね、約８０℃の温度において、７６０ｍｍＨｇの絶対真空度に限りなく近い状態に真空減圧して上方より約１ａｔｍ程度に押圧した。
【００３６】
得られた積層シート体は、図４において、基板（１）１５０μｍ、中間層（５）８００μｍ、透明フィルム表面層（６）１５０μｍの厚みを有し、中間層（５）には、押し花品（２）が溶融した樹脂（５０）に密着されて密封されており、空気溜り、気泡は全く認められなかった。
また、基板（１）については反りやねじれが全く認められなかった。
【００３７】
押し花品（２）は、６ケ月以上の長期に渡って自然の色合いを保持し、その色合いは鮮明で美しいものであった。
実施例２
実施例１において、溶融性多孔質樹脂シートとして、５当量％部分ケン化物を用い、平均孔径０．５ｍｍで、厚み１．３ｍｍ（ＡＳＴＭ３５メッシュ相当）のものを用い、厚みが約１０００μｍの中間層（５）を形成した。
【００３８】
実施例１と同様に優れた品質の押し花密封品を得た。
実施例３
実施例１において、基板として厚み２ｍｍ透明ガラス板を用いた。同様に優れた品質の押し花密封品を得た。基板のガラス板表面の密着性は充分であって、剥離は全く生じなかった。
実施例４
基板として、図７に示したように、厚み５０μｍのＰＥＴフィルム（１Ｃ）と、厚み７５μｍのＰＥＴフィム（１Ｄ）と、厚み５０μｍのエチレン・エチルアクリレートコポリマーフィルム（１Ｅ）並にクリーム色カラー印刷層（１Ｆ）を積層したものを用いた。
【００３９】
乾燥押し花品（２）の色合いは一層鮮明な押し花密封品が得られ、反り、ねじれは認められなかった。
実施例５
実施例１において、溶融温度７７℃の、エチレン・エチルアクリレートコポリマーの溶融性多孔質樹脂フィルムを用いた。加熱加圧の時間は、実施例１に比べて約１．５倍とした。
【００４０】
同様にして良好な品質の押し花密封品を得た。
【００４１】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明においては、前記のとおりの溶融性多孔質樹脂シートを用いることで、押し花品（２）の密封に際して、真空減圧下に、押し花品（２）の周囲、その表面近傍に空気溜りや気泡を残すことなしにこれらを効果的に外部に排出することができ、溶融した樹脂を押し花品（２）のすべての表面にくまなく密着させてこれを埋め込み密封することを可能としている。このため、残存する空気中の酸素や、湿気によって押し花品（２）が劣化して変退色することを長期にわたって防止し、自然の鮮明な色合いを保つことを可能とする。
【００４２】
そして、このような埋め込み密封により、たとえ外力によって透明フィルム表面層（６）からの損傷があっても、押し花品（２）にその傷が達しない限りは、密封性は破られることはなく、押し花品の劣化は生じない。また、前記の溶融性多孔質樹脂フィルムの使用によって、大きな平面積の押し花密封品を得ることも可能となる。真空減圧は、全平面域にわたってすみやかに空気を排出することになるからである。このことは、種類や厚みの異なる複数の押し花品（２）を同一平面上に配置した場合でも同様であって、壁面ボード、間仕切り等の大きな面積で、装飾性に優れた押し花物品の提供も可能となる。
【００４３】
さらに、この発明によって、切り取りによる再利用も可能となる。押し花品（２）に接しない限り、所望の範囲を切り取って、別途利用することもできるからである。たとえば、メッセージカードや電報台紙にこの発明の押し花密封品を構成する場合、これを切り出して再利用できることになる。これは、押し花品（２）が、くまなく溶融した樹脂に密着されて硬化中間層（５）を形成しているからである。
【００４４】
また、基板（１）として積層シートを用いることで、たとえシート状基板であっても従来のように反りやねじりが生じることのないフラットな基板を持つ押し花密封品が提供される。さらにカラー印刷層を介在させることで、背景色のコントロールも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図１】押し花装飾品の外観を例示した斜視図である。
【図２】従来の袋状の押し花装飾品を示した断面図である。
【図３】従来のラミネート押し花装飾品を示した断面図である。
【図４】この発明の押し花密封品を例示した断面図である。
【図５】この発明の押し花密封品の積層構成を例示した分解断面図である。
【図６】基板の積層構成例を示した分解断面図である。
【図７】別の基板の積層構成例を示した分解断面図である。
【符号の説明】
１基板
１Ａ白色ＰＥＴフィルム
１Ｂ熱接着性フィルム
１ＣＰＥＴフィルム
１ＤＰＥＴフィルム
１Ｅエチレン・エチルアクリレートコポリマーフィルム
１Ｆカラー印刷層
１１支持台
１１１開孔
１３綿布
２押し花品
３表面フィルム
４接着剤層
５中間層
５０溶融樹脂
５１溶融性多孔質樹脂フィルム
６透明フィルム表面層
６１透明フィルム

Claims

基板の片面に、乾燥された押し花品が溶融樹脂により密封された中間層と、その上部の透明フィルム表面層とが積層一体化されている押し花密封品であって、中間層は、溶融性樹脂のみからなる溶融性多孔質樹脂フィルムが真空減圧下に加熱加圧され、溶融した樹脂が押し花品に密着してこれを密封したものであるとともに、溶融した樹脂により基板および透明フィルム表面層に固着されていることを特徴とする押し花密封品。
溶融性多孔質樹脂フィルムは、３次元の多孔連通構造を有している請求項１の押し花密封品。
溶融性多孔質樹脂フィルムは、平均孔径が１．０ｍｍ以下である請求項１または２の押し花密封品。
溶融性多孔質樹脂フィルムは、１１０℃以下で溶融する請求項１ないし３のいずれかの押し花密封品。
溶融性多孔質樹脂フィルムの溶融により押し花品が密着密封されている中間層の厚みは、４０００μｍ以下である請求項１ないし４のいずれかの押し花密封品。
中間層は、真空乾燥された押し花品を実質的にその周辺に気泡がないように密封している請求項１ないし５のいずれかの押し花密封品。
透明フィルム表面層は、３００μｍ以下である請求項１の押し花密封品。
透明フィルム表面層は、多層積層フィルムである請求項１または７の押し花密封品。
透明フィルム表面層は、最外表面層としてハードコート層を有している請求項８の押し花密封品。
基板は、ガラス、セラミックス、樹脂、紙、木質材、金属、またはこれらの複合体、もしくはこれらの積層体である請求項１の押し花密封品。
基板は、樹脂積層シートであって、カラー印刷層またはカラー練込み層が設けられている請求項１０の押し花密封品。
カラー印刷層またはカラー練込み層は、最外層、中間層、もしくはその両者として設けられている請求項１１の押し花密封品。
カラー印刷層は、白色フィルム層とともに設けられている請求項１１または１２の押し花密封品。
樹脂積層シートは、反りの抑えられたシートである請求項１１ないし１３のいずれかの押し花密封品。
積層樹脂シートは、厚みが３０００μｍ以下である請求項１１ないし１４のいずれかの押し花密封品。