JPH09254348A - 化粧板およびその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】天然木材が本来表面に有する導管孔等の凹凸を
生かした高度の意匠性を有し、しかも転写層の未転写部
やブリッジ状部、フクレ等によって絵柄の欠陥を発生す
ることのない化粧板およびその製造方法を提供する。 【解決手段】木質層の表面の導管孔等の微細な凹部の内
面に沿って連続して転写層が形成されてなる化粧板、及
び、変形可能な基材層上に転写層を有する転写シートを
使用して、木質層の表面の導管孔等の微細な凹部に転写
シートの基材層を変形、圧入させることにより、転写シ
ートの表面の転写層を木質層の導管孔等の微細な凹部の
内面に沿って連続して転写する化粧板の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、壁面材や造作部
材、建具等の建装材や家具等の表面装飾に用いる為の、
木質層の表面に転写層を有する化粧板、およびその製造
方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】近年、壁面材や造作部材、建具等の建装
材や家具等の製造において、金属や合成樹脂材料、パー
ティクルボード、ハードボード、中密度繊維板（ＭＤ
Ｆ）等の繊維板、珪酸カルシウム板や石膏ボード等の無
機質板等や、それらの基材上に木目や石目、各種抽象柄
等の化粧紙を貼付した化粧板等が多用される様になって
きたが、やはり意匠性の面で天然木材には劣る為、天然
木材の無垢板や合板、それを薄くスライスした薄板（突
板）を上記各種の基材の表面に貼付した突板化粧板等
が、最も意匠性に優れた材料として人気が高く、量的に
は減少しているものの、高級用途には依然として非常に
重要な位置を占めている。

【０００３】係る天然木材系材料には従来、その表面に
塗装が施される場合が多いが、通常の塗装法では木板の
如き硬質で大型の物体への塗装は一般に機械化が困難で
あり、溶剤等の飛散による作業者の健康被害等の問題が
ある他、天然木材はその春材部と秋材部とで塗液の吸収
性に差がある為に、塗料を直接塗装すると塗りムラを発
生し易い等の問題があるので、近年では塗装に替えて、
フィルム状乃至シート状の基材層の表面に剥離可能な絵
柄の転写層を設けた転写シートを使用して、上記天然木
材系の材料の表面に絵柄を転写して設けた化粧板を利用
する方法が、広く用いられる様になっている。

【０００４】上記化粧板を製造するための木板や合板、
突板等の天然木材系材料からなる木質層の表面には、こ
れを鉋掛けや研磨等の方法により平滑化しても、例えば
導管孔等の微細な凹部が残存するので、これに従来の通
常の転写シートを使用し通常の方法で絵柄を転写して
も、前記導管孔等の微細な凹部の内面には転写シートの
転写層が接触しないので、この部分のみ絵柄の転写層が
転写されなかったり、当該部分の転写層が木質層と接着
せずに浮いた状態で転写シートの基材層から剥離してブ
リッジ状となり、この部分が粘着テープの貼着・剥離等
の外的作用により剥落したり、後工程の塗装の際に塗液
に含有される溶剤の作用により溶失したりすることによ
り、絵柄に欠陥を生じ、意匠性が損なわれる場合があっ
た。

【０００５】上記の問題点を解決するために、木質層の
表面の導管孔等の微細な凹部を埋める為の目止め処理を
施す方法もあるが、目止め剤の塗工の時点では平滑な表
面が得られても、溶剤の揮散により目止め剤が収縮する
為に、木質層の表面の凹部に対応した浅い凹部が残るの
で、完全に平滑にする迄に繰り返し目止め処理を行う必
要があり手間が掛かる他、転写時の熱により目止め剤中
の残留溶剤が気化して転写層のフクレを発生する場合が
ある。また、この様にして表面を平滑化してから絵柄を
転写すると、木質層の表面の木材特有の凹凸が失われ、
天然木材が本来有する意匠感を減殺する結果となってし
まう等の問題点があった。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明は従来技術の上
記した問題点に鑑みてなされたものであって、天然木材
が本来表面に有する導管孔等の凹凸を生かした高度の意
匠性を有し、しかも転写層の未転写部やブリッジ状部、
フクレ等による絵柄の欠陥を発生することのない化粧板
およびその製造方法を提供しようとするものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明の化粧板は、木質
層の表面に転写層を有する化粧板において、前記木質層
の表面の導管孔等の微細な凹部の内面に沿って連続して
転写層が形成されてなることを特徴とするものである。

【０００８】また本発明の化粧板の製造方法は、木質層
の表面に転写層を有する化粧板の製造方法において、変
形可能な基材層上に転写層を有する転写シートを使用し
て、前記木質層の表面の導管孔等の微細な凹部に、前記
転写シートの基材層を変形、圧入させることにより、前
記転写シートの表面の転写層を前記木質層の導管孔等の
微細な凹部の内面に沿って連続して転写することを特徴
とするものである。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下、本発明の化粧板およびその
製造方法の実施の形態につき、図面を参照しつつ詳細に
説明する。図１は本発明の化粧板の実施の形態を示す側
断面図であり、図２は本発明の化粧板の製造方法の実施
の形態を工程順に示す側断面図である。

【００１０】本発明の化粧板は、図１に示す如く、天然
木材の無垢板や合板、突板等、表面に導管孔１１等の微
細な凹部を有する木質層１の表面に、絵柄を施す為の転
写層２を有する化粧板であって、前記木質層１の表面の
導管孔１１等の微細な凹部の内部にも、その内面に沿っ
て導管孔１１等の凹部以外の表面と連続して、前記転写
層２が形成されてなるものである。

【００１１】本発明の化粧板は、係る如く木質層１の表
面の導管孔１１等の微細な凹部の内面にも転写層２を設
けた構成としたことにより、木質層１の表面の導管孔１
１等の微細な凹部に相当する箇所に、転写層２の未転写
部やブリッジ状部、フクレ等による絵柄の欠陥を発生す
ることがなく、しかも天然木材系の木質層１が元来有す
る導管孔１１等の凹凸が、転写層２の表面にもそのまま
残るので、表面の絵柄の欠陥がなく、しかも天然木材特
有の照り、風合い等の質感を有する、極めて意匠性の優
れた化粧板を得ることができる。

【００１２】なお、図１には化粧板の基材が天然木材系
の木質層１単独の例が示されているが、本発明はこれに
限定されるものではなく、木質層１の裏面に例えば金属
や合成樹脂材料、合板、パーティクルボード、ハードボ
ード、中密度繊維板（ＭＤＦ）等の繊維板、珪酸カルシ
ウム板や石膏ボード、ガラス等の無機質板等、またはそ
れらの積層体等、任意の材質が積層されていても良い。
また、木質層１が突板の場合には、単独若しくは裏面に
紙や不織布等の繊維質基材を積層して、別途用意した任
意の基材に貼着する為の、転写層付き突板化粧シートと
することもできる。この他、転写層２上に必要に応じて
塗装等を施すことも可能である。

【００１３】転写層２は、図１に示した例では、転写シ
ート４の基材３からの剥離性を付与する為の剥離層２
１、意匠性を付与する為の絵柄層２２、被転写体である
木質層１への接着性を付与する為の接着層２３の三層か
ら構成されているが、本発明はこれに限定されるもので
はなく、絵柄層２２が基材３からの良好な剥離性を備え
たものであれば剥離層２１を省略しても良いし、絵柄層
２２が被転写体である木質層１への接着性を備えたもの
であれば接着層２３を省略することもできる。また、転
写層２の接着層２３を省略する代わりに、被転写体であ
る木質層１の表面に、転写に先立ち接着剤を塗布しても
良い。

【００１４】上記剥離層２１、絵柄層２２、接着層２３
としてはそれぞれ従来公知の材料を使用することができ
る。具体的には、剥離層２１としては例えばアクリル系
樹脂、アルキド系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹
脂、塩化ゴム系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹
脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、繊維素系樹脂等、絵柄
層２２としては任意の顔料等の着色剤を任意の結着剤樹
脂と共に溶剤中に溶解または分散してなるグラビア印刷
インキ、オフセット印刷インキ、スクリーン印刷イン
キ、凸版印刷インキ等の印刷インキやコーティング剤、
塗料類等を好適に使用することができる。

【００１５】また接着層２３としては、従来公知の任意
の接着剤、粘着剤等を使用することができるが、特に熱
接着性を有する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−エチル
アクリレート共重合体樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル
系樹脂、合成ゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタ
ン系樹脂、ポリアミド系樹脂等からなるホットメルト接
着剤や、それらの熱接着性樹脂に、常温では固体である
が加熱により樹脂中に溶解して可塑化効果を発現し粘着
性を付与する固体可塑剤等を配合してなる感熱粘着剤等
を使用すると、常温では接着性を有しないので巻き取り
状等の任意の形態で輸送・保管可能であり、しかも転写
時に加熱することによって接着性を発現して被転写体で
ある木質層１に接着することができるので、最も好適で
ある。

【００１６】なお、絵柄層２２の絵柄としては、例えば
木目柄、石目柄、抽象柄等の任意の所望の絵柄とするこ
とが可能であるが、単なる着色を目的とする場合にはベ
タ印刷層またはコーティング層であっても良く、その際
絵柄層２２を着色透明層とすると、木質層１が本来有す
る木目模様に着色の効果を加味して優れた意匠性を達成
することもできる。また転写層２を無色の層として表面
保護層としたり、艶調整や防汚性、表面滑性等の付与の
目的でマット剤や離型剤、滑剤等を使用した層を設ける
ことも可能である。

【００１７】以上の様な構成の本発明の化粧板を製造す
るには、以下の要領によればよい。すなわち、図２に示
す様に、まず変形可能な基材層３上に転写層２を有する
転写シート４を用意し、必要に応じて該転写シート４の
転写層２が設けられた面、または目的の被転写体である
木質層１の表面に接着剤を塗布した後、両者を当接して
転写シート４の変形可能な基材層３を圧力等により変形
させて木質層１の導管孔１１等の微細な凹部に圧入し、
該凹部以外の表面と連続して該凹部の内面にも転写層２
を転写し、しかる後に転写シート４の基材層３を剥離除
去すればよい。

【００１８】上記変形可能な基材層３の変形の方式とし
ては、例えばゴム等の弾性材質やワックス等の塑性材質
等からなる基材層３を使用して、転写時の圧力により弾
性変形または塑性変形等させて圧入する方式も可能であ
るが、変形可能な基材層３として例えばポリエチレン樹
脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アイオ
ノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等の熱
軟化性樹脂を使用して、転写時に加熱軟化させつつ圧力
を賦課して変形、圧入する方式とすると、弾性材質や塑
性材質等を使用する方式と比較して、常温での転写フィ
ルム４の安定性や印刷適性等に優れるので、より好適で
ある。またその場合、転写層２の一部たる接着層２３と
して前記した熱接着性樹脂を使用すると、転写時に基材
層３を熱軟化、変形させる為に賦課される熱によって、
同時に接着層２３をも活性化し接着性を発現させて、被
転写体である木質層１に接着させることができるので、
非常に好適である。

【００１９】但し、上記の如く変形可能な基材層３とし
て熱軟化性樹脂を使用する場合には、被転写体である木
質層１の熱による劣化や反り等の発生を防止する為に、
可能な限り熱軟化温度の低い樹脂を選択して使用するこ
とが好ましい。具体的には、常温での安定性をも併せて
考慮すると、軟化温度が５０〜１５０℃程度の範囲の熱
軟化性樹脂が最も好適である。また上記剥離層２１は、
転写の工程において基材層３が木質層１の導管孔１１等
の微細な凹部に圧入するに十分なまでに熱軟化しても、
剥離層２１自体が熱軟化したり基材層３と融合する等し
て基材層３から剥離不能となることがない程度の、十分
な耐熱性・剥離性を備えたものである必要がある。また
上記接着層２３は、転写時の加熱温度で十分な接着性を
発現する範囲の活性化温度を有することが好ましい。

【００２０】なお、例えば被転写体である木質層１が平
面状である場合等には、上記変形可能な基材層３は必ず
しもその全体が変形可能である必要はなく、少なくとも
その転写層２側の一部が、被転写体である木質層１の導
管孔１１等の微細な凹部に圧入するに十分な変形性を備
えていればよい。すなわち具体的には、上記した弾性材
質、塑性材質または熱軟化性樹脂等の変形可能な層の裏
面に、例えば金属箔、耐熱性樹脂、紙、織布または不織
布等からなる変形性の少ない裏打層等を備えたものであ
っても、本発明の目的は十分に達成することができる。
寧ろ係る構成とした方が、例えば絵柄の印刷時の張力や
インキの乾燥の為の加熱、輸送・保管中の高温雰囲気等
による、基材層３の変形による絵柄の歪みやブロッキン
グ等の現象の発生を防止することもできるので、単層構
成の場合よりも好適である。

【００２１】また、上記変形可能な基材層３の転写層２
と接する面には、必要に応じて例えばシリコーン系樹
脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の低表面張
力の材質からなる離型層を設けることにより、転写層２
との剥離性を向上し転写不良の発生を防止することも可
能である。

【００２２】

【実施例】坪量５０ｇ／ｍ² の上質紙に厚さ２５μｍの
ポリエチレンフィルムを貼合して基材層とし、このポリ
エチレンフィルム面に厚さ２μｍのアクリル系樹脂から
なる剥離層と、総厚２〜３μｍのアクリル／塩化酢酸ビ
ニル系インキからなるグラビア多色印刷の絵柄層と、厚
さ１５μｍのエチレン−酢酸ビニル系ホットメルト接着
剤からなる接着層とを順次設けて転写シートを作製し
た。

【００２３】独特の美麗な導管模様を有する楢材の突板
を最表面に有する突板合板に、上記の転写シートの転写
層を前記突板合板の楢材の突板の面に当接して重ね合わ
せ、これをゴム硬度４０度、厚さ５ｍｍのシリコーンゴ
ムで挟持して平圧式熱プレス機に載置し、面圧１０ｋｇ
ｆ／ｃｍ² 、温度１１０℃の条件で熱プレスを行って、
転写シートの基材層を構成するポリエチレンフィルムを
熱軟化、変形させて、突板合板表面の導管孔等の微細な
凹部に圧入させつつ転写層を突板合板に接着させ、これ
を冷却、圧力解除後、上質紙とポリエチレンフィルムと
からなる転写フィルムの基材層を剥離除去し、しかる後
に表面にウレタン系トップコートを施して化粧板を得
た。

【００２４】こうして得た化粧板は、突板合板の表面の
楢材が有する導管孔等の微細な凹部の内面にも転写層の
絵柄が転写しており、その表面は前記導管孔等の凹部の
形状をよく保存した形状となっていた。しかも絵柄層と
して着色透明性のインキを使用したので、楢材突板の特
有の木目模様や、導管孔等の凹凸感と、絵柄層の色彩効
果とが相俟って、独特の高級な意匠感を有する優れた化
粧板を得ることができた。

【００２５】

【発明の効果】以上詳細に説明した様に、本発明の化粧
板は、木質層の表面の導管孔等の微細な凹部の内面に沿
って連続して転写層が形成されてなることによって、天
然木材が本来表面に有する導管孔等の凹凸を生かした高
度の意匠性を有し、しかも転写層の未転写部やブリッジ
状部、フクレ等による絵柄の欠陥のない高品質の化粧板
を得ることができるという顕著な効果を奏するものであ
る。

【００２６】また本発明の化粧板の製造方法は、変形可
能な基材層上に転写層を有する転写シートを使用して、
前記木質層の表面の導管孔等の微細な凹部に、前記転写
シートの基材層を変形、圧入させ、前記転写シートの表
面の転写層を前記木質層の導管孔等の微細な凹部の内面
に沿って連続して転写することにより、導管孔等の微細
な凹部に相当する箇所に、転写層の未転写部やブリッジ
状部、フクレ等による絵柄の欠陥を発生することがな
く、天然木材が本来表面に有する導管孔等の凹凸を生か
した高度の意匠性を有する高品質の化粧板を簡便に製造
することができるという顕著な効果を奏するものであ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の化粧板の実施の形態を示す側断面図で
ある。

【図２】本発明の化粧板の製造方法の実施の形態を工程
順に示す側断面図である。

【符号の説明】

１ ……木質層 １１……導管孔 ２ ……転写層 ２１……剥離層 ２２……絵柄層 ２３……接着層 ３ ……基材層 ４ ……転写シート

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】木質層の表面に転写層を有する化粧板にお
   いて、前記木質層の表面の導管孔等の微細な凹部の内面
   に沿って連続して転写層が形成されてなることを特徴と
   する化粧板。
2. 【請求項２】木質層の表面に転写層を有する化粧板の製
   造方法において、変形可能な基材層上に転写層を有する
   転写シートを使用して、前記木質層の表面の導管孔等の
   微細な凹部に、前記転写シートの基材層を変形、圧入さ
   せることにより、前記転写シートの表面の転写層を前記
   木質層の導管孔等の微細な凹部の内面に沿って連続して
   転写することを特徴とする化粧板の製造方法。