JP3865522B2 - バナナの保存方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、MA(Modified Atmosphere)によって鮮度保持するバナナの包装体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
バナナはフィリピン、インドネシア、台湾、中国、エクアドル等より船便にて輸入されており、日本に着いた時点では未熟果(緑色)であるが、加工業者によってエチレン処理を施すことによって追熟させ、小売店に出荷される。加工業者は、バナナの追熟の進み具合が、温度に大きく影響されるため、出荷に際して輸送中の気温、時間等を考慮して、夏はあまり追熟が進んでいない状態で、逆に気温の低い冬場はバナナの両端に緑が残っている程度(グリーンチップ)で出荷するようにしている。
しかし、この方法では天候等に着荷時の追熟度が大きく左右されるため、均一な商品を小売店に届けることができず、未熟あるいは過熟のクレームが後を絶たない。また従来、裸のバナナをテープで束ねたり、直径5mm程度の穴を数個開けた袋に入れて流通、販売されていて、鮮度保持に特に何らかの工夫はなされていない。加えて小売店では、バナナは温度管理のなされていない平棚で販売されるのが常であり、20〜28℃程度(スーパーなど空調が完備されている場合)で陳列されていることになる。これは12〜13℃以下になるとバナナに低温障害が発生することが考慮されているためであるが、バナナを20〜28℃で保管すると、2日程度でシュガースポット(褐色の斑点)が発生し、外観が著しく損なわれるため、商品としての価値が失われた。
青果物は周囲のガス雰囲気が大気よりも低酸素濃度、高二酸化炭素濃度になると、通常(大気中にある場合)よりも呼吸量が抑制されるため、長持ちするようになる。MAの場合、青果物は包装袋内に納められており、青果物の呼吸量と包装体のガス透過量(包装袋内から大気、あるいは大気から包装体内へのガスの移動量)のバランスによって包装袋内の雰囲気、つまり青果物の周囲のガス雰囲気を調整することになる。
ただし、青果物をあまり極端な低酸素濃度、高二酸化炭素濃度条件下に置くと、呼吸障害を起こすために、適度なガス雰囲気に保つ必要があるが、包装袋内のガス雰囲気を決める要因の一つである青果物の呼吸量は、温度に大きく左右されるために、MA実用化の大きな障壁となっている。
また、青果物の呼吸量の変動要因は、季節、地域、輸送中冷蔵車の有無、店内の温度など様々考えられ、これまでは、その都度、実際の条件に合わせた温度条件で試験を繰り返している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、安定した品質のバナナを供給でき、かつシュガースポットの発生などを防止することによってその後のシェルフライフを延長でき、容易に条件設定が可能なMA効果を有する包装体を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、追熟処理後のバナナの包装体において、包装体の酸素透過量をP(cc/g/day/atm)、保存温度をT(℃)とした場合、25<T≦35かつ
4.1284×P0.8139 ≧T≧0.0028×P3−0.193×P2+4.8752×P−15.017(式1)を満たす温度T(℃)で保存し、包装体内の酸素濃度が2〜15%、二酸化炭素濃度が5〜25%であるバナナの保存方法である。
好ましくは、前記包装体が孔径150μm以下の微細孔を有するフィルムから成る前記バナナの保存方法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
輸入バナナは緑色の状態で輸送され、日本国内で追熟処理(エチレン処理)が施されることによって黄色く変色する。このときバナナの追熟具合は温度に大きく影響されるため、進んだ加工業者ではコンピューターで処理条件を制御し出荷日に合わせて追熟の具合を制御している。ただし、出荷後(輸送中)はお天気任せになるため、制御は非常に難しいのが現状である。
バナナの色合いは商品として非常に重要で、緑のままでは売れず、逆に過熟の状態になると皮にシュガースポットが発生し始めて汚らしくなり、果肉の歯ごたえも失われ食味が低下するためにやはり売れなくなる。そこで小売店ではこういったバナナが納品された場合は、クレームとして処理している。
よって、加工業者は出荷後の気温をある程度考慮して、出荷時のバナナの色つき具合を調整しているが、先述したように、出荷後(輸送中)の条件は難しく、クレームの多発を招いている。
【0006】
そこで、本発明者らは、出荷時に販売適期まで追熟させたバナナをそのままの状態で長く保つことができれば、こういったクレームを防止できると考え、MAの適用を試みた。
その結果、下記の条件を満たす包装体でバナナを包装すれば、上記のような出荷が可能であることが突き止められた。
バナナ用包装体の酸素透過量をP(cc/g/day/atm)、温度をT(14≦T≦35)(℃)とした場合に
4.1284×P0.8139 ≧T≧0.0028×P3−0.193×P2+4.8752×P−15.017
このときその後さらにバナナのカラーの変化(緑色→黄色)シュガースポットの発生などが抑えられたために、商品性保持期間も従来より2〜3日程度延長することができた。
ちなみに、バナナの保管には14℃程度が最も適していると言われており、実際にエチレン処理後のバナナでも、この温度であれば1週間程度は保管が可能であるが、12〜13℃以下に保管されると低温障害を起こすため、販売中は常温で陳列され、追熟、劣化が進行しやすい。このとき商品性の保持期間は数日といったところである。
【0007】
青果物は、一般的に過度な低酸素、高二酸化炭素条件になると嫌気呼吸を行い、アルコールなどを発生させることが知られている。バナナもこの例に漏れず、同様の現象を起こす。
逆にガス雰囲気があまり大気に近すぎると呼吸量が抑制されず、鮮度も保持されなくなる。
よってMAで青果物の鮮度保持を行う場合には、上記両者の中間帯のガス雰囲気となるようにしなければならない。バナナの場合、酸素濃度が2〜15%、二酸化炭素濃度が5〜25%であることが好ましく、さらに好ましくは酸素3〜10%、二酸化炭素10〜20%である。上記式に当てはまる包装体を使用すればこの条件が得られる。
【0008】
温度が14℃未満では低温障害によって果皮の褐変などが発生し、35℃を越える場合は、果肉の軟化が著しく、外観が良好でも食味が劣化するために、MAを使用するメリットが少なくなる。
また0.0028×P3−0.193×P2+4.8752×P−15.017>Tになる条件では、バナナに呼吸障害、果肉の軟化、黒変が起こるために品質低下が著しくなり、T>4.1284×P0.8139と成る場合は、包装体内の酸素濃度が大気に近い状態になるため、呼吸抑制が十分でなく、シュガースポットの抑制、食味の維持が難しくなる。
【0009】
本発明に用いる包装体の材質としては、青果物の包装に用いることのできるものであればどのようなものであってもなんら差し支えないが、一般には無延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等が用いられるが、これ以外のポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネイト等のフィルム、さらにはこれらの複合フィルムであってもよく、さらには、これらのフィルム表面にシーラント層を設けたものでも、防曇処理したフィルムであってもなんら差し支えない。また、これらのフィルムの厚さは20〜60μmのものが好ましい。さらに、これらのフィルムは透明であっても良く、また表面に印刷を付したものであってもなんら差し支えない。
上記フィルムに平均孔径10〜100μmの微孔を開けることにより、包装体をキュウリの保存に必要なガス透過量に調整することができる。
上記微孔に関しては、その平均孔径が5μm以下であると加工が困難であり、150μm以上では1パックあたりの孔数が少なくなるために、袋内のガス組成の調節が難しくなり、バランス的に平均孔径10〜100μmが好ましい。
【0010】
包装体の形状、包装重量によっては、使用した材質自体の酸素透過量で十分な場合があるが(例えば袋を大きくする)、実用性を考えた場合、青果物の包装に一般的に使われているプラスチックフィルムを使用するなら、本発明の酸素透過量、あるいは包装体内のガス組成条件を満たすには、包装体に微孔などを設け酸素透過性を向上させる必要がある。この場合、包装体の酸素透過量は、材質自体の酸素透過量と上記微孔の大きさ、数によって決まる酸素透過量の和になる。
【0011】
本発明に用いる包装体はMA効果を得るために、密封する必要があるが、袋を使用する際は、その方法はヒートシール、結束帯、輪ゴム、かしめ等どんな方法でもなんら差し支えない。包装形態としては袋だけに限られず、例えばトレイ容器にトップシールを施すような物でも何ら差し支えない。また使用目的は小売り用の包装に限らず、段ボール箱にガス透過性を付与した大袋を一体化させた流通用MAダンボール箱としての利用もできる。
【0012】
以下、実施例で本発明を説明する。
【実施例】
参考例1》
サイズ、縦320mm、横200mmで、酸素透過量が5.2cc/24h・atm・grとなるように微孔(平均孔径80μm、15個)を開けた、30μmの防曇延伸ポリプロピレン(防曇OPP)からなる袋に、エクアドル産バナナ(3本)約550grを詰めて密封し、15℃で5日間保存した。そのときのバナナの品質評価の結果を表1に示す。n数=4であり、以下同様の個数で評価した。
(Pが5.2の場合、式1によると14≦T≦15.8である。)
参考例2》
サイズ、縦320mm、横200mmで、酸素透過量が8.9cc/24h・atm・grとなるように微孔(平均孔径80μm、26個)を開けた、30μmの防曇延伸ポリプロピレン(防曇OPP)からなる袋に、エクアドル産バナナ(3本)約550grを詰めて密封し、16℃で5日間保存した。そのときのバナナの品質評価の結果を表1に示す。
(Pが8.9の場合、式1によると15.1≦T≦24.5である。)
参考例3》
サイズ、縦320mm、横200mmで、酸素透過量が9.6cc/24h・atm・grとなるように微孔(平均孔径80μm、28個)を開けた、厚さ30μmの防曇延伸ポリプロピレン(防曇OPP)からなる袋に、エクアドル産バナナ(3本)約550grを詰めて密封し、25℃で4日間保存した。そのときのバナナの品質評価の結果を表1に示す。
(Pが9.6の場合、式1によると16.5≦T≦26である。)
参考例4》
サイズ、縦320mm、横200mmで、酸素透過量が15.0cc/24h・atm・grとなるように微孔(平均孔径80μm、44個)を開けた、厚さ30μmの防曇延伸ポリプロピレン(防曇OPP)からなる袋に、エクアドル産バナナ(3本)約550grを詰めて密封し、25℃で4日間保存した。そのときのバナナの品質価の結果を表1に示す。
(Pが15.0の場合、式1によると24.1≦T≦35である。)
《実施例
サイズ、縦320mm、200mmで、酸素透過量が14.2cc/24h・atm・grとなるように微細孔(平均孔径80μm、42個)を開けた、厚さ30μmの防曇延伸ポリプロピレン(防曇OPP)からなる袋に、エクアドル産バナナ(3本)約550grを詰めて密封し、35℃で3日間保存した。そのときのバナナの品質評価の結果を表1に示す。
(Pが14.2の場合、式1によると23.3≦T≦35である。)
《実施例
サイズ、縦320mm、横200mmで、酸素透過量が27.0cc/24h・atm・grとなるように微細孔(平均孔径80μm、80個)を開けた、厚さ30μmの防曇延伸ポリプロピレン(防曇OPP)からなる袋に、エクアドル産バナナ(3本)約550grを詰めて密封し、35℃で3日間保存した。そのときのバナナの品質評価の結果を表1に示す。
(Pが27.0の場合、式1によると31≦T≦35である。)
【0013】
《比較例1》
使用した袋の酸素透過量が4.0cc/24h・atm・grとなるように微孔(平均孔径80μm、11個)を開けた以外は、実施例1と同様にバナナを5日間保存した。そのときのバナナの品質評価の結果を表2に示す。
(Pが4.0の場合、式1によると1.6≦T≦12.8である。)
《比較例2》
使用した袋の酸素透過量が10.0cc/24h・atm・grとなるように微孔(平均孔径80μm、29個)を開けた以外は、実施例1と同様にバナナを5日間保存した。そのときのバナナの品質評価の結果を表2に示す。
(Pが10.0の場合、式1によると17.2≦T≦26.9である。)
《比較例3》
使用した袋の酸素透過量が9.0cc/24h・atm・grとなるように微孔(平均孔径80μm、26個)を開けた以外は、実施例3と同様にバナナを4日間保存した。そのときのバナナの品質評価の結果を表2に示す。
(Pが9.0の場合、式1によると15.3≦T≦24.7である。)
《比較例4》
使用した袋の酸素透過量が16.3cc/24h・atm・grとなるように微孔(平均孔径80μm、48個)を開けた以外は、実施例3と同様にバナナを4日間保存した。そのときのバナナの品質評価の結果を表2に示す。
(Pが16.3の場合、式1によると25.3≦T≦35である。)
《比較例5》
使用した袋の酸素透過量が13.3cc/24h・atm・grとなるように微孔(平均孔径80μm、39個)を開けた以外は、実施例5と同様にバナナを3日間保存した。そのときのバナナの品質評価結果を表2に示す。
(Pが13.3の場合、式1によると22.3≦T≦33.9である。)
《比較例6》
使用した袋の酸素透過量が32.0cc/24h・atm・grとなるように微孔(平均孔径80μm、94個)を開けた以外は、実施例5と同様にバナナを3日間保存した。そのときのバナナの品質評価の結果を表2に示す。
(Pが32.0の場合、式1によると35.1≦T≦69.3である。)
《比較例7》
袋にφ5mm×4個の穴を開けた以外は実施例1と同様にバナナを5日間保存した。そのときのバナナの品質評価の結果を表2に示す。
《比較例8》
袋にφ5mm×4個の穴を開けた以外は実施例3と同様にバナナを4日間保存した。そのときのバナナの品質評価の結果を表2に示す。
《比較例9》
袋にφ5mm×4個の穴を開けた以外は実施例5と同様にバナナを3日間保存した。そのときのバナナの品質評価の結果を表2に示す。
【0014】
【表1】
Figure 0003865522
【0015】
【表2】
Figure 0003865522
【0016】
【発明の効果】
本発明の保存法方によれば、容易に条件設定が可能なMA効果を有する包装体により、安定した品質のバナナを供給でき、かつシュガースポットの発生などを防止することによってその後のシェルフライフを延長できる。

Claims (2)

  1. 追熟処理後のバナナの包装体において、包装体の酸素透過量をP(cc/g/day/atm)、保存温度をT(℃)とした場合、
    25<T≦35かつ
    4.1284×P0.8139 ≧T≧0.0028×P3−0.193×P2+4.8752×P−15.017(式1)を満たす温度T(℃)で保存し、包装体内の酸素濃度が2〜15%、二酸化炭素濃度が5〜25%であることを特徴とするバナナの保存方法。
  2. 包装体が孔径150μm以下の微細孔を有するフィルムから成る請求項1記載のバナナの保存方法。
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