冷蔵庫の筐体にはアクチュエータの動作によって回転しまたは復帰できる回転板に螺旋溝を設け、前記螺旋溝の一端は開口部となっており、扉には引き込みピンを備え、前記引き込みピンは扉の閉状態では回転板の螺旋溝の回転支点の近傍まで進入して筐体に所定の押圧力で押圧されており、ユーザが扉開スイッチを押すなどして扉を開く指示をした場合には、アクチュエータを動作して回転板を扉を開放する方向に回転させ、前記引き込みピンは螺旋溝に沿って回転板の中心から離反する方向に移動して扉を自動的に開く。ユーザが扉を閉じる場合には、扉が閉じられることをセンサによって検知して、アクチュエータを開動作とは逆向きに動作して、回転板を扉を閉じる方向に回転させ、前記引き込みピンを開口部から螺旋溝内部に進入させて回転板の回転に伴って回転支点に近づく方向に移動して扉を自動的に閉じることができる。
本発明の別の実施の形態は、回転板の回転支点に減衰手段を備え、扉を閉じる際には扉が筐体に接するより手前で一旦扉を減速して、扉を閉じる際の衝撃を低減できる構成である。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る、冷蔵室のドアが左右両開きになる、いわゆる観音開き扉を備えた冷蔵庫の全体構成を示す図である。
図1に示す冷蔵庫において、1は冷蔵庫の本体筐体であり、冷蔵室2の扉2aは左右両開きのいわゆる観音開き方式の扉であり、カバーで覆われた回転支点3を中心として開閉する構成である。冷蔵室2の下側は、手前に引き出し式の野菜室4となっており、野菜の貯蔵に適した温度設定がなされている。野菜室の下部左側には製氷室5があり、図示しない製氷手段によって製氷が行われて製氷室内に蓄積される。製氷室内の氷が取り出されると図示しない氷量検出手段によって氷の量が減ったことが検知され、自動的に製氷が行われて製氷室内の氷が補充される構成である。製氷室の右側は、例えば機能選択室6となっており、ユーザの選択によってフリーザ、冷蔵室、または氷温に近いチルド室のいずれかの温度設定を選択できる構成である。
さらに最下段には冷凍室7が配置されており、冷凍食品などを収容することができる。これらの各扉は回転支点のまわりに回転して開放するか、または手前に略並行に引き出して開放することができる構成であり、ユーザが食品を取り出したり補充することができる。
冷蔵室2、野菜室4、製氷室5、機能選択室6、フリーザ7の各室の扉が筐体と接する周囲全体にわたり、各室内の冷気が外部に漏れることを防止するためのシール部材が張られている。このシール部材は扉側に固定されており、内部に面状のマグネットが内封されたマグネットシールを用いるのが一般的である。扉が閉鎖された際は、マグネットが筐体1を構成する鉄板に吸着されることで筐体1に対して全面が均一に接して、シール性を得ている。
冷蔵庫筐体1の上面には扉開閉手段10R、10Lが扉ごとに備えられており、ユーザからスイッチなどの指示手段によって入力された扉2aの開放指示に従って扉2aを自動的に開放することができ、または扉2aが所定の角度まで閉じられたことを検出して扉2aを自動的に閉鎖することができる。
本例では、扉開閉手段10は回転支点3の反対側、すなわち、回転支点3と平行に扉2aの中央線を引いた場合に、この中央線よりも回転支点3を挟んで反対側に設けられるように構成してある。このような位置に扉開閉手段10を備えることによって開閉動作に要するトルクを低減することができる。
つぎに、このような扉開閉手段10の一実施例について以下、図2から図5を用いて説明する。図2と図3は、筐体の上部に設けられた扉開閉手段10を覆っているカバーを取り外した状態の扉開閉装置の構成を示す斜視図、図4と図5は平面図である。
図2から図5において、扉2aは筐体1の端部に備えられた回転支点3のまわりに回動自在に支持されており、開閉できる構成となっている。
前記扉開閉手段10は、開位置と閉位置との間を往復回動する、回転支点11のまわりに回転自在に軸支され、外側の一端は外部に開放された開口部になっている螺旋状の溝24を備えた回転板12が備えられている。回転板12にはスプリングピン13が設けられており、筐体1に設けられた固定ピン14との間に引っ張りスプリング15が掛けられている。
前記回転板12には一端を前記回転板12に連結ピン16によって回転自在に軸支された連結部材17を備え、前記連結部材17の他端は例えばソレノイドアクチュエータ18のプランジャ19の一端に支点25において回転自在に軸支されている。プランジャ19は筐体1に固定されたアクチュエータ18本体に対して、矢印20または反対方向の矢印21方向に摺動自在に支持されており、アクチュエータ18に通電されてプランジャ19が矢印20方向または矢印21方向に移動することによって、連結部材17を移動し、連結部材17と連結ピン16を介して回転板12は回転支点11のまわりに時計まわりCW、あるいは反時計回りCCWに回転する構成である。
扉2aに固定されたブラケット22には引き込みピン23が設けられており、ある一定の扉の開き角度θにて前記引き込みピン23は前記回転板12に設けられた螺旋溝24に対して、前記螺旋溝24の一端に設けられた開口部30に進入できるような位置関係に設置されており、引き込みピン23は扉2aおよび回転板12の開閉に伴って螺旋溝24の一端に設けられた開口部30を通って螺旋溝24の内部に侵入したり、反対に開口部30を通って螺旋溝24から外れる構成である。
図2と図4は扉2aが閉じた閉位置にある状態を示しており、プランジャ19は矢印21方向に移動しており、回転板12は矢印CWにて示した時計まわりに回転した閉状態となっている。ピン23は回転板12に設けられた螺旋状の溝24に勘合されており、スプリング15の一端は回転板12に設けられたスプリング掛け13に掛けられ、スプリングの他端は筐体に設けられた固定スプリング掛け14に掛けられており、所定の張力F1で張架されている。
扉2aに設けられた引き込みピン23は回転板12に設けられた螺旋溝24に勘合されており、回転板12と接して扉2aを閉じる方向に付勢されている。
ここで、アクチュエータ18に通電してプランジャ19を矢印21方向に移動させることにより、連結部材は矢印26方向に移動して引き込みピン23はスプリング15の張力によって生じる閉じ力F2に打ち勝って回転板に矢印CWで示した時計まわりの回転を与えて引き込みピン23を矢印27方向に押し出して扉2aを回転支点11まわりに開く構成である。
図3と図5は扉2aと回転板12が開いた状態を示している。プランジャ19は矢印20方向に移動しており、回転板12は矢印CWで示した時計まわりに回転してストッパ28に当接して開状態で保持されている。引き込みピン23が回転板12に接した状態では、扉は角度θだけ開いている。引き込みピン23は回転板12の開口部30を通って回転板12の螺旋溝24から離反しているので、扉2aはユーザの手によって矢印CCWdにて示す大きく開く方向に回転支点3を中心に自由に回転移動できる。
ここで、アクチュエータ18に通電してプランジャ19を矢印20方向に移動させることにより、連結部材17は矢印29方向に移動して回転板12に反時計まわりCCWの回転を与えて<引き込みピン23を矢印280方向に引き込んで扉2aを回転支点3のまわりに矢印CWd方向に回転させて閉じる構成である。
ここで、スプリング15は一端を回転板12に設けられたスプリングピン13に支持され、他端を筐体1に設けられた固定支点14に支持されており、回転板12の開位置と閉位置の間でスプリング15の両端を結ぶ直線が回転板12の回転支点11の一方から他方側に移動する位置関係としているので、回転板12を開位置または閉位置に保持することができる構成である。
図6から図12は扉の開閉動作の際の回転板12と引き込みピン23の位置関係などを詳細に図示したもので、以下に説明する。
図6は回転板12と扉2aが閉状態にある場合を示した詳細図である。回転板12には螺旋溝24が設けられ、外周部24Sと内周部24Nとを備えている。外周部24Sと内周部24Nは一端を開口部30において外部に開口されており、内周部24Nに連続的に開口部30より外側に受け渡し部31が設けられている。扉2aに設けられたブラケット22に設けられた引き込みピン23は、回転板12に設けられた螺旋溝24の最も回転支点11近傍において螺旋溝24の外周部24Sと接しており、引き込みピン23は回転板12から力P1を受ける。このとき、回転板12はスプリング15の張力F1によってF1×L0なる反時計方向CCWのモーメントを受けるので、引き込みピン23は回転板12の螺旋溝24の外周部24Sとの接点からF1×L0/L1に等しい力P1を受け、扉2aを筐体1に押し付けるので、引き込みピン23は回転支点11に距離L2まで近接して扉2aに設けられたマグネットシールが筐体1に当接し、扉2aを閉じた状態に保持することができる。
図7は図5と同様に扉2aが角度θだけ開き、回転板12が開位置にある際の回転板12と螺旋溝24と引き込みピン23との位置関係を示している。回転板12は図5で示したアクチュエータ18のプランジャ19によって矢印26方向に引っ張られて図示時計方向CWに回転し、回転板12の一部が筐体1に設けられたストッパ28に当接した位置まで回転して開位置となる。ここで、扉2aに設けられた引き込みピン23は回転板12の回転支点11から距離L3まで離れる、ここで、扉2aをさらに開くと引き込みピン23が通過する軌跡P0に対して、引き込みピン23が回転板12の外周先端B部と間隔(クリアランス)Cb以上を保って移動できるような位置関係に構成すれば、引き込みピン23は回転板12に設けられた螺旋溝24から離反して扉2aは自在に開くことができる。また、回転板12はスプリング15の張力F2によって回転支点11のまわりに図示時計方向CWにF2×L1のトルクを受けるので、扉2aがユーザによって角度θより大なる角度に開かれた場合には、引き込みピン23が軌跡Pathに沿って移動して回転板12から離反した場合でも、図7に示した開位置を保持することができる構成である。
次に、図6から図9によって扉を開く際の動作について詳細に説明する。
図6に示した扉2aの閉位置において、アクチュエータ18は矢印34方向にプランジャ19を移動させる。すると回転板12は図6から図8に示したように、回転支点11のまわりに時計方向CWに回転を開始する。回転とともに、回転板12に設けられた螺旋溝24の内周部分24Nが引き込みピン23と当接するが、引き込みピン23は扉2aに設けられたブラケット22に設けられているために、扉2aの回転支点3の周りに回転して扉2aの回転支点3を中心とした軌跡Pathに沿って矢印32方向に移動する。螺旋溝24は回転板12の時計方向CWへの回転とともに引き込みピン23との接点は回転板122回転中心11から離れるように設けられているので、引き込みピン23は軌跡Pathに沿って矢印32方向に移動することになり、その結果として扉2aは開き始める。
アクチュエータ18のプランジャ19の移動とともに回転板12が時計方向CWに回転すると、引き込みピン23は螺旋溝24の内周24Nに沿って回転支点11から離反する方向に加速され、扉2aの周囲に設けられたマグネットシールは筐体1から剥がされる。扉2aを閉状態から開く場合には、動作を開始する際にはこのマグネットシールを引き剥がす力とスプリング15による扉閉状態への保持力とがかかるので、最大の回転力が必要となり、アクチュエータの発生力はその際の必要力に応じて求められる。ここで、一例として回転板12の回転支点からピンまでの距離をL1、引き込みピン23を経由して扉2aを筐体1方向に押し付けている力をP1、回転支点11からアクチュエータによる引っ張り力の加えられる動作点16までの距離をL2、アクチュエータによる引っ張り力をP2、スプリング15による引っ張り力をF3、回転支点11からスプリング15の引っ張り方向への距離をL3とすれば、Pを力の絶対値として(P1×L1+F3×L3)<P2×L2なる関係が成り立つように各力の作用点およびアクチュエータに必要な引っ張り力P3などを設定すればよい。
アクチュエータ18のプランジャ19がさらに移動して回転板12が時計方向CWに回転し、スプリング15による張力がちょうど回転板12の回転支点11の位置(中性点)に至ると、スプリング15の張力は回転板12には回転モーメントを与えないので、回転板15はバランスする。しかし、回転板12に加わる力としてはアクチュエータによる引っ張り力とピンからの反力、および回転板12自体の回転速度と質量に応じた回転慣性モーメントがあるので、アクチュエータ18のプランジャ19により加えられる回転力が引き込みピン23からの反力より大であれば、回転板12は時計方向CWへの回転を継続する。回転板12がスプリング中性点の位置にある時点では、既に冷蔵庫の扉2aに備えられたマグネットシールは筐体1から離脱しているので、扉2aを開くために必要なモーメント、すなわち引き込みピン23からの反力は数十グラム程度と小さいので、扉2aは開く動作を継続し、スブリング15は中性点を乗り越えて、図9に示したように時計方向にさらに回転する。図9に示した時点では、スプリング15による張力F4は回転板12を回転支点11のまわりに時計方向CWに回転させる向きに働くので、仮にこの時点でアクチュエータ18への通電が切断され、アクチュエータ18による引っ張り動作力が無くなったとしても、回転板12はその一部がストッパ28に当接するまで回転する。
アクチュエータ18のプランジャ19がさらに移動して回転板12が時計方向CWに回転して図7の状態に至ると、回転板12はストッパ28に当接して回転を停止する。このとき、扉2aは角度θだけ閉状態から開いているものとする。
この後、引き込みピン23は冷蔵庫扉2aの回転支点3を中心とした軌跡Pathに沿って移動するが、この際、回転板12の外周部先端B部に対して隙間Cbをもつような寸法形状に回転板外周部の先端B部は形成されているので、回転板12が図7に示した開位置に至った際には、引き込みピン23は螺旋溝24の外周端に設けられた開口部30を通って、回転板12の螺旋溝内周部24Nから連続的に設けられた受け渡し部31に移動して、ピンは回転板の螺旋溝から離反して、冷蔵庫扉とともにユーザの手によって矢印32方向に自由に開くことができる。
ここで、上記に説明したように扉2aの開動作に際しては、回転板12の回転に伴って引き込みピン23は螺旋溝24の内周24Nに沿って移動しながら扉2aを開く方向に移動するので、その際の引き込みピン23表面と螺旋溝24との間の摩擦抵抗などはできるだけ小さい方が望ましいので、引き込みピン23は固定式であるよりもその軸中心まわりに回転自在な構成である方が望ましい。さらに、引き込みピン23は例えばポリアセタール樹脂などの低摩擦材料で形成されていれば、なお望ましい。
図10により、扉2aを開く際のアクチュエータ18の動作速度と扉の開く速度の関係について説明する。図10は回転板12が開位置にある(破線で示す)場合と閉位置にある場合(実線で示す)とを重ねて示す図である。
引き込みピン23は、先に説明したように螺旋溝24の内周24Nに沿って移動するので、図10に示すように回転板12が破線で示した開位置にある場合と実線で示した閉位置にある場合とを重ねると、アクチュエータ18により連結ピン16が移動するストロークSaと引き込みピン23のストロークSpとは同じである必要はない。例えばSa>Spとすれば、アクチュエータ18のプランジャ19の動作速度と比べて引き込みピン23の動作速度は減速され、結果として扉2aを開く際の速度は減速される。このような構成とすることにより、アクチュエータ18としてソレノイドを高速に動作しても、引き込みピン23の速度を減速できるので、扉2aがユーザの予想以上に手前に急激に開くことを防止して、適切な操作感覚を実現できる、という効果がある。また逆にSa<Spであるとすれば、アクチュエータ18のプランジャ19の動作速度と比べて引き込みピン23の動作速度は加速されるので、プランジャ19の動作速度が遅すぎる場合には有効である。
次に、図11、図12、図6、図7を用いて冷蔵庫の扉2aを開いた状態からアクチュエータ18の動作によって閉じる動作について説明する。扉2aは、ユーザによって開かれた状態から徐々に閉じられる。扉2aが閉じられるとともに扉2aに設けられた引き込みピン23は扉2aの回転支点3を中心とした軌跡Pathに沿って移動して、回転板12に設けられた、螺旋溝24の内周部24Nから連続的に設けられた受け渡し部31に接する位置に至り、図7に示した状態となる。ここで、詳細は後述するが、回転板12の受け渡し部31の近傍かつ引き込みピン23の軌跡Pathの略延長線上には、第二の検知手段51が設けられており、ピンが所定の距離に到達したことを検出できる構成となっている。
第二の検知手段51によってピンが所定の距離にまで近接したことを検出したら、アクチュエータ18に通電してプランジャ19を矢印35方向に移動する。このときプランジャ19から回転板12に与える力P3によって回転板12には反時計CCW方向にP3×Rcのモーメントが加わる。一方、スプリング15によって時計方向CWにL1×F2のモーメントが加わるので、回転板12を反時計CCW方向に回転させるには絶対値として P3×Rc>L1×F2なる関係を満たすような力をプランジャ19から回転板12に与える必要がある。ここで、回転板12に設けられた螺旋溝24の開口部30の幅寸法Wkを引き込みピン23の直径寸法φより大なるWk>φの寸法関係にしておけば、Wk−φ の範囲においては引き込みピン23の位置がばらついても回転板12が反時計CCW方向に回転した時に、引き込みピン23は確実に開口部30を通って螺旋溝24の内部に進入できる。たとえば、開口部30の幅寸法をピンの直径φより2ないし3mm程度大としておくことにより、扉2aの動作速度の速い遅い、あるいは第二の検知手段51が引き込みピン23を検知する検知距離が、検知手段の感度ばらつきやピンの汚れなどによって変動したとしても、引き込みピン23が確実に開口部30に進入するために確実かつ安定した動作が実現できる。
図11は、回転板12がプランジャ19の動きによって回転支点11のまわりに反時計CCW方向に回転し始め、螺旋溝外周部24Sが引き込みピン23に接した時点を示している。螺旋溝外周部24sはC1点で引き込みピン23に接し、回転板12がさらに反時計CCW方向に回転すると、引き込みピン23の動作は軌跡Pathに沿った方向のみに限られるので、冷蔵庫扉2aは螺旋溝外周部24Sに引き込まれて図12に示す位置となり、扉2aを閉じる動作を行う。回転板12がさらに回転して、マグネットシールが筐体1に密着して扉2aが閉じられると、回転板12は図6に示した位置に戻り、アクチュエータ18への通電は切断されるので、この状態で停止する。
ここで、図10に戻って、アクチュエータ18に必要なストロークについて説明する。回転板12が開位置にある際の支点の位置16‘と閉位置にある際の支点の位置16との移動量Saが、アクチュエータ18に必要な動作量すなわちストロークとなる。回転板12を開位置から閉位置に移動する動作と、閉位置から開位置に移動する両方の動作を順次行って扉2aの開閉両動作を行うためには、開閉両方に動作ストロークSaを備えた双方向のアクチュエータが望ましい。
図13によって双方向に動作できるアクチュエータ18の構成の一例について説明する。図13において、ハウジング40の内部には導線を巻き回したソレノイドコイル41、42が2組設けられており、それぞれは外部に設けられた図示しない制御回路に配線43、44によって接続される。プランジャ19は例えば鉄などの強磁性体材料で構成されており、ハウジング40内部に設けられた穴45に沿って自在に直線移動できる構成である。プランジャ19動作時の摩擦抵抗は小さい方が動作がスムースになって望ましいので、プランジャ19表面に例えばフッ素系材料などの低摩擦材料の膜を構成すればなお好適である。
ここで、第一のコイル41に制御回路から通電されると磁化するので、プランジャ19は第一のコイル41に吸引されて破線で示した19‘の位置となる。一方、第二のコイル42に制御回路から通電されるとプランジャ19は第二のコイル42に吸引されるので実線で示した19の位置となる。ここで、位置19と位置19’との間隔がプランジャのストロークSaとなる。
ここで、開閉に要するアクチュエータからの力の大小について説明する
扉を閉状態から開く場合には、アクチュエータ19の動作力としては、図6に示したようにスプリング15による閉状態への保持力F1×L0に加えて筐体1に吸着しているマグネットシールを引き剥がす力Fmが必要なので、開動作に必要なモーメントは閉時と比較して大となる。一方、扉を閉じる場合には図7に示すようにスプリング15により開位置に保持力F0=F2×L1で保持された回転板12を回転させるだけの力を生じれば良いので、必要なモーメントは扉2aを開く場合よりも小となる。
したがって、双方向ソレノイドの動作力は開動作と閉動作の際に生じる発生力が同一である必要は無く、開動作方向への発生力が閉方向への発生力より大なる構成であってもよい。また、図6と図7に示すように、回転板12に対してアクチュエータ18から力を与える支点16の位置は、開時の腕の長さL2が閉時の腕の長さLcより大なる位置として、アクチュエータ18から加えられる動作力を回転板12の回転モーメントに変換した際に開時に発生する力を閉時に発生する力より大きくすることができるので好適である。
また、ここでは双方向に動作するアクチュエータを用いて開閉の両方向動作が可能な構成について説明したが、双方向に動作するアクチュエータの代わりに一方向のみに動作するアクチュエータを用いれば、開動作のみは自動的に行うが扉を閉じるのは手で行う構成、または扉を開くのは手で行うが閉動作のみは自動的に行う構成も実現できる。
図5に戻って、扉を自動的に閉じるに好適な扉の開き角度範囲について説明する。引き込みピン23が回転板の螺旋溝内周部24Nに接した時点での扉2aの開き角度をθとすれば、扉2aは角度θ以下まで手で閉じられると図7、図11、図12、図6の順によって自動的に閉動作を行う。ここで、冷蔵庫が観音開きの扉であるとすれば、扉2aの厚さをTとして、片方の扉が閉じており、もう片方の扉が開状態にあってこれを閉じようとした場合に、図5に示すようにθだけ開いた扉の先端の開き寸法T0がTより大とすれば、左右の扉の間に隙間ができるために、扉同士の間に指を挟む恐れがある。一方、扉の開き寸法T0がTより小であるようにすれば、扉同士の間に指を挟まれることはないので、自動的に扉が閉まったとしても安全である。そのため、このT0<Tなる大小関係が成立するように回転板12や引き込みピン23の位置関係を設定することが望ましい。
さらに、本発明による開閉手段10を覆うカバー10cの筐体1からの飛び出し寸法 は扉の厚さTより小なることが望ましい。そのようにすれば、扉2aが閉じた際にカバー10cが扉2aの前面に飛び出すことがないので好適である。
次に、扉の開閉動作にかかわる検知手段の構成と動作について説明する。
図4から図5に示すように、筐体1には扉2aが閉位置にあることを確認するための例えば発光素子と受光素子とを備えた光反射型のセンサを用いた第一の検知手段50が設けられており、扉2aが閉じた状態で扉2aの一部から所定の距離Ds1だけ離して設けられており、扉2aの一部が所定の距離Ds1以下であることを検出すれば反射光を検出して扉2aが閉じられていることを検知できる。扉2aが閉状態になく例えば半ドア状態や開状態にある場合には、所定の反射光が得られないので、半ドアないしは開状態であることが判定できる。
先に説明したように、回転板12には第二の検知手段51が備えられており、扉2aの閉動作を行う際に扉2aに設けられた引き込みピン23が回転板12の受け渡し31に当接ないし近接して、所定の距離Ds2にあることを検出する発光素子と受光素子とを備えた光反射型素子である。図2ないし図7に示すように回転板12が開位置にあって、さらに扉2aが角度θ以上に開かれた状態にあって、その状態から扉2aが次第に閉じられてくると、引き51に近づく。そして、引き込みピン23が回転板12の螺旋溝内周部24Nに続いて滑らかに連結された受け渡し部31に略当接すると、引き込みピン23が第二の検知手段51から所定の距離Ds2に至るために第二の検知手段51の発光部から発光された光が引き込みピン23の表面に反射して受光部に入射するので、引き込みピン23が螺旋溝内周部24Nに連続的に設けられた受け渡し部31に対して所定の距離に到達したことを検出することができ、扉2aの閉動作を開始するタイミング、すなわちアクチュエータ18に通電開始するタイミングを検出することができる。
なお、本実施例にては第一の検知手段50および第二の検知手段51は光反射型の検知手段としたが、それに限定されるものではなく、一方に永久磁石を備え、他方に永久磁石による磁力を所定の距離で検出するスイッチを備えており、磁力の強弱によって永久磁石との距離を検出するリードスイッチのごとき検出手段であっても良いし、マイクロスイッチのような機械接点式の検出手段によって引き込みピン23が近接ないし接触したことを機械的に検出してもよいし、あるいはさらに他の検出手段を用いてもよい。
また、第二の検出手段51は引き込みピン23の表面を検出するものとして説明したが、このような実施例に限定されるものではなく、引き込みピン23とは別の被検出体を設けて、これを検出する構成であってもよい。このように引き込みピン23とは別の被検出体を設けた場合には、部品の数は増加するが、例えば引き込みピン23の表面が回転板12と擦れることによって生じる傷や汚れなどによる影響を除くことができるという点で好適である。
また、第二の検出手段51は回転板12に設けるものとして説明したが、このような実施例に限定されるものではなく、第二の検出手段51は筐体1に固定的に設けられ、引き込みピン23と筐体1との距離あるいは扉2aの開き角度を測定して、引き込みピン23が筐体1に対して所定の距離にあることを検出する構成であっても良い。
次に、扉2aの開閉の動作を図14の流れ図および図15と図16のタイミングチャートに基づいて説明する。
まず、扉2aの開動作について説明する。図14において、まず第一の検知手段50によって扉2aの位置を検出し、扉2aが閉状態(On)にあるか否(Off)かを判定する(ステップ100)。ここで、扉2aが閉状態に無いということは、扉が半ドアあるいは完全に開いた状態であることを示しているので、アクチュエータ18に通電して扉2aを開く動作を行う必要は無い。第一の検知手段50がOnであって扉2aが閉じられていることが検出され、さらにユーザが扉2aを開きたいという意図をもって例えば図示しない押しボタン式のスイッチや、これも図示しない人体検知センサに触手することによってドア開指示信号が入力されると(ステップ101、タイミングt1)、アクチュエータに開方向に通電を開始する(ステップ102)。通電開始とともにタイマーなどの計時手段を動作させ、所定の時間ts1、例えば1秒程度の経過を計測する(ステップ103)。すると図8、図9、図7の順に示したようにアクチュエータ18の動作によって回転板12が時計方向CWに回転し、引き込みピン23を押すので扉2aは開き始める。すると、第一の検知手段50は扉2aが閉状態から開状態への変化を検出する(タイミングt2)。回転板12が図7の状態まで回転して、引き込みピン23が回転板12の受け渡し部31に到達すると、第二の検知手段51が引き込みピン23を検出するので、第二の検知手段51がOnとなる(タイミングt3)。先に説明したように、第二の検知手段51は扉2aの閉動作の際に回転板12による扉2aの閉動作を開始するタイミングを検出する検知手段なので、扉2aの開動作の際に生じる第二の検知手段51によるOn信号は無視することが望ましい。すなわち、このときは扉2aの開動作を行っているので、第二の検知手51がOnになったとしても扉2aの開動作を継続する必要があるためである。そこで、ドア開指示信号がOnになるタイミング(タイミングt1)から所定時間ts2が経過するまでは第二の検知手段51がOnになったことを検出しない不感帯を設けることが望ましい(ステップ104)。この不感帯の時間範囲内(タイミングt5)においては、第二の検知手段51によるOn信号を検出しないので、ユーザによって扉2aが閉じられても閉動作アクチュエータ18は動作しない。ところで、扉2aの開閉を過度に頻繁に繰り返すと、アクチュエータ18への通電が頻繁になりすぎるために、温度上昇や機構部の寿命が短くなるなどの問題が生じる。冷蔵庫の扉2aは、食品や飲料の出し入れのためには数秒間は2aを開放することになるので、不感帯ts2として例えば2秒ないし3秒程度の時間を設定したとしても、ユーザにとって扉2aの開閉動作の間隔が長すぎるということはない。
次に、扉2aの閉動作について説明する。図5において、第一の検知手段50はOffであって、ドアが開状態にあることを検出する(ステップ100にて“No”)。つぎに、扉2aがユーザによって閉じられて、引き込みピン23が軌跡Pathに沿って回転板23の受け渡し部31に接触するか、ないしは近傍まで近接する。ここで引き込みピン が第二の検知手段51が検知するまで近接すると、第二の検知手段がOnとなり(ステップ106にて“Yes”)、制御回路からアクチュエータ18を扉2aを閉じる方への通電を開始する(ステップ107、タイミングt11)。所定の時間ts3だけ通電してからアクチュエータへの通電は終了する(ステップ108にて“Yes”)。回転板12は図5の状態から図4の状態に至るまで回転し、引き込みピン23を回転板12の螺旋50は扉開状態から閉状態への変化を検出する(タイミングt12)。ここで、扉2aの開動作の際と同様に、アクチュエータ18への通電を行わない不感帯を設けておき、所定の時間ts4だけ経過するまでは扉開指示手段のOn/Offを検知しないようにすることで(ステップ109およびステップ110)タイミング扉2aを閉じた直後に扉開動作を行うことがないので、アクチュエータ18の温度上昇防止の観点から望ましい。
次に、扉2aを閉じる際にユーザの手指にかかる力について説明する。
まず、図17から図19を用いて、従来のクローザ機構の構成と動作、課題について説明する。図17から図19は、2aが徐々に閉じられる動作を行う際のクローザの動きとクローザにより生じる力について示したものである。このクローザは一般的には扉2aの回転支点3の下端部に備えられているので、図17から図19は扉2aを仮想的に下面から見た図である。筐体1には固定されたクローザ受け金具46が取り付けられており、その一部には滑らかな曲面形状で形成されたカム部46cが設けられている。扉2aには樹脂などの弾性を備えた材料で形成された変形部47aを備えたクローザ弾性体47が備えられており、図17に示すように、扉2aが反時計方向CCWに回動して角度φ1まで閉じられると、クローザ弾性体47の先端47a部がクローザ金具46のカム部46cに接触し、クローザ弾性体47の先端47a部は矢印Fa方向の反力を受けてたわむ。この力は扉の回転支点3に対しては時計回りCW方向、すなわち扉2aを開く方向に働くので、ユーザからみると、閉じている扉2aは途中から重くなる。さらに扉2aが閉じられて図18に示すように開角度がφ2となり、クローザ弾性体47とクローザ金具46との接点が扉2aの回転支点3と同一線上になると中性点となるために、クローザ弾性体47とクローザ金具46との間の力Fbは回転支点の方を向くのでモーメントとしては0となり、扉2aはバランスして開閉いずれの力も受けなくなる。そのために、この位置で半ドアになる恐れがある。中性点にいたるまでにクローザ弾性体47はたわみ、弾性エネルギを蓄積しているので、中性点を過ぎてさらに扉2aが閉じられるとクローザ受け金具46のカム部46cからクローザ弾性体47には矢印Fc方向の力が加わり、この力は扉の回転支点3に対して扉を閉じる方向(本図では反時計回りCCW)のモーメントとなるので、この力によって扉2aは閉じられる。
この時のユーザが感じる扉を閉じる力をグラフ化したものを図20に示す。図20の横軸は扉2aの開角度を示し、右側が開角度大、左側原点が扉が閉じられた状態を示す。すなわち、扉を閉じる動作の際には図右側から左側の原点に向かう方向の動作となる。縦軸はユーザが扉から受ける力を示しており、プラス方向が反発力、マイナス方向が引き込み力を示している。図17から図19に対応して図20のグラフを説明すると、扉開角度が図17に対応したφ1以下になるとクローザから反発力を受け、ある角度φ3で反発力は最大値となる。その後、反発力は減少して中性点φ2で0となった後は引き込み力が発生する。このように、ユーザは扉を閉じようとしているのに、その動作の途中では一旦反発力を感じる、という不自然さがある。特に、扉に食品などがあまり入っていない状態で扉が軽量であって、さらにユーザがゆっくりとした初速のみを与えて手を離して扉を閉じようとした場合には、反発力の方が扉を閉じる力より大となることがあり、そのような場合には扉が閉じられずに跳ね返るので、扉がユーザの意図とは異なった動きをする、という問題がある。また、閉動作の途中に中性点があるので、この中性点においては半ドアが生じうる、という課題がある。
一方、本発明のごとく、アクチュエータを用いて扉を自動的に引き込む構成とすれば、扉2aが所定の角度θまで閉じられてから以降は回転板12が回転して引き込みピン23が引き込まれるので、扉2aに反発力が生じることは無く、図21に示すように引き込み力のみが発生する。したがって、例えばユーザが扉2aを軽く閉じる方向に初速を与えただけで開角度θまで非常にゆっくりと扉を閉じた場合でも、その後扉は引き込まれて確実に閉じられるので、ユーザが扉を閉じようとする意図を確実に実現でき、半ドアを確実に防止できる、という効果がある。
これまで説明したように、本発明ではアクチュエータ18を用いて回転板12を回転させて扉2aを開閉する構成について説明したが、ユーザが冷蔵庫の扉2aを急激に開いたり閉じたりすることがある。すなわち、ユーザが急いでおり、アクチュエータ18を動作させて扉2aを開く速度よりも急激に扉2aを手で開く場合がある。このような場合の動作を図22から図23によって説明する。図22において、扉2aはユーザの手によって矢印60方向にFouの力を加えられて開かれる。この力Fouはアクチュエータ18によって生じる力よりも大であり、扉2aはアクチュエータ18により開く速度より大なる速度で開こうとする。扉2aと一体となって引き込みピン23は開き、扉の回転支点を中心とした軌跡Pathに沿って動くので、回転板12は引き込みピン23によって軌跡Pathに沿った力 Fopで引っ張られ、回転支点11のまわりに時計回りCW方向に回転する。
つぎに、図23に示した状態までいたると、スプリング15が回転支11上を通るので、中性点になる。扉2aはさらにユーザの手で開かれるので、回転板12はさらに時計回りCW方向に回転する。すると、スプリング15は回転板12を時計回りCWに開く方向のモーメントを生じるようになるので、回転板12は引き込みピン23から受ける力Fopとともにスプリング15から受けるモーメントの両方の力で回転し、最大に開いた開状態に至り、扉2aはユーザが急激に開いた速度に応じて開くことができる。この間にアクチュエータ18は通電されていたとしても、アクチュエータ18による扉2aの開速度よりもユーザによる開速度の方が大であるからアクチュエータ18は駆動力源としての働きはしていない。このように、ユーザが急激に扉2aを開いたとしても、本発明による扉開閉機構には無理な力が発生したり、ユーザの操作を妨げることがない、という特徴がある。同じように、停電や制御回路の故障などによってアクチュエータ18に通電されない場合であっても、上記説明と全く同様な動作で扉の開動作を行うことができる。
次に、ユーザが急激に扉を閉じる場合の動作について図24により説明する。図24は扉2aが急激に閉じられて、引き込みピン23が扉2aの回転支点3まわりの軌跡Pathに沿って矢印Fcu方向に移動し、回転板12に接触した状態を示している。ここで、回転板12に備えられた第二の検知手段51は引き込みピン23を検出するのでアクチュエータ18に通電されて扉2aを閉じる動作を開始するが、それ以上に高速で扉2aは閉じようとする。引き込みピン23は回転板12の受け渡し部31に接触した際に回転中心11から距離R2離れた点に当接するから回転板12は回転支点11まわりに反時計方向CCWに回転する。このとき、アクチュエータ18は矢印52方向に引っ張られる。開動作と同様に、図23に示した状態までいたると、スプリング15が回転支点11上を通り、中性点になる。扉2aはさらに勢い良く閉じられるので、回転板15はさらに反時計方向CCWに回転する。すると、スプリング15は回転板12を反時計方向CCWに回転して閉じる方向のモーメントを生じるようになるので、回転板12は引き込みピン23から受ける力とともにスプリング15から受けるモーメントの両方の力で回転し、ユーザが勢い良く閉じた速度で短時間で扉 2aが閉じた状態に至る。この間にアクチュエー18は通電されていたとしても、アクチュエータ18による扉2aの閉速度よりもユーザによる閉速度の方が大であるからアクチュエータ18は駆動力源としての働きはしていない。このように、ユーザが急激に扉2aを閉じたとしても、本発明による扉開閉機構には無理な力が発生したり、勢い良く閉じられる扉2aの動作を妨げることがない、という特徴がある。同じように、停電や制御回路の故障などによってアクチュエータ18に通電されない場合であっても、上記説明と全く同様な動作で扉2aの閉動作を行うことができる。
上記に説明したように、本発明ではアクチュエータ18による動作速度よりも大なる速度でユーザが扉2aを開閉した場合でも、あるいは停電や故障によってアクチュエー18が通電されない場合であっても扉2aの開閉動作を妨げることなく行うことができる、という特徴がある。
ここで、アクチュエータ18としてソレノイドを用いているので、通電されていない場合にはプランジャ19はアクチュエータ18のハウジング40に対しては低摩擦で摺動自在に支持されているので自在に移動することができ、扉2aをユーザが手で開閉する際にも負荷にならないので、扉2aの開閉動作が重くなる、などの不自然さをユーザに感じさせることは無い、という利点がある。これに対して、例えばソレノイドの代わりにモータを駆動源として、モータの出力を減速ギヤを用いて出力軸において所定の速度となるように減速した動力源を用いたとすれば、扉2aをユーザが開閉しようとした際には駆動源の出力軸の側から強制的に回転させることになるので、減速ギヤには過大な負荷がかかるとともに、扉2aを開閉しようとするユーザからみると扉2aの開閉動作が重くなる、という問題が生じるので、本発明においてはアクチュエータ18としてソレノイドを用いるのが好適である。
図5または図7に示したように、扉2aが開かれた状態では回転板12は時計方向に回転して一部がストッパ28に当接した状態で静止しており、スプリング15によって時計方向のモーメントが付加されている。しかし、ユーザが誤って回転板12を手で触るなどして反時計方向に回転させてスプリング15の中性点を超えるまで回転させたり、制御回路の誤動作などによってソレノイド18に通電されて扉2aの開動作をおこなってしまうと、回転板12は反時計方向に回転して、スプリング15が中性点を超えてついには閉位置まで回転してしまう。このように回転板12のみが閉位置まで回転してしまうと、2a扉は開いた状態なので、ふたたび扉2aを閉じることができなくなる、という問題が生じる。この問題を回避するための構成の一例について図25から図27を用いて説明する。図25から図27において、扉2aの回転支点3には溝59を備えた円筒状のカム53が設けられており、リンク板54はリンク中心55のまわりに揺動自在に支持されている。リンク板54の一端にはならいピン56が設けられており、前記のならいピン56はカム53に設けられた溝59に勘合して矢印58方向に揺動可能に備えられている。リンク板54の他端にはロックピン57が備えられており、リンク板54の揺動に伴って移動可能であり、図27に示すように扉2aが閉じられている際にはロックピン57は筐体1の上面よりも引き込まれた状態であり、回転板12は支点11のまわりに回転可能となる。一方、図25および図26に示すように扉2aが開いた状態では、扉2aの開くに従ってカム53は回転し、ならいピン56はカム53に設けられた溝59に勘合しているので下方に移動して、リンク板54はリンク中心55のまわりに揺動してロックピン57は筐体1の上面から突き出す。この、ロックピン57の先端は回転板12の回転を妨げる位置まで突き出すように構成したので、扉2aが開いている際には回転板12を手によって閉じる方向に回転させた場合にも、回転板12はロックピン57の位置は、回転板12がロックピン57に当接するまで回転しても、スプリング15の中性点を超えない範囲に設置することが望ましい。
次に、異なる実施例について説明する。図28において、扉2aに設けられた引き込みピン23はブラケット22とともに回転支点63のまわりに回転自在に軸支されており、ブラケット22はリンク板60に支点61において揺動自在に軸支されており、リンク板60の他端は扉2aの回転支点3の近傍に支点62において回転自在に軸支されている。ブラケット22が扉2aに固定された構成の場合、ブラケット22は扉2aから寸法H2だけ出っ張ったままとなるので、扉2aを開いた際に見苦しいという問題や、扉2aに収納された食品や飲料を出し入れする際に引っかかって邪魔になる場合がある。そこで、本実施例によれば、扉2aが開かれると、開く角度に従ってブラケット22はリンク板60によって引っ張られて矢印64方向に回転し、扉2aの上面に引き込まれる形態となすことができるので、上記のような問題点が生じることがない、という効果がある。またさらに、たとえば扉2aの開角度を検出する検知手段を備え、扉2aが所定の角度θ2以上開いた際には、これを検出してアクチュエータ18に通電して回転板12を矢印65方向に回転させて閉位置とすることにより、回転板12が開位置では筐体1の端部よりH1だけ出っ張った状態であるのに対して、これを筐1の端部よりも引き込むことができるので、扉2aを開いた際にすっきりとした印象をユーザに与えることができて好適である。扉2aを閉じる際には、扉2aの開角度がθ2より小になったことを扉開角度を検知する検知手段によって検出して、アクチュエータ18に通電して回転板12を開位置まで回転させて図28に破線で示した12’なる状態となすことによって、扉2aを閉じる動作を先に説明したと同様に図7、図11、図12、図6の順に行うことができる。
次に、さらに別の実施例について説明する。図29は図3と同様な扉開閉手段であるが、構成手段を一部分解して示した図である。図29と図3との相違は、図29においては回転板12の回転支点11に回転減衰手段70を備えたことである。回転減衰手段70はたとえば粘性の高い流体を内封した流体ダンパであって、回転速度に略比例した負荷トルクを発生することができる。さらに、図29において、前記回転減衰手段70は矢印71a方向へ回転する場合には負荷トルクを生じるが、反対に矢印72a方向に回転する際には負荷トルクを発生しない、いわゆる一方向動作をする構成が望ましい。このような構成とすることにより、扉2aを開く際にはすでに説明した本発明の動作と同等の動作を行うが、扉2aを閉じる際には回転減衰手段70によって生じる負荷トルクが回転板12に加わるので、回転板12の回転には制動がかかり、アクチュエータ18に通電しても回転板12の閉動作速度は遅くなり、結果として扉2aは減速するので扉2aに設けられたマグネットシールが筐体1に接触する際の衝撃力が小さくなる。このように減速してから扉2aを閉じることによって、扉2aを閉じる際の衝撃音が小さくなるとともに、扉2a内に収納された食品同士や食品と扉とが扉を閉じた際の衝撃でぶつかって傷んだりすることもない、という効果がある。
次に、さらに別の実施例について説明する。すでに図22から図24を用いて説明したように、本発明による扉開閉手段は停電などによってアクチュエータ18に通電しなくても扉2aの開閉動作ができる。図30は、図29に示した構成からアクチュエータ18および、アクチュエータ18と回転板12とを接続する接続手段17とを取り去った構成を示す。回転板12の回転支点11には減衰手段である一方向動作の回転減衰手段70が設けられている。図30の構成においては、アクチュエータ18が無いために、扉2aを開く際にはユーザが手で扉を開き、その際に回転板12は閉位置から時計回り方向に回転してスプリング15を引っ張り、スプリング15が中性点を越すまで引っ張られたら回転板12はスプリング15の力によって時計回りに回転するモーメントを受けるので、図30に示した開位置まで回転して、回転板12はストッパ28に当接して停止する。
扉を閉じる際には、扉2aが閉じられて引き込みピン23が回転板12に接触すると、接触点は回転板12の回転中心11よりも距離R2だけ離れた位置なので、回転板12は反時計CCW方向に回転する。スプリング15が中性点を越すまで回転板15が回転すると、スプリング15の引っ張り力によって回転板12はさらに反時計回りCCWに回転して、引き込みピン23を回転板23のり螺旋溝外周部24Sに沿って引き込むので、扉2aは閉じられる。扉2aを閉じる際には、回転減衰手段70による制動力が働くので減速して、回転板12の閉動作速度は遅くなり、結果として扉2aは減速するので扉2aに設けられたマグネットシールが筐体1に接触する際の衝撃力が小さくなる。このように減速してから扉2aを閉じることによって、扉2aを閉じる際の衝撃音が小さくなるとともに、扉2a内に収納された食品同士や食品と扉とが扉を閉じた際の衝撃でぶつかって傷んだりすることもない、という効果がある。
図29ないし図30にて示した、回転板12の回転支点11に減衰手段である回転減衰手段70を設けた構成は簡素であるが、回転減衰手段70の回転軸11に直接回転板12が設けられているために、扉2aの開閉に伴って扉2aの引き込みピン23から回転板12に加わる力やスプリング15による引っ張り力などが回転減衰手段70の軸にかかる。そのため、回転減衰手段70に十分な強度をもたせる必要があり、回転減衰手段70の小型化や簡素化には問題がある。これに対して、図31および図32に示したように、回転板12の一部に扇状のギヤ72を設け、回転減衰手段70にもギヤ71を設け、これらをかみ合わせて回転板12が回転すれば回転減衰手段70も回転させるようにし、さらに回転板12の一部に設けたギヤ72の歯数を回転減衰手段70に設けたギヤ71の歯数より大なるように構成してその歯数の比を1:Nとすれば、回転減衰手段70は回転板12よりもN倍高速で回転するので、図 のように直接回転板12に回転減衰手段を取り付けた場合と比べ、回転減衰手段70による減衰力を1/Nとしても回転板12に加わる減衰力は等価になるので、回転減衰手段70は小型であってもよい。さらに、扉2aが閉じられる際に回転板12が引き込みピン23から受ける力などは回転板12の回転支点11が受けることになり、回転減衰手段70には回転力のみが伝えられることになるので、回転減衰手段70の軸に必要以上の強度を持たせる必要は無く、安価で簡素な回転減衰手段70を用いることが出来るので、低価格化に好適である。
次に、本発明による構成が冷蔵庫の扉に適用して特に好適であることを説明する。
冷蔵庫の扉は、扉内に保管された食品や飲料の重量によって扉全体の取り付け位置が下がったり、あるいは扉が変形したり、扉の開閉の繰り返しにより回転支点部が磨耗したりしてピンの取り付け部が当初の位置よりたとえば2mm程度下がることがある。このような場合でも、本発明による扉開閉装置においては回転板12と本体筐体1上面との間の隙間寸法を扉に設けられたブラケット22の厚さより十分に大きくすることにより、扉2aの取り付け位置が下がったとしても、ブラケット22の底面と筐体上面1との隙間を確保できるので、回転板12の動作を妨げることが無く、安定して動作することが可能である。
ここで、図7に戻って扉2aの位置が平面図上でずれを生じた場合の扉2aの閉動作について説明する。扉2aが開位置にあって閉動作を行う場合、扉2aは開いているので回転板12はスプリング15によって図7においては時計回りCW方向に回転して付勢されて、ストッパ28に接触した状態で静止している。この場合、図7に示すように扉2aが閉じられることによって扉2aに備えられた引き込みピン23は扉2aの回転とともに支点3を中心にした軌跡Pathを経由して回転板12に設けられた開口部30を経由して螺旋溝24に進入し、引き込みピン23が螺旋溝内周部24Nに連続的に設けられた受け渡し部31に接触する。ここで、引き込みピン23の位置ずれによって引き込みピン23が回転板12の外周先端部B部に接触すると扉2aを閉めることができなくなるので問題である。しかし、回転板12は時計回りCW方向に付勢されているので、引き込みピン23の軌跡と回転板12の外周先端部B部との間にたとえば通常時に3mm程度の隙間Cbを設けることができるので、ピンの位置が2mm程度ずれたとしても扉2aの開閉の際に引き込みピン23が回転板12の螺旋溝外周部に当る、という問題は無く、引き込みピン23は螺旋溝24内部に進入できるので、回転板12の回転によって引き込みピン23が螺旋溝外周部24Sに沿って回転支点11の近傍にまで引き込まれるので、扉2aの閉動作を行うことができる。
冷蔵庫扉および回転板が閉位置にある場合に引き込みピンの位置が図33における両矢印X方向に2mm程度変動したとすると、回転板12はスプリング15によって反時計方向CCWに付勢されているので、回転板12の螺旋溝外周部24S辺は引き込みピン23に当接し、引き込みピン23を経由して扉2aには扉2aを閉じる方向の力が常に加わる構成なので、引き込みピン23の位置ずれが生じても扉2aの閉動作を行った後に必要な押圧を扉2aに加えることができ、マグネットシールを密着させて扉2aを正常に閉じることができる。
またさらに螺旋溝外周部のSt部分を略直線状となすことにより、引き込みピン23に両矢印Y方向の位置誤差が生じたとしても、引き込みピン23と回転板12の螺旋溝外側部24Sとの接触角度をほぼ一定に保つことができるので、引き込みピン23の受ける力P1はほぼ一定となり、引き込みピン23の位置ずれによる押圧力の変動をさらに小さくすることができる。
上に述べたように、ドアの位置が上下さらには水平方向に例えば2mm程度ずれた場合であっても回転板12の回転によって引き込みピン23を螺旋溝24に沿っての回動、および開口部30からの離脱および進入の動作ができるので、扉2aの位置の変動があっても問題がなく、特に食品や飲料などの内蔵物の質量や軸受け部の磨耗による位置変動が大きい冷蔵庫の扉の開閉装置に用いて好適である。
上記実施例においては、すべて上面から見て扉2aは反時計方向に回転して開く場合について記載したものであり、回転板12が時計回りに回転した際は扉2aは反時計回りに回転して開き、回転板12が反時計回りに回転した場合には扉2aが時計回りに回転して閉じる向きに配置されており、扉2aの回転する向きと回転板12の回転する向きとは互いに異なる「向え打ち」構成について説明した。しかし、扉2aの回転方向と回転板12の回転方向とはこの構成に限られるものではなく、扉2aと回転板12が同じ方向に回転する構成であってもよい。図34はこのような構成を示したものであり、アクチュエータ18に通電することによって同じように自動的に扉2aを開閉することができる。
図34に示した構成においては、引き込みピン23の動作軌跡Pathは、回転板12の外周部先端B部の近傍を通ってから受け渡し部31に接触する。そのために、外周部先端B部から受け渡し部の先端までの寸法Lcを「向え打ち」構成の場合より大としなければならず、回転板12の大きさが大きくなるが、一方、回転板12の回転支点11の位置を「向え打ち」構成の場合と同じとした場合には、引き込みピン23の位置すなわち扉2aの回転支点3からの距離Ldをより大とすることが出来るので、扉2aの開閉に必要な力が小さくて済むため、アクチュエータ18の小型化などが可能になる、という特徴を備える。
図2から図5に示した「向え打ち」構成の場合であっても、引き込みピン23の位置すなわち扉2aの回転支点3からの距離を小さくすると、開閉動作に必要な動作距離は少なくて済むが動作力は距離に反比例して大きくなるので、それに応じて各部の強度が必要になることと、開閉動作開始時の加速度が遅くなる。したがって、引き込みピン23の位置としては扉の幅方向の中央よりも外側とすることが動作力と加速度を適切とする観点から望ましい。
上記実施例は螺旋溝24を設けた回転板12と扉2aに設けられた引き込みピン23を用いた構成について説明したが、他の実施形態によっても同等の動作を行うことが出来るので、以下に説明する。
図35および図36に示した実施例においては、扉2aの上辺には一端に開口部300を備えた溝240を設け、筐体側には回転支点11の周囲に回動可能な回転リンク120を備え、前記回転リンク120の他端には引き込みピン230を備え、前記引き込みピ230は扉2aに設けられた前記溝240の開口部300を通して溝240に進入できる構成である。
この構成においては、図35に示したごとく、回転リンク120にはスプリング15によって回転支点11まわりに図示時計回り方向のモーメントを生じるので、引き込みピン230から溝240には矢印231方向の力が加わり、扉2aを閉じる方向の力が生じる。ここでアクチュエータ18に矢印232方向の力が加えられれば、回転リンク120には反時計方向の回転トルクが加えられるので、引き込みピン230が回転支点11のまわりに反時計回りに回転し、扉2aに設けられた溝240に沿って移動しながら扉2aを自動的に開くことができる。
図36に示すように、扉2aの開き角度θ以上においては引き込みピン230は扉2aの上面に設けられた前記溝240の開口部300を通って溝240から外れるので、扉2aはユーザによって自在に開閉することが出来る。
扉2aがユーザによって閉じられた場合には、引き込みピン230が扉2aの上面に設けられた前記溝240の開口部300を通って溝240の内部に進入し、図示しない検知手段によって引き込みピン230を検出することでアクチュエータ18に通電して矢印 233方向にプランジャ19を移動することによって回転リンク120を図示時計方向に回転させることによって引き込みピン230が溝240に沿って移動しながら扉2aを時計方向に回転させて閉じる動作を行うことができる。
図37および図38を用いて、さらに別の構成について説明する。図37と図38において、扉2aの上面には引き込みピン23が備えられており、筐体1上面にはスリット81を備え平行移動可能に支持された摺動体80と、前記摺動体80と回転支点82の周りに揺動自在に軸示された揺動フック84と、揺動フックの先端に設けられたフック83と、揺動フック84の他端に設けられたスライドピン85と、筐体1上面に設けられて前記スライドピン85と勘合されるカム溝86が設けられている。カム溝86は上面から見て屈曲しており、前記摺動体80が平行移動するに従ってスライドピン85はカム溝86に沿って移動し、スライドピン85がカム溝86の屈曲部を過ぎると揺動フック84は図38 に示したように揺動する構成である。扉2aが閉じられている際には図37に示すように引き込みピン23は摺動体80とフック83とに挟まれた位置関係となっており、図示しないアクチュエータによって摺動体80を矢印88方向に移動させることで摺動体80の端面が引き込みピン23を押し出し、スライドピン85がカム溝86の屈曲部を過ぎるために揺動フック84が揺動して扉2aが角度θまで開いた図38の状態に至り、揺動フック84に設けられたフック83が引き込みピン23の前面側の押さえ位置からずれることによって引き込みピン23は扉2aが開く方向に自由になるので2aは角度θ以上に開いた場合にはユーザの自由に開閉することができる。扉2aを閉じる際には、図38に示した状態で引き込みピン23が扉2aの開角度がθまで閉じられたことを図示しない検知手段で検知して、図示しないアクチュエータによって摺動体80を矢印89方向に移動させることで、揺動フック84のフック83が扉2aに設けられたピン23を前記摺動体80の一端との間に挟みこみ、さらに矢印89方向に移動することで引き込みピン23を引き込んで扉2aを閉じることができる。
さらに別の実施例について図39から図40を用いて説明する。図39から図40に示した実施例との相違は、揺動フック84の揺動中心82が筐体1上面と平行であり、揺動フック84の揺動方向が上下方向であり、カム溝86が略鉛直面に設けられていることであり、それ以外は図37および図38で説明したと同等な動作を行うことができる。
さらに別の実施例について図41から図42を用いて説明する。図41から図42に示した実施例との相違は、揺動フック84と摺動体80とが横並びに配列されており、揺動フック84は摺動体80の移動に伴って筐体1上面に平行に移動しながら揺動支点82のまわりに揺動可能に軸支されており、前記揺動フック84の一端には揺動フック84本体に対して略直交方向に延長された腕84aと、前記腕84aの先端にガイドピン85が備えられている。ガイドピン85は筐体上面に設けられたカム溝86に勘合しており、図42に示すように摺動体80が矢印88方向に移動して扉を開く状態になった際には前記ガイドピン85は前記ガイド溝86の扉2a側の一辺に当接して揺動支点82のまわりに揺動して開く構成であり、扉2aの開閉動作に関しては図37および図38にて示した構成と同様である。
さらに別の実施例について説明する。図43および図44においては、筐体1上面に配置され、矢印88方向の摺動および矢印90方向の揺動を行うことができる、一端にフック83を備えた揺動体91である。筐体1上面には2本のガイドピン92、93が備えられ、前記ガイドピン92、93は前記揺動体91に設けられた直線状の第一の溝94および一部を屈曲した形状の第二の溝95に勘合して移動自在に支持されている。
扉2aが閉じた場合には揺動体91は矢印89方向に移動しており、扉2aに設けられた引き込みピン23を閉じる向きに引き込んで、扉2aを閉じた状態で保持している。扉2aが開いた状態では揺動体91は矢印88方向に移動するとともに、揺動体91に設けられた第二の溝95が屈曲しているので矢印90方向に揺動して、図44に示した位置となる。この位置においては扉2aに設けられた引き込みピン23はフック83によって拘束されなくなるので扉2aはユーザによって自在に開くことが可能となる。扉2aを閉じる際には、図44の位置から揺動体91を矢印89方向に移動させることによって矢印90とは逆の反時計CCW方向に揺動して引き込みピン23にフック83をかけて、扉2aを揺動体91の矢印89方向への動作とともに閉じることができる。したがって、揺動体91に図示しないアクチュエータを接続して、プランジャを矢印89の方向に移動させることにより、図43および図44のごとき構成でも、扉2aを自動的に開閉することが可能である。
図45から図47を用いて、さらに別の実施例について説明する。図45から図47において、第一のリンク120は一端を筐体1上面に回転支点121のまわりに回動自在に軸支されており、他端を回転支点123において第二のリンク122に回転自在に軸支されている。第二のリンク122の他端は扉2a上面に設けられた回転支点124のまわりに回転自在に軸支されている。回転リンク125は回転支点126の周りに回転自在に軸支されており、回転リンク125には引き込み溝127が設けられており、引き込み溝127の一端は開口部128となっており、第一のリンク120と第二のリンク122とを結合する回転支点123はピンのように第二のリンク122よりも上面に出張っているものとして、前記回転支点123は前記開口部128を通って回転リンク125に備えられた引き込み溝127に出入りできる構成である。回転リンク125にはスプリング15が備えられており、図45に示した扉2aを閉じた状態ではスプリング15によって回転リンク125には矢印130に示した反時計方向に回転トルクが付勢されており、第二のリンク122を矢印131方向に付勢することによって扉2aを閉じることができる。
回転リンク125に図示しないアクチュエータによって矢印132に示した反時計方向のトルクを加えることによって、回転リンク125は図46に示すようにストッパ133に当接するまで回転し、同時に回転支点123は引き込み溝127に当接しているので第一のリンク120の回転中心121のまわりに回転し、扉は角度θまで開く。スプリング15は中性点を乗り越えて回転支点126の反対側に移動して、回転リンク125には矢印132に示した時計回り方向のトルクが加わるので、回転リンク125は図46および図47に示した状態を保持することができる。
この状態で第一のリンク120と第二のリンク122とを結合する回転支点123は回転リンク125に備えられた引き込み溝127から開口部128を通って離反できるので、扉2aをさらに開いて図47に示した状態となすことができる。この状態では扉2aはユーザによって自在に開閉することができる。
扉2aを閉じる際には図46に示した開角度θの状態まで扉2aを閉じられると、この状態で第一のリンク120と第二のリンク122とを結合する回転支点123は回転リンク125の開口部128を通って引き込み溝127に進入する。
ここで、扉2aが角度θまで閉じられたことを図示しない検知手段によって検出して、図示しないアクチュエータによって回転リンク125に矢印130に示した反時計方向の回転トルクを与えると、第一のリンク120と第二のリンク122とを結合する回転支点 123は回転リンク125の回転動作とともに引き込み溝127に沿って回転支点121の回りに時計回り方向に回転して図45に示した状態にいたり、扉2aは閉じられる。 このように、回転リンク125をアクチュスータによって回転させる動作によって扉2aを自動的に開閉動作することが可能となる。
本実施例によれば、回転リンク125は筐体1の上面から扉2a側には出張らないためにユーザが触手することができないので誤操作の恐れはないが、一方第一のリンク120と第二のリンク122によって扉2aと筐体1とは開き角度の如何を問わず常時結合されているので、扉2aを開放して内部の食品や飲料を取り出す際に邪魔になる、という問題点がある。
上記実施例は、観音開きの扉を備えた両開き式の冷蔵庫に適用した場合について記載したが、本発明は両開き式の冷蔵庫に限定されるものではなく、片開き式の一ドア式の冷蔵庫にも適用することができる。図48および図49は一ドア式の冷蔵庫に適用した例を示した斜視図である。一ドア式の冷蔵庫は両開きの冷蔵庫と比べて扉が大型で重いために、開閉に力が余分に必要である。したがって、本発明を適用して扉の開閉を自動的に行う構成とした場合の開閉力の低減効果は両開き冷蔵庫より大きいので、より好適である。また、扉が一枚であるために、扉開閉手段10を一式のみ設ければよいので、この点からも好適である。
図47までに至る実施例はいずれも扉開閉手段10を筐体1の上面に備えた場合について説明したが、扉開閉手段10は筐体1の上面に限られるものではなく、図49に示すように筐体1の側面に備えられていてもよく、あるいはまた図50に示すように筐体1周囲に設けられた断熱部材140の内部に埋め込まれて設けられていてもよい。筐体1の上面に備えられた場合には、扉開閉手段10が目立たないことと、誤って手で触ることがない、という利点があるが、上面に出っ張りが生じるために、装置全体の全高が増加するとともに、筐体1の上にユーザが物を置きづらくなる。開閉手段10を筐体1の側面に設けた場合には、扉開閉機構10がユーザの目の高さ近くにあるために目立つということと、誤って手で触るあるいは子供が触るなどによって回転板12を引き込んでしまう、という誤った動作を行いやすいが、一方回転板12の位置が扉2aの略上下の中央部近傍に設置させることができるので、扉2aの開閉動作時に引き込みピン23に加わる力が扉2aのほぼ中央にかかるためにバランスが良い、という利点がある。断熱部材140に空間を設け、そのなかに開閉機構10を埋め込んだ場合には、筐体1外部への出っ張りが無いために外観上は最も好適であるが、それに反して断熱部材140が開閉機構10を内包する分だけ体積が少なくなるために、断熱効果が低下する。
上記の実施例は、回転支点を中心として開閉する回転式の扉について記載したが、本発明の適用例としては回転式扉に限定されるものではなく、冷凍室扉のような引き出し扉にも適用できる。引き出し式扉に適用した例を図51から図55を用いて説明する。
図51から図53において、扉開閉手段10の構成は図2から図5に示した構成と同様であり、同等な構成については同じ符番を付して示す。引き出し扉145は、ガイドレール146に沿って移動できる構成であり、引き出し式に開閉できる。引き込みピン23は引き出し扉145の底面中央部に設けられており、引き出し扉の閉位置をCL位置、図5に示した回転扉がθだけ開いた状態に対応する、引き込みピン23が回転板12の受け渡し部31にほぼ接した状態までの開き量をS、全開位置をOpとすると、引き出し扉145が閉じたCL位置にあって、ユーザが図示しない扉開スイッチを押すと、ソレノイドアクチュエータ18に所定時間の通電がなされ、プランジャ19が矢印148方向に移動して回転板12が矢印CW方向に回転して引き込みピン12を矢印147方向に移動させ、引き出し扉145を矢印147方向に自動的に開く。引き出し扉145が開き量Sだけ開くと、引き込みピン23は回転板12に設けられた螺旋溝24から離反するので、引き出し扉145はユーザが手前に自在に引き出すことができる。
次に、引き出し扉145を閉じる動作につい手説明する。図52および53において、引き出し扉145がユーザによって開位置Opから矢印148方向に閉じられて、開き量がSとなるまで閉じられると、図5に示したと同様に第二の検知手段によって引き込みピン23が開き量Sとなるまで閉じられたことが検出されるので、ソレノイドアクチュエータ18に所定時間の通電がなされ、プランジャ19が矢印147方向に移動して回転板12が矢印CCW方向に回転して引き込みピン23を矢印148方向に引き込んで、引き出し扉145を閉位置CLにいたるまで閉じる動作を行う。このようにして、引き出し扉145を自動的に閉じる動作を行うことができる。
図54および図55には、図30に示したと同様に、アクチュエータ18を用いることなく、回転板12の回転支点11に回転板12とともに回転する減衰手段である回転減衰手段70を備えた構成を示している。図54は引き出し扉145が閉位置にある場合、図55は開位置にある場合を示している。このような構成とすれば、図30に示したと同様に、引き出し扉145を手前に開く際に、引き込みピン23が回転板23を回転させてスプリング15を引っ張ってエネルギを蓄え、開位置で回転板12はスプリング15が中性点を越す位置まで回転するので、図55に示すように回転板12は開位置で保持される。引き出し扉145を閉じる際には、開き量Sとなるまではユーザの自在に閉じられ、開き量Sとなってからは引き込みピン23が回転板12に設けられた螺旋溝24の内部に進入して、回転板12を回転させて、スプリング15が中性点を越すまで回転させれば、スプリング15に蓄えられたエネルギを開放して引き出し扉145を引き込み、その際に回転減衰手段70は回転板12とともに回転するので、制動力が生じて回転板12は減速し、引き出し扉145の矢印148方向への速度を減速する。引き出し扉145はスプリング15に引っ張られて、かつ減速しながら閉じられるので、引き出し扉145が閉じた際の衝撃を低減できる。したがって、引き出し扉145を勢い良く閉じた場合であっても、衝撃音を抑制して静粛な引き出し扉を提供できる。
上記実施例は回転板12の回転支点11の軸に回転減衰手段70を設けた例を示したが、図31および図32に示すように、回転板12の外周の一部にギヤを設け、回転減衰手段70の軸に設けたギヤ71とかみ合わせる構成であっても同等な効果を得られることは言うまでもない。
なお、上記の実施例は家庭用の冷蔵庫に適用した例について記載したが、本発明は家庭用冷蔵庫に限定されるものではなく、業務用冷蔵庫であっても同じような構成によって同様な効果を得ることができる。あるいはさらに調理済み食品を暖かいままで一時保管する温蔵庫のように、開閉扉を備えて内部に貯蔵された食品などを出し入れする装置の扉にも適用することができ、同様な構成で同様な効果を得ることができる。
上記の実施例によれば、このような構成とする事で、ユーザがスイッチなどを操作することによって冷蔵室の扉を自動的に開放することができるので、操作性が良好な冷蔵庫を提供できる、という効果がある。
アクチュエータとしてソレノイドを高速に動作しても、引き込みピンの速度を減速できるので、扉がユーザの予想以上に手前に急激に開くことを防止できる、という効果がある。
さらに、扉が一定の角度以上開いた際には扉を開放または閉鎖する機構と扉との結合が解除される構成としたので、扉が開いた状態では扉はまったく自在にユーザの自由に開閉することができるので、自動開閉の機構が付いていない従来の冷蔵庫に対して使用感覚が変わることがないので、不自然さを感じない、という効果がある。
さらに、扉を閉じる際には開く角度が一定の角度以下になった場合にはセンサで検出して自動的に閉じるようにしたので、半ドアになりにくいという効果がある。
さらに、扉が閉じる際にはバネによって扉を閉じる方向の力が加わり、このバネ力は扉を閉じた後も継続的にかかるように構成したので、半ドアをさらに防止する効果がある。
さらに、扉が閉じる方向に動作した際には一方向動作ダンパによる減衰力が加わるように構成したので、扉が本体にパッキンが接触する以前には減速して、ゆっくりと閉じる構成としたので、扉が閉じる際の衝撃が少なく、静音化できるとともに、扉内に収容された食品同士が衝突して損傷することがない。
さらに、扉を勢い良く閉めた場合でも扉に制動をかけて、一定の速度以下に減速してから扉に設けられたマグネットシールが筐体に接するようにして、扉が閉じる際の衝撃を低減できる。
さらに、停電や配線の異常などによってアクチュエータであるソレノイドへの通電が行われない場合であっても、アクチュエータとしてソレノイドを用いたので、非通電時にはプランジャが移動する際の摩擦が小さいので余分な負荷とならず、ユーザによって扉の開閉を自在に行うことができる、という効果がある。
1…筐体、2…冷蔵室、2a…扉、3…回転支点 、4…野菜室、5…製氷室、6…機能選択室、7…冷凍室、10…扉開閉手段、11…回転支点、12…回転板、 15…スプリング、17…連結部材、18…アクチュエータ、19…プランジャ、22…ブラケット、23…引き込みピン、24…螺旋溝、24N…螺旋溝内周部、24S…螺旋溝外周部、28…ストッパ、30…開口部、31…受け渡し部、41…第一のソレノイドコイル、42…第二のソレノイドコイル、50…第一の検知手段、51…第二の検知手段、53…カム、54…リンク板、55…リンク中心、56…ならいピン、57…ロックピン、60…リンク板、61…支点、62…支点、70…回転減衰手段、80…摺動体、83…フック、84揺動フック、85スライドピン、86…カム溝、91…揺動体、120…回転リンク、121…回転支点、122…第二のリンク、123…回転支点、125…回転リンク、126…回転支点、127…引き込み溝、128…開口部、230…引き込みピン、240…溝、300…開口部。