(冷蔵庫の全体構成)本発明の実施の形態について、以下図面に基づいて説明する。なお、以下は引き出し時に大きな力を要するという観点から、冷蔵庫を中心に説明するが、これに限定されるものではなく、引き出しを有する機器全般についても同様に適用できるものである。図1は、本発明による冷蔵庫の構成を示す斜視図である。図2は、本発明の第1の実施例における冷蔵庫の要部断面説明図である。
図1および図2において、冷蔵庫本体1は複数の収納室を有し、最上部は冷蔵室2となっている。冷蔵室2の前面には、冷蔵室2を開閉自在な扉が設けられており、一例として左右両側に開く、いわゆるフレンチドア2aとなっている。冷蔵室2の下部は左右に分割された収納室となっており、例えばその一方は機能切り替え室3となっており、もう一方は図示しない自動製氷装置によって製作された氷を蓄積する製氷室4となっている。
機能切替え室3と製氷室4との下部は、手前に引き出して開放可能な引き出し扉5aを備えた冷凍室5となっている。最下部は、引き出し扉6aを備えた野菜室6となっている。
ここで、冷凍室5及び野菜室6には、前後に引き出し可能な引き出し扉5a及び6aを備え、冷凍室5又は野菜室6の少なくとも一方の前記引き出し扉5a,6aを、後述するように電動で開放し、引き出し動作するように構成される。
この電動により引き出せるようにした引き出し扉5aもしくは6aを、開スイッチ8a,8bに示す押しボタンを操作することにより、従来の手動で開く引き出し扉に比べて約1/10の力で開くことが出来る。実施例では、冷凍室5に25kg収納した場合、従来の手動により引き出す力が約40ニュートンに対し、電動のボタンを押す力は約4ニュートンとなる。これにより、大容量(一例として、定格内容積が約170L)の冷凍室や、冷凍室5の下方に配置されて扉を開く時に力を入れにくい姿勢になる野菜室6に、野菜が満杯に入った重い状態でも、容易に開くことができる。
また、冷蔵室2と、冷蔵室2の下方に設けられた冷凍室5と、冷凍室5の下方に設けられた野菜室6を備え、冷凍室5及び野菜室6には、前後に引き出し可能な引き出し扉5a及び6aを備え、冷凍室5の引き出し扉5aを、後述するように電動で開放するように構成した。
このように、冷凍室5を冷蔵庫1の中段に配置したことで、低温度(例えば−20度)の冷凍室5は、圧縮機が配置されて高温度(例えば50℃)になる機械室52とは隣接しない。換言すると、冷凍室5は、冷却器の配置された低温度(例えば−40℃)の冷却器室(図示省略)と隣接して、温度差が小さくなることで、断熱壁の厚さ寸法を小さく出来る。また、野菜室6は他の収納室に比べて収納室内の温度は高温に設定される。そこで、野菜室6は機械室52と隣接させることで、温度差が小さくなって隣接する機械室52との間の断熱材を薄く出来る。
上述のように、断熱壁の厚さが小さくてすみ、冷凍室5や野菜室6の内容積を拡大することが可能となる。ここで、内容積とはJISで規定されている定格内容積のことである。
また、冷蔵室2の扉には操作表示部7が備えられており、冷凍室扉5aの開スイッチ8aと野菜室扉6aの開スイッチ8bとが備えられており、ユーザが前記のスイッチを押して引き出しの開動作を指示することができる構成である。ここで、冷凍室5が野菜室6より上方に設けられている場合には、冷凍室扉5aの開スイッチ8aを野菜室扉6aの開スイッチ8bの上方に設け、扉の位置関係と同様に設けておけば、ユーザが操作する際にどちらの開スイッチ8を操作すればよいかがわかり易いので好適である。尚、開スイッチ8aと8bは各々の扉5a,6aの取手部に設けておいてもよい。
(開閉機構の実装)以下、野菜室6を例に、扉駆動装置500について説明する。尚、冷凍室5についても同様である。
野菜室6の扉体6a,食品を収納する容器12は、扉枠400によって、冷蔵庫本体の正面からみて前後方向に引き出し自在に支持される。扉枠400の前側には、前記野菜室6を閉鎖方向に引き込む閉じ付勢手段であるクローザ13が設けられている。一旦開いた野菜室6を閉じる際に、開き量が例えば50mm以下になったら図示しない傾斜に掛かる野菜室扉6a自身の重量によって奥側に引き込む力を与える。これにより、野菜室6を閉じる動作を補助して野菜室扉6aの全周に設けられたマグネットパッキン14が冷蔵庫本体1と吸着するまで扉を閉じる。なお、クローザ13が扉枠400の後側に設けられる構成であってもよい。さらに、扉開閉動作を補助するレールを設けて、レールがクローザの機能を有する構成であってもよい。
そして、野菜室6の内部には扉駆動装置500が設けられている。扉駆動装置500は、冷蔵庫本体1側に固定して設けられた、駆動源であるモータとモータの回転を減速する減速機構とを備えた冷蔵庫本体1側の駆動機構600と、野菜室6の扉6aとともに開閉され、本実施例では、左右の扉枠400の間を接続するように設置された補強部材410に設けられた連結部材700とを備えている。そして、冷蔵庫本体1側の駆動機構600から連結部材700に対して扉枠400の移動方向に力を加えて野菜室扉6aを開閉する構成である。冷蔵庫本体1側の駆動機構600と連結部材700の詳細な構成と機能については後述する。
そして、野菜室6内には、該野菜室6が完全に閉じられているか否か(すなわち、野菜室扉6aが閉鎖状態であるか否か)を検出して、後述するように制御手段51にその信号を送るように構成された第一の扉状態検知手段510を設けてある。この第一の扉状態検知手段510の設置方法としては、例えば、該第一の扉状態検知手段510を構成する磁気検知センサー512を、冷蔵庫本体1側の駆動機構600に設け、該磁気検知センサー512を作動させる磁石511を、連結部材700に設けることにより、野菜室6が完全に閉じられているか否か(すなわち、野菜室扉6aが閉鎖状態であるか否か)を確実に検出できる。
また、野菜室扉6aの上部には、第二の扉状態検知手段520を設けてある。第二の扉状態検知手段520は、該野菜室6が閉じられていること、あるいは野菜室扉6aの開き量が例えば30mm程度の半ドア状態の所定量(後述する、閉じ駆動量である開き量35)以内であるか否かを検出して、後述するように制御手段51にその信号を送る。
この第二の扉状態検知手段520は、例えば図3に示すように、該第二の扉状態検知手段520を構成する磁気検知センサー522を、冷蔵庫本体1側の仕切り部1aに設け、該磁気検知センサー522を作動させる磁石521を前記引き出し扉6aに設ける。これにより、野菜室6が閉じられていること、あるいは野菜室扉6aの開き量(図3の35)が例えば30mm程度の半ドア状態の所定量以内であるか否かを確実に検出できる。また、この第二の扉状態検知手段520を、例えば、半ドア開放警告ブザー等の検知手段として兼用すれば、製造コスト上有利な構成となる。
(多段加速リンクの構成)次に、本体側の駆動機構600と、補強部材410に設けられた連結部材700とを備えた扉駆動装置500の構成について、図4から図7を用いて詳細に説明する。ここで、扉駆動装置500は野菜室6に設けられているものとして以下、説明するが、冷凍室5についても同様である。なお、前述した図1から図3と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図4は、本発明の第1の実施例における引き出し扉駆動装置500の構成を示す平面図である。図5は、本発明の第1の実施例における連結部材700の構成を示す斜視図である。図6は、本発明の第1の実施例における駆動伝達部材640の構成を示す斜視図である。
図4から図6において、400は前述した引き出し扉(図2の野菜室扉6a)の左右に設けられた扉枠であり、この左右の扉枠400の間を接続するように設置された補強部材410を備えている。そして、補強部材410には後述する連結部材700が設けてあり、この連結部材700が、本体側に取り付けられた本体側の駆動機構600に設けられた駆動伝達部材640からの駆動力を受けることにより、前記引き出し扉(図2の野菜室扉6a)の開閉を自動的に行うように構成されている。すなわち、駆動機構600はモータからの動力を出力する回転駆動部を有し、この回転駆動部に駆動伝達部材640が回転可能に設けられる。
冷蔵庫本体1側の駆動機構600においては、回転出力軸である駆動軸620の周りに回転自在に回転駆動体である駆動伝達部材640が軸支されている。また、この駆動伝達部材640には、引き出し扉(図2の野菜室扉6a)の開放を行えるように、回転方向に向かって回転中心からの距離を除々に変化させた位置に配置された複数の開扉押し部660が設けてある。
この開扉押し部660には、例えば、8箇所の押し部が設けてあり、駆動軸620からの距離に応じて距離r1に第一の押し部661、距離r2に第二の押し部662、距離r3に第三の押し部663、距離r4に第四の押し部664、距離r5に第五の押し部665、距離r6に第六の押し部666、距離r7に第七の押し部667、距離r8に第八の押し部668が設けられており、それぞれの押し部は略平面状をなし、かつ駆動軸620から略放射線上の一部にある。ここで、r1<r2<r3<r4<r5<r6<r7<r8であるとする。
また、この駆動伝達部材640には、引き出し扉(図2の野菜室扉6a)の閉じこみを行えるように閉扉押し部670を設けてある。
そして、後述する連結部材700の構成を簡略化できように、閉扉押し部670の回転中心からの距離r9を、前述した複数の開扉押し部660のうち、回転中心から一番遠い距離にある押し部、例えば第八の押し部668と、ほぼ同じ距離に設定してある。
そして、連結部材700は、補強部材410に固定するための係止部710と、引き出し扉(図2の野菜室扉6a)の開閉を行うように構成された開扉部730と閉扉部720とを一体もしくは別体に形成してある。
そして、この連結部材700の開扉部730には、前述した駆動伝達部材640に配置された複数の開扉押し部660に対応する位置に配置された複数の階段状の押し面(例えば、731の第一の押し面から738の第八の押し面までの8段の面)を設けることにより、駆動伝達部材640の回転運動を、例えば矢印CCW方向に回転して、連結部材700の開扉部730の直線運動に変化させることによって、引き出し扉(図2の野菜室扉6a)の開放を行えるように構成してある。
また、連結部材700の閉扉部720には、前述した駆動伝達部材640に設けられた閉扉押し部670に対応する位置に、閉扉押し面722を設けることにより、駆動伝達部材640の回転運動を、例えば、前述した引き出し扉を開放するときと反対向きの矢印CW方向に回転して、連結部材700の閉扉部720の直線運動に変化させることによって、引き出し扉(図2の野菜室扉6a)の閉じこみを行えるように構成してある。換言すれば、冷蔵庫の扉を閉じる際に閉め方が不十分な状態(半ドア開放状態)の引き出し扉を閉じこむことのできる閉扉押し部670を駆動伝達部材640に設け、閉扉押し部670の回転運動を連結部材700の直線運動に変換させることによって、半ドア開放状態の引き出し扉の閉じこみを行えるように構成してある。
なお、駆動伝達部材640の閉扉押し部670の回転運動により、閉扉押し部670が連結部材700と当接しないように空間721を設けると良い。
また、駆動伝達部材640の原点位置40(後述する図12の40)を検知する回転検知手段の一例としては、図4に示したように、駆動伝達部材640自身に設けられた磁石531と、該磁石531の磁力を感知してスイッチング動作を行うように構成された磁気検知センサー532とで構成する駆動伝達部材640の位置検知手段530がある。なお、磁気検知センサー532を冷蔵庫本体1側の駆動機構600に設ける構成にすれば、磁気検知センサー532の配線や信号線を、冷蔵庫本体1側の駆動機構600と共用できるので、製造工程上有利な構成となる。
次に図7を用いて、駆動機構600について説明する。図7は、本実施例における冷蔵庫本体1側の駆動機構600を示す斜視図である。説明の簡明上、駆動装置ケース610内を透視した説明図としてある。
なお、前述した図1から図3と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図において、モータ24の回転軸にはモータピニオン25が設けられており、アイドラ26と噛み合って減速される。アイドラ26とアイドラピニオン27とは一体として回転し、アイドラピニオン27はアイドラ28と噛み合っている。アイドラ28とアイドラピニオン29と一体として回転し、アイドラピニオン29は駆動ギヤ30と噛み合って減速される。駆動軸620と駆動ギヤ30とは連結されており、このようなギヤの構成によりモータ24の回転速度は例えば1/100程度に減速され、駆動軸620に設けられた駆動伝達部材640を回転させる。本実施例においては、アイドラ28とアイドラピニオン29との間にはトルク制限手段31を設け、駆動伝達部材640に過大な外力が加えられた場合にはトルク制限手段31が介在してアイドラ28とアイドラピニオン29とが互いにすべることで、本体側の駆動機構600の破損を防止できる。
そして、回転検知手段の一例として、例えば、駆動軸620に回転知手段32を設けて駆動軸620の回転位置を検出できる構成としている。このような回転検知手段32の一例は、軸の回転によってその抵抗値が変化する可変抵抗器である。また、回転検知手段の他の一例としては、図4に図示した磁石531と、該磁石531の磁力を感知してスイッチング動作を行う磁気検知センサー532とで構成する駆動伝達部材640の位置検知手段530がある。
(開き動作)次に、本発明による扉駆動装置500によって、野菜室扉6aを開く際の動作の詳細について、図8を用いて説明する。図8は、本実施例における引き出し扉駆動装置の開き動作を説明する図である。なお、前述した図1から図7と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図において、(a)は後述する原点位置であり、野菜室6が閉じられている状態を示している。そして、(b)(c)(d)(e)(f)の順に動作することで、野菜室6を開放する動作を示している。
先ず、図8(a)の原点位置について説明する。(a)において、実線で図示する連結部材700は、図示左端が引き込み位置34に合致されており野菜室扉6aが閉鎖された位置にある。冷蔵庫においては、実施例のような扉駆動装置500が備えられているとしても、野菜室扉6aを使用者が手動で引き出す場合もある。または、故障によって扉駆動装置500が動作しない場合などにおいては、ユーザが手動で自在に開閉できるように構成することが望ましい。
野菜室扉6aが閉じられた状態からユーザが手動で野菜室扉6aを引き出して開いたとすると、野菜室扉6aに設けられている連結部材700の開扉部730が、図示左側に移動して、破線の位置となる。破線の位置においては各符号には′を付加して記す。ここで、駆動伝達部材640が図8(a)の実線で示す位置にあり、その位置において駆動伝達部材640の図示最上端部680と、連結部材700の開扉部730が図示左方に移動したときに、最上端部680と最も近接する連結部材700の図示最下端部740との間に隙間δ4を有する。これにより、連結部材700の開扉部730が図示左方に移動しても、最上端680と最下端部740とが接触しない位置関係にある。また、後述する駆動伝達部材640の第一の押し部661と、連結部材700の開扉部730の第一の押し面731との間に隙間δ3を有する。これにより、野菜室扉6aが閉じられた状態において、第一の押し部661と第一の押し面731とが接触しない位置関係にあれば、ユーザが手動で野菜室扉6aを開閉する際、連結部材700と駆動伝達部材640とが接触しないので、自在に野菜室扉6aを開閉することができる。このような駆動伝達部材640の位置を、本実施例では原点位置40にある、と称する。
そして、駆動伝達部材640は駆動軸620のまわりに回転自在であり、連結部材700の開扉部730は、図示左右方向に移動自在に支持されている。また、連結部材700の開扉部730は、野菜室扉6a側に備えられているので、連結部材700の開扉部730の左方向への動きが野菜室扉6aの開き動作を示している。ここで、野菜室扉6aが閉じられている状態における連結部材700の図示左端の位置を示す基準線を引き込み位置34として表す。
そして、駆動が開始されると、図8(b)に示すように、駆動伝達部材640は矢印CCW方向に回転し、第一の押し部661が第一の押し面731と接し、連結部材700の開扉部730に対して矢印23b方向の力を生じる。このとき、第一の押し部661は、駆動軸620から図6に示した距離r1の位置にあるので、第一の押し部661から連結部材700の開扉部730に伝えられる力は、駆動軸620に加わるトルクをTとすれば、T/r1となる。この力を、野菜室扉6aのマグネットパッキンを引き剥がす力と、クローザ13による引込力と、野菜室扉6aの自重および収納された食品の質量を加速する力の合力よりも大きくなるように設定することで、マグネットパッキンの吸着を引き剥がして、連結部材の開扉部730は野菜室扉6aとともに図示左方向に移動して、野菜室6は開き始める。
さらに駆動伝達部材640がCCW方向に回転した図8(c)の状態においては、第二の押し部662が第二の押し面732と接し、第一の押し部661は第一の押し面731からは離反する。すなわち、第二の押し部662は駆動軸620から図6に示した距離r2の位置にあり、かつr2>r1となるようにしていて第一の押し部661よりも第二の押し部662の方が回転中心である駆動軸620からの距離が離れているので、回転の周速が速い。そのため、第二の押し部662が第二の押し面732と当接した後は、第一の押し部661は第一の押し面731からは離反するのである。この状態において、第二の押し部662は、第二の押し面732に接して、矢印23cの力を与える。このとき、第二の押し部662は駆動軸620から図6に示した距離r2の位置にあるので、第二の押し部662から第二の押し面732を介して連結部材700の開扉部730に伝えられる力は、駆動軸620に加わるトルクをTとすれば、T/r2となる。この力は図8(b)の状態で矢印23bの方向に第一の押し部661により連結部材700の開扉部730に加わる力よりも小さいのであるが、マグネットパッキンは既に引き剥がされているので、このときに加わる力はクローザ13による引込力と、野菜室扉6aの自重および収納された食品の質量をさらに加速する力の合力よりも大きくなるように設定すればよく、連結部材の開扉部730は野菜室扉6aとともにさらに図示左方向に移動して、野菜室6の開き動作を継続する。
さらに駆動伝達部材640がCCW方向に回転した(d)の状態においては、第三の押し部663が第三の押し面733と接し、第二の押し部662は第二の押し面732からは離反する。すなわち、第三の押し部663は駆動軸620から図6に示した距離r3の位置にあり、かつr3>r2となるようにしていて第二の押し部662よりも第三の押し部663の方が回転中心である駆動軸620からの距離が離れているので回転の周速が速い。そのため、第三の押し部663が第三の押し面733と当接した後は、第二の押し部662は第二の押し面732からは離反するのである。この状態において、第三の押し部663は第三の押し面733に接して、矢印23dの力を与える。このとき、第三の押し部663は駆動軸620から図6に示した距離r3の位置にあるので、第三の押し部663から第三の押し面733を介して連結部材700の開扉部730に伝えられる力は、駆動軸620に加わるトルクをTとすれば、T/r3となる。この力は図8(c)の状態で矢印23cの方向に第二の押し部662により連結部材700の開扉部730に加わる力よりも小さいのであるが、野菜室扉6aは既に開き動作を行っていて矢印23dの方向に移動しているので、野菜室扉6aは容器と収納された食品も含めた自重と速度に応じた運動量をもっており、その運動量と第三の押し部663から第三の押し面733に伝達される力とによってクローザ13による引っ張り力に抗して開き動作をさらに継続することができる。
さらに駆動伝達部材640がCCW方向に回転して、上記と同様に、順次第四の押し部664が第四の押し面734と接し、次に、第五の押し部665が第五の押し面735と接し、次に、第六の押し部666が第六の押し面736と接し、次に、第七の押し部667が第七の押し面737と接し(図8(e)の状態)、次に、第八の押し部668が第八の押し面738と接する(図8(f)の状態)ことにより、野菜室扉6aの開き動作を継続することができる。
そして、図8(f)の状態以降は、駆動伝達部材640は連結部材700の開扉部730からほぼ離反する状態を示している。
以上の図8(a)の状態から図8(f)の状態に至るまでの連結部材700の移動量33の範囲が、連結部材700の開扉部730が駆動伝達部材640から力を受ける範囲である開き駆動範囲、ということになる。ここで、この連結部材700の開扉部730の移動量33はクローザ13による引込量である閉じ付勢範囲よりも大なるように設定すると好適である。すなわち、閉じ付勢範囲であるクローザによる引き込みストロークが50mmであって連結部材700の開扉部730の移動量33が60mm以上あるとすれば、図8(f)に示した位置で連結部材の開扉部730が停止、すなわち野菜室扉6aが停止したとしても、クローザ13によって開いたばかりの野菜室扉6aが閉じられることがないためである。
また、連結部材700の開扉部730の移動量33を、例えば、引き出し扉(図2の野菜室扉6a)全開放寸法の1/4以上となるように、つまり、前述したクローザ13による引込量である閉じ付勢範囲よりも大きくなるように、設定すれば、前記クローザ13によって開いたばかりの野菜室扉6aが閉じられることがない構成となる。
また、全開放寸法の1/4以上引き出し扉を開放すれば、自動で、引き出し容器12(図2の容器12)内の貯蔵食品が判る程度に開放できるので、該冷蔵庫の使い勝手が向上する。また、引き出し容器12(図2の容器12)内の貯蔵食品の負荷量に関係なく、引き出し扉(図2の野菜室扉6a)の開き量をほぼ一定とすることができるので、更に該冷蔵庫の使い勝手が向上する。
なお、上記図8(f)の状態よりも野菜室扉6aが開放されて連結部材700の開扉部730が図示左方に移動すると、連結部材700の開扉部730は駆動伝達部材640からの駆動力は受けないのであるが、野菜室扉6aは矢印23f方向への速度を持っているので、扉枠400のもつ摩擦負荷によって徐々に減速して停止するまでは、開き動作を継続する。この時、野菜室扉6aの開き量は矢印23f方向へ移動の際の摩擦負荷により変動してしまう。つまり、野菜室6内の収納した食品による負荷量によって、引き出し扉の開き量は変化してしまう。しかしながら、矢印23f方向への速度を野菜室6内の食品負荷量によって可変することにより、ほぼ一定の開き量とすることができる。つまり、食品負荷量により駆動源であるモータの印加電圧を可変することにより、野菜室扉6aの開き量をほぼ一定とすることができる。このように動作するので、野菜室扉6aの開き量は連結部材700の開扉部730の移動量33よりも大きくなる。
上記説明したように、野菜室扉6aの開き動作時には、開き方向への駆動力を加え続けるのではなく、開き始めだけ駆動力を加え、その後は駆動力の範囲で得た移動速度が扉枠400のもつ摩擦力によって徐々に減速しながら停止する動作を実現できる。
以上説明したように、野菜室扉6aを閉鎖状態から開き始める際には駆動軸620のもっとも近傍に配置された第一の押し部661が連結部材の開扉部730を押し出して駆動することで、低速であるが大きな力を出してマグネットパッキンを引き剥がし、その後は、引き続き第一の押し部661よりも遠方に設けられた第二の押し部662が連結部材の開扉部730を押し出し、以下、順次第二の押し部662よりも遠方に設けられた第三の押し部663が連結部材の開扉部730を押し出して、第三の押し部663よりも遠方に設けられた第四の押し部664が連結部材の開扉部730を押し出して、最終的に第七の押し部667よりも遠方に設けられた第八の押し部668が連結部材の開扉部730を押し出して、野菜室扉6aの開き動作を継続する。従って、押し出し力は順次小さくなるが、扉の開放速度を順次加速することができる。例えば、ユーザが手動で扉を開放するときの形態に近似させることができるので、使い勝手の良い冷蔵庫が提供できる。
上記の動作により野菜室扉6aが開放された後(図8(f)の後)、駆動伝達部材640はさらにCCW方向への回転を継続し、図8(a)の状態、つまり原点位置40に至って回転を停止する。なお、言うまでも無くこの際には連結部材700は図8(a)の実線に示す位置ではなく、野菜室扉6aは開いているので図示左方の、例えば破線の位置に移動した状態である。
(閉じ動作)野菜室扉6aを閉じた場合に、何らかの理由でマグネットパッキン14が吸着されるまで野菜室扉6aが閉じずに、マグネットパッキン14と冷蔵庫本体1との間に隙間ができる、いわゆる半ドア状態になることがある。このように半ドア状態になった際の扉駆動装置500の動作について、図9を用いて説明する。
図9は本実施例による扉駆動装置500が野菜室扉6aを閉鎖する際の動作を示す図であり、(a)は野菜室扉6aが閉鎖されていなくて、連結部材700の図示左端が引込位置34よりも、閉じ動作を行うことが可能となる閉じ駆動範囲である開き量35だけ移動した状態にあることを示している。野菜室扉6aにはクローザ13が設けられているものとすれば、通常はクローザ13の生じる引き込み力によって冷凍室は引き込まれて閉じられるのであるが、食品の一部が引っかかる等、何らかの理由で扉枠400の動作が一時的に渋くなって引き込まれない場合が稀に生じる。
ここで、駆動伝達部材640を駆動軸620の周りに矢印CW方向に回転すると、駆動伝達部材640の閉扉押し部670が、連結部材700の閉扉部720を構成する空間721内を回転して、連結部材700の閉扉部720を構成する閉扉押し面722に当接する(図9(b))。
そして、駆動伝達部材640を矢印CW方向にさらに回転させると、閉扉押し部670によって、閉扉押し面722が矢印36方向に押されて移動するので、連結部材700の図示左端が引込位置34に至るまで移動する(図9(c))。
この図9(c)に示した位置というのはマグネットパッキン14が冷蔵庫本体1に吸着するまで野菜室扉6aが完全に閉じられた位置にあることを示している。
その後、駆動伝達部材640は矢印CCW方向に回転して図9(d)の状態となり、図8(a)に示したと同様な原点位置40まで回転させて停止する。
上記のように動作することにより、野菜室扉6aが完全には閉じずに、いわゆる半ドア状態になっていたとしても、駆動伝達部材640を野菜室扉6aを開く場合とは反対方向に回転させることによって、連結部材700に対して野菜室扉6aを閉じる方向の力を加えて閉じることができるので、半ドアを防止することができて好適である。
先に説明したように、野菜室扉6aを開く際の力はマグネットパッキン14を引き剥がす力とクローザ13による引き込み力との合計以上の力が必要となるが、閉じる際にはマグネットパッキン14を引き剥がす力は不用であり、さらにクローザ13による引き込み力が生じているので、本実施例による扉駆動装置500によって加える閉じ力は、開き力と比べれば弱い力で十分である。本実施例によれば、野菜室扉6aを閉じる際には最も駆動軸20から遠方にある第八の押し部668と、ほぼ同じ距離にした閉扉押し部670によって、連結部材700の閉扉部720を押す構成なので、駆動軸620に加わる駆動トルクが仮に開き時と同一であるとしても、閉じ力は開き力と比べてr1/r9(図6参照)だけ小さくなるので好適である。このことはさらに、万一野菜室扉6aと冷蔵庫本体1との間に指などを挟んだ場合においても、挟む力が小さいので安全性が高い。
(開き量の計算)本実施例の扉駆動装置500により、野菜室6の扉を開く際の開き量について説明する。
図10は野菜室6を開放する際の野菜室6の速度と開き量との関係について説明する図であり、図8にて説明した野菜室6の開き動作により、移動量33の範囲において野菜室6は扉駆動装置500によって駆動伝達部材640から連結部材700の開扉部を介して開き方向の力を与えられて開かれる。ここで、野菜室6は移動量33だけ開いた時点(図10の6′)では速度Vをもっているので惰性によって開き続けて、さらに惰性開き量74の間は駆動力なく徐々に減速して最終的に最大開き量73の位置(図10の6″)まで開いて停止する。
ここで、収容された食品を含めた野菜室6の全体の質量をmとすれば、移動量33の位置における運動エネルギEは
E=(m×V^2)/2 (式1)
である。
ここで、引き出しレールのもつ摩擦係数をμ、重力加速度をgとすれば、引き出しレールにより生じる摩擦力Fは、
F=μ×m×g (式2)
となる。摩擦力により消費されるエネルギE2は摩擦力Fと摩擦を受けながら移動した距離Lすなわち惰性開き量74との積に当たるので、
E2=L×F=L×μ×m×g (式3)
ここで、元々野菜室6が持っていた運動エネルギが、停止するまでにすべて摩擦によって消費されたとすればE=E2だから、
(m×V^2)/2=L×μ×m×g (式4)
両辺をmで割って
(V^2)/2=L×μ×g (式5)
ゆえに、惰性開き量74(すなわちL)は(式5)を変形して
L=(V^2)/(2×μ×g) (式6)
として表される。すなわち式6により、惰性開き量74(すなわちL)は野菜室6の質量mには無関係であり、引き出しレールと枠400との摩擦係数μと移動量33時点での速度V、すなわち駆動伝達部材640と連結部材700の開扉部730とが離反して、駆動伝達部材640から連結部材700に伝達される開き方向の駆動力がなくなって惰性で開き始める時点での速度のみに依存することがわかる。
ここで、野菜室6の質量mはもちろん収納された食品の量によって異なるが、野菜室6を電動で開く場合の野菜室6の最大開き量73は食品の量によらず概ね一定であることが望ましい。すなわち、引き出しレールと枠の摩擦抵抗μは引き出しレールによって定まる一定値なので、最大開き量73を概ね一定とするには速度Vの食品の量による変動を少なくすることが望ましい、ということである。そこで、駆動機構600の減速比を十分に大きくして、駆動源であるモータ24にかかる負荷トルクの変動を小さくして回転速度の変動を小さくする構成が望ましく、例えば減速比を1/100以上にすることが望ましい。減速比を大きくすることによって、モータ24による出力トルクに余裕が増えるので、食品の量の多少によるモータ24の回転速度の変動を少なくすることができ、食品の量の多少による最大開き量73の変動を小さくできるので好適である。かつ、収納された食品の量を検出して、駆動伝達部材640と連結部材700の開扉部730とが離反する前段で駆動源であるモータ24の回転速度を可変して、つまり、野菜室6が移動量33だけ開いた時点(図10の6’)の速度Vを加減速することにより、さらに最大開き量73の変動を小さくすることができる。
(制御系の構成)次に、図11を用いて扉駆動装置500を制御するための制御系の構成について説明する。図11は図1から図2の冷蔵庫の扉駆動装置500の制御系の構成を示すブロック図である。なお、野菜室扉6aに関する扉駆動装置500と冷凍室扉5aに関する扉駆動装置500とは、同一の制御系、同一の処理フローであるので、以下の説明では野菜室扉6aに関して説明する。
扉開スイッチ8は、使用者が野菜室扉6aを電動で開ける際に操作され、その操作による信号を制御手段51に送る。野菜室扉6aに設けられた本体側の駆動機構600のモータ24と、駆動軸620の回転位置を検出する回転検知手段32と、扉の開閉状態を検出する第一の扉状態検知手段510と、第二の扉状態検知手段520とは、制御手段51に接続されている。回転検知手段32は、軸の回転によってその抵抗値が変化する可変抵抗器、あるいは軸の所定の回転位置を検出するマイクロスイッチなどの検知手段で構成されている。
扉状態検知手段は、野菜室扉6aが完全に閉じられているか否か(すなわち、野菜室扉6aが閉鎖状態であるか否か)を検出する第一の扉状態検知手段510と、野菜室扉6aの開き量が所定の開き量35mm以下であるか否か(すなわち、野菜室扉6aが半ドア状態であるか否か)を検出する第二の扉状態検知手段520とを備えている。扉状態検知手段は、例えば、野菜室扉6aに備えられたマグネットと冷蔵庫本体1に備えられたホール素子であってもよく、あるいはマイクロスイッチなどの検知手段であってもよい。
野菜室扉6aが半ドア状態になっていることを使用者に知らせるための報知手段70が備えられている。この報知手段70は、ブザーを鳴動させるか、ランプを点灯ないし点滅させるか、などで報知を行う。
タイマ部42は、野菜室扉6aの半ドア状態、野菜室扉6aの開閉に関する各機能における待機時間、動作時間などを制御するものである。タイマT1変更スイッチ92aは、野菜室扉6aが全開状態から半ドア状態に変化した場合の継続時間タイマT1の設定値を使用者が増減可能とするためのものである。タイマT2変更スイッチ92bは、野菜室扉6aが閉鎖状態から半ドア状態に変化した場合の継続時間タイマT2の設定値を使用者が増減可能とするためのものである。
(開き制御)図12を用いて、野菜室扉6aを開放する際の開放制御の手順について説明する。図12は野菜室扉6aを開放する際の開放制御の手順を示す流れ図である。
開動作を開始すると(S001)、制御手段51は回転検知手段32の状態を監視して、冷蔵庫本体1側の駆動機構600の駆動伝達部材640が動作を開始する原点位置40(図8(a)の40)にあるか否かを検出する(S002)。ここで、原点位置40とは、図8(a)にて説明したように、野菜室扉6aを手動で開閉動作した場合にも、駆動伝達部材640が連結部材700と干渉することがない位置にある状態のことを言う。
S002の検出で、駆動伝達部材640が原点位置40にない場合には、モータ24に通電して駆動伝達部材640を回転させて原点位置40になるようにする(S003)。モータ24をCW方向に回転させるか、あるいはCCW方向に回転させるかの判定は、回転検知手段32からの信号によって駆動伝達部材640が原点位置40に対してどちらの方向にずれているか、を制御手段51が判定してモータ24に対して駆動電圧の印加方向を定める。
駆動伝達部材640が原点位置40にあることが検出できており、かつ使用者によって扉開スイッチ8が操作されたことを制御手段51が検出したら(S004)、モータ24を通電して駆動伝達部材640を回転させる(S005)。このときの駆動伝達部材640の回転方向は、図8であれば矢印CCW方向としており、駆動伝達部材640が回転すれば図8にて説明したように野菜室扉6aが開く。モータ24が引き続き回転して、回転検知手段32により検出された駆動伝達部材640の回転位置が原点位置40に入ったことが確認できたら(S006)、モータを停止させて(S007)、一連の開き動作を終了する(S008)。モータ24通電における負荷検出制御についての詳細は後述する。
(閉じ制御)図13を用いて、野菜室扉6aが完全に閉じていない状態(すなわち、野菜室扉6aが半ドア状態)から野菜室扉6aを閉じる際の制御の手順について説明する。図13は野菜室扉6aを閉じる際の閉鎖制御の手順を示す流れ図である。
動作を開始して(S051)、原点位置40を検出し(S052)、モータ24を通電する(S053)動作については、前述の図12のS001からS003と同一である。
S052で原点位置40を検出したら、第一の扉状態検知手段510で野菜室扉6aの閉鎖を検出する(S054)。この検出で野菜室扉6aの閉鎖を検出すれば、野菜室扉6aは半ドア状態ではなくて閉鎖されていることが確認できるので、扉閉じ動作を完了する(S055)。第一の扉状態検知手段510が野菜室扉6aの閉鎖を検出できない場合に、第二の扉状態検知手段520が野菜室扉6aと冷蔵庫本体1との開き量が開き量35以下であるかを検出する(S056)。このS056で第二の扉状態検知手段520が野菜室扉6aを検知できなければ、野菜室扉6aは開き量35以上に開いているので、扉駆動装置500では閉じることができない。その場合は、処理を終了する(S066)。
S056で開き量35以下であることを検出したら、野菜室扉6aは開き量35以下で開いた状態(すなわち、野菜室扉6aは半ドア状態)であって且つ扉駆動装置500によって閉鎖することが可能な領域にあるので、モータ24に通電する(S058)。このときの回転方向は、図9においてはCW方向である。モータ24をCW方向に所定時間(例えば3秒間)通電することにより(S058、S059)、駆動伝達部材640は図9(c)の状態に至って連結部材700を矢印36方向(すなわち、野菜室扉6aを閉じる方向)に移動させて野菜室扉6aを閉じる。
所定時間経過した後に今度はモータ24がCCW方向に回転するよう通電して(S060)、図9(d)に示すように、駆動伝達部材640が、原点位置40になるまで回転させ、回転検知手段32の信号によって原点位置40にあることが検出できたら(S061)、モータ24の回転を停止させる(S062)。次いで、第一の扉状態検知手段510が野菜室扉6aが閉鎖されているかを検出する(S063)。ここで、野菜室扉6aが完全に閉鎖されている場合には、処理を終了する(S066)。
S063で第一の扉状態検知手段510が野菜室扉6aの閉鎖を検知できなければ、半ドア状態が継続していると判断できるので、(S058)から(S063)までの処理、すなわちモータ24に通電して駆動伝達部材640をCW方向に回転して野菜室扉6aを閉鎖させる動作を複数回繰り返して行う(S064)。もし、所定の回数、例えば3回この閉鎖動作を繰り返した後も第一の扉状態検知手段510の閉鎖を検知できなければ、例えば何かが挟まっていて野菜室扉6aを閉鎖できないと判定して、処理を終了する。
(手動動作)手動による扉閉時の制御について図14を用いて説明する。図14は扉駆動装置500の扉全開時から開始する制御フロー図である。
そして、動作を開始してから(S100)、原点検出動作を行う(S101)。この原点検出動作については、前述した図12のS001からS003と同一である。
次いで、制御手段51は野菜室扉6aが全開から半開になったかを検知する(S102、S104)。なお、全開とは、第一の扉状態検知手段510が扉の開を検知して、かつ第二の扉状態検知手段520が扉の開を検知した場合を称する。半開とは、第一の扉状態検知手段510が扉の開を検知して、かつ第二の扉状態検知手段520が扉の閉を検知した場合を称する。
全開から半開になったかの検知は、次の順序で行う。まず、第一の扉状態検知手段510による野菜室扉6aの開状態(すなわち、閉鎖状態でない状態)の検出、及び第二の扉状態検知手段520による野菜室扉6aの開状態の検出を行う(S102)。
S102のステップで、野菜室扉6aの全開を確認した場合、第一の扉状態検知手段510による野菜室扉6aの開状態(すなわち、閉鎖状態でない状態)の検出、及び第二の扉状態検知手段520による野菜室扉6aの半開(第二の扉状態検知手段520による閉状態の検知)の検出を行う(S104)。すなわち、野菜室扉6aが全開から半開(半ドア)に移行したことを確認する。
そして、全開から半開(半ドア状態)に移行すると、半ドア状態監視タイマT1をスタートする(S105)。半ドア状態監視タイマT1が終了するまで半ドア状態が継続した場合(S106、S107)、すなわちモータ通電閉動作開始条件が成立した時点で報知手段70を鳴動させて(S108)、所定時間、例えば1秒間待機する(S109)。
S109のステップで所定時間待機した後、前述の図13の(S058)から(S062)に示すのと同じモータ24による閉動作を行う(S110)。このため、使用者がT1時間中に扉を半開の範囲から動かさなかった場合でも、野菜室扉6aが半ドア状態で放置されるのを防止できる。
以上のように構成されているので、本実施例によれば、冷蔵庫の引き出し扉の開き力を低減して軽快に扉を開放することを可能とできる。また、半ドア状態から自動的に扉を閉鎖して省エネ効果を向上させることができる冷蔵庫を提供できる。
また、扉の開閉を行う扉駆動装置500を有し、該扉駆動装置500の連結部材700に設けられたそれぞれの押し面731−738(開扉部や閉扉部)は、引き出し扉の正面からみて、高さ位置が補強部材410と、少なくとも一部重複する位置する。これにより、庫内に設置した貯蔵食品用収納容器の収納深さが減少する程度の少ない冷蔵庫を提供できる。
また、手動で開閉する場合、本実施例による扉駆動装置500は冷蔵庫本体1に設けられた駆動機構600と、引き出し扉側に設けられた連結部材700とは接触しないので、引き出し扉の開閉の際にユーザによる手動動作を妨げたり、開閉動作が重くなったり、などの現象が生じないので使い勝手がよい。
また、扉の閉鎖状態を検知する第一の扉状態検知手段510と、扉駆動装置500で扉を閉動作可能な範囲内に設置した扉の半ドア状態を検知する第二の扉状態検知手段520と、を備える。第一の扉状態検知手段510と第二の状態検知手段520とが、ともに開状態であることを検知した後、所定時間が経過してから扉駆動装置500によって扉を閉動作する使い勝手がよい。また、扉の半ドア状態が所定時間継続している間に手動で扉を閉じることができるため、扉を手動で閉じている途中で駆動手段に引っ張られることもなく、自然に閉じることができる。万一、扉が完全に閉鎖されていなかった場合でも、扉駆動装置により確実に扉を閉鎖することができる。
また、ブザー等の報知手段による報知後、一定時間経過後に扉を閉駆動するため、使用者が閉動作開始時期を知ることができ、安全に操作できる。
(電圧の掛け方)ここで、モータに通電(S005)させて野菜室6を開き始める際の電圧の掛け方について、図16を用いて説明する。モータを通電する際に定格電圧を急峻に加えると、モータのコイルには突入電流が流れ、モータは最大の出力トルクを出して停止状態から急激に回転し始める。そのため、駆動伝達部材640の第一の押し部661が、連結部材700の第一の押し面731に当接する際に振動が起こる。したがって、野菜室6が開き始める際には最大の加速を行うことになり、開き始めの動作が急峻で勢いよく開く。そこで、図16のようにモータ24に通電(S005)する際に定格電圧を急峻に加えるのではなく、通電の当初は、たとえば定格電圧の1/2程度の低電圧を加え、駆動伝達部材640の第一の押し部661が連結部材700の第一の受け面731を押し出すまで(図16の(1)−(2)の時間)、つまり、扉駆動機構600が駆動を開始して後、野菜室6が開くとともに、徐々に電圧を高くする。図8に示した開き動作においては(c)ないし(d)の状態となって、駆動伝達部材640から連結部材700の扉開部に伝達される開き方向23への速度が最適な速度になるように、連続的に、あるいは断続的に電圧を上昇させて設定電圧にいたるような電圧を変化させる通電を行うことが望ましい。図16において(2)は、図8(b)の状態を示す。つまり、駆動伝達部材の第一の押し部が連結部材の第一の受け面に当接した状態を示す。そのように電圧を徐々に増加させることにより、野菜室6が開きはじめる際の動作がゆっくりとなるので、勢い良く開くことがなく、ごく自然な開き動作を実現できる。
またさらに、図8(f)の状態を過ぎた後、駆動伝達部材640は矢印CCW方向に回転を継続して後、図8(a)に示した位置まで回転してから停止するのであるが、野菜室6が開いた後は駆動伝達部材640には負荷がかからずに空転する状態となる。つまり、図8(f)の状態を過ぎると、モータの負荷トルクは高負荷状態から低負荷状態に変わるため、駆動源であるモータ24の回転数が急激に上昇してしまう状態となる。したがって、モータ24から生じる騒音や振動も大きくなる。そこで、図8(f)の状態を過ぎる前にモータ24に加える電圧を定格電圧よりも低くしてモータ24の回転速度を低速とするとよい。もしくは、図8(f)の状態を過ぎる前にモータ24の端子間を短絡する制御を制御手段51で行い、モータ24の惰性回転を防止する為にモータ24を一時的に強制停止状態とした後、モータ24に加える電圧を定格電圧よりも低くしてモータ24の回転速度を低速とするとよい。つまり、図16を用いて説明すると、(5)は駆動伝達部材および連結部材の関係が図8(e)の状態を示す。この時点で減速制御を行うことにより、高負荷状態から低負荷状態に変わる際に起こるモータ24の回転数の増加を防止することができる。そのようにモータ24の回転を低速とすることで、モータ24から生じる騒音や振動を低減して静粛な動作を実現できる。さらに、後述するように食品負荷量検出制御を行うことによって、モータが駆動してから停止するまでのトータル時間(図17のt1+t2+t3+t4)の変動が小さくなる為、前記減速制御によるモータ24から生じる騒音や振動を低減して静粛な動作が可能となる。さらに、駆動伝達部材640を原点位置40に確実に停止させたいのであるが、低速で回転させることによってモータ24が停止時に行き過ぎることがないので停止精度が向上して好適である。
(食品負荷量検出制御)次に、図16を用いて、収納した食品の負荷の検出制御について説明する。野菜室扉6aを電動で開放した際のモータ電流特性図を、図16に示す。図16における第一の負荷電流(1)は、モータ24が駆動した際の始動電流である。第二の負荷電流(2)は、駆動伝達部材640の第一の押し部661が連結部材700の開扉部730の第一の押し面731とが接触した際(図8の(b)の状態)に流れるモータ電流である。第三の負荷電流(3)は、駆動伝達部材640の第二の押し部662が連結部材700の開扉部730の第二の押し面732とが接触した際(図8の(c)の状態)に流れるモータ電流である。
第二の負荷電流(2)および第三の負荷電流(3)は、野菜室6内に収納された食品の量によって変化する。つまり、食品負荷量が少なければ、モータ電流値は小さくなり、食品負荷量が多ければモータ電流値は大きくなる。これは、食品負荷量により野菜室扉6aを引き出す際の力が変わるためである。つまり、扉駆動装置500が野菜室扉6aを押し出す際に必要となるトルクが変化するためである。そこで、第二の負荷電流(2)が流れているときに、所定時間の平均電流を検出する。これにより、食品の負荷量を検出することが可能である。なお、第二の負荷電流(2)は、マグネットパッキンを引き剥がす力に対する負荷電流も含まれる。そのため、マグネットパッキンの着磁力によるばらつきが大きい場合、第二の負荷電流(2)および第三の負荷電流(3)の一定時間、或いは第三の負荷電流(3)の一定時間の平均電流を検出することが望ましい。このような制御を用いることにより、食品負荷量の検出が可能となる。
次に図16,図17および図18を用いて、冷凍室5および野菜室6の食品負荷量の検出によるモータ通電制御について説明する。図17は、本実施例におけるモータ印加電圧と電流検出判定値の関係図である。図18は、本実施例において負荷検出制御を行った際の動作フロー図である。
モータを通電すると(図16の(1)の状態)、CCW方向にモータの回転が始まり、それと同時にタイマカウントを行う。t1カウント後(図16の(2)および図18のS150の状態)(S150)、電流検出値をt2カウントの間積算して、平均電流検出値(I)を算出する(図18のS151)(S151)。算出した平均電流検出値に応じてモータへの通電率を可変する(S153)。つまり、図17のように平均電流検出値が(A)の場合、モータへの通電率は(B)となる。平均電流検出値が(A)よりも大きい(C)の場合は、モータへの通電率は(B)よりも大きく、(D)とする。通電率切り替えのタイミングは、t2カウント後にt3カウント(図16の(3)の状態)を消化後(S152)、モータの通電率を切り替える(図16の(4)および図18のS153)。つまり、(式6)で述べたように、移動量33時点での速度Vを加減速する。この制御を用いることにより、食品負荷量の差による引き出し開き量のばらつきを低減することが可能となる。しかしながら、本制御を行った場合、引き出し扉が開く範囲に、開き動作を阻害するような物体があったとき、その物体に引き出し扉が当接する。これにより、引き出し扉が扉駆動装置500によって開こうとする動作を妨げてしまい、これが引き出し容器内に収納されている食品の負荷重量が多いと判断されて、結果、モータを加速させてしまう。そこで、図19に示すように、検出電流値(G)から(H)の検出範囲内となるように、検出電流設定値を設定し、検出電流値(J)以上が検出された場合には、モータを停止させる。もしくは、モータに掛かる電圧を低下させることにより、さらなる安全性の確保を可能とする。
以上のように、本実施例によれば、冷蔵庫の引き出し扉の開き力を低減して軽快に扉を開放することを可能とするとともに、野菜室6及び冷凍室5内に収納される食品の量に関係なく、引き出し扉の開き量のばらつきを低減し、使い勝手の向上を図ることが出来る、という効果がある。
すなわち、野菜室6を閉鎖状態から開き始める際には駆動軸620のもっとも近傍に配置された駆動伝達部材640の第一の押し部661が連結部材700の第一の押し面731を押し出して駆動することで、低速であるが大きな力を出してマグネットパッキンを引き剥がし、引き続き第一の押し部661よりも遠方に設けられた第二の押し部662が連結部材700の第二の押し面732を押し出して第一の押し部661よりも速い速度で第一の押し部661よりも小さい力を出して駆動することで引き込み位置の引込力に抗して開き動作を継続して野菜室6を加速し、さらに引き続いて第二の押し部662よりも駆動軸620から遠方に設けられた第三の押し部663が連結部材700の第三の押し面733を押し出して、力は第二の押し部662よりも小さいが第三の押し部663よりも高速で駆動することによって野菜室6をさらに加速することができるので、野菜室6の開き動作を確実に行うのに都合が良く、確実に開き動作を行うことができる、という効果がある。
さらに、野菜室6内に収納される食品の量が多く、野菜室6に掛かる重量が大きい状態になったとしても、駆動伝達部材640の第一の押し部661もしくは第二の押し部662が連結部材700の第一の押し面731もしくは第二の押し面732に当接した際の検出電流値によりモータに掛かる負荷量を検出し、第三の押し部663以降のモータの電圧を大きくする(電圧の通電率を長くする)ことで駆動伝達部材640の回転速度を早くすることで、駆動伝達部材640が連結部材700を最後に押し出す際の速度を一定にしようとするので引き出し扉の開き量のばらつきは低減される。つまり、野菜室6内に収納される食品の量による引き出し開き量のばらつきを低減することができるので、更なる使い勝手の向上が得られる。
手動で開閉する場合には、本実施例による扉駆動装置500は冷蔵庫本体に設けられた駆動機構600と、引き出し扉と一体に設けられた連結部材700とは接触しないので、引き出しの開閉の際にユーザによる手動動作を妨げたり、開閉動作が重くなったりする、などの現象が生じないので使い勝手がよい。
また、外力からの扉開閉装置の保護装置を有しつつ、扉を開放動作する場合に物の衝突を確実に検出でき安全性が高い、という効果がある。
なお、本実施例においては扉駆動装置500が冷凍室5ないし野菜室6の引き出し扉に設けられている例を示したが、本実施例に限定されるものではなく冷蔵室扉2の回転式の扉に設けられるものであっても同様な効果が得られることは言うまでもない。
また、本実施例においては冷蔵庫に扉駆動装置500を備えた構成について説明したが、冷蔵庫に限定されるものではなく、例えば文書類を保管するファイルキャビネット、手前に引き出して使用する流し台組み込み型の食器洗い乾燥機、引き出し扉を有する収納部を備えたシステムキッチンなど、引き出し式の機器全般に適用でき、その場合にも本発明にて説明したと同様な効果があることば明らかである。