本発明の実施形態に係る冷蔵庫について、以下図面に基づいて説明する。
「冷蔵庫の全体構成」
図1は本発明の実施形態に係る冷蔵庫の斜視図であり、図2はその縦断面図である。図1および図2において、冷蔵庫本体1は複数の収納室に分割されており、最上部は冷蔵室2となっていてその扉は一例としては左右両側に開く所謂フレンチドアとなっている。冷蔵室2の下側は左右に分割された収納室となっており、例えばその一方は機能切り替え室3となっており、もう一方は図示しない自動製氷装置によって製作された氷を蓄積して取り出す製氷室4となっている。
さらにその下部は手前に引き出して開放可能な引き出し扉を備えた冷凍室5となっており、最下段も引き出し扉を備えた野菜室6となっている構成である。
冷蔵室2の扉には操作表示部7が備えられており、冷凍室5の開スイッチ8aと野菜室6の開スイッチ8bとが備えられており、ユーザがスイッチ8a,8bを押して引き出しの開動作を指示することができる構成である。ここで、冷凍室5が野菜室6より上方に設けられている場合には、冷凍室の開スイッチ8aを野菜室の開スイッチ8bの上方に設け、扉の位置関係と同様に設けておけば、ユーザが操作する際にどちらの開スイッチ8を操作すればよいかがわかり易いので好適である。
「扉駆動装置の構成」
以下、冷凍室5を例に扉駆動装置について説明する。冷凍室5の扉体5a、食品を収納する容器12、はスライドレール11によって手前に引き出し自在に支持されている。スライドレール11の奥側には冷凍室5を閉鎖方向に引き込む閉じ付勢手段であるクローザ13が設けられており、クローザ13は一旦開いた冷凍室5を閉じる際に、開き量が例えば50mm以下になったら図示しないばねの力によって奥側に引き込む力を与え、冷凍室5を閉じる動作を補助して冷凍室5の全周に設けられたマグネットパッキン14が冷蔵庫本体1と吸着するまで扉を閉じる。
冷凍室5の内部には扉駆動装置10が設けられている。扉駆動装置10は、冷蔵庫本体1側に固定して設けられた、駆動源であるモータとモータの回転を減速する減速機構とを備えた駆動機構15と、冷凍室5の扉体5aとともに開閉され、本実施形態では容器12の奥側下面に設けられた連結部材である連結板16を備えており、駆動機構15から連結板16に対してスライドレール11の移動方向に力を加えて冷凍室5を開閉する構成である。駆動機構15と連結板16の詳細な構成と機能については後述する。冷凍室5の正面側にはドア検知部17が設けられており、冷凍室5が閉じられていること、あるいは冷凍室5の開き量が例えば30mm程度の所定量(後述する、図7(a)に示す閉じ駆動量である開き量35)以内であるか否かを検出して、後述する制御回路にその信号を送る。
「3段加速リンクの構成」
次に、駆動機構15と連結板16とを備えた扉駆動装置10の構成について、図3から図5を用いて詳細に説明する。ここで、扉駆動装置10は冷凍室5に設けられているものとして以下、説明する。図3は駆動機構15と連結板16とを備えた扉駆動装置10を図2の上方からみた平面図である。図4と図5は駆動機構15の内部構成の一例を示す斜視図である。
駆動機構15においては、回転出力軸である駆動軸18の周りに回転自在に回転駆動体である回転板19が軸支されており、回転板19には駆動伝達部材である駆動ピン20が備えられている。本実施形態においては駆動ピン20は3本設けられており、駆動軸18からの距離に応じて距離r1に第一の駆動ピン20a、距離r2に第二の駆動ピン20b、距離r3に第三の駆動ピン20cが設けられており、それぞれの駆動ピン20は円筒形状をなし、かつ駆動ピン20の中心軸は駆動軸18の回転中心軸と平行となっている。ここで、r1<r2<r3であるとする。本実施形態においては回転板19は、冷凍室5を開放する際には矢印CCW方向に回転する。
連結板16は先に述べたように冷凍室5の引き出し扉に設けられているので、スライドレール11に沿って矢印23方向に移動自在である。図3においては、図示左方向が冷蔵庫の正面側としており、連結板16が左方向に移動することで冷凍室5は開く。
連結板16には、冷凍室5を開放する際に第一の駆動ピン20aが接する第一の受け面21a、第二の駆動ピン20bが接する第二の受け面21b、第三の駆動ピン20cが接する第三の受け面21c、とが備えられている。駆動ピン20と受け面21との動作時の詳細な説明は後述する。
図4および図5において、モータ24の回転軸にはモータピニオン25が設けられており、アイドラ26と噛み合って減速される。アイドラ26とアイドラピニオン27とは一体として回転し、アイドラピニオン27はアイドラ28と噛み合っている。アイドラ28とアイドラピニオン29と一体として回転し、アイドラピニオン29は駆動ギヤ30と噛み合って減速される。駆動軸18と駆動ギヤ30とは連結されており、このようなギヤの構成によりモータ24の回転速度は例えば1/100程度に減速され、駆動軸18に設けられた回転板19を回転させる。
本実施形態においては、アイドラ28とアイドラピニオン29との間にはトルク制限手段31を設け、回転板19に過大な外力が加えられた場合にはトルク制限手段31が介在してアイドラ28とアイドラピニオン29とが互いにすべることで、駆動機構15の破損を防止できる。また、駆動軸18には回転検知手段32を設けて駆動軸18の回転位置を検出できる構成としている。このような回転検知手段32の一例は、軸の回転によってその抵抗値が変化する可変抵抗器である。
「開き動作」
次に、本実施形態による扉駆動装置10により冷凍室扉5を開く際の動作の詳細について図6を用いて説明する。図6は本実施形態による扉駆動装置10が冷凍室5を開放する際の動作を示す図であり、(a)が図3と同様に冷凍室5が閉じられている状態を示しており、(b)(c)(d)(e)の順に動作することで冷凍室5を開放する動作を示している。回転板19は駆動軸18のまわりに回転自在であり、連結板16は図示左右方向に移動自在に支持されており、かつ連結板16は冷凍室5に備えられているので、連結板16の左方向への動きが冷凍室5の開き動作を示している。ここで、冷凍室5が閉じられている状態における連結板16の図示左端の位置を示す基準線を引き込み位置34として表す。
(b)の状態において、回転板19は矢印CCW方向に回転し、第一の駆動ピン20aが第一の受け面21aと接し、連結板16に対して矢印23a方向の力を生じる。このとき、第一の駆動ピン20aは駆動軸18から図3に示した距離r1の位置にあるので、第一の駆動ピン20aから連結板16に伝えられる力は、駆動軸18に加わるトルクをTとすれば、T/r1となる。この力を、冷凍室5のマグネットパッキンを引き剥がす力と、クローザ13による引込力と、冷凍室5の自重および収納された食品の質量を加速する力の合力よりも大なるように設定することで、マグネットパッキンの吸着を引き剥がして、連結板16は冷凍室5とともに図示左方向に移動して、冷凍室5は開き始める。
さらに回転板19がCCW方向に回転した(c)の状態においては、第二の駆動ピン20bが第二の受け面21bと接し、第一の駆動ピン20aは第一の受け面21aからは離反する。すなわち、第二の駆動ピン20bは駆動軸18から図3に示した距離r2の位置にあり、かつr2>r1となるようにしていて第一の駆動ピン20aよりも第二の駆動ピン20bの方が回転中心である駆動軸18からの距離が離れているので回転の周速が速い。そのため、第二の駆動ピン20bが第二の受け面21bと当接した後は、第一の駆動ピン20aは第一の受け面21aからは離反するのである。
この状態において、第二の駆動ピン20bは第二の受け面21bに接して、矢印23bの力を与える。このとき、第二の駆動ピン20bは駆動軸18から図3に示した距離r2の位置にあるので、第二の駆動ピン20bから第二の受け面21bを介して連結板16に伝えられる力は、駆動軸18に加わるトルクをTとすれば、T/r2となる。この力は図6(b)の状態で矢印23aの方向に第一の駆動ピン20aにより連結板16に加わる力よりも小なのであるが、マグネットパッキンは既に引き剥がされているので、このときに加わる力はクローザ13による引込力と、冷凍室5の自重および収納された食品の質量をさらに加速する力の合力よりも大なるように設定すればよく、連結板16は冷凍室5とともにさらに図示左方向に移動して、冷凍室5の開き動作を継続する。
さらに回転板19がCCW方向に回転した(d)の状態においては、第三の駆動ピン20cが第三の受け面21cと接し、第二の駆動ピン20bは第二の受け面21bからは離反する。すなわち、第三の駆動ピン20cは駆動軸18から図3に示した距離r3の位置にあり、かつr3>r2となるようにしていて第二の駆動ピン20bよりも第三の駆動ピン20cの方が回転中心である駆動軸18からの距離が離れているので回転の周速が速い。そのため、第三の駆動ピン20cが第三の受け面21cと当接した後は、第二の駆動ピン20bは第二の受け面21bからは離反するのである。
この状態において、第三の駆動ピン20cは第三の受け面21cに接して、矢印23cの力を与える。このとき、第三の駆動ピン20cは駆動軸18から図3に示した距離r3の位置にあるので、第三の駆動ピン20cから第三の受け面21cを介して連結板16に伝えられる力は、駆動軸18に加わるトルクをTとすれば、T/r3となる。この力は図6(c)の状態で矢印23bの方向に第二の駆動ピン20bにより連結板16に加わる力よりもさらに小なのであるが、冷凍室5は既に開き動作を行っていて矢印23cの方向に移動しているので、冷凍室5は容器と収納された食品も含めた自重と速度に応じた運動量をもっており、その運動量と第三の駆動ピン20cから連結板16の第三の受け面21cに伝達される力とによってクローザ13による引っ張り力に抗して開き動作をさらに継続することができる。
さらに回転板19がCCW方向に回転した(e)の状態においては、第三の駆動ピン20cは第三の受け面21cからほぼ離反する状態を示している。図6(a)の状態から図6(e)の状態に至るまでの連結板16の移動量33の範囲が、連結板16が駆動ピン20から力を受ける範囲である開き駆動範囲、ということになる。ここで、この連結板16の移動量33はクローザ13による引込量である閉じ付勢範囲よりも大なるように設定すると好適である。
すなわち、閉じ付勢範囲であるクローザによる引き込みストロークが例えば20mmであって連結板16の移動量33が50mmであるとすれば、図6(e)に示した位置で連結板16が停止、すなわち冷凍室5が停止したとしても、クローザ13によって開いたばかりの冷凍室5が閉じられることがないためである。ただし、図6(e)の状態よりも冷凍室5が開放されて連結板16が図示左方に移動すると、連結板16は駆動ピン20からの駆動力は受けないのであるが、冷凍室5は矢印23d方向への速度を持っているので、スライドレール11のもつ摩擦負荷によって徐々に減速して停止するまでは、開き動作を継続する。このように動作するので、冷凍室5の開き量は連結板16の移動量33よりも大きくなる。
上述したように、冷凍室5の開き動作時には開き方向への駆動力を加え続けるのではなく、開き始めの短い範囲だけ駆動力を加え、その後は駆動力の範囲で得た移動速度がスライドレールのもつ摩擦力によって徐々に減速しながら停止する動作を実現できるので、扉の直前にユーザが立っていた場合、あるいは物が置いてあった場合に、冷凍室5が当たったとしても開き方向への駆動力が加わっていないので安全である。
以上説明したように、冷凍室5を閉鎖状態から開き始める際には駆動軸18のもっとも近傍に配置された第一の駆動ピン20aが連結板16を押し出して駆動することで、低速であるが大きな力を出してマグネットパッキンを引き剥がし、引き続き第一の駆動ピン20aよりも遠方に設けられた第二の駆動ピン20bが連結板16を押し出して中程度の速度で中程度の力を出して駆動することでクローザ13の引込力に抗して開き動作を継続して冷凍室5を加速し、さらに引き続いて第二の駆動ピン20bよりも駆動軸18から遠方に設けられた第三の駆動ピン20cが連結板16を押し出して、力は小さいが高速で駆動することによって冷凍室5をさらに加速することができるので、冷凍室5の開き動作を確実に行うのに都合が良い。
本実施形態の構成においては、駆動ピン20が連結板16と接して駆動力を与える位置は、駆動軸18からみて、冷凍室5の開き方向23に対して略直角方向にあるので、駆動ピン20の開き方向23の速度は回転板19の回転速度と駆動ピン20までの腕の長さに比例する。このことにより、従来技術において回転するカムを用いてカムと扉部との接点までの半径の変化分のみ扉を押し出す構成と比べて、扉を押し出す速度を高速化することが容易である。そのような構成なので、開き始めの短い範囲だけ駆動力を加え、その後は駆動力の範囲で得た開き速度がスライドレールのもつ摩擦力によって徐々に減速しながら停止する動作を実現することができるので好適である。
上記の動作により冷凍室5が開放された後、回転板19はさらにCCW方向への回転を継続し、図6(a)の状態に至って回転を停止する。なお、言うまでも無くこの際には連結板16は図6(a)に示す位置ではなく、冷凍室5は開いているので図示左方に移動した状態である。
上記説明したように本実施形態による扉駆動装置においては、回転板19は冷凍室5の開き動作を行った後に、同一方向への回転を継続して一回転すれば冷凍室5を閉じた際の状態、すなわち図8にて説明した原点範囲に戻ることができるので、原点範囲に復帰するのが高速で都合がよい。仮に回転板19が一方向への回転ではなくて冷凍室5の開き動作を行ったのちに一端停止してから逆方向に回転してから原点範囲に復帰する構成であるとすれば、本実施形態のように一方向への回転と比べれば原点範囲に戻るまでの時間が余計にかかることは明らかである。
「開き量の計算」
本実施形態の扉開閉機構により、冷凍室5の扉を開く際の開き量について説明する。図18は冷凍室5を開放する際の冷凍室の速度と開き量との関係について説明する図である。
図6にて説明した冷凍室5の開き動作により、図18に図示する移動量33の範囲において冷凍室5は扉駆動装置10によって駆動ピン20から押し面21を介して開き方向の力を与えられて開かれる。ここで、冷凍室5は移動量33だけ開いた時点(5’)では速度Vをもっているので惰性によって開き続けて、さらに惰性開き量74の間は駆動力なく徐々に減速して最終的に最大開き量73の位置(5”)まで開いて停止する。
ここで、収容された食品を含めた冷凍室5の全体の質量をmとすれば、移動量33の位置における運動エネルギEは
E=(m×V2)/2 (式1)
である。
ここで、スライドレール11のもつ摩擦係数をμ、重力加速度をgとすれば、スライドレール11により生じる摩擦力Fは
F=μ×m×g (式2)
となる。摩擦力により消費されるエネルギE2は摩擦力Fと摩擦を受けながら移動した距離Lすなわち惰性開き量74との積に当たるので、
E2=L×F=L×μ×m×g (式3)
ここで、元々冷凍室が持っていた運動エネルギが、停止するまでにすべて摩擦によって消費されたとすればE=E2だから、
(m×V2)/2=L×μ×m×g (式4)
両辺をmで割って
(V2)/2=L×μ×g (式5)
ゆえに、惰性開き量74(すなわちL)は(式5)を変形して
L=(V2)/(2×μ×g) (式6)
として表される。すなわち式6により、惰性開き量74(すなわちL)は冷凍室5の質量mには無関係であり、スライドレールの摩擦係数μと移動量33時点での速度V、すなわち駆動ピン20と押し面21とが離反して、回転板19から連結板16に伝達される開き方向の駆動力がなくなって惰性で開き始める時点での速度のみに依存することがわかる。
ここで、冷凍室5の質量mはもちろん収納された食品の量によって異なるが、一方冷凍室を電動で開く場合の冷凍室5の最大開き量73は食品の量によらず概ね一定であることが望ましい。すなわち、スライドレール11の摩擦抵抗μはスライドレール11によって定まる一定値なので、最大開き量73を概ね一定とするには速度Vの食品の量による変動を少なくすることが望ましい、ということである。そこで、駆動機構15の減速比を十分に大きくして、モータ24にかかる負荷トルクの変動を小さくして回転速度の変動を小さくする構成が望ましく、例えば減速比を1/100以上にすることが望ましい。減速比を大きくすることによって、モータ24による出力トルクに余裕が増えるので、食品の量の多少によるモータ24の回転速度の変動を少なくすることができ、食品の量の多少による最大開き量73の変動を小さくできるので好適である。
「カム構成との対比」
冷凍室5が移動量33だけ開いて惰性により移動する際の速度Vは、図6(d)により説明したように、第三の駆動ピン20cが開き方向23cの方向に移動する速度なので、回転板19の回転速度に比例し、かつ第三の駆動ピン21cと第三の押し面21cとの接点75cと駆動軸18の回転中心との距離である回転半径rとに比例する。ここで、図6(c)から図6(d)にて示すように、接点75c(図6(e)においては75d)の位置は、回転中心である駆動軸18を基準にしたときに開き方向23に対してはほぼ直交している方向である、図示上方に位置するために、連結板16が開き方向23へ移動する速度は第三の駆動ピン20cが駆動軸18のまわりに回転する際の円周方向への速度である周速に略等しくなる。
次に、上記にて説明した本実施形態に関する構成と比較するために、従来から知られているカムを用いた構成における開き速度について、図13を用いて説明する。図13において、カム76は回転中心77のまわりに回転方向80の方向に回動自在に軸支されており、外周78が偏芯した平板形状となっている。カム76の外周78に接してカム受け板79が設けられており、カム受け板79は冷凍室5に設けられていてカム76が回転方向80に回転することによってカム受け板79が矢印81方向に押されて移動するので、冷凍室5がカム受け板79とともに図示左方に開く。
このとき、カム76が破線で示した76’の位置のとき、カム受け板79’とは接点86で接している。このときの接点86の周速を矢印83で表すと、カム受け板79’が図示左側である開き方向に移動する速度は周速の矢印83の開き方向への投影成分である矢印84の分だけであり、開き方向と直交した方向への投影成分である矢印85の分はカム76とカム板79とは滑りを生じる。このように、カムを用いた構成の場合の開き方向への速度はカム76が回転することによって生じるカム76とカム受け板79との接点の半径の変化分に過ぎないので、カム受け板79の受ける速度はカム76の周速に比して小さいものにすぎず、かつカム76とカム受け板79との間には滑りが生じるので、カム76やカム受け板79の磨耗や擦れ音の問題が生じ易い。
さらに、図13に示したカムを用いた構成においては、扉を左方に押し出すだけの機能であって、扉を閉じる機能はない。
「閉じ動作」
冷凍室5を閉じた場合に、何らかの理由でマグネットパッキン14が吸着されるまで冷凍室5が閉じずに、マグネットパッキン14と冷蔵庫本体1との間に隙間ができる、所謂半ドア状態になることがある。このように半ドア状態になった際の扉駆動装置10の動作について、図7を用いて説明する。
図7は本実施形態による扉駆動装置10が冷凍室5を閉鎖する際の動作を示す図であり、(a)は冷凍室5が閉鎖されていなくて、連結板16の図示左端が引込位置34よりも、閉じ動作を行うことが可能となる閉じ駆動範囲である開き量35だけ移動した状態にあることを示している。冷凍室5にはクローザ13が設けられているものとすれば、通常はクローザ13の生じる引き込み力によって冷凍室は引き込まれて閉じられるのであるが、食品の一部が引っかかったり、何らかの理由でスライドレール11の動作が一時的に渋くなって(円滑でなくなって)引き込まれない場合が稀に生じる。
ここで、回転板19を駆動軸18の周りに矢印CW方向に回転すると、第三の駆動ピン20cが連結板16の受け面21とは対面となる図示左側の戻し面22に当接する。図7(b)は回転板19を矢印CW方向にさらに回転させた状態を示しているが、連結板16は第三の駆動ピン20cによって矢印36方向に押されて移動するので、連結板16の図示左端が引込位置34に至るまで移動する。この図7(b)に示した位置というのはマグネットパッキン14が冷蔵庫本体1に吸着するまで冷凍室5が完全に閉じられた位置にあることを示している。その後、回転板19をは矢印CCW方向に回転して図7(c)の状態となり、図3に示したと同様な位置まで回転させて停止する。
上記のように動作することにより、冷凍室5が完全には閉じずに所謂半ドア状態になっていたとしても、回転板19を冷凍室5を開く場合とは反対方向に回転させることによって、連結板16に対して冷凍室5を閉じる方向の力を加えて閉じることができるので、半ドアを防止することができるので好適である。
先に説明したように、冷凍室5を開く際の力はマグネットパッキン14を引き剥がす力とクローザ13による引き込み力との合計以上の力が必要となるが、閉じる際にはマグネットパッキン14を引き剥がす力は不用であり、さらにクローザ13による引き込み力が生じているので、本実施形態による扉駆動装置10によって加える閉じ力は、開き力と比べれば弱い力で十分である。本実施形態によれば、冷凍室5を閉じる際には最も駆動軸18から遠方にある第三の駆動ピン20cが連結板16の戻し面22を押す構成なので、駆動軸18に加わる駆動トルクが仮に開き時と同一であるとしても、閉じ力は開き力と比べてr1/r3だけ小さくなるので好適である。このことはさらに、万一冷凍室5と冷蔵庫本体1との間に指などを挟んだ場合においても、挟む力が小さいので安全性が高い。
さらに、閉じる速度を低速にしてゆっくりと閉じる動作を行った方が安全である。したがって冷凍室5を開く動作よりも閉じる動作を低速にすることが望ましい。
ここで、冷凍室5を閉じることが可能な開き量35である閉じ駆動範囲について図2により説明すると、開き量35は、冷凍室5の前面を形成する扉体5aの厚さである扉厚さ71よりも小とすることが望ましい。なぜならば、開き量35を扉厚さ71よりも大とすると冷凍室5を引き込み開始する際に冷凍室5と野菜室6または切り替え室3の扉の間に生じる扉間隙間72に指などを挟まれる恐れがあるが、開き量35が扉厚さ71よりも小となるようにすれば、指などを挟まれる恐れがないのでさらに安全性が高い。
「手動動作」)
次に、図8を用いて、冷凍室5が閉じられた状態にある際の回転板19の好適な位置について説明する。図8において、実線で図示する連結板16は図示左端が引き込み位置34に合致されており冷凍室5が閉鎖された位置にある。冷蔵庫においては、本実施形態のような扉駆動装置10が備えられているとしても、冷凍室5を何らかの理由でユーザが手で引き出す場合もある。または、故障によって扉駆動装置10が動作しない場合などにおいては、ユーザが手動で自在に開閉できることが望ましい。このように手動で開閉する場合には、扉駆動装置10は冷凍室5の開閉の際にユーザによる手動動作を妨げたり、動作が重くなる、などの現象が生じない構成であることが望ましい。
冷凍室5が閉じられた状態からユーザが手動で冷凍室5を引き出して開いたとすると、冷凍室5に設けられている連結板16が図示左側に移動して、破線の位置となる。破線の位置においては各符号には’を付加して記す。ここで、回転板19が図8の実線で示す位置にあり、その位置において連結板16に設けられた第二の受け面21bの先端である第二の先端37bと、第一の駆動ピン20aとの間に隙間38があって、連結板16が図示左方に移動する際に第二の先端37bと第一の駆動ピン20aとが接触しない位置関係にあれば、ユーザが手動で冷凍室5を引き出す際に連結板16と駆動ピン20とが接触しないので、自在に冷凍室5を引き出して開くことができる。
次に回転板19が破線の位置19’にあって、その位置において連結板16に設けられた第一の先端37aと第三の駆動ピン20cとの間に隙間39があって、連結板16が図示左方に移動する際に第一の先端37aと第三の駆動ピン20c’とが接触しない位置関係にあれば、ユーザが手動で冷凍室5を引き出す際に連結板16と駆動ピン20とが接触しないので、自在に冷凍室5を引き出して開くことができる。
上記で説明したように、ユーザが手動で冷凍室5を開閉する際に連結板16と駆動ピン20とが接触しないためには、駆動軸18と第一の駆動ピン20aとを結ぶ線が原点範囲40の角度範囲内にあればよい。したがって、冷凍室5を閉鎖した場合には、回転板19が上記の原点範囲40(上記の隙間38及び39が生じ得る駆動軸18と第一の駆動ピン20aとを結ぶ線の角度範囲)になるように設定することが望ましく、手動で開閉する際にも使い勝手がよい。このような回転板19の角度範囲を本実施形態では原点範囲にある、と称するものとする。
「制御系の構成」
次に、図9を用いて扉駆動装置10を制御するための制御系の構成について説明する。図9は、制御系の構成を示すブロック図である。開スイッチ8を備えた操作表示部7(図1参照)は、ユーザが開スイッチ8を押した際にその信号を制御基板41に送る。冷凍室5および野菜室6に設けられた駆動機構15(図2、図4、図5参照)のそれぞれのモータ24と、駆動軸18の回転位置を検出する回転検知手段32、および扉の開閉状態を検出するドア検知部17とは制御基板41に接続されている。92は冷凍室5の扉体5aないし野菜室6の扉体6aに設けられたユーザによって操作される開スイッチ88のスイッチ本体92を示していてその詳細は図20で後述するが、この冷凍室5や野菜室6に設けたスイッチ88は、図1に示す冷蔵室2の開スイッチ8とは選択的に設置されてもよく、また、使い勝手を考慮して両方のスイッチを設置しても良い。
扉駆動装置10および制御回路41の駆動に必要な電力は、電源42から供給される。回転検知手段32(図5参照)は一例としては軸の回転によってその抵抗値が変化する可変抵抗器であり、あるいは軸の所定の回転位置を検出するマイクロスイッチなどの検知手段であってもよい。ドア検知部17は冷凍室5の扉が完全に閉じられているか否かを検出する第一のドア検知部17aと、冷凍室5扉の開き量が所定の開き量35(図7参照)以下であるか否かを検出する第二のドア検知部17bとを備えており、例えば扉に備えられたマグネットと冷蔵庫本体1に備えられたホール素子であってもよく、あるいはマイクロスイッチなどの検知手段であってもよい。
操作表示部7には扉が半ドア状態になっていることをユーザに知らせるための報知手段70が備えられていてもよい。この報知手段70の一例は、ブザーを鳴動させるかランプを点灯ないし点滅させる。
「開き制御」
図10を用いて、冷凍室5を開放する際の開き制御の手順について説明する。図10は冷凍室5を開放する際の開き制御の手順を示す流れ図である。
開き動作を開始(ブロック43)すると、制御回路41は回転検知手段32の状態を監視して、駆動機構15の回転板19が動作を開始する原点範囲40にあるか否かを検出する(ブロック44)。ここで、原点範囲40とは、図8にて説明したように、冷凍室5を手動で開閉動作した場合にも、連結板16が駆動ピン20と干渉することがない範囲にある状態のことを言う。
もし、回転板19が原点範囲40にない場合には、モータ24に通電(ブロック45)して、回転板19を回転させて原点範囲40になるようにする。モータ24をCW方向に回転させるか、あるいはCCW方向に回転させるかの判定は、回転検知手段32からの信号によって回転板19が原点範囲40に対してどちらの方向にずれているか、を制御回路41が判定してモータ24に対して駆動電圧の印加方向を定める。
回転板19が原点範囲40にあることが検出できており、かつユーザによって開スイッチ8が操作されたことを制御回路41が検出したらモータ24を通電(ブロック47)して、回転板19を回転させる。このときの回転板19の回転方向は、図3であれば矢印CCW方向としており、回転板19が回転すれば図6にて説明したように連結板16が駆動ピン20によって押されて冷凍室5が開く。モータ24が引き続き回転して、回転検知手段32により検出された回転板19の回転位置が原点範囲40に入ったことが確認できたら(ブロック48)、モータを停止させて(ブロック49)、一連の開き動作を終了する(ブロック50)。
「電圧の掛け方」
ここで、モータに通電(ブロック47)させて冷凍室5を開き始める際の電圧の加え方について説明する。モータを通電する際に定格電圧を急峻に加えると、モータのコイルには突入電流が流れ、モータは最大の出力トルクを出して停止状態から急激に回転し始める。したがって、冷凍室5が開き始める際には最大の加速を行うことになり、開き始めの動作が急峻で勢いよく開く。
そこで、モータ24に通電(ブロック47)する際に定格電圧を急峻に加えるのではなく、通電の当初はたとえば定格電圧の1/2程度の低電圧を加え、扉駆動装置10が駆動を開始してのち冷凍室5が開くとともに徐々に電圧を高くして、図6に示した開き動作においては(c)ないし(d)の状態となって駆動ピン20から連結板16に伝達される開き方向23への速度が最大になるまでに、連続的に、あるいは断続的に電圧を上昇させて定格電圧にいたるような電圧を変化させる通電を行うことが望ましい。そのように電圧を徐々に増加させることにより、冷凍室5が開きはじめる際の動作がゆっくりとなるので、勢い良く開くことがなく、開き方に高級感を付与できる。
またさらに、図6(e)の状態を過ぎたのちは回転板19は矢印CCW方向に回転を継続して後、図6(a)に示した位置まで回転してから停止するのであるが、冷凍室5が開いた後は回転板19には負荷がかからずに空転する状態となる。したがって、図6(e)の状態を過ぎたのちはモータ24に加える電圧を定格電圧よりも低くしてモータ24の回転速度を低速としてもよい。そのようにモータ24の回転を低速とすることで、モータ24から生じる騒音や振動を低減して静粛な動作を実現できる、という効果がある。さらに、回転板19を図8にて説明した原点範囲40に確実に停止させたいのであるが、低速で回転させることによってモータ24が停止時に行き過ぎることがないので停止精度が向上して好適である。
「スイッチの構成」
次に、本実施形態による開閉機構に使用者が開き指示を与える際のスイッチの構成の一例について説明する。図19は本発明による扉開閉機構を備えた冷蔵庫の部分断面図であり、図20は図19に示したS部の拡大図を示している。S部は冷凍室5の前面を構成する扉体5aの上縁と、扉が閉じられた際に扉と当接する本体1側の枠体87の近傍を示している。
扉体5aの上端には押しボタン88が設けられており、扉体5aよりも突出している。押しボタン88の奥側には押し棒89が設けられており、押しボタン88と押し棒89とは扉体5aを貫通してスライド可能に支持されている。押しボタン88と押し棒89とは戻しスプリンク90によって生じる戻し力によって図20(a)において図示左向きの力を付与されて図示しないストッパなどによって位置を保持している。
枠体87の扉体5aと接する側にはたとえばマイクロスイッチなどのスイッチ本体92が設けられており、枠体87の内部をスイッチ本体92から制御回路41にいたる配線94が設けられている。
使用者が押しボタン88を手で押すと、図20(b)に示すように押しボタン88と押し棒89とを押し量91だけ図示右側に移動できる構成であり、押し棒89がスイッチ本体92に設けられたプランジャ93を押してスイッチ本体92内部に設けられた図示しない接点を閉じて、使用者が押しボタン88を押した信号を制御回路41に伝達することができる。使用者が押しボタン88から手を離すと、戻しスプリング90が発生する図示左方向の力によって押しボタン88と押し棒89とは図示左側に移動して、図20(a)に示した状態に復帰して、プランジャ93が復帰してスイッチ本体92内部の接点は開放された状態に戻る。
このような構成とすることにより、スイッチ本体92と、スイッチ本体92から制御回路41とを接続する配線は本体側の枠体87の内部にのみ設けられる構成とできるので、扉体5aには配線を設ける必要がない、という効果がある。
上記の本実施形態の構成と異なって、スイッチ本体92を扉体5aに設けたとすれば、配線94は扉体5aから本体1に引き回して制御回路41まで接続しなければならないが、扉体5aは引き出しとして開閉する構成なので、配線94は冷凍室5が閉じた際には冷凍室5の最大開きより大なる余長をもってたるんだ状態とする必要がある。この構成において、冷凍室5を引き出す際には上記のたるんだ配線94も一緒に引き出す必要があるが、開閉の際に配線94が絡まったり何かに引っかかったりする恐れがある。
またさらに、使用者からみると押しボタン88を押した際には冷凍室5を奥側に閉じる方向の力を加えることになる。使用者が押しボタン88を押した途端に制御回路41からモータ24に通電されて冷凍室5が電動で矢印23方向に開く動作であるとすれば、その途端に冷凍室5は使用者が力を加えているのと反対の方向、すなわち使用者の手前方向に開き始めるので、使用者にとっては不自然な動作と感じる。
一方、使用者が押しボタン88を押した時点ではモータ24(図4参照)には通電されず、一旦押した押しボタン88から手を離した際にモータ24に通電される動作とすれば、使用者が押しボタン88から手を離して手を手前に引く動作に付随して冷凍室5が手前に開いてくるので、使用者の手の動く方向と冷凍室5の動く(開く)方向とが同一なので、使用者から見て動作に対する違和感がなく、自然な操作感が得られる、という効果がある。
このような動作は、使用者が押しボタン88から手を離してスイッチ本体92内部の接点は開放された状態に戻ったことを制御回路41が検出したタイミングでモータ24に通電されて冷凍室5が電動で開く動作であるとすれば実現することができる。
「閉じ制御」
図11を用いて、冷凍室5が完全に閉じていない、所謂半ドア状態から冷凍室5を閉じる際の制御の手順について説明する。図11は冷凍室5を閉じる際の閉じ制御の手順を示す流れ図である。動作を開始(ブロック51)してから原点範囲を検出(ブロック52)するまでモータ24を通電する(ブロック53)までの動作については図10のブロック43からブロック45と同一である。
ドア検知部17の第一のドア検知部17aが冷凍室5の扉を検出していれば、冷凍室5は半ドア状態ではなくて閉鎖されていることが確認できるので、ドア閉じ動作を完了する(ブロック55)。第一のドア検知部17aがドアの閉鎖を検出できず、かつ第二のドア検知部17bがドアと冷蔵庫本体1との開き量が開き量35以下であることを検出したら、冷凍室5は開き量35以下で開いた状態にある。もし、第二のドア検知部17bが扉を検知できなければ、冷凍室5は開き量35以上に開いているので、本実施形態の扉駆動装置では閉じることができない。その場合は、報知手段70を鳴動させて半ドアであるというアラームをユーザに報知する(ブロック57)。
もし、第二のドア検知部17bが扉を検知できれば冷凍室5は半ドア状態であってかつ扉駆動装置10によって閉鎖することが可能な領域なので、モータ24に通電する(ブロック58)。このときの回転方向は、図7においてはCW方向である。さらに、この際にはモータ24に印加する電圧を例えば定格電圧の1/2ないし1/3程度と低くすることで、回転板19の回転速度を低下させると、回転板19が低速度でCW方向に回転するので、第三の駆動ピン20cが連結板16の第三の受け面21cに衝突する衝撃を生じないので好適である。
モータ24をCW方向に所定時間、例えば3秒間通電すれば(ブロック59)、回転板19は図7(b)の状態に至って連結板16を矢印36方向に、すなわち冷凍室5を閉じる方向に移動させて冷凍室5を閉じる。所定時間経過した後に今度はモータ24がCCW方向に回転するよう通電して(ブロック60)、図7(c)に示すように回転板19が原点範囲40(図8に示す)になるまで回転させ、回転検知手段32(図5、図8参照)の信号によって原点範囲40にあることが検出できたら(ブロック61)、モータ24の回転を停止させる(ブロック62)。ここで、第一のドア検知部17aが冷凍室5が閉鎖されていることを検出すれば(ブロック63)、冷凍室5は完全に閉鎖されたことが確認できたので、処理を終了する(ブロック66)。
もし、第一のドア検知ドア検知部17aが冷凍室5の閉鎖を検知できなければ、半ドア状態が継続していると判断できるので、ブロック58からブロック63までの処理、すなわちモータ24に通電して回転板19をCW方向に回転して冷凍室5を閉鎖させる動作を複数回繰り返して行う(ブロック64)。もし、所定の回数、例えば3回この閉鎖動作を繰り返した後も第一のドア検知17aの閉鎖を検知できなければ、例えば何かが挟まっていて冷凍室5を閉鎖できないと判定して、報知手段70を鳴動させて半ドアであるというアラームをユーザに報知する(ブロック65)。
またさらに、例えば子供がドア開スイッチ8を誤って押して冷凍室5が開いて子供の体に当たるなどの現象を防止するためには、図10にて説明した冷凍室5の開き動作を行わないように開スイッチの動作を無効にして、図11に示した閉じ動作のみを行うことをユーザが選択できるように設定可能な構成としても良い。
「4段構成でストローク拡大」
上記の説明は、回転板19に駆動ピン20が3本設けられた形態について説明したが、駆動ピン20は3本に限定されるものではないので図12において説明する。図12は回転板19に第四の駆動ピン20dを、駆動軸18から距離r4(>r3)なる位置に設けている。連結板16には、第四の駆動ピン20dが当接するための第四の受け面21dが設けられている。
冷凍室5を開く動作の際は、図6に示したと同様の動作を行い、さらに加えて第四の駆動ピン20dが第四の受け面21dを図示左方に押すので、連結板16が回転板19から力を受ける範囲が拡大する。また、r4>r3なので、駆動軸18の回転速度が一定であるとすれば第四の駆動ピン20dが第四の受け面21dを図示左方に押し出す速度は第四の駆動ピン20dがない場合と比べてr4/r3だけ大きくなる。以上説明したように、力の範囲と速度の両方が拡大されるので、冷凍室5を開放した際には冷凍室5の開き量は拡大して、ユーザからみると開スイッチ8を押した後の開き動作の反応が向上して快適な操作感を得ることかできる。
さらに、回転板19を矢印CW方向に回転して連結板16を図7にて説明したと同様に矢印36方向に移動して冷凍室5を閉鎖する際には、第四の駆動ピン20dが第四の受け面21dを押すのであるが、第四の駆動ピン21dは駆動軸18からの距離がr4と第三の駆動ピン21cよりも大なので、連結板16の開き量35をほぼr4/r3だけ大きくしても冷凍室5を閉鎖することができる。このようにすれば、半ドア状態から閉鎖できる開き量35を拡大できるので、半ドアが発生したとしても、より確実に冷凍室5を閉鎖でき、省エネを実現できるとともに収納された食品が外気の侵入によって劣化するのを防止できる。
「扉駆動装置の実装」
次に、図14〜図17を用いて、図12(4段構成のストロークを実施するもの)に示す扉駆動装置10を冷蔵庫に組み込む場合における回転駆動体及び連結部材の構成について以下説明する。なお、図12は本実施形態に関する扉駆動装置の動作を説明するための図であり、図14〜図17は実際の冷蔵庫に扉駆動装置を適用する場合における具体的構成を示す図である。図14〜図17は、図12のものと、図面で上下が逆になって図示されている。
図において、10は扉駆動装置、15は冷凍室底壁側に取り付けられる駆動機構、18は駆動軸、19は駆動軸18によって回動する回転板、この回転板19には図に示すごとく、4段構成でストロークを拡大する駆動伝達部材たる駆動ピン20(20a…第一の駆動ピン、20b…第二の駆動ピン、20c…第三の駆動ピン、20d…第四の駆動ピン)が設けられている。そして、この駆動ピン20a,20b,20c,20dと駆動軸18との間の距離は先に説明した通りである。
また、この駆動ピン20a,20dの高さ方向H寸法は図16に示すごとく駆動ピン20b,20cの高さ寸法より約2倍高く形成されている。言い換えると、駆動ピン20b,20cは駆動ピン20a,20dが当接する連結板16の受け面21b,21cには上記高さ方向の当接位置の違いで当接しない寸法とされている。
このことにより、回転板19と連結板16との間にもし異常が生じても、駆動ピン20bが受け面21aにかみ込み、回転板19と連結板16とがロックするのを防止するのものである。同様に駆動ピン20cが受け面21dにかみ込むのも上記高さ方向の当接位置の違いで防止されるものである。
95は回転板19に設けられた磁石であり、この磁石95は駆動軸18により回動する回転板19の原点位置出しを駆動機構15内に設置されている原点ホールIC102を伴って行うものである。図8に示す原点範囲40の例えば中点部を検出するものであり、図5に示す回転検知手段32と同様の機能を果たすものであって、この手段32に代えて適用されるものである。すなわち駆動軸18によって駆動される回転板19は回動後は先にも説明したように常に図15に示す位置で止め、例えば停電等があった場合でも連結板16に干渉されずに扉の開閉が手動でできるようにしておく。このために、磁石95の位置(図15に示す位置(原点範囲40(図8参照))で止めるようにしている。言い換えると、駆動軸18の停動が先の原点ホールIC102により制御されているものである。
また、回転板19をCCW方向に回転させた際に、原点範囲40に入る前で、しかもおよそ回転板19が連結板16から離れる位置(図6(e)参照)での磁石95を検出するために、駆動機構15内に終了ホールIC101を設置している。
ここで、扉体5aを開放動作させる場合、モータ24に定格電圧を印加して回転板19を原点範囲40からCCW方向に回転させ始め、磁石95の磁束を終了ホールIC101で検出したら(図6(e)の位置に対応して)、モータ24に印加する電圧を定格電圧よりも低い電圧にして回転板19の回転速度を遅くし、続いて磁石95の磁束を原点ホールIC102で検出したらモータ24への電圧印加を止め回転板19を停止させる(つまり原点範囲40内に回転板19が停止する)。
モータ24及び駆動ギヤ30は、容器12への食品収納量・重量が最大の時等、最大負荷の時でも十分扉体5aを開放できるだけのトルクが必要であり、それに合わせて定格電圧等を決めている。
このため、扉体5aの開放動作時、モータ24の印加電圧を定格電圧のみで回転板19を回転させると、終了ホールIC101の位置から原点ホールIC102の間は実質開放に必要な仕事が終わっているにもかかわらず、必要以上のパワーがモータ24及び駆動ギヤ30に掛かっていることになる。先にも説明したように、モータ24には駆動ギヤ30が多数組み合わされているため、モータ24の運転音はもちろん駆動ギヤ30の噛み合わせ時に発生する音は冷蔵庫の使用者においては気になるものである。しかも、終了ホールIC101の位置から原点ホールIC102の間では扉体5aは既に少し開いている状態であって音が聞こえ易くなっており、なおかつ冷凍室5などの貯蔵室が共鳴箱になり易く、その音は非常に気になるものである。
そこで上述の通り、終了ホールIC101の位置から原点ホールIC102の間でモータ24への印加電圧を低くすることで音を低減し、かつ印加電圧を低くしたことにより回転板19がゆっくり回転するため、原点ホールIC102での検出がしやすくなり確実に回転板19を原点範囲40内に停止させることが出来る。
96は駆動機構15を形成するベース板15aに設けられた案内ガイドである。この案内ガイド96は2つの突片96a,96bを併設して作られているもので、入り口側の開口が他に比較して図15のごとく広く形成されている。これは連結板16の摺動部16a(図17参照)が案内ガイド96に入り易いようにしたためである。
すなわち、連結板16は引き出し扉側に取り付けられているため、冷蔵庫本体側の寸法誤差はもちろん組立誤差の影響を受けることはもちろん、連結板16が組み付けられる引き出し扉側の寸法誤差、組立誤差の影響を受ける。このため、先の案内ガイド96内を摺動する摺動部16aの位置は左右にずれることが往々にして生じる。この誤差があっても、案内ガイド96に先の摺動部16aが入り易くするためである。
また、この突片96bには2個のホールIC97,98が設けられている。このホールIC97,98は連結板16の摺動部16aに設けられた磁石99,100の接近あるいは離反を検出して動作し、回転板19を駆動する駆動軸18を停動する。なお、連結板16に設けられた磁石は、図示の例ではホールIC97,98の隔たりに対応して配置された2個の磁石を例示しているが、これに限らず、ホールIC97,98の間隔長さに対応する1個の板状の磁石であっても良く、板状磁石の先端部分の挿入位置に対応してホールIC97,98が98のみオン、97と98がオン、97と98がオフ、の動作を行えばよいものである。
すなわち、ホールIC97は冷凍室5の扉が完全に閉じられているか否かを検出し、ホールIC98は冷凍室5の扉の開き量が所定の開き量(例えば、図7(a)に示す開き量35以下)であるか否かを連結板16側の磁石99,100をともなって検出するものである。図16に示すごとくホールIC97とホールIC98に磁石99,100が対向している時が完全扉閉状態であり、磁石99の位置がホールIC97をオフし、ホールIC98をオンする位置にあるときが半ドア状態(例えば、開き量35)ということとなる。なお、普段は完全閉状態で冷凍室5の扉は待機しているものである。
図14〜図17に示す本実施形態の構成例における回転板19と連結板16は、図12で説明した4段構成でストローク拡大のものと同じ要領でそれぞれ動作するものである。そして、この構成例のものと図12のものと異なる点は第一の受け面21aには第一の駆動ピン20aしか当接できない構造とした点である。すなわち、第一の駆動ピン20aと第二の駆動ピン20bとは高さ寸法が違うために第二の駆動ピン20bは第一の受け面21aには届かない構造としてあるということである。具体的には、第一と第四の駆動ピン20a,20dの高さは高く、第二と第三の駆動ピン20b,20cの高さは低くなっており、第一の受け面21aは、第一の駆動ピン20aのみが当接するように垂下部が形成され、第二と第三の駆動ピンは受け面21aの垂下部に当接せず潜り抜けて通る。第二と第三の受け面21b,21cは、高さの低い第二と第三の駆動ピンが当接できるようにそれぞれの受け面の垂下部の長さが長く形成されている。
上述したそれぞれの駆動ピンと受け面との構造において、冷凍室を開く際に、手動で開くのと同時的に押しボタン88による電動で開くような異常な動作が行われる場合に、上述した本実施形態の構成例を採用していないと、第一の駆動ピンが第一の受け面に当接せずに通過し(連結板16が手動操作で早めに前進して)第二の駆動ピンが第一の受け面21aに当接し、他の駆動ピンや受け面との構造上の係合関係と相俟って、連結板16と回転板19とがロック状態となり、冷凍室の開き動作が不可能となる場合が生じ得る。しかしながら、上述した本実施形態の構成例を採用すると、第二の駆動ピン、第三の駆動ピンは第一の受け面21aを潜り抜けて通過するので、連結板16と回転板19とがロック状態となることはない。
もう一つ大きく異なる点は案内ガイド96を作り、この案内ガイド96を作る突片96bに2個のホールIC97,98を設けた点である。すなわち、この2個のホールIC97,98は連結板16側に設けた磁石99,100との位置関係で冷凍室5の開き動作を確実に行うと共に、冷凍室5が完全に閉じずにいわゆる半ドア状態になっていたとしても回転板19を冷凍室5を開く場合とは反対方向に回転させることによって連結板16に対して、冷凍室5を閉じる方向の力を加えて閉じることができるので、半ドアを防止して冷却性能の低下防止あるいは省エネ効果を得ることができるものである。
もちろん、この連結板16の戻し面22は図7で説明した要領で第四の駆動ピン20dにより扉を閉じる方向に押されるものである。なお、図15に示す戻し面22はこの時駆動ピン20dの動きを良好なものとするために、45度以下の傾斜面としておくのがよい(図15で戻し面22は紙面の上下垂直線に対して左に傾いた円弧状面を形成している)。
また、駆動装置15は冷凍室5を構成する箱体側にネジ等をもって固定される。従って、冷凍室の扉引き出し時、回転板19は当然箱体側に残る。一方、冷凍室扉側に取り付けられる連結板16は扉と共に引き出される。この扉引き出し時には当然先に説明してきた回転板19と連結板16との係合関係は解除される。言い換えると、回転板19と連結板16との取り付けの構造は非常に重要なウエイトを占めている。
このために、本実施形態においては、回転板19が取り付けられているベース材15a(図15参照)と案内ガイド96を一体に作り寸法を確保すると共に、案内ガイド96を作る突片96a,96b間のガイド溝幅寸法を連結板16側の摺動部16aの肉厚に近づけるなどして、回転板19と連結板16両者の取り付け位置を確保し、寸法関係を安定化させている。さらに、連結板16を扉側に取り付けることによる箱体に対する上下寸法のバラツキは突片96a,96bと摺動部16aのラップ代(図17の紙面で上下方向のオーバラップ部分)を十分確保しておくことにより対策されている。
「上下段の動作」
さらに、本実施形態による扉駆動装置を冷凍室5および野菜室6の両方に設けた場合の動作について説明する。ここでは図2に示すように、野菜室6が最も下段の底面近傍にあり、その上段に冷凍室5が設けられているものとする。
ユーザが冷蔵庫1の正面に立って冷凍室5を開いたときに、冷凍室5が電動で開く量は例えば15cmないし20cm程度であるとすれば、開いた際に冷凍庫の内部を開口部から見渡すことができるので好適である。一方、野菜室6においては、野菜室6が床面近傍にあるために冷凍室と同様に開くとすれば、開いた際に野菜室6の扉の下端がユーザのつま先に当たる恐れがある。
扉を開放した際に野菜室6の扉の下端がユーザのつま先に当たることを防止するために、下段にある野菜室6は、上段にある冷凍室5と比べて開く際の開き速度を遅くすることと、さらには開き量を例えば10cm以内と小さくすることが安全上望ましい。
なお、上記の説明では野菜室が冷凍室よりも下段にあるものとして説明したが、冷凍室が野菜室よりも下段にある場合には冷凍室の開き量ないし開き速度を野菜室よりも小とすることが望ましい。
「作用並びに効果」
本実施形態によれば、冷蔵庫の引出し扉の開き力を低減して軽快に扉を開放することを可能とするとともに、いわゆる半ドア状態から自動的に扉を閉鎖して省エネ効果を向上させることができる、という効果がある。
すなわち、冷凍室5を閉鎖状態から開き始める際には駆動軸18のもっとも近傍に配置された第一の駆動ピン20aが連結板16を押し出して駆動することで、低速であるが大きな力を出してマグネットパッキンを引き剥がし、引き続き第一の駆動ピン20aよりも遠方に設けられた第二の駆動ピン20bが連結板16を押し出して中程度の速度で中程度の力を出して駆動することでクローザ13の引込力に抗して開き動作を継続して冷凍室5を加速し、さらに引き続いて第二の駆動ピン20bよりも駆動軸18から遠方に設けられた第三の駆動ピン20cが連結板16を押し出して、力は小さいが高速で駆動することによって冷凍室5をさらに加速することができるので、冷凍室5の開き動作を確実に行うのに都合が良く、確実に開き動作を行うことができる、という効果がある。
さらに、冷凍室5が完全には閉じずに所謂半ドア状態になっていたとしても、回転板19を冷凍室5を開く場合とは反対方向に回転させることによって、連結板16に対して冷凍室5を閉じる方向の力を加えて閉じることができるので、半ドアを防止して省エネ効果が得られる。上記の閉鎖動作を複数回繰り返すことで半ドア防止をさらに確実化する効果が得られる。
さらに、冷凍室を閉じはじめる開き量35が扉厚さ71よりも小となるようにすれば、指などを挟まれる恐れがないので安全性が高い、という効果がある。
さらに、扉体5aを開放動作する際、連結板16がおよそ回転板19から離れる位置を終了ホールIC101(図14、図15参照)にて検出し、原点ホールIC102で検出されるまでモータ24の出力を小さくすることで、連結板16と回転板19の噛み合いが外れた後はゆっくり回転板19を回転するようにしたので、モータ24や駆動ギア30の駆動に起因して発生する音を大幅に低減することができる。また、原点ホールIC102の位置で回転板19は確実に停止し、次の運転に備えることが出来る。
すなわち、扉体5aが閉まっている間は扉体5aに遮断されて駆動機構15が発する運転音は使用者に聞こえづらいが、扉体5aを開けるとこの音が冷蔵庫の箱体を共鳴箱として拡大して使用者に聞こえる。本実施形態は扉体5aの開寸法を大きくした時にはモータ出力を小さくし、この聞こえてくる音を小さくした冷蔵庫を提供出来る。
手動で開閉する場合には、本実施形態による扉開閉機構は冷蔵庫本体に設けられた駆動機構と、引き出し扉と一体に設けられた連結板とは接触しないので、引き出しの開閉の際にユーザによる手動動作を妨げたり、開閉動作が重くなる、などの現象が生じないので使い勝手がよく、また万一の故障の際にもユーザの使い勝手を損なうことがない、という効果がある。
また、本実施形態においては、駆動機構(回転板)と連結板との係合(摺動)時回転板側の駆動ピンのかみ込みという事故が生じないことはもちろん、案内ガイドを設けることにより、確実な組み合わせを確保することができるものである。
「他への適用」
本実施形態においては扉駆動装置10が冷凍室5ないし野菜室6の引き出し扉に設けられている例を示したが、本実施形態に限定されるものではなく冷蔵室扉2の回転式の扉に設けられるものであっても同様な効果が得られることは言うまでもない。
また、本実施形態においては冷蔵庫に扉駆動装置を備えた構成について説明したが、冷蔵庫に限定されるものではなく、例えば文書類を保管するファイルキャビネットや、手前に引き出して使用する流し台組み込み型の食器洗い乾燥機、などの引き出し式の機器に適用でき、その場合にも本実施形態にて説明したと同様な効果があることば明らかである。
本実施形態においては、駆動機構15は平歯車のみによって構成される例を示したが、平歯車に限定されるものではなく、ウォームギヤを用いた構成であってもよい。またさらに、駆動ピン20は本実施形態のような円筒状のピンではなく、回転式のローラであってもよい。
1:冷蔵庫本体、2:冷蔵室、3:切り替え室、4:製氷室、5:冷凍室、5a:扉体、6:野菜室、7:操作表示部、8:開スイッチ、10:扉駆動装置、11:スライドレール、12:容器、13:クローザ、14:マグネットパッキン、15:駆動機構、15a:ベース板、16:連結板、16a:摺動部、17:ドア検知部、17a:第一のドア検知部、17b:第二のドア検知部、18:駆動軸、19:回転板、
20:駆動ピン、20a:第一の駆動ピン、20b:第二の駆動ピン、20c:第三の駆動ピン、20d:第四の駆動ピン、21:受け面、21a:第一の受け面、21b:第二の受け面、21c:第三の受け面、21d:第四の受け面、22:戻し面、23:開き方向、24:モータ、25:モータピニオン、26:アイドラ、27:アイドラピオン、28:アイドラ、29:アイドラピオン、
30:駆動ギヤ、31:トルク制限手段、32:回転検知手段、33:移動量、34:引込位置、35:開き量、36:矢印、37a:第一の先端、37b:第二の先端、37c:第三の先端、38:隙間、39:隙間、40:原点範囲、41:制御回路、42:電源、
70:報知手段、71:扉厚さ、72:扉間隙間、73:最大開き量、74:惰性開き量、75:接点、76:カム、77:回転中心、78:カム外周、79:カム受け板、80:回転方向、81:矢印、82:カム半径、83:周速、84:開き速度、85:滑り速度、86:接点、87:枠体、88:押しボタン、89:押し棒、90:戻しスプリング、91:押し量、92:スイッチ本体、93:プランジャ、94:配線、95:磁石、96:案内ガイド、96a,96b:突片、97:ホールIC、98:ホールIC、99:磁石、100:磁石、101:終了ホールIC、102:原点ホールIC、