JP3862958B2 - 炭化水素−フェノール樹脂およびエポキシ樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和環状炭化水素、例えば、ジシクロペンタジエン(DCPD)などと、フェノール類、例えばフェノールなどから誘導される耐湿性、耐熱性、耐クラック性等に優れ、かつ色相の良好な炭化水素−フェノール樹脂、例えばDCPD−フェノール樹脂、およびそれを原料とするエポキシ樹脂の製造方法に関するものである。
更に詳しくは、耐熱性、耐湿性、耐クラック性等に優れているので、電気絶縁材料、特に半導体封止材用樹脂や積層板用樹脂として有用であり、また、色相に優れているために成形物の外観やマーキング性等が良好なフェノール樹脂およびエポキシ樹脂の製造方法に関するものである。
背景技術
従来、DCPD−フェノール樹脂については、三フッ化ホウ素錯体等のフリーデル−クラフツ触媒あるいはイオン交換樹脂等の酸触媒の存在下における、フェノール類とDCPDとの接触反応により製造する方法が知られている。
しかしながら、従来のDCPD−フェノール樹脂は着色が著しく、黒褐色を呈しているため、成形品の外観が著しく劣り、これを原料としてエピハロヒドリンと反応させて得られるエポキシ樹脂も同様に濃い黒褐色を呈するという問題があった。着色したエポキシ樹脂を封止材として用いると、マーキング性能に劣るために、作業効率が甚だしく低下するという問題が生ずる。
そこで、特開平7−252349号公報などにおいては、三フッ化ホウ素−フェノール錯体を触媒としてDCPDとフェノールとを低温で長時間反応させることにより、着色の少ない樹脂を得る方法が提案されている。しかしながら、この方法を用いても必ずしも炭化水素−フェノール樹脂の着色が少なくなるとはいえない。更に、合計20時間を超える長時間の反応を行う必要があるため、多大の労力を要し、製造コストがかさむなどの点に問題がある。
本発明は、フェノール類と炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和環状炭化水素とを酸触媒の存在下で反応させ、効率よく短時間で色相の良好な炭化水素−フェノール樹脂を製造する方法を提供し、更に上記フェノール樹脂を塩基触媒の存在下でエピハロヒドリンと反応させることにより、同様に着色が少なく色相に優れたエポキシ樹脂を提供することを課題とする。
発明の開示
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、フリーデル−クラフツ酸触媒の存在下でフェノール類と不飽和環状炭化水素とを反応させるフェノール樹脂の製造方法において、副生するエーテル型生成体に着目して反応時の条件の最適化を行った結果、色相の良好な炭化水素−フェノール樹脂を効率良く短時間で生産することが可能な製造方法を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1は、酸触媒の存在下におけるフェノール類と炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和環状炭化水素との反応を、下記(1)および(2)を含む工程で行うことを特徴とする炭化水素−フェノール樹脂の製造方法に関するものである。
(1)全反応生成物に対するエーテル型生成体のモル分率を0.1以上にする工程、
(2)前記反応を進行させることにより、工程(1)で生成したエーテル型生成体を実質的に消滅させる工程。
本発明の第2は、酸触媒の存在下におけるフェノール類と炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和環状炭化水素との反応を、下記(1)および(2)を含む工程で行うことを特徴とする炭化水素−フェノール樹脂の製造方法に関するものである。
(1)フェノール類の融点と50℃とのいずれか高い方の温度から90℃までの温度範囲において、フェノール類に、炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和環状炭化水素を逐次にまたは連続して添加しつつ反応させる工程、
(2)前記不飽和環状炭化水素の添加終了後、温度を110℃以上に上昇させて更に反応を進行させる工程。
本発明の第3は、本発明の第1または第2で生成した炭化水素−フェノール樹脂において、フェノール類のフェノール性水酸基に対する不飽和環状炭化水素の置換位置に関し、オルト位/パラ位の置換比率が2.0以上であることを特徴とする炭化水素−フェノール樹脂の製造方法に関する。
本発明の第4は、本発明の第1または第2において、反応の終了後、触媒を失活させた後に未反応フェノール類を回収することを特徴とする炭化水素−フェノール樹脂の製造方法に関する。
本発明の第5は、本発明の第1または第2において、フェノール類がフェノールであり、炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和環状炭化水素がジシクロペンタジエンであることを特徴とする炭化水素−フェノール樹脂の製造方法に関する。
本発明の第6は、本発明の第1または第2の製造方法により得られる炭化水素−フェノール樹脂とエピハロヒドリンとを、塩基触媒の存在下に反応させた後、触媒残渣を除去し、未反応のエピハロヒドリンを除去することを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法に関する。
本発明の方法によれば、効率よく短時間の反応によって、色相の良好な炭化水素−フェノール樹脂、例えばDCPD−フェノール樹脂が得られる。
また、このようにして得られた炭化水素−フェノール樹脂を塩基触媒の存在下においてグリシジル化した後、触媒残渣を除去し、未反応のエピハロヒドリンを留去して精製することにより得られるエポキシ樹脂は、硬化特性に優れ、かつ色相が良好である。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明における炭化水素−フェノール樹脂の製造方法は以下の通りである。
すなわち、酸触媒の存在下に、フェノール類と炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和炭化水素とを反応させる。
本発明において炭化水素−フェノール樹脂の原料成分として用いる炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和環状炭化水素は、環状炭化水素が橋かけ構造であってもよい。炭素−炭素二重結合の数は1分子当たり2個以上であればよく、好ましくは4個以下である。
具体的な炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和環状炭化水素としては、ジシクロペンタジエン、4−ビニルシクロヘキセン、5−ビニルノルボルナ−2−エン、3a,4,7,7a−テトラヒドロインデン、α−ピネン、リモネン等が挙げられる。これらは混合して用いることもできる。得られる樹脂の耐熱性、耐湿性および機械的特性が優れている点から、特にジシクロペンタジエンが好ましい。
また、本発明に用いるフェノール類は、ヒドロキシル基含有芳香族化合物としても定義することができる化合物であり、少なくとも一つのヒドロキシル基が芳香族環に直接結合した芳香族化合物である限り特に限定されない。芳香族環としては、ベンゼン環、縮合型のナフタレン環などが例示される。
したがって、本発明において用いるフェノール類の具体的な例示としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−プロピルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−sec−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、α−ナフトール、β−ナフトール等の一価フェノール類;レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(ヒドロキシナフチル)メタン、テトラメチルビフェノール、ビフェノール等の二価フェノール類;トリス(ヒドロキシフェニル)メタン等の三価フェノール類およびこれらの混合物等を挙げることができる。特にフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、α−ナフトール、β−ナフトールおよび2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン等は経済性および製造の容易さの点から望ましい。これらは混合して用いることもできる。
不飽和環状炭化水素とフェノール類との反応における両者の混合割合は、得られる炭化水素−フェノール樹脂の分子量および溶融粘度により適宜に選択することができる。しかしながら、通常は、フェノール類/不飽和環状炭化水素のモル比を1〜20の範囲とすることが好ましい。特に得られる樹脂の溶融粘度を低下させるためには、フェノール類/不飽和環状炭化水素のモル比は5〜15の範囲が好ましい。溶融粘度の低い炭化水素−フェノール樹脂をエポキシ化すれば、同様に溶融粘度の低いエポキシ樹脂が得られ、いずれも、半導体封止材料等に用いる場合には、フィラーの高充填が可能であるため線膨張係数を低減させることができ、また、耐水性を向上させるので好ましい。触媒使用量が少ない場合には、フェノール類/不飽和環状炭化水素のモル比を7〜10とすることが好ましい。
炭化水素−フェノール樹脂の製造に用いる酸触媒としては、フリーデル−クラフツ触媒を例示することができ、特に活性および触媒除去の容易さの点から、三フッ化ホウ素、その錯体触媒、例えば三フッ化ホウ素−エーテル錯体、三フッ化ホウ素−フェノール錯体、三フッ化ホウ素−水錯体、三フッ化ホウ素−アルコール錯体、三フッ化ホウ素−アミン錯体、または、これらの混合物等が用いられる。これらのなかでも更に好ましくは、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素−フェノール錯体および三フッ化ホウ素−エーテル錯体である。
本発明の第1において、一般に触媒濃度は、反応系内の濃度として0.001〜10質量%の範囲から選択することができる。
炭化水素−フェノール樹脂の製造においては、溶剤を使用することができ、この場合の溶剤は、反応を阻害しないものであれば特に制限されない。好ましい溶剤としてはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物等が挙げられる。
溶剤の使用量は、前記フェノール類100質量部に対して20〜300質量部とすることが好ましい。なお、フェノール類を不飽和環状炭化水素に対して過剰に用いる場合には、他の溶剤を用いる必要がない。
本発明の第1において、一般に反応温度は、フェノール類の融点〜200℃の範囲から、また反応時間は10分〜100時間の範囲からそれぞれ適宜に選択することができる。
フェノール類と不飽和環状炭化水素とを反応させることにより炭化水素−フェノール樹脂を製造する場合には、炭化水素−フェノール樹脂のほかにエーテル型生成体が副生する可能性がある。このエーテル型生成体は、フェノール類の有するフェノール性水酸基に不飽和環状炭化水素が付加し、水酸基がエーテル結合に変換した化合物であるため、その生成は好ましくない。
したがって、通常はこのようなエーテル型生成体の形成を極力抑制する方法が検討されるが、本発明においては、これを積極的に一定の割合以上生成させる方法を用いる。この方法により、結果として反応効率よく短時間で樹脂を製造することができ、また色相の良好な樹脂を得ることができる。
すなわち、本発明の第1における工程(1)では、全生成物に対するエーテル型生成体のモル分率が0.1以上になるように、フェノール類と炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和環状炭化水素とを反応させる。反応原料の添加順序、反応条件等によっても、全生成物に対するエーテル型生成体のモル分率が0.1以上になることはあるが、本発明においては、フェノール類もしくは不飽和環状炭化水素、または両方がほぼ全量反応した時点において、エーテル型生成体のモル分率が0.1以上になるように調整する。
上記のように、全生成物に対するエーテル型生成体のモル分率が0.1以上になるように、フェノール類と炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和環状炭化水素とを反応させることが肝要であり、エーテル型生成体のモル分率が0.1未満の場合には、得られる樹脂の色相が低下するため好ましくない。
全生成物に対するエーテル型生成体のモル分率に上限値は特にないが、エーテル型生成体の量が多すぎると、目的とする炭化水素−フェノール樹脂の収率が低下するほか、次のエーテル型生成物を消滅させる工程(2)の負担が過大になる。したがって、通常は上限値として0.5が適当である。
このようにエーテル型生成体の割合を調整するためには、反応温度、反応時間、触媒濃度等を適宜に選択する。そのほか、反応系内の水分量等も影響するので、これらを適宜に調整して反応を行う。本発明の方法によれば、例えば、装置、原料等の変更によって、反応温度、反応時間、触媒濃度等の条件が変わる場合にも、エーテル型生成体の割合を指標にすれば、それらの条件設定を容易に行うことができる。
なお、エーテル型生成体の含有率の測定は13C−NMRにより行う。13C−NMRの測定条件としては、溶剤としてCDCl3を用い、NNE(核オーバーハウザー効果デカップリング法)手法に従って行い、13C−NMRチャート上の化学シフト155〜160ppmの面積強度を、化学シフト130〜133ppm、137〜140ppmおよび155〜160ppmの各面積強度の和で除した値として求めることができる。13C−NMRの共鳴周波数は例えば400MHzとすることができる。
次いで、本発明の工程(2)においては、更に反応を継続して進行させることにより、エーテル型生成体を実質的に消滅させる。通常は、フェノール類もしくは不飽和環状炭化水素、または両方がほぼ全量反応した後、前記反応温度および反応時間の範囲内において、酸触媒の存在下で更に加熱・攪拌を継続することにより、エーテル型生成体を実質的に消滅させることができる。通常は、工程(1)の反応温度よりも20℃以上、好ましくは30℃以上高い温度を用いる。なお、積極的にエーテル型生成体を生成させる工程(1)の反応は比較的早く進行し、工程(2)の反応も好ましくは比較的高温で行うため、結果として、反応開始からの合計反応時間は短く、したがって効率よく短時間で色相の良好な炭化水素−フェノール樹脂を製造することができる。通常は反応開始から合計10時間以内の短時間で、色相の良好な樹脂を製造することが可能である。
ここで、炭化水素−フェノール樹脂の好ましい製造条件としては、本発明の第2に示すように、(1)酸触媒の存在下に、フェノール類の融点と50℃とのいずれか高い方の温度から90℃までの温度範囲において、フェノール類に、炭素−炭素二重結合2個以上を有する不飽和環状炭化水素を逐次にまたは連続して添加して反応させた後、(2)110℃以上に反応温度を上昇することにより更に反応を進行させる。
すなわち、不飽和環状炭化水素をフェノール類に逐次にまたは連続して添加する工程(1)においては、フェノール類の融点と50℃とのいずれか高い方の温度から90℃の温度範囲で反応を行う。反応温度が90℃を超える場合には、不飽和環状炭化水素、例えばDCPDの分解を併発する懸念があるほか、得られる樹脂の色相が低下するため好ましくない。工程(1)の反応時間は特に制限されるものではないが、通常は10分〜60時間の範囲から適宜に選択することができる。
上記工程(1)における反応温度の範囲内において、フェノール類もしくは不飽和環状炭化水素、またはその両方の反応原料について反応を完結させる。通常は過剰にフェノール類が存在するので、上記反応温度内において不飽和環状炭化水素の実質的に全量を反応させる。
上記の方法により、全生成物に対するエーテル型生成体のモル分率が0.1以上になるように、フェノール類と炭素−炭素二重結合2個以上を有する不飽和環状炭化水素とを反応させることができる。
次いで、上記工程で一旦生成したエーテル型生成体が実質的に消滅するように、工程(2)において更に反応を進行させる。この目的のためには、反応温度を工程(1)の温度よりも上昇させることが肝要であり、具体的には110℃以上、好ましくは120〜170℃の範囲とする。特に140〜150℃で反応を行うと効率よく短時間で色相の良好な炭化水素−フェノール樹脂を得ることができる。工程(2)の反応温度が110℃未満の場合には、一旦生成したエーテル型生成体を実質的に消滅させるために長時間を要するので、経済的に不利であり好ましくない。また、反応温度が170℃を超えると、得られる樹脂の色相が低下したり、触媒の分解あるいは副反応が生じる可能性があるので、好ましくは170℃以下とする。
工程(1)で生成したエーテル型生成体は、前述のように副生物であり、したがって最終的には極力その含有量を低下させることが好ましい。通常は、工程(2)の全生成物に対するエーテル型生成体のモル分率が0.05以下、より好ましくは0.02以下になるまで反応を進行させる。反応時間は特に制限されないが、通常は1〜5時間、特に2〜3時間の反応時間で一旦生成したエーテル型生成体を実質的に消滅させることができる。
なお、本発明の方法によれば、通常、上記2段の反応時間の合計が10時間以内という短時間で、色相の良好な樹脂を製造することが可能である。
本発明の炭化水素−フェノール樹脂の製造において、反応系中の触媒濃度は、不飽和環状炭化水素の反応経路や置換位置に影響を与えるため、フェノール類、不飽和環状炭化水素および触媒の合計質量に対して1.00質量%以下、好ましくは0.05〜1.00質量%の範囲とすることが好ましい。具体的には、例えばフェノールとジシクロペンタジエンとの反応における酸触媒として三フッ化ホウ素−フェノール錯体を使用する場合には、フェノール、ジシクロペンタジエンおよび触媒の合計質量に対して触媒量が1.00質量%以下になるように添加して反応を行う。これを超える量の触媒は、樹脂の色相低下を促進したり、樹脂の分解反応を併発させるため好ましくない。
また反応系中の水分量に特に制限はないが、水分濃度を200ppm以下、より好ましくは100ppm以下とすることにより、反応の進行を正確に好ましく制御することができる。フェノール類は極性基を含む構造を有するため水分を含有し易い。脱水方法としては、例えば窒素気流下でフェノール類を有機溶剤と共沸する方法等が挙げられるが、反応系内の脱気処理などの際にはむしろ吸湿することがあるので、脱水には十分な注意が必要である。いずれの場合も、系内からサンプリングを行い、水分量を確認する必要がある。また不飽和環状炭化水素なども常法により脱水して用いることが必要である。
なお、反応に当たっては反応器内を通常不活性ガスで置換するが、この場合は密閉系にして置換することが好ましい。開放系で反応を行う場合には、反応器内に不活性ガスを供給しつつ反応を行うこともできる。ここで用いる不活性ガスとしては、窒素、アルゴンなどが挙げられる。
このようにして反応系雰囲気の水分量を調整し、反応系中の水分量を100ppm以下にすることが肝要である。
本発明の炭化水素−フェノール樹脂の製造方法は、上記の条件によりフェノール類と不飽和環状炭化水素とを反応させる限り、具体的な反応方法は特に限定されるものではないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
すなわち、反応器に、フェノール類を必要に応じ所定の有機溶剤と共に仕込み、次いで、加熱を行い、共沸混合物として有機溶剤および水分を除去する。系内が所定の水分含有量に達したことを確認するが、そのためには通常系内の液を抜き出して測定を行う。その後、系内に所定量の酸触媒を加え、不飽和環状炭化水素を滴下する。不飽和環状炭化水素の水分量も調整する必要があるので、あらかじめその水分量を測定し常法により脱水しておくことが好ましい。
本発明においては、上述の方法により炭化水素−フェノール樹脂を製造した後、触媒を失活させて反応を確実に停止する。例えば、触媒を失活させることなく反応混合物を加熱すれば、反応は更に進行し、場合によっては好ましくない事態を引き起こす。
失活の方法は特に制限されないが、最終的に得られる炭化水素−フェノール樹脂中のホウ素、フッ素等のイオン性不純物の残存量を100ppm以下にする手段を用いることが好ましい。この目的のためには失活剤を用いることが好ましく、失活剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはそれらの酸化物、水酸化物、炭酸塩等、あるいは水酸化アンモニウム、アンモニアガス等の無機塩基類のほかハイドロタルサイト類も用いることができる。ハイドロタルサイト類は、イオン性不純物を吸着することも可能であり、したがって処理が簡潔で速く、かつ処理後のイオン性不純物の残存量も少ないため、反応液を処理して触媒を失活させる目的には特に好ましい。
ハイドロタルサイト類等により酸触媒を失活させて吸着した後、酸触媒を吸着したハイドロタルサイト類等を濾過除去して、触媒残渣を実質的に含まない反応液を回収し、次いで反応液を蒸留濃縮することにより高純度の炭化水素−フェノール樹脂を得ることができる。濾過にあたっては、溶剤を添加したり、加熱処理を行う等の方法により、濾過の作業性を良好にすることができる。
本発明においては、上述の方法により得られた濾液から未反応のフェノール類を濃縮回収することにより、目的とする炭化水素−フェノール樹脂を得ることができる。
上記本発明の方法を用いることにより、生成する炭化水素−フェノール樹脂において、フェノールの芳香環上の水酸基に対する不飽和環状炭化水素の置換位置に関し、オルト位/パラ位の置換比率を2.0以上にすることができ、その結果、色相や硬化性等の樹脂特性のバランスに優れた炭化水素−フェノール樹脂を得ることができる。
上記オルト位/パラ位の置換比率(O/P比)の測定は13C−NMRにより行う。この測定は、溶剤としてCDCl3を用い、NNE(核オーバーハウザー効果デカップリング法)手法に従って行い、13C−NMRチャート上の化学シフト130〜133ppmの面積強度を、化学シフト137〜140ppmの面積強度で除した値として求める。なお、共鳴周波数は、例えば400MHzとすることができる。
また本発明において得られる樹脂の色相評価において、従来知られているJIS−K−5400に規定されたガードナー標準溶液による方法を用いると、溶液の色相を評価する方法であることにもよるが、実際の固体状樹脂の色相と必ずしも一致しない。しかも、標準色相液と比較して求めるために、測定者により判定基準に差があり、評価結果がばらつくことがある。
これに対し、可視・紫外線領域における吸光度による測定は、ばらつきが少なく、実際の色相との相関が良好であるため、本発明の色相評価方法として吸光度法を採用した。吸光度による色相評価法について以下に説明する。
この方法では任意の溶剤に樹脂を希釈した希釈溶液を用いる。希釈溶剤としては、可視・紫外全領域にわたって吸収の少ないものが適することから、脂肪族飽和炭化水素、脂肪族飽和炭化水素エーテルなどが好ましく用いられるが、樹脂の溶解性が良好であることから、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが特に好ましい。溶液について350nmにおける吸光度を測定し、これによって色相を判断する。すなわち、本発明で得られる色相の良好な炭化水素−フェノール樹脂は、350nmにおける吸光度において最も顕著な特徴を有しており、その吸光度が1.0以下のものが実際に色相の良好なものに相当し、次の反応おけるエポキシ樹脂の原料として好ましい。
このようにして得られた炭化水素−フェノール樹脂は、エポキシ樹脂の原料として用いるほか、電気絶縁材料、特に半導体封止材用あるいは積層板用のエポキシ樹脂の硬化剤として有用である。色相に優れているために成形品の外観やマーキング性等が良好であるが、特に上記の用途に限定されるものではない。
次に、上で得られた炭化水素−フェノール樹脂を原料として色相の良好なエポキシ樹脂を製造する方法について説明する。
すなわち、本発明による色相の良好なエポキシ樹脂は、上述の方法で得られた炭化水素−フェノール樹脂を、塩基触媒下でエピハロヒドリン類と反応させ、グリシジル化することによって得ることができる。グリシジル化反応は常法により行う。具体的には、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基の存在下に、通常10〜150℃、好ましくは30〜80℃の温度で、上記炭化水素−フェノール樹脂を、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン等のグリシジル化剤と反応させた後、水洗、乾燥することにより得ることができる。
この際、グリシジル化剤の使用量は、炭化水素−フェノール樹脂に対して、好ましくは2〜20倍モル当量、特に好ましくは3〜7倍モル当量である。また反応の際、減圧下でグリシジル化剤と水との共沸蒸留により水を留去することによって、反応をより速く進行させることができる。
また本発明によるエポキシ樹脂を電子材料分野で使用する場合には、前記グリシジル化において副生する塩化ナトリウムを、水洗工程において完全に除去しておかなければならない。この際、グリシジル化剤を蒸留により回収して反応溶液を濃縮した後、濃縮物を溶剤に溶解し、水洗してもよい。溶剤としては、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、ブチルセロソルブ等が好ましい。水洗した濃縮物を加熱濃縮することによりエポキシ樹脂とすることができる。
前記エポキシ樹脂中のエポキシ当量(1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数)は、通常200〜500、好ましくは250〜450である。エポキシ当量が500を超える場合には、架橋密度が低くなるため好ましくない。
このようにして得られたエポキシ樹脂は、従来の方法で得られる炭化水素−フェノール樹脂を原料とするエポキシ樹脂と比較して、色相に優れ、成形品の外観やマーキング性等が良好である。なお、前述の方法で測定した吸光度が0.8以下のものが、実際の色相も良好であり好ましい。
更に、得られたエポキシ樹脂は、ゲル パーミエーション クロマトグラフィーによる測定結果によれば、単官能体の含有量がきわめて少なく、通常0.5質量%以下、多くは0.1質量%以下である。したがって硬化特性も良好である。
上記エポキシ樹脂は、色相に優れているために成形品の外観やマーキング性等が良好である。したがって電気絶縁材料、特に半導体封止材用あるいは積層板用のエポキシ樹脂組成物原料として有用であるが、特にそれらの用途に限定されるものではなく、粉体塗料、ブレーキシュー等にも有用である。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施例および比較例により詳細に説明する。
以下の実施例および比較例における炭化水素−フェノール樹脂の特性は次の方法により測定した。
(1)オルト位/パラ位の置換比率(O/P比)
炭化水素−フェノール樹脂の10質量%CDCl3溶液を用い、13C−NMR(フーリエ変換型核磁気共鳴装置;商品名:JNM−400、日本電子(株)製;共鳴周波数400MHz)により測定を行った。
O/P比は、A1=化学シフト130〜133ppmの面積強度、およびA2=化学シフト137〜140ppmの面積強度とすれば、以下の式によって求めることができる。
O/P比=A1/A2
(2)エーテル型生成体含有率
炭化水素−フェノール樹脂の10質量%CDCl3溶液を用い、13C−NMR(フーリエ変換型核磁気共鳴装置;商品名:JNM−400、日本電子(株)製)により測定を行った。
エーテル型生成体含有率(モル分率)は、A1=化学シフト130〜133ppmの面積強度、A2=化学シフト137〜140ppmの面積強度、およびA3=化学シフト155〜160ppmの面積強度とすれば、以下の式によって求めることができる。
エーテル型生成体含有率=A3/(A1+A2+A3)
(3)紫外・可視吸光度
炭化水素−フェノール樹脂の2質量%ジオキサン溶液を用い、次の条件により測定した。
分析機器:紫外・可視分光光度計(商品名:Ubest−50型、日本分光工業(株)製)
測定セル:石英製、光路長10mm×光路幅4mm
(4)ガードナー色数
炭化水素−フェノール樹脂の50%ジオキサン溶液のガードナー色数を、JIS−K−5400に規定されたガードナー標準溶液との比較により決定した。
(5)エポキシ樹脂の単官能体含有量
WATERS社製クロマトグラフィーマネージャー・ミレニアム 2000および示差屈折型分光光度計(商品名:WATERS 410)を用い、ゲル パーミエーション クロマトグラフィー(以下「GPC」と略す)手法により決定した。
<実施例1>
(炭化水素−フェノール樹脂の製造−1)
反応器にフェノールとトルエンを仕込み、160℃に加熱して、トルエンを水と共沸させるとともに、トルエンを留去した。系内の脱水後のフェノールの量は750gであった。適宜にサンプリングを行い、系内のフェノールの水分量が100ppm以下であることを確認した。次いで、三フッ化ホウ素−フェノール錯体2.3gを添加して均一に混合した後、液温を70℃に保持しながらジシクロペンタジエン150gを1時間にわたり徐々に滴下した。滴下終了後、140℃に昇温し、更に3時間攪拌した。
滴下直後のエーテル型生成体含有率を測定したところ、0.43であった。
なお、ジシクロペンタジエンなどは別途に測定を行い、水分量が100ppm以下であることを確認した。また反応系の水分量も適宜に測定し、その水分量が100ppm以下であることを確認した。
反応終了後、攪拌を停止し、反応液を70℃に冷却して、ハイドロタルサイト(商品名:キョーワード1000、協和化学工業(株)製)5.5gを添加し、触媒を失活させた後、反応液を濾過した。得られた濾過液を減圧蒸留により濃縮し、炭化水素−フェノール樹脂326gを得た。
得られた炭化水素−フェノール樹脂の軟化点は93.0℃であり、フェノール性水酸基当量(1グラム当量の水酸基を含む樹脂のグラム数)は170であった。
13C−NMRによるO/P比は2.7、エーテル型生成体含有率は0.01以下であった。
また、樹脂溶液の吸光度を測定したところ、350nmの吸光度が0.983であり、ガードナー色数は16〜17であった。
結果を表1に示す。
<実施例2>
(エポキシ樹脂の製造−1)
撹拌機、還流冷却器および温度計を備えた3リットル4つ口フラスコに、実施例1の方法で製造した炭化水素−フェノール樹脂170gとエピクロルヒドリン400gとを仕込んだ後、溶解して撹拌し、反応系内を150mmHg(200hPa)の圧力に調製し、68℃に昇温した。この系に濃度48質量%の水酸化ナトリウム水溶液100gを連続的に添加しながら3.5時間反応を行った。反応により生成する水、および水酸化ナトリウム水溶液の水を、水−エピクロルヒドリン共沸混合物として還流により反応系外へ連続的に除去した。反応終了後、反応系を常圧に戻し、110℃まで昇温して反応系の水を完全に除去した。過剰のエピクロルヒドリンを常圧下で蒸留除去し、更に15mmHg(20hPa)の減圧下において140℃で蒸留を行った。
生成した樹脂および塩化ナトリウムの混合物に、メチルイソブチルケトン300gおよび10質量%の水酸化ナトリウム水溶液36gを加え、85℃の温度で1.5時間反応を行った。反応終了後、メチルイソブチルケトン750gおよび水300gを加え、下層の塩化ナトリウム水溶液を分液除去した。次にメチルイソブチルケトン液層に水150gを加えて洗浄し、リン酸で中和し、水層を分離した後、更に水800gで洗浄し水層を分離した。油層と水層の分離性は良好であり、定量的に無機塩を回収した。メチルイソブチルケトン液層を常圧下で蒸留し、続いて5mmHg(6.7hPa)、140℃で減圧蒸留を行い、220gのエポキシ樹脂を得た。このエポキシ樹脂のエポキシ当量は261であった。また、GPC手法による単官能体の含有量は0.1質量%以下であった。
また、樹脂の2%ジオキサン溶液の吸光度を測定したところ、350nmの吸光度が0.741であり、ガードナー値は14〜15であった。
結果を表1に示す。
<実施例3>
(炭化水素−フェノール樹脂の製造−2)
反応器にフェノールとトルエンを仕込み、実施例1と同様の共沸脱水を行った。脱水後のフェノールの量は780gであった。次いで、三フッ化ホウ素−フェノール錯体1.7gを添加し、ジシクロペンタジエン120gを滴下して、実施例1と同様の操作を行った。
滴下直後のエーテル型生成体含有率を測定したところ、0.31であった。
なお、ジシクロペンタジエンなどは別途に測定を行い、水分量が100ppm以下であることを確認した。また反応系の水分量も適宜に測定し、100ppm以下であることを確認した。
反応終了後、攪拌を停止し、反応液を70℃に冷却して、ハイドロタルサイト4.0gを添加し、触媒を失活させた後、反応液を濾過した。得られた濾過液を減圧蒸留により濃縮し、炭化水素−フェノール樹脂258gを得た。
この炭化水素−フェノール樹脂の軟化点は90.0℃であり、水酸基当量を測定したところ169であった。13C−NMRによるO/P比は2.6、エーテル型生成体含有率は0.01以下であった。
また、樹脂の2%ジオキサン溶液の350nmの吸光度を測定したところ0.851であり、ガードナー色数は13〜14であった。
結果を表1に示す。
<実施例4>
(エポキシ樹脂の製造−2)
実施例3で合成した炭化水素−フェノール樹脂169gを用いた以外は実施例2と同様の操作を行い、182gのエポキシ樹脂を得た。このエポキシ樹脂のエポキシ当量は256であった。また、GPC手法による単官能体の含有量は0.1質量%以下であった。
また、樹脂の吸光度を測定したところ、350nmの吸光度が0.710であり、ガードナー色数は11〜12であった。
結果を表1に示す。
<比較例1>
(炭化水素−フェノール樹脂の製造−3)
反応器にフェノールとトルエンを仕込み、160℃に加熱して、トルエンを水と共沸させるとともに、トルエンを留去した。系内の脱水後のフェノールの量は750gであった。適宜にサンプリングを行い、系内のフェノールの水分量が100ppm以下であることを確認した。次いで、三フッ化ホウ素−フェノール錯体9.0g(0.99%)を添加して均一にした後、液温を70℃に保持しながらジシクロペンタジエン150gを1時間にわたり徐々に滴下した。滴下終了後、140℃に昇温し、更に3時間攪拌した。
滴下直後のエーテル型生成体含有率を測定したところ、0.03であった。
なお、ジシクロペンタジエンなどは別途に測定を行い、水分量が100ppm以下であることを確認した。また反応系の水分量も適宜に測定し、その水分量が100ppm以下であることを確認した。
反応終了後、攪拌を停止し反応液を210℃に昇温し、減圧蒸留により濃縮して未反応フェノールを回収すると同時に反応を終了させ、炭化水素−フェノール樹脂319gを得た。
得られた炭化水素−フェノール樹脂の軟化点は87.0℃であり、フェノール性水酸基当量は178であった。
13C−NMRによるO/P比は1.3、エーテル型生成体含有率は0.02であった。
また、樹脂溶液の吸光度を測定したところ、350nmの吸光度が1.873であり、ガードナー色数は18以上であった。
結果を表1に示す。
<比較例2>
(エポキシ樹脂の製造−3)
撹拌機、還流冷却器および温度計を備えた3リットル4つ口フラスコに、比較例1の方法で製造した炭化水素−フェノール樹脂178gとエピクロルヒドリン400gとを仕込んだ後、溶解させて撹拌し、反応系内を200hPaの圧力に調製し、68℃に昇温した。この系に濃度48質量%の水酸化ナトリウム水溶液100gを連続的に添加しながら3.5時間反応を行った。反応により生成する水、および水酸化ナトリウム水溶液の水を、水−エピクロルヒドリン共沸混合物として還流により反応系外へ連続的に除去した。反応終了後、反応系を常圧に戻し、110℃まで昇温して反応系の水を完全に除去した。過剰のエピクロルヒドリンを常圧下で蒸留除去し、更に20hPaの減圧下において140℃で蒸留を行った。
生成した樹脂および塩化ナトリウムの混合物に、メチルイソブチルケトン300gおよび10質量%の水酸化ナトリウム水溶液36gを加え、85℃の温度で1.5時間反応を行った。反応終了後、メチルイソブチルケトン750gおよび水300gを加え、下層の塩化ナトリウム水溶液を分液除去した。次にメチルイソブチルケトン液層に水150gを加えて洗浄し、リン酸で中和し、水層を分離した後、更に水800gで洗浄し水層を分離した。油層と水層の分離性は良好であり、定量的に無機塩を回収した。メチルイソブチルケトン液層を常圧下で蒸留し、続いて6.7hPa、140℃で減圧蒸留を行い、220gのエポキシ樹脂を得た。このエポキシ樹脂のエポキシ当量は280であった。また、GPC手法による単官能体の含有量は約0.6質量%であった。
また、樹脂の2%ジオキサン溶液の吸光度を測定したところ、350nmの吸光度が1.793であり、ガードナー色数は18以上であった。
結果を表1に示す。
<比較例3>
(炭化水素−フェノール樹脂の製造−4)
反応器にフェノールとトルエンを仕込み、160℃に加熱して、トルエンを水と共沸させるとともに、トルエンを留去した。系内の脱水後のフェノールの量は750gであった。次いで、98%硫酸5.6gを添加して均一にした後、液温を90〜100℃に保持しながらジシクロペンタジエン150gを1時間にわたり徐々に滴下した。滴下終了後、110℃に昇温し、更に3時間攪拌した。
滴下直後のエーテル型生成体含有率を測定したところ、0.04であった。
反応終了後、攪拌を停止し、反応系内にハイドロタルサイト(商品名:キョーワード1000)32gを添加し、30分間攪拌して触媒を失活させた後、反応液を濾過した。得られた濾過液を減圧蒸留により濃縮し、炭化水素−フェノール樹脂321gを得た。
得られた炭化水素−フェノール樹脂の軟化点は96.0℃であり、フェノール性水酸基は169であった。
13C−NMRによるO/P比は1.3、エーテル型生成体含有率は0.02であった。
また、樹脂溶液の吸光度を測定したところ、350nmの吸光度が1.648であり、ガードナー色数は18以上であった。
結果を表1に示す。
<比較例4>
(エポキシ樹脂の製造−4)
撹拌機、還流冷却器および温度計を備えた3リットル4つ口フラスコに、比較例3の方法で製造した炭化水素−フェノール樹脂169gとエピクロルヒドリン400gとを仕込んだ後、溶解させて撹拌し、反応系内を200hPaの圧力に調製し、68℃に昇温した。この系に濃度48質量%の水酸化ナトリウム水溶液100gを連続的に添加しながら3.5時間反応を行った。反応により生成する水、および水酸化ナトリウム水溶液の水を、水−エピクロルヒドリン共沸混合物として還流により反応系外へ連続的に除去した。反応終了後、反応系を常圧に戻し、110℃まで昇温して反応系の水を完全に除去した。過剰のエピクロルヒドリンを常圧下で蒸留除去し、更に20hPaの減圧下において140℃で蒸留を行った。
生成した樹脂および塩化ナトリウムの混合物に、メチルイソブチルケトン300gおよび10質量%の水酸化ナトリウム水溶液36gを加え、85℃の温度で1.5時間反応を行った。反応終了後、メチルイソブチルケトン750gおよび水300gを加え、下層の塩化ナトリウム水溶液を分液除去した。次にメチルイソブチルケトン液層に水150gを加えて洗浄し、リン酸で中和し、水層を分離した後、更に水800gで洗浄し水層を分離した。油層と水層の分離は良好であり、定量的に無機塩を回収した。メチルイソブチルケトン液層を常圧下で蒸留し、続いて6.7hPa、140℃で減圧蒸留を行い、220gのエポキシ樹脂を得た。このエポキシ樹脂のエポキシ当量は258であった。また、GPC手法による単官能体の含有量は0.1質量%以下であった。
また、樹脂の2%ジオキサン溶液の吸光度を測定したところ、350nmの吸光度が1.691であり、ガードナー色数は18以上であった。
産業上の利用可能性
本発明の方法によれば、反応効率が高いため短時間で目的物を得ることが可能であり、更に得られる炭化水素−フェノール樹脂は、従来品と同様の耐湿性、耐熱性および耐クラック性を有することに加えて、色相に優れ、成形物の外観やマーキング性等が良好であるという特徴を有している。
また、上述の方法により得られる炭化水素−フェノール樹脂をグリシジル化して得られるエポキシ樹脂は、耐湿性および電気特性にきわめて優れているため、このエポキシ樹脂を用いて得られる硬化物も耐湿性に優れ、半導体用樹脂、プリント配線基板用積層板、粉体塗料、ブレーキシュー等の用途に有用であり、かつ色相に優れているために成形外観やマーキング性等が良好である。
Claims (4)
- 三フッ化ホウ素およびその錯体から選択される触媒の存在下におけるフェノール類と炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和環状炭化水素との反応を、下記(1)、(2)および(3)を含む工程で行うことを特徴とする炭化水素−フェノール樹脂の製造方法、
(1)フェノール類の融点と50℃とのいずれか高い方の温度から90℃までの温度範囲において、フェノール類に、炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和環状炭化水素を逐次にまたは連続して添加しつつ反応させ、全反応生成物に対するエーテル型生成体のモル分率を0.1以上にする工程、
(2)前記不飽和環状炭化水素の添加終了後、温度を110℃以上に上昇させて更に反応を進行させ、工程(1)で生成したエーテル型生成体を実質的に消滅させる工程、および
(3)工程(1)、(2)の終了後、触媒を失活させた後に未反応フェノール類を回収する工程。 - 前記炭化水素−フェノール樹脂において、フェノール類のフェノール性水酸基に対する不飽和環状炭化水素の置換位置に関し、オルト位/パラ位の置換比率が2.0以上であることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素−フェノール樹脂の製造方法。
- 前記フェノール類がフェノールであり、炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和環状炭化水素がジシクロペンタジエンであることを特徴とする請求項1または2に記載の炭化水素−フェノール樹脂の製造方法。
- 請求項1から3のいずれかに記載の製造方法により得られる炭化水素−フェノール樹脂とエピハロヒドリンとを、塩基触媒の存在下に反応させた後、触媒残渣を除去し、未反応のエピハロヒドリンを除去することを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法。
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