JP3862179B2 - 熱電モジュールの製作と製作用半田合金 - Google Patents

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Description

これは、1995年10月3日に提出された特許出願Serial No.08/535,449「熱電モジュールの製作と製作用半田合金」の一部継続出願である。
発明分野
この発明は、改良された熱電デバイスと、このようなデバイスを製作するための、改良された方法に関する。特にこの発明は、熱電モジュールに使用するために、ビスマスとアンチモンの合金を基とした改良型接合半田合金と、熱電モジュールを形成するために銅のような導電体上におけるリン-ニッケル面に半田付けされる熱電素子と、このような熱電モジュールの使用に関する。
背景技術
熱電モジュールは、熱ポンプもしくは発電機のように作動することが可能な、小さな固態デバイスである。発電のために用いられる場合、熱電モジュールは熱電発電機(TEG)と呼ばれる。TEGは温度差が与えられるとゼーベック効果を用いて電圧を発生する。
熱電モジュールが熱ポンプとして使用される場合、モジュールは熱電冷却器(TEC)もしくは熱電加熱器(THE)と呼ばれ、ペルチエ効果を示す。電流が二種類の半導体の接合部を通過すると、結果としてペルチエ効果により温度変化が生じる。一般にこのような半導体は熱電モジュールに組み込まれ、電流が通電されると熱は熱電モジュールの一側部からもう片方の側部へと伝達される。これらの熱電モジュールは、冷却側から送り込まれた熱がもう一方で吸熱源へと消散するという冷却デバイスのように振る舞うことが可能である。熱電モジュールの側部は一般にセラミック素材から成る。
セラミック側部間に位置するのはテルル化ビスマスからなる半導体素子であり、これはビスマス、テルル、セレニウム、そしてアンチモンで構成される。この半導体素子は過剰電子(n型)もしくは不足電子(p型)のどちらかをつくりだすために不純物添加される。このタイプの典型的熱電モジュールはGelb et alによりU.S. Patent 4,855,810において説明されている。この先行技術によると、これらの熱電モジュールはビスマスとスズを含む半田合金を用いて導電体に半田付けされた半導体素子を包含している。このような半田合金の一つについては、HabaによりU.S. Patent 3,079,455において説明されている。Habaはこの中で半田合金はスズ、アンチモン、そしてビスマスで形成されていると説明しており、ビスマスは40重量パーセントから50重量パーセントの量でありアンチモンは1.5重量パーセントから3.5重量パーセントの量であるとされている。
テルル化ビスマス素子を有した構造の熱電モジュールは約-80℃から約250℃までの温度範囲内にさらされて使用される。このようなスズ含有の半田合金を有した熱電モジュールの性能は、広範囲にわたる温度に長時間さらされた結果、悪化する。実際、この熱電モジュールの性能は一年間に15パーセントもしくはそれ以上低下することがわかっている。スズ含有の半田合金を有した熱電モジュールは実質的に80℃より高い温度においては、実際には使用に適するものではないと考えられる。
この実用性に欠ける理由の一つとして、標準のビスマス-スズ半田合金は138℃で溶融するということが挙げられる。80℃より高い温度において、半田合金内のスズは半導体素子内やその結晶格子内に急速に拡散し、そこでドープ剤のように振る舞うかもしくは半導体素子の材料と反応してしまう。また、スズは半田付けされた端部に隣接する材料の表面に薄膜を形成し、半導体素子間を接続される抵抗体のように振る舞い、IR降下および/または短絡を引き起こしてしまう。
Gelb et al.はこのスズの拡散と抵抗体形成の問題を、スズを基とした半田合金から鉛-アンチモンの半田合金に取り替えることで克服を試みた。しかし、高温において、鉛もまた拡散し熱電半導体材料と反応し熱電性能の悪い領域を形成した。
鉛もしくはスズの拡散を防ぐため、工業規格は半導体素子と半田合金間に、半導体素子上に積層されたニッケルのような拡散隔壁を採用するようになってきている。このようなシステムは、例えばFuschettiによりU.S. Patent 5,429,680において示されている。しかし、この技術は非常に複雑かつ高価であり、且つ鉛もしくはスズの拡散を完全に防ぐものではない。さらに、ニッケルで覆われた材料から成る半導体素子は構造的にもろく、長期にわたる電力もしくは温度サイクルを含む用途に耐えられない。
ビスマスとアンチモンから成る半田合金は半導体の「スズめっき」用に紹介されている。例えば、Kolenko, Ye A. ”Thermoelectric Cooling Devices”Foreign Science and Technology Center, U.S. Army Material Command, Department of the Army(AD 691 974), pp 131-138(1967)によると、表15において半導体のスズめっき用の90%のビスマスと10%のアンチモンの半田合金とBiSn接合半田合金について説明されている。また、表15において、半導体のスズめっき用の80%のビスマスと20%のアンチモンの半田合金についても説明されている。しかし、これを接合半田合金としてもしくは導電体へのリン-ニッケル面の接合に用いることの提案はなされていない。
この発明の目的は、熱電素材と反応して拡散源やドープ剤そして反応物質を与えないような半田合金を提供することである。
この発明のもう一つの目的は、275℃までの高温において改善された寿命と低故障率を有する熱電モジュールを提供することである。
この発明のさらなる目的は、半田合金が熱電素子間に抵抗体を形成しないような半田付け構造を有する熱電モジュールを提供することである。
さらに、高価な拡散隔壁の必要性を無くした熱電モジュールを提供することも本発明の目的である。
発明の開示
この発明は、銅、アルミニウム、そして他の良く知られている導電材料から成る導電体(例 母線)を熱電モジュールの熱電素子端部に堆積された導電材料に接合する半田合金を含むものであって、前述半田合金は約50重量パーセントから99重量パーセントのビスマスと約1重量パーセントから50重量パーセントのアンチモンを含み、特に導電体がリン-ニッケル面を有する場合はビスマスとアンチモンをあわせると約100重量パーセントとなる。
本発明は、さらに熱電モジュールの製造方法を提供しそれは以下を包含する。
1) テルル化ビスマス熱電素子の各端部に拡散隔壁を必要としないような導電材料を堆積する。
2) 銅もしくはアルミニウムのような導電体上にリン-ニッケル面を形成する。
3) 前述導電材料を前述リン-ニッケル面に、約50重量パーセントから99重量パーセントのビスマスと約1重量パーセントから50重量パーセントのアンチモンの二つをあわせて約100重量パーセントとなる半田合金で接合する。
上記ステップ1の導電材料は約50重量パーセントから100重量パーセントのビスマスと残りは実質的にアンチモンを含んだ材料である。
熱勾配から発電するために、デバイスにはその熱電素子間に温度勾配が与えられ、導電素子は電気回路を完成すべく接続される。熱勾配を発生するためには、熱電冷却もしくは熱電加熱の必要に応じて、デバイスに電流の流れが付与される。温度勾配はペルチエ効果により熱電素子を流れる電流の方向に沿ってつくりだされ、これにより冷接点が冷却され熱接点が加熱されるよう機能する。
この発明は約275℃までの広い動作温度範囲において使用可能な熱電モジュールを提供する。
【図面の簡単な説明】
添付の図において、
図1は熱電モジュール素子をさらに明確に示すために二つのセラミック材側部のうち一つが除去された熱電モジュールの等角投影図、
図2は図1の線分2−2に沿った熱電モジュールの断面図、
図3は本発明への使用に適したビスマスとアンチモンの二元半田合金系の状態図である。
発明の詳細な説明
本発明において、熱電モジュールは特にテルル化ビスマスという半導体材料で形成される、n型とp型の熱電素子の配列を含むものである。先行技術においても既知なように、熱電素子は第一端部と第二端部を有し、これらは交互に置かれたn型とp型の素子の行や列を成す。
素子の各端部には導電材料の薄いコーティングが堆積され、前述のコーティングにはニッケルのような拡散隔壁は実質的に無い。コーティングに適した材料はビスマス-アンチモン合金もしくは純粋なビスマスである。したがって、導電材料は約50重量パーセントから100重量パーセントのビスマスと残りは実質的にアンチモンとを含んでいる。この半田付け可能な面を提供するコーティングは0.001インチまでの厚さである。
非導電性基板上に形成される導電体は熱電素子を接続するために用いられる。この導電体は少なくとも3.5%のリンを含有するリン-ニッケル面を有する。この面を形成する一つの方法は導電体上にリン-ニッケルの層を設けることである。リン-ニッケル面に含有されるリンの量は通常約3.5%から18%の範囲にわたる。好ましいリンの量は7%から13%で、最も好ましくは8%から12%である。リン-ニッケル層の厚さは通常約20マイクロインチから約400マイクロインチである。導電体は銅であることが好ましい。
リン-ニッケル面は、約50重量パーセントから99重量パーセントのビスマスと約50重量パーセントから1重量パーセントのアンチモンから成る半田合金を用いて、熱電素子上の導電材料の薄いコーティングに半田付けされる。特に、高温用途に対しては、半田合金にはスズ、銅、銀、金、鉛、亜鉛、カドミウム、インジウム、ガリウム、ヨウ素、塩素、ナトリウム、そしてカリウムのようにドープ剤として振る舞う元素は含まれない。本発明の好ましい実施例において、半田合金は約75重量パーセントから96重量パーセントのビスマスと約25重量パーセントから4重量パーセントのアンチモンを含有する。本発明の最も好ましい実施例においては、半田合金は約80重量パーセントから95重量パーセントのビスマスと約20重量パーセントから5重量パーセントのアンチモンを含有する。
図において、改良された熱電モジュール(10)(図1と図2)は、n型(Bi2Te3-Bi2Se3)とp型(Bi2Te3-Sb2Te3)のテルル化ビスマス熱電素子(12、14)の配列を有する。n型とp型の熱電素子はその端部に純粋なビスマスもしくはビスマス-アンチモン合金の薄いコーティング(16、18)を有する。このコーティングは導電体(24、26)上に形成されたリン-ニッケル層(20、22)に半田付けされる。接続部(28、30)はビスマス-アンチモンの半田合金から成る。導電体は酸化アルミニウムもしくは酸化ベリリウムのような非導電性もしくは絶縁セラミック基板(32、34)上に形成される。
この発明は、275℃までの高温にも耐え得る熱電モジュールを提供する点で標準モジュールの改良となる。この改良により、熱電モジュールは、例えばオートクレーブや他の滅菌装置などにおいて200℃という温度においての使用が可能となる。200℃より高温においては、この熱電モジュールはダウンホール油井装置や自動車のエンジンにおいての利用が可能である。
実際の熱勾配もしくは所望の熱勾配に関してデバイスを適切に配置し、かつデバイスを負荷もしくは電源に直列に電気的に接続することにより、エネルギー変換を生じる。熱電素子が全て互いに並列かつ熱勾配の方向に配置された場合、電気は温度勾配が維持される間負荷もしくは回路の電源に供給される。
同様に、デバイスに電流が通電されると、ペルチエ効果により熱勾配が発生する。デバイスの適切な配置と電流の方向により所望の加熱もしくは冷却のどちらかが行える。
以下の例は本発明における好ましい実施例の製造を示している。

熱電モジュールは、銅によるメタライジング加工を施された酸化アルミニウム板を用い、およそ10%(8%から12%)のリンを含有するリン-ニッケル層を設けて製作された。銅メタライジング部は以下に記すようにn型とp型の素子に接続された。
Bi2Te3-Bi2Se3(n型)から成る半導体素子とBi2Te3-Sb2Te3(p型)から成る半導体素子が用意された。半導体素子の端部はおよそ0.001インチの厚さの95%ビスマス:5%アンチモンの合金の薄い層で被覆された。半導体素子上の被覆層はビスマス-アンチモン接合半田合金を用いてリン-ニッケル層に接続された。当業技術上既知である標準の酸系フラックスと標準半田付け技術が用いられた。
以下のビスマス:アンチモンの重量パーセント内容を有する接合半田合金が用いられた。
98.5:1.5
97.5:2.5
94.25:4.75
95:5
90:10
80:20
さらに、接合半田合金を用いる前に、半導体素子上のビスマス-アンチモンコーティングの代わりに純粋なビスマスのコーティングを半導体素子上に形成した。
95:5の接合半田合金を用いたモジュールは満足な性能を持続し熱電特性においても急激な変化は起こすことなく165℃から200℃において7000時間の試験にかけられた。このモジュールは75,000サイクルの瞬時電力反転試験と1000の温度サイクルを、故障することなく切り抜けた。半導体素子上のビスマスもしくはビスマス-アンチモンコーティングに関して開示された他のビスマス対アンチモン比率のものについても、先行技術と比較してより良い結果が得られた。
先行技術製品より優れた結果は、リン含有率が7%から13%の間で得られ、また先行技術より良い結果はリン含有が約3.5%から18%の間で得られた。
一方、ニッケル隔壁とスズ含有半田合金を有する標準モジュールは極めて少ない電力サイクルにさえも合格しなかった。
前述の説明は、本発明の好ましい実施例と例を単に例証したもので、発明の範囲はこれに制限されるものではない。この発明の付加的修正は、優れた当業技術者であれば発明の範囲から逸脱することなく容易に行えるであろう。

Claims (22)

  1. a.テルル化ビスマスからなる半導体材料から成るn型とp型の熱電素子の配列と、
    b.素子の各端部に堆積され、50重量パーセントから100重量パーセントのビスマスと残りは実質的にアンチモンを含む導電材料の薄い被覆と、
    c.少なくとも3.5%のリン含有率のリン-ニッケル面を有する母線と、
    d.50重量パーセントから99重量パーセントのビスマスと50重量パーセントから1重量パーセントのアンチモンからなり、前述の被覆された熱電素子を前述の母線上の前述リン-ニッケルに接合する半田合金とを含むこと
    を特徴とする熱電モジュール。
  2. 半田合金が75重量パーセントから96重量パーセントのビスマスと25重量パーセントから4重量パーセントのアンチモンからなることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール。
  3. 半田合金が80重量パーセントから95重量パーセントのビスマスと20重量パーセントから5重量パーセントのアンチモンからなることを特徴とする、請求項2に記載のモジュール。
  4. リン含有率が3.5%から18%であることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール。
  5. リン含有率が7重量パーセントから13重量パーセントであることを特徴とする、請求項4に記載のモジュール。
  6. リン含有率が8重量パーセントから12重量パーセントであることを特徴とする、請求項5に記載のモジュール。
  7. 母線が銅により形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール。
  8. 母線のリン-ニッケル面が母線上に形成されたリン-ニッケルの層であることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール。
  9. 高温においての使用に耐え得るような、
    a.テルル化ビスマス熱電素子の各端部に50重量パーセントから100重量パーセントのビスマスと残りは実質的にアンチモンからなる導電材料を堆積し、
    b.母線上にリン-ニッケルの面を形成し、
    c.50重量パーセントから99重量パーセントのビスマスと50重量パーセントから1重量パーセントのアンチモンとのあわせて100重量パーセントのビスマスとアンチモンからなる半田合金により前述導電材料を前述リン-ニッケル面に接合するステップを含むことを特徴とする熱電モジュール製造の方法。
  10. 半田合金が75重量パーセントから96重量パーセントのビスマスと25重量パーセントから4重量パーセントのアンチモンからなることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  11. 半田合金が80重量パーセントから95重量パーセントのビスマスと20重量パーセントから5重量パーセントのアンチモンからなることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
  12. リン-ニッケル層が少なくとも3.5重量パーセントのリンを含有することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  13. リン含有率が3.5%から18%であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
  14. リン含有率が7重量パーセントから13重量パーセントであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
  15. リン含有率が8重量パーセントから12重量パーセントであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
  16. 母線が銅により形成されていることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  17. リン-ニッケル面が前述母線上に形成された層であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  18. 請求項1に記載の熱電デバイスに温度勾配を与え、電気回路を完成すべくそれぞれの導電素子を接続して電気を発生することを特徴とする、発電方法。
  19. (a)熱勾配の方向が熱電素子を流れる電流の所望の方向に並行になるように請求項1に記載のデバイスを配置し、
    (b)前述熱勾配を維持し、
    (c)電気回路を完成することにより電流を発生して、熱勾配から電気を発生することを特徴とする、発電方法。
  20. 請求項1に記載の熱電デバイスに電流の流れを与え、熱電素子中の電流の方向に沿いペルチエ効果により温度勾配を生成することを特徴とする、熱勾配生成方法。
  21. 請求項1に記載の熱電デバイスの冷接点を被冷却物に熱的に接続し、熱接点を吸熱源に熱的に接続し、所望の熱勾配を維持するために温度勾配の方向に並行になるよう直流電流をデバイスの半導体素子に通電することを特徴とする、冷却実行方法。
  22. 請求項1に記載の熱電デバイスの熱接点を被加熱物に接続し、冷接点を吸熱源に接続し、所望の熱勾配を維持するために温度勾配の方向に並行になるよう直流電流をデバイスの半導体素子に通電することを特徴とする、熱電加熱実行方法。
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